JP4514365B2 - 金属インゴットの製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶解炉で溶解した金属を所定形状に成形するインゴット製造装置に関する。本発明は、鋳造品から回収されたリターン材を鋳造材料として再利用するためにインゴット化する装置として有用であり、特に、燃焼しやすく溶湯の状態が不安定なマグネシウムあるいはマグネシウム合金用として好適である。
【0002】
【従来の技術】
金属を製品に鋳造した場合には、製品部分以外の、例えば湯道や湯口にも金属が鋳込まれるが、それら使用しない部分の金属は製品部分から切り離されて回収され、鋳造材料として再利用することが通常行われている。再利用に供されるリターン材は溶解され、精練工程で不純物が除去されて高純度に再生された後、例えば、インゴットケースに溶湯を鋳込んでインゴット化される。
【0003】
ところで、マグネシウムあるいはマグネシウム合金(以下、単にマグネシウムと称する)も上記のようにして再利用が行われているが、マグネシウムは著しく活性であることから、高温で酸化しやすく燃焼するといった特性を有している。このため、溶解中は防燃フラックスを添加するなどして燃焼を防止しているとともに、インゴットケースへの鋳込み時にも、インゴットケース内に予め防燃フラックスを添加して防燃ガス雰囲気を発生させ燃焼を抑えることが行われている。しかしながら、防燃フラックスの添加は有害ガスの発生を招くので、リターン材のインゴット化設備は環境を考慮して立地条件がかなり限定されていた。
【0004】
そこで近年では、とりわけインゴットケースへの鋳込み時において、防燃ガスとして適宜濃度のSF(六フッ化硫黄)ガスの利用が検討され、実施が試みられている。SFガスは空気よりも比重が大きく、このSFガスをインゴットケース内に供給しながら鋳込むと、マグネシウムとSFガスが反応して溶湯表面に化合物が膜状に生成し、大気接触による溶湯の燃焼が抑えられるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、溶湯表面に生成する防燃膜は、インゴットケースに鋳込まれる溶湯が流動したり空気の流れが接触したりすることによって容易に破壊されやすく、このため、膜が破壊して現出する溶湯の露出部分に燃焼が生じてしまう。この現象を避けるには、マグネシウムの溶湯表面に対し常に十分なSFガスを供給すればよいのだが、これではSFガスの使用量が多くなってしまいコストの上昇を招く。また、SFガスは濃度が高いと腐食性が高まり、このため、流出したSFガスによって周辺機器に錆びが発生するといった問題がある。さらに、マグネシウムのインゴットを安全かつ効率よく製造する設備が従来はないといった抜本的な課題もあった。
【0006】
よって本発明は、マグネシウム等の金属を溶湯からインゴット化させるにあたり、防燃ガスを無駄なく使用することができるとともに、安全かつ効率的な操業を可能とする金属インゴットの製造装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明は、傾動可能に支持され、傾動状態でマグネシウムあるいはマグネシウム合金の溶湯を注湯する注湯部を有する溶解炉と、この溶解炉の注湯部からマグネシウムあるいはマグネシウム合金の溶湯が注湯されるとともに、該溶湯を凝固させてインゴットに成形するインゴットケースと、このインゴットケースを冷却する冷却手段と、インゴットケースで成形されたインゴットをインゴットケースから排出させる排出手段とを備え、前記インゴットケースは、円筒状の内筒を備え、前記円筒状の内筒は、前記溶湯の注湯口と防燃ガスを供給するガス供給口が設けられ、且つ、着脱自在なプラグと前記内筒内に摺動自在に挿入されているプッシャにより密閉空間とされていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、溶解炉からインゴットケースに注湯された溶湯がインゴットケース内で成形され、排出手段により、成形されたインゴットがインゴットケースから排出される。インゴットケースに注湯された溶湯は冷却手段により冷却されるので、速やかに凝固してインゴットに成形される。また、溶湯の注湯からインゴットケースでの凝固・成形までの過程が時間的および距離的に短いので、その過程にSFガス等の防燃ガスを使用しても、その防燃ガスの使用量は少なくて済むとともに、流出を極力抑えることができる。これらの結果、インゴットケースへの注湯から凝固するまでの間の溶湯の燃焼が効果的に防止されるとともに、安全かつ効率的な操業が可能となる。
【0009】
