汚水を好気性処理する汚水処理方式の1つに、活性汚泥法がある。この活性汚泥法は、汚水を曝気することによって汚水中の好気性微生物を増殖させ、増殖した好気性微生物と汚水中の汚濁物質とが集積して生成される汚泥に汚水中の有機物を吸着・補食させて汚水を浄化処理するものである。この種の活性汚泥法の方式の1つには、バイオソープション法がある。
図15は、バイオソープション法を適用した従来の汚水処理システムのフロー図である。この汚水処理システムは、曝気槽101、沈殿槽102、および再曝気槽103によって主に構成されている。この汚水処理システムにおいてバイオソープション法によって処理される汚水は、汚水流入管104を通って曝気槽101に流入するが、その間に前処理としてスクリーン105によって夾雑物が除去される。曝気槽101では、流入した汚水と好気性微生物が多く存在する汚泥とが混合する。つまり、汚水処理システム内の汚水は汚泥と混合した状態となる(以降、汚水処理システム内における汚水と汚泥の混合水をただ単に汚水という)。
曝気槽101には、空気を汚水中に吐出する散気装置106が設置されている。一般に、散気装置106は、曝気槽101内の底部に配置された散気管107、圧縮空気を供給するブロワ108、および散気管107とブロワ108を接続した空気供給管109によって構成されている。散気管107は、曝気槽101内の汚水全体を常時曝気するように、曝気槽101の底面全体に配設されている。これにより、曝気槽101では、散気管107から吐出した散気によって汚水中の汚泥の好気性微生物が活性化され、この好気性微生物によって汚水中の有機物が吸着・分解されることで好気性処理が行われる。そして、曝気槽101で好気性処理された汚水は、移送管110を通して沈殿槽102に送られる。
沈殿槽102は、その底面102aが中心に向かって下り勾配で先細りになるホッパ形状を有している。このような沈殿槽102では、汚水が上澄水と汚泥を多く含む汚水とに沈殿処理される。上澄水は、浄化された処理水として越流堰111と上澄水移送管112を介して系外に排出される。一方、沈殿槽102内の底部に沈降した汚泥を多く含む汚水は、底面102aの最深部102bに配設された返送ポンプ113によって吸引され、返送管114を介して再曝気槽103へ返送される。この間に、汚水は返送管114に配設された計量槽115によって流量制御され、定量とされて再曝気槽103へ送られる。
再曝気槽103には散気装置116が設置されている。この散気装置116は、曝気槽101の散気装置106と同様に散気管117、ブロワ118、および空気供給管119によって構成されている。したがって、再曝気槽103では、散気装置116によって汚水が散気されることにより、好気性微生物が汚水中の有機物を分解し尽くすので、好気性微生物が飢餓状態となる。また、好気性微生物は、曝気槽101および再曝気槽103で有機物を分解する際に自己増殖するため、そのままでは汚泥量が増加し続けてしまい、定期的に余剰汚泥として系外に搬出しなければならなくなるが、飢餓状態の好気性微生物に対してさらに散気を継続すると、自己酸化(共食い)が進行するので、汚水中の増えすぎた好気性有機物の数が減少する。このように飢餓状態の好気性微生物を含む汚水は、有機物および空気を豊富に含む流入汚水を貯留する曝気槽101に返送管120を通して返送される。これにより、曝気槽101内の有機物が吸着・分解されて汚水浄化が促進される。この間に、汚水流入管104から流入する汚水の量に応じて、沈殿槽102では上澄水が系外に排出され、連続した汚水処理が行われる。
ところで、一般に汚水処理システムへの汚水の流入量は、その時間帯によって変動する。つまり、汚水処理システムには時間帯に応じて負荷変動が生じる。このような負荷変動に対処するため、公共下水道の汚水を浄化処理する下水処理施設のような屋外の大規模な施設に上述の汚水処理システムを適用する場合には、曝気槽101、沈殿槽102、および再曝気槽103のそれぞれの容量を大きくして処理能力に余裕を持たせる必要がある。
しかし、建物内の汚水、雑排水、厨房排水などを浄化処理する場合には、汚水処理システムが建物内に設置される場合が多いので、汚水処理システムの設置面積が制約され、曝気槽101、沈殿槽102、および再曝気槽103のそれぞれの容量を大きくとることが困難になる。また、汚水処理システムが屋外に設置される場合でも、立地条件などによっては、曝気槽101、沈殿槽102、および再曝気槽103の容量に余裕を確保できないことがある。
このような問題に対処するため、図16に示すように貯留槽121が追加される。この貯留槽121には、曝気槽101から汚水流入管104とスクリーン105が移設されている。また、貯留槽121には汚水を攪拌してその嫌気化を防止する攪拌装置122が配置されている。この攪拌装置122は、貯留槽121内に所定数の攪拌機や撹拌ポンプが配置されることで構成されることがあるが、この従来の汚水処理システムにおいては、曝気槽101と再曝気槽103に散気装置106と散気装置116がそれぞれ設置されているので、攪拌装置122には空気が利用される場合が多い。したがって、この攪拌装置122は、図17の立面配置図および図18の平面配置図に示すように、散気管123、ブロワ124、および空気供給管125によって主に構成され、散気管123は貯留槽121の底面の一方の側面側に配設されている。この場合に、貯留槽121内の汚水は、ポンプ釜場127に配設された移送ポンプ128と、この移送ポンプ128に接続された移送管129を介して曝気槽101に移送され、計量槽130によって定量とされて曝気槽101に移送される。
貯留槽121を備えた従来の汚水処理システムでは、ブロワ124からの空気は空気供給管125を通って散気管123に供給され、散気管123から汚水中に吐出される。この空気は汚泥の中を気泡状となって上昇するので、散気管123の上方の汚水に上昇流が発生する。これに対し、散気管123が配設されていない側面側の汚水は、上昇流によって上昇した汚水によって上方から下方に押され、汚水に下降流が発生する。これにより、貯留槽121内の汚水が撹拌され、散気管123から空気が供給されている間は、汚水が一個所に滞留することがなく、嫌気性化が防止され、それなりの効果が得られている。そして、汚水の流入量が汚水処理システムの処理能力以上に多い時間帯には、処理能力に見合う量だけの汚水が曝気槽101に定量移送され、汚水の流入量が減少した時間帯に残りの汚水が処理され、負荷変動に対応することが可能とされている。また、曝気槽101、沈殿槽102、再曝気槽103、および貯留槽121のそれぞれの容量が最適にされている。
