JP4521029B2 - サイトキサン抗体及びイムノアッセイ - Google Patents
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Description
サイトキサン(Cytoxan)は、かなり一般的に使用されている細胞毒性薬剤の一つである。一般的化学名が、シクロホスファミドである、この化学療法剤は、下式Iを有する:
該式II-Aの化合物及びその互変異性体、即ち該式II-Bの化合物は、不安定であるので、その存在を検出するためのイムノアッセイは、実用的ではない。イムノアッセイによって、該式II-Aの化合物及び/又はその互変異性体、即ち該式II-Bの化合物の、患者の血流中における存在を決定し、及び/又は該患者を治療するためには、該活性種、即ち該式II-A及び式II-Bの化合物をトラップする必要があった。これは、該式II-Bの化合物中に存在する活性種上のアルデヒド基を保護し、オキシム又はヒドラゾン等の保護アルデヒドを生成することにより行われていた。アルドホスファミドのアルデヒド基からのこれら保護基の生成は、保護アルデヒド基を生成するための公知の手段によって行うことができ、また血流中のこれら活性成分の存在は、この安定なトラップされた誘導体から、Ludeman等, J. Pharma. Sci., 1995, 84(4):393-398; Zon等, J. Pharma. Sci., 1982, 71(4):443-446;及びMcDonald等, Blood, 2003, 101(5):2043-2048に記載されているようにして、測定できる。身体内の該活性なシクロホスファミド種の濃度を追跡し、またその投与量を調節することによって、このシクロホスファミドの投与に起因して患者に引起される副作用を、より良好に抑制し、かつ制限することができる(これについては、Ren等, Clin. Pharmacol. Ther., 1998, 64(3):289-301; Petros等, Clin. Cancer Res., 2002, 8:698-705; Chen等, Cancer Research, 1995, 55:810-815を参照)。
下式IIIで表される化合物:
定義
本明細書の記載全体を通して、以下のような定義を理解しておくべきである:
用語「免疫原」及び「免疫原性」とは、生物内部で誘導され、製造され、もしくは発生させることのできる物質を意味するものとする。
用語「結合体」とは、2つの部分を相互に結合することによって形成される、いかなる物質を意味する。本発明による代表的な結合体は、上記式II-Bの化合物等の小分子と、担体又はポリアミンポリマー等の大きな分子、特にタンパク質とを一緒に結合することによって形成されるものを含む。該結合体において、該小分子は、該大分子上の1又はそれ以上の活性部位において結合することができる。
ここで使用する用語「スペーサ基」又は「スペーサ」とは、2又はそれ以上の、ハプテン、担体、免疫原、標識、又はトレーサ等といった、準構造体(substructures)を、CH2又は官能性結合基をもって結合する、化学的な構造体の一部を意味する。これらのスペーサ基は、本件特許出願の以下の記載において列挙されるであろう。スペーサ基の原子又は該スペーサ基内の連鎖の原子は、それ自体化学結合によって接続されている。中でも、好ましいスペーサは、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和の炭素鎖である。これらの炭素鎖は、また鎖中に、又はその末端に、1又はそれ以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロ原子」なる用語は、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される、炭素原子以外の原子を意味する。スペーサ基は、また該鎖の一部として、あるいは該鎖中の原子の一における置換基として、環式又は芳香族基を含むこともできる。
ここで使用する用語「免疫原性担体」とは、ハプテンと結合できる、免疫原性物質、一般的にはタンパク質を意味し、この場合には、上記式II-Cの化合物であり、これらハプテン誘導体が、免疫応答を誘発し、またこれらのハプテンと特異的に結合できる、抗体の生産を誘発することを可能にする。該免疫原性担体及び該結合基は、本件特許出願の以下の記載において列挙されるであろう。該免疫原性担体物質としては、タンパク質、糖タンパク質、結合ポリアミノ-多糖類、粒子、及び外来物質として認識され、結果として宿主から免疫学的な応答を誘発する核酸が挙げられる。該ポリアミノ-多糖類は、その調製に関して公知の手段の何れかを使用して、多糖類から製造できる。
免疫原性担体は、またポリアミノ-多糖類をも含むことができ、これらは、単糖類の反復的な縮合によって構築された、高分子量のポリマーである。多糖類の例は、デンプン、グリコーゲン、セルロース、炭水化物ガム、例えばアラビアガム、寒天等である。該多糖類は、またポリアミノ酸残基及び/又は脂質残基をも包含する。
