JP4526971B2 - フィブュリン−5を指標とした皮膚老化状態の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フィブュリン−5(fibulin-5)を指標とした皮膚老化状態について評価する検査方法を提供する。
皮膚の老化は2つのタイプに分類される。すなわち自然老化と光加齢である。自然老化は、あらゆる生物に共通する基本的な生物学的プロセスであり、皮膚の機能と構造が加齢とともに劣化すること(表皮萎縮、表皮-真皮接合部の平坦化など)を特徴とする(Lavker, R.M. J. Invest. Dermatol. 73:59-66, 1979)。組織学的には、自然老化状態にある皮膚は、エラスチンの量が低下して萎縮した細胞外マトリックスを有する(Braverman, I.M. et al., J.Invest.Dermatol. 78:434‐443, 1982)。それに対して光加齢は、日光を恒常的に浴びた結果であることがよく知られている。日光を浴びた皮膚(例えば顔や首の皮膚)は、日光から比較的保護された胴部の皮膚と比べて明らかに早く老化し、日光を浴びた皮膚のさまざまな臨床的特徴(例えば、しわ、肌理の粗さ、肌荒れ、しみ、色素の変化、毛細管拡張症、新形成など)(Gilchrest, B.A. J. Am. Acad. Dermatol. 21:610-613, 1989);Griffiths, C.E., Br. J. Dermatol. 127:37-42, 1992)と組織学的特徴(例えば、細胞の異型性、極性の喪失、表皮-真皮接合部の平坦化、コラーゲンの減少、皮膚弾力線維症、真皮への弾力線維物質の異常な堆積)(Kligman, A.M. et al., J.Am.Acad.Dermatol.15:836‐859, 1986; Lavker, R.M. J. Invest. Dermatol. 73:59-66, 1979)を示す。皮膚のコラーゲンとエラスチン(細胞外マトリックス)へのダメージは、日光の紫外線を長期にわたって浴びたことの証拠であり、日光を浴びた皮膚に見られるしわの原因であると考えられている(Kligman, A. M. et al. 1986(前掲))。
フィブュリン遺伝子ファミリーには5つの異なる遺伝子が含まれており、それらの遺伝子からは、選択的スプライシングを通じて9種類以上のタンパク質産物が産生される(Timpl, R. et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4:479-489, 2003)。フィブュリンは広く発現している分泌タンパク質であり、血液中や、大部分の組織の基底膜と間質の中に見られる。フィブュリンは、そのような場所で、自己会合(Balbona, K. et al., J. Biol. Chem. 267:20120-20125, 1992; Pan, T.C. et al, J. Biol. Chem. 123:1269-1277, 1993)及び/又は多彩な細胞外マトリックス要素(例えばフィブロネクチン、ラミニン、ニドジェン、アグレカン、バーシカン、エンドスタチン、エラスチン)と相互作用している(Aspberg, A. et al., J. Biol. Chem. 274:20444-20449, 1999; Nakamura, T. et al., Nature 415:171-175, 2002;Timpl, R. et al., 2003(前掲);Yanagisawa, H. et al., Nature 415:168-171, 2002)。フィブュリンは、細胞外マトリックス構造の構築と安定化に関係していると考えられており、器官形成、脈管形成、線維形成、腫瘍形成の調節への関与も以前から指摘されている(Roark, E.f. et al., J. Histochem. Cytochem. 43:401-411, 1995;Tran, H. et al., J. Biochem. 270:19458-19464, 1995;Zhang, H. Y. et al, Dev. Dyn. 205:348-364, 1996)。