一方、従来の汚水処理システムの沈殿槽102では、曝気槽101から沈殿槽102に流入した汚水が沈殿処理されるが、この際に上方に上澄水が滞留し、下方に汚泥を多く含む汚水が滞留する。このとき、沈殿槽102の底面102aが中心に向かって下り勾配で先細りになるホッパ形状になっているので、汚泥を多く含む汚水は、沈殿槽102の底面102aの中心である最深部102bから上方に向かって順次に層状に堆積する。このように堆積した汚泥を多く含む汚水は、最深部102bに配設された返送ポンプ113によって吸引され、再曝気槽103に返送される。この場合に、沈殿槽102では最深部102bに堆積した汚水から順次に吸引されるため、汚泥を多く含む汚水が沈殿槽102に長時間滞留することはない。よって、沈殿槽102で汚水が極度の嫌気性状態となることはない。
なお、上記従来技術は当業者一般に知られた技術であって文献公知発明に係るものではないが、特に従来の汚水処理システムに関連するものとして挙げれば、実公昭47−19323号公報に開示されている接触安定化多段廃水処理装置がある。また、上記諸問題を解決した汚水処理システムとして、本出願人による特開平10−328687号公報および特許第3566077号公報に開示されている生物化学的処理装置がある。
実公昭47−19323号公報に開示されている接触安定化多段廃水処理装置の廃水処理装置は、原廃水を導入する第1の接触槽と、この接触槽よりの混合液を導入する第1の沈殿槽と、この沈殿槽よりの上澄液を導入する第2の接触槽と、この接触槽よりの混合液を導入する第2の沈殿槽と、前記第1、第2の沈殿槽よりの沈殿汚泥を受けて活性化した後、前記第1、第2の接触槽に導入するための共通の安定化槽とにより構成されている。
また、特開平10−328687号公報に開示されている生物化学的処理装置は、夜間等の有機性排水の流入の少ない時間帯に通常の汚水処理プロセスを中断する。その後、沈殿槽内の攪拌機を一定の設定時間だけ稼働させて有機性排水を撹拌し、有機性排水と汚泥とをまんべんなく撹拌する。次いで、移送ポンプを稼働させることにより、撹拌した汚泥を含む有機性排水を消化槽に移送する。消化槽では、汚泥を含む有機性排水に好気性消化処理が行われ、返送ポンプにより反応槽に移送される。さらに、反応槽では、有機性排水に好気性処理が行われ、移送ポンプにより沈殿槽に移送する。以上の処理サイクルを所定時間実行後、一定時間移送ポンプおよび攪拌機を停止し、沈殿槽内の汚泥を含む有機性排水を静置して汚泥の沈殿を進行させた後、通常の汚水処理プロセスに再度復旧する。以上の処理プロセスによって、沈殿槽内の汚泥を多く含む有機性排水の嫌気性化を防止している。
そして、特許第3566077号公報に開示されている生物化学的処理装置は、夜間等の有機性排水の流入の少ない時間帯に通常の汚水処理プロセスを中断する。その後、沈殿槽内の撹拌用ディフューザから空気を噴出させて有機性排水を撹拌し、有機性排水と汚泥とをまんべんなく撹拌する。次いで、移送ポンプを稼働させることにより、撹拌した汚泥を含む有機性排水を消化槽に移送する。消化槽では、汚泥を含む有機性排水に好気性消化処理が行われ、連通管により曝気槽に移送される。さらに、曝気槽では、有機性排水に好気性処理が行われ、連通管により沈殿槽に移送する。以上の処理サイクルを所定時間実行後、一定時間移送ポンプを停止し、撹拌用ディフューザからの空気の噴出を停止し、沈殿槽内の汚泥を含む有機性排水を静置して汚泥の沈殿を進行させた後、通常の汚水処理プロセスに再度復旧する。以上の処理プロセスによって、沈殿槽内の汚泥を多く含む有機性排水の嫌気性化を防止している。
実公昭47−19323号公報(第1頁第2欄第31−38行、および第3図)
特開平10−328687号公報(第3頁右欄第3−15行、および図1)
特許第3566077号公報(第4頁第10−33行、および図1)
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における汚水処理システムの処理フロー図である。ここに、汚水とは汚泥を含有したものを意味している。この汚水処理システムは、汚水を貯留する貯留槽1、この貯留槽1からの汚水を浄化処理する曝気槽2、および曝気槽2からの汚水を沈殿処理する沈殿槽3を備えている。貯留槽1内の汚水は、移送手段4によって曝気槽2に移送するようにしてある。曝気槽2内の汚水は、送水管5によって沈殿槽3に移送するようにしてある。そして、沈殿槽3内の汚水は、返送手段6によって貯留槽1に返送するようにしてある。
未処理の汚水は汚水流入管11を通って貯留槽1に流入するようにしてあり、この汚水流入管11にはスクリーン12を配設してある。このスクリーン12は、汚水に含まれている比較的大きく異質な浮遊物質、つまり夾雑物を除去する前処理のために配設してある。スクリーン12はその構造を限定するものではなく、汚水中の夾雑物の除去が可能であればどのような構造のものでも適用できる。しかし、汚水中の夾雑物の量が汚水処理システムで分解可能な程度である場合には、スクリーン12を設置する必要はない。
貯留槽1は、汚水流入管11を通って流入した汚水(以降、流入汚水という)と、沈殿槽3から返送手段6によって返送された汚水(以降、返送汚水という)を一時的に貯留するものとしてある。貯留槽1には微細な気泡を汚水中に吐出する散気装置13を設置してある。この散気装置13は、貯留槽1内の底部に配置した複数の散気管14、貯留槽1の外部に配置したブロワ15、および散気管14とブロワ15を接続した空気供給管16によって構成してある。沈殿槽3からの返送汚水には多量の好気性微生物を含有する汚泥が存在しているので、貯留槽1では流入汚水と返送汚水を混合し、この混合水を好気性微生物によって吸着・分解することとなる。
この貯留槽1は、建物内の床下ピットを利用する躯体水槽か、床上スペースを利用する床上設置型水槽とすることができる。貯留槽1を躯体水槽とする場合には、床上スペースをその他の目的に活用できるので好ましいが、貯留槽1の内面にエポキシ樹脂などのライニングによる防水層を形成する必要がある。貯留槽1を床上設置型水槽とする場合には、貯留槽1をFRP、ポリプロピレンなどの合成樹脂や、鋼板、ステンレス鋼などの金属や、コンクリートで形成することができる。
曝気槽2は、貯留槽1で分解し切れなかった汚水を更に浄化処理するもの、すなわち貯留槽1から移送手段4によって移送された汚水中の有機物を汚泥中の好気性微生物によって分解するものとしてある。曝気槽2は、貯留槽1とほぼ同様の構造および材質とすることができる。曝気槽2には、微細な気泡を汚水中に吐出する散気装置21を設置してある。この散気装置21は、曝気槽2内の底部に配置した複数の散気管22、曝気槽2の外部に配置したブロワ23、および散気管22とブロワ23を接続した空気供給管24によって構成してある。
なお、貯留槽1と曝気槽2は散気装置13と散気装置21によってそれぞれ常時散気する必要があるので、従来のバイオソープション法による汚水処理方式と同様に、貯留槽1と曝気槽2にはそれらの内部で発生した腐敗ガスの臭気を低減して排出するための図示しない排気手段を設置してある。この排気手段は、貯留槽1と曝気槽2からそれぞれ立ち上げた図示しない排気用分岐管と、これらの排気用分岐管を合流させた1本の図示しない排気用本管と、この排気用本管に順次に配設した図示しないミストセパレータ、排気ファン、および脱臭塔によって構成してある。
