JP4527859B2 - 強制作動装置を具備した逃がし安全弁 - Google Patents

強制作動装置を具備した逃がし安全弁 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば沸騰水型(BWR)原子力発電所の主蒸気管等に代表される圧力流体の配管部に使用する強制作動装置(補助作動装置)を設けたバネ安全弁の作動装置に係る。特に、強制作動装置を安全弁に内蔵してメンテナンス性を改善する技術に関するものである。詳しくは、安全弁の駆動軸と強制作動装置の動力伝達部とを固定しない方法によって、正確な安全弁作動性能を得るようにする技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば沸騰水型原子力発電所の主蒸気管等のような圧力流体の配管部には、原子炉系の圧力上昇を防止するために次の機能を必要とする。そして、そのために強制作動装置を具備した逃がし安全弁が取り付けられることは周知である。即ち、(1)原子炉系の過度の圧力上昇を防ぐために、バネ安全弁として自動的に作動する安全弁機能、(2)原子炉系の圧力上昇を制限するために、強制的にバルブを開放して内部流体を放出することにより圧力上昇を抑制する逃がし弁機能、(3)原子炉冷却材圧力バウンダリに小破断事故が生じた場合に、非常用炉心冷却系の一部として強制的に内部流体を放出する自動減圧機能などが具備された安全弁が採用されている。このような安全弁はバネ安全弁機能を強制的に作動する駆動機能を併せ持ったものであり、駆動機能の手段としては、バネ安全弁の一般的な構造において手動作動が可能な揚弁レバーを取り付ける。そして、従来例としては、この揚弁レバーにシリンダを取り付け、強制的に弁本体を開放する第1の駆動方式と、安全弁駆動軸に直接シリンダを取り付けて、強制的に弁本体を開放する第2の駆動方式とがある。この第2の駆動方式は、例えば特開平11−14787号公報に見られるように公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このうち、第1の方式は図2に示したように、安全弁に具備されている揚弁レバー21を強制作動用のシリンダ22によって駆動させ、安全弁の駆動軸23を押し上げる構造であることから、部品点数が多く、メンテナンス性が劣ることや、強制作動用シリンダ22の中心軸と逃がし安全弁の駆動軸23の中心軸が食い違うため、耐震性が劣るなどの問題がある。なお、24はバネ、25は弁体、26は弁座である。
【0004】
次に、図3および図4に示す構造は上記第1の方式を改善したもので、耐震性を向上させ、小型化してメンテナンス性を改良している。この逃がし安全弁構造は沸騰水型原子力発電所の主蒸気逃がし安全弁に適用するために開発されているものであって、主蒸気管31にはその一部を開閉する弁本体32と、この弁本体32の入口側を開閉する弁体33と、これに連結され、駆動装置34を上下方向に作動させることによって弁本体32を強制的に開閉させる弁棒35と、この弁棒35を上下方向に移動させるピストン36と、弁棒35を下方向、つまり弁本体32を閉弁する方向に付勢するスプリング37とを有するものである。そして、このスプリング37の付勢力に抗して弁本体32が自動的に作動するときであっても、ピストン36が弁棒35の途中に固定されており、ピストン36の昇降によって弁棒35を追従作動させている。
【0005】
しかしながら、この方式ではスプリング37の付勢力とピストン36の摺動抗力の合計荷重に抗して弁本体32が作動することとなるので、安全弁の作動圧力を許容差±1%の範囲に収めるにはピストン36の摺動抗力を小さくするか、摺動抗力が変化しにくい構造にするなどの技術的課題がある。また、安全弁機能による吹き出し作動時間は約0.1秒以下で全閉に達することが要求されており、この面からもピストン36の抗力が影響を与えてしまう。さらに、主蒸気逃がし安全弁は蒸気流体の過圧を防止するために約300℃の飽和蒸気が弁体33に常に作用し、弁本体32に対して熱伝達が行われる。このため、駆動装置34ではピストン36のシール部に対して耐熱材料を使用するか、放熱効果を考慮した位置に設置しなければならない。さらにまたピストン36の作動ストロークを確保した駆動装置を弁本体32に内蔵させることから、安全弁の全長が長くなり、経済的にも不利になるなどの不都合がある。
【0006】
これに対して近頃では、安全弁の分解周期の延期や、発電所設備の占有面積の縮小が要求されている。そしてこのような駆動装置を内蔵した逃がし安全弁においては、当然のことながら小型軽量であり、かつ安全弁機能に対してピストン36が作動することなく、プラント運転中でもピストン36aのシール部を熱劣化させることなく、強制作動機能に対しても信頼性が高く、高精度の吹き出し圧力が安定していることが要求される。さらに、図4では弁棒35の上端がスプリングケース38の頂部を貫いて上方に突出しており、この突出部に動力伝達手段を構成するディスク状受け部材39を固定している。受け部材39は強制作動装置34のピストン36aにピストン筒あるいはピストンアーム36bを介して連結されている。そしてピストンアーム36bおよび受け部材39によって、安全弁の駆動軸である弁棒35へ動力を伝達する手段として取り付けている構成となっている。