フィブュリンファミリーの最新のメンバーは、フィブュリン−5[EVEC(Kowal, R.C. et al., Circ. Res. 84:1166-76, 1999)またはDANCE(Nakamura, T. et al., J. Biol. Chem. 274:22476-22483, 1999)として知られる]である。フィブュリン−5は448個のアミノ酸からなる糖タンパク質であり、興味深い構造上の特徴を持つ。フィブュリン−5は、インテグリンと結合するRGDモチーフと、カルシウムと結合する上皮増殖因子様の6つの繰り返し領域と、カルシウムと結合する第1の上皮増殖因子様繰り返し領域の中のプロリンが豊富な挿入部と、球状のC末端ドメインとを含んでいる(Kowal, R.C. et al., 1999(前掲);Nakamura, T. et al., 1999(前掲))。機能としては、フィブュリン−5は、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、α9β1インテグリンと結合し(Nakamura, T. et al., 2002(前掲))、RGDモチーフを通じて内皮細胞に接着する(Nakamura, T. et al., 1999(前掲))。マウスでフィブュリン−5遺伝子を不活性にすると、皮膚、肺、血管系に深刻なエラスチノパシーが起こる(Nakamura, T. et al., 2002(前掲);Yanagisawa, H. et al., 2002(前掲))。
Nakamura, T. et al., Nature 415:171-175, 2002 Yanagisawa, H. et al., Nature 415:168-171, 2002
本発明の基礎となる研究の目的は、皮膚の老化プロセスにおける弾力線維の変化を調べることであった。フィブュリン−5は、弾力線維にとっての足場となる分泌細胞外マトリックスタンパク質であるが、フィブュリン−5がヒトの皮膚にどのように分布しているかと、加齢とともにどのように変化するかは明確になっていない。フィブュリン−5が皮膚の老化にどのように関与しているかを調べるため、本発明者は、ヒトの皮膚におけるフィブュリン−5の存在状態の年齢変化を、他の弾力線維要素(エラスチン、フィブリリン−1(Fibrillin-1)、フィブュリン−2)の年齢変化と比較した。17歳の被験者の日光から保護された上腕部から採取した皮膚の真皮網状層には、フィブュリン−5だけでなく他の弾力線維要素も存在していたのに対し、真皮乳頭層では、フィブュリン−5は表皮に垂直な枝付き燭台様構造を示し、非染色領域が表皮の直下に存在していた。これは、エラスチンの存在状態と似ているが、フィブリリン−1の存在状態とは異なっている。真皮網状層にあるフィブュリン−5は、大腿部、腹部、上腕部の日光から保護された皮膚において加齢とともに減少し、場合によっては消失した。日光を浴びた皮膚では、20歳の被験者においてさえ、頬の皮膚の真皮でフィブュリン−5が顕著に減少していた。2MEDのUVBを照射することにより、対照である照射していない皮膚と比較し、フィブュリン−5のレベルは顕著に低下し、フィブュリン−2のレベルは中程度低下し、エラスチンのレベルはわずかに低下した。興味深いことに、フィブュリン−5は、他の弾力線維要素と同様、日光弾力線維症において堆積量が増加していた。これらの結果は、フィブュリン−5が皮膚老化の優れたマーカーであることと、フィブュリン−5の早期減少には他の弾力線維要素の年齢変化が関係している可能性のあることを示唆している。
その結果、本願は以下の発明を提供する。
(1)被験体の皮膚の老化状態を評価するための皮膚検査方法であって、検査すべき皮膚中のフィブュリン−5の発現量が対照皮膚中の発現に比べて有意に低下している場合、皮膚の老化状態が進行しているものと判断することを特徴とする、皮膚検査方法。
(2)前記皮膚の老化が自然老化及び/又は紫外線B波(UVB)に対する暴露に起因する、(1)の皮膚検査方法。
(3)前記フィブュリン−5の発現量の測定を、検査すべき皮膚中のフィブュリン−5の量を測定することにより実施する、(1)又は(2)の皮膚検査方法。
(4)前記フィブュリン−5の量を、フィブュリン−5に特異的な抗体を使用するイムノアッセイにより測定する、(3)の皮膚検査方法。
(5)前記抗体がポリクローナル抗体である、(4)の皮膚検査方法。
(6)前記フィブュリン−5の発現量の測定を、皮膚から抽出されたフィブュリン−5をコードするmRNAの量を測定することにより決定される、(1)又は(2)の皮膚検査方法。
(7)前記mRNAの測定をポリメラーゼ連鎖反応法により行う、(6)の皮膚検査方法。
(8)前記ポリメラーゼ連鎖反応法がリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法である、(7)の皮膚検査方法。
本発明により、皮膚老化状態を評価するための皮膚検査方法の提供が可能となる。
皮膚の老化状態を評価するための皮膚検査方法
