JP4523631B2 - ガラスびんのウォータハンマ強度試験方法及び装置 - Google Patents

ガラスびんのウォータハンマ強度試験方法及び装置 Download PDF

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本発明は、ガラスびんのウォータハンマ強度を単品のガラスびんで試験する方法及び装置に関する。
ガラスびんのウォータハンマ強度の試験は、日本ガラスびん協会の「ウォーター・ハンマー試験方法」によって規定されている。これは、ガラスびんの包装貨物としてのウォータハンマ試験方法を規定するものである。
図9は、この規定による試験の説明図である。この試験は、「JIS Z 0202」に規定する落下試験機15を用い、落下面16(厚さ20mm以上の鉄板)の上に下ダミー18(試料と同じもの)を1ケース置き、その上に試料19を1ケース置き、落下試験機15の試料台17に上ダミー20(試料と同じもの)を1ケース置く。下ダミー18、試料19、上ダミー20は、びんに正規内容物を正規の充填方法によって、所定の量を充填し、所定のキャップを施したもの、またそれに準ずるものに、所定の包装を行ったものであり、ケース内には多数のガラスびん入っている。
試料台は所定の落下高さ(上ダミーの底面と試料の上面との距離)となるようにセットしておき、例えば、はじめ30cmの落下高さから上ダミーを試料の上に落とし、5cm間隔で落下高さを増やし(落下高さが60cm以上は10cm間隔)、試料中のガラスびんが1本でも破損するか、定められた落下高さまで繰り返し落下試験を行い、試料中のびんが1本でも割れたときの落下高さをもってウォータハンマ強度とする。
試料19の上に上ダミー20が落下すると、下ダミー18のケースが変形し、試料19内のガラスびんは急激に下方に押し下げられる。しかし、そのガラスびんの中の内容物(液体)は慣性により元の位置に留まり、びん内の底部に真空状態の部分が発生する。その直後、真空状態の底部に向かって内容物が急激に落下し、ウォータハンマ現象が起こる。
なお、包装貨物落下試験装置は、下記の特許文献にも示されている。
特開昭61−147129号公報 特開昭62−263435号公報
日本ガラスびん協会の「ウォーター・ハンマー試験方法」は、包装されたガラスびんのウォータハンマ強度を測定するものであるから、ガラスびんそのもののウォータハンマ強度を試験するものではない(包装の仕様でウォータハンマ強度が変化する。)。また、カ−トンを準備しないと試験ができないので、試験実施に多くの製品が必要(10ケ−ス程度)であり、びん・パリソンの設計段階のテスト生産でのウォータハンマ強度評価ができない。さらに、カ−トンの持ち上げ、びん破損の確認、破損後のあと始末、カ−トン潰れチェックなど、試験の実施に多大の労力を必要とする。
本発明は、ガラスびんそのもののウォータハンマ強度を、比較的容易に測定可能とし、さらにテスト生産(びん・パリソンの設計段階)での強度評価もできるようにすることを課題としてなされたものである。
本発明は、固定台部の上にクッション材を介して保持手段を設け、該保持手段で内容物を充填しキャップを装着したびんをその重心よりも上で保持して該びんを空中に吊し、前記キャップの上に直接又は間接的に錘を落下させてびんに衝撃を与え、その落下エネルギーを徐々に増やしながら複数回錘の落下を繰り返し、びんが割れたときの錘の落下エネルギーに基づいてびんのウォータハンマ強度を試験することを特徴とするガラスびんのウォータハンマ強度試験方法である。
錘を直接又は間接的にキャップ上に落下させると、クッション材が変形し、びんが急激に下方に押し下げられ、ウォータハンマ現象がおこる。びんを、その重心より上で保持した吊り下げ状態で錘を落下させると、錘の落下エネルギーが効率よくびんに作用し、錘の落下エネルギーとびんに加わる衝撃が強く相関し、びんが割れたときの錘の落下エネルギーに基づいてびんのウォータハンマ強度を正確に知ることができる。
また本発明は、固定台部と、該固定台部に載置されたクッション材と、該クッション材の上に載置され、内容物を充填してキャップを装着したびんをその重心より上で保持して該びんを空中に吊す保持手段と、前記キャップの上に落下させてびんに衝撃を与える錘とを有することを特徴とするガラスびんのウォータハンマ強度試験装置である。
本発明装置によれば、本発明の前記ウォータハンマ強度試験方法を容易に実施することができる。
本発明装置における固定台部は、具体的には、基台と該基台から立設した柱部とを有するフレームの、前記柱部から側方に張り出し形成された、貫通穴を有する板状体とし、前記保持手段によって空中に保持されたびんが前記貫通穴の中に挿通して設けられるように構成することができる。
