以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。
図1には、本発明の較正方法、予測方法、露光方法、反射率較正方法及び反射率計測方法の実施に好適な一実施形態に係る露光装置10の構成が概略的に示されている。この露光装置10は、露光光源にパルス光源としてのエキシマレーザを用いたステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置、すなわちいわゆるスキャナである。
露光装置10は、光源16及び照明光学系12を含む照明系、該照明系からの露光用照明光ILにより照明されるマスクとしてのレチクルRを保持して所定の走査方向(ここでは、図1における紙面内左右方向であるY軸方向とする)に移動するレチクルステージRST、レチクルRから射出された露光用照明光ILをウエハW上に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPU、ウエハステージWST及び計測ステージMSTを有するステージ装置100、及びこれらの制御系等を備えている。ウエハステージWST上には、ウエハWが載置される。
前記光源16としては、一例として波長200nm〜170nmの真空紫外域の光を発するパルス光源であるArFエキシマレーザ(出力波長193nm)が用いられている。
前記照明光学系12は、所定の位置関係で配置された、ビーム整形光学系18、エネルギ粗調器20、回折光学ユニット17、オプティカル・インテグレータ(ユニフォマイザ、又はホモジナイザ)22、照明系開口絞り板24、ビームスプリッタ26、第1リレーレンズ28A、第2リレーレンズ28B、固定レチクルブラインド30A、可動レチクルブラインド30B、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ32等を含む。なお、オプティカル・インテグレータ22としては、フライアイレンズ、内面反射型インテグレータ、又は回折光学素子などが用いられるが、図1ではフライアイレンズを用いているので、以下では「フライアイレンズ」とも呼ぶ。
前記ビーム整形光学系18は、光源16で発光され、不図示の送光光学系を介して入射したレーザビームLBの断面形状を、該レーザビームLBの光路上において、その後方に設けられたフライアイレンズ22にレーザビームLBが効率良く入射するように整形するもので、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダ(いずれも図示省略)等で構成される。
前記エネルギ粗調器20は、ビーム整形光学系18後方のレーザビームLBの光路上に配置された回転板(レボルバ)34を含む。この回転板34の周囲には透過率(=1−減光率)の異なる複数個(例えば6個)のNDフィルタ(図1ではそのうちの2個のNDフィルタが示されている)が配置されている。回転板34を駆動モータ38で回転することにより、入射するレーザビームLBに対する透過率を100%から複数段階で切り換えることができる。駆動モータ38は、主制御装置50によって制御される。なお、エネルギ粗調器20を、複数個のNDフィルタを備えた2段のレボルバ、又は透過率の異なる複数のメッシュフィルタ等を備えた1段若しくは複数段のフィルタ交換部材より構成しても良い。
前記回折光学ユニット17は、複数、例えば2つの回折光学素子17a,17bと該回折光学素子17a,17bを所定の位置関係で保持するホルダ17cを備えている。ホルダ17cは、主制御装置50により、不図示の駆動機構を介して回転又はスライド駆動される。これにより、例えばウエハWに転写すべきレチクルRのパターンに応じて、すなわちレチクルRの照明条件に応じて、回折光学素子17a,17bのいずれかがレーザビームLBの光路上に選択的に設定される。
前記一方の回折光学素子17aは、照明光学系12の瞳面(本実施形態ではフライアイレンズ22の射出側焦点面、又は第2リレーレンズ28Bの後側焦点面など)上の所定領域(例えば、照明光学系12の光軸を中心とする円形領域又は輪帯領域、あるいはその光軸から偏心した複数の領域など)に回折光が分布するように、入射したレーザ光LBを回折するものである。この回折光学素子17aから発生する回折光(照明光IL)は、不図示のレンズ系を介して、光路上において、回折光学素子17aの後方に配置されたフライアイレンズ22の入射面に、ほぼ平行な光束となって入射する。また、他方の回折光学素子17bは、照明光学系12の瞳面上で、一方の回折光学素子17aから発生される回折光が分布する領域と形状、大きさ、及び位置の少なくとも1つが異なる領域に回折光が分布するように、入射したレーザ光LBを回折するものである。なお、回折光学素子17a、17bはそれぞれ回折パターン(回折格子など)が形成され、その少なくとも一方が位相シフト型の回折パターンでも良い。また、回折光学ユニット17は3つ以上の回折光学素子を備えていても良い。
前記フライアイレンズ22は、前記回折光学ユニット17後方のレーザビームLBの光路上に配置され、レチクルRを均一な照度分布で照明するためにその射出側焦点面(本実施形態では照明光学系12の瞳面とほぼ一致)に多数の点光源から成る面光源、すなわち2次光源を形成する。この2次光源から射出されるレーザ光、すなわち前述の露光用照明光ILを以下においては、「照明光IL」と呼ぶものとする。
フライアイレンズ22の射出側焦点面に、円板状部材から成る照明系開口絞り板24が配置されている。この照明系開口絞り板24には、等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り(通常絞り)、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り(小σ絞り)、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置した変形開口絞り(図1ではこのうちの2種類の開口絞りのみが図示されている)等が配置されている。この照明系開口絞り板24は、主制御装置50により制御されるモータ等の駆動装置40により回転され、これによりいずれかの開口絞りが照明光ILの光路上に選択的に設定される。
なお、照明光学系12の光路内に配置される回折光学素子17a、17bの一方とフライアイレンズ22との間に設けられる不図示のレンズ系の少なくとも一部をズームレンズ(アフォーカル系)として、回折光学ユニット17と組み合わせて用いることで、照明光学系12の瞳面上での照明光ILの光量分布(2次光源の大きさや形状)、すなわちレチクルRの照明条件の変更時における光量損失を抑える(照明光の利用効率を向上させる)ようにしても良い。さらに、それぞれ円錐面を持つ一対のプリズム(又はV型あるいは四角錐型のプリズム)を不図示のレンズ系に組み込み、一対のプリズムの少なくとも一方を照明光学系12の光軸に沿って移動してその間隔を可変とすることで、同様に照明条件の変更時における光量損失を抑えるようにしても良い。また、前述の回折光学ユニット17のみ、あるいは前述したズームレンズと一対のプリズムとの少なくとも一方が組み込まれる不図示のレンズ系と回折光学ユニット17とを組み合わせた整形光学系によって、前述の照明条件を任意に設定可能であれば、フライアイレンズ22の射出側焦点面に開口絞り板24を必ずしも設けなくても良い。さらに、本実施形態ではオプティカル・インテグレータ22としてフライアイレンズを用いるものとしているので、不図示のレンズ系によってフライアイレンズにほぼ平行な光束を入射させているが、内面反射型インテグレータ(ロッド・インテグレータ)を用いる場合には、不図示のレンズ系によって照明光IL(回折光)を集光して内面反射型インテグレータに入射させることになる。このとき、不図示のレンズ系による照明光ILの集光点は、内面反射型インテグレータの入射面からずらしておくと良い。また、照明条件の変更時には回折光学ユニット17(又は前述の整形光学系)によって内面反射型インテグレータの入射面上での照明光ILの入射角度範囲が変化することになる。
前記照明系開口絞り板24後方の照明光ILの光路上に、反射率が小さく透過率の大きなビームスプリッタ26が配置され、更にこの後方の光路上に、固定レチクルブラインド(固定視野絞り)30A及び可動レチクルブラインド(可動視野絞り)30Bを介在させて第1リレーレンズ28A及び第2リレーレンズ28Bから成るリレー光学系が配置されている。
固定レチクルブラインド30Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置され、レチクルR上で照明領域IAR(X軸方向に細長く延びる長方形の照明領域)を規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド30Aの近傍に走査方向に対応する方向の位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド30Bが配置されている。走査露光の開始時及び終了時にその可動レチクルブラインド30Bを用いて照明領域IARを更に制限することによって、不要な部分の露光が防止される。
リレー光学系を構成する第2リレーレンズ28B後方の照明光ILの光路上には、当該第2リレーレンズ28Bを通過した照明光ILをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラーMが配置され、このミラーM後方の照明光ILの光路上にコンデンサレンズ32が配置されている。
一方、ビームスプリッタ26の一方の面(表面)で反射された照明光ILは、集光レンズ44を介して光電変換素子を含むインテグレータセンサ46で受光され、インテグレータセンサ46の光電変換信号が、不図示のホールド回路(例えばピークホールド回路など)及びA/D変換器を介して出力DS(digit/pulse)として主制御装置50に供給される。インテグレータセンサ46としては、例えば遠紫外域や真空紫外域で感度があり、且つ光源16からのパルス光を検出するために高い応答周波数を有するPIN型のフォトダイオード等が使用できる。
また、ビームスプリッタ26の他方の面(裏面)側で、照明光学系12の瞳面と共役な位置に光電変換素子を含む反射量モニタ47が配置されている。本実施形態では、ウエハWで反射された照明光IL(反射光)は、液体Lq、投影光学系PL、コンデンサレンズ32、ミラーM及びリレー光学系を介してビームスプリッタ26に戻り、ビームスプリッタ26で反射された光が反射量モニタ47で受光され、反射量モニタ47の検出信号が主制御装置50に供給される。
従って、露光中には、インテグレータセンサ46の出力信号よりレチクルR、投影光学系PL等に入射する照明光ILの光量(第1光量とする)がモニタされ、反射量モニタ47の検出信号よりウエハWで反射されて液体Lq、投影光学系PL、レチクルR等を再び通過する反射光の光量(第2光量とする)がモニタできるため、その第1光量と第2光量とを加算することによって、投影光学系PL、レチクルRを通過する全体の光量がより正確にモニタできる。すなわち、第1光量と第2光量とに基づいて、投影光学系PLに入射する光の光量を正確にモニタすることができる。
前記レチクルステージRST上には、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着システムにより固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動装置55によって、照明光学系12の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここでは図1における紙面内左右方向であるY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置(Z軸回りの回転を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)53によって、移動鏡65(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。このレチクル干渉計53の計測値は、主制御装置50に送られ、主制御装置50では、このレチクル干渉計53の計測値に基づいてレチクルステージRSTのX軸方向、Y軸方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)の位置を算出するとともに、この算出結果に基づいてレチクルステージ駆動装置55を制御することで、レチクルステージRSTの位置(及び速度)を制御する。なお、移動鏡65に代えて、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡65の反射面に相当)を形成することとしても良い。
レチクルRの上方には、投影光学系PLを介してレチクルR上の一対のレチクルアライメントマークとこれらに対応する計測ステージMST上の一対の基準マーク(以下、「第1基準マーク」と呼ぶ)とを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント検出系RAa,RAbがX軸方向に所定距離隔てて設けられている。これらのレチクルアライメント検出系RAa,RAbとしては、例えば特開平7−176468号公報及びこれに対応する米国特許第5,646,413号などに開示されるものと同様の構成のものが用いられている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応米国特許の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
前記投影ユニットPUは、図1においてレチクルステージRSTの下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒80と、該鏡筒80内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを含む。投影光学系PLとしては、例えばZ軸方向の共通の光軸AXを有する複数のレンズ(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。この投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4倍又は1/5倍)を有する。このため、照明光学系12からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介して、その照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IAに共役な領域(以下、「露光領域」とも呼ぶ)IAに形成される。
