第1の発明は、洗濯物を収容して水平方向又は傾斜方向を回転軸心として回転駆動される回転ドラムと、この回転ドラムを回転自在に内包して洗濯機筐体内に揺動可能に支持された水槽と、前記洗濯機筐体の基底部と水槽との間に配設されて水槽の位置を検知する位置検知手段と、前記回転ドラム内への洗濯物の出し入れのために開閉される扉体と、前記扉体の開閉状態を検知する扉体検知手段と、洗濯機の洗い、すすぎ、脱水の運転動作を制御する制御手段を有する制御装置とを備え、洗い、すすぎ、脱水の全行程終了後も前記制御装置は所定時間通電され、前記制御手段は、前記所定時間が経過するまでに前記扉体を開けて前記扉体を閉めたことを前記扉体検知手段で検知した後、前記位置検知手段により検知した値が所定の範囲内の値である場合に洗濯物が無いものと判定し、その検知した値から所定値を引くことにより洗濯物が無いときの水槽の基準位置の値を算出し、次回の洗濯時において、前記回転ドラム内へ洗濯物が投入された後に前記回転ドラムを回転駆動した後、前記位置検知手段により検知した前記水槽の位置の値を前記洗濯物が無いときの水槽の基準位置の値と比較して、洗濯物の量を検知するようにしたドラム式洗濯機であり、設置条件や経時変化等により、洗濯物の量を検知するための基準となる洗濯物が無いときの水槽の位置が変化しても、都度、洗濯物が無いときの水槽の位置を設定できるので、精度良く洗濯物の量を検知することができる。
また、洗い、すすぎ、脱水の全行程終了後も所定時間通電し、使用者によって扉体が開閉されたかどうかを扉体検知手段で検知し、位置検知手段により検知した値が所定の範囲内の値である場合に洗濯物が無いものと判定してから水槽の基準位置の値を算出するので、全行程終了後に洗濯物が所定量以上残っていないかどうかを判断できるので、水槽の基準位置の値を精度よく算出することができ、次回の洗濯時には、精度のよい水槽の基準位置の値を、洗濯物の量を検知するときの比較対象とすることができるので、洗濯物の量を検知する精度を高めることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、洗い、すすぎ、脱水の全行程終了後に、扉体を開けて前記扉体を閉めたことを扉体検知手段で検知した後に位置検知手段により検知した値を、複数の洗濯時においてそれぞれ記憶し、その記憶した複数個の値の平均値から洗濯物が無いときの水槽の基準位置の値を算出するようにしたものであり、複数回において検知した値の平均値を採用することで、小さな洗濯物の取り出し忘れといった不具合による検知の誤差を小さくすることができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の制御手段は、洗い、すすぎ、脱水の全行程終了後に、扉体を開けて前記扉体を閉めたことを扉体検知手段で検知した後に位置検知手段により検知した値が、所定の範囲外の値である場合、前記検知した値は採用しないようにしたものであり、所定容量以上の洗濯物が残っている場合において、次回の洗濯時に洗濯物の量を誤検知してしまうといった不具合を防止することができる。
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、運転コース等を設定する入力設定手段を備え、制御手段は、前記入力設定手段に特殊な操作が実行されることにより洗濯物の量を検知する工程を実行し、そのとき位置検知手段が検知した値を、洗濯物が無いときの水槽の基準位置の値として記憶するようにしたものであり、使用者が最初に洗濯を行う場合や、また、脱水行程終了後に電源を切った後に洗濯物を取り出した場合など、脱水行程終了後に位置検知手段により値を検知できない場合でも、精度良く洗濯物の量を検知することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るドラム式洗濯機1の要部構成を示すものである。洗濯機筐体6内には、水槽3内に回転ドラム2を収容し、回転ドラム2の回転軸2aを水槽3の背面に設けられた軸受68で軸支すると共に回転軸2aにドラム駆動モータ5を連結した水槽ユニット7を前上がりの状態に傾斜させて配設している。この水槽ユニット7は、その背面側に軸受68やドラム駆動モータ5などの重量の大きな構成要素が取り付けられているため、重心位置は背面寄りになって不安定な状態になるが、防振ダンパー70により水槽ユニット7をその重心位置より正面側寄りの下方の左右で支持し、水槽3の上部に固定された上部支持金具75と洗濯機筐体6の上面との間に架設した第1のコイルバネ71により水槽ユニット7を正面側に向けて付勢し、更に防振ダンパー70による支持高さ位置より下方の背面と、洗濯機筐体6の背面との間に第2のコイルバネ72を架設することにより、重心位置より正面側寄りで防振ダンパー70により支持された水槽ユニット7が背面側に倒れる状態になることを補正し、制振効果の高い支持構造に構成されている。
防振ダンパー70は、図2に示すように、シリンダ内にオイルを封入したオイルダンパー機構78と、このオイルダンパー機構78と同軸に設けられたコイルバネ機構79とを
備えて構成され、オイルダンパー機構78の下端に伸縮自在に取り付けられ、外周部にコイルバネ機構79が配置されたピストンロッド84は、洗濯機筐体6の基底部に固定された支持台73にゴム製の緩衝材77を介して固定される。また、オイルダンパー機構78の上端に固定された支持軸85は、水槽3の下部に固定された下部支持金具74に緩衝材77を介して固定される。
