JP4542316B2 - 探査方法、磁場発生装置及び磁場検出装置 - Google Patents

探査方法、磁場発生装置及び磁場検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、EM法(Electromagnetic Method;電磁法)により地盤の比抵抗等を測定して地質解釈のための探査を行う探査装置に関し、特に、その測定機器を車搭載して移動しながら探査を行う探査方法、磁場発生装置及び磁場検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地層等の地中構造を把握して地盤の地質解釈を行うための探査手法には、EM法やMT法(Magnetotelluric Method;地磁気地電流法)などがある。EM法とは、被探査地盤に対向させた送信側のループコイルや長大線上ケーブルに電流を流して1次磁場を発生させ、これによって地中に生じる渦電流が作る2次磁場を受信側で観測して地盤の比抵抗等を測定する手法であり、MT法とは、地中で起こる電磁誘導現象により変動する電場と磁場を地面に接触させた電位斜度測定用の電位電極とアンテナで観測して地盤の比抵抗等を測定する手法である。
【0003】
このうちのEM法は、広義には電気と磁気の相互作用を利用した電気磁気探査法を総称するものであるが、磁場成分のみを測定する地面非接触型の手法であるという点で磁場成分と電場成分の双方を測定する地面接触型のMT法とは区別される。そして、地面非接触型で測定位置の移動が容易であることから、EM法による探査技術は、送信側と受信側の機器を移動させつつ測定を行い、その移動範囲における地盤の比抵抗の分布を推定する場合に利用されている。
【0004】
かかるEM探査技術で従来より実用に供されているものとしては、送受信機器を直接測定者が移動させる人力運搬型のものやヘリコプターで釣支して移動させるヘリコプター曳航型のものがある。前者の人力運搬型のものは、ケーブルで接続された送信側ループコイルと受信側ループコイルをそれぞれ人手によって運搬し、受信側ループコイルにおける磁場を観測することによって2次磁場の同相成分と離相成分を得るものであり、簡易なEM探査技術として古くから利用されている。一方、後者のヘリコプター曳航型のものは、送信機と受信機を搭載したブームをヘリコプターによって曳航し、被探査地盤の上空を移動させることによって空中から広範囲の測定を行うものであり、人が入り込むことが困難な山岳地帯等の大規模な探査に利用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年、震災や豪雨豪雪、トンネル崩落事故等の発生状況から、道路や各種建造物、河川堤防、ダムサイト等の安定度や耐震性等を調査することが要請されている。これらの調査を迅速かつ的確に行うためには、各所における地盤の地質、コンクリートや各種のり面の老朽化等、外観からの把握が困難な内部状況を比較的広範囲に亘ってできるだけ高い分解能で迅速に探査することができる非破壊計測技術が確立されなければならない。
【0006】
これに対し、上述した従来における人力運搬型のEM探査技術は、人間が送受信コイルを各測定点に移動させてその都度測定を行うものであるため、広範囲の探査を行うには膨大な時間がかかる。更に、一組の送受信コイルでは単一チャネルの周波数による特定深度の測定しかすることができないので、必要な分解能を得ることはできない。
【0007】
一方、ヘリコプター曳航型の探査技術にあっては、空気抵抗を受けつつ送受信機の搭載ブームを特定の方向に保ち、均一にデータが得られるように曳航しなければならないので、移動速度をあまり遅くすることはできず、ある程度の高速で移動しながら測定を行う必要がある。このため、道路等の上記調査に利用しようとした場合には、測定位置の進行方向について必要に応じた高い分解能を確保することが困難であり、移動速度とデータ取得の処理速度との関係や送受信機と被探査地盤との距離等を考慮すると探査深度方向についても高い分解能を得ることは容易でない。
【0008】
又、このようなことから上記調査にMT法を利用しようとしても、地面接触型であることから測定機器の設置に手間がかかり、広範囲の測定には長時間を要する上にコストパフォーマンスも悪い。人工の電流ダイポールを電磁信号源とするCSAMT法(Controlled Source Audio-frequency MT法)によっても、上記調査で要求される比較的浅部(地表から100m程度まで)の測定精度はよくないのが通常である。このように、従来においては、近年その要請がより高まってきた道路や各種建造物等についての調査に適した探査技術は特にないという実情にあった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、外観からの把握が困難な各種地盤の地質について、広範囲に亘って移動しながら連続的に探査をすることができると共に、その探査における測定を高い分解能で迅速に行うことができ、道路や各種建造物、河川堤防、ダムサイト等、種々の場所についての調査を適切に行うことを可能とするEM探査技術を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、送信部及び受信部を有する磁場送受信機器を車両と一体に移動させつつ、前記送信部によって磁場を発生させると共にその磁場と誘導磁場との合成磁場を前記受信部によって検出し、前記磁場送受信機器で発生させた磁場と検出された合成磁場とに基づき、誘導磁場が発生した地盤の地質情報を求めることを特徴としている。
【0011】
本発明は、磁場を発生させる送信部及びその磁場と誘導磁場との合成磁場を検出する受信部が取り付けられ、車両と一体に移動する磁場送受信手段と、前記車両に搭載され、前記磁場送受信手段で発生させた磁場と検出された合成磁場とに基づき、誘導磁場が発生した地盤の地質情報を求める処理手段とを有することを特徴としている。
【0012】
本発明は、前記送信部は、所定の移動距離毎に、異なる複数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させ、前記受信部は、前記1次磁場とその2次磁場が合成された磁場を前記合成磁場として検出し、前記処理手段は、前記複数の周波数それぞれにつき、前記合成磁場の前記1次磁場との同相成分及び離相成分を逐次抽出する抽出手段と、その抽出手段によって抽出された同相成分及び離相成分と前記1次磁場とに基づき、前記移動距離毎の前記地盤の地質情報を逐次演算する演算手段とを有することを特徴としている。
【0013】
ここで、上記の車両搭載型探査装置において、前記演算手段は、前記周波数、前記1次磁場及び前記離相成分に基づき、前記地質情報の1つとして前記地盤の比抵抗を演算することとしてもよい。又、前記演算手段は、前記1次磁場、前記同相成分及び前記離相成分に基づき、前記地質情報の1つとして前記2次磁場の位相を演算することとしてもよい。
【0014】
本発明は、上記の車両搭載型探査装置において、前記送信部は、前記車両が所定の分解能に応ずる速度で走行するときに一定の単位時間で移動する距離を前記移動距離として、当該距離毎に、1KH〜400KHの範囲における異なる複数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させることを特徴としている。
【0015】
尚、上記の車両搭載型探査装置においては、前記処理手段が、求められた地質情報を逐次表示する表示手段を有することとしてもよい。
【0016】
上記発明は、1次磁場を発生させると共に、その1次磁場と2次磁場との合成磁場を受け、車両と一体に移動する磁場送受手段と、前記車両に搭載され、前記磁場送受手段で発生させた1次磁場と受けた合成磁場とに基づき、2次磁場が発生した地盤の地質情報を求める処理手段とを有する車両搭載型探査装置における磁場発生装置であって、異なる複数の周波数の周波数信号を順次発生する発生手段と、前記発生手段により発生された周波数信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段から周波数信号が増幅された増幅信号を供給され、その増幅信号に応じて流れる送信電流によって前記1次磁場を発生させる送信コイルと、前記送信コイルと接続され、前記増幅信号の供給によって共振を起こす容量回路と、支持支柱に取り付けられた前記磁場送受手段を車両の後方で地盤との間に間隔をおいて対向するように保持する支持機とを有することを特徴としている。
【0017】
ここで、上記の磁場発生装置において、前記発生手段及び前記増幅手段は、前記処理手段に設けられ、前記送信コイル及び前記容量回路は、前記磁場送受手段に設けられていることとしてもよい。又、前記容量回路は、前記複数の周波数のそれぞれによって前記送信コイルと共に共振を起こす複数のコンデンサと、前記発生手段により順次発生される周波数信号の各周波数に応じて、前記複数のコンデンサのうちの当該各周波数で共振を起こすものを前記増幅手段の増幅信号出力側と前記送信コイルとの間に介挿接続する接続制御手段とを有することとしてもよい。この場合、前記複数のコンデンサは、一端が前記送信コイルと接続されており、前記接続制御手段は、前記複数のコンデンサそれぞれの他端と前記増幅信号出力側との間に設けられ、当該各周波数で共振を起こすコンデンサの他端を前記増幅信号出力側に接続する大電流高速型のスイッチであることとしてもよい。
又、上記の磁場発生装置においては、前記送信コイルが前記複数の周波数における各周波数帯用の複数のコイルを有するものとしてもよい。
【0018】
本発明は、前記増幅手段は、増幅信号出力側に接続された定電流源を有することを特徴としている。
【0019】
本発明は、前記発生手段は、水晶振動子を用いた発振回路と、前記発振回路の出力信号を、順次その周波数を分周し、前記複数の周波数の各周波数信号として順次出力する分周回路とを有することを特徴としている。
【0020】
ここで、上記磁場発生装置において、前記増幅手段は、前記発生手段により発生された周波数信号を正波形の信号と負波形の信号とに分離してそれぞれを増幅し、前記送信コイル及び前記容量回路の両端電極間に印加供給することとしてもよい。又、それらの磁場発生装置においては、入力側が前記発生手段の周波数信号出力側と接続され、出力側が外部回路へ接続されたフォトカプラを更に有することとしてもよい。
【0021】
本発明は、1次磁場を発生させると共に、その1次磁場と2次磁場との合成磁場を受け、車両と一体に移動する磁場送受手段と、前記車両に搭載され、前記磁場送受手段で発生させた1次磁場と受けた合成磁場とに基づき、2次磁場が発生した地盤の地質情報を求める処理手段とを有する車両搭載型探査装置における磁場検出装置であって、前記合成磁場を検出し、それに応じた受信信号を出力する検出手段と、前記検出手段から出力される受信信号を、前記1次磁場に応じた信号とその位相をずらした信号とによって検波し、前記合成磁場の前記1次磁場との同相成分と離相成分とを抽出する検波手段とを有することを特徴としている。
【0022】
本発明は、前記検出手段は、前記合成磁場を感知する受信コイルと、その感知電流に応じた信号を前記受信信号として出力する出力手段からなり、前記受信コイルとして、互いに直交する方向に配置された複数のコイルを有することを特徴としている。
【0023】
ここで、上記のの磁場検出装置において、前記検出手段は、前記受信コイルとして、検出しようとする磁場に応じた各周波数帯域用の複数のコイルを有することとしてもよい。又、上記装置、或いは、ここにいう複数のコイルを有する磁場検出装置においては、前記検出手段が前記磁場送受手段に設けられ、前記検波手段が前記処理手段に設けられていることとしてもよい。
【0024】
更に、以上の磁場検出装置においては、前記磁場送受手段で発生させている1次磁場を検出し、それに応じた信号を出力する1次磁場検出手段を更に有し、前記検波手段は、前記1次磁場検出手段から出力される信号を用いて前記1次磁場との同期検波信号を生成し、当該同期検波信号を前記1次磁場に応じた信号として用いることとしてもよい。この場合、前記1次磁場検出手段は、前記1次磁場が発生する箇所に設けられたコイルと、当該コイルを流れる電流中の前記1次磁場に対応する周波数帯の信号成分のみを出力するフィルタ回路とを有することとしてもよい。又、前記1次磁場検出手段から出力される信号に基づいて前記磁場送受手段で発生させた1次磁場の強度を求める1次磁場強度演算手段を更に有することとしてもよい。
【0025】
本発明は、前記検波手段によって抽出された同相成分及び離相成分に基づき、前記合成磁場の前記1次磁場に対する位相差を求める位相差検出手段を更に有することを特徴としている。
【0026】
本発明は、1次磁場を発生させると共に、その1次磁場と2次磁場との合成磁場を受け、車両と一体に移動する磁場の送受信部と、前記車両に搭載され、前記送受信部で発生させた1次磁場と受けた合成磁場とに基づき、2次磁場が発生した地盤の地質情報を求める処理手段とを有する車両搭載型探査装置における前記送受信部の支持構造であって、基端側が前記車両に連結され、伸縮により先端側の位置を移動させる第1の支持手段と、前記送受信部が取り付けられる支持手段であって、前記先端側に連結され、回転により前記送受信部の方向を変化させる第2の支持手段とを有することを特徴としている。
【0027】
ここで、上記の送受信部の支持構造において、前記第1の支持手段は、それぞれ複数の柱状部材からなり、水平方向に伸縮可能な第1の支持支柱と、鉛直方向に伸縮可能な第2の支持支柱とを有することとしてもよい。又、前記第1の支持手段は、複数の柱状部材からなり、一端側が前記基端側として前記車両に連結された伸縮可能な第3の支持支柱と、前記柱状部材の所定部位を前記車両から移動可能に支持する支持機部とを有することとしてもよい。
【0028】
本発明は、前記第2の支持手段は、互いに直交する3方向の各軸を中心として回転可能な回転部を有することを特徴としている。
【0029】
ここで、以上の送受信部の支持構造において、前記車両搭載型探査装置は、異なる複数の周波数の周波数信号を順次発生する発生手段と、前記発生手段により発生された周波数信号を増幅する増幅手段とが、前記処理手段に設けられ、前記増幅手段から周波数信号が増幅された増幅信号を供給され、その増幅信号に応じて流れる送信電流によって前記1次磁場を発生させる送信コイルと、前記送信コイルと接続され、前記増幅信号の供給によって共振を起こす容量回路とが、前記送受信部に設けられている、磁場発生装置を有することとしてもよい。又、前記車両搭載型探査装置は、前記合成磁場を検出し、それに応じた受信信号を出力する検出手段が前記送受信部に設けられ、前記検出手段から出力される受信信号を、前記1次磁場に応じた信号とその位相をずらした信号とによって検波し、前記合成磁場の前記1次磁場との同相成分と離相成分とを抽出する検波手段が前記処理手段に設けられている、磁場検出装置を有することとしてもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
