JP4538460B2 - エコーキャンセラおよびスパースエコーキャンセラ - Google Patents

エコーキャンセラおよびスパースエコーキャンセラ Download PDF

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Description

本発明はエコーキャンセラに関し、特に、ノンゼロのフィルタタップ重み付け係数の数を少なくした離散時間適応フィルタを有するエコーキャンセラに関する。
(優先権情報)本出願は2003年5月23日に出願された米国特許出願第10/444,265号の優先権を主張するものであり、本出願にはこの米国特許出願の全体を援用し、組み込む。
周知の通り、長距離に渡って作動する電話網等の通信システムまたはデジタル携帯電話システム等の長時間の処理遅延を用いるシステムにおいて、厄介なエコーが生じる。このエコーは、ハイブリッド回路における、ローカル回線間及び平衡回路網間のインピーダンス不整合によって、4線−2線/2線‐4線式のハイブリッド回路に生ずる電気的な漏れによるものである。このエコーを低減するために、一般に、通信システムは1以上のエコーキャンセラを有する。
図1は、少なくとも2の加入者12及び14を接続する通信システム10を示すブロック図である。第1の加入者12は一般に2線式線路16及びハイブリッド回路18を介して通信システム10に接続される。ハイブリッド回路18は2線式線路16と4線式線路20及び22を接続する。第1の4線式線路20は第2のハイブリッド回路24及び2線式線路26を介して第2の加入者に信号を提供する。同様に、第2の加入者14からの信号は2線式線路26、第2のハイブリッド回路24、及び4線式線路20及び22を介して第1の加入者12へ送られる。1つの実施応用としては、ハイブリッド回路を電話会社の電話局に設置してもよい。インピーダンス不整合によりハイブリッド回路に生ずるエコー信号を低減させるために、エコーキャンセラ30及び32が設けられ、望ましくないエコーを減衰させる。
一般に、エコーキャンセラは、エコーの推定を行い、戻り信号値からその推定値を差し引く処理を行う適応フィルタを有する。一般の適応離散時間フィルタと同様に、フィルタのタップ重み付け係数が、エコー信号の推定値と戻り信号値との差に基づいて調整される。適応フィルタは適応制御ルーティンを用いて、差信号値をゼロまたは最小値にするためにタップ重み付け係数を調整する。
先行技術のエコーキャンセラの課題は、工業規格ITUグリッド168(ITU G.168)によって、128ミリ秒までのエコーテール長を扱う必要があるということである。しかしながら、この要求を満たすためには、適応フィルタは1024のタップ数を有するようにする必要がある。当然、このような大きな数のタップ数を有するフィルタを設けることにより、エコーキャンセラにかかる計算上の負担が相対的に大きくなる。デジタル信号プロセッサ(DSP)の実施例においては、このようなエコーキャンセラは、DSPが利用できる処理能力(例えば、MIPS)のうち、比較的大きな部分を必要とする。例えば、このような大きい数のタップ重み付け係数でLMSアルゴリズムを用いるには、かなりの処理能力が必要となる(例えば、24MIPS)。同様に、タップ数が1024の適応フィルタを特定用途向け集積回路(ASIC)に実装する場合、多数のゲートが必要となる。
従って、エコー信号の推定値を効率的に計算する、適応フィルタを有するエコーキャンセラが要求される。
本発明は、エコーキャンセラにおいて、(i)前記エコーキャンセラへ到来する遠隔端からの信号列に基づく第1データ信号列と(ii)前記エコーキャンセラへ到来する近接端からの信号列に基づく第2データ信号及び推定エコー信号列の間の差を示すエラー信号列とに応じて推定エコー信号列を生成する適応デジタルフィルタであって、それぞれのタップが、関連するタップ出力信号を生成するN個のフィルタタップを有し、前記N個のフィルタタップのうち時間遅延推定信号に応じて選択された、フィルタ係数がゼロでないM個からの前記関連するタップ出力信号を用いて前記推定エコー信号列を生成し、前記N個のフィルタタップのうちの前記M個からの前記関連するタップ出力信号を用いて前記N個のフィルタタップのうちの前記M個のそれぞれに対するフィルタ係数を計算する適応デジタルフィルタと、時間遅延推定手段であって、前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを相互相関させることに基づいて、少なくとも1つの時間的遅延を推定し、前記第1データ信号列内の前記少なくとも1つの時間的遅延の位置を示す前記時間遅延推定信号を提供する時間遅延推定手段と、加算器であって、前記第2データ信号列及び前記推定エコー信号列の差を計算し、その差を示す出力信号を提供する加算器と、を備える。