また本発明装置における固定台部を複数の柱材とし、前記保持手段によって空中に保持されたびんが前記柱材の間に位置するように構成することもできる。
また本発明装置における固定台部を筒状材とし、前記保持手段によって空中に保持されたびんが前記筒状材の中に位置するように構成することもできる。
また本発明装置において、前記キャップを覆い、かつ、下面がキャップ上面に接触するように保護板を設け、前記錘を該保護板上に落下させ、該保護板を介して間接的に前記キャップ上に錘を落下させるように構成することができる。
このようにすることで、錘が落下する衝撃によるキャップの破損を防ぐことができる。
また本発明装置において、前記錘を、シャフトの下端に錘本体を形成したものとし、前記錘が所定の軌道を上下するように前記シャフトが挿通するガイドを設けることができる。
このようにすることで、錘が所定の軌道を上下し、錘をキャップの上に正確に落下させることができる。
本発明によれば、ガラスびんそのもののウォータハンマ強度を正確に試験することができ、また、試験に使用するガラスびんも少なくてすむので、びん・パリソンの設計段階のテスト生産でのウォータハンマ強度評価が可能となる。したがって、これにより、仮に、テスト生産びんの強度不足が分かれば、直ちにびん・パリソンの設計を変更することができるので、高品質のびんを効率よく設計することが可能となる。
また、本発明は、カ−トンの持ち上げ、カートン内のびん破損の確認、カ−トン潰れチェックなどの作業が不要で、比較的容易に試験を実施することができる。
図1は実施例の試験装置の断面説明図である。基台6、柱部7、固定台部2は鋼板を加工して一体的に形成され、柱部7がL字状に基台6から立設し、固定台部2は柱材7の中間から張り出し形成されている。固定台部2には、びん1の胴部が挿通できる貫通穴2aが設けられている。
固定台部2の上の貫通穴2aの周囲にはクッション材3が載置され、その上に保持手段4が載置される。クッション材3はゴム、軟質樹脂などの弾性体で、形状、大きさなどは必要に応じて適宜決定すればよい。保持手段は、内容物を充填しキャップを装着したびん1をその重心より上で保持して該びんを空中に吊すもので、びん1を確実に保持し、クッション材3の上に載置できるものであれば、材質、形状は自由である。びんは、内容物を充填しキャップを装着した状態で、その重心より上で保持されればよいが、びんの首部(口部又はビードの直下)で保持するのが最も好適である。
びん1のキャップ1bの上方には錘5が設けられる。錘5は、シャフト5bの下端に錘本体5aを設けたもので、柱部7から突出形成され、シャフト5aが挿通する挿通孔を有するガイド8により、垂直に上下動可能である。錘5はストッパ9により所望の高さに保持されているが、ストッパ9を解除することによりキャップ1bの真上に落下する。
錘5がキャップ1bの真上に落下すると、その落下エネルギーによりクッション材3が変形し、びん1が急激に押し下げられ、ウォータハンマ現象が起こる。落下エネルギーを徐々に増やしながら複数回錘の落下を繰り返し、びんが割れたときの錘の落下エネルギーによってびんのウォータハンマ強度を測定する。落下エネルギーの調整は、錘の重さを代えること、落下高さ(錘下面と、キャップ又は保護板上面の距離)を変えることで行う。錘の質量をm、落下高さをh、重力加速度をgとすると、落下エネルギーはmghである。
図2は、固定台部2を4本の柱材とした例である。底板10上に4本の柱材を建て、各柱材の上にクッション材3を載置し、その上にびん1を吊り下げる保持手段4を載置する。びん1は4本の柱材の間に位置する。
柱材に代えて筒状材を固定台材2とし、その上にクッション材3を載置し、その上にびん1を吊り下げる保持手段4を載置することも可能である。この場合、びん1は筒状材の中に位置することとなる。
錘落下時のキャップ1bの割れを防止するため、キャップ1bを覆って保護板11を設けている。キャップ1bの上面と保護板11の下面は接触している。錘は保護板11の上に落下するが、キャップ1bの上面と保護板11の下面が接触しているので、キャップ1bの上に直接落下した場合と同等の衝撃がびんに加わる。保持手段4と保護板11の間にはスペーサ12を設けている。スペーサを設けることで、キャップの割れがさらに防止される。
図3は保持手段4の一例で、びんの首部と同じかやや大きい径の内孔21を形成した円板を中心から2つ割りにしたものである。それぞれの割半体をびん首部を内孔22に挟み込むように両側から合わせ、図3の下段に示すように一体化する。その後、適宜の固定手段で両割半体が分離しないように固定することが望ましい。図4は固定手段の一例で、上段に平面図、下段に断面図を示している。固定手段13は板状をなし、上面中央に保持手段4が入る凹所13aが設けられ、凹所13aの中央部には孔13bが形成されている。保持手段4を凹所13a内に入れることで、両割半体が分離しないように固定される。