<構成>1.全体構成以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による自動車搭載型EM探査システムの全体構成を示す図である。本システムは、道路や各種建造物等での調査における地盤地質探査を行うものであり、特に、地表から深度100m程度までの比較的浅部を探査対象として、地盤の比抵抗、2次磁場の位相、1次磁場と受信磁場との位相差等の地質情報を測定する。尚、本実施形態における磁場発生装置と磁場検出装置は、かかる本システムにおいて磁場の送信系と受信系を構成している部分に相当する。
【0031】
図1において、1は本システムが搭載された自動車であり、この図ではその車体の一部分を透視して車内に設置された本システムの機器を示してある。2は多数の周波数の送信電流によって1次磁場を発生させる送信部と、磁場を受信してその強度を検出する受信部とが搭載された送受信ブームである。この送受信ブーム2は、図中紙面垂直方向の幅が自動車1内に収納可能な大きさ(1.5m程度)の取付板に送信部と受信部が取り付けられたものとなっており、送信部の送信コイルと受信部の受信コイルが同幅方向に所定の間隔(EM法における送受信コイル間隔)を隔てて設置されている。
【0032】
3は一端が送受信ブーム2に取り付けられ、他端が支持機4に支持された中空の支持支柱である。ここで、支持支柱3の送受信ブーム2との取付部は着脱可能な構造となっており、必要に応じて人力移動による測定を行うこともできるようになっている。
【0033】
支持機4は、自動車1内に固設され、支持支柱3を所定の角度に支持する手段である。支持支柱3に取り付けられた送受信ブーム2は、この支持機4によって図示のように自動車1の後方で地盤と間隔を置いて対向するように保持され、自動車1と一体に安定した状態で移動するようになっている。
【0034】
ここで、支持機4内には、送信ブーム2及び支持支柱3を伸縮ないし回転させる油圧や空気圧等による駆動力発生源が内蔵されており、送受信ブーム2の保持位置を適宜変更することができるようになっている。例えば、支持支柱3は、複数の支柱状部材が伸縮可能に連結され、送受信ブーム2側が柱軸を中心に回転可能で、かつ、支持機4側を支点として上下動可能な構造となっており、送受信ブーム2は、送信コイルと受信コイルの設置部がそれぞれ紙面垂直方向の軸を中心に回転可能な構造となっている。そして、支持支柱3内と送信ブーム2には、これらの各可動部分へ支持機4からの駆動力を伝達する伝達機構が設けられている。本システムでは、このような機械的構成により、自動車1の後方において送信コイルと受信コイルをそれぞれ任意の位置に移動させ、任意の方向に向けて、測定を行うことができるようになっている(このような送受信ブーム2の支持構造については、後に他の具体的な構成例や変形例等を挙げて詳述する。)。
【0035】
又、支持支柱3と支持機4は、測定位置(送受信ブーム2の位置)を自動車1から遠ざけ、その車体による測定位置磁場への影響を低減する役割も兼ねている。更に、送受信ブーム2、支持支柱3及び支持機4は、ベークライトや木材、カーボンファイバ、ステンレス、真鍮等の磁場への影響が少ない部材によって構成されている。
【0036】
5は送受信ブーム2とEM送受信機6とを接続するケーブルであり、各種信号を伝達する複数の光ファイバや電極線等によって構成され、支持支柱3の中空部を貫通して自動車1内へ導入されている。送受信ブーム2の上記受信部等は、このケーブル5を介して、受信した磁場に応じた信号等をEM送受信機6へ供給する。
【0037】
EM送受信機6は、供給された受信磁場信号等から受信磁場の実数成分や虚数成分等を検出し、パーソナル・コンピュータ7へ出力する。又、送受信ブーム2(送信部)にて1次磁場を発生させるための上記送信電流は、このEM送受信機6からケーブル5を介して供給される。パーソナル・コンピュータ7は、EM送受信機6から受けた各検出値に基づいて地盤の比抵抗と2次磁場の位相を算出し、その結果をディスプレイ表示すると共に所定の記憶装置に格納する。これらEM送受信機6とパーソナル・コンピュータ7は図示のように自動車1内に搭載され、所定の支持台等により所定の位置に設置されて互いに接続されている。
【0038】
以上のような全体構成により、自動車1を走行させつつ送受信ブーム2においてEM法による磁場測定を行い、それと並行してEM送受信機6及びパーソナル・コンピュータ7において測定磁場についての解析を行う。以下、これらの各部の構成について詳述する。
【0039】
2.送受信ブーム2
図2は、送受信ブーム2を自動車1の後方からみたときの構成を示す図である(但し、この図は磁場の発生原理を説明するために構成を概念的に示したものとなっている。)。図示のように、送信部2Aは、多周波高速送信機21及び送信コイル22によって構成され、受信部2Bは、受信磁場強度検出器23及び受信コイル24によって構成されている。
【0040】
多周波高速送信機21は、所定のコンデンサや切替回路等を具備しており、EM送受信機6から送信電流の供給を受け、それを所定の給電形態で送信コイル22へ供給する。ここに、多周波高速送信機21が具備するコンデンサは、送信コイル22と接続された容量可変のキャパシタンスを構成しており、その容量を送信電流の周波数(測定を行うための磁場を発生させる電流の周波数。以下、この周波数を「測定周波数」といい、記号fで表す。)に応じて変化させ、共振作用によって増大された大電力の送信電流を送信コイル22へ供給するものとなっている。
【0041】
送信コイル22は、多周波高速送信機21から上述の送信電流を供給され、図示のように1次磁場HPを発生させる。これにより、地盤中には渦電流が生じて2次磁場が発生する。
【0042】
この場合において、地盤中の鉱物や粘土、地下水等を図示の導体Cに見立てると、1次磁場HPによって導体Cの周りに渦電流Icが発生し、それによって導体Cを通過する2次磁場HSが発生したものとみなすことができる。この2次磁場HSの位相は、誘導される渦電流が送信電流の位相よりも90°遅れることから同様に90°遅れ、更に大地の抵抗成分Rsとインタラクティブ成分Lsのためにtan-1(ωLs/Rs)だけずれる(以下においては、この地盤の情報を含むずれの分の位相のみを特に2次磁場の位相といい、記号φで表すことにする。)。そして地盤中には3次、4次、…の磁場も順次発生していくが、地表上におけるそれらの磁場強度は極めて小さく、地表上で観測される磁場は事実上1次磁場HSと2次磁場HPの成分のみとなる。
【0043】
ここで、送信コイル22には、発生磁場を感知する図示せぬサーチコイルが添設されており、送信電流によって実際に発生している1次磁場HPに応じた電流を多周波高速送信機21へ供給する。これにより、その電流中の不要なノイズ成分等を多周波高速送信機21にて除去し、実際に送信(発生)している1次磁場の周波数と位相を有する信号を同期検波用信号としてEM送受信機6へ供給するようになっている(尚、以上の多周波高速送信機21と送信コイル22については、後述する送信系構成の説明にて更に具体的なものを示す。)。
【0044】
一方、受信磁場強度検出器23は、増幅器やフィルタ回路等からなり、受信コイル24を流れる受信電流を増幅して不要なノイズ成分等を除去し、受信磁場信号としてEM送受信機6へ供給する。
【0045】
受信コイル24は、図中のX、Y、Z方向それぞれの方向に向けられた3つのコイル24X、24Y、24Zからなる3次元磁場検出コイルで構成されており、自動車1の左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)、上下方向(Z方向)等、あらゆる方向の磁場をそれぞれ検出し、各検出磁場強度に応じた電流を前記受信電流として受信磁場強度検出器23へ供給する(従って、受信磁場強度検出器23は3つの各コイル24X、24Y、24Zに対してそれぞれ上記増幅器やフィルタ回路等を有し、各方向の受信磁場信号をそれぞれEM送受信機6へ供給するものとなっている。)。
【0046】
この受信コイル24によって検出される磁場は、送信コイル22で発生させた1次磁場HPと導体Cにおいて発生した2次磁場HSとを合成したものとなる。すなわち、受信磁場としては、1次磁場HPと2次磁場HSとの合成磁場が得られ、その強度に応じた信号が受信磁場信号としてEM送受信機6へ供給されることになる。
【0047】
ここで、受信コイル24としては、測定周波数帯域中の高周波用と低周波用、或いは、高周波用と中間周波用と低周波用等のように、各測定周波数帯に対しての上記3次元磁場検出コイル(又は1次元若しくは2次元の磁場検出コイル等)を設け、使用する測定周波数に応じて適宜使い分けることとしてもよい。
【0048】
その一例を図3に示す。この図は、高周波用、中間周波用及び低周波用の磁場検出コイルを設ける場合の例を示すものであり、図中のCOH、COM、COLがそれぞれ高周波用、中間周波用、低周波用の磁場検出コイルとなっている。各磁場検出コイルCOH、COM、COLは、フェライト磁心にコイルを巻いたもので構成されており、取付枠FRに固定されている。取付枠FRは、円板状等の所定形状の非磁性体部材で構成されており、これに図示のように各磁場検出コイルCOH、COM、COLが互いに離隔されて固設され、コイル間の相互干渉が防止されるようになっている。
【0049】
この図3のような磁場検出コイルを使用する場合には、上記図2のコイル24X、24Y、24Zとして(すなわち、互いに直交する各方向の磁場を検出するコイルとして)、それぞれ磁場検出コイルCOH、COM及びCOLの3つのコイルを設け、受信コイル24全体としては計9個の磁場検出コイルを設ける。そして、いずれの磁場検出コイルで検出される磁場の信号を使用するかについては、測定周波数に応じて、受信磁場強度検出器23、EM送受信機6又はパーソナル・コンピュータ7において適宜選択することにする。このようにすれば、良好な受信磁場信号を得てより正確な測定を行うことが可能となる。
【0050】
3.EM送受信機6及びパーソナル・コンピュータ7
次に、EM送受信機6及びパーソナル・コンピュータ7の構成について説明する。図4は、本システムの自動車1内における機器の構成を示すブロック図である。この図に示すように、EM送受信機6は、受信磁場検波回路61、磁場ベクトル・位相差検出回路62及び送信電流供給回路63によって構成され、パーソナル・コンピュータ7は、高速A/D変換器71、バッファメモリ72、演算処理装置73、記憶装置74及びディスプレイ75によって構成されている。
【0051】
受信磁場検波回路61は、上記受信磁場強度検出器23からの受信磁場信号と多周波高速送信機21からの同期検波用信号を受け、受信磁場信号中の実数成分と虚数成分を検波して磁場ベクトル・位相差検出回路62へ出力する。ここにいう実数成分、虚数成分は、それぞれ、受信磁場中の1次磁場との同相成分、離相成分を表すものに相当し、受信磁場検波回路61においては同期検波用信号によって実数成分を検波し、同期検波用信号の位相を90°遅らせた信号によって虚数成分を検波する。又、受信磁場検波回路61は、検波した実数成分及び虚数成分と共に、多周波高速送信機21からの同期検波用信号も磁場ベクトル・位相差検出回路62へ出力する。
【0052】
磁場ベクトル・位相差検出回路62は、受信磁場を表す磁場ベクトル及び1次磁場と受信磁場との位相差を検出し、パーソナル・コンピュータ7へ出力する。すなわち、受信磁場検波回路61からの実数成分及び虚数成分をそれぞれアナログ信号形式の直流電圧信号に変換し、受信磁場ベクトルの実数成分値及び虚数成分値を表す受信磁場実数値HR及び受信磁場虚数値HIとして出力する。又、同実数成分及び虚数成分からなる信号と同期検波用信号との位相差をアナログ信号形式の直流電圧信号に変換し、受信磁場の1次磁場(送信電流)に対する位相差θとして出力する。
【0053】
送信電流供給回路63は、所定の発振回路や増幅回路、切替器(スイッチ回路)、周波数カウンタ、表示部等を具備し、複数の異なる測定周波数fの送信電流を送信コイル22へ供給する回路である。この送信電流供給回路63は、供給する送信電流の測定周波数fを高速で順次切り替え、多周波高速送信機21を介して一定時間中に一定チャネル数の送信電流を送信コイル22へ供給する送信動作を繰り返す。ここで、送信電流供給回路63には、定電流安定化回路等も設けられており、その送信動作中の送信電流値が一定に保たれるようになっている。又、送信電流供給回路63は、測定周波数fを示す信号を周波数識別用信号としてパーソナル・コンピュータ7へ供給すると共に、周波数カウンタで計数した測定周波数を適宜表示部に表示するようになっている。
【0054】
尚、EM送受信機6又は自動車1内の他の箇所には、この送信電流供給回路63と接続された送信電流の供給開始・停止指示スイッチが設けられており(図示略)、測定の開始と共に上記送信動作を開始させ、測定を終了するときにはこれを停止させることができるようになっている。但し、このような指示スイッチは、送受信ブーム2側(多周波高速送信機21側)に設けたり、パーソナル・コンピュータ7の図示せぬキーボードの特定の操作に割り当てたりすることによって構成することとしてもよい。
【0055】
更に、EM送受信機6においては、1次磁場強度値HPのアナログ電圧信号も生成し、パーソナル・コンピュータ7へ出力する。この1次磁場強度値HPの信号は、同期検波用信号を直流電圧に変換し、これに1次磁場校正係数を乗じることによって生成する。ここで、1次磁場校正係数は、上記サーチコイルから得られる同期検波用信号を1次磁場強度の値とするための乗算係数であり、大地の影響が無視できる高所の空中等、2次磁場がほとんど生じない場所で各周波数毎の1次磁場を発生させ、そのときの同期検波用信号を測定することによって予め求めておく。又、送信電流供給回路63から出力される周波数識別用信号については、EM送受信機6において高速A/D変換器71への入力規格に準じたレベル変換のみを施してパーソナル・コンピュータ7へ出力する。尚、これら1次磁場強度値HP及び周波数識別用信号に係る処理を行う回路は、上記受信磁場検波回路61、磁場ベクトル・位相差検出回路62、送信電流供給回路63のいずれに設けることとしてもよい(従って、この部分に関しての後述する磁場検出装置の構成は一つの例である。)。
【0056】
高速A/D変換器71は、パーソナル・コンピュータ7の外部入力端子に設けられたカード式A/D変換器などによって構成され、EM送受信機6からアナログ信号形式で出力される上記受信磁場実数値HR、受信磁場虚数値HI、1次磁場強度値HP、位相差θ及び周波数識別用信号をディジタルデータに変換してバッファメモリ72へ出力する。バッファメモリ72は、高速A/D変換器71からのディジタルデータを蓄積して演算処理装置73の処理速度に応じて送出する。
【0057】
