JP4563618B2 - 推進管の施工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、掘進機でトンネル掘削しながら、立坑から推進管を推進して継ぎ足す推進管の施工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、推進工事に使用する推進管は、ヒューム管と同様に、工場で製作する既製品であり、規格(形状、耐力などの性能)が決まっているものの中から、使用に適合する製品を選択して使用していた。その製造方法は、電柱やPC杭などと同様に、工場において横型型枠を用いて遠心力を利用した成型を行っている。
【0003】
すなわち、図1に示すように鉄筋カゴ100を横型型枠101内にセットし、横型型枠101にコンクリートを打設して遠心力により締め固め、蒸気養生をする。そして、気中養生を終えた後に、重量物であるため工場から現場まで大型トレーラで輸送している。
【0004】
この場合のコンクリートは、スランプの小さい高強度の硬練りコンクリートを用い、鉄筋カゴ100の配筋は、細い丸鋼、PC鋼線を螺旋状に縦方向(軸方向)鉄筋に巻き付けて行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、次のような問題点があった。
▲1▼ 従来は推進管の規格が決まっているため、形状、寸法、荷重など各工事に最適な推進管の使用ができない。耐力的に規格をオーバーした荷重条件(視力、曲線部での偏圧、土圧、内水圧等)には、特別に厚い管や合成管など特殊な管を使用することが必要となり、大幅なコストアップになってしまう。
【0006】
▲2▼ 形状についても、一般道を経由して運搬してくるため、車両の幅、高さの制限、重量で寸法が決定してしまう(最大の外径φ3.5m、長さ2.43m)。
▲3▼ 従来の製造方法では、遠心成型を行うため、リング形状以外の製造は困難。内側に型枠がないため、打設終了後に左官仕上げ等が別途必要で、かつ、インサート等の取り付けも難しい。
【0007】
▲4▼ トンネルの用途にもよるが、インバートなどの施工が後施工となる。
▲5▼ 現地で従来からのマンホール型枠などを使用して、硬練りコンクリートで推進管を製造することが考えられるが、厚さの薄い構造物を施工性(型枠の組立・脱型、支保方法、移動方法、打設サイクル、カラーやコーキング溝などの細部構造)及び品質(強度、寸法精度、充填性、表面の仕上がり等)を満足して製造することは困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、推進管の輸送や規格品の問題点をなくすために、推進管を現場で製造でき、またその製造設備も、型枠、クレーン、打設用のベース、足場などの簡易な設備で対応でき、しかも成型から立坑への搬入までを効率的に行える推進管の施工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の推進管の施工法は、立坑付近の地上において縦型型枠に高流動コンクリートを打設して推進管を成型する現場成型工程と、成型した推進管を現場の養生ヤードで横置きして養生する現場養生工程と、養生を終えた推進管を立坑内に降ろして推進する推進工程とを有する。
【0010】
現場成型工程において、推進管に吊り兼用のグラウトホールや、横転兼用のグラウトホールや、インバート部・隔壁等の内部構成部を同時に成型する。
【0011】
使用する高流動コンクリートは、減水剤に、ポリカルボン酸エーテル系と分子内架橋ポリマーの複合体による高性能AE減水剤を用いれば、推進管を現場製造するに当たり、スランプフローとその保持時間を目標値に調整することが容易である。
【0012】
また、高流動コンクリートの配合を次のように設定すると、本発明の施工法で用いる推進管用高流動コンクリートとしての目標品質を満たす。
単位水量:155〜175Kg/m
単位セメント量:450〜600Kg/m
単位細骨材量:780〜910Kg/m(比重2.6の場合)
単位粗骨材量:810〜945Kg/m(比重2.7の場合)
高性能AE減水剤量:水に対して0.5〜2.5%