また、図示は省略されているが、投影光学系PLの複数のレンズのうち、特定の複数のレンズは、主制御装置50からの指令に基づいて、結像特性補正コントローラ181(図6参照)によって制御され、投影光学系PLの光学特性(結像特性を含む)、例えば倍率、ディストーション、コマ収差、及び像面湾曲(像面傾斜を含む)などを調整できるようになっている。
なお、本実施形態の露光装置10では、後述するように液浸法を適用した露光が行われるため、開口数NAが実質的に増大することに伴いレチクル側の開口が大きくなる。このため、レンズのみで構成する屈折光学系においては、ペッツヴァルの条件を満足することが困難となり、投影光学系が大型化する傾向にある。かかる投影光学系の大型化を避けるために、ミラーとレンズとを含む反射屈折系(カタディ・オプトリック系)を用いても良い。
また、本実施形態の露光装置10では、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系PLの最も像面(ウエハW)に近い光学素子(以下、「先端レンズ」ともいう)91の近傍には、液浸装置132の液体供給ノズル131Aと、液体回収ノズル131Bとが設けられている。
前記液体供給ノズル131Aには、その一端が液体供給装置138(図1では不図示、図6参照)に接続された不図示の供給管の他端が接続されており、前記液体回収ノズル131Bには、その一端が液体回収装置139(図1では不図示、図6参照)に接続された不図示の回収管の他端が接続されている。
前記液体供給装置138は、液体のタンク、加圧ポンプ、温度制御装置、並びに供給管に対する液体の供給の開始及び停止を制御するためのバルブ等を含む。バルブとしては、例えば液体の供給の開始及び停止のみならず、流量の調整も可能となるように、流量制御弁を用いることが望ましい。前記温度制御装置は、液体タンク内の液体の温度を、露光装置本体が収納されているチャンバ(不図示)内の温度と同程度の温度に調整する。なお、液体を供給するためのタンク、加圧ポンプ、温度制御装置、バルブなどは、その全てを露光装置10で備えている必要はなく、少なくとも一部を露光装置10が設置される工場などの設備で代替することもできる。
前記液体回収装置139は、液体のタンク及び吸引ポンプ、並びに回収管を介して行われる液体の回収の開始及び停止を制御するためのバルブ等を含。バルブとしては、前述した液体供給装置138側のバルブに対応して流量制御弁を用いることが望ましい。なお、液体を回収するためのタンク、吸引ポンプ、バルブなどは、その全てを露光装置10で備えている必要はなく、少なくとも一部を露光装置10が設置される工場などの設備で代替することもできる。
上記の液体としては、ここでは、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する超純水(以下、特に必要な場合を除いて、単に「水」と記述する)を用いるものとする。超純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できると共に、ウエハ上のフォトレジストや光学レンズ等に対する悪影響がない利点がある。また、超純水は環境に対する悪影響がないと共に、不純物の含有量が極めて低いため、ウエハの表面及び先端レンズ91の表面を洗浄する作用も期待できる。
ArFエキシマレーザ光に対する水の屈折率nは、ほぼ1.44である。この水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
前記液体供給装置138及び液体回収装置139は、それぞれコントローラを具備しており、それぞれのコントローラは、主制御装置50によって制御される(図6参照)。液体供給装置138のコントローラは、主制御装置50からの指示に応じ、供給管に接続されたバルブを所定開度で開き、液体供給ノズル131Aを介して先端レンズ91とウエハWとの間に水を供給する。また、このとき、液体回収装置139のコントローラは、主制御装置50からの指示に応じ、回収管に接続されたバルブを所定開度で開き、液体回収ノズル131Bを介して先端レンズ91とウエハWとの間から液体回収装置139(液体のタンク)の内部に水を回収する。このとき、主制御装置50は、先端レンズ91とウエハWとの間に液体供給ノズル131Aから供給される水の量と、液体回収ノズル131Bを介して回収される水の量とが常に等しくなるように、液体供給装置138のコントローラ、液体回収装置139のコントローラに対して指令を与える。従って、先端レンズ91とウエハWとの間に、一定量の水Lq(図1参照)が保持される。この場合、先端レンズ91とウエハWとの間に保持された水Lqは、常に入れ替わっている。
上記の説明から明らかなように、本実施形態の液浸装置132は、上記液体供給装置138、液体回収装置139、供給管、回収管、液体供給ノズル131A及び液体回収ノズル131B等を含む局所液浸装置であり、ウエハWを露光する場合には、ウエハW上の一部に液浸領域が形成される。
なお、投影ユニットPU下方に計測ステージMSTが位置する場合にも、上記と同様に計測テーブルMTBと先端レンズ91との間を水で満たすことが可能である。
なお、上記の説明では、その説明を簡単にするため、液体供給ノズルと液体回収ノズルとがそれぞれ1つずつ設けられているものとしたが、これに限らず、例えば、国際公開第99/49504号パンフレットに開示されるように、ノズルを多数有する構成を採用することとしても良い。要は、投影光学系PLの最下端の光学部材(先端レンズ)91とウエハWとの間に液体を供給することができるのであれば、その構成はいかなるものであっても良い。例えば、国際公開第2004/053955号パンフレットに開示されている液浸機構や、欧州特許公開第1420298号公報に開示されている液浸機構も本実施形態の露光装置に適用することができる。
前記ステージ装置100は、フレームキャスタFCと、該フレームキャスタFC上に設けられたベース盤60と、該ベース盤60の上面の上方に配置されたウエハステージWST及び計測ステージMSTと、これらのステージWST、MSTの位置を計測する後述する干渉計システム118(図6参照)と、ステージWST、MSTを駆動するステージ駆動装置124(図6参照)と、を備えている。
前記フレームキャスタFCは、ステージ装置100を斜視図にて示す図2から分かるように、そのX軸方向一側と他側の端部近傍にY軸方向を長手方向とし上方に突出した凸部FCa,FCbが一体的に形成された概略平板状の部材から成る。
前記ベース盤60は、定盤とも呼ばれる板状部材からなり、フレームキャスタFCの前記凸部FCa,FCbに挟まれた領域上に配置されている。ベース盤60の上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWST及び計測ステージMSTの移動の際のガイド面とされている。
前記ウエハステージWSTは、図2に示されるように、ベース盤60の上方に配置されたウエハステージ本体78と、該ウエハステージ本体78上に不図示のZ・チルト駆動機構を介して搭載されたウエハテーブルWTBとを備えている。Z・チルト駆動機構は、実際には、ウエハステージ本体78上でウエハテーブルWTBを3点で支持する3つのアクチュエータ(例えば、ボイスコイルモータ又は電磁石)等を含み、ウエハテーブルWTBをZ軸方向、θx方向(X軸回りの回転方向)、θy方向(Y軸回りの回転方向)の3自由度方向に微小駆動する。
前記ウエハステージ本体78は、断面矩形枠状でX軸方向に延びる中空部材によって構成されている。このウエハステージ本体78の下面には、複数、例えば4つの不図示の気体静圧軸受け、例えばエアベアリングが設けられ、これらのエアベアリングによってウエハステージWSTが前述のガイド面の上方に数μm程度のクリアランスを介して非接触で支持されている。
前記フレームキャスタFCの凸部FCaの上方には、図2に示されるように、Y軸方向に延びるY軸用の固定子86が配置されている。同様に、フレームキャスタFCの凸部FCbの上方には、Y軸方向に延びるY軸用の固定子87が、配置されている。これらのY軸用の固定子86、87は、それぞれの下面に設けられた不図示の気体静圧軸受、例えばエアベアリングによって凸部FCa,FCbの上面に対して所定のクリアランスを介して支持されている。Y軸用の固定子86,87は、本実施形態では、Y軸方向に沿って所定間隔で配置された複数の永久磁石を有する磁極ユニットによって構成されている。
前記ウエハステージ本体78の内部には、X軸方向に沿って所定間隔で配置された複数の永久磁石を有する断面U字状の磁極ユニットから成る可動子90が設けられている。
この可動子90の内部空間には、X軸方向に延びるX軸用の固定子79が挿入されている。このX軸用の固定子79は、X軸方向に沿って所定間隔で配置された複数の電機子コイルを内蔵する電機子ユニットによって構成されている。この場合、磁極ユニットから成る可動子90と電機子ユニットから成るX軸用の固定子79とによって、ウエハステージWSTをX軸方向に駆動するムービングマグネット型のX軸リニアモータが構成されている。以下においては、適宜、上記X軸リニアモータを、その固定子(X軸用の固定子)79と同一の符号を用いて、X軸リニアモータ79と呼ぶものとする。なお、X軸リニアモータとしてムービングマグネット型のリニアモータに代えて、ムービングコイル型のリニアモータを用いても良い。
前記X軸用の固定子79の長手方向の一側と他側の端部には、例えばY軸方向に沿って所定間隔で配置された複数の電機子コイルを内蔵する電機子ユニットから成る可動子82、83が、それぞれ固定されている。これらの可動子82、83のそれぞれは、前述したY軸用の固定子86、87にそれぞれ内側から挿入されている。すなわち、本実施形態では、電機子ユニットから成る可動子82、83と、該可動子82,83がそれぞれ挿入された磁極ユニットから成るY軸用の固定子86,87とによって、ムービングコイル型の2つのY軸リニアモータが構成されている。以下においては、上記2つのY軸リニアモータのそれぞれを、それぞれの可動子82、83と同一の符号を用いて、適宜、Y軸リニアモータ82、Y軸リニアモータ83とも呼ぶものとする。なお、Y軸リニアモータ82,83として、ムービングマグネット型のリニアモータを用いても良い。
すなわち、ウエハステージWSTは、X軸リニアモータ79により、X軸方向に駆動されるとともに、一対のY軸リニアモータ82,83によってX軸リニアモータ79と一体でY軸方向に駆動される。また、ウエハステージWSTは、Y軸リニアモータ82,83が発生するY軸方向の駆動力を僅かに異ならせることにより、θz方向にも回転駆動される。
前記ウエハテーブルWTB上には、図2に示されるように、ウエハWを保持するウエハホルダ70が設けられている。このウエハホルダ70は、板状の本体と、該本体の上面に固定されたプレートを備えている。そのプレートの中央にウエハWの直径より0.1〜2mm程度直径が大きな円形開口が形成されるとともに、その円形開口の近傍に小さな円形開口が形成されている。このプレートの大きな円形開口内部の本体上面には、多数のピンが配置されており、その多数のピンによってウエハWが支持された状態でウエハWがウエハホルダ70に真空吸着されている。この場合、ウエハWがウエハホルダ70に真空吸着された状態では、そのウエハW表面とプレートの表面との高さがほぼ同一の高さとなる。また、プレートの小さな円形開口内には、その表面がプレートの表面とほぼ同一高さとなるように基準マーク板FM1が嵌め込まれている。この基準マーク板FM1の表面には、例えばレチクルアライメント用の一対の第1基準マーク(この一対の第1基準マークは、後述する基準マークRM11〜RM32(図4参照)と同様のマークである)などが形成されている。基準マーク板FM1は、ガラス部材(例えば極低膨張ガラスセラミック、例えばクリアセラム(登録商標)など)とその表面に形成されたクロム層とを有し、そのクロム層にパターニングよって形成された開口パターンが第1基準マークとして形成されている。また、この基準マーク板FM1を含むプレート全面の表面にフッ素系樹脂材料やアクリル系樹脂材料等の撥液性材料(撥水材料)がコーティングされ、撥液膜としての撥水膜が形成されている。
また、ウエハテーブルWTBの上面には、図2に示されるように、X軸方向の一端(−X側端)にX軸に直交する反射面を有するX移動鏡67XがY軸方向に延設され、Y軸方向の一端(+Y側端)にY軸に直交する反射面を有するY移動鏡67YがX軸方向に延設されている。これらの移動鏡67X,67Yの各反射面には、図2に示されるように、後述する干渉計システム118(図6参照)のX軸干渉計96,Y軸干渉計68からの干渉計ビーム(測長ビーム)がそれぞれ投射され、各干渉計96、68ではそれぞれの反射光を受光することで、各反射面の基準位置(一般には投影ユニットPU側面や、オフアクシス・アライメント系ALG(図6,図7(A)等参照)の側面に固定ミラーを配置し、そこを基準面とする)からの計測方向の変位を計測する。
なお、干渉計システム118は、上記X軸干渉計96,Y軸干渉計68と、図2に示されるX軸干渉計66との3つの干渉計を含む。
前記Y軸干渉計68は、投影光学系PLの投影中心(光軸AX)及びアライメント系ALGの検出中心を結ぶY軸に平行な測長軸を有しており、X軸干渉計96は、Y軸干渉計68の測長軸と投影光学系PLの投影中心で垂直に交差する測長軸を有している(図7(A)等参照)。
前記Y軸干渉計68は、少なくとも3本の光軸を有する多軸干渉計であり、各光軸は反射面の変位を独立に計測できる。また、X軸干渉計96は、少なくとも2本の光軸を有する多軸干渉計であり、各光軸は反射面の変位を独立に計測できる。