本発明は、皮膚の老化状態を評価するための方法を提供する。この方法は、検査すべき皮膚中のフィブュリン−5の発現量を測定し、その発現量を対照皮膚中の発現量と比較し、検査すべき皮膚中のフィブュリン−5の発現量が対照皮膚中の発現量に比べて有意に亢進している場合、皮膚の老化状態が進行しているものと判断することを特徴とする。皮膚老化の進行状況が早期に発見できれば、早期処置を施すことで皮膚老化の進行を未然に防ぐことができ、有利である。皮膚の老化状態のその評価基準として、例えば皮膚細胞中のフィブュリン−5の発現が対照皮膚細胞中のそれらと比べ10%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は50%以上、又は70%以上、又は100%以上減少していたなら「皮膚の老化状態が進行している」と判断してよい。
検査すべき皮膚は、例えば顔、首、腕、肢など、老化の進行の気になるあらゆる部分の真皮であってよい。対照皮膚としては、例えば同一個体の例えば紫外線に曝されにくく、比較的老化の進行しにくいとされる部位の表皮、例えば腹部、臀部の真皮であってよい。
皮膚中のフィブュリン−5の発現量は、例えば皮膚中のフィブュリン−5の量を直接測定することにより決定することができる。好ましくは、この測定はフィブュリン−5に特異的な抗体を利用し、当業界において周知の方法、例えば蛍光物質、色素、酵素などを利用する免疫組織染色法、ウェスタンブロット法、イムノオアッセイ、例えばELISA法、RIA法など、様々な方法により実施できる。上記測定において使用するフィブュリン−5に特異的な抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。ポリクローナル抗体が特に好ましい。モノクローナル抗体やポリクローナル抗体の作成方法は当業者に周知であり、例えばフィブュリン−5に特異的な抗体に関する記載はCharbonneau, N.L. et al., . Biol. Chem., 2740-2749, 2003;Reinhardt, D.P., J. Mol. Biol. 258:104-116, 1996に見出せる。
また、皮膚からRNAを抽出し、フィブュリン−5をコードするmRNAの量を測定することにより決定することもできる。フィブュリン−5をコードする遺伝子の塩基配列は公知であり、例えばNakamura, T.et al., 1999(前掲)に掲載されている。mRNAの抽出、その量の測定も当業界において周知であり、例えばRNAの定量は定量ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、例えばリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応方法(rPCR)により行われる。他に、フィブュリン−5の発現はin situハイブリダイゼーション法を通じて決定することができる。
以下、具体例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
材料と方法
被験者
すべての研究は、聖マリアンナ医大と資生堂の倫理委員会によって承認された。聖マリアンナ医大病院のすべての被験者から書面によるインフォームド・コンセントが提出された。男性1名、女性4名が大腿部の皮膚サンプルを提供し、男性2名、女性2名が上腕部の皮膚サンプルを提供し、男性1名、女性2名が頬の皮膚を提供した(年齢の幅は、5歳〜76歳)。サンプルは、形成外科手術の間に切り取った余剰皮膚から調製した。UVBを1回照射する研究を行うため、健康な2人の男性ボランティアから書面によるインフォームド・コンセントが提出された。対照となる日光を浴びていない皮膚からと、2MEDのUVBを照射した2日後の臀部の皮膚から、パンチ生検サンプル(3mm)を採取した。
抗体
エラスチン、フィブリリン−1、フィブュリン−2に対するモノクローナル抗体の特性は以前に明らかにされている(Charbonneau, N.L., 2003(前掲);Reinhardt, D.P. et al., 1996(前掲))。Markova, D.Y. et al., Am. J. Hum. Genet. 72:98-1004, 2003;Pan, T.C. et al, 1993(前掲))に記載されているようにして、pCEP-Puベクターを用いて293-EBNA細胞の中で発現させた組み換えフィブュリン−2とフィブュリン−5からウサギの抗血清を得た。
免疫組織化学