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本発明は、推進管の製造から立坑への搬入までを一貫して現場で行うもので、図2に現場での推進管の製造作業レイアウトを示す。作業場所は、大きくは、材料保管・鉄筋加工・組立ヤードAと成型ヤードBと養生・保管ヤードCとに分かれている。
【0015】
材料保管・鉄筋加工・組立ヤードAは、鉄筋カゴの材料の保管と加工、及び縦型型枠の組み立てを行うための作業場で、ここで組み立てた鉄筋カゴ及び縦型型枠は、例えばクローラクレーンにて吊り上げて成型ヤードBへ運ばれる。成型ヤードBでは、鉄筋カゴを縦型型枠1中へ吊り下げ、コンクリートポンプにて後述のように高流動コンクリートを縦型型枠1中へ打設して推進管2を垂直姿勢で成型する。脱型した縦型型枠1は、成型ヤードBの別のスペースに移動して、改めて高流動コンクリートを打設する。成型した推進管2は、クローラクレーンにて吊り上げて脱型し、養生・保管ヤードCに横置きして気中養生し、図3に示すように養生を終えた推進管2から順次吊り上げて立坑内に降ろす。図4に、推進管の現場での製造工程の流れを示す。立坑からの推進管の推進工事及びその他の付帯工事は、図5に示すように従来と同様であるため説明は省略する。
【0016】
図6に、成型された推進管2の立てた状態の簡略断面を示す。推進管2には、これを吊り上げる用途としても用いる例えば2個の吊り兼用グラウトホール3が軸線方向に離して設けられているとともに、これと反対側(180度逆方向)に、推進管2を横転させる用途としても用いる横転兼用グラウトホール4が設けられている。
【0017】
図7及び図8に、このような形態の推進管2を成型する縦型型枠1の一例構造を示す。縦型型枠1は鋼製で、内外のスキンプレート5・6を、縦横のリブ7・8と複数本のサポートジャッキ9と締め付けバンド10にて二重円筒状に配置し、これら内外のスキンプレート5・6の間に、鉄筋カゴ11を設置してから高流動コンクリートを打設する。縦型型枠1は組立・脱型が容易なように、円周方向に3分割程度のヒンジ構造とする。遠心成型でないため、内外のスキンプレート5・6にインサートなど付属品を取り付ける治具を設けることができる。図7において、12は真円保持用固定金物、13はカラー支持用リングである。
【0018】
図9に、推進管2を成型するための型枠構造の一例を示す。この型枠は、ピン構造で円周方向に3分割、上下方向に2分割となっている。
【0019】
また、縦型型枠1を輪切り式に上下に2分割や3分割とすれば、1/2長さや1/3長さの推進管を容易に成型できる。縦型型枠1内に支保工を内蔵することによって、変形を抑えることができる。さらに底部には、ピンやホゾなどで位置決めが容易でかつ真円度を保つために剛性のあるベースプレートを設ける。上部、中間部についても円周方向の剛性を高めるためリング状のリブなどを設ける。
【0020】
推進管のコーキング溝やシール溝については、縦型型枠に突起を設けることで対応する。カラーについては、後から取り付けるT型カラーも対応可能であるが、埋め込みカラーの取り付けが可能なように、外型枠(外側スキンプレート)にカラーを支持する脱着可能なリブ、ロッドなどを設け、型枠組立時に真円を保ちながら、上から型枠にはめ込み固定金物などで固定する。
【0021】
推進管2の形状については、通常の円筒形のほかに、図10の(A)、(B)(C)にそれぞれ示すようなインバート部2aを一体成型した形状や、図11の(A)に示すような中床2bや(B)に示すような隔壁2cを一体成型した形状や、そのほかボックス形や馬蹄形や楕円形など任意の形状で打設することが可能である。
【0022】
鉄筋については、従来の螺旋状のPC鋼棒、丸鋼を使用することも可能であるが、フープ筋、トンネル軸方向直筋の簡単な組合せで、異形棒鋼を使用することもできる。従って、発生断面力にあわせて、鉄筋の量を増加・低減することができる。また、推力や偏圧が作用しやすい管端部やグラウトホール周り、さらに図12の(A)に示すような欠円構造となる枝管取付部や(B)に示すようなマンホール接合部などについては、必要に応じて鉄筋や鉄骨の補強などが事前に施せる。
【0023】