本実施形態では、干渉計システム118の各干渉計の出力値(計測値)は、図6に示されるように、主制御装置50に供給されている。従って、主制御装置50は、Y軸干渉計68からの出力値に基づいて、ウエハテーブルWTBのY軸方向の位置(Y位置)、X軸回りの回転量(ピッチング量)及びZ軸回りの回転量(ヨーイング量)を計測する。また、主制御装置50は、X軸干渉計96からの出力値に基づいて、ウエハテーブルWTBのX軸方向の位置(X位置)及びY軸回りの回転量(ローリング量)を計測する。
上述のように、ウエハテーブルWTB上には、実際には、移動鏡67X、67Yが設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡67として示されている。なお、例えば、ウエハテーブルWTBの端面を鏡面加工して反射面(前述した移動鏡67X、67Yの反射面に相当)を形成しても良い。
前記計測ステージMSTは、図2に示されるように、X軸方向を長手方向とするYステージ81などを含む複数の部材の組み合わせによって構成され、その最下面(ベース盤60に最も接近している部材の下面)に設けられた複数の気体静圧軸受け、例えばエアベアリングを用いてベース盤60の上面(ガイド面)の上方に数μm程度のクリアランスを介して非接触で支持されている。
計測ステージMSTは、図3(A)の斜視図からも分かるように、X軸方向に細長い長方形板状の計測ステージ本体81cと、該計測ステージ本体81c上面のX軸方向の一側、他側にそれぞれ固定された一対の突出部81a、81bとを有するYステージ81と、前記計測ステージ本体81cの上面の上方に配置されたレベリングテーブル52と、該レベリングテーブル52上に設けられた計測テーブルMTBとを備えている。
前記Yステージ81の計測ステージ本体81cのX軸方向の一側と他側の端面には、Y軸方向に沿って所定間隔で配置された複数の電機子コイルを内蔵する電機子ユニットから成る可動子84、85が、それぞれ固定されている。これらの可動子84、85のそれぞれは、前述したY軸用の固定子86、87にそれぞれ内側から挿入されている。すなわち、本実施形態では、電機子ユニットから成る可動子84,85と、該可動子84,85それぞれが挿入された磁極ユニットから成るY軸用の固定子86,87とによって、2つのムービングコイル型のY軸リニアモータが構成されている。以下においては、上記2つのY軸リニアモータのそれぞれを、それぞれの可動子84、85と同一の符号を用いて、適宜、Y軸リニアモータ84、Y軸リニアモータ85とも呼ぶものとする。本実施形態では、これらのY軸リニアモータ84、85によって、計測ステージMSTの全体が、Y軸方向に駆動される。なお、このY軸リニアモータ84,85をムービングマグネット型のリニアモータとしても良い。
前記計測ステージ本体81cの底面には、前述の複数の気体静圧軸受けが設けられている。この計測ステージ本体81c上面のX軸方向の一側、他側の−Y側端部近傍に、前述の一対の突出部81a、81bが相互に対峙して固定されている。これらの突出部81a、81b相互間には、X軸方向にそれぞれ延びる固定子61,63が、Z軸方向(上下)に所定間隔を隔てて架設されている。
前記レベリングテーブル52の+X側の端面には、Xボイスコイルモータ54aの可動子が設けられ、該Xボイスコイルモータ54aの固定子は、計測ステージ本体81cの上面に固定されている。また、レベリングテーブル52の+Y側の端面には、Yボイスコイルモータ54b、54cの可動子がそれぞれ設けられ、これらのYボイスコイルモータ54b、54cの固定子は、計測ステージ本体81cの上面に固定されている。前記Xボイスコイルモータ54aは、例えば磁極ユニットから成る可動子と電機子ユニットから成る固定子とから構成され、これらの間の電磁相互作用により、X軸方向の駆動力を発生する。また、前記Yボイスコイルモータ54b,54cも同様に構成され、Y軸方向の駆動力を発生する。すなわち、レベリングテーブル52は、Xボイスコイルモータ54aによりYステージ81に対して、X軸方向に駆動され、Yボイスコイルモータ54b,54cによりYステージ81に対してY軸方向に駆動される。また、ボイスコイルモータ54b,54cが発生する駆動力を異ならせることにより、レベリングテーブル52をYステージ81に対してZ軸回りの回転方向(θz方向)へ駆動することができる。
すなわち、レベリングテーブル52は、前述したXボイスコイルモータ54a、Yボイスコイルモータ54b,54c、内部に配置された不図示のZボイスコイルモータにより、6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)に非接触で微小駆動可能とされている。
図3(A)に戻り、前記計測テーブルMTBは、計測テーブル本体59と、該計測テーブル本体59の−Y側面に上下に並んで固定された、X軸方向を長手方向とする断面略U字状の可動子62、64とを備えている。
前記可動子62は、YZ断面略U字状の可動子ヨークと、該可動子ヨークの内面(上下面)にX軸方向に沿って所定間隔でかつ交互に配置されたN極永久磁石とS極永久磁石の複数の組から成る永久磁石群とを備え、前述の固定子61に係合状態とされている。可動子62の可動子ヨークの内部空間には、X軸方向に沿って交番磁界が形成されている。前記固定子61は、例えばX軸方向に沿って所定間隔で配置された複数の電機子コイルを内蔵する電機子ユニットから成る。すなわち、固定子61と可動子62とによって、計測テーブルMTBをX軸方向に駆動するムービングマグネット型のX軸リニアモータLXが構成されている。
前記可動子64は、YZ断面略U字状の可動子ヨークと、該可動子ヨークの内面(上下面)に1つずつ設けられたN極永久磁石とS極永久磁石とを備え、前述の固定子63に係合状態とされている。可動子64の可動子ヨークの内部空間には、+Z向き又は−Z向きの磁界が形成されている。前記固定子63は、その内部に、N極磁石とS極磁石とにより形成される磁界中でX軸方向にのみ電流が流れるような配置で配置された電機子コイルを備えている。すなわち、可動子64と固定子63とによって、計測テーブルMTBをY軸方向に駆動するムービングマグネット型のYボイスコイルモータVYが構成されている。
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、Y軸リニアモータ82〜85及びX軸リニアモータ79、ウエハテーブルWTBを駆動する不図示のZ・チルト駆動機構、計測ステージMST上の上述した各モータ(54a〜54c,LX,VY,及び不図示のZボイスコイルモータ)により、図6に示されるステージ駆動装置124の少なくとも一部が構成されている。このステージ駆動装置124の各種駆動機構が、図6に示される主制御装置50によって制御される。
前記計測テーブルMTBの計測テーブル本体59は、図3(B)に示されるように、下半部の第1部分59aと、上半部の第2部分59bとの2部分によって構成されている。第1部分59aは、直方体部材によって構成され、その底面に前述の複数のエアベアリングが固定されている。第2部分59bは、第1部分59aに比べてY軸方向の幅が大きくかつX軸方向の長さが同一寸法の直方体形状を有し、−Y側端面、+X側端面及び−X側端面が、第1部分59aと同一面(面一)となる状態で、第1部分59a上に固定されている。第2部分59bは、実際には、上面が開口した中空直方体状の筐体120(図5参照)と、該筐体120の上面を閉塞する所定の厚さのプレート101とを含む。プレート101は、例えばポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))などの撥液性を有する材料によって形成される。
前記プレート101は、計測テーブル本体59の平面図である図4に示されるように、境界線BLの+X側の第1領域と、境界線BLの−X側の第2領域との2つの領域を有している。第1領域は、液体としての水Lqを介して照明光ILが照射される各種計測部材が配置された領域であり、第2領域は、液体を介することなく照明光ILが照射される各種計測部材が配置された領域である。従って、第1領域上の水Lqが第2領域へ流れ込まないように、境界線BLに沿って仕切り(壁や溝)を設けても良い。
前記プレート101の第1領域には、Y軸方向を長手方向とする長方形の開口101a、該開口101aとほぼ同一のX軸方向寸法を有し、そのX軸方向を長手方向とする長方形の開口101b、該開口101bのほぼ2倍のY軸方向の幅を有しかつほぼ同一のX軸方向長さを有する開口101cと、3つの円形開口101d,101e,101fが形成されている。
また、プレート101の第2領域には、上述の開口101bとほぼ同一形状の開口101g、及び上述の開口101cとほぼ同一形状の開口101hが形成されている。
前記プレート101の開口101b下方の筐体120の内部には、照度計測器である照度モニタ(照射量モニタ)122が、配置されている。この照度モニタ122は、図5に示されるように、合成石英又は蛍石などを素材とするガラスから成る光学部材126、及び該光学部材126の下面にほぼ隙間なく固定された第1センサ128等を備えている。第1センサ128は、図5に示される前述の露光領域IA(図4参照)に照射された照明光ILのほぼ全部を受光できる程度の所定面積の受光面を有し、照明光ILと同じ波長域(例えば波長300nm〜100nm程度)で感度があり、且つ照明光ILを検出するために高い応答周波数を有する複数のシリコン・フォト・ダイオード(又はフォト・マルチプライア・チューブ)などの受光素子群を含む。
光学部材126は、図5に示されるように、プレート101の開口101b部分の内側面及び下側面に対して所定のギャップを介して対向するような形状を有している。この場合、開口101bと光学部材126の上部側面との間のギャップBの幅は、例えば0.3mm程度に設定されている。
光学部材126は、筐体120の底壁の上面に設けられた支持部材130に上方から係合している。すなわち、支持部材130は、受光素子128を取り囲む平面視(上方から見て)所定幅の枠状の形状を有しており、光学部材126の下面の外縁部には、支持部材130の上端部に係合する段部が形成されている。光学部材126には、その上面に照明光ILを減光するクロム等の金属薄膜から成る減光膜129が全面に渡って形成されている。さらにその減光膜の上部にフッ素系樹脂材料やアクリル系樹脂材料等の撥液性材料(撥水材料)がコーティングされ、これによって撥液膜としての撥水膜WRFが形成されている。本実施形態では、この撥水膜WRFの上面とプレート101の上面とは、ほぼ同一面(面一)に設定されている。
一方、光学部材126の下面には、中央の長方形領域を除く領域にクロムなどの金属膜から成る遮光膜127が形成されている。この遮光膜127により、図5に示されるようにギャップB部分を介して光学部材126に入射した迷光(図5中の太線の実線矢印参照)がカット(遮光)される。
本実施形態の照度モニタ122は、例えば特開平6−291016号公報及びこれに対応する米国特許第5,721,608号などに開示される照度モニタ(照射量モニタ)と同様の構成を有しており、投影光学系PLの像面上で水Lqを介して照明光ILの照度を計測する。照度モニタ122の第1センサ128の検出信号(光電変換信号)が不図示のホールド回路(例えばピークホールド回路など)、及びアナログ/デジタル(A/D)変換器を介して主制御装置50に供給されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公開公報及び対応する米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
なお、光学部材126の側面の少なくともプレート101の開口101bの内壁面に対向する領域、並びにプレート101の光学部材126に対向する開口101bの内壁面は、撥液処理(撥水処理)されて撥液性(撥水性)となっている。撥液処理としては、前述したフッ素系樹脂材料やアクリル系樹脂材料等の撥液性材料を塗布する等して行うことができる。
また、筐体120底壁には、前述の支持部材130の近傍に、排出孔120aが形成されており、この排出孔120aは、不図示の配管を介して不図示の回収部に接続されている。この回収部は、真空系及び水Lqを収容可能なタンクを含む気液分離器等を備えている。上述した撥液処理にもかかわらず、ギャップBを介して筐体120の内部に流入した水Lqは、排出孔120aを介して回収部で回収される。
前記プレート101の開口101gには、光学部材126上面の減光膜の上部に撥水膜が形成されていない点を除き、前述の照度モニタ122と同様に構成された基準照度モニタ122’が配置されている。この基準照度モニタ122’は、投影光学系PLの像面上で水を介さずに照明光ILの照度を計測する。基準照度モニタ122’は、照度モニタ122の第1センサ128と同様のセンサを有し、基準照度モニタ122’の検出信号(光電変換信号)が不図示のホールド回路(例えばピークホールド回路など)、及びアナログ/デジタル(A/D)変換器を介して主制御装置50に供給されている。
前記プレート101の開口101aの内部には、平面視長方形の基準マーク板FM2が配置されている。この場合、基準マーク板FM2とプレート101との間には例えば0.3mm程度のギャップAが、基準マーク板FM2の周囲に形成されている。基準マーク板FM2の上面はプレート101表面とほぼ同じ高さ(面一)に設定されている。この基準マーク板FM2の表面には、前述の一対のレチクルアライメント検出系RAa,RAbによって一対ずつ同時計測が可能な3対の第1基準マークRM11〜RM32と、後述するアライメント系ALGにより検出される3つの第2基準マークWM1〜WM3とが所定の位置関係で形成されている。これらの基準マークのそれぞれは、基準マーク板FM2を構成する部材(例えば極低膨張ガラスセラミック、例えばクリアセラム(登録商標)など)の表面にほぼ全面に渡って形成されたクロム層に上記所定の位置関係でパターニングよって形成された開口パターンとして形成されている。なお、各基準マークを、アルミニウムなどのパターン(残しパターン)によって形成しても良い。