水槽3内には有底円筒形に形成された回転ドラム2が回転自在に支持され、回転ドラム2は水槽3の背面に取り付けられたドラム駆動モータ5によって回転速度可変及び回転方向切換可能に回転駆動される。また、回転ドラム2は、その回転軸方向が図示するように正面側から背面側に向けて下向き傾斜となるように傾斜配置されているため、洗濯機筐体6の正面側に形成された傾斜面に開閉自在に設けられた扉体9を開くと、回転ドラム2に対して洗濯物を出し入れする作業に際して腰を屈める必要がなく、ドラム式洗濯機1の正面側に余裕のある空間を確保する必要もないので、洗面所などの狭い空間にも設置可能なドラム式洗濯機1に構成することができる。
扉体9に磁石(図示せず)を設け、洗濯機筐体6には、磁石(図示せず)の対応位置にリードスイッチで構成された扉体検知手段35が設けられ、磁石(図示せず)が扉体検知手段35に近接しているか否かで、扉体9が、開閉のいずれの状態であるかを検知するようにしている。
上記ドラム式洗濯機は、図示省略しているが回転ドラム2内に温風を送風する送風ファンや温風を生成するヒータなどを設けた乾燥機能を備え、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥にわたる一連の運転動作を使用者からの指示入力と各部の動作状態監視に基づいて制御する制御装置が設けられている。
制御装置19は、図3に示すように構成しており、モータ5、排水弁13、給水弁14、送風ファン17、ヒータ18などの動作を制御し、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の一連の行程を逐次制御するマイクロコンピュータからなる制御手段20を有している。制御手段20は、運転コース等を設定するための入力設定手段21からの情報を入力して、その情報を基に表示手段22で表示して使用者に知らせるとともに、入力設定手段21により運転開始が設定されると、水受け槽3内の水位を検知する水位検知手段16、扉体検知手段35等からのデータを入力して負荷駆動手段23を介して、排水弁13、給水弁14、送風ファン17、ヒータ18などの動作を制御し、洗濯・乾燥運転を行う。
このとき、制御手段20は、モータ5のロータの位置を検出する位置検出手段24からの情報に基づいて、駆動回路25を介してインバータ26を制御することによりモータ5を回転制御するようにしている。モータ5は直流ブラシレスモータで、図示していないが、3相巻線を有するステータと、リング上に2極の永久磁石を配設しているロータとで構成し、ステータは3相巻線を構成する第1の巻線5a、第2の巻線5b、第3の巻線5cをスロットを設けた鉄心に巻き付けて構成している。
インバータ26は、パワートランジスタ(IGBT)と逆導通ダイオードの並列回路からなるスイッチング素子で構成している。第1のスイッチング素子26aと第2のスイッチング素子26bの直列回路と、第3のスイッチング素子26cと第4のスイッチング素子26dの直列回路と、第5のスイッチング素子26eと第6のスイッチング素子26fの直列回路で構成し、各スイッチング素子の直列回路は並列接続している。
ここで、スイッチング素子の直列回路の両端は入力端子で、直流電源を接続し、スイッチング素子の直列回路を構成する2つのスイッチング素子の接続点に、それぞれ出力端子を接続している。出力端子は、3相巻線のU端子、V端子、W端子に接続し、スイッチン
グ素子の直列回路を構成する2つのスイッチング素子のオン・オフの組み合わせにより、U端子、V端子、W端子をそれぞれ正電圧、零電圧、解放の3状態にする。
スイッチング素子のオン・オフは、ホールICからなる3つの位置検出手段24a、24b、24cからの情報に基づいて制御手段20により制御される。位置検出手段24a、24b、24cは電気角で120度の間隔でロータが有する永久磁石に対向するように、ステータに配設されている。
ロータが1回転する間に、3つの位置検出手段24a、24b、24cは、それぞれ電気角で120度の間隔でパルスを出力する。制御手段20は、3つの位置検出手段24a、24b、24cのいずれかの信号の状態が変わったときを検知し、位置検出手段24a、24b、24cの信号を基に、スイッチング素子26a〜26fのオン・オフ状態を変えていくことで、U端子、V端子、W端子を正電圧、零電圧、解放の3状態にし、ステータの第1の巻線5a、第2の巻線5b、第3の巻線5cに通電して磁界を作り、ロータを回転させるよう構成している。
また、スイッチング素子26a、26c、26eはそれぞれパルス幅変調(PWM)制御され、例えば、繰り返し周波数10kHzでハイ、ローの通電比を制御することで、ロータの回転数を制御するようにしてあり、制御手段20は、3つの位置検出手段24a、24b、24cのいずれかの信号の状態が変わるたびにその周期を検出し、その周期よりロータの回転数を算出して、設定回転数になるようにスイッチング素子26a、26c、26eをPWM制御する。
電流検知手段27は、インバータ26の一方の入力端子に接続した抵抗28と、この抵抗28に接続した電流検知回路29とで構成し、インバータ26の入力電流値を検知し、その出力を制御手段20に入力している。モータ5が直流ブラシレスモータの場合は、トルクは入力電流にほぼ比例するので、抵抗28に接続した電流検知回路29により、インバータ26の入力電流値を検知することで、モータ5のトルクを検知することができる。
商用電源31は、ダイオードブリッジ32、チョークコイル33、平滑用コンデンサ34からなる直流電源変換装置を介して、インバータ26に接続している。ただし、これは一例であり、直流ブラシレスモータ5の構成、インバータ26の構成等は、これに限定されるものではない。
