JP4547324B2 - タンパク質認識構造体、タンパク質認識基板、及びこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
また、生体を用いて抗体を生成させなければならないため、生体(ラット、マウス等)の飼育・管理が煩雑でコストがかかる。さらに、このようにして得られた抗体は、熱や酸あるいはアルカリによって変性しやすく、また長時間の保存により失活して、認識能力を失ってしまうおそれがある。
従来技術のように、タンパク質を溶液に溶かして分子インプリントを行う方法では、タンパク質分子が活発に分子運動しているため、タンパク質が一定の形状を取っておらず、さまざまな形状のタンパク質表面形状がインプリントポリマー(タンパク質認識構造体)に型取られる。また、タンパク質結晶に配位している特異的官能基部位は、外部表面や内部表面に自由に向きを変えている。このため、鋳型として用いたタンパク質と形状が異なる、標的物質以外のタンパク質とも結合し得る構造体が形成される。
他方、本発明では、タンパク質結晶を用いているが、タンパク質は結晶化することにより安定な一形態をとり、また、タンパク質の特異的官能基部位が、結晶化することにより特定の方向に配位する。よって、タンパク質結晶を用いた分子インプリント法により得られたインプリントポリマーは、タンパク質結晶の表面形状を正確に型取ったものとなるとともに、特定の方向に配位したタンパク質結晶表面の特異的官能基部位を正確に型取ったものとなるので、そのタンパク質認識構造体の結合特異性が飛躍的に向上する。
実施の形態1を図面に基づいて説明する。実施の形態1では鋳型として3次元結晶を用いてタンパク質認識構造体を作製する。図1は実施の形態1のタンパク質認識構造体の作製手順を示す図である。
結晶化方法としては、(1)過飽和状態のタンパク質溶液を調製し、密閉された容器に入れ、静置しておくバッチ法、(2)未過飽和状態のタンパク質溶液を用意し、その溶液より沈殿剤濃度が高いリザーバー溶液とともに密閉容器にいれておき、蒸気拡散によりタンパク質溶液からリザーバー溶液に水が移動していくことで、タンパク質溶液の水を減少させ、タンパク質を過飽和とする蒸気拡散法、(3)未過飽和状態のタンパク質溶液とその溶液より沈殿剤濃度が高い溶液を用意し、その2液の間に透析膜を置くことで、拡散により水や沈殿剤が移動してタンパク質を過飽和とする透析法、等を用いることができる。
また、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどの重合促進剤を加えても良い。
次に、実施の形態2を図面に基づいて説明する。実施の形態2は鋳型として2次元結晶を用いてタンパク質認識構造体を作製する。図2は実施の形態2のタンパク質認識構造体の作製手順を示す図である。
実施の形態3を図面に基づいて説明する。実施の形態3はタンパク質の3次元結晶を鋳型として用いてタンパク質認識構造体の微粒子を作製し、この微粒子を基板上に配置したタンパク質認識基板を作製する。
以下、実施例を用いて本発明を更に説明する。
実施例1では鋳型にタンパク質の3次元結晶を用いてタンパク質認識構造体を作製した。
結晶化は次のように行った。鋳型のタンパク質としてはリゾチームを用いた。
10mMHEPES緩衝液(pH7.4)3mlにリゾチームを120mg溶かした。この溶液に沈殿剤として塩化ナトリウムを1.2Mになるように加えた。この溶液を10mlバイアル瓶に入れ、密封し、25℃で静置した。2日後に結晶形成が見られた。1週間後に0.1〜0.2mmの大きさの結晶に成長した。
機能性モノマーとしてのアクリル酸7μl及びアクリルアミド22mgと、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド154mgと、重合開始剤として2,2’−アゾビス{2−メチル‐N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}3.2mgと、沈殿剤としてのポリエチレングリコール(分子量3500)と、を1.8g、50mM HEPES緩衝液(pH7.4)6mlに溶かし、プレポリマー溶液とした。