【0007】
このような構成では、図3の方式と同様にピストン部がディスク状受け部材39を介して弁棒35に固定された構造であるから、安全作動時にピストンが作動し、ピストンの摺動抗力が安全弁の作動圧力に影響を及ぼして高精度で安定した作動性が得られないという不都合がある。また、図4の構成では作動後の復帰用リターンスプリング40を取り付けていることや、シリンダを固定してピストンによって弁棒35を強制的に作動させるため、ピストンの作動スペースが必要となり、強制作動装置が大型化してしまい、経済的に不利な構造になってしまうことや、受け部材39によって駆動装置を取り付けた状態でスプリング37の付勢力の調整が調整ボルト41によってできないという構造上の難点がある。
【0008】
以上説明したように、従来の逃がし安全弁構造においては、図3の構造では特に駆動装置34に内蔵されたピストン36aのシール部の熱劣化によって分解周期の延期が困難である。また、さらに改善された図4の構造であっても、原子力発電所の信頼性、安全性の向上に対して強制駆動装置のピストンによって摺動抗力が安全弁の作動抗力として作用しない安定した作動性能が得られる構造とスプリング37の付勢力の調整が駆動装置を取り外さずにできる構造を開発することが強く要求されている。また、これを内蔵した安全弁としても、吹き出し圧力を設定しているスプリング37の付勢力の調整が駆動装置を取り付けた状態で行うことができる構造として、構造の簡易化を図り、経済的に有利とすることも求められている。
【0009】
本発明は上述した従来の課題を解消するもので、小型軽量で安全弁強制作動装置を内蔵し、かつ流体からの熱伝達が最も駆動装置に影響することがないように安全弁の頭部に設置し、弁本体に内蔵されたシリンダ部またはピストン部が安全弁の駆動軸に結合されていない構造とすることにより、強制作動機能の信頼性を改善し、高精度な吹き出し圧力の安定化が得られるとともに、構造の簡易化を図り、経済的に有利とすることができる構成を開示することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、例えば原子炉からの主蒸気管など、圧力流体の配管部に設置され、該配管部内の流体圧力が規定値以上となったときは、弁本体のスプリングの付勢力に抗して配管部内の圧力を自動的に開放して、該配管部内の流体圧力の上昇を回避するもので、逃しタンクに向けて放出口から圧力流体を放出する機能(バネ安全弁)と、弁本体に開放方向の強い操作力を与える強制作動装置を有し、配管部内の流体圧力が規定値未満であっても前記強制作動装置により弁本体が開放される構成を前提とする。
【0011】
そして、本発明の具体的な特徴は、頭部に例えば空気シリンダ式の強制作動装置を有し、空気圧力供給源から電磁弁を介して強制作動装置のシリンダ内に空気圧力を供給することにより該強制作動装置を作動させる。このとき逃し安全弁の弁棒を弁本体のスプリングの付勢力に抗して弁本体を開放させる方向に押し上げる作用を行う。また強制作動装置の供給空気圧力を電磁弁によって減圧させることによって弁本体のスプリング付勢力を利用して閉状態とする機能をも併有する。さらに本発明の強制作動装置は逃し安全弁の弁棒と非結合の作動機構を有する。この作動機構は、前記バネ安全弁のスプリングケース上部を加工して、該スプリングケースと一体化して固定したピストン部と、前記別の圧力流体によって該ピストン部に対して上下に摺動する、前記弁棒とは非結合のシリンダと、前記弁棒に前記ピストン部および前記シリンダを介して固定した揚弁キャップとを備え、前記別の圧力流体によって前記シリンダが上昇作動した場合のみ前記揚弁キャップを押し上げて前記開弁作動させる。従って、小型軽量で弁本体のスプリングによる自動作動において強制作動装置の作動機構が作動することがないので、該作動機構の摺動抗力がバネ安全弁の作動圧力に影響を与えることを回避することができる。このため高精度な吹き出し圧力の安定化が得られる。
【0012】
また、強制作動装置を頭部に取り付けることとしたので、弁本体のスプリングケースと強制作動装置のピストン部を一体化でき、このピストン部を上下に摺動するシリンダ部を強制作動装置の作動機構として採用することにより、ピストン部のための作動ストロークのスペースが不要となる。
【0013】
さらに、スプリングケースに直接電磁弁を取り付けると共に、強制作動装置への例えば空気供給配管もスプリングケースに直接穴加工を行えるので、別個の空気供給配管を不要とできるという利点がある。
【0014】