また、本発明に係るエコーキャンセラにおいては、前記適応デジタルフィルタがプログラマブルな処理装置に実装されることが好適である。また、本発明に係るエコーキャンセラにおいては、前記適応デジタルフィルタが特定用途向け集積回路に実装されることが好適である。
また、本発明は、スパースエコーキャンセラにおいて、(i)前記スパースエコーキャンセラへ到来する遠隔端からの信号列に基づく第1データ信号列と(ii)前記スパースエコーキャンセラへ到来する近接端からの信号列に基づく第2データ信号及び推定エコー信号列の間の差を示すエラー信号列に応じて推定エコー信号列を生成する適応デジタルフィルタであって、それぞれのタップが、関連するタップ出力信号を生成するN個のフィルタタップを有し、N個のフィルタタップのうち時間遅延推定信号に応じて選択された、フィルタ係数がゼロでないいくつかのものからの前記関連するタップ出力信号を用いて前記推定エコー信号列を生成する適応デジタルフィルタと、前記第1データ信号列内の複数のエコーの時間的な位置を推定する時間遅延推定手段であって、前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを比較することに基づいて、前記第1データ信号列内の前記エコーの時間的な位置を示す前記時間遅延推定信号を提供する時間遅延推定手段と、加算器であって、前記第2データ信号列及び前記推定エコー信号列の差を計算し、その差を示す出力信号を提供する加算器と、を備える。また、本発明に係るスパースエコーキャンセラにおいては、前記N個のフィルタタップが、M個のグループで構成および配列され、各々が前記時間遅延推定信号によって選択可能であることが好適である。また、本発明においては、前記適応デジタルフィルタが、確率勾配減少推定器を用いて前記フィルタタップのそれぞれの係数値を計算する適応制御ルーティンを実行することが好適である。また、本発明においては、前記適応デジタルフィルタが、確率勾配減少推定器を用いて前記フィルタタップのそれぞれの係数値を計算する適応制御ルーティンを実行し、前記確率勾配減少推定器が最小二乗平均推定器を有することが好適である。また、本発明においては、前記適応デジタルフィルタがフィールドプログラマブルゲートアレイによって実装されることが好適である。また、本発明においては、前記時間遅延推定手段は、前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを相互相関させることによって得られた、複数の指定時間範囲のそれぞれに対する離散値を受け取り、各指定時間範囲に対するラグスムーズ処理後の離散値を生成する、ラグスムーズプロセッサと、前記ラグスムーズ処理後の離散値からピーク値を選択することにより前記時間遅延推定信号を生成する選択論理モジュールと、を備えることが好適である。また、本発明においては、前記時間遅延推定手段は、前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを相互相関させることによって得られた、複数の指定時間範囲のそれぞれに対する離散値を受け取り、各指定時間範囲に対するラグスムーズ処理後の離散値を生成する、ラグスムーズプロセッサと、前記ラグスムーズ処理後の離散値からピーク値を選択することにより前記時間遅延推定信号を生成する選択論理モジュールと、(i)前記選択論理モジュールが新たに算出する時間遅延推定信号、または、(ii)前記選択論理モジュールが先に算出した時間遅延推定信号、のいずれを出力するかを、前記第1データ信号列および前記第2データ信号列の各レベルに基づいて判定する判定手段と、を備えることが好適である。