沈殿槽3は、曝気槽2から流入した汚水を上層の上澄水と下層の汚水とに分離するものとしてある。下層の汚水は、好気性微生物が存在する汚泥を多量に含有する汚水となっている。沈殿槽3は底面3aおよび側面3bを有し、その側面3bの所定位置には上澄水を越流させる越流堰31を設けてある。また、沈殿槽3の外側には、越流堰31から越流した上澄水を系外に放出するための上澄水移送管32を配設してある。このような沈殿槽3では、送水管5から流入した汚水が上澄水を押し出すので、上澄水は越流堰31を越流して上澄水移送管32に流れ込む。必要であれば、上澄水移送管32の先に図示しない放流水槽を設置し、この放流水槽に上澄水を一時的に貯留するように構成することが可能である。この構成は、放流水槽に貯留した上澄水をポンプと移送管によって系外に移送することになるが、上澄水を例えば公共下水道に放流する場合で放流水量が規制されている場合に好適となる。なお、放流水槽については後で改めて説明する。
移送手段4は、貯留槽1内の汚水を曝気槽2へ移送するものであり、貯留槽1内の汚水中に設置した移送ポンプ41と、一端を移送ポンプ41に接続し他端を曝気槽2に開口させた移送管42と、この移送管42の途中に配設した計量槽43によって構成してある。計量槽43は、その内部に設けた堰によって汚水の移送量を制御する構造としてある。そして、計量槽43において堰から流出した余分の汚水は、図示しない返送管を介して貯留槽1に戻すようにしてある。
この移送手段4は上記の構成に限定するものではない。例えば、移送ポンプ41は水中ポンプとしたが、陸上ポンプとして計量槽43の一次側において移送管42に配設し、水中ポンプに代えてフート弁を配設する構成も適用できる。また、移送管42に計量槽43を配設する代りに、移送管42の途中と貯留槽1とを接続するバイパス管を配設し、移送管42には流量計を配設し、バイパス管に電磁弁、電動弁、空圧弁、油圧弁などの制御弁を配設し、流量計の計測値が所定流量を維持するように制御弁を制御する構成とすることもできる。
送水管5は曝気槽2と沈殿槽3を管で連通する構成としてある。しかし、送水管5は汚水を曝気槽2から沈殿槽3に確実に移送できるのであれば、その構造を限定するものではない。例えば、送水管5は、汚水を堰によって曝気槽2から沈殿槽3に自然に流出させる構造や、汚水を開口路によって曝気槽2から沈殿槽3に自然に流出させる構造とすることができる。また、通常の管および継手で送水管5を形成し、その汚水送水管5にポンプを配設して曝気槽2から沈殿槽3に汚水を強制的に圧送する構造などとすることができる。この場合、計量槽などによってポンプ起動による移送量を一定に制御するようにしてポンプにON/OFFで移送量を制御できるようにしておく必要がある。特に、汚水をポンプで沈殿槽3に圧送する場合や、自然に流出させる構成でも沈殿槽3に流入する汚水流量が多い場合に、流入する汚水で沈殿槽3内の下層の汚泥を多く含む汚水の一部が上層の上澄水にまで巻き上げられて撹拌されてしまい、沈殿処理に支障が生じることがある。この場合には、送水管5の沈殿槽3側の開口に流入する汚水の流速を減衰する役割を有するバッフルやセンターウェルを設置するとよい。
返送手段6は、沈殿槽3内の汚泥を含有した汚水を貯留槽1へ返送するものとしてある。この返送手段6は、沈殿槽3内の底部に配置した返送ポンプ44、一端を返送ポンプ44に接続し他端を貯留槽1に開口させた返送管45、この返送管45の途中に配設した計量槽46によって構成してある。計量槽46は、移送手段4の場合と同様に、内部に設けた堰によって移送量を制御し、計量槽46において堰から流出した余分の汚水を図示しない返送管を介して沈殿槽3に返送する構造としてある。
貯留槽1の散気管14と曝気槽2の散気管22とは、例えば粒状樹脂を隙間が残るように固めた素材から筒状または板状に形成したものとすることができる。しかし、これらの散気管14、22の材料や構造は、比較的微細な気泡を汚水中に吐出できる構造であれば限定するものではない。例えば、散気管14、22は、多数の比較的径大の穴を有する管の外周に多数の小孔を有するゴムを巻回した構造や、円形ディスク状で円周部分に多数の小孔を有する構造のディスクディフューザとすることができる。また、散気管14、22は、袋状散気管、サラン巻散気管、ボックスエアレータ、シャーフューザなどとすることもできる。
図2の立面配置図および図3の平面配置図に示すように、貯留槽1は概ね平面状の底面1aと、この底面1aの各辺から立ち上がる4つの側面1bを有している。汚水流入管11の汚水流入口11aと返送管45の汚水流出口45aとは、貯留槽1内の上部に開口させてある。なお、返送管45の汚水流出口45aは、貯留槽1の側面1bを貫通させて開口してもよい。貯留槽1の底面1aの一部には凹状のポンプ釜場1cを設けてあり、ポンプ釜場1c内には移送手段4の移送ポンプ41を配置してある。貯留槽1の底面1aには各側面1bからポンプ釜場1cに向かって低下する所定勾配を与え、汚泥が底面1a上に滞留しないようにしてある。このような底面1aの所定勾配は、10〜15度程度であるのが好ましい。
貯留槽1の散気装置13における複数の散気管14は、貯留槽1内の汚水を全面曝気できるように、ポンプ釜場1cを除く底面1a全体に一定間隔で配置してある。すなわち、例えば22個の散気管14を配置するとして、底面1aの輪郭に横4列×縦6列の構成で、ポンプ釜場1cに触れないよう2個の散気管14を外して配置してある。また、散気装置13の空気供給管16はブロワ15から散気管14の列の中央に立ち下げて各散気管14に接続してある。これらの散気管14は、各散気管14に加わる水圧が同程度となるように所定の高さに配置し、各散気管14から気泡が均等に吐出するようにしてある。なお、貯留槽1内の散気管14の配置位置および空気供給管16の配管方法は、貯留槽1の底面1a全体から空気を供給可能、つまり全面曝気可能で有れば、どのような構成であってもよい。
一方、曝気槽2には、曝気槽2から沈殿槽3へ自然流下で汚水を移送する場合、貯留槽1に存在する移送ポンプ41が不要である。よって、曝気槽2の底面2aは傾斜させる必要がなく、貯留槽1におけるようなポンプ釜場1cは設ける必要がない。したがって、曝気槽2では、貯留槽1におけるポンプ釜場1cに相当する位置にも散気装置21の散気管22を配設できるので、貯留槽1における場合よりもより均一に曝気することが可能となる。そして、曝気槽2に開口している送水管5の汚水流出口5aは、移送手段4の移送管42の汚水流入口42aの正反対側において所定の高さに配設してある。