さらにまた、本発明の特徴的作用は、強制作動装置をスプリングケースの頭部で、且つ弁本体の弁棒とは非結合の状態に取り付けたので、既述した従来の改良型逃し安全弁のように、強制作動装置の作動機構への伝熱による影響や、バネ安全弁の自動作動時の作動圧力への影響もなく、構造の簡易化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付した図面を参照しながら説明する。図1において、弁本体1は配管の開口部を開閉する弁体2と、弁体2が連結され、図中の上下方向に移動させることにより弁本体1を開閉させる弁棒3と、弁棒3を上下方向に移動自在に支持するスプリングケース4と、弁棒3を下方向、即ち弁体2を弁座5に押圧して弁本体1を閉弁する方向に付勢するスプリング6と、外部の空気圧力供給源から電磁弁7を介してスプリングケース4に穴加工された導入穴8を通じてシリンダ9に供給される空気圧力によってシリンダ9が上方向に移動し、弁棒3に固定されている揚弁キャップ10を押し上げる。つまり、弁本体1の弁棒3を上方向にスプリング6の付勢力に抗して強制的に引き上げることによって弁本体1を開放させる強制作動装置を具備した逃がし安全弁としている。
【0016】
そして、この機構では逃がし安全弁は配管部に取り付けられ、配管部内の圧力流体が規定値以上に上昇した場合にはスプリング6の付勢力に対して弁体2に作用している圧力流体による押上力が増大して、弁本体1が自動的に作動する安全弁機構が要求される。このため、本実施形態ではスプリングケース4とピストン部11を一体化して固定し、シリンダ9の作動ストロークのスペースを不要として小型化を図ると共に、弁棒3に揚弁キャップ10を固定している。これによって、強制作動によってシリンダ9が上昇作動した場合のみ、揚弁キャップ10を押し上げる方向に作用する。このため、弁本体1が自動的に作動するときには従来の改良型逃がし安全弁と異なり、シリンダ9は作動しない。
【0017】
この構造では、従来のようにスプリングの付勢力とピストンの摺動抗力の合計荷重に抗して弁本体が作動することから、安全弁の作動圧力を許容差±1%に安定して収めることが困難であったが、本実施形態では荷重変動が少ないスプリングの付勢力によって作動圧力が決定されるので、呼応精度で繰り返し作動において安定した安全弁の作動圧力を得ることができる。
【0018】
また、強制作動装置は弁本体1の頭部に取り付けていることから、配管部内の流体からの熱伝導によるシール部の熱劣化も少なく、逃がし安全弁の点検周期の延長を期待することができる。さらに、強制作動装置を弁本体1の頭部に取り付けて、ピストン部を固定してシリンダ部を作動させることにより、スプリングケース4とピストン部11を一体化する設計が可能となり、小型軽量化することができる。さらにまた、スプリングケース4と一体化した空気圧力の給排気管の設計も行うことができ、電磁弁7をスプリングケース4に直接取り付けることによって、定期検査時の弁本体1の点検作業において上記電磁弁7や給排気管を取り外すことなく実施することができる。
【0019】
安全弁機能の作動圧力は、スプリング6の付勢力によって決定されるが、分解点検後の作動確認検査において調整ボルト12によって調整を行う。この場合、揚弁キャップ10を弁棒3から取り外し、調整ボルト12のねじ部によって固定され、シリンダ9の作動ストロークを制限しているロックナット13を取り外すことによって調整を行うことができ、従ってシリンダ9を取り外す必要がない。
【0020】
【発明の効果】
本発明では、小型軽量でかつ、点検作業時の取り扱いなどのメンテナンス性に優れ、安全弁作動時の作動圧力も高精度で安定した結果を得ることができる構成とすることができる。また、構造の簡易化を図ることにより経済的にも有利とすることができる、極めて良好な強制作動装置を具備した逃がし安全弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強制作動装置を逃がし安全弁の頭部に備えた構造図
【図2】従来の第1の方式を示す構造図
【図3】図2を改良した従来の第2の方式を示す構造図
【図4】さらに改良された従来の方式を示す構造図
【符号の説明】
1 弁本体
2 弁体
3 弁棒
4 スプリングケース
5 弁座
6 スプリング
7 電磁弁
8 導入穴
9 シリンダ
10 揚弁キャップ
11 ピストン部
12 調整ボルト
13 ロックナット

Claims (1)

  1. 圧力流体の配管部に設置され、規定値以上の流体圧力で開弁するバネ安全弁に、規定値未満であっても前記バネ安全弁をそのスプリング力に抗して強制的に開弁作動させる強制作動装置を具備した逃し安全弁であって、前記強制作動装置は前記バネ安全弁の頭部に弁棒を中心軸として、前記圧力流体とは別の圧力流体によって前記弁棒とは非結合の別の作動機構を備え、当該別の作動機構は、前記バネ安全弁のスプリングケース上部を加工して、該スプリングケースと一体化して固定したピストン部と、前記別の圧力流体によって該ピストン部に対して上下に摺動する、前記弁棒とは非結合のシリンダと、前記弁棒に前記ピストン部および前記シリンダを介して固定した揚弁キャップとを備え、前記別の圧力流体によって前記シリンダが上昇作動した場合のみ前記揚弁キャップを押し上げて前記開弁作動させるように構成したことを特徴とする強制作動装置を具備した逃し安全弁。
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