好都合なことに、本発明の装置及び方法は適応フィルタによって行われる処理の量を大幅に低減させる。これは、時間遅延推定器が、エコーと関連した最も適切なM個のタップの推定を提供し、その結果、適応フィルタはそのM個のタップのみを使用して、フィルタ出力を計算するからである。例えば、1つの実施形態において、1024個のタップを有する適応フィルタ(すなわち、N=1024)は、わずか32個のタップ(すなわち、M=32)を用いてフィルタ出力を計算する。
これら並びにその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明及び添付図面の例示よりさらに明らかになるであろう。
図2はエコーキャンセラ31の機能ブロック図である。エコーキャンセラ31は、線路40における近接端からの入力信号列n[k]を受信する。そして、ハイブリッド回路の望ましくないインピーダンス不整合により、線路42においてエコー信号列z[k]が近接端からの入力信号列n[k]と結合し、線路44上へ戻り信号列y[k]が送り出される。この線路42上でのエコー信号列z[k]は、線路45上における遠隔端からの信号列x[k]とハイブリッド回路のインパルス応答h46との積に等しい(すなわち、z[k]= [k][k])。重要なことには、エコーキャンセラ31は適応フィルタ48を有しており、この適応フィルタは線路49上に推定エコー信号列Z[k](上に^
が付されたz[k]をZ[k]を以て表すものとする。)を送り出す。信号列y[k]と推定エコー信号列Z[k]との差を示す差信号e[k]が計算され、線路50上へ送り出される。
理想的には、適応フィルタ48の係数が、適応フィルタのインパルス応答[k](上に^が付されたhをHを以て表すものとする。)がハイブリッド回路のインパルス応答h46に等しくなるように選択されると、線路50上における差信号e[k]の値が、近接端からの信号列n[k]がない場合において0となる。従って、適応フィルタ48は線路50上の差信号e[k]の値を動作させるようにそのタップ重み付け係数を最小/最適値(例えば、好ましくは0)に適応させる。
図3は、図2のエコーキャンセラ31で使用される適応フィルタを示すブロック図である。適応フィルタ48は線路50上の差信号e[k]を受信し、適応フィルタのN個の係数H[k]のそれぞれ(例えば、1024)に対して値を計算する適応制御ルーティン56を有する。適応フィルタ48の時間遅延網とタップ重み付け係数の乗算器は複数の論理ブロック302−305に分割して示されている。例えば、M個の論理ブロックのそれぞれが、例えば8つのフィルタタップを有していてもよい。図4は、遅延とフィルタタップの第1の論理ブロック302を示すブロック図であり、この論理ブロック302において遠隔端からの線路45上の信号列x[k]を受信する。この線路45上の信号は入力され、第1の係数H[k]404によって乗算され、その積が線路406上に出力される。線路45上における遠隔端からの信号列x[k]及びその過去の信号が適応制御ルーティン56に入力される(図3)。同様に、線路408上における遠隔端の信号列x[k−1]を遅延させた信号は、第2の係数H[k]410によって乗算され、その積は線路412上に出力される。第1の遅延網320内の残りのタップに関連する残りの積はそれぞれ係数H[k]−H[k]421−426と関連する線路414−419上に出力される。
再び図3を参照し、後に続く遅延及びフィルタタップの論理ブロック304−306は、第1の論理ブロック302と同様に構成され、配置されている(図4)。線路406,412及び414−419上での入力信号は加算器308によって加算され、この加算器は線路310上にこれを示す第1の加算信号を生成する。加算器312は第2の論理ブロック304からの積出力314を受信し、加算し、線路上316に第2の加算信号を生成する。同様に、加算器320は第3の論理ブロック305からの積出力322を加算し、線路324上に第2の加算信号を送り出す。加算器326は積出力328を受信及び加算し、線路330上へ第2の加算信号を送り出す。各論理ブロックはセレクタ/マルチプレクサ332に加算信号を送り出す。1024個のタップを有するフィルタの実施形態では、各論理ブロックは8個のタップ数を有するように分割されるものがある。この場合、セレクタ/マルチプレクサ332は128個の加算信号を受信する。