入力設定手段21は、図4に示すように、洗い時間を設定する洗い時間設定スイッチ21a、すすぎ回数を設定するすすぎ回数設定スイッチ21b、脱水時間を設定する脱水時間設定スイッチ21c、乾燥時間を設定する乾燥時間設定スイッチ21d、スタート・一時停止スイッチ21e、電源入りスイッチ21f、電源切りスイッチ21g、第1のコース設定スイッチ21h、第2のコース設定スイッチ21i、水位変更入力設定スイッチ21jなどを有している。
第1のコース設定スイッチ21hは、運転するコースを設定するもので、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の一連の行程を行うコースと、洗い、すすぎ、脱水の各行程を行うコースと、乾燥行程のみを行うコースとを順次切換設定できるようにしている。
第2のコース設定スイッチ21iは、おまかせコース、お急ぎコース、わたし流コース、毛布コースなどを切換設定するもので、順次、切り換えられるようにしている。
表示手段22は、洗い時間表示部22a、すすぎ回数表示部22b、脱水時間表示部22c、第2のコース設定スイッチ21iで設定されるコースを表示するコース設定表示部
22d、水位表示部(水位表示手段)22e、数字表示部22f、数字表示部22fに表示されているのが洗剤量の場合点灯する洗剤量表示部22g、数字表示部22fに表示されているのが残り時間の場合点灯する残り時間表示部22h等を有している。
また、図1に示すように、水槽ユニット7を下方から支持する左右2本の防振ダンパー70を取り付けた下部支持金具74と洗濯機筐体6の基底部に固定された支持台73との間には、位置センサ(位置検知手段)36が左の防振ダンパー70の近傍に取り付けられている。
位置センサ36は、図5、図6に示すように、検知コイル部40と、この検知コイル部40内に進退移動自在に構成された変位ロッド部41とを備えて構成されている。この位置センサ36は、検知コイル部40の下端に下方自在継手44を設けた下部取付板46を支持台73に装着し、変位ロッド部41の上端に上方自在継手45を設けた上部取付板47を下部支持金具74に装着することにより、水槽ユニット7の三次元方向への振れに対しても追従して水槽ユニット7の位置を検知する。
検知コイル部40は、図6に示すように、ボビン60に巻回された3つの巻線61、62、63をコネクタ65に配線接続したコイル体57を樹脂モールド体67によって被覆したものを、変位ロッド部41のロッド体43が進退移動自在に嵌入するシリンダ体58の外周に摺動移動可能に嵌挿して構成されている。
コイル体57は、図6、図7に示すように、巻線接続鍔59a、59b、59cを設けたボビン60の略中央部に一次巻線61を巻回し、この一次巻線61の上に一部が重なるようにして第2二次巻線63を巻回し、巻線接続鍔59a、59bの間に第1二次巻線62を巻回し、各巻線の端末を各巻線接続鍔59a、59b、59cにそれぞれ埋設された6枚の接続部材64に半田付けすることにより、3つの巻線をボビン60に巻回した3巻線コイルを得ている。一次巻線61、第1二次巻線62、第2二次巻線63の3つの巻線は、図10の位置検出回路に示すように、それぞれの一方線端は接地電位、他方線端はそれぞれ単独に外部に引き出すために、4端子のコネクタ65に配線接続される。図7に示すように、一端がコネクタ65の4端子の接続刃の延長部分である4枚の接続板66a、66b、66c、66dをそれぞれ接続部材64の所定箇所に半田付けすることにより、リード配線を伴うことなく各巻線がコネクタ65に配線接続された状態に仕上げられる。このコイル体57は、図5、図6に示すように、コネクタ65の差込部分を外部露出させて樹脂モールド体67により被覆し、防湿性及び耐振性の向上を図っている。
図6に示すように、有底円筒軸状に形成されたシリンダ体58の下方に形成されたフランジ69上に押し上げバネ78を配し、その上にコイル体57を嵌挿させると、コイル体57は押し上げバネ78によって上方に付勢された状態になるので、シリンダ体58の上端に形成されたネジ部58aにナット79を螺入することにより、シリンダ体58にコイル体57を保持させることができ、シリンダ体58に嵌挿したコイル体57の高さ位置はナット79の螺入位置によって調整することができる。尚、コイル体57の樹脂モールド体67より下方に露出するボビン60の下端には、図7に示すように、切り割りが形成され、シリンダ体58の押し上げバネ78の嵌め込み部分に形成された凸部(図示せず)が切り割りの切欠き部分に嵌め合わされるので、コイル体57はシリンダ体58上で回転しないように保持される。
上記構成になる検知コイル部40のシリンダ体58内に進退移動自在に嵌入される変位ロッド部41は、図6に示すように、有底円筒軸状に形成されたロッド体43の中に円柱状に形成されたフェライト(磁性体)42を嵌挿し、その上に非磁性体材料によって形成したスペーサ48を挿入し、スペーサ48上に押圧バネ49を配して一端に上方自在継手
45の球状体45aを形成したキャップ50をロッド体43の上端に形成されたネジ部に螺入することにより、フェライト42を一定位置に固定した状態に構成される。このバネ付勢によりフェライト42を所定位置に固定する構造により、樹脂材料であるロッド体43とフェライト42との熱膨張率の差によって変位ロッド体41が変形するのを防止することができる。洗濯機は温度変化が激しいので、このような熱膨張による変形を防止する構造は洗濯機に適用するのに好適なものとなる。