演算処理装置73は、上記各種ディジタルデータに基づいて地盤の比抵抗ρ及び2次磁場HSの位相φ等を算出し、記憶装置74に格納すると共に、ディスプレイ75に所定の態様で表示させる(詳細は後述)。又、演算処理装置73は、その演算用汎用記憶領域等に現在位置を表す位置データを保持し、測定を行っている位置を把握できるものとなっている。この位置データについては、自動車1に速度検出器やGPS(Global Positioning System)等を搭載し、パーソナル・コンピュータ7で現在位置を把握して適宜更新することとしてもよいが、本実施形態では、測定開始時に初期位置に設定し、以後、自動車1の走行ないし時間の経過等に伴って順次インクリメントすることにより、順次移りゆく測定位置に対応する測定位置データn(n=1、2、3、…)を保持することにする。
【0058】
記憶装置74は、パーソナル・コンピュータ7の内部記憶装置又は外部記憶装置であり、ディスプレイ75は、演算処理装置73の制御のもとで所定の画面を表示するパーソナル・コンピュータ7の表示手段である。
【0059】
尚、10は自動車1に搭載されたバッテリであり、11はEM送受信機6の電源端子に接続された安定化電源回路である。EM送受信機6は、この安定化電源回路11により各回路を動作させるための安定した直流電源を供給されるようになっている。又、12はパーソナル・コンピュータ7の電源端子に接続されたDC/ACコンバータであり、これによってバッテリ10の直流電圧が交流電圧に変換されてパーソナル・コンピュータ7の演算処理装置73等へ供給される。
【0060】
4.測定形態とその具体的構成例
以上が本システムの基本的な構成であるが、本システムでは更にいくつかの特有な測定形態を採用している。そこで、以下、本システムで用いるEM法の測定原理について概説し、本システムにおける測定形態を具体的に明らかにすると共に、その測定形態の実施のための更に具体的な構成例を示すことにする。
【0061】
(1)磁場からの比抵抗算出
今、送信コイル22によって1次磁場HPを発生させ、受信コイル24においてその1次磁場HPと2次磁場HSの合成磁場が受信されたとする。この場合において、1次磁場と2次磁場の比HS/HPは、次式によって表される。
【数1】
Figure 0004542316
【数2】
Figure 0004542316
【0062】
ここで、数1は、送受信コイルが共に地表面に垂直の場合における比HS/HPを表し、例えば、送信コイル22の中心軸を地表面と垂直にして図2に示した状態の受信コイル24のコイル24Zで磁場を受信する場合がこれに当たる。一方、数2は、送受信コイルが共に地表面に水平の場合における比HS/HPを表し、例えば、送信コイル22の中心軸を地表面と平行(Y方向)にして図2に示した状態の受信コイル24のコイル24Yで磁場を受信する場合がこれに当たる。
【0063】
又、両式中、2次磁場HSは、1次磁場HPとの同相成分を実数部、離相成分を虚数部とする複素数であり、sは送信コイルと受信コイルとのコイル間隔(上記所定の間隔)であり、γは
【数3】
Figure 0004542316
である。ここに、jは虚数単位、ωは測定角周波数で2π×測定周波数f、μ0は真空の透磁率(4π×10-7H/m)、σは被測定地盤の電気伝導率(S/m)である。被測定地盤の比抵抗ρ(Ω・m)は、この電気伝導率σの逆数(1/σ)となる。
【0064】
一方、地盤中の磁場強度は、深さ方向に対して指数関数的に減衰する。その指数関数exp(−αd)における深さdの係数αは、次式によって与えられる。
【数4】
Figure 0004542316
【0065】
ここで、磁場強度が地表の1/e(約37%)になる深さは表皮深度(skin depth)と呼ばれ、探査深度を考える目安として用いられる。その深度δは、比抵抗ρを用いると次式によって表される。
【数5】
Figure 0004542316
【0066】
そして、上記数1及び数2におけるγsは、コイル間隔sと表皮深度δとの比s/δにより、
【数6】
Figure 0004542316
で与えられる。
【0067】
このγsが1より十分に小さい場合、数1及び数2は、共に次式によって表すことができる。
【数7】
Figure 0004542316
【0068】
測定周波数fを高くした場合やコイル間隔sを大きくした場合には、γsが1に近づいて数7の式は成立しなくなる。これに対し、本システムでは、測定周波数fを数KH〜数百KH程度、コイル間隔sを1m程度とし、数7の式が成立する範囲で測定を行うようにする。この場合、電気伝導率σは、
【数8】
Figure 0004542316
で表される。ここに、HSIは2次磁場HSの離相成分(虚数部)である。
【0069】
従って、被測定地盤の比抵抗ρは、数8のσの逆数1/σを計算することによって算出することができる。尚、数7の式が成立しない範囲については、数1若しくは数2の式に基づいて演算を行うこととすればよい。
【0070】
(2)受信磁場と2次磁場の関係以上のようにして被測定地盤の比抵抗ρを求めることができるが、上述したように受信コイル24で受信されるのは1次磁場HPと2次磁場HSの合成磁場であり、2次磁場HSは1次磁場HPよりも位相が90°+φだけずれている。
【0071】
それらの磁場の関係を図5に示す。この磁場ベクトル図に示すような合成磁場Hが正しく受信され、その同相成分と離相成分が正しく検波されないと2次磁場HSは得られない。そこで、本システムにおいては、大地の影響が無視できる高所の空中等、2次磁場HSがほとんど生じない場所で各周波数毎の1次磁場HPを発生させ、そのときの受信磁場が同相成分100%、離相成分0%となるように、すなわち、1次磁場HPが100%同相で検出されるように、予め上記受信磁場強度検出器23及び受信コイル24の機器校正をしておき、2次磁場HSが発生したときには図示の合成磁場Hが正しく受信されるようにしておく。
【0072】
これにより、上記受信磁場検波回路61での検波と磁場ベクトル・位相差検出回路62での磁場ベクトル検出においては、図5に示す合成磁場Hの各成分の大きさが上記受信磁場実数値HR及び受信磁場虚数値HIとして得られ、パーソナル・コンピュータ7へ出力されることになる。そして、図5からもわかるように、受信磁場虚数値HIは2次磁場HSの上記離相成分HSIに相当するので、被測定地盤の比抵抗ρは、
【数9】
Figure 0004542316
によって算出することができることになる。
【0073】
又、2次磁場の位相φについては、2次磁場HSの同相成分が1次磁場強度値HP−受信磁場実数値HRに相当するので、
【数10】
Figure 0004542316
によって算出することができる。
【0074】
尚、合成磁場Hの同相成分と離相成分は、合成磁場Hと送信電流との位相差θを位相検出器によって測定しておき、2次磁場HSの大きさを
【数11】
Figure 0004542316
として求めることによっても算出することができる。但し、この場合の1次磁場強度値HPは、上記同様の高所等で予め各周波数毎に測定した値を用いる必要がある。
【0075】
ここで、位相差θについては、本システムでは上記磁場ベクトル・位相差検出回路62にて検出し、それ自体を単独で地質情報の1つとして取り扱う。この位相差θは、その変化が小さいほど地盤が均質であり、逆に大きいほど地盤が不均質であることを表す。
【0076】
(3)測定周波数の選択次に、本システムにおける測定周波数fの形態について説明する。探査深度の目安は上記数5の式で表される表皮深度δを基準として考えることができるが、測定周波数fはこれを決定する要素となっている。数5の表皮深度δによれば、測定周波数fが高いと探査深度は浅くなることが分かる。これは、測定周波数が高くなるほど地中でのエネルギー損失が大きくなり、深部までは電磁波が透過しにくくなるためである。又、探査深度は地盤の比抵抗ρの大小によっても変化し、比抵抗が小さい地盤ほど電磁波が透過しにくくなって探査深度は浅くなる。
【0077】
従って、地表付近をできるだけ高い分解能で精度よく探査するために、探査システム側に要求されることは、より高い測定周波数をより細かいピッチで多く使用することである。しかし、一般に高周波になるほど送信機や受信機の設計は困難となる。更に、高周波信号を使用する場合には、他の電波に対する電波障害を避けることも考慮しなければならない。
【0078】
このようなことから本システムにおいては、測定周波数fの上限を400KHz以下で選定することにする。この場合、上限測定周波数を例えば300KHzにとると、数5より比抵抗100Ω・mの地盤では最浅表皮深度は9.2m、10Ω・mの地盤では最浅表皮深度は2.9mとなり、浅部の探査にも充分対応することができる。
【0079】
又、測定周波数fを10KHzとすると、比抵抗100Ω・mの地盤では表皮深度は50m、1Ω・mの地盤では5mとなる。更に、測定周波数fを1KHzに下げると、比抵抗100Ω・mの地盤では表皮深度は160m、1Ω・mの地盤では16mとなる。従って、平均比抵抗10Ω・m程度の低比抵抗地盤から平均比抵抗1000Ω・m程度の高比抵抗地盤に対しては、測定周波数を数KHzにすれば100m台の深度を探査することができる。そこで、地表から100m程度の深度を探査対象とする本システムとしては、測定周波数fの下限を1KHz以上で選定することにする。
【0080】
すなわち、本システムにおいては、測定周波数fを1KHz〜400KHzの範囲で複数選択し、その複数の周波数の送信電流を多周波高速送信機21で生成して順次送信コイル22へ供給することにする。そして実際には、測定周波数f毎に得られた比抵抗ρをもとに層状地盤を仮定した1次元解析法により深度方向の真の比抵抗分布に割り戻す処理を行うが(詳細は後述)、通常、この処理によれば表皮深度δよりも細かい地層分解ができるので、数100KHz帯の測定周波数でおよそ0.5m〜1m程度の地層分解が期待できる。但し、測定周波数fのピッチはできるだけ細かくする必要がある。
【0081】
以上の考察を踏まえ、本システムで使用する測定周波数fの一例を示すと次のようになる。
A系列(KHz): 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256 の8チャネルB系列(KHz): 3, 6, 12, 24, 48, 96, 192, 384 の8チャネル
【0082】
このように、数KHz〜数100KHzまでの周波数を用意すると共に、A系列の各チャネル間をB系列の各チャネルで埋めるようにして測定周波数間のピッチを細かくする。これにより、例えば地盤の比抵抗ρが10Ω・mであれば、表皮深度δはf=256KHzで3.1m、f=384KHzで2.6mとなり、0.5m程度の地質分解能が期待できる。又、比抵抗1000Ω・m程度の高比抵抗地盤では、最大深度300m程度までの測定を行うこともできることになる。
【0083】
本実施形態では、上記A、B両系列の16チャネルを使用するものとして以下の話を進める。但し、実際の測定で使用する測定周波数fは、A系列若しくはB系列のいずれかの8チャネルのみとしてもよく、A系列のみ若しくはB系列のみ又はA及びBの両系列をボタン操作等によって選択できるようにしておき、要求される地質分解能に応じて適宜選択することとしてよい。
【0084】
(4)測定周波数毎の送信
本システムにおいては自動車1を走行させながら測定を行うので、自動車1の走行速度と上記16チャネルの送信電流を送信コイル22へ供給するタイミングに応じて地質分解能が変わる。本実施形態では、自動車1を時速20Km(秒速約5.6m)で走行させ、1秒間で16チャネルの周波数すべてによる送信を行うことにする。この場合、1チャネル当たりの送受信及び演算処理の時間は62.5msecとなり、走行方向については5.6m毎の平均的な地質情報を探査することになる。
【0085】
従って、上記多周波高速送信機21及び送信電流供給回路63としては、62.5msec毎に送信電流の周波数を順次切り替え、1秒間に2KHz、3KHz、4KHz、6KHz、…、128KHz、192KHz、256KHz、384KHzというA系列及びB系列の16チャネルの送信電流を順次送信コイル22へ供給するものを用いる。又、上記受信磁場強度検出器23、受信コイル24、受信磁場検波回路61及び磁場ベクトル・位相差検出回路62については、かかる送信電流による測定周波数fの変化に追従する高速動作回路によって構成することにする。尚、これらの送受信器機は、既存の回路素子によって充分製造可能であり、市場に流通している安価な製品によって構成することも、不可能ではない。
【0086】
一方、上記高速A/D変換器71としては、62.5msec毎に入力信号をサンプリングしてA/Dを行うものを用いる。そして、上記バッファメモリ72ではかかる高速A/D変換器71から62.5msec毎に供給されるディジタルデータを適宜蓄積して演算処理装置73へ送出することとし、上記演算処理装置73としては、少なくとも後述する16チャネルすべてについての演算処理を1秒間で完了することができる処理能力を有するものを用いることにする。尚、これらの器機についても既存のパーソナル・コンピュータやその周辺機器によって製造することが可能である。
【0087】
すなわち、本システムは、自動車1と共に送受信ブーム2を移動させるものとなっているので、この時速20Km等のような数10Km程度の低速度によって測定位置を安定した状態で定速移動させることができ、これによって実際に製造可能な機器で高い分解能の地質情報が得られる測定を可能としているのである。換言すれば、本システムにおいては、自動車1の走行速度を任意に選定し、それによって測定位置の移動速度を適宜決定することができるので、実現可能な機器によって必要とされる分解能を得ることができるように、送信部2A、受信部2B、ケーブル5、EM送受信機6及びパーソナル・コンピュータ7の構成と自動車1の走行速度とを決定しているのである。
【0088】
(5)磁場の送信系
ここで、以上のような本システムにおける磁場の送信系、すなわち、本実施形態における磁場発生装置について詳述し、その具体的な構成を明らかにする。図6は、同磁場発生装置の構成を示すブロック図である。この図においては、上述した各構成要素に対応するものを同一符号で示してある。
【0089】
図示のように、送受信ブーム2側の多周波高速送信機21は、共振用スイッチSW1〜SW16、共振用コンデンサC1〜C16及び給電切替スイッチ21SW等によって構成されている。そして、ケーブル5中の信号線である送信電流供給線5a、5b及びスイッチ制御線5cによって自動車1内(EM送受信機6内)の送信電流供給回路63と接続されている。
【0090】