セレクタ/マルチプレクサ332はまた、線路340上の制御信号を受信する。この制御信号はセレクタ/マルチプレクサ332に入力される加算信号(例えば、128個の加算信号)のいずれを線路342へ出力すべきかを特定する。この選択基準については時間遅延推定器及び適応制御ルーティンと関係させて以下で説明する。加算器342はその入力信号を加算し、推定エコー信号列Z[k]を示す加算信号を線路49上へ送り出す。従来技術の実施形態においては、128ミリ秒のテール長のエコー成分を適切に減衰するには、適応フィルタは1024個のタップを必要とし、この適応フィルタは推定エコー信号を生成するために、1024回の乗算、及び1024個の加算した信号値を必要とする。重要なことに、本発明のスパースエコーキャンセラはタップ数を少なくした適応フィルタを使用している。より詳しくは、時間遅延推定器は信号x[k]における主要なエコー信号成分がどこにあるのかを決定し、その結果、エコー成分の位置と関連したノンゼロ(ゼロでない)のタップ重み付け係数のみを使用し、フィルタの出力信号を計算する。この結果、本発明の技術は、各サンプルkに対して、1024回の乗算及び1024回の信号値の加算(すなわち、1023回の加算)を実行するのではなく、大幅に計算の数を減少させるものである。ここで、線路340上に制御信号を生成するために用いる計算に関して説明する。
図2を再び参照し、時間遅延推定器47は線路44上の信号y[k]を受信し、線路45上の遠隔端信号x[k]を受信する。図5は時間遅延推定器47の1つの実施形態を示すブロック図である。時間遅延推定器47はデータのブロックを処理し、エコー信号のサンプル信号ブロックのスペクトル内のどこが信号y[k]に対するものかを決定する。例えば、図6は線路44上での信号y[k]を簡潔に示したものである(図2)。時間遅延推定器47は、信号列内でエコー成分がどこにあるかを推定し、エコーが信号y[k]内のどこにあるかの指標を提供するために信号y[k]及び遠隔端信号x[k]を処理する。
図5を再び参照し、線路44及び45上の信号y[k]及び遠隔端送信信号x[k]はそれぞれ、デシメータ(decimator)502及び504に入力される。デシメーションは、例えば2であってもよい。当業者は当然、デシメータは必要ではないが、信号をデシメーション処理することによって時間遅延推定器47内で必要とされる後続の計算量を減少させることを認識するであろう。本実施形態において、信号y[k]及び遠隔端送信信号x[k]は1024個のサンプルを有し、デシメーションファクタが2の場合、線路506及び508上でのデシメーション処理された信号は512サンプルを含む。線路506及び508上のデシメーション処理された信号は、相互相関器510に入力され、この相互相関器510は出力信号列を線路512上へ送り出す。
線路512上の出力信号は、離散信号x[k]及びy[k]の間の時間遅延を示す信号値(例えば、線路512上での信号のピーク値)を含む。音声信号は非定常であるので、先行技術にあるように相互相関のみを用いて時間遅延を決定することは困難である。時間遅延推定器47は非定常な離散信号に対する時間遅延を決定するための機能を提供する。
相互相関はサンプルバイサンプルベースで(サンプル毎に)実行してもよい。サンプルバイサンプルベースで実行する相関計算は以下のように表現される。
Figure 0004538460
上記式1において、nはサンプル指標値、λは忘却因子値、τはラグ指標値である。サンプル指標はダウンコンバートされた信号内のデータ値の数に関連する。この場合、サンプル指標nは512である。この実施形態において線路506及び508上のダウンコンバートされた各信号は512のデータ値を有するからである。
また、相互相関はブロックバイブロックベースで(ブロック毎に)実行されてもよく、各ブロックはある時間量に渡る信号値を含む。ブロックバイブロックベースで実行される相互相関510の計算は以下のように表現される。
