JP4580996B2 - 標的核酸の検出方法および標的核酸検出用基体 - Google Patents

標的核酸の検出方法および標的核酸検出用基体 Download PDF

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Description

本発明は、標的核酸の検出方法および標的核酸検出用基体に関する。
遺伝子工学の飛躍的進歩の中、様々な核酸の検出方法が考案されてきた(例えば、特許文献1参照)。中でも標的核酸検出用基体(例えば、DNAチップ)による核酸の検出は、多種類の標的核酸を同時に検出することができるため、特に優れている。
標的核酸検出用基体は、様々な分野、例えば医療、法医学、農業、畜産、漁業および林業などの分野において幅広く使用されている。特に、医療分野において、DNAチップは、遺伝子診断の強力な道具であり、例えば、患者個々人のSNPの解析によって患者個々人についての薬の薬理効果および副作用の予測が可能となる。DNAチップによるSNPの解析によって個々人に最適な治療を提供するテーラーメイド医療が一部実現しつつある。
標的核酸検出用基体は、基板上の異なる複数の検出区画にそれぞれ目的とする標的配列と相補的な配列を有する核酸プローブが1種類ずつ固定されている。検出区画上の核酸プローブに核酸試料がハイブリダイゼーションをした場合、このハイブリダイゼーション鎖に由来するシグナルが発生するため、これを検出することにより核酸試料中の標的核酸の有無が明らかになる。
このような標的核酸検出用基体を用いる標的核酸の検出方法には、主に、蛍光による検出と電気化学的な検出がある(例えば、特許文献2参照)。蛍光による検出は、結果を視覚的に認識することができるので、検出結果の判定ミスを防止することができる。一方、電気化学的な検出は、電流値のみによって検査を行うことができるので、装置の小型化、検査費用の低額化、検査時間の短縮化が可能になる。
特開2004−24035号公報 再表2004−011643号公報
医療分野等における標的核酸検出用基体の役割が増すにつれて、今まで以上に同一基体にて多種類の標的核酸の検出が必要となることが予想される。しかしながら、一定面積の基体に配置可能な検出区画の数には限りがあるため、多種類の標的核酸を検出する場合、複数枚の基体を使用しなければならず、検査が煩雑になる恐れがある。特に、電気化学的な検出の場合、必要な電流値を得るためには、ある一定以上の電極面積が必要となるので、一枚の基体に配置可能な検出区画の数は必然的に制限される。
従って、多種類の標的核酸の検出を行なわなければならない場合は、複数枚の基体を使用して検出するか、もしくは基体の面積を増加させて検出区画数を増やすしかなく、検査操作が煩雑になったり、あるいは基体の小型化が阻害され利便性に劣るなどの問題が生じる。
本発明は、このような既存の基体の問題を解決しようとするものであり、少ない検出区画数にて多数の標的核酸を同時に検出することができる標的核酸検出用基体および前記基体を使用した標的核酸の検出方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の骨子は、基体の同一検出区画内に2種類以上の核酸プローブを異なる量で固定した標的核酸検出用基体を用いる。この基体を用いて従来と同様、核酸試料とのハイブリダイゼーションを行い、各検出区画からハイブリダイゼーションに由来するシグナル量を測定する。このとき、前記検出区画から得られるシグナル量と各核酸プローブの固定量との間には対応関係がある。従って、検出区画から得られるシグナル量から、どの核酸プローブに核酸試料がハイブリダイゼーションしたかを判定することができる。これにより、検出区画数を増やすことなく一検出区画内で2種類以上の標的核酸を識別することができる。
また、本発明の第2の骨子は、基体の同一検出区画内に異なるTm値を示す2種類以上の核酸プローブを固定した核酸検出用基体を用いる。この基体を用いて、核酸試料と、異なる反応温度にて複数回のハイブリダイゼーションを行ない、各反応温度毎に、前記検出区画からハイブリダイゼーションに由来するシグナル量を測定する。このとき、各核酸プローブのTm値と、各温度毎に前記検出区画から得られたシグナル量とは関係がある。従って、検出区画から得られるシグナル量から、どの核酸プローブに核酸試料がハイブリダイゼーションしたかを判定することができる。これにより、上記と同様、一検出区画内で2種類以上の標的核酸を識別することができる。
即ち、本発明は、基板と、複数の互いに異なる標的核酸にそれぞれ相補的な複数の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に前記複数の核酸プローブがそれぞれ異なる固定量で固定された検出区画と、を備える標的核酸検出用基体に、核酸試料を供給する供給工程と、前記核酸試料を前記核酸プローブにハイブリダイズさせ、ハイブリッド鎖を得るハイブリダイゼーション工程と、前記検出区画から前記ハイブリッド鎖に由来するシグナル量を検出する検出工程と、前記シグナル量から前記核酸試料に含まれる標的核酸の有無を判定する判定工程とを行なうことを特徴とする標的核酸の検出方法を提供する。
また、本発明は、基板と、異なる標的核酸にそれぞれ相補的であって、互いに異なるTm値を示す複数種類の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に前記複数種類の核酸プローブが固定された検出区画と、を備える標的核酸検出用基体に、核酸試料を供給する供給工程と、前記複数種類の核酸プローブのすべての種類の核酸プローブが前記標的核酸とのハイブリッド鎖の形成を維持する温度と、前記複数種類の核酸プローブのうち、各々の核酸プローブが前記標的核酸を解離する各温度とで前記核酸試料と前記標的核酸検出用基体との反応を行う反応工程と、前記複数の温度における各反応工程で得られたシグナル量を検出する検出工程と、前記検出工程で得られたシグナル量から前記核酸試料に含まれる標的核酸の有無を判定する判定工程とを行なうことを特徴とする標的核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、基板と、複数の互いに異なる標的核酸にそれぞれ相補的な複数の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に前記複数の核酸プローブがそれぞれ異なる固定量で固定された検出区画と、を備える標的核酸検出用基体を提供する。
さらにまた、本発明は、基板と、複数の互いに異なる標的核酸にそれぞれ相補的であり、各々異なるTm値を示す第1および第2の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に前記第1および第2の核酸プローブが固定された検出区画と、を備える標的核酸検出用基体を提供する。
本発明によれば、少ない検出区画数の基体であっても多数の標的核酸を同時に検出することができる。従って、検出基体の小型化が可能となり、あるいは検出操作の簡便化を達成することができるなどの利点を有する。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
1.第1の実施形態
(1)標的核酸検出用基体
(基本的構成)
図1は、第1の実施形態における標的核酸検出用基体1の模式図である。標的核酸検出用基体1は、基体2および検出区画3で構成され、1以上の検出区画3が基体2上に整列している。電気化学的な検出の場合、各検出区画3にはそれぞれ1つの電極が配置され、各電極は、電気化学的シグナルを取り出すためのパット4にそれぞれ接続されている。
標的核酸検出用基体1は、例えば、核酸試料溶液を注入可能なプラスチック容器内に封入されていてもよい。前記プラスチック容器には核酸試料溶液を注入可能な注入口が設けられており、前記注入口から核酸試料溶液を注入すると、前記プラスチック容器内で標的核酸検出用基体1が核酸試料溶液に浸るような構造となっている。