図4の立面配置図および図5の平面配置図に示すように、沈殿槽3も概ね平面状の底面3a、この底面3aの各辺から立ち上げた4つの側面3b、および上壁3dを有している。曝気槽2からの送水管5の汚水流入口5bは、沈殿槽3の一側面3bの所定の高さ位置に配置してある。越流堰31は上澄水を設定水位で越流させる高さ位置で送水管5側の側面3bに対向する側面3bに設け、上澄水移送管32は越流堰31の高さ位置に対応させて設けてある。沈殿槽3の底面3aの隅部には凹状のポンプ釜場3cを設け、このポンプ釜場3c内には返送手段6の返送ポンプ44を配置してある。底面3aには各側面3bからポンプ釜場3cに向かって低下する所定勾配を与え、汚水中の汚泥が底面3a上に滞留しないようにしてある。その所定勾配は、貯留槽1の場合と同様に10〜15度程度であるのが好ましい。
ここで、沈殿槽3の底面3aを上述のように構成した理由は次のようになる。すなわち、従来の沈殿槽の底面はホッパ状となっていることから、汚水中の汚泥は自然に一箇所に沈降する。したがって、従来の返送ポンプは、汚水中の汚泥が沈降する一箇所に設置するだけで、汚水中の汚泥を滞留させることなく移送することができる。これに対し、この実施の形態1において沈殿槽3の底面3aに勾配を与えない場合には、底面3aは概ね平面状のままとなり、沈降した汚水中の汚泥が底面3a全体に散在したままとなる。このため、散在した汚水中の汚泥を1台の返送ポンプ44で移送する場合には、汚水中の汚泥の一部が底面3a上に滞留したままとなることがある。このように汚水中の汚泥が底面3a上に滞留したままとなると、好気性微生物の活性が減退し、嫌気性微生物が活性化する。この結果として、沈殿槽3内に硫化水素などの臭気ガスが発生したり、汚水中の汚泥がスカム化して水面上に浮上したりして、沈殿処理に支障が生じる。そこで、この実施の形態1における沈殿槽3では、底面3aの隅部に凹状のポンプ釜場3cを設けると共に、底面3aには各側面3bからポンプ釜場3cに向かって低下する所定勾配を与え、汚泥がポンプ釜場3cに自然に集まり易くしてある。
しかし、貯留槽1や曝気槽2とは異なり、沈殿槽3では固形分の多い下層に汚泥を多く含む汚水が滞留するため、上述の対策だけでは問題が解消されない場合が多い。そこで、この実施の形態1における沈殿槽3には、底面3a上に滞留している汚泥を多く含む汚水と上澄水とを撹拌する空気供給管53を設置してある。この空気供給管53の一端は、曝気槽2の散気装置21の空気供給管24を途中で分岐して接続しており、他端は、沈殿槽3の底面3aの近傍に所定間隔で配置した複数(例えば6個)の散気管52に接続しており、ブロワ23からの圧縮空気を散気管52に供給している。空気供給管53には電磁弁、電動弁などの制御弁54を配設してある。これらの散気管52は沈殿槽3の底面3a上の汚泥を多く含む汚水と上澄水とを全体的に攪拌できるように配置してある。散気管52は、散気管14、22に適用するものと同様の構造のものも適用可能であるが、ディスクディフューザのような特定方向に気泡を放出できる構造のものを下向きに配置すると、気泡が下方の底面3aに噴射でき、汚泥を多く含む汚水を効率よく撒き上げることができて効率的に撹拌することができる。
なお、空気供給管53を空気供給管24に接続することに代えて、貯留槽1の散気装置13の空気供給管16に接続してブロワ15からの圧縮空気を散気管52に供給してもよい。ブロワ15、23は貯留槽1、曝気槽2の散気のために常時作動させるので、制御弁54を開いて散気管52に圧縮空気を供給した際に散気装置13、21の能力が若干低下するが、沈殿槽3内の汚水を撹拌する少ない時間であるので、通常、貯留槽1、曝気槽2の好気性処理に大きな影響はない。ただし、ブロワ15、23を汚水処理システム設計時に算出された好気性処理に必要な最低空気量と同一能力のものを選定すると、流入汚水の水質が悪化した際に、散気管52に圧縮空気を供給すると、貯留槽1、曝気槽2の好気性処理に重大な影響を及ぼす可能性があることから、ブロワ15、23の能力にはある程度余裕を持って選定する必要がある。この反面で、空気供給管53は、専用のブロワからの圧縮空気を散気管52に供給してもよく、この場合には制御弁54は省くことができる。また、貯留槽1と沈殿槽3の双方には、例えば電極棒、電極帯、レベルスイッチなどからなる図示しない水位検出手段をそれぞれ設置してある。さらに、ブロワ15、23、移送ポンプ41、返送ポンプ44、制御弁54などを制御するための図示しない制御手段を用意してある。
次に、この実施の形態1における汚水処理システムの通常プロセスを説明する。未処理の汚水は汚水流入管11を通って貯留槽1に流入するが、この間にスクリーン12は前処理として汚水中の夾雑物を除去する。貯留槽1内には流入汚水が一時的に滞留する。同時に、貯留槽1には沈殿槽3から返送手段6の返送管45を通って返送汚水が流入し、貯留槽1内に滞留している流入汚水と混合する。この際に、返送手段6は計量槽46によって返送汚水の流量を調整し、定量として貯留槽1に返送する。返送汚水は好気性微生物が存在する汚泥を多量に含んでいるが、その好気性微生物の活性は低下していて有機物の吸着・分解能力が大幅に低下している状態となっている。しかし、貯留槽1では散気装置13が散気管14から空気を汚水中に常時吐出するので、好気性微生物が再度活性化して有機物を吸着・分解可能な状態となり、既に自らが吸着している有機物を分解する。次いで、好気性微生物は汚水中の有機物を吸着し、更には分解を開始して好気性処理を行う。
このように貯留槽1内で好気性処理された底部の汚水は、移送手段4の移送ポンプ41の作用によって移送管42から曝気槽2へ流れる。この際にも、移送手段4は計量槽43によって汚水の量を調整し、定量として曝気槽2へ順次に流す。曝気槽2では、散気装置21がその散気管22から空気を汚水中に吐出し、汚泥中の好気性微生物は吸着した有機物を分解して好気性処理を引き続いて行う。その後に、好気性処理された汚水は送水管5を通って沈殿槽3へ越流の形で流れる。沈殿槽3に流れ込む汚水の量は、貯留槽1から曝気槽2へ流れ込む汚水の量と同じとなる。
沈殿槽3では汚水を静置し、汚泥が少なくなった上層の上澄水と汚泥を多量に含む下層の汚水とに分離する。そして、上澄水は越流堰31を越流し、上澄水移送管32を通って系外に流出する。この上澄水流出管32を通って流出する上澄水の量は、曝気槽2から送水管5を通って沈殿槽3に流入する汚水の量から沈殿槽3から貯留槽1へ返送される汚泥を多く含む汚水の量を差し引いた量となる。
ここで、この汚水処理システムの通常プロセスを継続していくと、沈殿槽3内に送水管5側から返送ポンプ44側に向かって下り傾斜の汚泥界面が形成されてしまい、特に堆積量の多い送水管5側の汚泥は長時間滞留しやすく好気性微生物の活性が大幅に低下し、嫌気性微生物が活性化する嫌気性傾向になってしまう。そこで、夜間等の貯留槽1への汚水の流入量が低下したときに以下の撹拌プロセスを実行する。すなわち、夜間などは貯留槽1に流入する汚水の量が少なくなるので、この状態で移送ポンプ41が作動し続けると、貯留槽1の水位が低下する。制御手段は水位検出手段からの信号が所定値以下になった場合に貯留槽1の移送ポンプ41の作動を停止させる。この間に、沈殿槽3の返送ポンプ44は作動し続けるので、沈殿槽3の水位が低下する。そこで、沈殿槽3の水位が所定位置、好ましくは越流堰31の上端から下方へ200mmほど離れた位置に低下した場合に、制御手段は水位検出手段からの信号に基づいて返送ポンプ44の作動を停止させる。同時に、制御手段は制御弁54を開く。これにより、圧縮空気がブロワ23から空気供給管53を介して散気管52に流れ、散気管52から沈殿槽3内に噴出し、上層の上澄水と下層の汚泥を多く含む汚水とを攪拌する。同時に、噴出した圧縮空気の気泡の一部が汚水中に溶け込むことにより、汚泥中の好気性微生物がある程度活性を取り戻し、好気性傾向に再度回復する。このとき、沈殿槽3の水位は越流堰31から下方に離れているので、攪拌に伴う汚水が越流堰31から越流することはない。