タンパク質が結晶化した後、上澄みを除き、上記プレポリマー溶液でタンパク質結晶を3回洗浄した。その後、プレポリマー溶液2mlをタンパク質結晶の入ったバイアル瓶に加え、5分間バイアル瓶の雰囲気ガスを窒素置換した後、密封し、4℃で紫外線照射を16時間行い、重合させた。
重合したポリマーをガラスフィルターにとり、純水500ml、5%酢酸・メタノール混合液200ml、メタノール200ml、の順に洗浄し、未反応モノマーおよび鋳型を除去した。得られたポリマーを真空乾燥し、乳鉢で粉砕した。粉砕したポリマーを85μmのふるいにかけて、ふるいを通り抜けたポリマーを集め、さらに15μmのふるいにかけ、ふるいを通り抜けなかったポリマーを集め、タンパク質認識構造体とした。
実施例2では鋳型にタンパク質の2次元結晶を用いてタンパク質認識構造体を作製した。
2次元結晶化は次のように行った。鋳型のタンパク質としてフェリチンを用いた。
5%グルコースと、150mM塩化ナトリウムと、10mM硫酸カドミウムと、をとかした20mMリン酸緩衝液(pH5.8)5mlを、テフロン(登録商標)製の容器に入れ展開層とした。20mMリン酸緩衝液(pH5.8)1mlにフェリチン1.3mgを溶かしフェリチン溶液とした。このフェリチン溶液2μlを展開層に注入した。10分後に2次元結晶が形成された。シリコン基板を2次元結晶が形成された気液界面へ接触させ、シリコン基板上に2次元結晶を移し取った。
機能性モノマーとしてのアクリル酸7μl及びアクリルアミド22mgと、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド154mgと、重合開始剤としての2,2’−アゾビス{2−メチル‐N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}3.2mgと、を50mM HEPES緩衝液(pH7.4)6mlに溶かし、プレポリマー溶液とした。
ポリマーの支持基板として、ガラス基板に金がコートされた基板(ビアコア社製、表面プラズモン共鳴測定装置(SPR)用センサーチップ)を、ビニル基を持つ分子で修飾した。ビニル基を持つ分子として、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン7mgをメタノール10mlに溶かした。その溶液にSPRセンサーチップを30分間浸漬することで、金膜上にN,N’−ビス(アクリロイル)シスタミンの自己組織化単分子層膜を形成させた。
ガラス基板に移し取った2次元結晶上に上記プレポリマー溶液を50μlたらした。その上から、上記ビニル基修飾センサーチップをのせ、4℃で2時間紫外線照射を行い重合反応をおこなった。
基板をはがした後、水、1M塩化ナトリウム溶液に順次浸漬し、未反応のモノマー、鋳型を除いた。最後に水で洗浄し、自然乾燥させた。
実施例3ではタンパク質の3次元結晶を鋳型として作製したタンパク質認識構造体の微粒子を、基板上にアレイ状に配置したタンパク質認識構造基板を作製した。
リゾチームの結晶化は実施例1と同様なので省略する。
チトクロムcの結晶化は次のように行った。10mM リン酸緩衝液(pH6.5)3mlにチトクロムcを120mg溶かした。この溶液に沈殿剤として硫酸アンモニウムを40飽和%になるように加えた。この溶液を10mlバイアル瓶に入れ、密封し、25℃で静置した。2日後に結晶形成が見られた。1週間後に0.1〜0.2mmの大きさの結晶に成長した。
機能性モノマーとしてのメタクリル酸100μlと、補助モノマーとしてのアクリルアミド100mgと、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート550μlと、沈殿剤としてのポリエチレングリコール(分子量3500)を1.8gと、を50mM HEPES緩衝液(pH7.4)30mlに溶かし、プレポリマー溶液とした。
次に、リゾチーム、チトクロムcの結晶溶液の上澄を除き、プレポリマー溶液で結晶を3回洗浄した。
次に、リゾチーム結晶を1.5mlサンプリングチューブにとり、マイクロチューブホモジナイザーで結晶を破砕し、微結晶にした。チトクロムc結晶も、同様にして微結晶にした。