基体2には、任意の材料を使用することができるが、好ましくは、シリコン、ガラス、石英ガラス、石英などのシリカ含有基体、ポリアクリルアミド、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのプラスチック基体が使用される。基体2は、板状体または球状体を含む任意の形状とすることができるが、好ましくは、アレイまたはチップとも称される板状体の基体とすることができる。
検出区画3は、他の反応系と独立した1つの反応系である。各検出区画から得られるシグナルは互いに干渉し合うことなく完全に独立している。
蛍光による検出の場合、1つの検出区画3には1種類の蛍光物質が使用され、1回の反応において1種類の蛍光シグナルを得ることができる。電気化学的な検出の場合、1つの検出区画3には1つの電極が配置されており、1回の反応において1つの電流値を得ることができる。検出区画の数、形状および配置パターンは、当業者が必要に応じて自由に設計変更することができる。
各検出区画の面積には、特に制限はなく、任意の大きさに設計することができる。電気化学的な検出の場合、上述したように、各検出区画3には1つの電極が配置される。電極の面積が小さくなると得られる電流値が小さくなり、相対的にノイズの影響が大きくなる。このノイズを回避するために、コードをシールドしたり、周辺の電磁波の影響を遮断するための囲いを設けるなどの処置が考えられるが、その分、装置の構成が複雑になるという問題がある。これに対し、第1の実施形態における基体は、単一電極上に2種類以上の標的核酸が固定されているため、電極面積を小さくすることなく、検出可能な標的核酸の種類数を増やすことができる。従って、装置の構成を複雑にすることなく、従来よりも多種類の標的核酸を検出することができる。
具体的には、例えば、円形電極の場合、直径100μm以上、好ましくは200μm以上、最も好ましくは500μm以上の電極が使用される。ただし、電極面積の下限は、反応系、検出環境などによって大きく変化するため、電極面積が上述した下限値に限定されるわけではない。
なお、電気化学的な検出の場合、各検出区画内に設置された電極は、特に限定されるものではないが、例えば、グラファイト、グラシーカーボン、パイロリティックグラファイト、カーボンペースト、カーボンファイバーのような炭素電極、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウムのような貴金属電極、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉛のような酸化物電極、Si、Ge、ZnO、CdS、TiO2、GaAsのような半導体電極、チタンなどによって形成されることができる。これらの電極は、導電性高分子によって被覆しても、単分子膜によって被覆してもよく、所望に応じてその他の表面処理剤を処理してもよい。
また、対極および/または参照極を設置してもよい。参照極を設置する場合、例えば、銀/塩化銀電極や水銀/塩化水銀電極などの一般的な参照極を使用することができる。
検出区画上に固定される核酸プローブの長さは、基体に固定し、ハイブリダイズするのに適切な長さを適宜選択することができ、標的核酸よりも短く設定してもよい。具体的には、例えば約3〜約1000bp、好ましくは約10〜約200bpとすることができる。
核酸プローブの塩基配列は、標的核酸の塩基配列と相補的な配列を有するように設定する。ここで「相補的」とは、例えば50%〜100%、好ましくは70%〜100%、最も好ましくは80%〜100%の範囲で相補的であることを意味する。
本明細書中において、「核酸」という用語には、核酸、核酸類似体および核酸誘導体が含まれ、より具体的には、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、ペプチド核酸(PNA)、メチルフォスホネート核酸、S−オリゴ、cDNAおよびcRNAなどの任意のオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが含まれる。また、これらの核酸は、天然に存在するものであっても、人工的に合成されたものであってもよい。
核酸プローブの固定は、公知の手段によって行えばよい。核酸プローブは検出区画に直接固定してもよいし、あるいは核酸プローブをスペーサーを介して検出区画に固定してもよい。また、予め作製した核酸プローブの溶液を検出区画に添加して固定してもよい。検出区画内の電極上に核酸プローブを固定する場合は、核酸プローブの末端にチオール基を付加することが望ましい。チオール基が検出区画内に配置された電極と共有結合することによって、核酸プローブが検出区画に固定される。
(具体的構成)
さらに、第1の実施形態における標的核酸検出用基体について説明する。
図2は、図1の線A−Aに沿った断面図である。2種類以上の核酸プローブが異なる量で同一の検出区画3に固定されている。
核酸プローブの種類の数には、特に制限はないが、好ましくは2〜10種類、さらに好ましくは2〜5種類、最も好ましくは2〜3種類である。図2では、説明の便宜上、3種の異なる核酸プローブa、bおよびcが、それぞれ異なる量で検出区画3に固定されている。ここで、「異なる量」とは、核酸プローブa、bおよびcの固定量がそれぞれ異なることを意味する。核酸プローブa、bおよびcの固定量が異なると、各核酸プローブから得られるシグナル量が異なる。すなわち固定量が多くなればシグナル量も多くなり、固定量が少なければ、シグナル量が少なくなる。従って、1検出区画から得られたシグナル量を検出することにより、当該シグナル量が核酸プローブa、bおよびcのいずれに由来するものであるかを識別することができる。結果として、1検出区画において3種類の標的核酸を検出することができる。
同様に、他の検出区画においてもそれぞれ3種類の核酸プローブを異なる量で固定すれば、基体全体では、従来と比較して3倍の種類の標的核酸を同時に検出することができる。
より具体的には、例えば、検出区画が40個設置された従来の基体では、120種類の標的核酸を検出する場合、少なくとも3つの基体を使用する必要があった。しかし、第1の実施形態における基体、特に、上述した各検出区画ごとに3種類の核酸プローブが固定された基体を使用すれば、検出区画が40個設置された1枚の基体で120種類の標的核酸を同時に検出することができる。
各検出区画内に固定された核酸プローブの固定量の比率には特に制限はないが、得られたシグナル量から各核酸プローブの存在の有無を識別できる必要がある。例えば、各核酸プローブの固定量に1.5倍以上、好ましくは2倍以上、最も好ましくは3倍以上の差をつけることによって、得られたシグナル量から各核酸プローブの存在の有無を正確に識別することができる。また、最も多い固定量の核酸プローブと最も少ない固定量の核酸プローブとの固定量の差を100倍以下、好ましくは20倍以下、最も好ましくは10倍以下に抑制することによって、最も少ない固定量の核酸プローブから得られる最も少ない電流値を確実に識別することができる。
1検出区画内に含まれる2種類以上の核酸プローブの量を異ならせるためには、各核酸プローブを固定する工程において、各核酸プローブを異なる濃度で含む混合溶液を調製し、これを検出区画上に添加して、核酸プローブを固定する。例えば、図2の結合状態を達成するためには、核酸プローブa、bおよびcを3:2:1の濃度比で含む混合溶液を調製し、これを検出区画内に添加することによって、核酸プローブa、bおよびcを3:2:1の数量比で検出区画内に固定することができる。
(2)第1の実施形態における標的核酸の検出方法
以下、第1の実施形態における標的核酸検出用基体を使用した標的核酸の検出方法について説明する。