該免疫原性担体は、また固体粒子を含むこともできる。該粒子は、一般的には少なくとも約0.02ミクロン(μm)、かつ約100μm未満、及び通常は約0.05〜10μmなる範囲の径を持つものである。この粒子は、有機又は無機、また膨潤性又は非-膨潤性、多孔質又は非-多孔質であってよく、最適には水に近い密度、一般的には約0.7〜1.5g/mLなる範囲の密度を持ち、また透明、部分的に透明、又は不透明であり得る物質で構成することができる。これらの粒子は、生物学的な物質、例えば細胞及び微生物であり得、その非-限定的な例としては、例えば赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ、連鎖球菌(Streptococcus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(E. coli)及びウイルスを包含する。これらの粒子は、また有機及び無機ポリマー、リポソーム、ラテックス、リン脂質小胞、又はリポタンパク質によって構成されていてもよい。
「ペプチド」とは、アミド(ペプチド)結合により、2又はそれ以上のアミノ酸が結合することにより形成されるいかなる化合物、通常はα-アミノ酸のポリマーであり、ここで各アミノ酸残基の該α-アミノ基(NH2末端基を除く)は、直鎖内の次の残基のα-カルボキシル基と結合している。ペプチド、ポリペプチド及びポリ(アミノ酸)等の用語は、ここではそのサイズに制限を設けること無しに、この種の化合物を意味する、同義語として使用する。この群の最大の構成員は、タンパク質と呼ばれる。
「標識」、「検出体分子」又は「トレーサ」とは、検出可能なシグナルを生成する、あるいはその生成を誘発することのできるいかなる分子である。該標識は、被検体、免疫原、抗体、又は他の分子、例えばレセプタ、あるいはレセプタと結合できる、リガンド、特にハプテン等の分子と、結合体を形成することができる。標識の非-限定的な例は、放射性同位元素、酵素、酵素フラグメント、酵素基質、酵素阻害剤、補酵素、触媒、発蛍光団、染料、化学発光体、発光体、又は増感剤;非-磁性又は磁性粒子、固体担体、リポソーム、リガンド、又はレセプタが挙げられる。
該用語「誘導体」とは、1又はそれ以上の化学反応によって、親化合物から作られた化学的な化合物又は分子を意味する。
上記式IIIの化合物との結合体を形成するための「担体」なる用語は、固体粒子及び/又は重合体ポリマー、例えば上記のような免疫原性ポリマーを意味する。該担体は、固体粒子であり、この固体粒子は、ポリアミンポリマーと結合し、該ポリマーで被覆され、あるいはまた該ポリマーに接着することができ、結果として該式IIIの化合物中の、末端官能基Xと結合するための1又はそれ以上の反応性部位を与えることができる。
「検量及びコントロール物質」とは、測定すべき薬物の既知量を含む、いかなる標準又は基準物質を意味する。薬物の濃度は、未知の検体について得られた結果と、該標準物質について得られた結果とを比較することにより計算される。これは、一般的には検量線を作成することによって行われる。
用語「生物学的サンプル」とは、生体又は以前生体であったもの由来の、いかなる量の物質を含むが、これらに制限されない。このような生体は、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、ウマ、及びその他の動物を含むが、これらに制限されない。このような物質は、血液、血清、血漿、尿、細胞、器官、組織、骨、骨髄、リンパ液、リンパ節、髄液組織、軟骨細胞、髄液マクロファージ、内皮細胞、及び皮膚を含むが、これらに制限されない。
イムノアッセイの構成において、上記式IIIの化合物から作られる結合試薬(conjugate reagent)は、該サンプル中の上記式II-A及び式II-Bの化合物を安定な形状において、トラップすることにより形成された該式II-Cの化合物と、本発明の抗体上の部位に対して競合する。本発明のイムノアッセイにおいて、本発明の抗体を製造するための免疫原は、該式IIIの化合物から調製される免疫原であり、そのリンカースペーサは、この分子の-(CH2)n-(Y)p-X-部分を構成する。該リンカーX及びスペーサ-(CH2)n-(Y)p-は、結合体及び免疫原を調製する上で公知である。イムノアッセイ用の結合体及び免疫原を調製するのに使用される該公知のスペーサ-リンカー基の何れかを、該式IIIの化合物において使用することができる。このような公知のリンカー及びスペーサは、米国特許第5,501,987号及び同第5,101,015号に記載されている。好ましいスペーサ基としては、前に記載したスペーサ基を包含する。特に好ましいスペーサ基は、炭素原子数1〜6のアルキレン、下式で表される基:
該免疫原又は担体と結合している、上記式IVのリガンド部分において、X'は-CH2-又は該スペーサと、好ましくは該ポリマー又は該担体又は免疫原上のアミノ基と結合する官能基である。この基X'は、該式IIIの化合物における末端官能基Xの結果であり、該担体又は免疫原の何れかとして使用される、該ポリアミンポリマー中のアミノ基と結合することができる。アミンと反応することのできるいかなる末端官能基は、該式IIIの化合物における官能基Xとして利用できる。好ましくはX内に含まれる、これらの末端官能基は、下式で表されるものである:
該カルボキシル基及び該活性エステルは、公知の手段によって、該担体又は免疫原性ポリマーとカップリングされる。タンパク質等の該ポリアミンポリマー上のアミノ基は、該スペーサと該ポリマー、免疫原又は担体及び/又は本発明の結合体とを結合するアミド基を生成する。
他方、Xが、上記式IIIの化合物における末端イソシアネート又はチオイソシアネート基である場合、ポリアミンポリマーの遊離アミンと反応させた場合、これらの基は、式IVの結合体又はX'が、下式で表される基:
該式IIIの化合物におけるXがアルデヒド基である場合、これらの化合物は、還元性のアミノ化によって、アミン結合を介して、該ポリアミンペプチド又は担体のアミノ基と結合することができる。還元性のアミノ化等によって、アミンとアルデヒドとを縮合する、いかなる公知法を利用して、この結合を形成することができる。この場合、式IVのリガンド部分のX'は、-CH2-である。
本発明によれば、アルデヒド保護基を形成するいかなる公知の方法を使用して、上記式II-A及び式II-Bの化合物を、上記式II-Cの化合物に変換することができる。本発明によれば、Rは公知のアルデヒド保護基を形成することができる。好ましいアルデヒド保護基は、アセタール及び環状アセタールを包含し、即ち式II-Bの化合物における-CH=Rは、下式で表されるものである:
本発明に従って、Rによって形成することのできる、アルデヒド保護基の好ましい基は、アルキルヒドラゾン及びフェニルヒドラゾン、例えば2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、オキシム及びセミカルバゾンである。該ヒドラゾンに関連して、上記式II-Cの化合物の-CH=Rは、下式で表される基:-CH=N-NR17R18を形成する。ここで、R17はフェニル基、置換フェニル基、低級アルキル基、又は次式で表される基:
上記式II-Cの化合物におけるアルデヒド保護基が、オキシムである場合、該式II-Cの化合物の-CH=R部分は、下式で表される基を形成する:-CH=N-OR8(ここで、R8は低級アルキル基である)。
アルデヒド基を該保護基の何れかに変換する、いかなる公知法を利用して、上記式II-Bの化合物のアルデヒド基に変換して、該式II-A及び式II-Bの化合物を、該式II-Cの化合物としてトラップする。
上記式IIIの化合物は、下式Vで表される化合物から製造することができる:
NH2-(CH2)n-(Y)p-X VI
(ここで、n、X、Y及びpは上記定義通りである)、下式VIIの化合物を製造する:
該式Vの化合物と上記式VIの化合物との反応は、アミンと塩素との縮合に関するいかなる公知の手段を用いて実施することができる。この合成において、該ホスホクロリドは、窒素原子に結合したエチレンクロリド部分における他の塩素基よりも、より高い反応性を持つ。従って、該ホスホロハライドは該式VIの化合物上のアミノ基と反応する。この反応を実施するに際して、X及びYによって表される置換基中に存在し得る、該反応性の官能基は、このスキームにおける後の段階において除去できる、様々な保護基によって保護される。このように、上記式VIIの化合物を生成する。該式VIIで表される化合物は、その二重結合を酸化してアルデヒド置換基に変えることにより、上記式VIIIの化合物に変換することができる。二重結合をアルデヒドに変換するいかなる公知の方法を利用して、この反応を実施することができる。好ましい酸化法は、オゾン分解法(ozonalysis)である。いかなる公知のオゾン分解法を利用することができる。該式IIIの化合物上のアルデヒドは、このアルデヒドを、アルデヒド保護基に変換することにより、該式IIIの化合物に変換することができる。いかなる公知のアルデヒド保護基を、この手順において使用することができる。安定な状態にある該式IIIの化合物の形成において、この化合物は、アルデヒド保護基として該アルデヒドを含む。
H2NNR7R9 X
(ここで、R7は低級アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基であり、R9は水素原子又は低級アルキル基である。)で表される化合物とを反応させることによって、ヒドラゾンを製造することである。