AMeX法(Sato, Y. et al, Am. J. Pathol. 125:431-435, 1986)に従い、皮膚の断片と生検サンプルを冷たいアセトンを用いて固定し、パラフィンに包埋した。キシレンを用いて厚さ3μmの切片からパラフィンを除き、再度水和させ、3%過酸化水素を用いて15分間にわたって予備処理し、内在性ペルオキシダーゼの活性を停止させた。標準的な10%ウサギ血清(ヒストファイン社、東京、日本国)を用いて非特異的結合を阻止し、サンプルを室温にて30分間にわたってインキュベートした。一次モノクローナル抗体を添加し、4℃にて一晩にわたってインキュベートし、次いで切片をEnVision(DAKO社、カーピンテリア、カリフォルニア州)とともにインキュベートした後、DAKO社の液体DAB+をベースとした色素原で染色し、ヘマトキシリンを用いて細胞核を染色した。
実験結果
日光から保護された若いヒトの真皮におけるフィブュリン−5の存在状態
図1に、若い人の日光から保護された皮膚の真皮におけるエラスチン、フィブュリン−5、フィブリリン−1、フィブュリン−2の存在状態を示す。17歳の女性の日光から保護された上腕部の皮膚におけるエラスチン(aとe)、フィブュリン−5(bとf)、フィブリリン−1(cとg)、フィブュリン−2(dとh)の存在状態を、「材料と方法」に記載した特異的抗体を用いた免疫組織化学的手段によって調べた。
17歳の女性の日光から保護された上腕部から採取した皮膚の真皮網状層には、フィブュリン−5だけでなく、他の弾力線維要素(例えばエラスチン、フィブュリン−2、フィブリリン−1)も存在していた(図1a〜図1d)。フィブュリン−2は、フィブリリン−1とは異なり、子どもの皮膚と成人の皮膚のどちらにも検出されなかった(データは省略)。真皮乳頭層では、フィブュリン−5は、他の弾力線維要素の構造と似た、表皮に垂直な枝付き燭台様構造であった(図1e〜図1h)。しかし、表皮直下の領域を見ると、フィブュリン−5とエラスチンは存在していなかった(図1eと図1f)が、フィブリリン−1がその位置に繊維構造として観察された(図1g)。このフィブリリン−1は、表皮基底膜に挿入された可能性がある。真皮乳頭層におけるフィブュリン−2の繊維構造(図1h)は、エラスチン、フィブリリン−1、フィブュリン−5の繊維構造(図1e〜図1g)ほど明確ではなかったが、真皮網状層におけるフィブュリン−2の繊維構造(図1d)は、エラスチン、フィブリリン−1、フィブュリン−5の繊維構造(図1a〜図1c)よりも明確であった。
日光から保護された皮膚または日光を浴びた皮膚におけるフィブュリン−5の分布の年齢変化
図2に、日光から保護された皮膚の真皮におけるエラスチン、フィブュリン−5、フィブリリン−1、フィブュリン−2の発現の年齢変化を示す。日光から保護された大腿部の真皮におけるエラスチン(a、e、i、m、q)、フィブュリン−5(b、f、j、n、r)、フィブリリン−1(c、g、k、o、s)、フィブュリン−2(d、h、l、p、t)の存在状態を、「材料と方法」に記載した特異的抗体を用いた免疫組織化学的手段によって調べた。年齢が5歳〜75歳の被験者から採取した皮膚の真皮において弾力線維要素の年齢変化を調べた。
5歳、13歳、16歳の被験者の日光から保護された大腿部から採取した真皮では、フィブュリン−5は、真皮乳頭層では枝付き燭台様構造を示し、真皮網状層では、他の弾力線維要素(例えばエラスチン、フィブュリン−2、フィブリリン−1)からなる弾力線維と結合していた(図2a〜図2l)。しかし34歳の被験者から採取した皮膚の真皮網状層におけるフィブュリン−5の染色強度(図2n)は、他の弾力線維要素の染色強度(図2m、図2o、図2p)と比べて低くなっていた。フィブュリン−5(図2r)は、75歳の女性から採取した皮膚の真皮網状層にはほとんど存在していなかった。同様に、弾力線維と結合したフィブュリン−5は、36歳の被験者の日光から保護された上腕部の皮膚の真皮網状層において、11歳、17歳、24歳の被験者から採取した真皮網状層におけるよりも少なかった(データは省略)。さらに、弾力線維と結合したフィブュリン−5は、34歳と75歳の被験者の腹部から採取した皮膚の真皮網状層において、フィブリリン−1およびフィブュリン−2よりも顕著に少なかった(データは省略)。それに対して真皮乳頭層では、フィブュリン−5は染色強度を維持していたが、染色された線維の数は加齢とともに減少しているように見えた(図2nと図2r)。またエラスチンは、年齢に依存した減少が、真皮網状層よりも真皮乳頭層においてはるかに大きかった(図2q)。