コンクリートの打設には、σck=50N/mm以上の高強度なコンクリートを打設すると、普通コンクリートではかなり硬練りのコンクリートになってしまう。また、厚さが250mm以下と薄く、型枠の高さも2m以上になってしまうため、普通コンクリートではバイブレータによる締め固めの施工性が悪い。
【0024】
そこで、振動締め固めが不要で隅々まで自己充填する高流動コンクリートを使用する。既設生コンプラントでも、添加剤のみ変更すれば高流動コンクリートの製造は可能である。粉体系高流動コンクリートは高強度(60〜70N/mm)となるため、推進管のコンクリートに最適である。しかしながら、高流動コンクリートでは、コンクリート内部のエアーが逃げにくいため、できあがった表面に気泡によるあばたが発生する可能性がある。そのために、型枠に気泡を逃がすスリットを入れるなどの対策をとると良い。
【0025】
打設方法については、高流動コンクリートの使用を前提としているので、自由落下高さを1.5m以内に抑えるようポンプ、シュートなどを用いて行う。また、移動距離については、周長が長くなった場合には複数の箇所から打設するように行う。
【0026】
成型を終えた推進管2の移動方法については、吊り兼用グラウトホール3を軸方向に2箇所設けているが、縦方向に吊るため、横転用として横転兼用グラウトホール4を180度逆方向に追加している。さらに大型・大重量の場合には、吊り上げ用のグラウトホールを追加したり、転倒装置を設けて対応する。
【0027】
高流動コンクリートは一般に強度発現が遅いため、打設24時間後、脱型を行い、もう一つのスペースに型枠を移動し、コンクリートを打設することとする。
【0028】
本発明者らは、推進管を上記のように現場で製造するという観点から、その推進管用高流動コンクリートの品質について、種々の試験を経て検討した結果、次の表1のような条件が好ましいという結論に達した。
【0029】
【表1】
Figure 0004563618
【0030】
そして、これを目標品質として高流動コンクリートの配合について種々の選定を試み、試験を行った結果、減水剤としては、ポリカルボン酸エーテル系と分子内架橋ポリマーの複合体による高性能AE減水剤が、スランプフローとその保持時間の面から目標値に調整し易いという知見を得た。また、この種の高性能AE減水剤は分子内架橋ポリマーの配合量を変えれば、スランプフロー保持時間及び強度の増進設定を自由に調整できるという利点がある。
【0031】
次の表2に、分子内架橋ポリマーの配合量が異なるA、B、Cの三種類の高性能AE減水剤を用い、水(W)、セメント(C)、細骨材(S)、粗骨材(G)の量は三種類について同じとして、三種類のそれぞれについてスランプフロー及びスランプフロー保持時間を直角方向(X方向とY方向)の2個所ずつ測定した結果を示す。なお、A、B、Cの三種類の高性能AE減水剤は、いずれも株式会社エヌエムビー製の「レオビルドSP 8SBシリーズ」を用い、セメントは大平洋セメント株式会社製の低熱ポルトランドセメントを用いた。
【0032】
【表2】
Figure 0004563618
【0033】
この表2から、Aの高性能AE減水剤の場合、セメントに対する割合を1.35%とすれば、目標とするスランプフロー及びスランプフロー保持時間となり、Bの高性能AE減水剤とCの高性能AE減水剤の場合には、BよりもCの方がスランプフロー保持性能が高く、Cの高性能AE減水剤をセメントに対して1.6%使用した場合が最も良かった。
【0034】
また、Aの高性能AE減水剤とCの高性能AE減水剤について圧縮強度試験を行ったところ、次の表3に示すように、養生時間を20℃から30℃へ10℃上げることで、42時間の強度目標値を18時間で満足できた。
【0035】
【表3】
Figure 0004563618
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば次のような効果がある。
▲1▼ 高流動コンクリートの使用と型枠などに工夫(分割、ヒンジ構造、剛性確保、付属品の取り付け治具など)を行うことにより、現状の推進管と同等な形状・品質の推進管が現場で簡単に製造できる。
▲2▼ 現場で製作するため、輸送費のコストダウンが可能となる。