=Rがヒドラゾンを生成する、該式III及びII-Cの化合物は、該式VIII及びII-Bの化合物と該式Xの化合物との反応によって製造し得る。アルデヒドをヒドラゾンに変換するためのいかなる公知法を、この変換において使用することができる。ここにおいて、低級アルキル基なる用語は、1〜7個の炭素原子を含む一価のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソブチル、ペンチル基等を表すために使用する。置換フェニル基なる用語は、フェニルの1〜3、好ましくは1〜2個の位置において、ニトロ基又はハロゲン原子で置換された、フェニル部分を表し、特に好ましくは2,4-ジニトロ置換フェニル基である。
NH2OR8 XI
(ここにおいて、R8は低級アルキル基である)で表される化合物とを反応させることにより形成する。
これらのオキシムは、遊離のアルデヒドをオキシムに変換するための公知の手段を利用して形成する。
他方、該式III及びII-Bで表される化合物中の遊離アルデヒドは、セミカルバゾン、即ち該=Rが下式XII:
もう一つの好ましい保護基は、アセタール基、即ち該=Rが下式XIV:
R8OH XV
(ここで、R8は上記定義通りである)で表されるアルデヒドとを、アルデヒドをアセタールに変換するための公知の手段を利用して、反応させることにより生成される。
もう一つの好ましいアルデヒド保護基は、該=Rが下式XVI:
HO-R11-OH XVII
(ここで、R11は上記定義通りである)で表されるジオールとを、遊離アセタールを環式アセタールに変換するための公知の手段を用いて、反応させることにより生成される。
該低級アルキレン基なる用語は、炭素原子数2〜7の、二価の、好ましくは2つの異なる炭素原子上に配置された二価の結合を持つ飽和炭化水素基、例えば1,2-エチレン;1,3-プロピレン;1,4-ブチレン等を表す。
しかし、該結合体を製造するために、これらのポリマーは、該免疫原に対して要求されるような免疫学的な応答を引起す必要は無い。本発明によれば、上記式IIIの化合物におけるXによって表される様々な官能基は、該ポリマー内に含まれるアミノ基に官能基を結合するための公知の手段により、該ポリマー材料と結合体を形成することができる。好ましい態様によれば、該式IIIの化合物において、Xはカルボン酸基又はその活性エステルである。
本発明は、また上記式II-Cで表される該活性なシクロホスファミド代謝産物の、上記した安定型に対するモノクローナル抗体を含む、新規な抗体にも関連する。これらの抗体は、上記の免疫原を用いることによって作られる。本発明によれば、本発明に従って作られたこれらの抗体が、上記式II-A及び式II-Bで表される化合物の安定型と選択的に反応し、かつイムノアッセイを妨害するであろうシクロホスファミド又は他のシクロホスファミド類似体とは反応しないことを見出した。
本発明は、新規な抗体及び該式II-Cで表される活性なシクロホスファミド代謝産物の安定型に対するモノクローナル抗体に関連する。本発明の抗-血清は、宿主動物を本発明の免疫原で免疫化(immunize)することによって、有利に製造することができる。適当な宿主動物はゲッ歯目の動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット等、あるいはより高等な動物、例えばヤギ、ヒツジ、ウマ等を包含し、マウス、ラット及びウサギが特に好ましい。初期用量、出血及びブースターショットは、動物において免疫応答を誘発するための、許容されるプロトコールに従って与えることができる。好ましい態様では、マウスは、6ヶ月の期間に渡り、i.p.経路による100ug免疫原/マウスなる初期用量、及びその後1回以上の、100ug免疫原/マウスなるブースターショットを受けた。周期的な出血を通じて、該免疫化されたマウスの血液サンプルを、上記式II-Cの化合物の結合に対する免疫応答の発現について、公知のイムノアッセイを利用して観察した。これらの方法は、所望の活性を持つ抗-血清を生成する宿主のスクリーニングのための便利な方法を与える。
本発明の抗体は、該式II-Cで表される活性なシクロホスファミド代謝産物の安定型に対して選択的であり、かつこのようなシクロホスファミド又は他のシクロホスファミド類似体との、如何なる実質的な交叉反応性をも示さない。実質的な交叉反応性を示さないとは、本発明の抗体が、該式II-Cで表される活性なシクロホスファミド代謝産物の安定型に対して、10%以下の、好ましくは5%未満の、シクロホスファミド又は他のシクロホスファミド類似体との交叉反応性を持つことを意味する。
本発明によれば、該担体と上記式IIIの化合物との結合体は、該式IIIの化合物と結合体を形成した免疫原性タンパク質由来の、免疫原により生成された抗体と共に、患者サンプル中のシクロホスファミドの活性な代謝産物の存在を決定するための試薬として使用できる。これら試薬の製造において、該抗体を形成するのに使用した免疫原中に存在する基Rは、該イムノアッセイにおける試薬として使用する、上記式IIIの化合物と該担体との結合体中に存在するものと同一であるべきである。