また、フェライト42は原材料物質の粉末を加圧成形して焼結したものであるため、衝撃等によって折損しやすいものであるが、例えロッド体43内で折損したとしても押圧バネ49によって中空部の段差上に押圧されているため、電気的な影響が出ない状態が維持される。従って、フェライト42は必ずしも所定長さのものを適用しなくても、短い長さのものを複数本積み重ねて収納することもでき、規格サイズ品の適用や折損し難い短いサイズの適用など柔軟な対応が可能である。また、押圧バネ49は非磁性体材料によって形成することが望ましく、押圧バネ49が磁性体であるフェライト42の延長部のように作用してフェライト42の長さを規制した効果を損なうことがない。ここでは非磁性体であるスペーサ48を介して押圧バネ49によってフェライト42を付勢しているので、押圧バネ49が磁性体、非磁性体のいずれであってもよく、材料選択の範囲を拡大することができる。また、ロッド体43の内部先端側に空間を設け、その空間から外部に向けて開口する水抜き穴51を形成しておくことにより、温度変化によりロッド体43の内部に結露が生じた場合でも結露水を排出させることができる。
上記構成になる変位ロッド部41のロッド体43は、検知コイル部40のシリンダ体58内に進退移動自在に嵌挿され、ピストンとシリンダとの関係のように動作するので、ロッド体43とシリンダ体58との間の摩擦係数を小さくする必要がある。一般的には摺動部分にグリス等の潤滑材料を塗布することにより摩擦係数の減少が図られるが、塗布された潤滑材料に繊維粉や塵埃が付着しやすく、長期間にわたって性能維持を図ることが困難である。ここでは、ロッド体43とシリンダ体58とを、両者間の摩擦係数が小さく、耐摩耗性のよい材料の組み合わせによって構成している。例えば、一方をポリアセタール、他方をポリアミドによって形成することにより、潤滑材料を用いることなく摺動摩擦が少ない状態が得られ、これらの材料は耐摩耗性にも優れているので、耐久性の向上にも有効である。また、シリンダ体58内にロッド体43が急激に進退移動したとき、シリンダ体58内の空気を圧縮又は膨張させることになるので、それによる変位ロッド部41の加わる進退移動に対する抵抗を排除するために、シリンダ体58の下端側には中空部内から外部に向けて開口する空気抜き穴80を設けることが好適な構造となる。この空気抜き穴80は、シリンダ体58内に侵入した水分や結露水の排出にも有効である。
上記位置センサ36は、図1に示したように水槽ユニット7と洗濯機筐体6の基底部との間に配設されて水槽ユニット7の位置を検出するが、水槽ユニット7に生じる振れは三次元方向であり、洗濯機筐体6の基底部は一定状態にあるため、水槽ユニット7の振れによって破損したり配設位置から外れたりすることがない取付構造が必要となる。
変位ロッド部41は、図5、図6に示すように、ロッド体43の上端に螺合されたキャップ50の上端に球状体45aを形成し、水槽ユニット7に固定された下部支持金具74に装着される上部取付板47に球状体45aの直径に対応する内径の椀状体45bを形成して、球状体45aを椀状体45bに嵌め込んだ上方自在継手45が形成されている。また、検知コイル部40は、シリンダ体58の下端に球状体44aを形成し、洗濯機筐体6の基底部に固定された支持台73に装着される下部取付板46に椀状体44bを形成して、球状体44aを椀状体44bに嵌め込んだ下方自在継手44が形成されている。この上下に自在継手を設けた位置センサ36の取付構造により、位置センサ36は水槽ユニット7の振れに対して柔軟に追従し、振れ量に対応する変位ロッド部41の検知コイル部40
に対する進退移動量が得られる。
前述したように検知コイル部40にはコネクタ65が設けられ、コネクタ65にリード接続がなされるため、検知コイル部40が回転するとコネクタ65に接続したリードが断線したり接続が外れる恐れがある。そこで、下方自在継手44には、自在運動を維持しつつ検知コイル部40の回転を阻止する回転阻止構造が形成されている。
図8に示すように、下方自在継手44を構成する球状体44aにはロッド体43の軸心方向に直交する直径方向に球面から両側に突出する円柱形状の一対の円柱突起52a、52bが形成されている。この球状体44aに対応する椀状体44bには、円柱突起52a、52bに対応する位置に係合溝53a、53bが形成されている。この係合溝53a、53bは、図9に断面図として示すように、椀状内周面をロッド体43の軸心Cが球状体44aの中心を回動中心として円柱突起52a、52bに形成位置方向に倒れたときの円柱突起52a、52bの軌跡上に形成している。円柱突起52a、52bが球状体44aの直径方向に形成されていることにより、ロッド体43の軸心Cが360度方向に倒れても円柱突起52a、52bを係合溝53a、53b内に保持することができる。従って、自在継手44として検知コイル部40の360度方向の振れに対して球状体44aと椀状体44bとの係合による自在移動は維持されるが、検知コイル部40がその軸心回りに回転することは円柱突起52a、52bが係合溝53a、53bに嵌り合っていることから阻止される。また、球状体44aから両側に突出する円柱突起52a、52bは、その直径が互いに異なるように形成し、各円柱突起52a、52bに対応する係合溝53a、53bの幅も異なるように形成することにより、検知コイル部40の装着方向を規制することができ、コネクタ65に対する配線接続を一定に保つことができる。
上記下方自在継手44を構成する球状体44a及び椀状体44b、上方自在継手45を構成する球状体45a及び椀状体45bについても、前述したロッド体43とシリンダ体58との摺動関係と同様に摩擦係数が小さくなるように、球状体44a、45aと椀状体44b、45bとは摩擦係数が小さくなる材料の組み合わせに構成される。本構成ではシリンダ体58の一端に球状体44aを一体に形成しているので、椀状体44bを一体に形成した下部取付板46とシリンダ体58の形成材料は摩擦係数が小さくなる異なる種類の組み合わせで構成することにより、摺動部分にグリス等の潤滑材を塗布することなく摺動性のよい係合関係が得られる。同様に、上方自在継手45についても、椀状体45bを一体に形成した上部取付板47と、球状体45aを一体に形成したキャップ50とは、異なる形成材料の組み合わせに構成される。摩擦係数が小さくなる形成材料の組み合わせは、例えば、一方がポリアセタールであり、他方がポリアミドとするのが好適なものとなる。