先ず、前記基体上に標的核酸を含む核酸試料溶液を供給する。前記基体上に供給された標的核酸は、各検出区画内に予め固定されている核酸プローブにハイブリダイズし、標的核酸と核酸プローブとのハイブリッド鎖を形成する。このとき、前記ハイブリッド鎖に由来するシグナルが得られる。例えば、蛍光による検出の場合、標的核酸を予め蛍光物質で標識しておく。核酸プローブとハイブリッド鎖を形成した標的核酸は、洗浄後も検出区画内にとどまるため、蛍光発光が得られる(以下、単に核酸プローブからのシグナルなどという)。一方、電気化学的な検出の場合、例えば、電気化学的活性を有する分子をハイブリダイゼーション後に添加することによって、各核酸プローブと標的核酸とのハイブリッド鎖に前記分子が結合し、電位を印加することによって、前記分子に由来する電流が電極に流れる(以下、単に核酸プローブからのシグナルなどという)。さらに、得られたシグナル量から各核酸プローブに対応する標的核酸の存在の有無を識別することができる。
核酸試料は、検査対象から採取される。例えば、ヒトの血液を採取し、必要な処理を施して核酸試料溶液を調製する。検体から採取した核酸をそのまま使用してもよいが、採取した核酸に対して必要に応じて、逆転写、伸長、増幅および/または酵素処理などの処理を施し、検出区画上に固定された核酸プローブの量に対して十分な標的核酸の量を確保するとともに、反応に悪影響を与える物質を分解および除去する。増幅は例えばPCR、LAMP、ICANなどの手法が挙げられる。なお、核酸試料溶液中に含まれる各々の標的核酸の量は、核酸プローブの量と比較して十分に多く含まれている必要がある。
このとき、標的核酸の長さは、プライマーを適宜設計することによって任意の長さに設計することができる。具体的には、例えば10〜1000bp程度、好ましくは20〜700bp程度、最も好ましくは30〜500bp程度の長さに設定してもよい。
また、標的核酸は、直鎖状構造、ループ構造など任意の構造を有していてもよい。標的核酸の長さや構造を適切に選択することにより、核酸プローブとのハイブリダイゼーションの効率を上昇させることができる。
核酸試料を基体上に供給後、適切なハイブリダイゼーションが可能なように、反応条件を調節する。適切な反応条件は、標的核酸の塩基配列に含まれる塩基の種類、基体に固定された核酸プローブの種類などの諸条件に応じて、当業者であれば適宜選択することができる。
ハイブリダイゼーション反応は、例えば、次のような条件下において行うことができる。ハイブリダイゼーション反応溶液には、イオン強度0.01〜5、pH5〜10の範囲内の緩衝液を使用する。この溶液には、ハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストラン、ならびに、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTAおよび界面活性剤などを添加してもよい。この溶液中に核酸試料溶液を添加し、事前に90℃以上で熱変性させる。核酸の変性直後、あるいは急冷後、この溶液を標的核酸検出用基体に添加する。
ハイブリダイゼーション反応中は、撹拌または振盪などの操作で反応速度を高めてもよい。ハイブリダイゼーション反応温度および反応時間は適宜選択される。第1の実施形態におけるハイブリダイゼーション工程は、洗浄工程を含んでもよい。ハイブリダイゼーション工程後にハイブリダイゼーション溶液を除去し、前記基体を必要に応じて振盪させながら、新たに洗浄溶液を検出区画内に添加して洗浄を行うことによって、その検出精度を向上させることができる。洗浄液は、例えば、イオン強度0.01〜5、pH5〜10の範囲内の緩衝液を使用する。洗浄工程によって不純物が除去され、核酸試料中に存在する標的核酸のみが、対応する核酸プローブとハイブリダイズし、標的核酸と核酸プローブとのハイブリッド鎖の形成を維持する。
蛍光による検出の場合、核酸試料を予め蛍光物質で標識しておく。例えば、蛍光物質で標識されたプライマーを使用して標的核酸をPCR増幅する。代わりに、セカンドプローブを使用して標的核酸を検出してもよい。蛍光物質には、公知の任意のものを使用することができ、例えば、FITC、Cy3、Cy5またはローダミンなどが使用される。蛍光物質の発光は、蛍光検出器を用いて検出することができる。得られる蛍光発光量は、各核酸プローブの固定量と相関関係があるので、得られた蛍光発光量から各核酸プローブに対応する標的核酸の存在の有無を識別することができる。
一方、電気化学的な検出の場合は、例えば、電気化学的活性を有する分子を用いる。電気化学的活性を有する分子とは、ハイブリッド鎖に結合し、電位の印加によって電子を放出する分子を意味する。前記分子には、公知の任意のものを使用することができ、例えば、ヘキスト33258(登録商標)(カルビオケム(CALBIOCHEM)より入手可能)、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーターおよびポリインターカレーターなどが使用される。特に好ましくは、ヘキスト33258が使用される。ヘキスト33258は、化学物質p-(5-(5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ベンズイミダゾール-2-イル)ベンズイミダゾール-2-イル)フェノールによって構成された分子である。さらに、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン(ジシクロペンタジエニル鉄)、ビオロゲンなどで修飾してもよい。前記分子の濃度は適宜選択されるが、一般的には1ng/mL〜1000ng/mLの範囲内である。この際、イオン強度0.01〜5、pH5〜10の範囲内の緩衝液を使用することができる。
前記分子は、前記ハイブリッド鎖を認識し、これにインターカレートする。ここで、電極に電位を印加すると、酸化還元反応が起こり、インターカレートした前記分子から電子が放出されて電流が流れる。この際、電位は定速で掃引するか、パルスで印加するか、あるいは定電位を印加してもよい。電位掃引速度は、10〜1000mV/secの範囲内である。測定の際、例えば、ポテンショスタット、デジタルマルチメーターおよびファンクションジェネレーターなどの装置を用いて電流、電圧を制御してもよい。前記分子に由来する電流値は、核酸プローブの固定量と相関関係があるので、得られた電流値から各核酸プローブに対応する標的核酸の存在の有無を識別することができる。
図3は、第1の実施形態の基体を用いて場合に得られる核酸プローブからのシグナル量を表わしている。上述したように、得られたシグナル量は、検出区画内に固定された各核酸プローブの固定量に対応し、固定量が増加するにつれて得られるシグナル量も増加する。図3では、説明の便宜上、固定量の最も多い核酸プローブaからのシグナル量を1.0、固定量が2番目に多い核酸プローブbからのシグナル量を0.6、固定量が最も少ない核酸プローブcからのシグナル量を0.3とした。
先ず、試料溶液中に核酸プローブa、b、cにハイブリダイゼーションする核酸が存在しない場合、シグナルは検出されない。
3種類の標的核酸のうち1種類が存在する場合、それぞれの核酸プローブに対応するシグナル量が検出される。すなわち、標的核酸aが存在する場合、シグナル量は1.0、標的核酸bが存在する場合、シグナル量は0.6、標的核酸cが存在する場合、シグナル量は0.3となる。
核酸試料溶液中に3種類の標的核酸のうち2種類が存在する場合、シグナル量は、上記いずれか1つが存在する場合の数値の和と同程度となる。すなわち、標的核酸aおよびbが存在する場合(a+b)、シグナル量は1.6、標的核酸bおよびcが存在する場合(b+c)、シグナル量は0.9、標的核酸aおよびcが存在する場合(a+c)、シグナル量は1.3となる。
さらに、核酸試料溶液中に3種類の標的核酸の全てが存在する場合、シグナル量は、上記いずれか1つが存在する場合の数値の和と同程度となる。すなわち、標的核酸a、bおよびcが存在する場合(a+b+c)、シグナル量は1.9となる。