▲3▼ カラーの取り付け、シール溝などの型枠を脱着可能にし、型枠をトンネル軸方向で分割できるようにしておけば、1/2管や1/3管の製造が容易にできる。
▲4▼ 従来の管より長い管も容易に製造できるため、継手数の低減によるコストダウンが可能になると同時に、管据え付け回数も低減するため、工期短縮も可能となる。
▲5▼ 推進管の厚さや鉄筋も荷重条件にあわせ自由にできる(セグメントと同様)。
▲6▼ 内型枠があるため、インサートの取り付けや、インバートの同時打設も可能。
▲7▼ 径3m以上の推進工法の適用が可能となり、管渠建設費のコスト低減可能。
▲8▼ 同様に、ボックス、馬蹄形などの形状の推進管の製造も可能となる。
▲9▼ インサートなどの付属品を取り付けておいたり、インバートを一緒に打設しておくことも可能となり、それらの設置工程が短縮できる。
【0037】
また、使用する高流動コンクリートの減水剤として、ポリカルボン酸エーテル系と分子内架橋ポリマーの複合体による高性能AE減水剤を用いることにより、現場で製造する推進管用高流動コンクリートとしての目標品質を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来における推進管の製造方法の説明図である。
【図2】本発明による推進管の製造作業のレイアウト図である。
【図3】推進管の成型から立坑への搬入までの工程を示す説明図である。
【図4】推進管の現場での製造工程の流れを示すフローチャートである。
【図5】推進管の施工方法の説明図である。
【図6】推進管の簡略断面図である。
【図7】推進管を成型する縦型型枠の縦断面図である。
【図8】同じく平面図である。
【図9】推進管を成型する型枠の一例の平面図である。
【図10】(A)、(B)、(C)のそれぞれ、インバート部を有する推進管の端面図である。
【図11】(A)は中床を有する推進管の端面図、(B)は隔壁を有する推進管の端面図である。
【図12】(A)は欠円構造となる枝管取付部に用いられる推進管の断面図、(B)はマンホール接合部に用いられる推進管の断面図である。
【符号の説明】
A 材料保管・鉄筋加工・組立ヤード
B 成型ヤード
C 養生・保管ヤード
1 縦型型枠
2 推進管
2a インバート部
2b 中床
2c 隔壁
3 吊り兼用グラウトホール
4 横転兼用グラウトホール
5・6 内外のスキンプレート
7・8 縦横のリブ
9 サポートジャッキ
10 締め付けバンド
11 鉄筋カゴ
12 真円保持用固定金物
13 カラー支持用リング

Claims (6)

  1. 掘進機でトンネル掘削しながら、立坑から推進管を推進して継ぎ足す推進管の施工法において、立坑付近の地上において縦型型枠に高流動コンクリートを打設して推進管を成型する現場成型工程と、成型した推進管を現場の養生ヤードで横置きして養生する現場養生工程と、養生を終えた推進管を立坑内に降ろして推進する推進工程とを有することを特徴とする推進管の施工法。
  2. 現場成型工程において、推進管に吊り兼用のグラウトホールを同時に成型することを特徴とする請求項1記載の推進管の施工法。
  3. 現場成型工程において、推進管に横転兼用のグラウトホールを同時に成型することを特徴とする請求項2記載の推進管の施工法。
  4. 現場成型工程において、推進管を、その内部のインバート部や隔壁等の内部構成部と同時成型することを特徴とする請求項1、2又は3記載の推進管の施工法。
  5. 使用する高流動コンクリートが、ポリカルボン酸エーテル系と分子内架橋ポリマーの複合体による高性能AE減水剤を配合したコンクリートであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の推進管の施工法。
  6. 高流動コンクリートが次のような配合であることを特徴とする請求項5記載の推進管の施工法。
    単位水量:155〜175Kg/m
    単位セメント量:450〜600Kg/m
    単位細骨材量:780〜910Kg/m(比重2.6の場合)
    単位粗骨材量:810〜945Kg/m(比重2.7の場合)
    高性能AE減水剤量:水に対して0.5〜2.5%
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