図1では、保持手段4がびん1のビード1a(環状突条)の下側に取り付けられており、ビードの外径が保持手段の内孔21の径よりも大きいので、びんは保持手段4により確実に保持される。
図5は保持手段4の他例で、板材22に概略半円形の先端部24を有するアーム23を固定したものが対となっている。半円形の先端部24の内側には弾性を有するパッキン25が貼付されている。この対を、図5の下段に示すように、ボルト26・ナット27で締め付け、びんの首部やキャップに取り付ける。本例の場合、ボルト26・ナット27で締め付けて強固にびんを保持できるので、ビードやキャップの下側以外の、突条の存在しない部分を保持することもできる。
図6は保持手段4の他例で、上段に平面図、下段に断面図を示している。この保持手段4は、中央に孔28aを有するベース板28と、内側中央部分に山形の凹部29aを有する2枚のスライド板29からなる。スライド板はボルト26・ナット27でベース板28に固定されるが、ボルトを緩めることで同図の矢印に示すように左右方向にスライドすることができる。凹部29aの中にびんの保持する部分を入れ、その径に合わせてスライド板29をスライドさせた後ボルト26を締めてスライド板を固定することで、びんを保持する。この保持手段は、保持する部分の種々の径のびんに対して使用することができる。
図7は、図1の試験装置を用い、びん外底面の中心位置に歪みセンサを貼り付け、錘を落下させた場合の衝撃エネルギー(落下エネルギー)とびん底面の歪み(変形量)の関係を測定した結果を示している。
なお、びんは容量110mlの市販品製品(飲料が充填され、金属キャップが装着されているもの)を用い、クッション材はシリコーンを主原料とする軟らかいゲル状(JIS K 2207の針入度55、ヤング率119.5kPa)で大きさ1.5cm×1.5cm×1cmのものを4個用いた。
図7において、縦軸は錘落下時に内容物のウォ−タハンマ現象で発生する歪をセンサにて測定した電圧で、びん底面の歪み量に対応している。横軸は衝撃エネルギー(=落下エネルギーmgh)である。衝撃エネルギー1〜5Jについて1J間隔で測定し、各衝撃エネルギーについて5回の試験を行った。図中、四角印が平均値で、上下の短い横線がバラツキの範囲を示している。
同図に示されるように、本発明の方法によれば、錘落下による衝撃エネルギー(落下エネルギー)とびんの歪みはほぼ正比例の強い相関関係にあり、錘落下による衝撃が確実にびんに伝達され、錘の落下エネルギーに見合った大きさのウォータハンマ現象が起こっていることが確認できる。したがって、本発明方法によれば正確にウォータハンマ強度を試験することができる。
図8は比較例の試験方法の説明図である。クッション材3の上に敷き板14を載せ、その上に内容物を充填しキャップを装着したびん1を載せ、上から錘5を落下させる。
図8の比較例の試験方法について、図7の測定と同じびん、同じクッション材を用い、びん外底面の中心位置に歪みセンサを貼り付け、錘を落下させた場合の衝撃エネルギー(落下エネルギー)とびん底面の歪み(変形量)の関係を測定した。その結果を図9に示す。図中、四角印が平均値で、上下の短い横線がバラツキの範囲を示している。
同図に示されるように、比較例においては、びん底面歪み量の平均値が衝撃エネルギー3Jのときに最大となり、4J以上では減少している。これは、錘が落下した衝撃でびんが傾くなどして、錘落下による衝撃エネルギーが確実にびんに伝達されないためと考えられる。したがって、比較例の試験方法では、正確にウォータハンマ強度を試験することはできない。
本発明方法においては、びんをその重心より上で保持しびんを空中に吊り下げた状態で錘を落下させるので、錘落下の衝撃を受けたびんの挙動が安定しており、錘落下による衝撃エネルギーが確実にびんに伝達される。
図10は、肉厚分布の異なる3種類のびん(いずれも容量110mlの市販品で飲料が充填され、金属キャップが装着されているもの)について、本発明のウォータハンマ強度試験方法の試験結果と、図11の日本ガラスびん協会の「ウォーター・ハンマー試験方法」の試験結果を対比したものである。