実際に、検査対象の核酸試料中に含まれる各標的核酸の存在の有無を判定する場合、予めシグナル標準量を設定しておく必要がある。シグナル標準量の設定には、検出区画内に固定された各核酸プローブに相補的な配列を有する配列既知の核酸配列を使用する。配列既知の核酸配列を標的核酸検出用基体に供給してハイブリダイゼーションを行なった後に前記検出区画から得られたシグナル量を「シグナル標準量」とし、1種類の標的核酸が存在する場合と、複数の標的核酸が存在する場合の全てのシグナル標準量を得る。そして、これらのシグナル標準量と、各シグナル標準量に対応した標的核酸の存在の有無の情報を明記して「標的核酸−シグナル標準対応表」が完成する。
検査対象の核酸試料を標的核酸検出用基体に供給してハイブリダイゼーションを行なった後に前記検出区画から得られた第1のシグナル量を、「標的核酸−シグナル標準対応表」に示されたシグナル標準量と比較し、「標的核酸−シグナル標準対応表」に示された各シグナル標準量のうち、第1のシグナル量に最も近似するシグナル標準量を決定することによって、各標的核酸の存在の有無を判定することができる。
(3)第1の実施形態の変形例
検査結果の信頼性を高めるために、固定される核酸プローブの種類を、複数の検出区画内で同一にしてもよい。例えば、検出区画に固定される核酸プローブの種類を3種類とし、同一種類の核酸プローブを固定する検出区画を2区画ずつ設けた場合、基体全体では、各標的配列ごとに2重試験を行うことができるので、多数の標的核酸を同時にかつ正確に検出することができる。
この場合、判定工程は2重判定試験となる。すなわち、2つの検出区画(以下、第1の検出区画、第2の検出区画という)のそれぞれについて、「標的核酸-シグナル標準対応表」に示されたシグナル標準量との比較を行い、最も近似するシグナル標準量を決定する。第1および第2の検出区画で決定されたシグナル標準量が同じである場合、その結果は極めて信頼性の高いものとして評価することができる。仮に、第1および第2の検出区画で決定されたシグナル標準量が相違する場合、その結果は偽陽性である可能性が高いと判定することができる。
また、2重試験の正確性をさらに増すために、核酸プローブの各量を検出区画毎に異ならせてもよい。例えば、図2の核酸プローブa、bおよびcが固定された検出区画を2つ用意する際、第1の検出区画の固定量比と第2の検出区画の固定量比を異ならせる。例えば、第1の検出区画に固定された核酸プローブa、bおよびcの固定量比を1:3:10に調節し、第2の検出区画に固定された核酸プローブa、bおよびcの固定量比を逆に10:3:1に調節する。
この場合、各シグナル標準量から得られる情報が異なるので、第1の検出区画に対応した第1の「標的核酸-シグナル標準対応表」と、第2の検出区画に対応した第2の「標的核酸-シグナル標準対応表」をそれぞれ別々に作成しておく必要がある。そして、第1および第2の検出区画で得られたシグナル量に最も近似するシグナル標準量を、それぞれ第1および第2の「標的核酸-シグナル標準対応表」を用いて決定し、各検出区画ごとに標的核酸の存在の有無を判定する。判定結果が同一であれば、その結果は極めて信頼性の高いものとして評価することができ、判定結果が異なる場合は、偽陽性である可能性が高いと判定することができる。
第1および第2の検出区画の核酸プローブの固定量比が異なる基体は、固定量比が同一である基体と比較して、検査結果の信頼度がさらに増す。従って、検査対象の核酸試料が多くの多型配列を含む場合、検出区画内に固定された各核酸プローブ同士の配列の相同性が高い場合など、偽陽性の結果が得られる可能性が高い検査においても、偽陽性の結果を見過ごすことなく、再試験を行う、核酸プローブの設計を見直す等の処置をとることができ、検査結果の信用性が強く求められる医療現場において極めて優れた効果を発揮する。
なお、当然ながら、同一種類の核酸プローブを固定する検出区画を3区画以上設け、例えば、3重試験、4重試験に対応した基体とすることもできる。
その他、第1の実施形態からは外れるが、単にある標的核酸の存在の有無を検出すれば足りる場合は、2種類以上の核酸プローブを同程度の量で同一区画内に固定してもよい。「同程度の量」とは、得られるシグナルから標的核酸を識別することができないことを意味する。この場合であっても、シグナルの有無から、各核酸プローブに対応する標的核酸が少なくとも1種類存在するか否かを判断することは可能である。
2.第2の実施形態
(1)標的核酸検出用基体
以下、第2の実施形態における標的核酸検出用基体および前記基体を使用した標的核酸の検出方法について説明する。その基本的構成および作用効果は第1の実施形態における標的核酸検出用基体と同様であり、第1の実施形態と異なる部分のみ説明する。第2の実施形態において使用される各部材、物質、反応溶液などは、以下に特に言及がない限り、第1の実施形態において説明したとおりである。
図4は、第2の実施態様における核酸プローブの固定状態を示す模式図であり、図1の線A−Aに沿った断面図である。異なるTm値を示す2種類以上の核酸プローブが検出区画に固定されている。
核酸プローブの種類の数には、特に制限はないが、好ましくは2〜10種類、さらに好ましくは2〜5種類、最も好ましくは2〜3種類である。図4では、説明の便宜上、3種類の核酸プローブa、bおよびcが検出区画3に固定されている。第1の実施形態とは異なり、各核酸プローブの固定量はほぼ等しい。
核酸プローブa、bおよびcは、それぞれ異なるTm値を示す。「異なる」Tm値とは、反応温度の調節によって、各核酸プローブに対する標的核酸のハイブリダイゼーションを区別することができるTm値を意味する。
Tm値は、2本鎖核酸の安定性の指標であり、ある2本鎖核酸の濃度、あるイオン強度において、ハイブリダイズした全2本鎖のうち50%が解離する温度である。Tm値の計算方法は、例えばNearest Neighbor法、Wallace法、GC%法などによって算出される。当業者によれば公知の技術的手段を用いることにより、任意のTm値を有する核酸プローブを自由に設計することができる。なお、Tm値は、ハイブリダイズする核酸配列の長さ、GC含量、反応溶液組成などの諸般の条件に依存して変化する。特に、本発明の核酸プローブが検出区画内に固定されている点は、核酸が溶液中で浮遊状態にあるTm値の算出条件とは大きく相違する。従って、Tm値は解離温度を示すものではなく、異なる複数の2本鎖核酸の相対的な安定性を示す指標にとどまる。
核酸プローブa、bおよびcのTm値がそれぞれ異なるために、異なる反応温度で各核酸プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション反応および/または洗浄を行い、それぞれの反応温度におけるシグナル量を組み合わせることによって、各核酸プローブに対応する標的核酸の存在の有無を識別することができる。第1の実施形態における基体と同様、1検出区画において複数の標的核酸を識別することができるので、基体全体では、従来の基体よりも多くの標的核酸を検出することができる。
より具体的には、検出区画が40個設置された従来の基体では、120種類の標的核酸を検出する場合、少なくとも3つの基体を使用する必要があった。しかし、第2の実施形態における基体、特に、上述した各検出区画ごとに3種類の核酸プローブが固定された基体を使用すれば、各核酸プローブのTm値に対応する反応温度で検出反応を3回行うことによって、検出区画が40個設置された1枚の基体で120種類の標的核酸を同時に検出することができる。
なお、第2の実施形態は、反応温度を変えて複数回の反応を行う必要があるため、1回の反応で標的核酸を検出可能な第1の実施形態と比較して標的核酸の検出に時間を要するが、その検出感度は高く有用である。
(2)第2の実施形態における標的核酸の検出方法