最初にこのイムノアッセイを実施するに当たり、該サンプル中に存在する上記式II-Bの遊離アルデヒド代謝産物内の遊離アルデヒドを保護して、該式II-Cの化合物の形状とするように、該サンプルを処理する。該式II-Bのシクロホスファミド代謝産物内に存在する遊離アルデヒドを処理するためのいかなる手段を利用して、この処理手順を実施することができる。その好ましい方法は、本明細書において前に記載したように、従来知られている方法である。このように、サンプル中に存在する可能性のある、該活性代謝産物の遊離アルデヒドは、該代謝産物が安定となるように保護される。該式II-Bの遊離代謝産物を、該式II-Cの保護された代謝産物に変換することにより、上記式II-Aの互変異性体は、そのものの他の互変異性体に変換されるが、このことは、これら両者の互変異性体が平衡状態で存在し、結果としてこの処理の際に、該式II-Aの互変異性体が、該式II-Bの互変異性体を介して、該式II-Cの保護されたアルデヒドに変換されるという事実によるものである。
様々な手段を使用して、該抗体と結合した該式IIIの化合物から形成した、該添加された試薬結合体の量を測定することができる。その方法の一つにおいて、該添加された試薬結合体の該抗体への結合は、発蛍光団を持つ結合体の回転速度における低下を生じる。この液状混合物中の発蛍光団を持つ結合体の回転速度における減少量は、例えば米国特許第4,269,511号及び同第4,420,568号に記載されているような、蛍光分極技術によって検出することができる。
他方、これらのアッセイは、該抗体又は該試薬結合体の何れかを、固体支持体、例えばマイクロタイタープレート又は固体粒子を含む、いかなる他の公知の固体支持体に結合させることによって、実施することができる。このような固体粒子に抗体及びタンパク質を結合することは、当分野において周知である。このような結合を実施するために、いかなる公知方法を利用することができる。多くの場合において、測定を助けるために、該抗体、結合体又は固体粒子上に放射性標識又は酵素標識等の標識を、配置して、該抗体と結合した、又は結合していない、上記式IIIの化合物から形成した、該試薬結合体の量の測定を補助することができる。他の適当な標識は、発色団、発蛍光団等を包含する。
これら必須の試薬に加えて、補助的な試薬等の添加剤を含めることができ、その例は安定剤、緩衝液等を包含する。これら様々な試薬の相対的な量は、このアッセイの感度を実質的に最適にする、該試薬の溶液中の濃度を与えるために、広範囲で変えることができる。試薬は、溶液として与えることができ、あるいは溶解した際に該アッセイを実施するのに適当な濃度の試薬溶液を与えるような、通常は凍結乾燥された、乾燥粉末として与えることができる。
HCY:4-ヒドロキシシクロホスファミド;
HCYオキシム:アルドホスファミドのO-メチルオキシム
DMF:ジメチルホルムアミド;
EA:エチルアルコール;
DCM:ジクロロメタン;
DMAP:ジメチルアミノピリジン;
DMSO:ジメチルスルホキシド;
POCl3:オキシ塩化リン;
NHS:N-ヒドロキシサクシンイミド;
EDC:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩;
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド;
TLC:薄層クロマトグラフィー;
ANS:8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸;
i.p.:腹腔内;
HRP:ホースラディッシュ-ペルオキシダーゼ;
TMB:3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン;
TRIS:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩;
BSA:ウシ血清アルブミン;
KLH:キーホールリンペットヘモシアニン;
BTG:ウシチログロブリン;
PBS:リン酸緩衝塩水;
di:脱イオン水。
以下の実施例において、この仮特許のスキーム1及びスキーム2は、調製した特定の化合物を示し、またこれら実施例においてはその番号で言及する。これらスキームは、以下の通りである:
スキーム1:
N-ブチルリチウム(8.8mL、22.0mモル)を、室温にて、THF(100mL)中に溶解した3-ブテン-1-オール(1.44g、20.0mモル)に滴添し、得られた溶液を30分間攪拌し、次いで0℃まで冷却した。塩化ホスホラミド[1](5.44g、21.0mモル)のTHF(50mL)溶液を、迅速に添加し、攪拌を1時間続けた。N-(2-アミノエチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミドのTHF(80m)溶液を、30分掛けて滴添した。この反応混合物を、室温まで暖め、終夜攪拌を続けた。沈殿した塩を、セライトを介して濾過することにより除去し、得られた濾液を濃縮した。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン;50、60、及び65%)により精製して、無色のオイルとして化合物[3](3.35g、40%)を得た。