そして、貯留槽1に流入する汚水の量が増加し、貯留槽1の水位が所定値を超えると、制御手段は移送ポンプ41を再び作動させると共に、制御弁54を閉じる。これにより、圧縮空気が散気管52に流れなくなり、空気供給管53からの空気供給が停止する。この状態で、貯留槽1の汚水が曝気槽2に流れ、更に沈殿槽3に流れ、沈殿槽3の水位が上昇する。そして、沈殿槽3の水位が越流堰31の高さに達すると、制御手段は水位検出手段からの信号に基づいて返送ポンプ44を再び作動させる。これにより、沈殿槽3内の下層の汚泥を多く含む汚水が貯留槽1に向かって流れ、汚水処理システムの通常プロセスに戻る。
この場合に、この汚水処理システムでは汚水を連続処理するので、貯留槽1から曝気槽2を介して沈殿槽3に流入する汚水の量は少ない。したがって、制御弁54が閉じて沈殿槽3の攪拌が終了した後に沈殿槽3の水位が越流堰31に達するまでには時間が掛かる。また、それまでは返送ポンプ44が作動せず、下層に堆積していく汚泥が吸引されることがない。したがって、この汚水処理システムではその時間を利用して沈殿槽3内の撹拌された汚水を越流堰31から越流させることなく静置させることができ、上層の上澄水と下層の汚泥を多く含む汚水とに分離させる沈殿処理を続けることができる。このため、偏っていた沈殿槽3内の汚泥界面を概ね水平面に再形成することが可能となり、しかも嫌気性傾向にあった汚泥をある程度の好気性傾向に回復できる。なお、空気供給管53を専用のブロワに接続する構成とした場合には、制御手段は、制御弁54を制御する場合と同様に専用のブロワをON/OFFを制御するとよい。
この実施の形態1における汚水処理システムでは、撹拌プロセス時に外部の空気を沈殿槽3内に流入させるため沈殿槽3内は正圧状態になり、沈殿槽3の上壁3dに配設される点検口やその他の隙間から槽内の空気が漏れ出し、撹拌プロセス時の短時間ではあるが臭気が発生する。このため、沈殿槽3から図示しない排気用分岐管を立ち上げ、貯留槽1や曝気槽2内の空気の排気を行う図示しない排気手段の排気用本管に接続するか、沈殿槽3が躯体水槽であり、隣接して貯留槽1や曝気槽2が存在する場合には、沈殿槽3と貯留槽1や曝気槽2とを隔てる側壁3bの気層部に連通口を設ける等、沈殿槽3内が正圧状態にならないように対策を施すことが望ましい。
以上のように、この実施の形態1における汚水処理システムでは、微細な気泡を汚水中に吐出する散気装置13を貯留槽1に配設し、好気性微生物が存在する汚泥を多く含む返送汚水を沈殿槽3から貯留槽1に返送手段6によって返送するので、沈殿槽3内で嫌気性傾向にあった汚水中の汚泥を貯留槽1において再活性化させることができる。したがって、再活性化させた汚泥中の好気性微生物によって、貯留槽1において流入汚水中の有機物を吸着・分解させることが可能となり、貯留槽1において流入汚水を好気性処理できるという大きな効果がある。
この実施の形態1における汚水処理システムでは、貯留槽1において流入汚水と返送汚水を接触させると共に、それらの汚水を散気装置13によって散気するので、汚泥中の好気性微生物が汚水中の有機物を吸着する吸着時間を確保できる。また、吸着した有機物を分解できるので、分解時間の一部も確保できる。さらに、曝気槽2では、好気性微生物が全ての有機物を分解するまでの最低限の分解時間だけ汚水を滞留させればよいので、曝気槽2の容量を大幅に低減できるという大きな効果がある。これに対し、曝気槽2の容量を従来と同じにすれば、有機物を分解する処理能力を大幅に向上させることができるという大きな効果がある。
この実施の形態1における汚水処理システムでは、貯留槽1において好気性処理を行うので、貯留槽1内の汚水が嫌気性化することによる硫化水素などの腐敗ガスの発生を大幅に低減でき、それに起因する臭気の問題を解消できるという大きな効果がある。また、腐敗ガスの発生を大幅に低減できるので、それに起因する貯留槽1内のライニングの劣化や移送ポンプ41の劣化を大幅に抑えることが可能となり、ライニングの補修や移送ポンプ41の交換の頻度を大幅に低減でき、補修・交換の手間や費用を大幅に低減できるという大きな効果がある。また、ライニングの材質を腐敗ガス対応のものではなく通常のものを使用でき、かつ移送ポンプ41も耐食性の低い一般仕様のものを使用できるので、システムの施工のイニシャルコストを大幅に削減できるという大きな効果がある。そして、腐敗ガスの発生を大幅に低減できることから、システムから流出する排気ガスの臭気が低減するので、脱臭塔などの脱臭装置を従来よりも小容量化でき、イニシャルコストを削減できるという効果がある。その上に、定期的に交換する必要のある活性炭や脱臭菌のなどの量が低減するので、ランニングコストも大幅に低減できるという大きな効果がある。
この実施の形態1における汚水処理システムでは、貯留槽1内で汚水の好気性処理を行うので、汚水中の油分を好気性微生物に吸着させることが可能となり、油分が貯留槽1の側面1bに付着することを大幅に低減できる。この結果として、貯留槽1の清掃回数が大幅に減少し、清掃のための人件費や付着物を産業廃棄物として処分する費用が大幅に低減するという大きな効果がある。また、貯留槽1において汚水の好気性処理を行うので、従来の汚水処理システムのように再曝気槽において好気性処理を行わなくとも、システム全体の浄化能力を従来のシステムと同等にすることができ、システムの設置面積を削減できるという大きな効果がある。
この実施の形態1における汚水処理システムでは、沈殿槽3内に沈殿槽3内に空気を供給する空気供給管53および散気管52を設け、沈殿槽3から貯留槽1へ汚泥を多く含む汚水を返送する返送ポンプ44を備え、貯留槽1から曝気槽2への汚水の移送量を調整して送ることができる移送ポンプ41、移送管42および計量槽43からなる移送手段4を備えたことにより、以下に示す効果がある。すなわち、従来は設置条件などの制約から沈殿槽3の底面3aをホッパ形状ではなく水平な平面形状に構築した場合に、沈殿槽3内の送水管5側に汚泥が多く堆積し、返送ポンプ44の汚泥が集中的に吸引されることによる汚泥界面の偏りが生じていたが、沈殿槽3内に空気を供給する空気供給管53および散気管52を設けたので、夜間などの処理すべき汚水の流入が少ない時間帯に汚水処理システムの通常プロセスを中断し、散気管52から空気を沈殿槽3内に噴出することにより、上澄水と汚泥を多く含む汚水とを撹拌し、その後所定時間、静置することにより、汚泥界面を概ね水平に再形成することができるという大きな効果がある。