溶湯の燃焼を抑える防燃ガスは、溶解炉やインゴットケースの内部の他に、溶解炉からインゴットケースに溶湯を注湯する部分にも供給される。これら防燃ガス供給部分は、例えば、溶解炉には蓋を設けたり、注湯部やインゴットをできるだけ密封した構造とするなど、防燃ガスの流出が生じて溶湯が大気に曝露することが極力生じない構成とすることが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[1]第1実施形態(図1〜図4)
図1は第1実施形態に係るインゴット製造装置の平面図、図2は図1のII方向矢視図である。このインゴット製造装置は、マグネシウムあるいはマグネシウム合金(以下、金属と称する)のリターン材を溶解してインゴットに成形する装置であり、溶解炉10とインゴット成形装置30とから構成されている。以下、これらを順に説明していく。
【0011】
A.溶解炉
溶解炉10は、直方体状または円筒状のケース11の中に円筒状の坩堝12が組み込まれ、ケース11に坩堝12を囲むコイル(図示略)が配線された坩堝型誘導炉であって、コイルに誘導電流を流すことにより、坩堝12内の金属に渦電流を発生させて該金属を加熱・溶解する。坩堝12の開口は、アーム13に支持された蓋14によって開閉される。蓋14を開けた状態で、リターン材が坩堝12内に投入されて溶解される。溶湯中には酸化物や金属滓等の不純物が混入している場合が多いが、これら不純物は図示せぬバブリング装置等によって浮上させられ、これによって溶湯を高純度に再生することが行われる。不純物は、柄杓等の適宜手段によって除去される。坩堝12内の溶湯表面には、溶湯の燃焼を抑える防燃ガスとしてSFガスが供給される。SFガスは溶湯と反応して溶湯表面に化合物が膜状に生成し、これによって大気接触による溶湯の燃焼が抑えられる。
【0012】
溶解炉10は、図1において左右に配されたフレーム15に、互いに同軸な一対の傾動軸16を介して傾動可能に支持されている。傾動軸16は溶解炉10におけるインゴット成形装置30側の上端部に固定された左右一対のブラケット17に固定されているとともに、フレーム15の上端部に固定された軸受18に回転自在に支持されている。溶解炉10は、シリンダ19によって、坩堝12が直立した状態から、傾動軸16を支点としてインゴット成形装置30側に傾動させられる。シリンダ19の駆動方式は任意であるが、この場合はサーボモータを駆動源とするジャッキ式が好適に用いられる。
【0013】
溶解炉10の上端部のインゴット成形装置30側には、該装置30方向に延びる第1の注湯管(注湯部)21が設けられ、この第1の注湯管21の先端は、タンディッシュ23内に挿入されている。タンディッシュ23は小径筒23aと大径筒23bとが同軸的に連結された軸方向が左右方向に延びる円筒状の受け容器であり、第1の注湯管21は左側の小径筒23aに挿入されている。第1の注湯管21のタンディッシュ23への挿入部は、傾動軸16の軸線にほぼ交差して配されているので、溶解炉10が傾動しても、その挿入部が大きく変位することはない。タンディッシュ23に形成された第1の注湯管21の挿入口(図示略)は、溶解炉10の傾動に伴って第1の注湯管21が変位することを許容する長孔に形成されている。タンディッシュ23の大径管23bには、インゴット成形装置30側に向かって、かつ、下方に傾斜して延びる第2の注湯管22が連結されている。そして、この第2の注湯管22は、インゴット成形装置30のインゴットケース40内に挿入されている。なお、上記第1,第2の注湯管21,22およびタンディッシュ23は、溶湯温度の低減を抑える目的で適宜な手段により加熱される。
【0014】
溶解炉10の傾動は、坩堝12内に設けられた図示せぬ傾動センサに基づき制御される。この傾動センサは、第1の注湯管21から溶湯が注湯されるレベルに溶湯が達したことを検出するもので、溶解炉10は傾動センサが湯面を検出するまで傾動し、それ以降は停止する。次に、インゴット成形装置30について説明する。
【0015】
B.インゴット成形装置
図3(a),(b)はそれぞれインゴット成形装置30の平面図、正面図である。インゴット成形装置30は、図3(b)に示すように、右側の第1の基台31と左側の第2の基台32とを有している。第1の基台31上には、ガイドレール33に沿って左右方向に移動自在に移動台34が設置されている。この移動台34の移動は、第2の基台32上に水平に配置されたメンテナンスシリンダ35によってなされる。メンテナンスシリンダ35は、第2の基台32上に固定されたシリンダ本体35aとピストン35bとを備え、可動側のピストン35bが移動台34の所定箇所に連結されている。
【0016】
移動台34上には、インゴット排出シリンダ36が、メンテナンスシリンダ35と平行に配設されている。このインゴット排出シリンダ36は、メンバ37を介して移動台34の右端部上に固定されたシリンダ本体36aと、ピストン36bとを備えている。可動側のピストン36bの先端には、該ピストン36bと同軸的にプッシュロッド38が連結されている。このプッシュロッド38は、移動台34上の左側に固定されたガイド39に支持され、かつ、このガイド39に摺動しながらピストン36bの伸縮と一体的に軸方向に移動する。