次に、セパラブルフラスコにプレポリマー溶液と上記リゾチーム微結晶を入れ、窒素置換を5分間おこなった。作製されるタンパク質認識構造体をナノサイズの微粒子とするため、メカニカルスターラーで1分間に120回転の速度で攪拌しながら、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド34mgを蒸留水1mlに溶かしたものを加えた。引き続き攪拌をしながら、4℃で紫外線照射を16時間行い重合させた。
チトクロムc結晶についても同様に重合した。
重合反応後、遠心分離をおこない形成したタンパク質認識構造体微粒子を沈殿させ、上澄を除き、1M塩化ナトリウム溶液を加えて懸濁する洗浄を3回おこない、未反応モノマーおよび鋳型であるタンパク質を除去した。
得られた微粒子は、50mM HEPES緩衝液(pH7.4)に懸濁し保存した。
タンパク質認識構造体微粒子を配置する基板としてカラス基板に金膜がコートされているSPR用のセンサーチップ(ビアコア社製)を用いた。
2 タンパク質結晶
3 プレポリマー溶液
10 タンパク質変性膜
11 タンパク質分子
12 展開層
13 容器
14 シリコン基板
15 SPR用センサーチップ
16 プレポリマー溶液
17 タンパク質認識構造体
20 基板
21 微粒子A
22 微粒子B
23 スポットA
24 スポットB
25 タンパク質Aを認識する部位
26 タンパク質Bを認識する部位
Claims (10)
- タンパク質結晶の表面形状および前記結晶表面に配位したタンパク質の特異的官能基部位を分子インプリントしてなるタンパク質認識構造体。
- タンパク質結晶の表面形状およびタンパク質結晶表面に配位した特異的官能基部位を分子インプリントしてなるタンパク質認識構造体が、基板上にアレイ状に配置されたタンパク質認識基板。
- タンパク質結晶の表面形状および前記結晶表面に配位したタンパク質の特異的官能基部位を分子インプリントしてなるタンパク質認識構造体が複数基板上に配置されたタンパク質認識基板であって、前記複数のタンパク質認識構造体のそれぞれが、異なるタンパク質を認識する構造体であることを特徴とするタンパク質認識基板。
- 前記複数のタンパク質認識構造体が、同種のタンパク質認識構造体ごとに、前記基板上にアレイ状に配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のタンパク質認識基板。 - タンパク質結晶の表面にプレポリマーを接触させた状態でプレポリマーを重合させることにより、タンパク質結晶の表面形状および前記結晶表面に配位したタンパク質の特異的官能基部位を、前記プレポリマーが重合してなるポリマーに分子インプリントするタンパク質認識構造体の製造方法。
- 前記タンパク質結晶が、タンパク質の3次元結晶である
ことを特徴とする請求項5記載のタンパク質認識構造体の製造方法。 - 前記タンパク質結晶が、タンパク質の2次元結晶である
ことを特徴とする請求項5記載のタンパク質認識構造体の製造方法。 - タンパク質結晶の表面にプレポリマーを接触させた状態で重合させることにより、タンパク質結晶表面の形状および前記結晶表面に配位した特異的官能基部位を、前記プレポリマーが重合してなるポリマーに分子インプリントするインプリント工程と、
前記分子インプリントされたポリマーの塊を粉砕し、微粒子状のタンパク質認識構造体となす粉砕工程と、
前記微粒子状のタンパク質認識構造体を基板上にアレイ状に配置する配置工程と、
を備えるタンパク質認識基板の製造方法。 - タンパク質結晶の表面にプレポリマーを接触させた状態でプレポリマーを攪拌しつつ重合させ、直径1000nm以下の微粒子状のタンパク質認識構造体を作製する攪拌インプリント工程と、
前記微粒子状のタンパク質認識構造体を基板上にアレイ状に配置する配置工程と、
を備えるタンパク質認識基板の製造方法。 - 前記配置工程は、種類の異なるタンパク質結晶を用いて作製された複数種類のタンパク質認識構造体を、同種のタンパク質認識構造体ごとに、基板上に規則的に配列する工程である、
ことを特徴とする請求項8または9に記載のタンパク質認識基板の製造方法。
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