Figure 0004538460
上記式2において、kはブロック指標値、Bはブロック長の値、λは忘却因子値、及びτはラグ指標値である。1つの実施形態では、ブロック長は5msであってもよい。この種の相互相関は、2つの信号x[k]及びy[k]を分析する場合に空間的なディメンションを与える。また、相互相関器510は入力値の平均化を行うことが好ましいので、帰納的な関係は式2の関係に等しくなり、ブロックバイブロック相互相関を実行するための式は、式3のように示すことができる。
Figure 0004538460
相互相関は出力平均値を提供し、この値は正または負のどちらでもよい。しかしながら、相互相関出力は、信号x[k]及びy[k]内に含まれる時間遅延の効果を含んでいてもよい。相互相関出力は時間遅延の効果を正確には表していない。これは、相関信号が、非定常な特性を示す音声信号だからである。従って、時間遅延推定値を計算するために、更なる分析が必要とされる。
相互相関器510の出力信号は、ラグスムーザ514に入力され、このラグスムーザ514もまた、データブロックに作用(span)する。ラグスムーザ514は、相互相関出力信号にスムージング処理を実行する。例えば、ラグスムーザ514は、スライディングウィンドウ計算によって相互相関出力の平均を計算する。このスライディングウィンドウは相互相関出力信号列を横断して作用する。このフィルタリング方法は、相互相関出力に関連するデータ値の数と比べると少ない数の出力データ群を生成する。1つの実施形態では、ラグスムーザ514は入力として512個のデータ値を受け、32個のデータ値を出力する。この理由は、本実施形態におけるラグスムーザ514は、出力信号列のそれぞれを生成するために、約24個のデータ値の大きさを持つスライディングウィンドウを有するからである。スライディングウィンドウは、前回のラグスムージング処理の出力のラグを用いて入力データ値と重ね合わせられてもよく、これにより、次のラグスムージング処理した出力を生成してもよい。ラグスムーザ514は、相互相関器510の出力の平均出力(パワー:power)を計算する。従って、ラグスムーザ514の出力値は正の値である。
ラグスムーザ514は、相互相関出力のパワー平均を計算し、スライディングウィンドウを利用する。1つの実施形態では、スライディングウィンドウは24個のデータサンプルという大きさを有しているが、当然、異なるウィンドウの大きさSを選択してもよい。相互相関器510は、約512個のデータサンプルを出力する。したがって、ウィンドウの大きさが24の場合、ラグスムーザ514は32個の出力を生成する。
ラグスムーザ514は以下の式より出力値を計算できる。
Figure 0004538460
上記式4において、Lはスライディングウィンドウの大きさ、Pはウィンドウの重ね合わせの大きさ、rはラグスムーザによって生成されるデータのセット数を示す。本実施形態において、rの値は1から32まで変化し、各値が、ラグスムーザの出力の1つと固有に関係付けられる。また、Lの値は16、P値は4であり、よって、スライディングウインドウの大きさは24であり、スライディングウィンドウ30の両側で4つのデータ入力の重ね合わせが存在する。式4の計算では、相互相関出力の2乗の平均を計算するので、ラグスムーザ514の出力は正となる。
ラグスムーザ514の出力は、時間スムーザ/フィルタ516に入力され、ここで時間平均を行う。例えば、あるブロックにおける各入力信号を、関連した1極ローパスフィルタに入力してもよい(例えば、IIRフィルタ(IIR filter))。このフィルタはラグスムーザの出力の変動を減少させる。時間スムーザ516の使用は任意ではあるが、時間スムーザ516は時間遅延推定器の好ましい要素である。これは、時間スムーザ516がさらに変動を減少させ、結果として、より良い時間遅延の推定値を提供するからである。
時間スムーザは複数のフィルタを有し、ラグスムーザからの関連した1つの信号を受信する。時間スムージング処理は次式で表すことができる。
Figure 0004538460