上述のように摺動接触部分の対向部材を摩擦係数が小さくなる材質の組み合わせになるように構成するために、位置センサ36全体での各構成要素の形成材料は、次に説明するように形成材料を選択するのが好適となる。摺動接触部分とは、前述したように上下の各自在継手44、45部分であり、ロッド体43とシリンダ体58との摺動部分である。
下方取付板46に設けた椀状体44bには係合溝53a、53bを形成して検知コイル部40の回転を阻止する構造としているが、上方取付板47に設けた椀状体45bに係合溝53a、53bが形成されていても球状体45aの自在移動に支障は生じない。従って、上方取付板47及び下方取付板46は共通部品とすることが可能である。この上方取付板47及び下方取付板46を樹脂成形により形成する材料区分を(B)とすると、椀状体44b、45bにそれぞれ対向する球状体44a、45aを一体に形成したシリンダ体58及びキャップ50を樹脂成形により形成する材料区分は(C)となる。更に、シリンダ体58内を摺動移動するロッド体43を樹脂成形する形成材料は、シリンダ体58の形成材料と異なるものとするため材料区分は(B)となる。ロッド体43はキャップ50を設
けてキャップ50に球状体45aを一体形成しているので、このような材料区分が可能となり、摺動接触部分は摩擦係数が小さくなる材料(B)(C)でそれぞれ対向させることが可能になる。材料区分(B)は例えばポリアセタール、材料区分(C)は例えばポリアミドとして選択することができる。
また、位置センサ36は、防振ダンパー70の軸心方向と略同一方向の位置を検知することができるので、水槽ユニット7の位置を的確に検知することができる。更に、位置センサ36の装着は、防振ダンパー70を取り付けるための金具を共用することができるので、位置センサ36を取り付けるために別途取付部材を設ける無駄がなく、確実な装着が可能となる。位置センサ36の下部支持金具74及び支持台73への装着は、図5、図6に示すように、上部取付板47及び下部取付板46にそれぞれ同一構造に形成された係合片54及び係止突起55を下部支持金具74又は支持台73に形成された装着穴に差し込むだけの簡単な作業で実施することができる。即ち、折り曲げ形状に形成された係合片54を下部支持金具74又は支持台73に形成された穴に斜め方向から差し込み、装着面と取付面とが平行になるように係止突起55を下部支持金具74又は支持台73に形成された穴に押し込むと、係止突起5に形成された戻り止めが穴の縁に係止されるので、ネジ等の締結手段を用いることなく装着することができる。
本実施形態に係るドラム式洗濯機のように、水槽ユニット7を前上がりの斜め方向に配置し、その重心位置より正面寄りの位置を下方から防振ダンパー70によって支持し、第1及び第2の各コイルバネ71、72で水槽ユニット7を所定位置に弾性保持する制振構造が適用されたものでは、特に防振ダンパー70の作用が顕著に現れるため、本構成のように防振ダンパー70の制振方向と略同一方向に位置センサ36を装着することにより、水槽ユニット7の位置をより確実に検知することができる。
位置センサ36による水槽ユニット7の位置の検知は、図10に示すように、検知コイル部40に設けられたコネクタ65に発振回路81及び検出回路82を接続することによりなされる。水槽ユニット7が所定位置にある場合には、変位ロッド部41の検知コイル部40に対する進退移動量が変化しない基準位置にフェライト42があるので、発振回路81から一次巻線61に一定出力の励磁信号を印加すると、第1二次巻線62に励起される信号出力及び第2二次巻線63に励起される信号出力は一定の状態にある。発振回路81は所定周波数の正弦波あるいは三角波を励磁信号として一次巻線61に印加し、それによって第1二次巻線62及び第2二次巻線63に励起される信号出力をそれぞれ検出回路82で整流、平滑化することにより位置に対応する電圧出力が得られる。この電圧出力は、制御手段20に入力される。
ここでは、基準位置は、回転ドラム2内に洗濯物が収納されていない空の状態で、フェライト42の下端が一次巻線61の下端とほぼ同じ位置にある状態としているので、基準位置の設定に際しては、図5に示すように、ナット79を回転させて押し上げバネ78によって上方に付勢されている検知コイル部40の変位ロッド部41に対する高さ位置を調整すると、フェライト42のコイル内での位置を調節することができる。フェライト42は目視できないので、設定作業では回転ドラム2が空の状態で第1二次巻線62及び第2二次巻線63それぞれの出力信号が検出回路82から基準位置に対応する電圧として出力されるようにナット79を回転させることにより容易に調整できる。
図11に示すように、水槽ユニット7が変位するのに伴って変位ロッド部41が検知コイル部40内で進退移動すると、フェライト42の位置が変化するので、第1二次巻線62に励起される出力信号から検知回路82によって得られる電圧は図示A1に示すような変化曲線となる。図示例では基準位置を境にして伸び側で10mm、圧縮側で15mmの範囲内ではほぼ直線的な変化態様となっている。この伸縮範囲は回転ドラム2に洗濯物を
収納できる範囲内なので、回転ドラム2内に投入された洗濯物の量によって水槽ユニット7の沈み込み位置が変位するので、第1二次巻線62から得られる検知回路82の出力電圧を布量検知手段30として用いている。