また、散気管52からの空気の噴出することにより、沈殿槽3内の汚水に空気の一部が溶け込み、汚泥をある程度好気性傾向に回復させることができる大きな効果がある。同時に、汚泥の嫌気性化が進行し、内部に腐敗性ガスを有するスカムに変化して上澄水面に浮上することによって生ずる沈殿槽3内の沈殿処理の障害を防止することができる大きな効果もある。さらに、沈殿槽3内の汚水の撹拌前に、移送ポンプ41を停止し、沈殿槽3の水位が越流堰31よりも所定高さ低くなるまで返送ポンプ44を継続稼働して沈殿槽3内の汚泥を多く含む汚水を移送することができ、散気管52から空気を沈殿槽3内に噴出して汚水を撹拌した際に、撹拌された汚水が越流堰31を越流して処理水として系外に排出されることを防止できる大きな効果がある。
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2における汚水処理システムの貯留槽1Aの立面配置図、図7はその平面配置図であり、図2および図3と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態2における貯留槽1Aの底面1aは、短辺に比べて長辺が大幅に長い長方形となっている。このような場合には、散気装置13Aの散気管14を実施の形態1における場合のように対称に配置することが困難となる。したがって、この実施の形態2では、例えば17個の散気管14を配置するとして、15個の散気管14を長方形の輪郭に横3列×縦6列の構成で、ポンプ釜場1cに触れないよう2個の散気管14を外して配置してある。また、縦6列に2個ずつ並ぶ複数の散気管14の中央に一方の空気供給管16Aを接続し、残りの縦5列の5個の散気管14に空気供給管16Bを接続してある。なお、曝気槽2に関しても実施の形態1の場合と同様に、貯留槽1Aの構成を適用可能である。また、この実施の形態2におけるその他の構成は、実施の形態1における汚水処理システムと同様としてある。この実施の形態2における汚水処理システムでは、貯留槽1Aの底面1aが長方形であっても、実施の形態1における汚水処理システムと同様な効果が得られる。
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3における汚水処理システムの貯留槽1Bの立面配置図、図9はその平面配置図であり、図2および図3と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。実施の形態2における貯留槽1Aには各横列に複数の散気管14を配置したが、この実施の形態3における貯留槽1Bでは細長い多孔管17を各横列に1本ずつ縦6列に配置してある。各多孔管17の上壁には多数の小孔17aを設けてある。そして、この実施の形態3におけるその他の構成は、実施の形態1における汚水処理システムと同様としてある。なお、曝気槽2に関しても実施の形態1の場合と同様に、貯留槽1Bの構成を適用可能である。この実施の形態3では、実施の形態1および実施の形態2において空気を均等に吐出させるように複数の散気管14を配設する際に必要であった空気供給管16、16A、16Bの配管ルートの複雑さを解消できるばかりでなく、施工時間の多さ、配管材料費の嵩み、散気管14自体の高価さなどの問題も解消できる。すなわち、多孔管17に対する空気供給管16Cの配管ルートが簡略化し、施工時間が短縮し、材料費も比較的安価となるという大きな効果がある。
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4における汚水処理システムの処理フロー図であり、図1と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態4における汚水処理システムは、実施の形態1における汚水処理システムに放流水槽7、水位調整ポンプ61、および水位調整管62を追加した点で実施の形態1における汚水処理システムと大きく異なっている。すなわち、沈殿槽3からの上澄水移送管32を放流水槽7に接続してあると共に、沈殿槽3に水位調整ポンプ61を配設してある。また、水位調整ポンプ61に水位調整管62の一端を接続し、その他端を放流水槽7に開口させてある。さらに、放流水槽7に放流ポンプ63を配設し、この放流ポンプ63に放流管64を接続してある。この実施の形態4におけるその他の構成は、実施の形態1における汚水処理システムと同様としてある。
なお、この実施の形態4における汚水処理システムの通常プロセスの処理工程は、沈殿槽3内の上澄水を上澄水移送管32より放流水槽7に移送して一時貯留する点、貯留した上澄水を放流水槽7から放流ポンプ63を稼働して放流管64にて系外に流出する点以外については、実施の形態1の場合と同様となる。この通常プロセス時は、水位調整ポンプ61による上澄水の移送を行うと吸引力によって汚泥界面がかき乱されて沈殿処理に影響が及ぶ恐れがあるので、上澄水は越流堰31から越流させて上澄水移送管32で移送する方が望ましい。また、この点から水位調整ポンプ61には、揚水量の小さなものを選定することが望ましい。一方、撹拌プロセスに関しては、撹拌前に沈殿槽3の水位を低下させるときに、返送ポンプ44を使用せず、放流ポンプ63を稼働して上澄水を放流水槽7に移送する点以外については、実施の形態1の場合と同様となる。なお、この実施の形態4においても、貯留槽1は実施の形態2、3の貯留槽1A、1Bで代用でき、同様に曝気槽2に関しても同様の構造で代用できる。また、この実施の形態4における汚水処理システムにおいても、実施の形態1と同様の理由から沈殿槽3内が正圧状態にならないように実施の形態1と同様の対策を施すことが望ましい。
この実施の形態4における汚水処理システムでは、沈殿槽3の上澄水を放流水槽7に水位調整ポンプ61と水位調整管62によって強制的に排出することができるので、貯留槽3の水位を任意の位置に調整できる。したがって、沈殿槽3を攪拌しても汚泥が越流堰31を越流しないように沈殿槽3の水位を下げることができ、沈殿槽3内の汚水を攪拌する前に放流水槽7に良質な上澄水を移送できる。
この実施の形態4における汚水処理システムでは、急激な系外からの流入汚水量の増大に常時対応できるように貯留槽1の水槽水位を低く保つ場合においては、特に効果がある。また、この実施の形態4における汚水処理システムでは、撹拌プロセス時、沈殿槽3内の上澄水を放流水槽7に移送することから、他の実施の形態のものに比べ、貯留槽1の流入汚水の流入によって水槽水位が所定水位まで到達するまでの時間が長くなる。撹拌プロセスは、貯留槽1の貯留水位が所定水位以上になると終了することから、撹拌プロセスの時間を長くしたい場合には、特に大きな効果がある。
実施の形態5.