実施例2:HCYオキシムイソチオシアネート8の調製(スキーム2)
上記粗生成物 [5](上記TFA保護先駆物質603mg(1.36mM)から調製したもの)及びトリエチルアミン(0.378mL、2.72mモル)の、THF(10mL)に溶解した溶液を、4-イソチオシアナトベンゾイルクロリド(0.404g、2.04mモル)のTHF(20mL)溶液に、0℃にて滴添した。この反応系を室温まで加温し、2時間に渡り攪拌した。この混合物を濾過し、乾燥エーテルで洗浄し、濾液を濃縮した。この粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、9:1)により精製して、黄色のガム状物として化合物[8](0.528g、76%)を得た。
実施例3:HCYオキシムの調製
該HCYオキシムを、文献(Borch, R.F.& Valente, R.R., J. Med. Chem., 1991, 34(10):3052-3058)に記載された手順に従って調製した。この生成物を、収率44%にて単離した。
6.06mLのBTG(32.9mg/mL)を、50mMのリン酸緩衝液(50mM、pH 7.5)に溶解した液に、1.0mLの実施例1で調製した化合物[6](DMSO中33mg/mL)を滴下し、再度pHを7.5となるようにチェックした。この混合物を、室温にて18時間攪拌した。次いで、この免疫原性結合体を、透析(最初の透析に対して10%DMSO-リン酸緩衝液を用い、後に純緩衝液に代える)によって精製し、以前に記載された手順(Wu等, Bioconj. Chem., 1997, 8:385-390; Li等, Bioconj. Chem., 1997, 8:896-905; Salamone等, J. Forensic. Sci., 1998, pp.821-826)に従って特徴付けした。
実施例4b:活性化されたハプテン6を用いたKLH免疫原の調製
6.5mLのKLH(9mg/mL)を、50mMのリン酸緩衝液(50mM、pH 7.5)に溶解した液に、0.29mLの実施例1で調製した化合物[6](DMSO中33mg/mL)を滴下し、再度pHを7.5となるようにチェックした。この混合物を、室温にて18時間攪拌した。次いで、この免疫原性結合体を、透析(最初の透析に対して10%DMSO-リン酸緩衝液を用い、後に純緩衝液に代える)によって精製し、以前に記載された手順(Wu等, Bioconj. Chem., 1997, 8:385-390; Li等, Bioconj. Chem., 1997, 8:896-905; Salamone等, J. Forensic. Sci., 1998, pp.821-826)に従って特徴付けした。
20mLの、BSA(50mg/mL)を、50mMのリン酸緩衝液(50mM、pH 7.5)に溶解した液に、実施例2におけるようにして調製した、活性化されたイソチオシアネート[8](33mg/mLのDMSO溶液0.258mL)を滴下した。この混合物を、室温にて終夜(18時間)攪拌して、スクリーニング用の1:1プレート結合体(plate conjugate)を製造した。次いで、この結合体を、透析(最初の透析に対して10%DMSO-リン酸緩衝液を用い、後に純緩衝液に代える)によって精製し、以前に記載された手順(Wu等, Bioconj. Chem., 1997, 8:385-390; Li等, Bioconj. Chem., 1997, 8:896-905; Salamone等, J. Forensic. Sci., 1998, pp.821-826)に従って特徴付けした。
10匹の雌BALB/cマウスを、完全フロイント (Complete Freund's Adjuvant)中に乳化させた、上記実施例4a及び4bで製造した、HCYオキシム-BTG又はHCYオキシム-KLHを、100μg/マウスにて、i.p.経路で免疫化した。これらマウスを、不完全フロイント補助剤(Incomplete Freund's Adjuvant)中に乳化させた、同一の免疫原、100μg/マウスにて、この初期注射の4週間後に一度、追加免疫化処理した。この追加免疫化の10日後に各マウスからのテストブリードを、眼窩ブリードによって得た。これらテストブリード由来の抗-血清は、実施例8a及び8bで評価されるように、HCYオキシム抗体を含んでいた。融合の4日前のモノクローナル抗体に関連して、これらのマウスに、連続して3日間、PBS中の100μgのHCYオキシム-BTG又はHCYオキシム-KLH(一次注射による)を、i.p.経路で注射した。選択したマウスから脾細胞を単離し、Coligan, J.E.