本実施形態では、例えば特開平5−21314号公報及びこれに対応する米国特許第5,243,195号などに開示されるのと同様に、上記第1基準マークRMj1,RMj2(j=1〜3)は、前述の一対のレチクルアライメント検出系RAa,RAbによって同時に計測可能で、かつこの第1基準マークRMj1,RMj2の計測と同時に第2基準マークWMjをアライメント系ALGによって計測が可能になるように、上記各基準マークの配置が定められている。また、基準マーク板FM2の上面はほぼ平坦面となっており、後述する多点焦点位置検出系の基準面として用いることとしても良い。この基準マーク板FM2の上面には、不図示ではあるが、前述のクロム層の上部に前述したフッ素系樹脂材料やアクリル系樹脂材料等の撥液性材料から成る撥水膜が形成されている。
基準マーク板FM2の側面の少なくともプレート101の開口101aの内壁面に対向する領域、並びにプレート101の基準マーク板FM2に対向する開口101aの内壁面は、前述と同様の撥液処理がなされている。また、筐体120の底壁には、基準マーク板FM2の近傍にも前述の排出孔120aと同様の排出孔が形成され、この排出孔が前述の回収部の真空系に接続されている。
前記プレート101の開口101cの内部には、平面視長方形の計測用反射板102が、その表面がプレート101とほぼ同一面となる状態で配置されている。
計測用反射板102とプレート101との間には例えば0.3mm程度の幅のギャップCが、計測用反射板102の周囲に形成されている。計測用反射板102の側面の少なくともプレート101の開口101cの内壁面に対向する領域、並びにプレート101の計測用反射板102に対向する開口101cの内壁面は、前述と同様の撥液処理がなされている。また、筐体120の底壁には、計測用反射板102の近傍にも前述の排出孔120aと同様の排出孔が形成され、この排出孔が前述の回収部の真空系に接続されている。
計測用反射板102の上面は、Y軸方向に関して2つの領域に分割され、一方の領域が設計上の反射率(初期の反射率)が第1の反射率RHである高反射面領域102Hとされ、他方の領域が設計上の反射率(初期の反射率)が第2の反射率RL(<第1の反射率RH)である低反射面領域102Lとされている。高反射面領域102H、低反射面領域102Lのそれぞれは、前述した露光領域IAより広い領域となっている。この計測用反射板102の高反射面領域102H、低反射面領域102Lの上部にも全面に渡ってしたフッ素系樹脂材料やアクリル系樹脂材料等の撥液性材料から成る撥水膜が形成されている。
プレート101の前述の開口101h内部には、その表面等に撥液処理が施されていない(撥液膜が形成されていない)基準反射板202が、プレート101上面とほぼ同一面(面一)となる状態で配置されている。この基準反射板202の反射率は第3の反射率であるものとする。
前記プレート101の開口101dの内部には、平面視円形のパターン板103を有する照度むら計測器104が配置されている。パターン板103とプレート101との間には例えば0.3mm程度の幅のギャップDが、パターン板103の周囲に形成されている。
照度むら計測器104は、上記パターン板103と、該パターン板の下方に配置された不図示の受光素子(前述のシリコン・フォト・ダイオードあるいはフォト・マルチプライア・チューブなど)から成るセンサとを有している。パターン板103は、前述の光学部材126と同様に石英ガラスなどから成り、その表面にクロムなどの遮光膜が成膜され、該遮光膜の中央に光透過部としてピンホール103aが形成されている。そして、その遮光膜の上に、前述したフッ素系樹脂材料やアクリル系樹脂材料等の撥液性材料から成る撥水膜が形成されている。
上述の照度むら計測器104は、特開昭57−117238号公報及びこれに対応する米国特許第4,465,368号などに開示される照度むら計測器と同様の構成を有しており、投影光学系PLの像面上で水Lqを介して照明光ILの照度むらを計測する。そして、照度むら計測器を構成するセンサの検出信号(光電変換信号)が不図示のホールド回路(例えばピークホールド回路など)、及びアナログ/デジタル(A/D)変換器を介して主制御装置50に供給されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
前記プレート101の開口101eの内部には、平面視円形のスリット板105が、その表面がプレート101表面とほぼ同一面(面一)となる状態で配置されている。スリット板105とプレート101との間には例えば0.3mm程度の幅のギャップEが、スリット板105の周囲に形成されている。このスリット板105は、前述のパターン板103と同様に、石英ガラスと、該石英ガラスの表面に形成されたクロムなどの遮光膜とを有し、該遮光膜の所定箇所にX軸方向、Y軸方向に伸びるスリットパターンが光透過部として形成されている。このスリット板105は、投影光学系PLにより投影されるパターンの空間像(投影像)の光強度を計測する空間像計測器の一部を構成するものである。本実施形態では、このスリット板105の下方の計測テーブル本体59(筐体120)の内部には、投影光学系PL及び水Lqを介してプレート101に照射される照明光ILを、前記スリットパターンを介して受光する受光系が設けられており、これによって、例えば特開2002−14005号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示される空間像計測器と同様の空間像計測器が構成されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公開公報及び対応する米国特許出願公開明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
前記プレート101の開口101fの内部には、平面視円形の波面収差計測用パターン板107が、その表面がプレート101表面とほぼ同一面(面一)となる状態で配置されている。この波面収差計測用パターン板107は、前述のパターン板103と同様に、石英ガラスと、該石英ガラスの表面に形成されたクロムなどの遮光膜とを有し、該遮光膜の中央に円形の開口が形成されている。この波面収差計測用パターン板107の下方の計測テーブル本体59(筐体120)の内部には、例えばマイクロレンズアレイを含む受光系が設けられており、これによって例えば国際公開第99/60361号パンフレット及びこれに対応する欧州特許第1,079,223号明細書などに開示される波面収差計測器が構成されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記国際公開パンフレット及び対応する欧州特許明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
上述したパターン板103、スリット板105及び波面収差計測用パターン板107それぞれの側面の少なくともプレート101の開口101d、開口101e、開口101fの内壁面にそれぞれ対向する領域、並びにプレート101のパターン板103に対向する開口101dの内壁面、スリット板105に対向する開口101eの内壁面、及び波面収差計測用パターン板107に対向する開口101fの内壁面それぞれは、前述と同様の撥液処理がなされている。また、筐体120の底壁には、パターン板103の近傍、スリット板105の近傍、及び波面収差計測用パターン板107の近傍に前述の排出孔120aと同様の排出孔がそれぞれ形成され、これらの排出孔が前述の回収部の真空系に接続されている。
なお、図示は省略されているが、本実施形態では、筐体120の内部に、前述した各種計測器を構成する受光素子(センサ)が配置されているので、それらの受光素子の発熱の影響を極力回避すべく、それらの受光素子及び筐体120の冷却機構が設けられている。受光素子の冷却機構としては、例えば筐体120の底壁に設けられたヒートシンク及びこれに接続されたペルチェ素子の組み合わせなどが挙げられる。また、筐体120そのものの冷却機構としては、例えば配管系の内部に冷却液を流す液冷方式の機構を採用することができる。
なお、熱の影響を抑制する観点から、上記の空間像計測器や波面収差計測器などでは、例えば光学系などの一部だけが計測ステージMSTに搭載され、受光素子などが計測ステージMSTから離れた部材に配置されていても良い。
前記計測テーブルMTBの上面には、X軸方向の一端(−X側端)にX軸に直交する反射面を有するX移動鏡117XがY軸方向に延設され、Y軸方向の一端(−Y側端)にY軸に直交する反射面を有するY移動鏡117YがX軸方向に延設されている。Y移動鏡117Yの反射面には、図2に示されるように、干渉計システム118のY軸干渉計66からの干渉計ビーム(測長ビーム)が投射され、干渉計66ではその反射光を受光することにより、Y移動鏡117Yの反射面の基準位置からの変位を計測する。また、計測テーブルMTBが、計測時などに投影ユニットPUの直下に移動した場合には、X移動鏡117Xの反射面にX軸干渉計96からの干渉計ビーム(測長ビーム)が投射され、干渉計96ではその反射光を受光することにより、X移動鏡117Xの反射面の基準位置からの変位を計測する。Y軸干渉計66は、投影光学系PLの投影中心(光軸AX)で前述のX軸干渉計96の測長軸と垂直に交差するY軸方向に平行な測長軸を有している。
前記Y軸干渉計66は、少なくとも3本の光軸を有する多軸干渉計であり、各光軸は反射面の変位を独立に計測できる。このY軸干渉計66の出力値(計測値)は、主制御装置50に供給され、主制御装置50ではY軸干渉計66からの出力値に基づいて、計測テーブルMTBのY位置のみならず、ピッチング量及びZヨーイング量をも計測できる。また、主制御装置50ではX軸干渉計96からの出力値に基づいて、計測テーブルMTBのX位置及びローリング量を計測する。
これまでの説明からわかるように、本実施形態では、Y軸干渉計68からの干渉計ビームは、ウエハステージWSTの移動範囲の全域で常に移動鏡67Yに投射され、Y軸干渉計66からの干渉計ビームは、計測ステージMSTの移動範囲の全域で常に移動鏡117Yに投射される。従って、Y軸方向については、常にステージWST、MSTの位置は、主制御装置50によりY軸干渉計68、66の計測値に基づいて管理される。
この一方、図2からも容易に想像されるように、主制御装置50は、X軸干渉計96からの干渉計ビームが、移動鏡67Xに当たる範囲でのみ、X軸干渉計96の出力値に基づいてウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のX位置を管理するとともに、X軸干渉計96からの干渉計ビームが、移動鏡117Xに当たる範囲でのみ、X軸干渉計96の出力値に基づいて計測テーブルMTB(計測ステージMST)のX位置を管理する。従って、X軸干渉計96の出力値に基づいてX位置を管理できない間、ウエハテーブルWTB、計測テーブルMTBの位置は、不図示のエンコーダで計測され、このエンコーダの計測値に基づいて、主制御装置50は、ウエハテーブルWTB、計測テーブルMTBの位置を管理する。
また、主制御装置50は、X軸干渉計96からの干渉計ビームが、移動鏡67X、117Xのいずれにも当たらない状態から移動鏡67X又は移動鏡117Xに当たり始めた直後の時点で、それまで制御に用いられていなかったX軸干渉計96をリセットし、それ以後は、干渉計システム118の、Y軸干渉計68又は66と、X軸干渉計96とを用いて、ウエハステージWST又は計測ステージMSTの位置を管理する。
本実施形態では、2つのY軸干渉計66,68と、1つのX軸干渉計96とによって、図6の干渉計システム118の少なくとも一部が構成されているが、X軸干渉計を複数設け、常にいずれかのX軸干渉計からの干渉計ビームが、移動鏡67X、117Xに当たるような構成を採用しても良い。この場合には、ウエハステージWST、計測ステージMSTの位置を管理するX軸干渉計を、これらのステージのX位置に応じて切り替えれば良い。
また、前述の多軸干渉計は45°傾いてステージWST、MSTに設置される反射面を介して、投影ユニットPUが保持される保持部材に設置される反射面にレーザビームを照射し、その反射面とステージとの投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に関する相対位置情報を検出するようにしても良い。
また、本実施形態の露光装置10では、投影ユニットPUを保持する保持部材には、オフアクシス・アライメント系(以下、「アライメント系」と略述する)ALG(図1では図示せず、図6、図7(A)等参照)が設けられている。このアライメント系ALGとしては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(アライメント系ALG内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられている。アライメント系ALGからの撮像信号は、図6の主制御装置50に供給される。
なお、アライメント系ALGとしては、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。
本実施形態の露光装置10では、図1では図示が省略されているが、照射系110a及び受光系110b(図6参照)から成る、例えば特開平6−283403号公報(対応米国特許第5,448,332号)等に開示されるものと同様の斜入射方式の多点焦点位置検出系が設けられている。本実施形態では、一例として、照射系110aが投影ユニットPUの−X側にて投影ユニットPUを保持する保持部材に吊り下げ支持され、受光系110bが投影ユニットPUの+X側にて保持部材の下方に吊り下げ支持されている。すなわち、照射系110a及び受光系110bと、投影光学系PLとが、同一の部材に取り付けられており、両者の位置関係が一定に維持されている。
なお、多点焦点位置検出系は、水Lqで形成された液浸領域内に照射系110aからの検出光を照射するものであってもよいし、液浸領域の外側に検出光を照射するものであってもよい。また多点焦点位置検出系を、投影ユニットPUから離れた位置(例えば、ウエハ交換位置など)に配置し、ウエハの露光を開始する前に、ウエハ表面の高さ情報(凹凸情報)を取得してもよい。