図11はこの発明の実施の形態5における汚水処理システムの処理フロー図であり、図1と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態5における汚水処理システムは、沈殿槽3からの汚泥を多く含む汚水の一部を汚泥貯留槽8に貯留するように構成した点で実施の形態1における汚水処理システムと大きく異なっている。このため、汚泥貯留槽8を新たに設けると共に、返送手段6の返送管45の途中から水位調整管71を分岐させ、この水位調整管71の先を汚泥貯留槽8に開口させてある。この際に、水位調整管71は返送手段6の計量槽46の上流において返送管45に接続してある。そして、返送ポンプ44からの汚水の流れを貯留槽1または汚泥貯留槽8に向けるために、返送管45に制御弁72を配設し、かつ水位調整管71に制御弁73を配設してある。なお、この実施の形態5においても、実施の形態2および実施の形態3に示した各貯留槽1A、1Bで代用でき、同様に曝気槽2に関しても同様の構造で代用できる。また、この実施の形態5における汚水処理システムにおいても、実施の形態1と同様の理由から沈殿槽3内が正圧状態にならないように実施の形態1と同様の対策を施すことが望ましい。
この実施の形態5における汚水処理システムでは、通常プロセスは、実施の形態1の場合と同様である。この通常プロセスの際には返送管45側の制御弁72を開き、同時に水位調整管71側の制御弁73を閉じる。これにより、返送ポンプ44からの汚泥を多く含む汚水の全てが貯留槽1に向かって流れる。そして、撹拌プロセスに関しても実施の形態1の場合とほぼ同様であるが、沈殿槽3の水位を下げる場合には、返送管45側の制御弁72を閉じると共に水位調整管71側の制御弁73を開く。これにより、貯留槽3内の汚泥を多く含む汚水の全てが汚泥貯留槽8に向かって流れる。したがって、沈殿槽3内を攪拌しても汚泥が越流堰31を越流しないように沈殿槽3の水位を下げることができる。
一般に、貯留槽1や曝気槽2で汚水に対して好気性処理を行う汚泥中の好気性微生物は、汚水中の有機物を分解する際に増殖する。汚水の流入が少ない時間に曝気を継続することで自己酸化により、好気性微生物は減少し、汚水中の汚泥量は減量されるが、汚水の有機物の含有比率が高い場合、自己酸化の減少量よりも好気性微生物の増殖量の方が勝ってしまい、好気性処理に必要な量以上に汚水中の汚泥が増大し続けてしまう。このような場合、通常プロセス時においても定期的に汚泥を多く含む汚水を沈殿槽3等から汚泥貯留槽8に移送して貯留しておき、所定量以上貯まった段階で、バキューム車等により系外に搬出する作業を行っている。したがって、この実施の形態5における汚水処理システムでは、汚泥量が増大し続けるような条件であって、汚泥貯留槽8の設置の必要がある場合においては、撹拌プロセス時に沈殿槽3内に滞留する汚泥を多く含む汚水を汚泥貯留槽8に移送できるので、通常プロセス時に汚泥を多く含む汚水を汚泥貯留槽8に移送しなくても済むか、あるいは移送時間を極力少なくすることができ、通常プロセス時の影響を極力少なくすることができる。
この実施の形態5における汚水処理システムでは、急激な系外からの流入汚水量の増大に常時対応できるように貯留槽1の水槽水位を低く保つ場合においては、特に効果がある。また、この実施の形態5における汚水処理システムでは、撹拌プロセス時、沈殿槽3内の汚水を多く含む汚水を汚泥貯留槽8に移送することから、実施の形態4の場合と同様、貯留槽1の流入汚水の流入によって水槽水位が所定水位まで到達するまでの時間が長くなる。撹拌プロセスは、貯留槽1の貯留水位が所定水位以上になると終了することから、撹拌プロセスの時間を長くしたい場合には、特に大きな効果がある。
実施の形態6.
図12はこの発明の実施の形態6における汚水処理システムの処理フロー図であり、図1と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態6における汚泥処理システムは、実施の形態1とは空気供給管82に撹拌ポンプ81を接続した点が大きく異なっている。すなわち、この実施の形態6における空気供給管82は、一端を沈殿槽3の底面1aの近傍に配設した攪拌ポンプ81に接続し他端を水面上の気層部で空気取入口83に接続した構成としている。なお、空気供給管82を沈殿槽3の側壁3bあるいは上壁3dに貫通させ、沈殿槽3の外部において空気取入口83を空気供給管82の先端に設けてもよい。また、この実施の形態6においても、実施の形態2および実施の形態3に示した各貯留槽1A、1Bが代用できで、同様に曝気槽2に関しても同様の構造で代用できる。さらに、撹拌プロセスにおいて、沈殿槽3の水位を下げる構成についても、実施の形態4および実施の形態5のそれぞれで示した構成が適用可能である。
この実施の形態6における汚水処理システムでは、通常プロセスに関しては、実施の形態1と同様である。撹拌プロセスに関しては、沈殿槽3の撹拌時以外は実施の形態1と同様となる。撹拌時においては、沈殿槽3の水位が所定値以下になると、制御手段は攪拌ポンプ81を作動させる。これにより、空気が空気取入口83から空気供給管82を通って沈殿槽3の底部から沈殿槽3内に噴出し、上層の上澄水と下層の汚泥を多く含む汚水とを攪拌する。したがって、この実施の形態6における汚水処理システムでも、実施の形態1における汚水処理システムと同様な効果が得られる。
実施の形態1から実施の形態5に示した汚水処理システムでは、撹拌プロセス時に外部から空気を沈殿槽3内に流入させるため、沈殿槽3内は正圧状態になり、点検口等の隙間から槽内の空気が漏れ出すことで臭気が発生してしまう。一方、この実施の形態6における汚水処理システムでは、空気供給管82は、沈殿槽3内の気層部の空気を取り込み、撹拌ポンプより汚水中に噴出しており、沈殿槽3外からの空気の流入がないため、撹拌プロセス時においても沈殿槽3内が正圧状態になることはない。したがって、この実施の形態6における汚水処理システムでは、沈殿槽3内が正圧状態になることを防止する対策を講じる必要がなく、対策に要するイニシャルコストおよびランニングコストを削減することができるという大きな効果がある。
実施の形態7.