等編, Current Protocols in Immunology, 1992, 2.5.1-2.5.8, Wiley & Sons, NYに記載されている方法に従って、50%ポリエチレングリコール1500を使用して、2×107 SP2/o細胞と融合した。該融合細胞を、20%のフェータルクローン(FetalClone) I、2%のL-グルタミン(100mM)及び2%の50X HATを補充した、DMEM/F12中で、10枚の96-穴プレート上にプレーティング(播種)した。2週間後、該ハイブリドーマ上澄を、競合ELISAによって抗-HCYオキシム抗体の存在につきアッセイした(実施例8b)。正の結果を与えたウエルを展開し、再度同一の方法によりスクリーニングした。正のクローンを、ELISAによって、HCYオキシムの結合について確認した(実施例8a及び9)。ELISAによって正の結果を与えたクローンを、Coligan, J.E.等編, Current Protocols in Immunology, 1992, 2.5.8-2.5.17, Wiley & Sons, NYに記載されている方法に従って、限界希釈法によって、1又は2回サブクローニングした。
HCYオキシムの濃度を測定するためのELISA法は、タンパク質結合について最適化され、またプレート当たり96ウエルを含む、ポリスチレンマイクロタイタープレート(ヌンクマキシソープ(Nunc MaxiSorp) C8及びF8イムノモジュール(Immunomodule))で行った。0.05M重炭酸ナトリウム溶液(pH=9.6)中の、1.25μg/mL(表1)又は5μg/mL(表2)の、HCYオキシム-BSA結合体300μLを添加することにより、各ウエルを、HCYオキシム-BSA結合体(実施例5におけるように調製)で被覆し、室温にて3時間インキュベーションした。これらのウエルを、0.05M重炭酸ナトリウム溶液(pH=9.6)で洗浄し、次いで室温にて30分間、400μLの5%スクロース、0.2%のナトリウムカゼイネート溶液で遮断した。該予備被覆(post-coat)溶液を除去した後、これらのプレートを37℃にて終夜乾燥させた。
HCYオキシム抗体(実施例6において製造)をスクリーニングするためのELISA法は、実施例5に記載したように、HCYオキシム-BSAによって免疫化したマイクロタイタープレートを用いて行った。この抗体スクリーニングアッセイは、該抗-血清含有HCYオキシム抗体を、0.1%BSA及び0.01%チメロサールを含有するリン酸緩衝塩水中に、1:100、1:1,000、1:10,000及び1:100,000倍に希釈することによって行った。モノクローナル抗体の評価のために、実施例8bの手順により、抗体の存在について正であることが分かっている実施例6の、ハイブリドーマ上澄を、1:2、1:4、1:8、1:16等に希釈した。HCYオキシム-BSAで免疫化したウエル(実施例7で調製)の各々に対して、100μLの希釈した抗体を添加し、室温にて10分間、振とうしつつインキュベートした。このインキュベーション中、抗体は、該ウエル内で該HCYオキシム-結合体と結合する。これらプレートのウエルを0.02M TRIS、0.9%NaCl、0.5%ツイーン(Tween)-80及び0.001%チメロサール(pH 7.8)で3回洗浄して、あらゆる未結合の抗体を除去した。該ウエル内の、HCYオキシム-BSA結合体と結合した、HCYオキシム抗体の量を決定するために、0.1%BSA、0.05%ANS、0.01%チメロサールを含むPBS中に、1/2400倍に希釈された、100μLのヤギ抗-マウス抗体-HRP酵素結合体(ジャクソンイムノリサーチ(Jackson Immuno-research)社)を、各ウエルに添加したが、これは、ネズミの免疫グロブリンと特異的に結合することができ、また基質と共にインキュベートした場合には、着色された生成物を生成する。
HCYオキシムモノクローナル抗体(実施例6において製造)をスクリーニングするためのELISA法は、実施例5に記載したように、HCYオキシム-BSAによって免疫化したマイクロタイタープレートを用いて行った。HCYオキシム-BSAで免疫化したウエル(実施例7において調製)の各々に、この抗体スクリーニングアッセイは、該抗-血清含有HCYオキシム抗体を、0.1%BSA及び0.01%チメロサールを含有するリン酸緩衝塩水50μL及び次にモノクローナル培養上澄50μLを添加し、振とうしつつ室温にて10分間インキュベートした。このインキュベーション中、抗体は、該ウエル内で該HCYオキシム-結合体と結合する。これらプレートのウエルを0.02M TRIS、0.9%NaCl、0.5%ツイーン(Tween)-80及び0.001%チメロサール(pH 7.8)で3回洗浄して、あらゆる未結合の抗体を除去した。該ウエル内の、HCYオキシム-BSA結合体と結合した、HCYオキシム抗体の量を決定するために、0.1%BSA、0.05%ANS、0.01%チメロサールを含むPBS中に、1/2400倍に希釈された、100μLのヤギ抗-マウス抗体-HRP酵素結合体(ジャクソンイムノリサーチ(Jackson Immuno-research))を、各ウエルに添加したが、これは、ネズミの免疫グロブリンと特異的に結合することができ、また基質と共にインキュベートした場合には、着色された生成物を生成する。