上記式5でαは複数のフィルタのそれぞれの有効記憶長、上に〜が付されたR[k]はラグスムーザ204の出力に関連するデータセットであり、rはラグスムーザの出力の添字に相当する。1つの実施形態では、rの値は1から32の間をとる。また、時間スムーザはスムージング処理された出力を計算する時の状態情報を維持する。
選択論理モジュール580は信号列y[k]のどこにエコーがあるかの推定結果である出力を線路582へ送り出す。選択論理モジュールへの入力が時間スムーザ516からのものである場合、時間スムーザ516は関連するピーク値を選択する際に、選択論理モジュール580を補助する他の機能を実行してもよい。例えば、離散信号x[k]及びy[k]が低い信号値または単なる信号ノイズのみを含む場合、これらの信号は相互相関器510、ラグスムーザ514及び時間スムーザ516を通って0または非常に小さい値の出力を生成する。従って、選択論理モジュール516が前のピーク値を0か非常に小さい値である新しいピーク値に置き換えることがないようにする必要がある。時間スムーザは、このような状況において前の状態情報を維持するように選択論理モジュール580に知らせる。別の状況としては、時間スムーザへの出力が比較的同じような値である場合があり、この場合、時間スムーザ516における出力間のばらつきがほとんどないため、確実な時間遅延推定するためにはこれらの出力の信頼度は低くなる。この場合、時間スムーザは、選択論理モジュール580に、選択論理モジュール580の出力からピーク値を選択することによって選択論理モジュール580の状態を変化させないよう知らせる。これにより、選択論理モジュール580が信頼できない出力を生成する可能性を低減させる。
また、時間スムーザ516は、相互相関器510への入力の強度が選択論理モジュール580でピーク値を選択するために十分な強度レベルかどうかを測定することによって、時間スムーザへの入力が選択論理モジュール580に対して十分信頼できるかどうかを判断することもできる。時間スムーザは線路506及び508上での信号の強度を判断し、強度レベルが、入力の連続した処理に適したレベルであるかどうかの目安を与える。線路520上における0値のブール信号は、時間スムーザへの入力が信頼性のある時間遅延推定を行うであろう信頼度が低いことを示す。同様に、1値のブール信号は時間スムーザへの入力が信頼性のある時間遅延推定を行うであろう信頼度が高い(すなわち、低くない)ことを示す。
ラグスムーザ514及び時間スムーザ516の両方の出力が、音声信号等の非定常信号の時間遅延の推定値を決定する上で助けとなる。ラグスムーザ及び時間スムーザの出力は、非定常信号の時間遅延推定値を決定するために用いられるピーク信号を提供する。この2つの出力における主な違いは、時間スムーザがラグスムーザの出力の変動の低減を目的とし、これにより、時間遅延推定値を決定するためにさらに信頼性のある出力を生成するということである。
選択論理モジュール580は、時間スムーザまたはラグスムーザのどちらかから信号を受信できる。時間遅延推定値を決定する際には、選択論理モジュール580に入力されるピーク値信号が、時間遅延推定値を示す。選択論理モジュール580は、その入力から、高い値/ピーク値の選択的なセットを選択する。例えば、選択論理モジュールは、4つの信号値を選択してもよい。これらのピーク値は、記憶されたピーク値と異なるピーク値を有する新しいデータ値のセットが記憶されるまで記憶される。
選択論理モジュール580は、エコーが信号列のどこにあるかの推定である出力データを線路582上へ送り出す。例えば、1つの実施形態において、選択論理モジュールは、エコーが存在する、信号列中の4つの位置を示すデータを提供することができる。その各位置は、図3に示す遅延とタップの論理ブロックのM個のうちの1つに固有に関連する。例えば、選択論理モジュール580がエコーの4つの推定位置を示す出力信号を生成するよう構成されている場合、セレクタ/マルチプレクサ332(図3)が、4つの推定位置と関連する4つの入力信号を選択する。つまり、時間遅延推定器によって提供される4つの推定位置が、1番、2番、3番、及び128番(#1,#2,#3,#128)の論理ブロックと関連する信号列の位置を示す場合、セレクタ/マルチプレクサ332(図3)は線路310、316、324、及び330上の信号を選択する(図3)。この結果、線路49上の推定エコー信号列Z[k]は全論理ブロックからではなく、選択された数の論理ブロックからの入力を含む。