以下、第2の実施形態における標的核酸検出用基体を使用した標的核酸の検出方法について説明する。その基本的方法は第1の実施形態における標的核酸検出方法と同様であり、第1の実施形態と異なる部分のみ説明する。
先ず、前記基体に核酸試料を供給する(供給工程)。前記基体に供給された核酸試料中の標的核酸は、第1の温度において各検出区画内に予め固定されている複数種類の核酸プローブにハイブリダイズし、標的核酸と核酸プローブとのハイブリッド鎖を形成する(第1の反応工程)。
ここで、第1の温度とは、前記複数種類の核酸プローブのすべてが前記標的核酸とのハイブリッド鎖の形成を維持し得る温度である。第1の温度は、各核酸プローブのTm値に基づく実験による検証作業を通して決定することができる。Tm値は、上述したように異なる複数の2本鎖核酸の相対的な安定性を示す指標にとどまり、Tm値から一義的に第1の温度を決定することはできない。しかしながら、各核酸プローブのTm値は各核酸プローブの相対的なハイブリダイズ維持能を明確に示しており、当業者であれば、このTm値を指標とし、実験による検証作業を通して第1の温度を容易に決定することができる。
また、第1の反応工程とは、ハイブリダイゼーション工程および/または洗浄工程を意味する。ハイブリダイゼーション工程を行う場合、検出区画内を第1の温度で静置すればよい。
一方、洗浄工程を行う場合、第1の反応工程は、ハイブリダイゼーション工程と洗浄工程から構成される。すなわち、先ず、前記供給工程で添加された核酸試料中に含まれる全ての標的核酸が対応する核酸プローブとハイブリダイズし得る温度(温度T)でハイブリダイゼーション工程を行なう。その後、前記検出区画内のハイブリダイゼーション溶液を除去し、第1の温度において前記基体を必要に応じて振盪させながら、新たに洗浄溶液を前記検出区画内に添加することによって、遊離状態にある不純物を検出区画内から除去する。温度Tと第1の温度はともにすべてのハイブリッド鎖を維持し得る温度ではあるが、ハイブリダイゼーション工程と洗浄工程では反応溶液組成が異なるため、その温度は相違する。
なお、第1の温度では、全ての標的核酸が核酸プローブに結合しているので、第1の洗浄工程は、主に過剰投与による未結合の標的核酸とそれ以外の不純物を除去するために行なわれる。不純物とは、主に反応に関与しない核酸外物質および核酸の残骸等である。第1の反応工程において洗浄工程を行う場合、反応に関与しない過剰量の標的核酸および不純物をあらかじめ除去できるので、偽結合等を防止し、以降の各検出工程の精度を向上させることができる。
次に、第1の反応工程において得られたシグナル量を検出する(第1の検出工程)。第1の反応工程は、第1の温度で行われるため、各核酸プローブに対応する標的核酸のすべてが各核酸プローブとのハイブリッド鎖を維持することができる。従って、核酸試料中に各核酸プローブに対応する全ての種類の標的核酸が含まれている場合、すべての核酸プローブからシグナルが得られる。これに対し、すべての核酸プローブからシグナルが得られなかった場合、各核酸プローブに対応する標的核酸のうち、少なくとも1種類以上の標的核酸が核酸試料中に含まれていないことが解る。なお、シグナルは、各核酸プローブからのシグナル量の総和として得られるので、第1の検出工程では、核酸試料中に含まれていない標的核酸を特定することはできない。
続いて、第2の温度において反応を行う(第2の反応工程)。ここで、第2の温度とは、前記複数種類の核酸プローブのうち、特定の1種類の核酸プローブが標的核酸を解離する温度である。第1の温度と同様、第2の温度もまた、各核酸プローブのTm値に基づく実験による検証作業を通して当業者であれば容易に決定することができる。また、第2の反応工程とは、ハイブリダイゼーション工程および/または洗浄工程を意味する。ハイブリダイゼーション工程を行う場合、検出区画内を第2の温度で静置すればよい。一方、洗浄工程を行う場合、前記検出区画内のハイブリダイゼーション溶液を除去し、第2の温度において前記基体を必要に応じて振盪させながら、新たに洗浄溶液を前記検出区画内に添加することによって、遊離状態にある標的核酸を検出区画内から除去する。洗浄工程では、遊離状態にある標的核酸が検出区画内から除かれ、偽結合の可能性が低下する。
そして、第2の反応工程において得られたシグナル量を検出する(第2の検出工程)。第2の反応工程は、第2の温度で行われるため、前記複数種類の核酸プローブのうち、特定の1種類の核酸プローブにおいて標的核酸とのハイブリッド鎖を維持することができなくなり、標的核酸が核酸プローブから解離する。その結果、この核酸プローブからはシグナルは検出されない。
各検出区画の一領域内に3種類以上の核酸プローブを固定化している場合、上記第2の反応工程と第2の検出工程を繰り返す(以下、第nの反応工程と第nの検出工程(但し、nは自然数)という)。このとき、第nの反応工程は、第nの温度において反応を行うが、第nの温度は、第(n−1)の温度よりも高温である。なぜなら、第2の温度と同様、第nの温度もまた、前記複数種類の核酸プローブのうち、特定の1種類の核酸プローブが標的核酸を解離する温度ではあるが、その特定の1種類の核酸プローブは、第(n−1)の反応工程でハイブリッド鎖の形成を維持している核酸プローブのうちの1つである必要があるからである。
各検出区画の一領域内にn種類の核酸プローブが固定化されている場合、第1〜第nの反応工程と第1〜第nの検出工程を行なう必要がある。そして、第nの温度における第nの反応工程では、最も高いTm値を示す核酸プローブのみが標的核酸とのハイブリッド鎖の形成を維持することができる。最も高いTm値を示す核酸プローブが標的核酸とのハイブリッド鎖の形成を解除する第n+1の温度における第n+1の反応工程を行う必要はない。但し、第n+1の反応工程と第n+1の検出工程を行い、全ての標的核酸を解離させ、最終的にシグナルが検出されなくなることを確認してもよい。
反応工程および検出工程が一段階進むごとに、各時点でハイブリッド鎖の形成を維持している核酸プローブのうち、最も低いTm値を示す核酸プローブから、標的核酸が解離していくので、最後に各段階の検出工程で得られたシグナル量を組み合わせることによって、各核酸プローブに対応する標的核酸の存在の有無を判定することができる(判定工程)。
以下、上記第2の実施形態をより明確にするために、図5を用いて説明する。
図5は、第2の実施形態における各反応温度で得られるシグナル量を表わす。シグナルは、各核酸プローブに対応する標的核酸が存在し、核酸プローブと標的核酸とのハイブリッド鎖が形成された場合に得られる。図5では、説明の便宜上、最も高いTm値を示す核酸プローブを核酸プローブc、2番目に高いTm値を示す核酸プローブを核酸プローブb、最も低いTm値を示す核酸プローブを核酸プローブaとした。
核酸プローブaは、Tm値が最も低いので、核酸プローブaに対応する標的核酸は、第1の反応温度よりも高温である第2および第3の反応温度では核酸プローブから解離してしまう。その結果、第1の反応温度においてのみシグナルが検出される(図5のa)。核酸プローブbに対応する標的核酸は、最も高温な第3の反応温度においてのみ核酸プローブから解離するので、第1および第2の反応温度ではシグナルが検出される(図5のb)。Tm値が最も高い核酸プローブcに対応する標的核酸は、第1〜3の全ての反応温度においてハイブリッド鎖の形成を維持することができ、その結果、第1〜3の全ての反応温度においてシグナルが検出される(図5のc)。
3種類の標的核酸のうち2種類が存在する場合、上記各標的核酸のシグナル量の和と同程度となる。例えば、核酸プローブa、bに対応する標的核酸(以下、標的核酸a、標的核酸bなどという)は、第1の反応温度では、標的核酸a、標的核酸bともに核酸プローブとハイブリッド鎖を形成し、各ハイブリッド鎖からシグナルが得られるため、そのシグナル量は、標的核酸aと標的核酸bの総和に近似する。しかし、第2の反応温度では、標的核酸aが核酸プローブaから解離し、標的核酸bのシグナルのみが検出される。そして、第3の反応温度では、標的核酸a、標的核酸bともに核酸プローブから解離し、シグナルは検出されない(図5のa+b)。