共振用スイッチSW1、SW2、…、SW16は、それぞれ一端側が送信電流供給線5aと接続され、他端側が共振用コンデンサC1、C2、…、C16と接続された大電流高速型のリレースイッチであり、スイッチ制御線5cを介して供給される制御信号(後述)によってオン/オフが制御される。共振用コンデンサC1、C2、…、C16は、それぞれ給電切替スイッチ21SWを介して送信コイル22と接続され、共振用スイッチSW1、SW2、…、SW16がオンして送信電流供給回路63から上記2KHz、3KHz、…、384KHzの各チャネルの信号電圧が印加されるときに、送信コイル22と共に共振を起こす容量をもつものとなっている。これらの共振用コンデンサC1〜C16としては、各チャネルの信号電圧によって安定した大きな送信電流が流れるようにするために、温度変化がなく、かつ、耐電圧が大きい高圧用のものを用いるようにする。
【0091】
給電切替スイッチ21SWは、共振用コンデンサC1〜C16と送信コイル22との間に介挿された3端子スイッチであり、これもスイッチ制御線5cを介して供給される制御信号によって接続状態が制御される。送信コイル22としては、上記受信コイル24について述べたのと同様、高周波用と低周波用、或いは、高周波用と中間周波用と低周波用等のように、各周波数帯に対しての1次磁場発生用コイルを設け、測定周波数に応じて適宜使い分けることとしてよく、図6はその一例として高周波用送信コイル22Hと低周波用送信コイル22Lを設けた場合の構成を示しており、そのうちのいずれのコイルへ送信電流を供給するかを給電切替スイッチ21SWが切り替えるようになっている。
【0092】
すなわち、本磁場発生装置では、送信コイル22として高周波用送信コイル22Hと低周波用送信コイル22Lが設けられており、それら双方の一端側が送信電流供給線5bと接続され、他端側がそれぞれ給電切替スイッチ21SWの別々の端子に接続されている。そして、共振用スイッチSW1〜SW16のオン/オフと給電切替スイッチ21SWの接続状態に応じて、共振用コンデンサC1〜C16のいずれか1つと高周波用送信コイル22H及び低周波用送信コイル22Lのいずれか一方とが直列に接続され、送信電流供給線5a及び5bに印加される信号電圧によって直列共振するLC回路が形成される構成となっている。
【0093】
尚、SCは送信コイル22に添設された上述のサーチコイルであり、これを流れる電流が多周波高速送信機21へ供給され、上記同期検波用信号となってEM送受信機6内の受信磁場検波回路61へ供給される(このサーチコイルSCに係る部分の構成については、後述する受信系の構成にて詳述する。)。
【0094】
一方、送信電流供給回路63は、局発回路63LO、分周回路63FD、周波数カウンタ63FC、矩形波発生回路63PG、フォトカプラ63PC、周波数ディジタル変換回路63DC、スイッチ制御回路63SC、波形整形回路63W1、63W2、送信電流増幅回路63AM、出力メータ63OM及び定電流安定化回路63REによって構成されている。
【0095】
局発回路63LOは、周波数16.384MHzの高周波信号を発生させる局部発振器回路であり、その信号出力端子が分周回路63FDへ接続されている。この局発回路63LOは、水晶振動子QCを利用した水晶発振器で構成されており、精度の高い安定した周波数で発振し続けるものとなっている。
【0096】
分周回路63FDは、局発回路63LOから出力された高周波信号を分周し、上記2KHz、3KHz、…、384KHzの各測定周波数の信号を順次出力する周波数分割器回路であり、その分周出力端子が周波数カウンタ63FC、フォトカプラ63PC、周波数ディジタル変換回路63DC、波形整形回路63W1及び63W2へとそれぞれ接続されている。ここで、分周回路63FDの1周波数当たりの出力持続時間は62.5msecとなっており、1秒間で上記16チャネルすべての測定周波数信号を順次出力し、毎秒その出力動作を繰り返して前記各回路へ測定周波数信号を供給するようになっている。
【0097】
周波数カウンタ63FCは、分周回路63FDから順次出力される各測定周波数信号の周波数を計数するカウンタである。矩形波発生回路63PGは、矩形波を発生させてそのパルス信号を出力する回路であり、周波数カウンタ63FCのカウントパルス入力端子へ接続されている。この矩形波発生回路63PGには発生矩形波の周波数を調整する可変抵抗RVが設けられており、周波数カウンタ63FCはこれによって適宜周波数調整されたパルス信号に従って計数動作を行い、計数した周波数を所定の表示部へ供給して表示させる。
【0098】
フォトカプラ63PCは、測定周波数信号を周波数識別用信号に変換してパーソナル・コンピュータ7へ伝送する電気信号経路中に介挿されたもので、入力側が分周回路63FDと接続され、出力側が送信電流供給回路63外の回路へと接続されている。これにより、受信系(受信磁場検波回路61及び磁場ベクトル・位相差検出回路62等)やその他の周辺回路から送信電流供給回路63へのノイズ電流が遮断され、送信電流供給回路63内の精確な回路動作が確保されるようになっている。尚、フォトカプラ63PCを介した測定周波数信号は、EM送受信機6内の図示せぬ周波数カウンタ等によって測定周波数値を精密に示す周波数識別用信号に変換され、パーソナル・コンピュータ7へと供給される。
【0099】
周波数ディジタル変換回路63DCは、測定周波数信号を対応するチャネルのディジタル信号に変換する回路であり、スイッチ制御回路63SCと接続されている。ここにいうディジタル信号は、上記16チャネルの測定周波数のいずれかを特定する信号であり、例えば、4ビットのディジタルデータによって16のチャネルを表すものとなっている。かかるディジタル信号を用い、周波数ディジタル変換回路63DCは、分周回路63FDから順次出力される各測定周波数信号に基づいてその周波数が該当する上記16チャネルのうちのいずれかのチャネルを示すディジタル信号をスイッチ制御回路63SCへ供給する。
【0100】
スイッチ制御回路63SCは、スイッチ制御線5cに接続されており、周波数ディジタル変換回路63DCからのディジタル信号に基づいて上記制御信号を出力する。ここで、共振用スイッチSW1〜SW16に対する制御信号としては、同ディジタル信号が示すチャネルの周波数で共振する共振用コンデンサに接続されたもののみをオンさせる信号を出力する。すなわち、同ディジタル信号の示すチャネルが2KHzであったときには共振用スイッチのSW1のみをオンして他をオフする制御信号を、3KHzであったときには共振用スイッチのSW2のみをオンして他をオフする制御信号を、…、384KHzであったときには共振用スイッチのSW16のみをオンして他をオフする制御信号を、それぞれ出力する。
【0101】
又、給電切替スイッチ21SWに対する制御信号としては、同ディジタル信号が示すチャネルの周波数の高低に応じて接続状態を変化させる信号を出力する。例えば、そのチャネル周波数が前半の8周波数(2KHz〜24KHz)のときは低周波用送信コイル22Lへ接続させ、後半の8周波数(32KHz〜384KHz)のときは高周波用送信コイル22Hへ接続させる制御信号を出力する。或いは、100KHz以下(2KHz〜96KHz)のときは低周波用送信コイル22Lへ接続させ、100KHz以上(128KHz〜384KHz)のときは高周波用送信コイル22Hへ接続させる制御信号を出力したりする(この制御信号については、使用する測定周波数や各送信コイルの特性等に応じて適宜定める。)。
【0102】
波形整形回路63W1、63W2は、それぞれ正、負の電圧波形信号のみを通過させる回路であり、ICインバータ等によって構成されている。これらの波形整形回路63W1、63W2は、それぞれ、出力側が送信電流増幅回路63AMの入力側へ接続されており、分周回路63FDから入力する測定周波数信号電圧の正波形、負波形のみを送信電流増幅回路63AMへ入力する。
【0103】
送信電流増幅回路63AMは、波形整形回路63W1、63W2からの正波形電圧、負波形電圧をそれぞれ増幅して出力し、測定周波数信号値を増幅した大きさの送信電流を出力側へ供給する出力回路である。すなわち、送信電流増幅回路63AMは、その正波形側、負波形側の出力端子がそれぞれ送信電流供給線5a、5bと接続されており、共振用スイッチがオンしている共振用コンデンサと給電切替スイッチが接続している送信コイルに対して増幅した測定周波数信号電圧を印加し、それによって当該共振用コンデンサと送信コイルに共振を起こさせ、測定周波数信号値を増幅した大きな送信電流を供給する。尚、出力メータ63OMは、その送信電流をモニタリングする計器であり、送信電流増幅回路63AMの出力側に介挿されている。
【0104】
定電流安定化回路63REは、上記安定化電源回路11からの直流定電圧を駆動電圧源とし、安定した一定の電流を供給する定電流電源回路である。その電流供給端子は、一方が送信電流増幅回路63AMの正波形側出力端子及び送信電流供給線5aと接続され、他方が送信電流増幅回路63AMの負波形側出力端子及び送信電流供給線5bと接続されており、送信電流増幅回路63AMが送信電流供給線5a、5b、共振用コンデンサC1ないしC16及び送信コイル22へ供給する送信電流の振幅を一定に保持するようになっている。
【0105】
本磁場発生装置の構成は以上の通りであるが、上記構成においては、実際に磁場を発生させる磁場発生部(多周波高速送信機21及び送信コイル22)と、その磁場発生のための送信電流を生成・供給する電流生成部(送信電流供給回路63)とを分離し、それぞれ送受信ブーム2側、自動車1内に搭載することとしている。
【0106】
すなわち、本システムでは、自動車1の車体による磁場への影響を避けるために、支持支柱3と支持機4によって送受信ブーム2を保持して自動車1から遠ざけることとしているので、送受信ブーム2の重量をできるだけ小さくする必要があり、その重量が大きいと支持支柱3をあまり長くすることができず、送受信ブーム2を自動車1から遠ざけることができなくなる。そこで、本磁場発生装置は、小型のコイルやコンデンサ等の軽量な材料だけで構成することのできる磁場発生部と、多くの回路素子を要する比較的重量の大きな電流生成部とに構成を分け、自動車1外の支持支柱3先端で保持する部分を小型で軽量な磁場発生部とし、これにより、車体による磁場への影響を避け得る位置まで支持支柱3を延長して送受信ブーム2を適切な測定位置で保持することができるようにしているのである。
【0107】
(6)磁場の受信系
次に、本システムにおける磁場の受信系、すなわち、本実施形態における磁場検出装置について詳述し、その具体的な構成を明らかにする。図7は、同磁場検出装置の構成を示すブロック図である。この図においては、上述した各構成要素に対応するものを同一符号で示し、左側から順に送受信ブーム2側、支持支柱3内(ケーブル5)、自動車1内(EM送受信機6)における磁場検出装置の構成要素に相当する部分を表してある。
【0108】
図中、“21(一部)”とあるのは、多周波高速送信機21における同期検波用信号を得るための構成部分(上記サーチコイルSCに係る部分の構成)のみを示したものである。この部分は、サーチコイルSCの一端がそれぞれ入力側に接続されたバンドパスフィルタ21B1、21B2、…、21B16と、サーチコイルSCの他端が接続された基準電位電極21Eとで構成されており、バンドパスフィルタ21B1〜21B16の出力側がまとめられてケーブル5中の1の信号線5dと接続されている。ここで、サーチコイルSCは、送信コイル22の軸方向延長上で中心芯軸を共にする位置に設置されており、送信コイル22で生じた磁場が鎖交してそれに応じた誘導電流が流れるようになっている。
【0109】
バンドパスフィルタ21B1、21B2、…、21B16は、上記16チャネルの測定周波数のうち、それぞれが互いに異なる1周波数の信号成分のみを通過させるフィルタとなっている。これらのフィルタにより、サーチコイルSCを流れる誘導電流中の測定周波数以外の成分が除去され、発生している1次磁場HPに対応する測定周波数と位相を有する信号が同期検波用信号となってケーブル5側へ供給される。
【0110】
受信磁場強度検出器23は、受信コイル24を構成するコイル24X、24Y、24Zの一端が入力側に接続されたプリアンプ23PX、23PY、23PZと、それらプリアンプの出力側が接続されたバンドパスフィルタ23BX、23BY、23BZとを具備しており、バンドパスフィルタ23BX、23BY、23BZの出力側がそれぞれケーブル5中の別々の信号線5eと接続されている。又、受信磁場強度検出器23内には基準電位電極23EX、23EY、23EZが設けられ、それぞれコイル24X、24Y、24Zの他端が接続されている。
【0111】
プリアンプ23PX、23PY、23PZは、地表面上で感知される合成磁場中の2次磁場成分(HS)が小さいことから、同合成磁場に応じてコイル24X、24Y、24Zを流れる受信電流中の2次磁場相当成分が埋もれてしまわないように増幅作用をなす前置増幅器である。バンドパスフィルタ23BX、23BY、23BZは、それぞれ上記16チャネルの測定周波数の下限(2KHz)から上限(384KHz)までの周波数帯域における信号成分のみを通過させるフィルタである。これらのプリアンプとフィルタにより、コイル24X、24Y、24Zを流れる受信電流が増幅されて測定周波数帯域以外の成分が除去され、各方向の受信電流値に対応する受信磁場信号となってケーブル5側へ供給される。
【0112】
尚、上述した図3の場合のように、コイル24X、24Y、24Zとしてそれぞれに高周波用、中間周波用及び低周波用等の複数の磁場検出コイルを設ける場合にあっては、それらに応じた数のプリアンプとバンドパスフィルタを設ける。すなわち、受信磁場強度検出器23に設けるプリアンプとしては、それぞれが接続される磁場検出コイルで検出しようとする高周波、中間周波又は低周波等の受信電流周波数帯域における特性が適切なもの(所望の定増幅利得で位相ずれがないものなど)を用いる。又、バンドパスフィルタとしては、それぞれがプリアンプを介して接続される磁場検出コイルで検出しようとする高周波、中間周波又は低周波等の受信電流周波数帯域の成分のみを通過させるフィルタを用いるようにする。
【0113】
一方、自動車1内のEM送受信機6は、受信磁場検波回路61がアンプ61A、バッファ回路61B、PLL位相同期ループ61PLL、位相制御回路61PH、実数成分同期検波回路61DR及び虚数成分同期検波回路61DIで構成され、磁場ベクトル・位相差検出回路62がフィールドテストデータ記憶部62F、1次磁場校正係数読出回路62R、DC変換回路62DC、位相/電圧変換回路62PV、受信磁場強度出力回路62OR、位相出力回路62OP及び1次磁場強度出力回路62OTで構成されている。図7では省略してあるが、これらの構成要素のうち、アンプ61A、実数成分同期検波回路61DR、虚数成分同期検波回路61DI、位相/電圧変換回路62PV、受信磁場強度出力回路62OR及び位相出力回路62OPについては、コイル24X、24Y、24Zからのそれぞれの方向の受信磁場信号に対するものが設けられている(但し、これらの構成要素は1組だけ設けることとし、所定の切替回路等を追加して時分割で動作させたり、適宜必要な1方向の受信磁場信号のみを処理することとしたりして、それぞれの方向の受信磁場信号の処理に共用する構成としてもよい。)。