図6には、露光装置10の制御系の主要な構成が示されている。この制御系は、装置全体を統括的に制御するマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含む主制御装置50を中心として構成されている。また、主制御装置50には、メモリ51やCRTディスプレイ(又は液晶ディスプレイ)等のディスプレイDISなどが接続されている。なお、図6では、前述した照度むら計測器104、照度モニタ122、基準照度モニタ122’、空間像計測器、及び波面収差計測器などが、計測器群43として示されている。
本実施形態の露光装置10では、主制御装置50が、露光コントローラ及びステージコントローラの役目をも有しているが、これらのコントローラを主制御装置50とは別に設けても良いことは勿論である。
次に、上述のようにして構成された本実施形態の露光装置10における、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとを用いた並行処理動作について、図7(A)〜図9に基づいて説明する。なお、以下の動作中、特に説明がない限り、主制御装置50によって、液浸装置132の液体供給装置138及び液体回収装置139の各バルブの開閉制御が前述したようにして行われ、投影光学系PLの先端レンズ91の直下には常時水が満たされている。しかし、以下では、説明を分かり易くするため、液体供給装置138及び液体回収装置139の制御に関する説明は省略する。
図7(A)には、ウエハステージWST上のウエハW(ここでは例えば1ロット(1ロットは25枚又は50枚)の最後のウエハとする)に対するステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われている状態が示されている。このとき、計測ステージMSTは、ウエハステージWSTと衝突しない所定の待機位置にて待機している。
上記の露光動作は、主制御装置50が、事前に行われた例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)などのウエハアライメントの結果と、事前に検出されたレチクルRとウエハステージWST(ウエハW)との位置関係と、アライメント系ALGのベースラインの最新の計測結果とに基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へウエハステージWSTを移動するショット間の移動動作と、各ショット領域に対してレチクルRに形成されたパターンを走査露光方式で転写する走査露光動作と、を繰り返すことにより行われる。
ここで、上記のウエハステージWSTが移動されるショット間の移動動作は、主制御装置50が、干渉計68、96の計測値をモニタしつつ、X軸リニアモータ79及びY軸リニアモータ82,83を制御することで行われる。また、上記の走査露光は、主制御装置50が、干渉計68,96及びレチクル干渉計53の計測値をモニタしつつ、レチクルステージ駆動装置55並びにY軸リニアモータ82,83(及びX軸リニアモータ79)を制御して、レチクルR(レチクルステージRST)とウエハW(ウエハステージWST)とをY軸方向に関して相対走査し、その相対走査中の加速終了後と減速開始直前との間の等速移動時に、照明光ILに対してレチクルR(レチクルステージRST)とウエハW(ウエハステージWST)とをY軸方向に関して等速同期移動することで実現される。なお、上記の露光動作は、先端レンズ91とウエハWとの間に水を保持した状態で行われる。
そして、ウエハステージWSTに保持されたウエハWに対する露光が終了した段階で、主制御装置50は、干渉計66の計測値、及び不図示のエンコーダの計測値に基づいてY軸リニアモータ84,85及びX軸リニアモータLXを制御して、計測ステージMST(計測テーブルMTB)を図7(B)に示される位置まで移動させる。この図7(B)の状態では、計測テーブルMTBの+Y側面とウエハテーブルWTBの−Y側面とは接触している。なお、干渉計66,68の計測値をモニタして計測テーブルMTBとウエハテーブルWTBとをY軸方向に300μm程度離間させて、非接触の状態を保っても良い。
次いで、主制御装置50は、ウエハテーブルWTBと計測テーブルMTBとのY軸方向の位置関係を保ちつつ、両ステージWST、MSTを+Y方向に同時に駆動する動作を開始する。
このようにして、主制御装置50により、ウエハステージWST、計測ステージMSTが同時に駆動されると、図7(B)の状態では、投影光学系PLの先端レンズ91とウエハWとの間に保持されていた水が、ウエハステージWST、計測ステージMSTの+Y側への移動に伴って、ウエハW→ウエハホルダ70→計測テーブルMTB上を順次移動する。なお、上記の移動の間中、ウエハテーブルWTB、計測テーブルMTBは相互に接触する位置関係を保っている。図8(A)には、上記の移動の途中に水がウエハステージWST、計測ステージMST上に同時に存在するときの状態、すなわちウエハステージWST上から計測ステージMST上に水が渡される直前の状態が示されている。
図8(A)の状態から、更にウエハステージWST,計測ステージMSTが+Y方向に同時に所定距離駆動されると、図8(B)に示されるように、計測ステージMSTと先端レンズ91との間に水が保持された状態となる。これに先立って、主制御装置50では、X軸干渉計96からの干渉計ビームが計測テーブルMTB上の移動鏡117Xに照射されるようになったいずれかの時点でX軸干渉計96のリセットを実行している。また、図8(B)の状態では、主制御装置50は、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のX位置を、不図示のエンコーダの計測値に基づいて管理している。
次いで、主制御装置50は、ウエハステージWSTの位置を干渉計68、エンコーダの計測値に基づいて管理しつつ、リニアモータ79,82,83を制御して、所定のウエハ交換位置にウエハステージWSTを移動させるとともに次のロットの最初のウエハへの交換を行い、これと並行して、計測ステージMSTを用いた所定の計測を必要に応じて実行する。この計測としては、例えばレチクルステージRST上のレチクル交換後に行われる、アライメント系ALGのベースライン計測が一例として挙げられる。具体的には、主制御装置50では、計測テーブルMTB上の基準マーク板FM2上に形成された一対の第1基準マーク、例えば第1基準マークRM11,RM12と対応するレチクル上のレチクルアライメントマークとを前述のレチクルアライメント系RAa、RAbを用いて同時に検出して一対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークの位置関係を検出する。これと同時に、主制御装置50では、基準マーク板FM2上の前記第1基準マーク(RM11,RM12)と組を成す第2基準マーク、この場合第2基準マークWM1をアライメント系ALGで検出することで、アライメント系ALGの検出中心とその第2基準マークとの位置関係を検出する。そして、主制御装置50は、上記一対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークの位置関係とアライメント系ALGの検出中心と第2基準マークとの位置関係と、既知の一対の第1基準マークと第2基準マークとの位置関係とに基づいて、投影光学系PLによるレチクルパターンの投影中心とアライメント系ALGの検出中心との距離(以下、便宜上「第1の距離」と呼ぶ)を求める。なお、このときの状態が、図9に示されている。
次に、主制御装置50は、レチクルステージRST、計測テーブルMTBをY軸方向にステップ移動し、上記と同様に、計測テーブルMTB上の基準マーク板FM2上に形成された別の一対の第1基準マーク、例えば第1基準マークRM21,RM22と対応するレチクル上のレチクルアライメントマークとを前述のレチクルアライメント系RAa、RAbを用いて同時に検出すると同時に、前記第1基準マーク(RM21,RM22)と組を成す第2基準マーク(WM2)をアライメント系ALGで検出する。そして、主制御装置50は、上記一対の第1基準マーク(RM21,RM22)と対応するレチクルアライメントマークの位置関係とアライメント系ALGの検出中心と第2基準マーク(WM2)との位置関係と、一対の第1基準マークと第2基準マークとの既知の位置関係とに基づいて、投影光学系PLによるレチクルパターンの投影中心とアライメント系ALGの検出中心との距離(以下、「第2の距離」と呼ぶ)を求める。
主制御装置50は、さらに、残りの第1基準マークと第2基準マークとを、上記と同様にして検出して、投影光学系PLによるレチクルパターンの投影中心とアライメント系ALGの検出中心との距離(第3の距離)を求めても良い。
そして、主制御装置50では、上記の第1、第2、第3の距離のうちの少なくとも2つの平均値をアライメント系ALGのベースライン(計測値)とする。また、主制御装置50では、上記の各位置関係に基づいてレチクル干渉計53の測長軸によって規定されるレチクルステージ座標系と干渉計システム118の干渉計68,96の測長軸によって規定されるウエハステージ座標系との関係を求める。
本実施形態では、上述のレチクルアライメント系RAa,RAbを用いたマークの検出は、投影光学系PL及び水Lqを介して行われる。
そして、上述した両ステージWST、MST上における作業が終了した段階で、主制御装置50は、計測ステージMSTとウエハステージWSTとを、接触させ、その状態を維持しつつ、XY面内で駆動し、ウエハステージWSTを投影ユニット直下に戻す。この移動中も、主制御装置50では、X軸干渉計96からの干渉計ビームがウエハテーブルWTB上の移動鏡67Xに照射されるようになったいずれかの時点でX軸干渉計96のリセットを実行している。そして、ウエハステージWSTに保持された交換後のウエハに対してウエハアライメント、すなわちアライメント系ALGによる交換後のウエハ上のアライメントマークの検出を行い、ウエハ上の複数のショット領域の位置座標を算出する。なお、前述のように、計測ステージMSTとウエハステージWSTとを非接触の状態にしても良い。
その後、主制御装置50では、先程とは逆にウエハステージWSTと計測ステージMSTのY軸方向の位置関係を保ちつつ、両ステージWST、MSTを−Y方向に同時に駆動して、ウエハステージWST(ウエハ)を投影光学系PLの下方に移動させた後、計測ステージMSTを所定の位置に退避させる。
次いで、主制御装置50では、前述の一対のレチクルアライメント検出系RAa,RAbによって基準マーク板FM1上の一対の第1基準マークを同時に検出可能な位置にウエハステージWSTを移動し、基準マーク板FM1上の一対の第1基準マークと対応するレチクル上の一対のレチクルアライメントマークとをレチクルアライメント系RAa、RAbを用いて同時に検出して一対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークの位置関係(すなわちレチクルRとウエハステージWST(ウエハW)との位置関係)を検出する。
なお、本実施形態においては、ウエハ交換後に、基準マーク板FM1上の第1基準マークと対応するレチクル上のレチクルアライメントマークとをレチクルアライメント系RAa、RAbを用いて検出しているが、これを省略してもよい。
その後、主制御装置50では、上記の位置関係と先に計測したベースラインとウエハアライメントの結果と干渉計68,96の計測値とに基づいて、新たなウエハに対して、前述と同様のステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を実行し、ウエハ上の複数のショット領域にレチクルパターンを順次転写する。
なお、上記の説明では、計測動作として、ベースライン計測を行う場合について説明したが、これに限らず、ウエハステージWSTで各ウエハの交換を行っている間に、計測ステージMSTの計測器群43の計測器を用いて、照度計測、照度むら計測、空間像計測、波面収差計測の少なくとも一つを行い、その計測結果をその後に行われるウエハの露光に反映させることとしても良い。具体的には、例えば、計測結果に基づいて前述した結像特性補正コントローラ181により投影光学系PLの調整を行うこととすることができる。
ところで、上述したように、前記各計測器を用いた計測は、計測テーブルMTBの各計測器の計測部材(光学部材126、パターン板103、スリット板105、波面収差計測用パターン板107など)上に、水(液体)Lqが満たされた状態で行われるため、各計測部材の表面(上面)には撥液膜としての撥水膜WRFが形成されている。しかしながら、前述の如く、この撥水膜WRFは紫外線に弱く、長時間紫外線が照射されると劣化し、その光透過率が低下する。この撥水膜WRFの光透過率の低下現象は、各種計測の中でも特に投影光学系PLの像面上で照明光ILの光量そのものを計測する照度モニタ122や、照度むら計測器104の計測値に大きな影響を与える。これら照度モニタ122、照度むら計測器104は、例えば投影光学系PLの結像特性の照射変動や、透過率変動などの予測演算を行う際などに、その予測演算に用いられるモデル関数を決定するための初期条件の設定のためのレチクルや投影光学系などの透過率計測を行うときなどに用いられる。あるいは、照度モニタ122、照度むら計測器104の計測結果は、ウエハWに対する積算露光量(ドーズ量)を制御するために用いられる。
本実施形態の露光装置10では、照度モニタ122の計測値に関して、撥水膜WRFの光透過率低下の影響を極力抑制するような照度モニタ122の計測値(出力)の較正方法が採用されている。以下、この方法について説明する。図10には、照度モニタ122の計測値(出力)の較正に関連する、主制御装置50内のCPUの処理アルゴリズムに対応するフローチャートが示されている。
この図10のフローチャートで示される処理がスタートするのは、上位装置又はオペレータからの指示、あるいは所定のプログラムに従う処理により投影光学系PLの像面での照明光ILの照度(平均照度)計測の必要性が生じたときである。
前提条件として、レチクルステージRST上からレチクルがアンロードされている(すなわちレチクルステージRSTにはレチクルが搭載されていない)ものとする。