同様に、核酸プローブb、cに対応する標的核酸が存在する場合(図5のb+c)、核酸プローブa、cに対応する標的核酸が存在する場合(図5のa+c)は、図5に示されたようなシグナルが得られる。
最後に、3種類の標的核酸a、b、cが存在する場合、第1の反応温度では、標的核酸a、標的核酸b、標的核酸cともにハイブリッド鎖を形成し、そのシグナル量は、標的核酸a、標的核酸bおよび標的核酸cの総和に近似する。第2の反応温度では、標的核酸aが核酸プローブaから解離し、標的核酸bと標的核酸cの総和に近似したシグナルが得られる。そして、第3の反応温度では、標的核酸bもまた核酸プローブbから解離し、標的核酸cのみが核酸プローブcとのハイブリッド鎖を維持するため、標的核酸cのみのシグナルが得られる(図5のa+b+c)。
実際に、検査対象の核酸試料中に含まれる各標的核酸の存在の有無を判定する場合、予め「標的核酸−シグナル標準対応表」を作成しておく必要がある。第2の実施形態では、異なる反応温度で複数回の検出反応を行なう必要があるので、各反応温度における「標的核酸−シグナル標準対応表」をそれぞれ別個に作成しておく必要がある。「標的核酸−シグナル標準対応表」には、図5のように、各反応温度におけるシグナル標準量と、各シグナル標準量に対応した標的核酸の存在の有無の情報が明記されている。
例えば、図5のような「標的核酸−シグナル標準対応表」を用いた場合、第1の反応温度で2.1のシグナル量が得られた場合、最も近似するシグナル標準量2.0から、核酸試料中の標的核酸が、標的核酸a+b、b+cまたはa+cのいずれかであることを判定することができる。次に、第2の反応温度で0.9のシグナル量が得られた場合、最も近似するシグナル標準量1.0と、第1の反応温度における判定結果から、核酸試料中の標的核酸が、標的核酸a+bまたはa+cのいずれかであることを判定することができる。最後に、第3の反応温度で0.8のシグナル量が得られた場合、最も近似するシグナル標準量1.0と、前述の第1および第2の反応温度における判定結果から、核酸試料中の標的核酸が、標的核酸a+cであることを一義的に判定することができる。
(3)第2の実施形態の変形例
第1の実施形態と同様、検査結果の信頼性を高めるために、固定される核酸プローブの種類を、複数の検出区画内で同一にしてもよい。また、2重試験の正確性をさらに増すために、核酸プローブの各Tm値を検出区画毎に異ならせてもよい。例えば、図2の核酸プローブa、bおよびcが固定された検出区画を2つ用意する際、第1の検出区画のTm値と第2の検出区画のTm値を異ならせる。例えば、第1の検出区画に固定された核酸プローブa、bおよびcのTm値を、それぞれ60℃、50℃、40℃に調節し、第2の検出区画に固定された核酸プローブa、bおよびcのTm値を逆に40℃、50℃、60℃に調節する。Tm値の異なる第1および第2の検出区画での2重試験によって、検出結果の信頼度がさらに増し、極めて正確な検出結果を得ることができる。
この場合、各シグナル標準量から得られる情報が異なるので、第1の検出区画に対応した第1の「標的核酸−シグナル標準対応表」と、第2の検出区画に対応した第2の「標的核酸−シグナル標準対応表」をそれぞれ別々に作成しておく必要がある。上述したように、第1および第2の「標的核酸−シグナル標準対応表」には、それぞれ各反応温度におけるシグナル標準量と、各シグナル標準量に対応した標的核酸の存在の有無の情報が明記されている。そして、各検出区画ごとに標的核酸の存在の有無を判定し、判定結果が同一であれば、その結果は極めて信頼性の高いものとして評価することができ、判定結果が異なる場合は、偽陽性である可能性が高いと判定することができる。
従って、検査対象の核酸試料が多くの多型配列を含む場合、検出区画内に固定された各核酸プローブ同士の配列の相同性が高い場合など、偽陽性の結果が得られる可能性が高い検査においても、偽陽性の結果を見過ごすことなく、再試験を行う、核酸プローブの設計を見直す等の処置をとることができ、検査結果の信用性が強く求められる医療現場において極めて優れた効果を発揮する。
なお、当然ながら、同一種類の核酸プローブを固定する検出区画を3区画以上設け、例えば、3重試験、4重試験に対応した基体とすることもできる。
実施例1(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態において3種類の標的核酸を検出した例を示す。なお、標的核酸検出用基体には、各検出区画内に電極が配置された基体を使用し、標的核酸を電気化学的に検出した。
<核酸試料>
核酸試料として以下の標的核酸1〜3を用意した。
標的核酸1(5'→3')
TCTGATGCCCAAATATTCAATAAACCTTATTGGT
標的核酸2(5'→3')
TCCCAATTATTTAATAAACCGTACTGGTTACAA
標的核酸3(5'→3')
TGCCCAGGTACAGGAGACTGTGTAGAAGCA
先ず、核酸試料1〜7をそれぞれ調製した。核酸試料1は標的核酸1を含む核酸試料であり、核酸試料2は標的核酸2を含む核酸試料であり、核酸試料3は標的核酸3を含む核酸試料であり、核酸試料4は標的核酸1および2を含む核酸試料であり、核酸試料5は標的核酸1および3を含む核酸試料であり、核酸試料6は標的核酸2および3を含む核酸試料であり、核酸試料7は標的核酸1、2および3を含む核酸試料である。また、対照として、標的核酸を含まない核酸試料8を調製した。
<核酸プローブ>
核酸プローブとして以下の核酸プローブを用意した。
核酸プローブ1(5'→3')
ACCAATAAGGTTTATTGAATATTTGGGCATCAGA (Tm値:71.5℃)
核酸プローブ2(5'→3')
TTGTAACCAGTACGGTTTATTAAATAATTGGGA (Tm値:68.0℃)
核酸プローブ3(5'→3')
TGCTTCTACACAGTCTCCTGTACCTGGGCA (Tm値:75.6℃)
核酸プローブ1、2および3は、標的核酸1、2および3に対してそれぞれ相補的な配列を有する。核酸プローブ1、2および3は、Tm値が同程度となるように設定し、反応温度による検出結果への影響を排除した。なお、核酸プローブのTm値は、Nearest Neighbor法によって、50mM Na+濃度(Na+=50×10-3)および0.5μMオリゴヌクレオチド濃度(Ct=0.5×10-6)の値を用いて算出した。
核酸プローブ1、2および3を、それぞれ1:3:9の比率で配合して核酸プローブ混合溶液を調製した。前記混合溶液を、検出区画内に配置された単一電極内に添加し、核酸プローブ1、2および3が、それぞれ1:3:9の固定量比で固定された1検出区画を作製した。
<標的核酸の検出>
前記検出区画内に上記核酸試料をそれぞれ添加し、50℃で20分間にわたってハイブリダイゼーションを行った。その後、30℃で20分間洗浄工程行った。なお、Tm値は相対的な指標であるため、実際の温度条件と相違することは問題ない。
洗浄後、検出区画内にヘキスト33258を添加し、検出区画内に配置された電極に電位を掃引した。ヘキスト33258は、検出区画に固定された核酸プローブと標的核酸とのハイブリッド鎖を認識し、ハイブリッド鎖内に挿入される。電極に電位を掃引すると、ハイブリッド鎖内に挿入されたヘキスト33258の酸化還元反応により電流が流れる。この電流は、電流値(nA)として検出することができる。
<実験結果>
結果を以下の表1に示す。
Figure 0004580996
同様に、上記結果を棒グラフにして図6に表わした。
標的核酸を含まない核酸試料8(Negative control)を添加した場合、電流値は検出されなかった。