【0114】
アンプ61Aは、入力側が上記信号線5eと接続され、受信磁場強度検出器23からの受信磁場信号を検波処理に適したレベルに増幅する。バッファ回路61Bは、入力側が上記信号線5dと接続され、出力側がPLL位相同期ループ61PLL及びDC変換回路62DCの入力側と接続されており、多周波高速送信機21からの同期検波用信号の送出タイミングを受信磁場信号の回路内伝達遅延に応じて調整する。
【0115】
PLL位相同期ループ61PLLは、バッファ回路61Bを介して入力する同期検波用信号から同じ周波数と位相を有する安定した検波信号を生成し、位相制御回路61PHへ供給する。位相制御回路61PHは、実数成分同期検波回路61DR及び虚数成分同期検波回路61DIと接続され、実数成分同期検波回路61DRへは供給された検波信号(コサイン成分検波用信号)を出力し、虚数成分同期検波回路61DIへは同検波信号の位相を90°遅らせた信号(サイン成分検波用信号)を出力する。実数成分同期検波回路61DR、虚数成分同期検波回路61DIは、それぞれ位相制御回路61PHからの信号によってアンプ61Aを介して入力する受信磁場信号の同期検波を行う。これにより、受信磁場信号中の実数成分と虚数成分が検波され、磁場ベクトル・位相差検出回路62へ出力される。
【0116】
フィールドテストデータ記憶部62Fは、フィールドテスト(上述した高所の空中等での同期検波用信号測定)によって予め求めた各周波数毎の1次磁場校正係数が格納された記憶部である。1次磁場校正係数読出回路62Rは、多周波高速送信機21から供給されている同期検波用信号の測定周波数に対応する1次磁場校正係数をフィールドテストデータ記憶部62Fから読み出し、DC変換回路62DCへ出力する。尚、このような読出動作をさせるためには、読出アドレスを上記周波数識別用信号に基づいて制御したり、読出順序が測定周波数の使用順序に対応している読出回路を予め用意しておいたりすればよい。DC変換回路62DCは、バッファ回路61Bを介して入力する同期検波用信号を直流信号に変換し、それに1次磁場校正係数読出回路62Rからの1次磁場校正係数を乗じて出力する。
【0117】
位相/電圧変換回路62PVは、実数成分同期検波回路61DR及び虚数成分同期検波回路61DIと接続され、これらが出力する実数成分及び虚数成分によって示される受信磁場信号の位相を電圧信号に変換して出力する。
【0118】
受信磁場強度出力回路62OR、位相出力回路62OP及び1次磁場強度出力回路62OTは、それぞれ出力側が上記高速A/D変換器71の入力端子と接続されている。そして、受信磁場強度出力回路62ORは、入力側が実数成分同期検波回路61DR及び虚数成分同期検波回路61DIと接続され、これらが出力する実数成分及び虚数成分をそれぞれ高速A/D変換器71への入力規格に準じたアナログ信号形式の直流電圧信号に変換し、受信磁場実数値HR及び受信磁場虚数値HIとして出力する。位相出力回路62OPは、入力側が位相/電圧変換回路62PVと接続され、これが出力する位相の電圧信号を同アナログ信号形式の直流電圧信号に変換し、受信磁場の1次磁場に対する位相差θとして出力する。1次磁場強度出力回路62OTは、入力側がDC変換回路62DCと接続され、これが出力する1次磁場校正係数を乗じられた上記直流信号を同アナログ信号形式の直流電圧信号に変換し、1次磁場強度値HPとして出力する。
【0119】
本磁場検出装置の構成は以上の通りであるが、上記構成においては、磁場を受信・検出するための受信部分(受信磁場強度検出器23や受信コイル24等)と、検出された磁場から各種検出値のデータを得るためのデータ収集部分(受信磁場検波回路61及び磁場ベクトル・位相差検出回路62)とを分離し、それぞれ送受信ブーム2側、自動車1内に搭載することとしている。
【0120】
すなわち、本システムでは、上述したように送受信ブーム2の重量が大きいとこれを自動車1から遠ざけることができなくなるので、上記磁場発生装置同様、本磁場検出装置は、小型のコイル等の軽量な材料だけで構成することのできる受信部分と、多くの回路素子を要する比較的重量の大きなデータ収集部分とに構成を分け、自動車1外の支持支柱3先端で保持する部分を小型で軽量な受信部分とし、これにより、車体による磁場への影響を避け得る位置まで支持支柱3を延長して送受信ブーム2を適切な測定位置で保持することができるようにしている。
【0121】
又、本磁場検出装置と上記磁場発生装置は、このように送受信ブーム2側の構成を小型軽量化することにより、送受信ブーム2、支持支柱3及び支持機4を上述したようなベークライトや木材、カーボンファイバ、ステンレス、真鍮等の磁場への影響が少ない部材によって構成することも容易にしている。
【0122】
<動作>
次に、上記構成による本システムの測定動作について説明する。図8は、その測定動作の流れを示すフローチャートである。本システムは、電源を投入して各機器を起動させると共に、所望の測定場所の測定開始位置から自動車1を時速20Kmで走行させ、送信電流供給回路63へ送信電流の供給開始指示をすることにより、図8に示す流れに従った測定を開始する。
【0123】
まず、送信電流供給回路63が測定周波数信号の周波数を2KHzとし、初期の測定周波数(A系列の第1チャネル)の送信電流を送信コイル22へ供給する(ステップS1)。
【0124】
すなわち、局発回路63LOが高周波信号を発振し始めると共に、分周回路63FDがその発振出力を分周して最初の2KHzの測定周波数信号を出力し、それを受けた周波数ディジタル変換回路63DCが測定周波数2KHzのチャネルを示すディジタル信号をスイッチ制御回路63SCへ供給する。すると、そのディジタル信号を受けたスイッチ制御回路63SCより、共振用スイッチのSW1のみをオンしてSW2〜SW16をオフする制御信号と給電切替スイッチ21SWを低周波用送信コイル22Lへ接続させる制御信号とがスイッチ制御線5cへ出力される。又、このとき同時に、波形整形回路63W1、63W2及び送信電流増幅回路63AMによって当該測定周波数信号が増幅され、送信電流供給線5a及び5bに印加される。
【0125】
これにより、磁場発生部においては、共振用コンデンサC1と低周波用送信コイル22Lとが直列に接続されると共に、増幅された2KHzの測定周波数信号が印加され、直列共振が生じて大きな送信電流が流れる。そして、低周波用送信コイル22Lを流れるその送信電流により、測定周波数2KHzの場合の1次磁場HPが発生する。
【0126】
このようにして発生した1次磁場HPにより渦電流Ic、2次磁場HSが発生し、合成磁場Hが受信コイル24のコイル24X、24Y、24Zにてそれぞれ感知されることによって受信される。そして、それら受信磁場に応じた受信電流が受信磁場強度検出器23にてプリアンプ23PX、23PY、23PZにより増幅され、バンドパスフィルタ23BX、23BY、23BZにより測定周波数帯域の信号成分のみからなる受信磁場信号とされて受信磁場検波回路61へ供給される。
【0127】
又、発生した1次磁場HPがサーチコイルSCで感知され、その感知磁場を示す信号が多周波高速送信機21内を介して同期検波用信号とされてEM送受信機6へ供給される。すなわち、多周波高速送信機21においては、サーチコイルSCで1次磁場HPが感知されてそれに応じた誘導電流が流れ、その誘導電流中の測定周波数以外の成分がバンドパスフィルタ21B1〜21B16により除去されてケーブル5側へ出力される。これにより、1次磁場HPに対応する測定周波数と位相を有する信号のみが同期検波用信号として受信磁場検波回路61へ供給される。
【0128】
一方、送信電流供給回路63内では同時に測定周波数信号がフォトカプラ63PCを介して出力される。又、周波数カウンタ63FCにより測定周波数信号の周波数が計数され、表示部に測定周波数(2KHz)が表示される。
【0129】
続いてEM送受信機6において、受信磁場実数値HR、受信磁場虚数値HI、1次磁場強度値HP及び1次磁場HPと受信磁場Hとの位相差θを検出する処理が行われる(ステップS2)。すなわち、PLL位相同期ループ61PLLによりバッファ回路61Bを介した同期検波用信号から検波信号が生成され、その検波信号が位相制御回路61PHから実数成分同期検波回路61DRへ出力されると共に、その位相を90°遅らせた信号が虚数成分同期検波回路61DIへ出力される。これにより、実数成分同期検波回路61DRと虚数成分同期検波回路61DIとでアンプ61Aを介して入力されている受信磁場信号から実数成分と虚数成分とが検波され、受信磁場強度出力回路62ORを介して受信磁場実数値HRと受信磁場虚数値HIとを示すアナログ信号に変換されて出力される。
【0130】
又、バッファ回路61Bを介した同期検波用信号がDC変換回路62DCにて直流信号に変換され、1次磁場校正係数読出回路62Rからの1次磁場校正係数を乗じられる。そして、1次磁場強度出力回路62OTを介して1次磁場強度値HPを示すアナログ信号に変換されて出力される。更に、実数成分同期検波回路61DRと虚数成分同期検波回路61DIとで検波された実数成分と虚数成分とが示す位相が位相/電圧変換回路62PVにて電圧信号に変換され、位相出力回路62OPを介して位相差θを示すアナログ信号に変換されて出力される。
【0131】
このようにして上述した磁場検出装置により測定周波数2KHzの場合の受信磁場実数値HR、受信磁場虚数値HI、1次磁場強度値HP及び位相差θが得られ、パーソナル・コンピュータ7へ出力される。
【0132】
尚、受信磁場実数値HR、受信磁場虚数値HI及び位相差θを検出する上述の処理は、コイル24X、24Y及び24Zで受信された各磁場についてそれぞれ同様に行われ、以下の処理もそれらの各磁場についてそれぞれ同様に行われる。又、EM送受信機6内では、上記フォトカプラ63PCを介した測定周波数信号が周波数識別用信号に変換され、これも併せてパーソナル・コンピュータ7へ出力される。
【0133】
次に、上記各検出値等のアナログ信号が高速A/D変換器71でディジタルデータに変換される(ステップS3)。そして、それらのディジタルデータがバッファメモリ72を介して演算処理装置73へ供給され、比抵抗ρと2次磁場位相φを計算する処理が行われる(ステップS4)。ここで、演算処理装置73は、供給された受信磁場虚数値HI及び1次磁場強度値HPと周波数識別用信号が示す2KHzの測定周波数fとを用い、上記数9によって比抵抗ρを算出する。又、供給された受信磁場実数値HR、受信磁場虚数値HI及び1次磁場強度値HPを用い、上記数10によって2次磁場位相φを算出する。
【0134】
続いて演算処理装置73は、算出した比抵抗ρ及び2次磁場位相φを記憶装置74に格納すると共にディスプレイ75に表示させる(ステップS5)。このとき、演算処理装置73は、比抵抗ρ及び2次磁場位相φを現在の測定位置における現在の測定周波数に対応するものとして、記憶装置74の所定領域に書き込み、ディスプレイ75の所定箇所に所定態様で表示させる。
【0135】
今、測定を開始して初期測定周波数による送受信を行ったところなので、上記測定位置データnは初期値の1であり、測定周波数fは2KHzである。従って、記憶装置74には、算出された比抵抗ρ及び2次磁場位相φが“n=1,f=2KHz”に対応するものとして書き込まれ、ディスプレイ75においては、それらの比抵抗ρ及び2次磁場位相φが“n=1,f=2KHz”に対応する箇所に表示される。
【0136】
そのディスプレイ75における表示形態は、例えば、図9に示すようなものとする。図9の表示形態においては、横方向のn軸に測定位置、縦方向のf軸に測定周波数(KHz)を表し、それらの使用値線によって分割された各矩形領域に比抵抗や2次磁場位相をカラー区分して表示する。このようにした場合、上述の算出された比抵抗ρや2次磁場位相φは、それらの値に対応するものとして予め割り当てられた色により、図中の測定位置“n=1”,測定周波数“f=2KHz”の対応矩形領域に表示される。ここで、測定周波数fは探査深度に対応するものとなるので、図9のような表示によれば地質構造を把握することが可能となる。
【0137】
尚、演算処理装置73は、上記位相差θについても同様に記憶装置74の所定領域に書き込み、必要に応じてディスプレイ75の所定箇所に所定態様で表示させる。
【0138】
以上で測定周波数2KHzの場合の測定を完了し、次いで第2番目の測定周波数(B系列の第1チャネル)による測定に移る。すなわち、16チャネルの全測定周波数については測定が完了していないので、本システムの測定動作はステップS6からS7へ進んで送信電流供給回路63が送信電流の周波数を3KHzとし、測定周波数を切り替えて再びステップS2へ戻る(但し、このステップS7での測定周波数切替は、上記ステップS2での各検出値の取得後やステップS3〜S5でのパーソナル・コンピュータ7における処理動作中に並行して行うこととし、周波数切替に伴う過渡状態を早い時点で安定させて測定動作の高速化を図るようにしてもよい。)。
【0139】
ここでの測定周波数切替は、分周回路63FDからの測定周波数信号が次の測定周波数に切り替わることによって行われる。すなわち、分周回路63FDは、上記2KHzの測定周波数信号を出力し始めてから62.5msecの時間が経過すると、次の測定周波数である3KHzの測定周波数信号を出力し始める。そして上記同様、その測定周波数信号に応じたディジタル信号が周波数ディジタル変換回路63DCからスイッチ制御回路63SCへ供給され、共振用スイッチのSW2のみをオンしてSW1及びSW3〜SW16をオフする制御信号等が出力されると共に、送信電流増幅回路63AM等によって当該測定周波数信号が増幅され、送信電流供給線5a及び5bに印加される。
【0140】
これにより、共振用コンデンサC2と低周波用送信コイル22Lとが直列に接続されると共に増幅された3KHzの測定周波数信号を印加され、共振が生じて大きな送信電流が流れ、測定周波数3KHzの場合の1次磁場HPが発生する。そして、渦電流Ic、2次磁場HSが発生して合成磁場H等が上記同様に受信系(上記磁場検出装置)によって受信、検波、検出等され、パーソナル・コンピュータ7によって比抵抗ρ及び2次磁場位相φの計算等が行われて(ステップS2〜S4)、それらの比抵抗ρ及び2次磁場位相φ等が記憶装置74に“n=1,f=3KHz”に対応するものとして書き込まれると共に、ディスプレイ75における“n=1,f=3KHz”に対応する箇所に表示される(ステップS5)。
【0141】
以後においても同様に、測定周波数fが4KHz、6KHz、8KHz、…と順次切り替えられ、各測定周波数毎に上記ステップS2〜S5の動作が繰り返される。そして、上記初期測定周波数2KHzによる測定を開始してから1秒後に、最後の測定周波数384KHzによる測定が完了し、16チャネルすべての測定周波数について比抵抗ρ、2次磁場位相φ及び位相差θが得られる。尚、スイッチ制御回路63SCは、これらの測定の間で測定周波数が高い側の所定のチャネルとなったときに、給電切替スイッチ21SWの接続状態を切り替える制御信号を出力して低周波用送信コイル22Lに代えて高周波用送信コイル22Hを共振用コンデンサに接続し、これに送信電流が供給されて送信動作が行われるようにする。