図13はこの発明の実施の形態7における汚水処理システムの処理フロー図であり、図1と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態7における汚水処理システムは、実施の形態1における汚水処理システムに再曝気槽9を追加した点で実施の形態1における汚水処理システムと大きく異なっている。この場合に、沈殿槽3からの汚水は返送手段6によって貯留槽1ではなく再曝気槽9に返送するようにしてある。再曝気槽9は曝気槽2と同様の構造とし、再曝気槽9の汚水は連通管10によって貯留槽1へ返送するようにしてある。
再曝気槽9には散気装置91を設置してある。この散気装置91は、再曝気槽9内の底部に配置した複数の散気管92と、一端を各散気管92に接続し他端を散気装置21のブロワ23に接続した空気供給管93によって構成してある。そして、この実施の形態7におけるその他の構成は、実施の形態1における汚水処理システムと同様としてある。なお、この実施の形態7においても、貯留槽1は実施の形態2、3の貯留槽1A、1Bで代用でき、曝気槽2および再曝気槽9も準じて代用できる。また、連通管10には送水管5と同様なものを適用できるが、その構造を限定するものではない。
次に、この実施の形態7における汚水処理システムの通常プロセスついて説明する。未処理の汚水は、汚水流入管11とスクリーン12を通って貯留槽1に流入し、貯留槽1内に一時的に滞留する。再曝気槽9には沈殿槽3から好気性微生物が存在する汚泥を多く含む返送汚水が返送手段6によって定量で返送される。再曝気槽9では、返送汚水中の汚泥に含まれる好気性微生物が散気装置91によって活性化される。その後に、再曝気槽9内の汚水は、返送汚水の流入よって押し出されて越流する形で連通管10を通って貯留槽1に流入する。貯留槽1では流入汚水と返送汚水が混合する。貯留槽1内の返送汚水中の汚泥は、その好気性微生物が再曝気槽9において既に活性化されているので、貯留槽1内の汚水中の有機物を即座に吸着し、更に散気装置13の散気管14から吐出する空気を得て汚水中の有機物を分解し、好気性処理を行う。
貯留槽1において好気性処理された汚水は、移送手段4の移送ポンプ41の作用により、移送管42を通って曝気槽2へ順次に流れる。この間に、その汚水は移送手段4の計量槽43によって定量に調整される。曝気槽2では、散気装置21の散気管22から空気が吐出し、汚泥の好気性微生物が有機物を分解し、好気性処理を引き続き行う。この間に、曝気槽2で好気性処理された汚水は送水管5を越流して沈殿槽3へ流れるが、その量は貯留槽1から曝気槽2に流れ込む汚水の量と同じとなる。
沈殿槽3では、汚水を静置して上層の上澄水と下層の汚水とに分離する沈殿処理を行う。下層の汚水には多くの汚泥が含まれる。上層の上澄水は越流堰31を越流し、上澄水移送管32を経て系外に流出する。また、沈降して沈殿槽3の底面に散在した汚泥を多く含む汚水は、返送手段6の返送ポンプ44の作用によってポンプ釜場から返送管45と計量槽46を通って再曝気槽9に流入する。この場合にも、越流堰31を越流する上澄水の量は、曝気槽2から沈殿槽3に流れ込む汚水の量から沈殿槽3から再曝気槽9へ返送される汚泥を多く含む汚水の量を差し引いた量となる。
再曝気槽9では、散気装置91の散気管92から空気を吐出し、嫌気性傾向にあった汚泥を多く含む汚水を曝気する。これにより、汚泥中の好気性微生物が再活性化して有機物を吸着・分解可能な状態に回復し、既に自らが吸着している有機物の分解と汚水中の有機物の吸着・分解とを行なう。また、好気性微生物は、曝気槽2および再曝気槽9で有機物を分解する際に自己増殖するため汚泥量が増加しているが、再曝気槽9内の全ての有機物を分解し尽くすと、その後に好気性微生物は自己酸化(共食い)を始めるので、増えすぎた汚水中の好気性微生物が減少し、適正な汚泥量となる。そして、好気性微生物が減少した汚泥を多く含む汚水は、連通管10を通って貯留槽1へ流れる。なお、空気供給管53の作用と効果は実施の形態1と同様となり、この実施の形態7における汚水処理システムは、以上の流れによって汚水の好気性処理を行う。なお、汚水処理システムの撹拌プロセスにおいて、沈殿槽3の水位を下げる構成については、実施の形態4および実施の形態5のそれぞれで示した構成が適用可能である。また、この実施の形態7における汚水処理システムにおいても、実施の形態1と同様の理由から沈殿槽3内が正圧状態にならないように実施の形態1と同様の対策を施すことが望ましい。
以上のように、この実施の形態7における汚水処理システムでは、実施の形態1に記載した効果が得られる他に、貯留槽1、曝気槽2、および再曝気槽9の3槽において好気性処理を行うので、従来の汚水処理システムと同じ設置面積でも全体の浄化能力を従来よりも飛躍的に上昇させることができるという大きな効果がある。また、従来と同じ浄化能力で処理する場合には、汚泥中の好気性微生物の自己酸化をより促進することが可能となり、余剰汚泥の排出量を大幅に抑制できるという効果がある。したがって、余剰汚泥を搬出するために必要な人件費や、それを産業廃棄物として処理するための費用を大幅に削減できるとうい効果がある。また、沈殿槽3に空気供給管53を設けた点および撹拌プロセス時の沈殿槽3の水位を低下させる構成に関しては実施の形態1から実施の形態5に示したものと同様な効果が得られる。
実施の形態8.
図14はこの発明の実施の形態8における汚水処理システムの処理フロー図であり、図13と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この実施の形態8における汚水処理システムは、実施の形態7において空気供給管53の一端を空気供給管24に接続し、他端を散気管52に接続した構成に代えて、実施の形態6における空気供給管82の一端を水面上の気層部で空気取入口83に接続し、他端を撹拌ポンプ81に接続した構成とした点で実施の形態7における汚水処理システムと大きく異なっている。したがって、この実施の形態8における汚水処理システムでは、実施の形態7における汚水処理システムに示した効果に加えて実施の形態6に示した効果も同時に得られる。