標的核酸1、2および3をそれぞれ単独で含む核酸試料1、2および3を添加した場合、それぞれ6.1nA、28.2nA、41.5nAの電流値が検出された。この結果は、単一検出区画内に異なる量で固定された核酸プローブに標的核酸が結合し、その固定量比に依存した電流値が得られ、単一検出区画内において3種類の異なる標的核酸を識別できたことを意味する。同様に、標的核酸1、2または3のうち複数の標的核酸を含む核酸試料4〜7を添加した場合の電流値を検出した。それぞれ、核酸試料4を添加した場合は34.3nA、核酸試料5を添加した場合は45.9nA、核酸試料6を添加した場合は71.7nA、核酸試料7を添加した場合は77.9nAの電流値が得られた。各電流値は、各標的核酸から得られた電流値の和とほぼ同程度の数値となった。この結果は、標的核酸1、2または3のうち複数の標的核酸が存在している場合であっても、それらの識別が可能であることを意味している。
以上の結果より、同一検出区画内に異なる配列を有する核酸プローブを異なる濃度で固定した基体を用いることにより、複数の標的核酸を同一検出区画内で迅速かつ正確に識別することができた。
実施例2(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態において2種類の標的核酸を検出した例を示す。なお、標的核酸検出用基体には、各検出区画内に電極が配置された基体を使用し、標的核酸を電気化学的に検出した。
<核酸試料>
核酸試料として以下の標的核酸1および2を用意した。
標的核酸1(5'→3')
TACCACATCATCCATATAACTGAAAGC
標的核酸2(5'→3')
TACCACATCATCTATATAACTGAAAGC
標的核酸1および2は、5'末端側から13番目の塩基のみが異なっており(標的核酸1はC、標的核酸2はT、それぞれ下線部)、それ以外の塩基配列は完全に同一とした。このような標的核酸1および2は、識別が最も困難な組み合わせである。
標的核酸1を含む核酸試料、標的核酸2を含む核酸試料、標的核酸1および2を含む核酸試料を調製した。また、対照として、標的核酸を含まない核酸試料を調製した。
<核酸プローブ>
核酸プローブとして以下の核酸プローブを用意した。
核酸プローブ1(5'→3')
GCTTTCAGTTATATGGATGATGTGGTA (Tm値:64.6℃)
核酸プローブ2(5'→3')
AGTTATATAGATGAT (Tm値:49.0℃)
核酸プローブ1および2は、それぞれ標的核酸1および2に対して相補的である。上記異なる塩基配列に対応する塩基を下線で記した。また、核酸プローブ1および2が互いに異なるTm値を示すように、核酸プローブ2のプローブ長を短く設定し、核酸プローブ2のTm値(49.0℃)を核酸プローブ1のTm値(64.6℃)よりも低く設定した。なお、核酸プローブ1および2のTm値は、Nearest Neighbor法によって、50mM Na+濃度(Na+=50×10-3)および0.5μMオリゴヌクレオチド濃度(Ct=0.5×10-6)の値を用いて算出した。
等量の核酸プローブ1および2を含む混合溶液を調製し、前記混合液を、検出区画内に配置された単一電極内に添加することによって、核酸プローブ1および2が固定された1検出区画を作製した。
<反応条件1および2における反応>
前記検出区画内に上記核酸試料を添加し、50℃で20分間にわたってハイブリダイゼーションを行った。その後、反応条件1では、洗浄工程を30℃で20分間行い、反応条件2では、洗浄工程を40℃で20分間行った。以下に各反応条件を示す。
[反応条件1]
ハイブリダイゼーション:50℃で20分間
洗浄 :30℃で20分間
[反応条件2]
ハイブリダイゼーション:50℃で20分間
洗浄 :40℃で20分間
実施例2では、各洗浄工程を反応条件1および2において独立して行っている。洗浄工程を独立して行う場合、第2の洗浄工程もまた、第1の洗浄工程と同様、ハイブリダイゼーション後に行われるので、第2の洗浄工程を行う段階において、反応溶液中には偽結合等をもたらす可能性のある不純物が多量に含まれている。従って、第2の洗浄工程後にも偽結合等の可能性を考慮する必要性がある。これに対し、洗浄工程を連続して行う場合、第2の洗浄工程は、第1の洗浄工程を経た後に行われるので、第2の洗浄工程を行う段階において、すでに偽結合等をもたらす可能性のある不純物が反応溶液中から取り除かれている。従って、洗浄工程を独立して行う場合と比較して、第2の洗浄工程後に偽結合等の可能性を考慮する必要性は低い。逆に言えば、洗浄工程を独立して行う態様が、第2の実施形態の中でも厳しい条件であることが予想される。このような厳しい条件で実施例2を行った理由は、本発明の実施可能性を厳密に評価するためである。すなわち、独立した洗浄工程において、上述した最も判定が困難な組み合わせである標的核酸1および2の存在の有無を識別することができれば、第2の実施形態の実施可能性を十分に証明したことになる。
なお、ハイブリダイゼーション温度が洗浄温度よりも高いのは、核酸試料溶液の濃度、反応溶液の組成が異なることによるものであり、上記ハイブリダイゼーション温度において、核酸試料中の全ての標的核酸が核酸プローブにハイブリダイズし得る。また、Tm値は相対的な指標であるため、実際の温度条件と相違することは問題ない。
洗浄後、検出区画内にヘキスト33258を添加し、検出区画内に配置された電極に電位を掃引した。ヘキスト33258は、検出区画に固定された核酸プローブと標的核酸とのハイブリッド鎖を認識し、ハイブリッド鎖内に挿入される。電極に電位を掃引すると、ハイブリッド鎖内に挿入されたヘキスト33258の酸化還元反応により電流が流れる。この電流は、電流値増加量(nA)として検出することができる。
<実験結果>
各標的核酸を反応させたときの電流値増加量を以下の表2に示す。なお、電流値増加量とは、得られた電流値とバックグラウンド電流値との差を意味する。
Figure 0004580996
同様に、上記結果を棒グラフにして図7に表わした。
標的核酸を含まない核酸試料(対照)を添加した場合、反応条件1および2のいずれにおいても電流値増加量は検出されなかった。
標的核酸1を含む核酸試料を添加した場合、反応条件1および2において17.0nAの電流値増加量が検出された。この結果は、いずれの反応条件でもTm値の高い核酸プローブ1と標的核酸1とのハイブリッド鎖が維持されたことを意味する。
標的核酸2を含む核酸試料を添加した場合、反応条件1では16.5nAの電流値増加量が検出されたが、反応条件2ではほとんど検出されなかった。この結果は、より高温の反応条件2において、Tm値の低い核酸プローブ2から標的核酸2が解離したことを意味する。
標的核酸1および2を含む核酸試料を添加した場合、反応条件1では、26.3nAの電流値増加量が検出され、反応条件2では18.8nAの電流値増加量が検出された。この結果は、反応条件1では、標的核酸1および2がいずれも核酸プローブとのハイブリッド鎖を維持し、標的核酸1および2の電流値の総和に近似した電流値が検出されたことを意味する。また、反応条件2では、Tm値が低い核酸プローブ2から標的核酸2が解離し、標的核酸2に由来する電流値がほとんど得られなくなったことを意味する。
以上の結果より、反応条件1および2の電流値を組み合わせることによって、核酸試料中に存在する標的核酸1および2の存在の有無を迅速かつ正確に識別することができた。
第1および第2の実施形態における標的核酸検出用基体。 第1の実施形態における図1の線A−Aに沿った断面図。 第1の実施形態におけるシグナル量を表わす模式図。 第2の実施形態における図1の線A−Aに沿った断面図。 第2の実施形態におけるシグナル量を表わす模式図。 第1の実施形態における電流値の結果を示す棒グラフ。 第2の実施形態における電流値の結果を示す棒グラフ。
符号の説明
1・・・標的核酸検出用基体、2・・・基体、3・・・検出区画、電極、4・・・パッド、a・・・核酸プローブa、b・・・核酸プローブb、c・・・核酸プローブc。