【0142】
一方、この間に自動車1は約5.6m走行し、送受信ブーム2もそれと共に移動している。従って、記憶装置74には、測定開始位置から5.6mまでの平均的な地質情報として、“n=1,f=2KHz”〜“n=1,f=384KHz”に対応する16チャネル分の比抵抗等が蓄積され、ディスプレイ75においては、それらの地質情報が“n=1”の“f=2KHz”から“f=384KHz”までの16分割された矩形ライン領域に表示される。
【0143】
続いて、本システムの測定動作は次の測定位置についての測定に移る。すなわち、所望の測定位置すべてについて測定が完了していなければ、ステップS8からS9へ進んで演算処理装置73が測定位置データnをインクリメントする。その一方で、送信電流供給回路63は再び送信電流の周波数を2KHzとし(分周回路63FDが出力する測定周波数信号が2KHzに戻り)、初期測定周波数の送信電流が供給され始める(ステップS1)。これにより、以後、ステップS2〜S7の動作が上記同様に再び実行され、記憶装置74には次の5.6mの平均的な地質情報として“n=2,f=2KHz”〜“n=2,f=384KHz”に対応する比抵抗等が蓄積され、ディスプレイ75にはそれらの地質情報が“n=2”の“f=2KHz”から“f=384KHz”までのラインに表示される。
【0144】
このようにして測定位置データnを順次インクリメントして測定を実施する動作が繰り返され、n=2、3、4、…の各測定位置における“f=2KHz”〜“f=384KHz”での各比抵抗等の地質情報が順次得られていく。
【0145】
この間、測定周波数fは、1秒間に16回という高速で変化し続けており、かつ、そのそれぞれの測定周波数の送信電流としては、共振用コンデンサの共振作用によって大きな電流が供給されている。これに対し、本磁場発生装置では、波形整形回路63W1、63W2で測定周波数信号電圧を正波形、負波形に分け、それぞれを送信電流増幅回路63AMで増幅している。すなわち、本磁場発生装置は、測定周波数周期の半周期毎に交互に送信電流を増幅供給することとしているので、かかる測定周波数の高速変化や大電流の供給に対しても過渡現象による波形のノッチング歪みを生じさせずに送信電流を供給し続けることができる。
【0146】
又、局発回路63LOでは水晶振動子QCを利用し、共振用コンデンサC1〜C16としては温度変化のない高圧用コンデンサを用いているので、精度の高い発振周波数に基づく精確な測定周波数により、コンデンサの温度特性による影響を回避して位相ずれも抑えつつ、送信電流を供給し続けることができる。そして、共振用スイッチSW1〜SW16には大電流高速型のリレースイッチを用いているので、高速な測定周波数変化に対応して逐次共振用コンデンサへの接続を制御し、大きな送信電流の周波数をその測定周波数変化に追従させることが可能となっている。更に、送信電流の供給源側に定電流安定化回路63REを設けているので、送信電流振幅も一定に保たれるようになっており、かつ、送信電流供給回路63からの測定周波数信号出力経路にフォトカプラ63PCを設けているので、他の回路からのノイズ電流を遮断して精確な回路動作が確保されている。
【0147】
このような様々の工夫により、本システムにおいては、測定周波数fを高速で順次切り替えつつ常に安定した大きな送信電流を送信コイル22へ供給し続けることができ、各測定位置での各測定周波数による測定が適切に行われていく。そして、所望の測定位置すべてについての測定が完了し、送信電流供給回路63の送信動作やパーソナル・コンピュータ7の処理動作が停止されたり、自動車1が停車したりすると、本システムの測定動作は終了する。
【0148】
以上の測定動作により、記憶装置74には、各測定位置における各測定周波数毎の比抵抗ρ、2次磁場位相φ及び位相差θが蓄積記憶され、ディスプレイ75には、それらの値がカラー区分されて図9のような形態で表示される。従って、本システムによれば、約5.6m毎の各種地質情報を連続的にリアルタイムで観察し、地質解釈を行うことができる。
【0149】
ここで、ディスプレイ75の表示については、比抵抗ρ、2次磁場位相φ又は位相差θのうちのいずれかの地質情報を表示しておき、必要に応じて表示される地質情報を適宜切り替えることとしてもよい。例えば、図示せぬキーボードからの指示入力等に応じて演算処理装置73が記憶装置74に蓄積された地質情報を読み出し、表示中の地質情報に代えて他の地質情報をディスプレイ75に表示させるようにする。この場合、地質情報は上記コイル24X、24Y、24Zのそれぞれの受信磁場から得られているので、各コイル毎の地質情報についても同様に切替表示するようにしておく。このようにすれば、種々の方向からみた種々の地質情報を適宜切り替えて観察することが可能となり、地質解釈の便に供することができる。
【0150】
又、演算処理装置73は、各測定位置の各測定周波数毎に得られた比抵抗から表皮深度を計算し、深度方向の真の比抵抗分布等を求める処理を行う。すなわち、各測定位置における各測定周波数について、上記数5の式における比抵抗ρに記憶装置73に格納された値を代入し、表皮深度δを求める。次いで、各測定位置の地盤を層状地盤と仮定し、求めた表皮深度δに基づき、1次元解析法により比抵抗ρ、2次磁場位相φ及び位相差θを深度方向の真の比抵抗分布、2次磁場位相分布及び位相差分布に割り戻す。
【0151】
そして、それらの地質情報分布を図9同様にディスプレイ75に表示する。この場合、横方向は測定位置、縦方向は深度を表すものとして地盤中の各箇所の比抵抗等をカラー区分表示する。これにより、ディスプレイ75には、各種地質情報の実際の分布を表す断面トレース図が表示されることになる。
【0152】
ここで、本システムにおいては、2KHz〜384KHzの範囲の周波数を測定周波数として使用しているので、地表面から100m程度までの深度における真の比抵抗分布等が得られることになる。そして、その比抵抗分布等は、前記範囲で16の測定周波数を使用していることから、深度方向に16分割された分解能の高いものとなり、地質解釈に極めて有効な情報を提供するものとなる。
【0153】
尚、パーソナル・コンピュータ7が処理速度の速いものである場合等、図8の測定動作の進行に余裕がある場合には、かかる真の地質情報分布を求める処理を上記測定動作中に並行して行い、測定中の地盤における実際の地質情報分布をリアルタイムで得、それを表示することにしてもよい。又、自動車1に速度検出器やGPS等を搭載して現在位置を把握することにすれば、測定位置を自動車1の走行軌跡長の絶対値によって表示することができ、実際の地質分布により近い表示をすることができる。
【0154】
上述したように本システムによれば、自動車1によって時速数10kmで移動しつつ地質情報を取得し、それらをリアルタイムで逐次表示していくので、道路等に沿って移動しながら連続的に探査を行うことができ、短時間で広範囲の地質情報を高い分解能で得ることができる。又、基本的には自動車1の運転者と機器の操作者の2名のみで測定を行うことができるので、地盤探査に要する人員とその労力を大幅に削減することができる。
【0155】
例えば、従来におけるCSAMT法や他の電気探査法においては、1Kmを3〜4人で数10m毎に測定しようとすると、測定作業だけで6日程度かかり、その解析に更に2日程度かかる。これに対し、本システムによれば、自動車の走行軌跡上でより細かい間隔によって測定を行うことができる上に、上述した時速20Kmの場合では5分以内に約180点の測定位置で地質情報を得ることができ、かつ、それらを解析してリアルタイムで表示することもできる。
【0156】
<送受信部の支持構造>
次に、上記システムにおける送受信ブーム2の支持構造について、送信コイル22と受信コイル24を任意の位置で任意の方向に向けて保持するための具体的な構成例を説明する。尚、上記システムにおいては、上述したように送受信ブーム2を軽量化しているので、以下のような構成例の支持構造は容易に実現することができる。
【0157】
1.第1構成例
図10は、その第1の構成例である支持構造を示す図である。又、図11は図10中のa−a′部断面図、図12は図10中のb−b′部断面図である。これらの図において、40は断面工字状のステンレス柱からなる固定台座であり、ボルト等の固定手段によって自動車1内の後方部床面に図示のように固定されている。本支持構造は、この固定台座40に以下の各構成要素が順次連結・結合された形となっており、以下の各構成要素もステンレスで構成されたものとなっている(但し、これは強度を重視した場合の材質であって、ベークライト、木材、カーボンファイバ又は真鍮等、磁界への影響が少ない他の材質を用いることを排する趣旨ではない。)。
【0158】
31は断面小のものが順に内側へ収納されて重合している複数の水平スライド柱体からなるテレスコピック機構の水平方向スライド支柱である。本支持構造においては、それら複数の水平スライド柱体として、それぞれ下側長辺中央部が開口した矩形断面の外側水平スライド柱体31aと内側水平スライド柱体31bを有している(特に図11参照)。断面大の外側水平スライド柱体31aは、内部に内側水平スライド柱体31bを挿入されてその外周を覆うようにこれを収納しており、断面小の内側水平スライド柱体31bは、内部に固定台座40の上板側を挿入されてこれを覆うように収納している。そして、外側水平スライド柱体31aと内側水平スライド柱体31bとをそれぞれ長手方向へスライドさせることにより自動車1後方へ最大2.5m程度の範囲で伸縮可能な水平方向スライド支柱31が構成されている。
【0159】
32は外側水平スライド柱体31aの先端側に固着(溶接等により固定)された台座取付部であり、図10中の破線で示すように支柱取付台座33の形状に合致した嵌挿溝を有している。支柱取付台座33は、矩形台座板33aの下面に断面T字状(又は逆T字状)の嵌挿部33bが取り付けられたもので、その嵌挿部33bを前記嵌挿溝へ差し込むことによって外側水平スライド柱体31aの先端側に固定連結されるようになっている。
【0160】
34は断面矩形状の中空ステンレス柱からなる垂直方向支持柱体であり、支柱取付台座33の矩形台座板33a上面に固着されている。35は断面小のものが順に内側へ収納されて重合している複数の垂直スライド柱体からなるテレスコピック機構の垂直方向スライド支柱である。本支持構造においては、それら複数の垂直スライド柱体として、それぞれ自動車1後方側の長辺中央部が開口した矩形断面の外側垂直スライド柱体35aと内側垂直スライド柱体35bを有している(特に図12参照)。断面大の外側垂直スライド柱体35aは、内部に内側垂直スライド柱体35bを挿入されてその外周を覆うようにこれを収納しており、断面小の内側垂直スライド柱体35bは、内部に垂直方向支持柱体34を挿入されてこれを覆うように収納している。そして、外側垂直スライド柱体35aと内側垂直スライド柱体35bとをそれぞれ長手方向へスライドさせることにより自動車1後方において鉛直方向に地面から最大2m程度の範囲で伸縮可能な垂直方向スライド支柱35が構成されている。
【0161】
ここで、外側垂直スライド柱体35aの上端は閉口しており、その閉口板には中央に一端が固定された連結軸が突設され、これを介して円柱状支持部材36が取り付けられている。この円柱状支持部材36は、前記連結軸の他端側を回転自在に支持するベアリング等からなる軸受け部を内部に有し、これにより外側垂直スライド柱体35a上の水平面内で鉛直方向を中心軸として回転可能に連結されている。又、円柱状支持部材36には、外周面上に角度目盛が付されており(図示略)、その回転角度を読み取れるようになっている。
【0162】
37は円柱状支持部材36上に固着された直方体形状の上端取付部である。この上端取付部37は、紙面垂直方向中央部に自動車1後方側へ延びた水平円柱体38が取り付けられており、これを内部でベアリング等によって回転可能に支持している。水平円柱体38は、先端に固定受板39が固着されており、これを上端取付部37から保持するものとなっている。尚、水平円柱体38にも外周部分に角度目盛が付されており(図示略)、その回転角度を読み取れるようになっている。
【0163】
固定受板39は、上端に蝶番310の一片が取り付けられ、これを介して可動受板311と連結された矩形板状の部材であり、紙面垂直方向の端面部に自動車1後方側へ延びた扇状部材312が垂直に取り付けられている。可動受板311は、中央にブーム側支持軸313が設けられた矩形板状の部材であり、上端が蝶番310の他片に取り付けられている。この可動受板311には、固定受板39の前記端面部に相当する側に扇状部材312を固定する止めねじ(図示略)が設けられている。
【0164】
扇状部材312は、扇状板からなる部材であり、前記止めねじの挿通孔312aがその円弧部分に沿って帯状に設けられている。すなわち、前記止めねじを緩めると、蝶番310の軸を中心として可動受板311を挿通孔312aに沿って回転させることができ、前記止めねじを締めることによりその回転を制止して可動受板311を固定することができるようになっている。又、扇状部材312の円弧部分にも角度目盛が付されており(図示略)、これによって前記止めねじの変位角度を読み取り、可動受板311の回転角度を特定することができるようになっている。この場合において、可動受板311の回転角度範囲は任意であるが、本支持構造では蝶番式によって90°強とし、可動受板311を図10の鉛直状態(90°)から水平状態(0°)にまで変化させることができるようにしている(他の回転部の回転角度範囲は特に制限はなく、360°回転可能になっている。)。
【0165】
ブーム側支持軸313は、ボルトとナット又は締め付けねじ等の機械的構造によってブーム台座枠314を回転可能に支持する軸である。ブーム台座枠314は、紙面垂直方向両縁部等にブーム着脱ねじ314aが設けられた板状の枠であり、図10中に点線で示したように上記送受信ブーム2が取り付けられる。
【0166】
これにより、送受信ブーム2は、ブーム台座枠314に着脱可能であって、かつ、ブーム側支持軸313を中心として紙面垂直方向面内で適宜回転可能に保持され、水平方向及び垂直方向の伸縮部である水平方向スライド支柱31及び垂直方向スライド支柱35と、鉛直方向、自動車1の走行方向、幅方向及び可動受板311の垂線方向を中心軸とした回転部である円柱状支持部材36、水平円柱体38、可動受板311及びブーム台座枠314とによって、各方向への平行移動と回転移動が可能な状態に支持される。ここで、回転部の中心軸のうち、少なくとも3つは互いに直交しており、3次元の各方向へ回転可能なジャイロ機構を構成している(例えば、図10の状態では、円柱状支持部材36、水平円柱体38及び可動受板311の回転中心軸は互いに直交している。)。
【0167】