重要なことには、N個のタップを有する適応フィルタは、N個のフィルタタップの中のM個からの信号を処理する。M個のタップは、時間遅延推定器からの時間遅延推定データに基づいて選択される。選択されたM個のタップは、エコー信号値を含む推定された時間的な位置を示す。1つの利点として、本発明の技術は適応フィルタが実行する処理の量を大幅に減らすことができる。これは、時間遅延推定器はエコーと関連する可能性の最も高いM個のタップの推定値を提供し、適応フィルタがM個のタップのみを用いてフィルタ出力を計算するからである。例えば、1つの実施形態においては、1024個のタップを有する適応フィルタ(すなわちN=1024)は32個のタップ(すなわち、M=32)のみを用いてフィルタの出力を計算する。なお、適応フィルタはプログラマブルな処理装置に実装されることが好適である。また、適応フィルタは特定用途向け集積回路に実装されることが好適である。また、適応フィルタは、確率勾配減少推定器を用いてフィルタタップのそれぞれの係数値を計算する適応制御ルーティンを実行することが好適である。また、その確率勾配減少推定器は最小二乗平均推定器を有することが好適である。また、適応フィルタはフィールドプログラマブルゲートアレイによって実装されることが好適である。
当業者であればセレクタ/マルチプレクサ332(図3)を、異なる様々な位置に配置してもよいことを認識するであろう。例えば、加算器308、312、320等の上流側にセレクタ/マルチプレクサ332を分割して配置してもよいことが考えられるであろう。
本発明をそのいくつかの好適な実施形態に関して示し、説明してきたが、その形態及び詳細に対しての各種変更、省略及び追加を本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
エコーキャンセラを有する通信システムを示すブロック図である。 エコーキャンセラを示すブロック図である。 図2のエコーキャンセラ内で使用される適応フィルタを示すブロック図である。 遅延及びフィルタタップの第1の論理ブロックを示すブロック図である。 時間遅延推定器を示すブロック図である。 信号y[k]を示す簡潔な図である。

Claims (10)

  1. エコーキャンセラにおいて、
    (i)前記エコーキャンセラへ到来する遠隔端からの信号列に基づく第1データ信号列と(ii)前記エコーキャンセラへ到来する近接端からの信号列に基づく第2データ信号及び推定エコー信号列の間の差を示すエラー信号列とに応じて推定エコー信号列を生成する適応デジタルフィルタであって、それぞれのタップが、関連するタップ出力信号を生成するN個のフィルタタップを有し、前記N個のフィルタタップのうち時間遅延推定信号に応じて選択された、フィルタ係数がゼロでないM個からの前記関連するタップ出力信号を用いて前記推定エコー信号列を生成し、前記N個のフィルタタップのうちの前記M個からの前記関連するタップ出力信号を用いて前記N個のフィルタタップのうちの前記M個のそれぞれに対するフィルタ係数を計算する適応デジタルフィルタと、
    時間遅延推定手段であって、前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを相互相関させることに基づいて、少なくとも1つの時間的遅延を推定し、前記第1データ信号列内の前記少なくとも1つの時間的遅延の位置を示す前記時間遅延推定信号を提供する時間遅延推定手段と、
    加算器であって、前記第2データ信号列及び前記推定エコー信号列の差を計算し、その差を示す出力信号を提供する加算器と、
    を備えるエコーキャンセラ。
  2. 請求項1に記載のエコーキャンセラであって、前記適応デジタルフィルタがプログラマブルな処理装置に実装される、エコーキャンセラ。
  3. 請求項1に記載のエコーキャンセラであって、前記適応デジタルフィルタが特定用途向け集積回路に実装される、エコーキャンセラ。
  4. スパースエコーキャンセラにおいて、