HCYオキシム濃度を測定するためのELISA法は、実施例5に記載した、HCYオキシム-BSAによって免疫化したマイクロタイタープレートを用いて行った。HCYオキシム、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン及びメクロレタミンを、0.01〜10,000ng/mL又は100,000ng/mLなる濃度範囲に渡り、PBSで10倍希釈した。このアッセイは、測定すべき被検体50μLを、50μLの、実施例8aにおいて測定した力価まで希釈した、抗体(実施例6において、実施例4a及び4bの免疫原を使用して製造)と共にインキュベートすることにより行った。10分間のインキュベーション(室温, 振とうしながら)中に、該ウエル内の該HCYオキシム結合体に対する抗体の結合と、溶液中の被検体との競合が見られる。このインキュベーション後、該プレートのウエルを0.02M TRIS、0.9%NaCl、0.5%ツイーン(Tween)-80及び0.001%チメロサール(pH 7.8)で3回洗浄して、あらゆる未結合の物質を除去した。該ウエル内の、HCYオキシム-BSA結合体と結合した、HCYオキシム抗体の量を決定するために、0.1%BSA、0.05%ANS、0.01%チメロサールを含むPBS中に、1/2400倍に希釈された、100μLのヤギ抗-マウス抗体-HRP酵素結合体(ジャクソンイムノリサーチ)を、各ウエルに添加したが、これは、ネズミの免疫グロブリンと特異的に結合することができ、また基質と共にインキュベートした場合には、着色された生成物を生成する。室温にて振とうしつつ10分間インキュベートしたが、その間に該ヤギ抗-マウス抗体-HRP酵素結合体は、該ウエルにおけるHCYオキシム抗体と結合した。その後、該プレートを、再度3回洗浄して、未結合の二次結合体を除去した。
Claims (8)
- ヒトのサンプル中の、下式、
で表される遊離アルデヒド含有化合物の形態で存在し得る、シクロホスファミドの活性な代謝産物の存在を検出するためのイムノアッセイであって、該サンプルを処理して、該化合物中の該遊離アルデヒドを、下式:
(ここで、=Rはアルデヒド保護基を形成する)、で表される保護されたアルデヒドの形態で保護する工程、
該処理されたサンプル;該保護されたアルデヒドとは、実質的選択的に反応性であり、かつシクロホスファミドとは実質的に交叉反応性を示さない抗体;及び担体と、下式、
(ここで、Rは上記定義通りであり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合することのできる、末端官能基であり、nは1〜6なる範囲の整数であり、及びpは0〜1なる範囲の整数である)で表されるリガンドとの結合体;
の混合物を提供する工程、
該混合物中で、該処理サンプル中に存在する該保護されたアルデヒド及び該結合体を、該抗体と結合させ、その後、該抗体と結合している、該混合物中の該結合体の量を測定する工程とを含み、該サンプル中の該活性シクロホスファミド代謝産物の存在を、検出できることを特徴とするイムノアッセイ。 - 前記抗体が、前記リガンドと結合した免疫原性のポリマーを含む免疫原から生成したものであり、該免疫原及び該結合体を構成する該リガンドにおける、及び前記保護されたアルデヒドにおけるRは同一である、請求項1記載のイムノアッセイ。
- ヒトのサンプル中の、下式、
(ここで、=Rは保護されたアルデヒド基を形成する)で表される保護されたシクロホスファミドの代謝産物の存在を検出するためのイムノアッセイであって:
前記サンプル;該保護されたシクロホスファミドの代謝産物とは、実質的選択的に反応性であるが、シクロホスファミドとは実質的に交叉反応性を示さない抗体;及び担体と、下式で表されるリガンドとの結合体との混合物を提供する工程:
(ここで、Rは上記定義通りであり、Yは有機スペーサ基であり、Xはポリアミンポリマーと結合することのできる、末端官能基であり、nは1〜6なる範囲の整数であり、及びpは0〜1なる範囲の整数である)、
該混合物中で、該サンプル中の該保護されたシクロホスファミドの代謝産物及び該結合体を、該抗体と結合させ、その後、該抗体と結合している、該混合物中の該結合体の量を測定する工程とを含み、それによって、該保護されたシクロホスファミドの代謝産物の存在を検出することを特徴とする、上記イムノアッセイ。 - 抗体が、リガンドと結合した免疫原性ポリマーを含む免疫原から生成したものであり、該免疫原及び該結合体を構成する該リガンド、及び保護されたアルデヒドにおけるRは同一である、請求項3記載のイムノアッセイ。
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