一方、第2二次巻線63に励起される出力信号から検知回路82で得られる出力電圧は、図示A2に示すような変化となる。基準位置から伸び側で10mm、圧縮側で40mmの範囲ではほぼ直線的な変化を示しており、これは回転ドラム2内に洗濯物を収納し、洗濯行程で水槽3内に水が入った最大荷重状態までカバーできる範囲内なので、第2二次巻線63の出力信号から検知回路82で得られる出力電圧の変化は、水槽ユニット7の振動に伴う変位検知に好適なものとなり、脱水行程時の脱水振動異常を検知するのに用いることができる。
ここで、位置センサ36を用いた布量検知手段30について、説明する。
図12は、圧縮方向への変位量と第1二次巻線62に励起される出力信号から検知回路82によって得られる出力電圧値Vnとの関係を示したものである。2Vの電圧が検知されたときには、水槽の位置が、洗濯物が無いときの水槽3の基準位置であると判断する。水槽が洗濯物が無いときの水槽3の基準位置に対し圧縮方向に2mm変位すると2.5V、4mm変位すると3Vの電圧が検知される。図13は、第1二次巻線62から得られる検知回路82の出力電圧値Vnと洗濯物が無いときの水槽3の基準位置のときの検知回路82の出力電圧値Vo(以下、基準位置電圧値Voと言う)との差と洗濯物の量(布量)との関係を示している。すなわち、基準位置電圧値Voを2Vとして、出力電圧値Vnが2Vであれば、その差は0Vであるので、洗濯物は投入されていないと判断する。出力電圧値Vnと基準位置電圧値Voとの差が0.5Vでは、洗濯物が4kg投入されていると判断し、出力電圧値Vnと基準位置電圧値Voとの差が1Vでは洗濯物が8kg投入されていると判断するようにしている。なお、この変位量と電圧値と洗濯物の量との関係は、防振ダンパー70のコイルバネ機構79のバネ定数や緩衝材77の硬度等により変化するものであり、実験により算出されるものであって、上記関係に限定されるものではない。
上記構成になるドラム式洗濯機1は、扉体9を開いて回転ドラム2内に洗濯物を投入し、洗濯機筐体6の正面側上部に設けられた入力設定手段21から運転コースの選択入力や運転開始入力を行うことにより、表示手段22に運転コース等が表示され、指示された運転コースに対応する運転動作を開始し、制御手段20の制御により所要の動作を実行する。回転ドラム2内に投入された洗濯物の量は上記の布量検知手段30によって検知される洗濯物の量の検知工程を実行した後、表示手段22の洗剤量表示部22gが点灯し、数字表示部22fに洗剤量が表示される。所定時間後、制御手段20により洗濯物の量に応じた給水量が得られるように給水弁14の開閉が制御され、水位検知手段16により水槽3内への給水量が監視される。
給水終了後、所定時間の洗濯行程が行われると、排水弁13の開閉が制御され、排水が実行される。その後、すすぎ行程を実行した後、最後に、洗濯物を脱水するために、回転ドラム2を脱水可能な回転速度で所定時間回転させる脱水行程が実行される。脱水行程終了後、回転ドラム2の回転は停止し、洗濯、すすぎ、脱水の各行程を終了する。その後、使用者は、扉体9を開き、洗濯が終了した洗濯物を回転ドラム内から取り出し、再度、扉体9を閉めて終了する。なお、このとき制御装置19には、通電されたままの状態で、所定時間維持し、その後、自動で電源が切れるようにしている。
ここで、布量検知手段30によって検知される洗濯物の量の検知方法について説明する。
運転開始時には、前回の洗濯終了時に回転ドラム2内にある洗濯物の影響により、洗濯物が無いときの水槽3の基準位置に対し圧縮方向に位置している。これは、図14に示すように、洗濯終了時に洗濯物を取り出しても、防振ダンパー70のオイルダンパー機構78の特性により、水槽3の位置が、洗濯物が無いときの水槽3の基準位置に戻らず、洗濯物が無いときの水槽3の基準位置に対し圧縮方向にa寸法分ずれているからである。この状態で、次回の洗濯時に、変位量を検知しても正確な洗濯物の量を判定することはできない。
また、ドラム式洗濯機は、使用者が長年使用すると、防振ダンパー70のコイルバネ機構79やゴム製の緩衝材77が経時変化により、劣化する。それにより、初期のころの洗濯物が無いときの水槽3の基準位置に対し、使用するにしたがって、実際の洗濯物が無いときの水槽3の位置が徐々に圧縮方向(下方向)にずれてしまう。また、ドラム式洗濯機の設置の状態、例えば、傾き等によっても、水槽ユニット7が傾いてしまうことがあり、それにより、洗濯物が無いときの水槽3の基準位置がずれてしまうことが発生する。
そこで、図15を参照しながら、脱水行程終了後における洗濯物が無いときの水槽3の基準位置の補正について説明する。
図15に示すように、ステップ100にてスタートすると、ステップ101にて、後述する製造段階における基準位置電圧値Voの設定を行うとともに、測定電圧値の和Vsおよび測定のカウントNを設定する(Vs=0、N=1)。その後、機体は、使用者のもとに届けられ、ステップ102以下が実行される。
まず、ステップ102で、使用者は洗濯を行うために、電源入りスイッチ21fを押し、電源を投入するとともに、扉体9を開け、洗濯物を回転ドラム2内に投入した後、扉体9を閉め、入力設定手段21にてコース選択等の所定の操作を行い、スタート・一時停止スイッチ21eを押し、洗濯をスタートさせる。
機体は、洗濯が開始されると、まず、ステップ103にて、投入された洗濯物の量を検知するための洗濯物の量の検知工程が実行される。