図3には、日光に曝された皮膚におけるエラスチン、フィブュリン−5、フィブリリン−1、フィブュリン−2の発現の年齢変化を示す。日光を浴びた頬の皮膚の真皮におけるエラスチン(a、e、i)、フィブュリン−5(b、f、j)、フィブリリン−1(c、g、k)、フィブュリン−2(d、h、l)の存在状態を、「材料と方法」に記載した特異的抗体を用いた免疫組織化学的手段によって調べた。年齢が20歳〜76歳の被験者からの皮膚の真皮において弾力線維要素の年齢変化を調べた。
日光を浴びた皮膚では、20歳と45歳の被験者でさえ、フィブュリン−5が頬の皮膚の真皮でほとんど失われていた(図3bと図3f)。この変化は、日光から保護された皮膚(図2)よりもはるかに早く起こった。45歳の皮膚の真皮における弾力線維構造(図3e、図3g、図3h)は、20歳の皮膚の真皮における弾力線維構造(図3a、図3c、図3d)よりもはるかに広がって緩んでいるように見えた。これは、76歳の被験者の真皮で観察された弾力線維(図3i〜図3l)と似ているため、45歳の皮膚で日光弾力線維症が進行している可能性のあることを示唆している。興味深いことに、日光弾力線維症においてフィブュリン−5の堆積が増えていることが、他の弾力線維要素の場合と同様に観察された(図3j)。しかし日光を浴びた皮膚ではフィブュリン−5が加齢とともに減少するため、日光弾力線維症になることはなかった(図3bと図3f)。
UVB照射後の真皮におけるフィブュリン−5の減少
図4には、UVB照射後の真皮におけるフィブュリン−5の減少を示す。臀部の皮膚の真皮におけるエラスチン(a、b、g、h)、フィブュリン−5(c、d、i、j)、フィブリリン−1(e、f、k、l)の存在状態を、「材料と方法」に記載した特異的抗体を用いた免疫組織化学的手段により、処理していない部位(a〜f)とUVBを照射した部位(g〜l)で比較した。
真皮のフィブュリン−5は、日光から保護された皮膚よりも日光を浴びた皮膚で早く減少したため、ボランティアの2人の男性から採取した臀部の皮膚においてUVB照射がフィブュリン−5の分布に及ぼす効果を調べた。2MEDのUVBを1回照射すると、真皮において、対照である照射していない皮膚(図4aから図4f)と比較して、フィブュリン−5(図4iと図4j)のレベルは顕著に低下し、フィブュリン−2(図4kと図4l)のレベルは中程度低下し、エラスチン(図4gと図4h)のレベルはわずかに低下した。
考察
本発明者は、この研究を通じ、真皮網状層においてフィブュリン−5の含有量が加齢とともに減少し、しかもその減少速度は、他の弾力線維要素(例えばエラスチン、フィブュリン−2、フィブリリン−1)よりも大きいことを明らかにした。フィブュリン−5の減少は、UVBを照射することによって大きくなり、しかも日光から保護された皮膚よりも日光を浴びた皮膚のほうではるかに早く起こった。したがってUVBは、老化していく間に弾力線維の損傷を引き起こす主要な因子の1つであるであるように思われる。また、フィブュリン−5が早く失われるのは、老化していく間の弾力線維の変化、特に光加齢による弾力線維の変化に関係している可能性がある。
フィブュリン−5欠損マウスでは、弾力線維が無秩序になるためにエラスチノパシーが顕著に現われ、その結果として皮膚が緩み、血管に異常をきたし、肺気腫になることが報告されている(Nakamura, t. et al., 2002(前掲);Yanagisawa, H. et al., 2002(前掲))。フィブュリン−5はインテグリンに結合するN末端ドメインを有するため、細胞を弾力線維に安定に付着させる役割を果たすことで弾力線維の組織化に寄与すると考えられている(Nakamura, t. et al., 2002(前掲))。本発明者は、この研究を通じ、加齢プロセスにおいてフィブュリン−5が真皮網状層で減少し、最終的に消失することを見いだした。フィブュリン−5が失われると真皮細胞と弾力線維の相互作用が弱くなることによって弾力線維の安定性が低下し、老化していく間に弾力線維が萎縮する可能性がある。
フィブュリン−5の沈着は、日光から保護された皮膚よりも日光を浴びた皮膚で早く減少した。さらに、UVB照射によって真皮内に堆積しているフィブュリン−5の分解が誘導された。マトリックスを分解するメタロプロテイナーゼのmRNA、タンパク質、活性は、UVBを照射してから数時間以内に生きたヒトの皮膚で誘導されることが知られており、皮膚のコラーゲンとエラスチンを分解させる可能性がある(Fisher, G.J etal., Nature 379:335-339, 1996)。フィブュリン−2は、マトリックス・メタロプロテイナーゼ(ストロメリシン、マトリリシン)、循環しているプロテアーゼ(トロンビン、プラスミン、カリクレイン)、白血球エラスターゼ、マスト細胞キマーゼによって分解されることが報告されている(Sasaki, T. et al., Eur. J. Biochem. 240:427-474, 1996)。光線弾力線維症ではフィブュリン−2の分解産物も少量検出されたが、これは、光のダメージを受けた皮膚でプロテイナーゼの活性が増大したことをおそらく反映している(Hunzelmann, N. et al., Br. J. Dermatol., 145:217-222, 2001)。プロテイナーゼに対するフィブュリン−5の感度はまだ報告されていないが、皮膚をUVに曝すことによって誘導されるプロテイナーゼが真皮におけるフィブュリン−5の分解に関与している可能性がある。