尚、送受信ブーム2には、扇状部材312を通過させる切込部(ないし開口部)を適宜設けることにする。又、ブーム台座枠314にも外周部分に角度目盛を付し、その回転角度を読み取れるようにする。
【0168】
以上の構成において、水平方向スライド支柱31及び垂直方向スライド支柱35をそれぞれ伸縮させると共に、円柱状支持部材36、水平円柱体38、可動受板311及びブーム台座枠314をそれぞれ回転させる。これにより、例えば図13に示すように、送受信ブーム2を自動車1から所望の位置とし、かつ、所望の方向にして、上述した測定動作を実行する。
【0169】
この場合の本支持構造における可動部(上記伸縮部及び回転部)の動作態様を図14に示す。この図は、本支持構造を模式的に表して各可動部の動作態様を把握できるようにしたもので、図10中に示した構成に対応する部分には同一の符号を付してある。
【0170】
すなわち、送受信ブーム2の位置については、図13及び図14中の矢印▲1▼で示すように、外側水平スライド柱体31aと内側水平スライド柱体31bをスライドさせ、水平方向スライド支柱31の長さを調節することによって水平方向位置を決定する。又、矢印▲2▼で示すように、外側垂直スライド柱体35aと内側垂直スライド柱体35bをスライドさせ、垂直方向スライド支柱35の長さを調節することによって垂直方向位置を決定する。
【0171】
一方、送受信ブーム2の方向については、矢印▲3▼で示すように、円柱状支持部材36を外側垂直スライド柱体35a上で回転させ、その回転角度を調節することによって水平方向を決定する(3次元空間上の厳密な位置は、上記位置決定とこの水平方向決定によって決まる。)。又、矢印▲4▼で示すように、水平円柱体38を回転させ、その回転角度を調節することによって横断面における垂直方向(長手方向の傾き具合)を決定する。そして、矢印▲5▼で示すように、蝶番310の軸を中心として可動受板311を回転させ、その回転角度を調節することによって縦断面における垂直方向(短手方向の傾き具合)を決定する。
【0172】
更に、ブーム側支持軸313を中心としてブーム台座枠314を回転させることによっては(図13中の矢印▲6▼)、可動受板311を鉛直状態にしたときには垂直面内における送受信ブーム2の向きを決定し、可動受板311を水平状態にしたときには水平面内における送受信ブーム2の向きを決定する。
【0173】
本支持構造によれば、このようにして送受信ブーム2の位置と方向を任意に決定することができるので、自動車1に対して様々な位置及び方向にある地盤を探査することができる。例えば、送受信コイルとして上記送信コイル22と受信コイル24Zを用いることとした場合にあっては、円柱状支持部材36、水平円柱体38、可動受板311及びブーム台座枠314を回転させて送受信ブーム2の方向を定めることにより、送受信コイルの向きを図15に示すように変化させることができる。
【0174】
図15においては、各四角形線分と各円がそれぞれ送受信ブーム2と送受信コイルを模式的に表し、各矢印が送受信コイルの向きを表している。まず、上記図10のように可動受板311を鉛直状態とすれば、送受信コイルを図15中のSE▲1▼で示す水平探査の向きにすることができる。又、上記図13や図14のように可動受板311を水平状態とすれば、送受信コイルをSE▲2▼で示す垂直探査の向きにすることができる。
【0175】
更に、水平探査SE▲1▼の状態から水平円柱体38又はブーム台座枠314を90°回転させると共に、円柱状支持部材36を90°回転させると、送受信コイルをSE▲3▼で示す自動車1の右側方探査の向きにすることができる。逆に、水平探査SE▲1▼の状態から水平円柱体38又はブーム台座枠314を−90°回転させると共に、円柱状支持部材36を−90°回転させると、送受信コイルをSE▲4▼で示す自動車1の左側方探査の向きにすることができる。送受信コイルをこれらSE▲3▼やSE▲4▼のような向きとすることにより、自動車1の両側方にある斜面等の探査をすることも可能となる。
【0176】
そして、実際の探査では、図16に示すような調査が必要な場所で自動車1を走行させて上記測定動作を実行する。図16は、調査場所の一例を断面図で表したものであり、DMはダム湖、MLはその管理道路、MSはダム湖DMに面した山岳斜面である。この図に示すように、自動車1で管理道路MLを走行しつつ、上記支持構造によって送受信ブーム2を適宜所望の位置と方向に合わせ、上記図8の測定動作手順に従って各種地質情報の測定を行う。
【0177】
この場合において、送受信ブーム2を送受信コイルが上記垂直探査SE▲2▼の向きとなる方向にすれば、図16中SRaで示す自動車1直下の地盤を探査することができる。又、その状態から水平円柱体38を回転させて送受信ブーム2を傾けると、SRbで示すダム湖DMに沿った地盤を探査することができる。更に、それとは逆に水平円柱体38を90°強回転させて送受信ブーム2を自動車1の左斜め上に向けると、SRcで示す山岳斜面MS内の地盤を探査することができる。
【0178】
本支持構造によれば、このようにして円弧矢印で示す探査範囲の地盤について測定を行うことができる。すなわち、同探査範囲の各種地質情報を得、それらを上述したようにディスプレイ表示することができるので、図示のような調査場所においても迅速かつ適切な地質解釈をすることが可能となる。
【0179】
尚、本支持構造の各構成要素は、固定台座40が支持機4の一部構成要素に、水平方向スライド支柱31〜ブーム台座枠314が支持支柱3の構成要素に、それぞれ対応する。又、本支持構造において、各可動部を動作させるには、自動車1内(上述の支持機4に相当する部分等)に油圧や空気圧等のような磁界への影響が少ない駆動力の発生源を設け、その駆動力を各構成要素内の中空部等を利用して伝達すればよい。或いは、可動受板311同様、他の各可動部にも伸縮ないし回転を制止する固定用ボルト等を設け、それらを緩めて人力により各可動部を適宜伸縮ないし回転させ、送受信ブーム2を所望の位置と方向になるように調整することとしてもよい。
【0180】
2.第2構成例
図17は、送受信ブーム2の支持構造の第2構成例を示す図である。本支持構造を採用するに当たっては、上述のEM探査システムを搭載する自動車として、図示のように荷台のある自動車1′を利用することにする。
【0181】
そして、その荷台の前方側に基台401を固定すると共に、後方側に伸縮支持機402を固定設置する。ここで、基台401は、クレーンアーム301の基端を回転自在に支持する支持手段である。又、伸縮支持機402は、トルクモータや油圧ないし空気圧等の駆動力発生源を内蔵し、その運転制御によって伸縮可能な支持アーム402aを有する支持機であり、支持アーム402aの荷台側を適宜方向変化可能に支持している。支持アーム402aの伸縮する先端側は、クレーンアーム301の基端柱体に回転自在に取り付けられている。
【0182】
クレーンアーム301は、断面小のものが順に内側へ収納されて重合している複数の支持柱体(長さ数mないし数十mの複数の柱体)からなる支持支柱である。このクレーンアーム301も構造的には上記水平方向スライド支柱31や垂直方向スライド支柱35と同様で伸縮可能なものとなっており、図示せぬトルクモータや油圧ないし空気圧発生源等によって伸縮状態を制御される。
【0183】
すなわち、本支持構造は、伸縮支持機402の支持アーム402aを伸ばすとクレーンアーム301が回転して(起き上がって)その先端位置が上昇し、クレーンアーム301を伸ばすと同先端位置が自動車1′後方へ移動すると共に更に上方へと上昇する、というクレーン車のような構成になっている。
【0184】
一方、302は、同先端位置に取り付けられ、図中の3つの矢印で示すように互いに直交する3方向に回転可能に送受信ブーム2を支持する回転支持部である。この回転支持部302は、支持台の3方向回転が可能なカメラ三脚の雲台等を利用して構成し、その支持台に送受信ブーム2を取り付けてこれを3方向トルクモータ等の駆動力発生手段により回転させることとして、3次元の各方向へ向けることができるジャイロ機構とする。
【0185】
このような構成において、支持アーム402aとクレーンアーム301とをそれぞれ伸縮させ、それらの長さを調整して回転支持部302に取り付けられた送受信ブーム2を地上数十mの所定の高さ位置で支持する(荷台着き自動車や送受信ブーム2の大きさ等を考えると、この場合の最大の高さは例えば30m程度とするのが適当である。)。そして、回転支持部302の各回転部を適宜回転させ、送受信ブーム2の方向を調整する。
【0186】
このようにして送受信ブーム2を所望の高さ位置とし、かつ、所望の方向にして、上記測定動作を実行する。これにより、図示のような山岳斜面等の高所における内部断面の各種地質情報が得られ、その探査を行うことができることになる。すなわち、本支持構造によれば、数十mの大規模な斜面等の高い位置にまで送受信コイルを移動させ、かつ、その移動後の位置でそれらのコイルを任意の方向に向けることができるので、通常では探査困難な箇所についても容易に探査を行うことが可能となる。
【0187】
尚、以上の実施形態によるEM探査システムは、自動車によって移動するという駆動性から種々の場所での連続探査や集中探査に利用することができる。従って、具体的な用途としては、例えば次のようなものがある。
・盛土、切土、ブロック枠、吹き付け、コンクリート張り等ののり面の老朽化調査・河川堤防の漏水調査・コンクリート及びモルタル吹き付けのり面の老朽化調査・造成工事における地質調査やのり面調査・道路等の長距離土構造物の1次地盤調査や補足調査・路面下、道路沿い斜面、トンネル等の点検(脆弱部、地滑り箇所、風化部、断層、破砕帯、変質帯、地下水帯、湧水箇所等の調査)
・ダムサイトの地質点検(管理道路、斜面及びのり面等の点検や崩壊崩落箇所の探査)
【0188】
又、上述した実施形態によるEM探査システムは、磁場発生装置と磁場検出装置の構成要素を自動車側と送受信ブーム側とに分けたものであったが、そのようにはせずに、磁場の発生と検出のための構成をすべて送受信ブーム側に設けることとしてもよい。すなわち、EM送受信機6の構成要素もすべて送受信ブーム2側に搭載し、自動車1側にはパーソナル・コンピュータ7等のデータ処理手段のみを設けることとして、自動車1内へは直接各種処理の対象となるデータを供給するようにしてもよい。このようにした場合にあっては、そのデータが得られるまでの信号伝達経路におけるノイズの影響を低減することができるという利点がある。
【0189】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、送信部及び受信部を有する磁場送受信の機器ないし手段を車両と一体に移動させると共に、発生させた磁場と検出された合成磁場に基づいて地質情報を求める処理を行い、その処理手段は車両に搭載することとして、探査方法にあっては車両搭載機器により行い、探査装置にあっては車両搭載型のものとしたので、外観からの把握が困難な各種地盤の地質について、広範囲に亘って移動しながら連続的に探査をすることができる。これにより、種々の場所における地盤調査を迅速かつ適切に、少ない労力によって容易に行うことができる。
【0190】
そして、所定の移動距離毎に異なる複数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させることとし、その1次磁場と2次磁場の合成磁場を検出して逐次同相成分及び離相成分を抽出し、それらの抽出された同相成分及び離相成分と1次磁場とに基づいて地質情報を逐次演算することとしたので、移動しながらの連続的な探査が可能である上に、必要に応じた高い分解能の地質情報をリアルタイムで得ることができる。これにより、種々の場所での調査において的確な地質解釈を容易かつ迅速に行うことが可能となるという効果が得られる。
【0191】
この場合の地質情報としては、例えば、周波数、1次磁場及び離相成分から地盤の比抵抗が求められ、1次磁場、同相成分及び離相成分から2次磁場の位相が求められ、それぞれ地質解釈に供されることになる。ここで、これらの比抵抗及び位相の双方を併用することにした場合にあっては、地盤の状況をより詳細に把握することができる。
【0192】
又、本発明においては、車両の走行速度を適宜選定することによって探査位置の移動速度が決定されることになるので、実現可能な機器によって必要な分解能が確保されるようにすることができる。これに基づき、車両が所定の分解能に応ずる速度で走行するときに一定の単位時間で移動する距離毎に、1KH〜400KHの範囲における異なる複数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させることとしている。これにより、例えば、車両を時速20Kmで走行させ、1秒間で移動する距離毎に前記複数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させることとすれば、約5.6m毎に100m程度までの深度を深度方向に16分割した分解能で地質情報を得ることができる。尚、これらの車両搭載型探査装置において、求められた地質情報を逐次表示する表示手段を設けることとすれば、地盤の状況をリアルタイムで視覚的に捉え、適切な地質解釈を容易に行うことができる。
【0193】
一方、発生手段により異なる複数の周波数の周波数信号を順次発生させて増幅手段により増幅し、その増幅信号を送信コイルへ供給して送信電流を流すこととし、送信コイルには増幅信号の供給によって共振を起こす容量回路を接続することとしたので、順次発生する測定周波数信号に対応する大きな送信電流を送信コイルに流すことができ、大きな1次磁場を発生させて合成磁場等を明確に検出することが可能となる。これにより、車両と一体に移動する磁場送受手段と車両に搭載された処理手段とを有する車両搭載型探査装置における測定を容易かつ適切に行うことができ、移動しながら連続的に探査を行うことが可能となるという効果が得られる。
【0194】
ここで、発生手段と増幅手段を車両に搭載された処理手段に設け、送信コイルと容量回路を磁場送受手段に設けることとすれば、磁場送受手段を小型で軽量なものにすることができ、車両から離れた位置に保持するなどして磁場送受手段を車両から遠ざけることが容易となり、車両による磁場への影響を回避して的確な測定をすることが可能となる。又、複数のコンデンサと、それらのいずれかを周波数信号の周波数に応じて増幅手段の増幅信号出力側と送信コイルとの間に介挿接続する接続制御手段とを、前記容量回路が有するものとすれば、大きな送信電流を得ることができる。更に、それら複数のコンデンサの一端を送信コイルと接続し、接続制御手段をそれぞれのコンデンサの他端と増幅信号出力側との間に設けた大電流高速型のスイッチで構成することとすれば、周波数信号の周波数が高速で変化してもそれに対応して逐次コンデンサの接続状態を制御することができる。従って、大きな送信電流を、その周波数を高速で切り替えつつ送信コイルに流し続けることができる。又、送信コイルを各周波数帯用の複数のコイルで構成することとすれば、各周波数の周波数信号に適したコイルによって安定した適切な送信電流を流すことができる。