まず、ステップ302において、投影光学系PLの直下に照度モニタ122が位置するように計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動する。勿論、このとき、投影光学系PLの下方にウエハステージWSTが位置している場合には、そのウエハステージWSTを投影光学系PLの下方から退避させた後に上記の計測ステージMST(計測テーブルMTB)の移動が行われることは言うまでもない。なお、本実施形態において、「投影光学系PLの直下の位置」とは、前述した固定ブラインドによって規定される照明領域IARの像面上への投影領域(像面上の照明光ILの照射領域、すなわち露光領域IA)の中心(投影光学系PLの光軸にほぼ一致)が照度モニタ122の受光面の中心にほぼ一致する位置を指す。
なお、投影光学系PLの像面側(先端レンズ91の直下)に水(液体)Lqが保持されたまま、計測ステージMST上の照度モニタ122が投影光学系PLの直下に移動するので、投影光学系PLの先端レンズ91と照度モニタ122の上面との間は液体Lqで満たされている。
次のステップ306で、照度モニタ122により投影光学系PLの像面照度の計測を行い、計測値Piを取得する。具体的には、光源16に予め定めた所定パルス数のテスト発光を行わせると共に、光源16で発光され照明光学系12を介してレチクルを介することなく投影光学系PL、水Lq及び撥水膜WRFを通過した照明光IL(第1の検出光)を照射量モニタ122の第1センサ128でパルス毎に受光し、そのパルス毎の第1センサ128(すなわち照射量モニタ122)の出力(検出信号)を取り込む。この照射量モニタ122の出力(検出信号)の取り込みが行われる上記のテスト発光は、インテグレータセンサ46の出力DS(digit/pulse)(又は光源16内部のエネルギモニタの出力)のパルス毎の平均値が所望の値になるように光源16をフィードバック制御しつつ行われる。そして、得られた照射量モニタ122の出力の積算値の所定パルス数の平均値を、像面照度の計測値Piとして取得する。ここで、iは、投影光学系PLの像面の照度(平均照度)の初期状態(照射量モニタ22の使用開始時)から第i回目の計測値であることを示す。なお、計測値Piの取得後、先端レンズ91の直下の水は回収される。
次のステップ308では、上記ステップ306の処理が第1回目の照度計測であるか否かを判断する。そして、第1回目(照射量モニタ22の使用開始時点(撥水膜WRFが全く劣化していない時点)から第1回目)である場合には、このステップ308における判断が肯定され、ステップ310に移行する。このステップ310では、投影光学系PLの直下に基準照度モニタ122’が位置するように計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動する。
次のステップ312で、基準照度モニタ122’により投影光学系PLの像面照度の計測を行い、計測値Prefiを取得する。具体的には、上記ステップ306と同様にインテグレータセンサ46の出力DS(digit/pulse)(又は光源16内部のエネルギモニタ)の平均値が所望の値(ステップ306と同じ値)になるように光源16をフィードバック制御しつつ、光源16に所定パルス数のテスト発光を行わせると共に、各パルス光毎にレチクルを介することなく投影光学系PLを通過した照明光ILを受光した基準照度モニタ122’の出力(検出信号)を取り込む。そして、所定パルス数の照度モニタ122’の出力の平均値を、計測値Prefiとして取得する。
次のステップ314では、上記ステップ306で取得した計測値Pi=P1と、上記ステップ312で取得した計測値Prefi=Pref1との比(P1/Pref1)を計算して、内部メモリ内の初期値格納領域に格納した後、ステップ316に進んで撥水膜の光透過率の減少を補償するための補正パラメータγ(較正情報)の初期値としてγ=1を設定(内部メモリのγ格納領域に格納)した後、ステップ332に移行する。ここで、γは、次式(1)で定義される補正パラメータである。
従って、第1回目の計測時には、i=1であるから、式(1)の右辺=1となるので、ステップ316では、γ=1としたのである。
この一方、上記ステップ306の処理が第2回目以降の照度計測である場合には、上記ステップ308における判断が否定され、ステップ318に移行する。このステップ318では、装置のログデータを参照し、前回のγの更新時(又は設定時:以下、適宜初期時刻t0と呼ぶ)からの照度モニタ122に対する照射パルス数nが、所定パルス数Nに達したか否かを判断し、この判断が肯定された場合には、ステップ320に移行する。なお、ステップ318では、照射パルス数nが所定パルス数Nに達したか否かを判断することで、実質的に照度モニタ122に対する照明光ILの積算照射量(積算照射エネルギ量)が所定量に達したか否かを判断しているものである。従って、照射パルス数nではなく、前回のγの更新時からの照度モニタ122に対する照明光ILの積算照射量が所定値に達したか否かを判断しても良い。
ステップ320では、前述のステップ310と同様に投影光学系PLの直下に基準照度モニタ122’が位置する位置に計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動した後、次のステップ322に進んで、前述のステップ312と同様にして基準照度モニタ122’により投影光学系PLの像面照度の計測を行い、計測値Prefiを取得する。この場合、光源16で発光された照明光ILは撥液膜及び水Lqを介さずに(投影光学系PLを介して)基準照度モニタ122’で受光される。
次のステップ324では、上記ステップ306で取得した計測値Piと、上記ステップ322で取得した計測値Prefiとの比(Pi/Prefi)を計算して、内部メモリ内の所定格納領域に格納(この領域のデータは、上書きされる)した後、ステップ326に進む。このステップ326では、前述の式(1)で定義される補正値γを更新する。このγの更新は、前述の初期値格納領域に格納されているデータと、その時点で所定格納領域に格納されているデータをそれぞれ読み出した後に、これらを用いて式(1)の演算によりγを算出し、この算出結果を、γ格納領域に上書きすることで実現される。
次のステップ328では、パラメータt、p、nをそれぞれ0に初期化した後、ステップ332に進む。ここで、パラメータt、pは、後述するパラメータδ(較正情報)の推定演算に用いられる、次式(2)で表されるモデル式に含まれるパラメータであり、tは初期時刻t0からの経過時間[sec]を示し、pは初期時刻t0からの照度モニタ122の積算照射パワー(すなわちt0以降に照度モニタ122に対して照射された総エネルギ)[J]を示す。また、nは前述の照射パルス数である。
上式(2)において、Ttは、時間依存の減衰係数[sec]、Tpはエネルギ依存の減衰係数[sec]である。
ここで、上記式(2)を採用する理由について説明する。
撥水膜の光透過率変化を示すモデル式(伝達関数)として、次式(3)で示される関数を用いることができる。
ここで、ηは現在の撥水膜の光透過率であり、ηt0は初期時刻(t0)の撥水膜の光透過率であり、t、Tt、p、Tpは、前述した通りである。なお、時間依存の減衰係数Tt及びエネルギ依存の減衰係数Tpは、シミュレーション結果などに基づいて、予め定められる。
上式(3)から明らかなように、撥水膜の光透過率は経過時間tの増加に伴って低下する。従って、撥水膜の光透過率の経時的な低下に起因する照度モニタ122による像面照度の計測値の低下を補償するためには、経過時間の増加に伴って増加するパラメータであって、上記式(3)の関数に関連するパラメータを用いなければならない。
そこで、式(3)を変形して初期時刻(t0)の撥水膜の光透過率と現在の撥水膜の光透過率との比を表す関数を求めると、次式(4)のようになる。
式(4)の関数で表されるパラメータは、経過時間の増加に伴って増加するパラメータであって、上記式(3)の関数に関連するパラメータである。従って、基準照度モニタ122’による計測が行われる度に更新される前述のパラメータγを時刻t0における初期値とし、このγと上式(4)との積に相当する前述の式(2)のモデル関数を照度モニタ122の出力(計測値)の較正パラメータδの推定演算用に用いることとしたものである。
ステップ332では、その時点でγ格納領域に格納されているγを較正パラメータδの格納領域にそのままコピーして上書きすることで、δ=γの設定を行った後、ステップ334に移行する。
一方、上記ステップ318における判断が否定された場合には、ステップ330に移行して、前述の式(2)で定義される較正パラメータδを更新する。このδの更新は、前述のγ格納領域に格納されているデータを読み出した後に、式(2)の演算によりδを算出し、この算出結果を、δ格納領域に上書きすることで実現される。ここで、式(2)の演算の祭に必要となる初期時刻t0からの照度モニタ122の積算照射パワーpは、以下のようにして求められる。
すなわち、照度モニタ122を用いて投影光学系のPLの像面での照度(照射パワー)計測を行う度に、得られた照度モニタ122の出力から単位時間当たりの照射パワー[W](又は1パルス当たりの照射パワー[J/pulse])が算出され、対応する照射量計測が行われる時間(又は対応する照射量計測の際のパルス数)とともに、照度モニタ122に対する(すなわち、照度モニタ122の撥水膜WRFに対する)光の照射履歴データとして、メモリ51内に格納されている。
従って、各回の計測について、単位時間(又は1パルス)当たりの照射パワーと、対応する照射量計測が行われる時間(又は対応する照射量計測の祭のパルス数)を読み出し、両者を掛けることで、その1回の計測中の照射エネルギを算出する。このような算出を、初期時刻t0以降に行われた計測について行い、得られた各回の計測中の照射エネルギの総合計を算出することで、初期時刻t0以降の総エネルギを算出する。
上述のようにしてステップ330において、較正パラメータδを更新した後、前述のステップ334に移行する。
ステップ334では、ステップ306で取得した計測値Piに、較正パラメータδを掛けて、撥水膜の光透過率変動の影響を補償したP=δ×Piを、像面照度の計測結果として出力、例えばディスプレイDISに表示するとともに、内部メモリ又はメモリ51に記憶する。
上記ステップ334の処理を終了後、本ルーチンの処理を終了して、通常の処理に移行する。なお、光学部材126上の撥水膜WRFの光透過率変化(低下)が小さい場合には、照度モニタ122を用いた計測毎に図10のフローチャートの処理アルゴリズムを実行しなくても良い。この場合、次に上記のフローチャートの処理アルゴリズムが実行されるまでの間に、照度モニタ122を用いた何らかの計測を行う場合には、その計測によって得られた照度モニタ122の計測値Piに、その時点でδ格納領域に格納されている較正パラメータδを乗じた値を、照度モニタ122の計測値の代わりに用いてウエハWを露光するための各種の処理を行うことで、照度モニタ122表面の撥水膜WRFの光透過率変動の影響を殆ど受けることがない処理が可能となる。
なお、上述の実施形態では、補正値γの更新のための基準データの取得に用いられる基準センサ(第2センサ)として計測テーブルMTB上の基準照度モニタ122’を用いる場合について説明したが、これに限らず、撥液膜を介さずに照明光ILを受光可能なインテグレータセンサ46を用いても良い。この場合には、前述した図10のフローチャート中のステップ310、312、320及び322の処理を省略したフローチャートに対応する処理アルゴリズムを採用することができる。その理由は、インテグレータセンサ46を第2センサとして用いる場合、前述のステップ306で、照度モニタ122により投影光学系PLの像面上で光源16から発射され照明光学系12及び投影光学系PLを通過した光が第1の検出光として受光されて照度計測がなされるときに、これと同時に、インテグレータセンサ46により、光源16から発射された光のうち照明光学系12内部の光路上で分岐された光(照明光IL)が第2の検出光として受光される。すなわち、ステップ306で、必然的に照度モニタ122(第1センサ128)とインテグレータセンサ46とによる同時計測が行われるからである。
あるいは、光源16から発射され照明光学系12を介して投影光学系PLに向かう光(照明光IL)の光路に垂直な面内で移動可能なレチクルステージRST上に基準センサ(第2センサ)を設け、この基準センサにより前記光路上で、前記照明光ILの少なくとも一部を第2の検出光として受光することとしても良い。このレチクルステージRST上の基準センサを用いる場合、レチクルステージRST上にレチクルRをロードしたままの状態であっても、レチクルステージRSTを移動するだけで照明光ILをその基準センサにより第2の検出光の受光が可能となるので、スループット悪化のデメリットを防ぐ効果がある。
なお、照度むら計測器104の計測値(出力)の較正は、上述した照度モニタ122の場合と同様にして実現できるので、詳細説明は省略する。この場合、補正値γの更新のための基準データの取得に用いられる基準センサ(第2センサ)を計測テーブルMTB上に設ける場合、その基準センサとしては、パターン板103の最上部に撥水膜が形成されていない点を除き、前述の照明むら計測器104と同様の較正用のセンサを用いることができる。
また、本実施形態の露光装置10などの露光装置では、投影光学系PLの照明光吸収による結像特性変化の予測などを行う際に、投影光学系PLに入射する照明光ILの照射量とともにウエハ反射率を知ることが前提となる。そのウエハ反射率計測の際に、計測テーブルMTB上の計測用反射板102が使用される。この計測用反射板102を用いた計測は、必要に応じて、繰り返し行われるので、計測用反射板102表面の撥水膜が、照明光ILの照射により経時的に劣化し、光透過率が劣化する。しかるに、ウエハ反射率計測方法では、計測用反射板102の高反射面領域102H,低反射面領域102Lそれぞれの反射率は既知であり、変化しないことを前提として、ウエハ反射率計測が行われている。従って、計測用反射板102を用いて、上記公報(対応米国特許)に開示される方法をそのまま採用して、ウエハ反射率計測を行った場合、計測用反射板102表面の撥水膜の光透過率低下の影響を受け、ウエハ反射率の計測結果に誤差が生じ、ひいては投影光学系PLの照明光吸収による結像特性変化の予測結果に誤差が生じかねない。かかる点に鑑み、本実施形態では、ウエハステージWST上のウエハに対する反射率の計測に先立って、その前段階として、計測用反射板102の高反射面領域102H、低反射面領域102Lの反射率に関連する情報の較正を行っている。以下、この較正方法について説明する。図11には、反射率に関連する情報の較正に関連する、主制御装置50内のCPUの処理アルゴリズムに対応するフローチャートが示されている。