    (i)前記スパースエコーキャンセラへ到来する遠隔端からの信号列に基づく第1データ信号列と(ii)前記スパースエコーキャンセラへ到来する近接端からの信号列に基づく第2データ信号及び推定エコー信号列の間の差を示すエラー信号列に応じて推定エコー信号列を生成する適応デジタルフィルタであって、それぞれのタップが、関連するタップ出力信号を生成するN個のフィルタタップを有し、N個のフィルタタップのうち時間遅延推定信号に応じて選択された、フィルタ係数がゼロでないいくつかのものからの前記関連するタップ出力信号を用いて前記推定エコー信号列を生成する適応デジタルフィルタと、
    前記第1データ信号列内の複数のエコーの時間的な位置を推定する時間遅延推定手段であって、前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを比較することに基づいて、前記第1データ信号列内の前記エコーの時間的な位置を示す前記時間遅延推定信号を提供する時間遅延推定手段と、
    加算器であって、前記第2データ信号列及び前記推定エコー信号列の差を計算し、その差を示す出力信号を提供する加算器と、
    を備えるスパースエコーキャンセラ。
  5. 請求項4に記載のスパースエコーキャンセラであって、前記N個のフィルタタップが、M個のグループで構成および配列され、各々が前記時間遅延推定信号によって選択可能である、スパースエコーキャンセラ。
  6. 前記適応デジタルフィルタが、確率勾配減少推定器を用いて前記フィルタタップのそれぞれの係数値を計算する適応制御ルーティンを実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエコーキャンセラ、または、請求項4若しくは請求項5に記載のスパースエコーキャンセラ。
  7. 前記適応デジタルフィルタが、確率勾配減少推定器を用いて前記フィルタタップのそれぞれの係数値を計算する適応制御ルーティンを実行し、前記確率勾配減少推定器が最小二乗平均推定器を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエコーキャンセラ、または、請求項4若しくは請求項5に記載のスパースエコーキャンセラ。
  8. 前記適応デジタルフィルタがフィールドプログラマブルゲートアレイによって実装される、請求項1若しくは請求項2に記載のエコーキャンセラ、または、請求項4若しくは請求項5に記載のスパースエコーキャンセラ。
  9. 前記時間遅延推定手段は、
    前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを相互相関させることによって得られた、複数の指定時間範囲のそれぞれに対する離散値を受け取り、各指定時間範囲に対するラグスムーズ処理後の離散値を生成する、ラグスムーズプロセッサと、
    前記ラグスムーズ処理後の離散値からピーク値を選択することにより前記時間遅延推定信号を生成する選択論理モジュールと、
    を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエコーキャンセラ、または、請求項4若しくは請求項5に記載のスパースエコーキャンセラ。
  10. 前記時間遅延推定手段は、
    前記第1データ信号列と前記第2データ信号列とを相互相関させることによって得られた、複数の指定時間範囲のそれぞれに対する離散値を受け取り、各指定時間範囲に対するラグスムーズ処理後の離散値を生成する、ラグスムーズプロセッサと、
    前記ラグスムーズ処理後の離散値からピーク値を選択することにより前記時間遅延推定信号を生成する選択論理モジュールと、
    (i)前記選択論理モジュールが新たに算出する時間遅延推定信号、または、(ii)前記選択論理モジュールが先に算出した時間遅延推定信号、のいずれを出力するかを、前記第1データ信号列および前記第2データ信号列の各レベルに基づいて判定する判定手段と、
    を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエコーキャンセラ、または、請求項4若しくは請求項5に記載のスパースエコーキャンセラ。
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