光線によるダメージを受けた皮膚の特徴は、真皮に弾力線維成分物質が蓄積することに付随する変化である(Lavker, R.M. J. Invest. Dermatol. 73:59-66, 1979)。以前の免疫組織化学的研究では、日光弾力線維症になった領域においてエラスチン、バーシカン、ヒアルロン酸、フィブリリン、フィブュリン−2の沈着が増えていることが報告されている(Bernstein, E.F. et al., Lab. Invest. 72:662-669, 1995年;Bernstein, E.F. et al., Br. J. Dermatol. 135:255-62, 1996;Hunzelmann, N. et al., 2001(前掲)。本発明者は、この研究において、フィブュリン−5の沈着が、加齢とともに減少するとはいえ、日光弾力線維症においても増大することを見出した。弾力線維成分の発現が増大し、光線によるダメージを受けた皮膚の真皮に異常に沈着するメカニズムはまだわかっていない。フィブュリン−5の増大は、弾力線維成分の沈着の後期段階と、真皮において極端に減少した後に見られたため、フィブュリン−5遺伝子の発現制御、またはフィブュリン−5タンパク質の合成制御、またはフィブュリン−5の沈着制御は、他の弾力線維成分の制御とは異なっている可能性がある。日光弾力線維症の発症におけるフィブュリン−5の役割を明らかにするため、さらに研究を行う必要がある。
まとめると、本発明者は、真皮におけるフィブュリン−5の沈着が、日光弾力線維症において増大するとはいえ、加齢とともに減少することを初めて示した。さらに、急にUVを浴びることにより、真皮におけるフィブュリン−5の消失が促進される。したがってフィブュリン−5は、皮膚の老化、特に光加齢の優れたマーカーになると考えられる。
若い人の日光から保護された皮膚の真皮におけるエラスチン、フィブュリン−5、フィブリリン−1、フィブュリン−2の存在状態を示す免疫組織化学染色図。 日光から保護された皮膚の真皮におけるエラスチン、フィブュリン−5、フィブリリン−1、フィブュリン−2の発現の年齢変化を示す免疫組織化学染色図。 日光に曝された皮膚におけるエラスチン、フィブュリン−5、フィブリリン−1、フィブュリン−2の発現の年齢変化を示す免疫組織化学染色図。 UVB照射後の真皮におけるフィブュリン−5の減少を示す免疫組織化学染色図。

Claims (8)

  1. 被験体の皮膚の光加齢状態を評価するための皮膚検査方法であって、検査すべき皮膚中のフィブュリン−5の発現量が対照皮膚中の発現に比べて有意に低下している場合、皮膚の光加齢状態が進行しているものと判断することを特徴とする、皮膚検査方法。
  2. 前記皮膚の光加齢が紫外線B波(UVB)に対する暴露に起因する、請求項1記載の皮膚検査方法。
  3. 前記フィブュリン−5の発現量の測定を、検査すべき皮膚中のフィブュリン−5の量を測定することにより実施する、請求項1又は2記載の皮膚検査方法。
  4. 前記フィブュリン−5の量を、フィブュリン−5に特異的な抗体を使用するイムノアッセイにより測定する、請求項3記載の皮膚検査方法。
  5. 前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項4記載の皮膚検査方法。
  6. 前記フィブュリン−5の発現量の測定を、皮膚から抽出されたフィブュリン−5をコードするmRNAの量を測定することにより決定される、請求項1又は2記載の皮膚検査方法。
  7. 前記mRNAの測定をポリメラーゼ連鎖反応法により行う、請求項6記載の皮膚検査方法。
  8. 前記ポリメラーゼ連鎖反応法がリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法である、請求項7記載の皮膚検査方法。
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