この図11のフローチャートで示される処理がスタートするのは、上位装置又はオペレータからの指示、あるいは所定のプログラムに従う処理により、ウエハ反射率の計測が必要になったときである。
前提条件として、レチクルステージRST上からレチクルがアンロードされている(すなわち照明光ILの光路上にレチクルが無い)ものとする。
まず、ステップ402において、第1回目の計測であるか否かを判断する。そして、第1回目(計測用反射板102の使用開始時点(計測用反射板102表面の撥水膜が全く劣化していない時点)から第1回目)の計測である場合には、このステップ402における判断が肯定され、ステップ406に移行する。
一方、上記ステップ402の判断が否定された場合には、ステップ404に進み、装置のログデータを参照し、補正パラメータγ1、γ2(これについては後述する)の前回の更新時(又は設定時)からの計測用反射板102に対する照射パルス数nが、所定パルス数Nに達したか否かを判断し、この判断が肯定された場合には、ステップ406に移行する。
ステップ406では、投影光学系PLの直下に基準反射板202が位置する位置に計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動する。勿論、このとき、投影光学系PLの下方にウエハステージWSTが位置している場合には、そのウエハステージWSTを投影光学系PLの下方から退避させた後に上記の計測ステージMST(計測テーブルMTB)の移動が行われることは言うまでもない。
次のステップ408では、反射量モニタ47の計測値Rrefi(基準データ)を取得する。
具体的には、光源16に予め定めた所定パルス数のテスト発光を行わせ、照明光学系12からの照明光ILをレチクルを介することなく投影光学系PLを介して基準反射板202に照射し、基準反射板202からの反射光を投影光学系PLを介して反射量モニタ47でパルス毎に受光し、そのパルス毎の反射量モニタ47の出力(検出信号)を取り込む。この反射量モニタ47の出力(検出信号)の取り込みが行われる上記のテスト発光は、インテグレータセンサ46の出力DS(digit/pulse)(又は光源16内部のエネルギモニタの出力)のパルス毎の平均値が所望の値になるように光源16をフィードバック制御しつつ行われる。そして、得られた反射量モニタ47の出力の積算値の所定パルス数の平均値を、計測値Rrefiとして取得する。ここで、iは、初期状態から第i回目の計測値であることを示す。
次のステップ410では、投影光学系PLの直下に計測用反射板102の高反射面領域102Hが位置する位置に計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動する。
次のステップ414では、反射量モニタ47の計測値RHiを取得する。具体的には、計測ステージMST上の計測用反射板102の高反射面領域102Hを投影光学系PLの直下に移動させるとともに、前述の液浸装置132を用いて、投影光学系PLの像面側(先端レンズ91の直下)に水(液体)Lqを供給し、投影光学系PLの先端レンズ91と計測用反射板102の高反射面領域102Hとの間に液体Lqを満たす。そして、光源16に上記ステップ408と同様のテスト発光を行わせ、照明光学系12からの照明光ILをレチクルを介することなく投影光学系PL及び水Lqを介してその表面に撥液膜が形成された計測用反射板102の高反射面領域102Hに照射する。そして、計測用反射板102からの反射光を水Lq及び投影光学系PLを介して反射量モニタ47でパルス毎に受光し、そのパルス毎の反射量モニタ47の出力(検出信号)の積算値の所定パルス数の平均値を、計測データとしての計測値RHiとして取得する。
次のステップ416では、投影光学系PLの直下に計測用反射板102の低反射面領域102Lが位置するように計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動する。この移動は、投影光学系PLの先端レンズ91と計測テーブルMTBとの間に水Lqを保持した状態で行われる。
次のステップ418では、前述のステップ414と同様のテスト発光を行って、照明光学系12からの照明光ILをレチクルを介することなく投影光学系PL及び水Lqを介してその表面に撥液膜が形成された計測用反射板102の低反射面領域102Lに照射する。そして、計測用反射板102からの反射光を水Lq及び投影光学系PLを介して反射量モニタ47でパルス毎に受光し、そのパルス毎の反射量モニタ47の出力(検出信号)を取り込み、その出力の積算値の所定パルス数の平均値を、計測データとしての計測値RLiとして取得する。
次のステップ422では、上記ステップ414、418でそれぞれ取得した計測値RHi、RLiのそれぞれと、上記ステップ408で取得した計測値Rrefiとの比(RHi/Rrefi),(RLi/Rrefi)をそれぞれ計算して、内部メモリ内の所定格納領域にそれぞれ格納した後、ステップ424に進む。
ステップ424では、再度、前述の402と同様に、第1回目の計測であるか否かを判断し、この判断が肯定された場合には、ステップ425に進んで、上記ステップ422で算出された比(RH1/Rref1)、及び比(RL1/Rref1)を、内部メモリ内の初期値格納領域に格納した後、ステップ426に進む。
ステップ426では、撥水膜の光透過率の減少を補償するための補正パラメータγ1、γ2の初期値として、それぞれに1を設定(内部メモリのγ格納領域に格納)した後、本ルーチンの処理を終了する。ここで、撥水膜の補正パラメータγ1、γ2は、それぞれ次式(5)、(6)で定義される補正パラメータである。
従って、第1回目の計測時には、i=1であるから、式(5)、式(6)それぞれの右辺=1となるので、ステップ426では、γ1=1、γ2=1としたのである。
一方、第2回目以降の計測である場合には、上記ステップ424における判断が否定され、ステップ428に移行して、上述の式(5)、式(6)で定義される補正値γ1、γ2を更新する。このγ1、γ2の更新は、前述の初期値格納領域に格納されているデータと、その時点で所定格納領域に格納されているデータをそれぞれ読み出した後に、これらを用いて式(5)、式(6)の演算によりγ1、γ2を算出し、この算出結果を、γ格納領域に格納されているγ1、γ2に上書きすることで実現される。
この一方、上記ステップ404における判断が否定された場合には、直ちに本ルーチンの処理を終了する。
その後、例えば通常のウエハ反射率の計測処理に移行する。このウエハ反射率の計測方法は、例えば特開平11−258498号公報、特開昭62−183522号公報及び対応する米国特許第4,780,747号や特開平6−291016号公報及び対応する米国特許第5,721,608号などに詳細に開示されている。これらの公報などに開示される方法と同様の方法を、本実施形態の露光装置10で実行する場合には、以下のようにすれば良い。
まず、主制御装置50では、実際の露光時と同一に露光条件(レチクルR、レチクルブラインド、照明条件など)を設定する。
次に、主制御装置50は、投影光学系PLの直下に計測用反射板102の高反射面領域102Hが位置する位置に計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動する。このとき投影光学系PLの先端レンズ91の直下、すなわち計測用反射板102の上面と先端レンズ91との間は水で満たされている。
次に、主制御装置50では光源16を発光(レーザ発振)させてレチクルステージRSTを実際の露光と同じ条件で移動しながら(計測用反射板102の面積が十分に広い場合には、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを実際の露光と同じ条件で同期移動しながら)反射量モニタ47の出力RH0及びインテグレータセンサ46の出力DSH0を所定のサンプリング間隔で同時に取り込むことにより、走査位置(同期移動位置)に応じた反射量モニタ47の出力RH0、及びこれに対応するインテグレータセンサ46の出力DSH0をメモリ51に記憶する。これにより、反射量モニタ47の出力RH0、及びインテグレータセンサ46の出力DSH0が、レチクルRの走査位置に応じた関数として、メモリ51内に記憶される。次に、主制御装置50では、投影光学系PLの直下に計測用反射板102の低反射面領域102Lが位置する位置に計測ステージMST(計測テーブルMTB)を移動し、上記と同様にして、反射量モニタ47の出力RL0、及びインテグレータセンサ46の出力DSL0を、レチクルRの走査位置に応じた関数としてメモリ51内に記憶する。
このような準備作業を、主制御装置50は露光に先立って実行しておく。
そして、実際の露光時にはレチクルRの走査位置に応じて記憶しておいた反射量モニタ47の出力とインテグレータセンサ46の出力、及び露光時の反射量モニタ47の出力R1とインテグレータセンサ46の出力DS1に基づいて、ウエハ反射率RWを、次式(7)に基づいて算出する。
上式(7)中に、前述のステップ428で更新されたγ1、γ2が含まれており、これらγ1、γ2によってレチクルRの走査位置に応じた関数としてメモリ51内に記憶されている反射量モニタ47の出力RH0、RL0が較正されている。従って、上式(7)で算出されるウエハ反射率RWは、計測用反射板102表面の撥水膜の光透過率低下の影響を実質的に受けていない高精度な値となる。従って、このウエハ反射率RWを、例えば上記特開平11−258498号公報などに開示される投影光学系PLの照明光吸収による結像性能変化の推定演算に用いることで、前述の計測用反射板102の撥水膜の光透過率の経時的な変動の影響を殆ど受けることがない高精度な結像性能変化の推定演算が可能となる。従って、この推定演算結果を考慮して、投影光学系PLのフォーカス以外の結像性能を補正するとともに、フォーカスの変化分を考慮して走査露光中のウエハWのZ位置を制御することで、レチクルパターンのウエハW上への高精度な転写が可能になる。
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、主制御装置50、より具体的にはCPUとソフトウェアプログラムとによって、計測処理装置、演算装置、補償装置、補正装置それぞれの少なくとも一部が実現されている。すなわち、CPUが行う、図10のステップ302、304、306、320及び322の処理によって計測処理装置の少なくとも一部が実現され、CPUが行うステップ324及び326の処理によって演算装置の少なくとも一部が実現されている。また、CPUが行うステップ332及び334の処理によって補償装置の少なくとも一部が実現され、CPUが行うステップ318及び330の処理によって補正装置の少なくとも一部が実現されている。また、主制御装置50によって、センサの出力と前記撥液膜の光透過率(ビーム透過率)の変化に関連する情報とに基づいて、前記物体に対する露光動作を制御する制御装置の少なくとも一部が構成されている。
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置10で行われる第1センサ128の出力を較正する較正方法によると、撥液膜を介することなく基準照度モニタ(第2センサ)122’により第2の検出光を受光し、その受光量に対応する基準照度モニタ122’の出力(Prefi)を取得する(ステップ322)。すなわち、撥液膜の光透過率変化の影響を受けない基準照度モニタ122’の出力(Prefi)を取得する。また、第1の検出光を撥液膜を介して第1センサ128で受光し、その受光量に対応する第1センサの出力(Pi)を取得する(ステップ306)。この場合、第1センサ128の出力(Pi)は、撥液膜の光透過率の経時変化の影響を直接受ける。
そして、第1センサ128の出力と基準照度モニタ122’の出力とに基づいて、第1センサ128の出力を較正するための較正情報δ(又はγ)を取得する(ステップ324〜332)。この場合、予め求めた第1センサ128の出力と基準照度モニタ122’の出力との関係(P1/Pref1)と、第1センサ128の出力と基準照度モニタ122’の出力とに基づいて、第1センサ128の出力を較正するための較正情報を取得する。この較正情報を用いて、第1センサ128の出力を較正すると、その較正後の第1センサ128の出力は、撥液膜の光透過率変化の影響を受けない正確な光情報(像面照度)の計測値となる。
また、本実施形態の露光装置10で実行される露光法方によると、上述の較正方法を用いて較正された第1センサ128の出力、すなわち撥液膜の光透過率変化の影響を受けない正確な像面照度の計測値を考慮して、ウエハWに対する露光が行われるので、撥液膜の光透過率の経時的変化の影響を受けることがないウエハWに対する高精度な液浸露光を長期に渡って行うことが可能となる。
また、本実施形態の露光装置10によると、主制御装置50により、投影光学系PLの像面側に配置された部材(例えば光学部材126)表面の撥液膜を介して検出光としての照明光ILを受光するセンサ(例えば第1センサ128)の出力と撥液膜の光透過率の変化に関連する情報とに基づいて、ウエハWに対する露光動作が制御されるので、撥液膜の光透過率変化の影響を受けることがない高精度なウエハの露光が長期にわたって可能となる。
また、本実施形態の露光装置10によると、液浸露光により、高解像度かつ空気中と比べて大焦点深度の露光を行うことで、レチクルRのパターンを精度良くウエハ上に転写することができ、例えばデバイスルールとして70〜100nm程度の微細パターンの転写を実現することができる。