本発明方法は図1の試験装置を用い、クッション材はシリコーンを主原料とする軟らかいゲル状(JIS K 2207の針入度55、ヤング率119.5kPa)で大きさ1.5cm×1.5cm×1cmのものを4個用いた。肉厚分布の異なるびん(肉厚分布A,B,C)のそれぞれについて各10本のびんのウォータハンマ強度を試験した。試験は、重さ4.0817kgの錘を用い、はじめの落下高さを2.5cmとし、それから1.25cm間隔で落下高さを増やし、びんが割れたときの落下エネルギー(mgh)を「単品ウォータハンマ試験強度」とした。
日本ガラスびん協会の「ウォーター・ハンマー試験方法」では、50本ガラスびんを段ボール箱に詰めたものと試料とし、肉厚分布A,B,Cのびんのそれぞれについて、5個の試料のウォータハンマ強度を試験した。はじめ30cmの落下高さから上ダミーを試料の上に落とし、5cm間隔で落下高さを増やし(落下高さが60cm以上は10cm間隔)、試料中のガラスびんが1本でも破損したときの落下高さを「包装貨物試験ウォータハンマ落下強度」とした。
図10の肉厚分布A,B,Cのそれぞれについて、左側の四角印が「包装貨物試験ウォータハンマ落下強度」の平均値、右側の丸印が「単品ウォータハンマ試験強度」を示し、その上下の短い横線がバラツキの範囲を示している。
図10に示されるように、「単品ウォータハンマ試験強度」と「包装貨物試験ウォータハンマ落下強度」とはほぼ対応した関係にあるので、「単品ウォータハンマ試験強度」を測定すると共に、包装の仕様を考慮し、「包装貨物試験ウォータハンマ落下強度」を推定することができる。
実施例の試験装置の断面説明図である。 他の実施例の試験装置の断面説明図である。 保持手段の例の平面説明図である。 保持手段の固定手段の例の説明図である。 保持手段の他例の平面説明図である。 保持手段の他例の説明図である。 実施例の試験方法における衝撃エネルギーとびん底部の歪みの関係の説明図である。 比較例の試験方法の説明図である。 比較例の試験方法における衝撃エネルギーとびん底部の歪みの関係の説明図である。 実施例の試験方法と包装貨物としての試験方法を対比する説明図である。 包装貨物としての試験方法の説明図である。
符号の説明
1 びん
2 固定台部
3 クッション材
4 保持手段
5 錘
6 基台
7 柱部
8 ガイド
9 ストッパ
10 底板
11 保護板
12 スペーサ
13 固定手段
14 敷き板
15 落下試験機
16 落下面
17 試料台
18 下ダミー
19 試料
20 上ダミー
21 内孔
22 板材
23 アーム
24 先端部
25 パッキン材
26 ボルト
27 ナット
28 ベース板
29 スライド板

Claims (7)

  1. 固定台部の上にクッション材を介して保持手段を設け、該保持手段で内容物を充填しキャップを装着したびんをその重心よりも上で保持して該びんを空中に吊し、前記キャップの上に直接又は間接的に錘を落下させてびんに衝撃を与え、その落下エネルギーを徐々に増やしながら複数回錘の落下を繰り返し、びんが割れたときの錘の落下エネルギーに基づいてびんのウォータハンマ強度を試験することを特徴とするガラスびんのウォータハンマ強度試験方法。
  2. 固定台部と、該固定台部に載置されたクッション材と、該クッション材の上に載置され、内容物を充填してキャップを装着したびんをその重心より上で保持して該びんを空中に吊す保持手段と、前記キャップの上に落下させてびんに衝撃を与える錘とを有することを特徴とするガラスびんのウォータハンマ強度試験装置。
  3. 請求項2の試験装置において、前記固定台部が、基台と該基台から立設した柱部とを有するフレームの、前記柱部から側方に張り出し形成された、貫通穴を有する板状体であり、前記保持手段によって空中に保持されたびんが前記貫通穴の中に挿通して設けられるガラスびんのウォータハンマ強度試験装置。
  4. 請求項2の試験装置において、前記固定台部が複数の柱材であり、前記保持手段によって空中に保持されたびんが前記柱材の間に位置するように設けられるガラスびんのウォータハンマ強度試験装置。
  5. 請求項2の試験装置において、前記固定台部が筒状材であり、前記保持手段によって空中に保持されたびんが前記筒状材の中に位置するように設けられるガラスびんのウォータハンマ強度試験装置。
  6. 請求項2〜5のいずれかの試験装置において、前記キャップを覆い、かつ、下面がキャップ上面に接触するように保護板を設け、前記錘を該保護板上に落下させ、該保護板を介して間接的に前記キャップ上に錘を落下させるガラスびんのウォータハンマ強度試験装置。
  7. 請求項2〜6のいずれかの試験装置において、前記錘がシャフトの下端に錘本体を形成したものであり、前記錘が所定の軌道を上下するように前記シャフトが挿通するガイドを設けたウォータハンマ強度試験装置。
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