ここで、この洗濯物の量の検知工程について、図16〜図18を参照しながら、その動作を説明する。図16に示すように、ステップ200にて洗濯物の量の検知工程がスタートすると、ステップ201にて回転ドラム2をA方向(時計回り方向)に第1の所定時間(例えば、2秒)、第1の所定回転速度(例えば、60r/min)で回転させる。そのとき、水槽ユニット7は、回転ドラム2の回転の反動により、B方向(反時計回り方向)に回転しようとするため、左側が下がり、右側が上がる挙動をするので、左側の防振ダンパー70の近傍にある位置センサ36は、図17に示すように、圧縮方向へ変化する。
その後、ステップ202にて回転ドラム2に電磁ブレーキを第2の所定時間(例えば、1秒)付加する。このとき、水槽ユニット7は、回転ドラム2への電磁ブレーキの反動により、A方向(時計回り方向)に回転しようとするため、左側が上がり、右側が下がる挙動をするので、位置センサ36は、伸び方向へ変化した後、洗濯物の量に対応する正規の位置に位置する。これは、防振ダンパー70のオイルダンパー機構78の特性により、伸び方向から正規の位置に戻るのは円滑に行われるからである。その後、ステップ203にて第3の所定時間(例えば、2秒)回転ドラム2の回転を休止させ、水槽ユニット7の位置を安定させた後、ステップ204で、1回目の位置の検知として第1二次巻線62から得られる検知回路82の出力電圧値V1を検知する。
その後、ステップ205にて回転ドラム2をB方向に第1の所定時間(例えば、2秒)
、第1の所定回転速度(例えば、60r/min)で回転させる。そのとき、位置センサ36は、回転ドラム2の回転の反動により、伸び方向へ変化する。
その後、ステップ206にて回転ドラム2に電磁ブレーキを第2の所定時間(例えば、1秒)付加する。このとき、位置センサ36は、回転ドラム2への電磁ブレーキの反動により、圧縮方向へ変化した後、正規の位置に対し圧縮方向へずれた位置に位置する。これは、前記したように、防振ダンパー70のオイルダンパー機構78の特性により、圧縮方向から正規の位置に戻るのは円滑に行われにくいからである。その後、ステップ207にて第3の所定時間(例えば、2秒)回転ドラム2の回転を休止させるが、このときには、位置センサ36による位置の検知は行わない。
さらに、ステップ208〜210にて、上記ステップ201〜203と同じ動作を実行し、ステップ211で、2回目の位置の検知として検知回路82の出力電圧値V2を検知する。
ステップ212で、ステップ204での1回目の出力電圧値V1とステップ211での2回目の出力電圧値V2の平均値Vaを算出し、ステップ213で、前記平均値Vaが1.3V以上か否かを判定し、1.3V以上であれば、ステップ214に進み、前記平均値Vaと基準位置電圧値Voとの差より、図13に示すようにして、洗濯物の量を判定する。基準位置電圧値Voは、後述する製造段階において設定する基準位置電圧値Voか、または、後述する脱水行程終了後において設定する基準位置電圧値Voを用いている。
ステップ215では、表1に示すように、判定した洗濯物の量に対応して洗剤量を決定し、表示手段22の洗剤量表示部22gを点灯させるとともに、数字表示部22fに決定した洗剤量を表示し、ステップ216で、次工程(図15に示すステップ104)に移行する。これにより、使用者はその表示に従い最適な量の洗剤を投入できるので、洗剤の無駄をなくすことができ、使用者にとって利便性の高いものとすることができる。
なお、ステップ213における前記平均値の1.3V以上か否かの判定において、1.3V以上でなければ、ステップ217に進み、回路の故障、位置センサ36の故障、接続用のコネクタの外れ等の不具合があると判断し、洗濯物は所定量(例えば、5kg)であると仮定し、ステップ215に移行する。これにより、回路の故障、位置検知手段の故障、接続用のコネクタの外れ等の不具合が発生しても、使用者に不便をかけることなく、洗濯運転を実行できる。出力電圧値Vnが2V未満は位置センサ36の伸び方向の出力電圧値であり、ここで使用した1.3Vは、洗濯物が入っているにもかかわらず、出力電圧値Vnが、位置センサ36が伸び方向である2V未満になり得るはずがないため、0.7Vの余裕を持ち、1.3V未満は故障と判断するものである。この値は、機体に合わせて、適宜、設定できるものである。
再び、図15に戻り、脱水行程終了後における洗濯物が無いときの水槽3の基準位置の補正について説明する。
ステップ104にて、洗濯、すすぎ、脱水の各行程を実行した後、ステップ105にて、全行程を終了する。なお、全工程終了後、所定時間(例えば、2時間)、制御装置19に通電されている。
その後、使用者は、洗濯物を取り出すために、扉体9を開け(ステップ106)、洗濯物を取り出し(ステップ107)、再び扉体9を閉める(ステップ108)。この動作を、機体は、ステップ106にて、扉体9が開放されたか否かを扉体検知手段35にて検知し、その後、ステップ108にて、扉体9が閉められたか否かを扉体検知手段35にて検知する。
このとき、ステップ106にて、扉体9が開放されるのを検知しない場合や、扉体9が開放されても、ステップ108にて、扉体9が閉められたのを検知しなければ、ステップ117に移行し、所定時間(例えば、2時間)が経過するまで、待機し、所定時間が経過すると、ステップ118にて、機体の電源をOFFする。その後は、ステップ102で、使用者が電源をONするまで、待機することとなる。
ステップ106にて、扉体9が開放され、ステップ108にて、扉体9が閉められたのを検知すれば、ステップ109に移行する。この時点では、洗濯物はすべて取り出された状態であると判断して、ステップ109において、そのときの第1二次巻線62から得られる検知回路82の出力電圧値Vnを検知する。