なお、上記実施形態では、照度モニタ122に対する照明光IL(エネルギビーム)の照射パルス数が所定パルス数に達する毎に、基準照度モニタ122’で撥水膜を介することなく、投影光学系PLの像面の照度計測を実行し、この計測結果を用いて照度モニタ122の計測値(出力)の撥水膜の光透過率減少分補正パラメータγを更新する、絶対値キャリブレーションと、そのパラメータγの更新が行われるまでの間は、前述の式(2)のモデル関数(伝達関数)を用いた推定演算により、そのパラメータγの更新する推定演算キャリブレーションとを、併用する場合を説明した。しかし、これに限らず、例えば、絶対値キャリブレーションのみ、あるいはモデル関数を用いた推定演算のみで、投影光学系PLの像面側(光学系のビーム射出側)に配置される部材表面に形成された撥液膜(例えば撥水膜)の光透過率(ビーム透過率)の変動を予測することとしても良い。上記部材としては、投影光学系PLの像面側(光学系のビーム射出側)に配置される計測部材、例えば、所定の光透過部を有する計測部材(光透過部としてピンホール、スリット、あるいは矩形開口などが形成された前述のパターン板やスリット板など)、基準マークを有する計測部材(前述の基準マーク板など)、反射面を有する計測部材(計測用反射板など)などが挙げられる。
後者のモデル関数を用いた推定演算のみを行う場合、撥液膜に照射される光(エネルギビーム)の照射履歴に関連する情報を入力情報とする所定関数を、モデル関数として用いることができる。このモデル関数としては、例えば撥液膜に照射される光(エネルギビーム)の照射履歴に関連する情報として撥液膜に照射される光(エネルギビーム)の積算量を含む、関数、一例として前述した式(3)のモデル関数を用いることができる。その際、初期時刻t0を最初は0にして撥液膜の光透過率(ビーム透過率)の変動を予測する予測計算を開始する。
上の説明及び前述した実施形態では、照射された総エネルギによって光透過率(ビーム透過率)減衰を求めるものとしたが、上記実施形態のように光源としてパルス光源を用いる場合には、総エネルギに代えて発光パルス数の積算値を採用しても良い。この場合、前述の式(3)中のパラメータpは、t0以降に照射された発光パルス数積算値とし、係数Tpは発光パルス依存の減衰係数[sec]とすれば良い。このようにすると、レーザの発光情報だけから光透過率(ビーム透過率)変化を求めることが可能となる。
撥液膜の光透過率(ビーム透過率)変化は不可逆な変化であり、撥液膜の物理的な性質が破壊されて起こる現象である。一般的にこういった現象では、ある閾値以下では何の変化も起きない(あるいは変化が小さい)のに、閾値を越えた所で変化が激しくなることが考えられる。このようなケースのために、上式(2)、(3)中の照射エネルギ[J]を計算する際に、所定のパワー[W]値以下のパルスを0とみなす方法を採用しても良い。
また、式(2)又は式(3)のモデル関数を用いる場合、照明条件毎に、例えば、前述の回折光学素子17a,17bの選択設定と照明系開口絞り板24の選択設定の組み合わせ毎に、照射エネルギに依存する減衰係数Tpを予め求めておいて、照明条件に応じてモデル関数中の減衰係数Tpを変更することとしても良い。
また、照明条件の違いによって撥水膜に入射する光線の角度が異なり、角度が異なることで撥水膜に与えるダメージに違いが生じ、結果的に撥水膜の光透過率変化の様子が異なる場合が考えられる。従って、このような角度依存性を照明条件に置き換えて計算することで、より高精度に撥水膜の光透過率変化を算出することができる。
また、前述の計測用反射板からの反射光量の変化を推定演算により求める場合、撥液膜の光透過率変化の他、クロムの反射率変化を考慮したモデル関数を用いても良い。
また、撥液膜の光透過率変化を推定するモデル関数(伝達関数)の入力は経時変化に関係する物理量なら何でも良く、例えば露光パルス数及び時間の少なくとも1つ、あるいはこれに温度を加えても良い。また、伝達関数は、前述した式(3)のような関数に限らないことは勿論である。伝達関数の形としては、1次遅れ、及びその複合形が一般的であろう。必要精度に応じてより高次の精密な伝達関数を採用しても良い。
また、これまでの説明では、投影光学系PLの像面側に配置される部材表面に形成された撥液膜の光透過率の変動を予測する場合に、モデル関数を用いるものとしたが、モデル関数を用いることなく、撥液膜に照射される光の照射履歴に関連する情報に基づいて撥液膜の光透過率の変動を予測することとしても良い。かかる場合、撥液膜に照射される光の照射履歴に関連する情報を所定のタイミングで取得することで、容易に撥液膜の光透過率の変動を予測することが可能となる。
なお、上記実施形態では、図5に示されるように、露光領域IAに照射され光学部材126を透過して第1センサ128に受光面に向かう照明光IL(図5中に点線矢印で示されている)の一部が遮光膜127によって遮光されている。この点を改善すべく、図12に示されるような照度モニタ222を、前述の照度モニタ122に代えて上記実施形態で採用しても良い。この図12の照度モニタ222は、光学部材126の上面に減光膜が設けられていない代わりに、光学部材126の下面の全面に減光膜129が形成されている点が前述の照度モニタ122と相違するが、その他の点は照度モニタ122と同様に構成されている。この照度モニタ222では、露光領域IAに照射され光学部材126を透過して第1センサ128の受光面に向かう照明光IL(図12中に点線矢印で示されている)の全てを減光膜129で減光後に第1センサ128で受光することができるとともに、ギャップB部分を介して光学部材126に入射した迷光(図12中の太線の実線矢印参照)を減光膜129で減光することができる。迷光は、照明光IAに比べれば格段強度が小さいので、減光膜129を通過後の強度は非常に小さくなる。
なお、照度モニタ122、222のいずれにおいても、光学部材126の下面(裏面)に第1センサ(受光素子)128が一体的に固定されているが、これに限らず、光学部材126の裏面に第1センサを作りこんでおいても良い。
なお、上述の実施形態においては、主に照度モニタ122の上面の撥液(撥水)膜、及び計測用反射板102上面の撥液(撥水)膜について説明したが、計測ステージMST(計測テーブルMTB)にスリット板105を有する空間像計測器やパターン板107を有する波面収差計測器などが、スリット板105やパターン板107の上面の撥液(撥水)膜の光透過率の経時変化の影響を受ける場合には、上述の照度モニタ122と同じように較正を行っても良い。
また、例えば照度モニタ122の光学部材126の上面又は下面の少なくとも一方に形成された減光膜129の減光率がArFエキシマレーザ光などの紫外域のエネルギビームの照射により経時変化する場合がある。この場合も、撥液(撥水)膜の光透過率の経時変化と同様にして較正を実行することができる。
また、レチクルアライメント系RAa,RAbが基準マーク板FM1,FM2に形成されたマークの検出を行うときに、その基準マーク板FM1,FM2の上面に形成された撥液(撥水)膜の光透過率の経時変化の影響を受けて、計測誤差などが生じる場合には、例えば基準マーク板FM1,FM2に照射されたレチクルアライメント系RAa,RAbからの検出光(ArFエキシマレーザ光)の積算照射量などに基づいて、その撥液膜の光透過率の経時変化を推定して、レチクルアライメント系RAa,RAbの出力信号を補正するなどの対策を施しても良い。
また、クロムなどの金属材料膜の反射率が、ArFエキシマレーザ光などの紫外域のエネルギビームの照射により経時変化する場合がある。従って、金属材料(例えばクロム)を使って基準マーク板FM1、FM2上の基準マークが形成されている場合には、撥液膜の光透過率の経時変化だけでなく、その金属材料の反射率の経時変化も考慮して、レチクルアライメント系RAa,RAbの出力信号を補正するなどの対策を施すこともできる。
なお、照度モニタ122などの各種計測器の受光素子の感度が経時変化を起こすことが考えられる場合も上述と同様にして較正を行うと良い。
なお、上記実施形態では、照度モニタ122などの各種計測器が設けられた計測テーブルMTBを有する計測ステージMSTが、ウエハステージWSTとは別に設けられている場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではなく、上記各種計測器がウエハステージWSTに設けられていて勿論良い。かかる場合には、計測ステージは不要である。また、上記実施形態では、ステージ装置がウエハステージを1つ、計測ステージを1つ具備する場合について説明したが、これに限らず露光動作のスループットを向上するために、ウエハを保持するウエハステージを複数設けることとしても良い。また、上述の実施形態においては、照度モニタ122の計測結果を用いて投影光学系PLの結像性能の変化を補償するようにしているが、特開平11−16816号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2002/0061469号明細書に開示されているように、照度モニタ122の計測結果を用いて、ウエハWに対する露光量制御を行うようにしても良い。この場合も、撥液膜(撥水膜)や減光膜の影響を受けないように較正を行うことによって、ウエハWに対して正確な露光量制御を実行可能となる。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応米国特許出願公開明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
また、上述の液浸法を適用した露光装置は、投影光学系PLの終端光学素子の光射出側の光路空間を液体(純水)で満たしてウエハWを露光する構成になっているが、国際公開第2004/019128号に開示されているように、投影光学系PLの終端光学素子の光入射側の光路空間も液体で満たすようにしても良い。
また、上記実施形態では、レベリングテーブル52が6自由度、計測テーブルMTBが3自由度有する構成を採用した場合について説明したが、これに限らず、レベリングテーブル52が3自由度、計測テーブルMTBが3自由度有する構成を採用しても良い。また、レベリングテーブル52を設けずに、計測テーブルMTBが6自由度有する構成を採用することとしても良い。
なお、上記実施形態では、液体として超純水(水)を用いるものとしたが、本発明がこれに限定されないことは勿論である。液体としては、化学的に安定で、照明光ILの透過率が高く安全な液体、例えばフッ素系不活性液体を使用しても良い。このフッ素系不活性液体としては、例えばフロリナート(米国スリーエム社の商品名)が使用できる。このフッ素系不活性液体は冷却効果の点でも優れている。また、液体として、照明光ILに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、また、投影光学系やウエハ表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油等)を使用することもできる。また、F2レーザを光源とする場合は、フォンブリンオイルを選択すれば良い。
また、上記実施形態で、回収された液体を再利用するようにしても良く、この場合は回収された液体から不純物を除去するフィルタを液体回収装置、又は回収管等に設けておくことが望ましい。
なお、上記実施形態では、投影光学系PLの最も像面側の光学素子が先端レンズ91であるものとしたが、その光学素子は、レンズに限られるものではなく、投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整に用いる光学プレート(平行平面板等)であっても良いし、単なるカバーガラスであっても良い。投影光学系PLの最も像面側の光学素子(上記各実施形態では先端レンズ91)は、照明光ILの照射によってレジストから発生する飛散粒子又は液体中の不純物の付着等に起因して液体(上記各実施形態では水)に接触してその表面が汚れることがある。このため、その光学素子は、鏡筒40の最下部に着脱(交換)自在に固定することとし、定期的に交換することとしても良い。
このような場合、液体に接触する光学素子がレンズであると、その交換部品のコストが高く、かつ交換(調整を含む)に要する時間が長くなってしまい、メンテナンスコスト(ランニングコスト)の上昇やスループットの低下を招く。そこで、液体と接触する光学素子を、例えばレンズ91よりも安価な平行平面板とするようにしても良い。
また、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されないことは勿論である。すなわちステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置、さらに、ステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置、又はプロキシミティ方式の露光装置などにも、本発明は適用できる。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスクを用いても良い。
また、国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
なお、上記実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源や、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、投影光学系は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良い。
なお、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した調整方法によりパターンの転写特性が調整される上記実施形態の露光装置で、マスクに形成されたパターンを感光物体上に転写するリソグラフィステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置が用いられるので、高精度な露光を長期に渡って実現することができる。従って、微細パターンが形成された高集積度のマイクロデバイスの生産性を向上することができる。