【0195】
更に、増幅手段に定電流源を設けることとしたので、送信電流をより一層安定させることができ、周波数を高速で切り替えつつ大きな送信電流を送信コイルに流し続けても回路動作が乱れることなく、精確な測定を行うことが可能となる。
【0196】
そして、発生手段を水晶振動子による発振回路とその発振周波数を分周して順次各周波数の周波数信号を出力する分周回路とを有するものとしたので、精度の高い安定した発振周波数に基づく周波数信号を得ることができ、精確な周波数の送信電流を送信コイルに流し続けることができる。
【0197】
尚、増幅手段を、周波数信号の正波形信号と負波形信号とを分離してそれぞれを増幅し、送信コイル及び容量回路の両端電極間に印加供給するものとすれば、送信電流の波形を歪ませることなく、その電流値の増大や周波数変化の高速化等を図ることができ、分解能の高い迅速な測定を行うことが可能となる。又、入力側が発生手段の周波数信号出力側と接続され、出力側が外部回路へ接続されたフォトカプラを更に有することとすれば、外部回路へ使用している周波数の情報を供給する際にも、ノイズ電流を遮断して精確な回路動作を確保することができる。
【0198】
このように、本発明による磁場発生装置によれば、周波数を高速で切り替えつつ、安定した大きな送信電流を送信コイルへ供給することができるので、車両で移動しながら多数の周波数による測定を順次行い、外観からの把握が困難な各種地盤の地質について広範囲に亘る連続的な探査を迅速に行うことが可能となるという効果が得られる。又、このことから、種々の場所における地盤調査は迅速かつ適切に、少ない労力によって容易に行うことができることになる。
【0199】
他方、検出手段により合成磁場を検出して受信信号を出力し、その受信信号を検波手段により1次磁場に応じた信号とその位相をずらした信号とで検波して合成磁場の1次磁場との同相成分と離相成分とを抽出することとしたので、それらの成分から2次磁場の情報を得ることができる。これにより、車両と一体に移動する磁場送受手段と車両に搭載された処理手段とを有する車両搭載型探査装置において、比抵抗や2次磁場の位相のような地盤の地質情報を求めるのに直接利用することができる情報が得られ、外観からの把握が困難な各種地盤の地質について広範囲に亘る移動しながらの連続的な探査を迅速に行うことが可能となるという効果が得られる。又、このことから、種々の場所における地盤調査は迅速かつ適切に、少ない労力によって容易に行うことができることになる。
【0200】
ここで、検出手段が合成磁場を感知する受信コイルとその感知電流に応じた信号を受信信号として出力する出力手段とによって実現され、そのうちの受信コイルを互いに直交する方向に配置された複数のコイルとしたので、様々な方向における合成磁場を検出することができ、3次元空間内の各方向における合成磁場を検出することもできる。従って、様々な方向における2次磁場の情報が得られ、詳細な地質解釈を可能とする多くの地質情報が得られることになる。この場合、受信コイルとして各周波数帯域用の複数のコイルを有することとすれば、各合成磁場に応じた適切な感知電流が得られ、同相成分と離相成分を正確に検波することが可能となる。
【0201】
尚、かかるコイル等によって構成される検出手段を磁場送受手段に設け、検波手段を処理手段に設けることとすれば、磁場送受手段を小型で軽量なものにすることができ、車両から離れた位置に保持するなどして磁場送受手段を車両から遠ざけることが容易となり、車両による磁場への影響を回避することが可能となる。又、磁場送受手段で発生させている1次磁場を検出し、それに応じた信号を出力する1次磁場検出手段を更に有し、これが出力する信号を用いて検波手段が1次磁場との同期検波信号を生成し、当該同期検波信号を用いて検波をすることとすれば、実際に発生している1次磁場に即した適切な検波信号による同期検波をすることができる。この場合、1次磁場が発生する箇所にコイルを設け、それを流れる電流中の1次磁場に対応する周波数帯の信号成分のみを出力するフィルタを設けることとして不要な成分が除去されたより適切な検波信号を用いることとしたり、かかる1次磁場検出手段から出力される信号に基づいて実際に発生した1次磁場の強度を求めることとしたりしてもよい。
【0202】
又、同相成分と離相成分から合成磁場の1次磁場に対する位相差が求められるので、地質解釈に利用することができる更なる情報を得ることができる。
【0203】
そして、車両搭載型探査装置における送受信部の支持構造として、基端側が車両に連結されて伸縮する第1の支持手段と、その先端側に連結されて回転により送受信部の方向を変化させる第2の支持手段とを有するものを採用することとしたので、送受信部を適宜所望の位置とし、かつ、所望の方向として、探査を行うことができる。これにより、車両に対し、様々な位置ないし様々な方向にある各種地盤の地質について、移動しながらの連続的な探査を容易に行うことが可能となるという効果が得られる。
【0204】
ここで、水平方向に伸縮可能な第1の支持支柱と鉛直方向に伸縮可能な第2の支持支柱等で第1の支持手段を構成することとすれば、送受信部の車両からの水平方向位置と鉛直方向位置を任意に決定することができる。又、一端側が車両に連結された伸縮可能な第3の支持支柱とその所定部位を車両から移動可能に支持する支持機部等で第1の支持手段を構成することとすれば、第3の支持支柱を伸ばすと共に、その所定部位を支持機で移動させて起き上がらせることにより、より高所の地盤(山の斜面等)を探査することが可能となる。
【0205】
一方、第2の支持手段を、互いに直交する3方向の各軸を中心として回転可能な回転部を有するものとしたので、送受信部を3次元空間内の任意の方向へ向けることができる。これにより、車両からあらゆる方向の地盤を探査することが可能になるという効果が得られる。例えば、水平探査、垂直探査、車両の左側方探査、右側方探査等も可能となり、直下地盤やそれより斜め下方向の地盤、車両側方の山の斜面、トンネル内全面の地盤等を探査することも容易となる。
【0206】
加えて、上述の支持構造においては、発生手段と増幅手段を車両に搭載された処理手段に設けると共に送信コイルと容量回路を送受信部に設けることとしたり、検出手段を送受信部に設けると共に検波手段を処理手段に設けることとしたりすれば、送受信部を小型で軽量なものにすることができる。このようにした場合には、車両から離れた位置で送受信部を保持することが容易になり、上記各効果を奏する支持構造も容易に実現することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による自動車搭載型EM探査システムの全体構成を示す図である。
【図2】 同システムにおける送受信ブーム2を自動車1の後方からみたときの構成を示す図である。
【図3】 各方向の磁場検出コイルとして高周波用、中間周波用及び低周波用の3つのコイルを送受信ブーム2に設ける場合の構成例を示す図である。
【図4】 同システムの自動車1内における機器の構成を示すブロック図である。
【図5】 同システムによる測定で取り扱う1次磁場、2次磁場及び合成磁場の関係を示す図である。
【図6】 同システムにおける送信系(磁場発生装置)の具体的な構成を示す図である。
【図7】 同システムにおける受信系(磁場検出装置)の具体的な構成を示す図である。
【図8】 同システムによる測定動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】 同システムにおけるディスプレイ75の表示形態例を示す図である。
【図10】 同システムにおける送受信ブーム2の支持構造の第1構成例を示す図である。
【図11】 図10中のa−a′部断面図である。
【図12】 図10中のb−b′部断面図である。
【図13】 同支持構造の一動作状態を示す図である。
【図14】 同支持構造を模式的に表して各可動部の動作態様を示した図である。
【図15】 同支持構造による送受信コイルの向きの変化態様例を示す図である。
【図16】 同システムにより探査を行う実際の調査場所の一例を断面図で表したものである。
【図17】 同システムにおける送受信ブーム2の支持構造の第2構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 自動車
2 送受信ブーム
2A 送信部
2B 受信部
3 支持支柱
4 支持機
6 EM送受信機
7 パーソナル・コンピュータ
21 多周波高速送信機
21B1〜21B16 バンドパスフィルタ
21SW 給電切替スイッチ
22 送信コイル
22H 高周波用送信コイル
22L 低周波用送信コイル
23 受信磁場強度検出器
24 受信コイル
24X、24Y、24Z コイル
31 水平方向スライド支柱
31a 外側水平スライド柱体
31b 内側水平スライド柱体
35 垂直方向支持柱体
35a 外側垂直スライド柱体
35b 内側垂直スライド柱体
36 円柱状支持部材
37 上端取付部
38 水平円柱体
39 固定受板
61 受信磁場検波回路
61DI 虚数成分同期検波回路
61DR 実数成分同期検波回路
61PH 位相制御回路
61PLL PLL位相同期ループ
62 受信ベクトル・位相差検出回路
62DC DC変換回路
62F フィールドテストデータ記憶部
62PV 位相/電圧変換回路
62R 1次磁場校正係数読出回路
63 送信電流供給回路
63AM 送信電流増幅回路
63DC 周波数ディジタル変換回路
63FD 分周回路
63LO 局発回路
63PC フォトカプラ
63RE 定電流安定化回路
63SC スイッチ制御回路
63W1、63W2 波形整形回路
73 演算処理装置
74 記憶装置
75 ディスプレイ
301 クレーンアーム
302 回転支持部
310 蝶番
311 可動受板
312 扇状部材
313 ブーム側支持軸
314 ブーム台座枠
402 伸縮支持機
402a 支持アーム
C1〜C16 共振用コンデンサ
COH 高周波用磁場検出コイル
COL 低周波用磁場検出コイル
COM 中間周波用磁場検出コイル
FR 取付枠
QC 水晶振動子
SC サーチコイル
SW1〜SW16 共振用スイッチ

Claims (7)

  1. 1次磁場を発生させると共に、その1次磁場と2次磁場との合成磁場を受け、車両と一体に移動する磁場送受手段と、前記車両に搭載され、前記磁場送受手段で発生させた1次磁場と受けた合成磁場とに基づき、2次磁場が発生した地盤の地質情報を求める処理手段とを有する車両搭載型探査装置における磁場発生装置であって、異なる複数の周波数の周波数信号を順次発生する発生手段と、前記発生手段により発生された周波数信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段から周波数信号が増幅された増幅信号を供給され、その増幅信号に応じて流れる送信電流によって前記1次磁場を発生させる送信コイルと、前記送信コイルと接続され、前記増幅信号の供給によって共振を起こす容量回路と、
    支持支柱に取り付けられた前記磁場送受手段を車両の後方で地盤との間に間隔をおいて対向するように保持する支持機と、
    を有し、
    前記磁場送受手段は、車両が所定の分解能に応ずる速度で走行するときに一定の単位時間で移動する距離を前記移動距離として、当該距離毎に、1KH〜400KHの範囲における異なる個数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させることを特徴とする磁場発生装置。
  2. 請求項1記載の磁場発生装置において、前記増幅手段は、増幅信号出力側に接続された定電流源を有することを特徴とする磁場発生装置。
  3. 請求項1又は2記載の磁場発生装置において、前記発生手段は、水晶振動子を用いた発振回路と、前記発振回路の出力信号を、順次その周波数を分周し、前記複数の周波数の各周波数信号として順次出力する分周回路とを有することを特徴とする磁場発生装置。
  4. 1次磁場を発生させると共に、その1次磁場と2次磁場との合成磁場を受け、車両と一体に移動する磁場送受手段と、前記車両に搭載され、前記磁場送受手段で発生させた1次磁場と受けた合成磁場とに基づき、2次磁場が発生した地盤の地質情報を求める処理手段とを有する車両搭載型探査装置における磁場検出装置であって、前記合成磁場を検出し、それに応じた受信信号を出力する検出手段と、前記検出手段から出力される受信信号を、前記1次磁場に応じた信号とその位相をずらした信号とによって検波し、前記合成磁場の前記1次磁場との同相成分と離相成分とを抽出する検波手段と、
    支持支柱に取り付けられた前記磁場送受手段を車両の後方で地盤との間に間隔をおいて対向するように保持する支持機と、
    を有し、
    前記磁場送受手段は、車両が所定の分解能に応ずる速度で走行するときに一定の単位時間で移動する距離を前記移動距離として、当該距離毎に、1KH〜400KHの範囲における異なる個数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させることを特徴とする磁場検出装置。
  5. 請求項4記載の磁場検出装置において、前記検出手段は、前記合成磁場を感知する受信コイルと、その感知電流に応じた信号を前記受信信号として出力する出力手段からなり、前記受信コイルとして、互いに直交する方向に配置された複数のコイルを有することを特徴とする磁場検出装置。
  6. 請求項4又は5記載の磁場検出装置において、前記検波手段によって抽出された同相成分及び離相成分に基づき、前記合成磁場の前記1次磁場に対する位相差を求める位相差検出手段を更に有することを特徴とする磁場検出装置。
  7. 送信部及び受信部を有する磁場送受信機器を車両の後方で地盤との間に間隔をおいて対向するように保持して車両と一体に移動させつつ、前記送信部によって磁場を発生させると共にその磁場と誘導磁場との合成磁場を前記受信部によって検出し、前記磁場送受信機器で発生させた磁場と検出された合成磁場とに基づき、誘導磁場が発生した地盤の地質情報を求め、
    所定の移動距離毎に、異なる複数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させ、この1次磁場とその2次磁場が合成された磁場を前記合成磁場として検出し、前記複数の周波数のそれぞれにつき、前記合成磁場の前記1次磁場との同相成分及び離相成分を逐次抽出し、抽出された同相成分及び離相成分と前記1次磁場とに基づき、前記移動距離毎の前記地盤の地質情報を逐次演算し、前記車両が所定の分解能に応ずる速度で走行するときに一定の単位時間で移動する距離を前記移動距離として、当該距離毎に、1KH〜400KHの範囲における異なる複数の周波数の送信電流によって順次1次磁場を発生させることを特徴とする探査方法。
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