Claims (12)

  1. 基板と、複数の互いに種類の異なる標的核酸にそれぞれ相補的な複数種類の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に前記複数種類の核酸プローブが種類毎に異なる固定量で固定された検出区画と、を備える標的核酸検出用基体に、核酸試料を供給する供給工程と、
    前記核酸試料を前記核酸プローブにハイブリダイズさせ、ハイブリッド鎖を得るハイブリダイゼーション工程と、
    前記検出区画から前記ハイブリッド鎖に由来するシグナル量を検出する検出工程と、
    前記シグナル量と固定量に基づいて前記核酸試料に含まれる複数種類の標的核酸について有無を判定する判定工程と
    を行なうことを特徴とする複数種類の標的核酸の検出方法。
  2. 前記判定工程は、前記シグナル量と、前記複数の核酸プローブと相補的な配列を有する既知の核酸試料を前記標的核酸検出用基体に供給してハイブリダイゼーションを行なった後に前記検出区画から得られたシグナル標準量とを比較することによって行なうことを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
  3. 前記検出工程は、
    前記ハイブリッド鎖に電気化学的活性を有する分子を結合させる工程と、
    前記検出区画に設けられた電極に電位を印加し、前記分子に由来する電流を検出する工程とを行なうことを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
  4. 前記標的核酸検出用基体は、前記検出区画を複数具備し、前記複数の検出区画には互いに同一種類の核酸プローブが固定されており、
    前記検出工程は、前記複数の検出区画から各々シグナル量を検出し、
    前記判定工程は、前記複数の検出区画から得られた複数のシグナル量から判定することを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
  5. 前記複数の検出区画に固定された複数の前記核酸プローブの各固定量が、検出区画毎に異なることを特徴とする請求項4に記載の検出方法。
  6. 基板と、複数の互いに種類の異なる標的核酸にそれぞれ相補的であって、種類毎に異なるTm値を示す複数種類の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に前記複数種類の核酸プローブが固定された検出区画と、を備える標的核酸検出用基体に、核酸試料を供給する供給工程と、
    前記複数種類の核酸プローブのすべての種類の核酸プローブが前記標的核酸とのハイブリッド鎖の形成を維持する温度と、前記複数種類の核酸プローブのうち、各々の核酸プローブが前記標的核酸を解離する各温度とで前記核酸試料と前記標的核酸検出用基体との反応を行う反応工程と、
    前記維持する温度と、少なくとも前記解離する各温度のうち最も低い温度以外のすべての温度条件での各反応工程で得られたシグナル量を検出する検出工程と、
    前記検出工程で得られたシグナル量とTm値とに基づいてから前記核酸試料に含まれる複数種類の標的核酸の有無を判定する判定工程と
    を行なうことを特徴とする複数種類の標的核酸の検出方法。
  7. 基板と、第1の標的核酸とハイブリッド鎖を形成可能な第1の核酸プローブと、第1の標的核酸とは種類の異なる第2の標的核酸とハイブリッド鎖を形成可能であって、第1の核酸プローブとは異なるTm値を示す第2の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に第1および第2の核酸プローブが固定された検出区画とを備える標的核酸検出用基体に、核酸試料を供給する供給工程と、
    第1の核酸プローブに第1の標的核酸をハイブリダイズさせ、かつ第2の核酸プローブに第2の標的核酸をハイブリダイズさせる温度Tにおいてハイブリダイゼーションを行なうハイブリダイゼーション工程と、
    第1の標的核酸と第1の核酸プローブとのハイブリッド鎖の形成を維持し、かつ第2の標的核酸と第2の核酸プローブとのハイブリッド鎖の形成を維持する第1の温度において前記検出区画を洗浄する第1の洗浄工程と、
    第1の洗浄工程後に前記検出区画から得られるシグナル量を検出する第1の検出工程と、
    第1の標的核酸と第1の核酸プローブとのハイブリッド鎖の形成を維持し、かつ第2の標的核酸を第2の核酸プローブから解離させる第2の温度において前記検出区画を洗浄する第2の洗浄工程と、
    第2の洗浄工程後に前記検出区画から得られるシグナル量を検出する第2の検出工程と
    第1の検出工程で得られたシグナル量、第2の検出工程で得られたシグナル量から前記核酸試料に含まれる複数種類の標的核酸の有無を判定する判定工程と
    を行なうことを特徴とする複数種類の標的核酸の検出方法。
  8. 基板と、第1の標的核酸とハイブリッド鎖を形成可能な第1の核酸プローブと、第1の標的核酸とは種類の異なる第2の標的核酸とハイブリッド鎖を形成可能であって、第1の核酸プローブとは異なるTm値を示す第2の核酸プローブと、前記基板上に設けられ、同一領域内に第1および第2の核酸プローブが固定された検出区画とを備える標的核酸検出用基体に、核酸試料を供給する供給工程と、
    第1の核酸プローブに第1の標的核酸をハイブリダイズさせ、かつ第2の核酸プローブに第2の標的核酸をハイブリダイズさせる第1の温度においてハイブリダイゼーションを行なう第1のハイブリダイゼーション工程と、
    第1のハイブリダイゼーション工程後に前記検出区画から得られるシグナル量を検出する第1の検出工程と、
    第1の標的核酸と第1の核酸プローブとのハイブリッド鎖の形成を維持し、かつ第2の標的核酸を第2の核酸プローブから解離させる第2の温度においてハイブリダイゼーションを行なう第2のハイブリダイゼーション工程と、
    第2のハイブリダイゼーション工程後に前記検出区画から得られるシグナル量を検出する第2の検出工程と、
    第1の検出工程で得られたシグナル量、第2の検出工程で得られたシグナル量から前記核酸試料に含まれる複数種類の標的核酸の有無を判定する判定工程と
    を行なうことを特徴とする複数種類の標的核酸の検出方法。
  9. 前記判定工程は、前記第1および第2の検出工程において得られた各々のシグナル量と、前記第1および/または第2の核酸プローブと相補的な配列を有する既知の核酸試料を前記標的核酸検出用基体に供給して前記第1および第2の温度でハイブリダイゼーションまたは洗浄を行なった後に前記検出区画から得られたシグナル標準量とを比較することによって行なうことを特徴とする請求項7または8に記載の検出方法。
  10. 前記検出工程は、
    前記ハイブリッド鎖に電気化学的活性を有する分子を結合させる工程と、
    前記検出区画に設けられた電極に電位を印加し、前記分子に由来する電流を検出する工程とを行なうことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の検出方法。
  11. 前記標的核酸検出用基体は、前記検出区画を複数具備し、前記複数の検出区画には互いに同一種類の核酸プローブが固定されており、
    前記検出工程は、前記複数の検出区画から各々シグナル量を検出し、
    前記判定工程は、前記複数の検出区画から得られた複数のシグナル量から判定することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の検出方法。
  12. 前記検出区画に固定された複数の前記核酸プローブの各Tm値が、検出区画毎に異なることを特徴とする請求項11に記載の検出方法。
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