次に、ステップ110にて、出力電圧値Vnが、基準位置電圧値Voに対して、所定の範囲内(例えば、Vo−0.3≦Vn≦Vo+0.3)にあるか否かを判断する。これは、使用者が洗濯物を一部取り忘れて、回転ドラム2内に所定量(例えば、1kg)以上の洗濯物が残っているかどうかを判断するためのもので、もし、洗濯物が残っていれば、正確な洗濯物が無いときの水槽3の基準位置の補正ができないからである。なお、所定の範囲内は、任意に決定できる範囲である。ここで、出力電圧値Vnが、基準位置電圧値Voに対して、所定の範囲内にない場合は、洗濯物が残っていると判断し、その検知した出力電圧値Vnは採用せず、ステップ106およびステップ108の場合と同様に、ステップ117に移行する。
ステップ110にて、出力電圧値Vnが、基準位置電圧値Voに対して、所定の範囲内にあれば、ステップ111にて、測定電圧値の和Vsに出力電圧値Vnを加算し、その値を新しい測定電圧値の和Vsとして記憶し、ステップ112にて、測定のカウントNに1を加算し、その値を新しいNとして記憶する。その後、ステップ113にて、カウントNが6か否か(測定回数が5回に達したか否か)を判断し、Nが6になっていなければ、さらに測定回数を増やすために、ステップ117に移行する。
ステップ113にて、カウントNが6であれば、測定回数が5回であると判断し、ステップ114にて、基準位置電圧値Voを新たに算出する。すなわち、測定電圧値の和Vsを測定回数の5で割り、それから所定値(例えば、0.14)を引いた値を、基準位置電圧値Voとする。
なお、測定電圧値の和Vsを測定回数の5で割った値から所定値を引く理由として、上述したように、図14に示すように、洗濯終了時に洗濯物を取り出しても、防振ダンパー70のオイルダンパー機構78の特性により、水槽3の位置が、洗濯物が無いときの水槽3の基準位置に戻らず、洗濯物が無いときの水槽3の基準位置に対し圧縮方向(電圧の正方向)にa寸法分ずれているからであり、その分、所定値を引くことにより、圧縮分を補正するものである。なお、この所定値は、防振ダンパー70のオイルダンパー機構78の
性能および水槽ユニット7の重量等により、決定されるものであり、上記0.14は、発明者らが実験により決定した値であり、任意に設定できるものである。
また、ステップ110にて、出力電圧値Vnが、基準位置電圧値Voに対して、所定の範囲内である場合でも、たまに、回転ドラム2内に所定量以下の(極わずかな)洗濯物が残っている場合、そのときだけの出力電圧値Vnを基準位置電圧値Voとして採用してしまうと、洗濯物の量の検知に誤差が生じてしまうので、複数回の測定電圧値の和Vsの平均値を採用することにより、所定量以下の洗濯物の残りの影響を少なく抑えることができるものである。
そして、ステップ114にて、基準位置電圧値Voを算出した後、ステップ115にて、測定のカウントNを1に再設定し、ステップ116にて、測定電圧値の和Vsを0に再設定することで、次回からの基準位置電圧値Voの設定に対応するものである。すなわち、5回の洗濯の終了のたびに、基準位置電圧値Voを設定し直すものである。
その後、ステップ117に移行し、所定時間(例えば、2時間)が経過するまで、待機し、所定時間が経過するか、または、ステップ106で扉体9が開放され、ステップ108で扉体が閉じられた後所定時間(例えば、2秒)経過後、ステップ118にて、機体の電源をOFFする。その後は、ステップ102で、使用者が電源をONするまで、待機する。
ここで、基準位置電圧値Voについては、防振ダンパー70のコイルバネ機構79のバネ定数や緩衝材77の硬度等のばらつきにより機体によって異なり、また、使用者が機体を購入後、初めて使用する場合に、基準位置電圧値Voが設定されていなければ、洗濯物の量の検知ができず、さらに、使用者が脱水行程終了後、洗濯物を取り出す前に、電源を切った後に場合は、上記脱水行程終了後における洗濯物が無いときの水槽3の基準位置の補正ができないので、製造段階において、機体ごとにそれぞれあらかじめ設定する必要がある。以下、図19を用いて、製造段階における基準位置電圧値Voの設定方法について説明する。
ステップ300にて、製造者が製造段階において、基準位置電圧値Voの設定を開始する。ステップ301にて、入力設定手段21に対して、通常の洗濯においては行わない特殊な操作を実行する。例えば、脱水時間設定スイッチ21cと乾燥時間設定スイッチ21dとを同時に押しながら、電源入りスイッチ21fを押し、電源を入れる。その後、ステップ302にて、数字表示部22fに「000」が表示される。その後、ステップ303にて、次工程の開始のため洗い時間設定スイッチ21aを押すと、ステップ304にて、前記した洗濯物の量の検知工程(図17のステップ210〜213)を実行し、その状態での出力電圧値Vnを検知する。
次に、ステップ305にて、ステップ304で検知した出力電圧値Vnを数字表示部22fに電圧値として表示し、ステップ306で、その出力電圧値Vnを基準位置電圧値Voとして記憶する。その後、ステップ307で、電源切りスイッチ21gを押し、電源を切り、ステップ308で終了する。ここでは、ステップ304で、実際の洗濯物の量の検知工程の動作と同じ動作を実行することにより、水槽ユニット7を実際の洗濯物の量の検知工程時と同一の状態とすることで、正確な基準位置電圧値Voを設定することができるものである。このようにして、基準位置電圧値Voを機体ごとにそれぞれあらかじめ設定することで、機体に対応した正確な洗濯物の量を検知することができ、使用者が機体を購入後、初めて使用する場合でも、また、使用者が脱水行程終了後、洗濯物を取り出す前に、電源を切った後に場合でも、洗濯物の量の検知ができるものである。
なお、この基準位置電圧値Voの設定については、機体を設置後、サービスマンも設定することが可能であり、設置条件に対応した洗濯物が無いときの水槽3の基準位置の設定を行うことができるものである。