【0017】
上記インゴットケース40は、第1の基台31上の移動台34と第2の基台32とに架け渡された状態で設けられている。インゴットケース40は、図4に示すように、円筒状の内筒41と、この内筒41を被覆する三分割された円筒状の外筒(42,43,44)とを備えており、内筒41内に溶湯が注湯されてインゴットが成形される。内筒41内には、溶湯の湯面を検出して所定量(例えば内筒41の内径の半分の高さ)の溶湯が注湯されたことを検出する図示せぬ湯面センサが設けられている。この湯面センサが湯面を検出すると、上記溶解炉10の傾動が停止し、溶湯が切れるように逆傾動して任意の角度で停止するように制御される。
【0018】
外筒は、内筒41の両端部にそれぞれ摺動自在に嵌め込まれる端部外筒42,43と、これら端部外筒42,43の間の主外筒44の計3つの組み合わせからなっている。主外筒44は、内筒41に固着されている。この主外筒44の上部には、図示せぬ吊り下げ装置のフックが掛けられる一対のリング45が固定されている。また、左右の端部外筒42,43には、それぞれブラケット42A,43Aが固着されている。
【0019】
内筒41の中空には、図4で右側の開口のプッシャ挿入口41aからプッシャ46が摺動自在に挿入されている。また、内筒41の図4で左側の開口はインゴット排出口41bとされ、このインゴット排出口41bは、着脱自在なプラグ47によって封止される。内筒41の外周面には1本の溝48が螺旋状に形成されており、この溝48は、主外筒44の内周面に覆われ、水あるいは油等の冷媒を循環させるための冷媒通路48とされる。主外筒44の下部には、冷媒通路48の両端に通じる冷媒口49がそれぞれ形成されており、一方の冷媒口49には冷媒供給菅50が、また、他方の冷媒口49には冷媒排出管51が接続される。
【0020】
インゴットケース40には、溶湯の注湯口60が形成されているとともに、内筒41内に防燃ガスを供給するためのガス供給口61が形成されている。この場合、注湯口は右側の端部外筒43および内筒41に形成されており、端部外筒43が内筒41に嵌め込まれてセットされた状態で、外部から内筒41内に通じる。また、ガス供給口61は2つあって、1つは内筒41における注湯口60の右側からブラケット43Aを貫通し、もう1つは内筒41の左端部から左側の端部外筒42を貫通している。いずれのガス供給口61も、内筒41の中空の上方に通じている。
【0021】
上記インゴットケース40は、各端部外筒42,43が内筒41にセットされた状態で、図3(b)に示すように、右側のブラケット43Aが第1の基台31上の移動台34に固定される一方、左側の端部外筒42が第2の基台32に直接固定されている。そして、プッシャ46には、上記プッシュロッド38の先端が連結されており、プッシャ46は、インゴット排出シリンダ36によって内筒41内を往復動する。インゴットケース40内に溶湯が注湯される際には、プッシャ46が最も後退して図4に示すように右端に移動した状態とされ、このとき、右側のガス供給口61および注湯口60は、プッシャ46に閉塞されず開放される。
【0022】
インゴットケース40内で凝固し成形されたインゴットは、インゴット排出シリンダ36のピストン36bの進出に伴いプッシュロッド38が内筒41内に挿入されることにより、プッシャ46によってインゴット排出口41bから押し出され、排出される。排出されたインゴットは、第2の基台32に設置された樋状のシュート52で受けられ、このシュート52を滑り落ちて、例えばバケットに収集されたり、あるいはコンベヤに移送される。
【0023】
図3(b)に示すように、第2の基台32上には架台70が設置されており、この架台70には、上記プラグ47をインゴットケース40のインゴット排出口41bに対して着脱するプラグ開閉装置74が設けられている。このプラグ開閉装置74は2つのシリンダ71,72から構成されている。一方のシリンダ71は回転シリンダであって、該シリンダ71は、架台70の下面に固定されたシリンダ本体71aと、回転ロッド71bと、回転ロッド71bに沿って摺動し、かつ、回転ロッド71bと一体に回転する回転スリーブ71cとを備えている。回転スリーブ71cには、該スリーブ71cから垂下するアーム71dが固定されており、このアーム71dの先端に、プラグ47が固定されている。
【0024】
他方のシリンダ72は伸縮シリンダであって、該シリンダ72は、架台70の上面に固定されたシリンダ本体72aと伸縮ピストン72bとを備え、ピストン72bの先端が、回転シリンダ71の回転ロッド71bに装着されたスライドスリーブ71eにステー73を介して固定されている。スライドスリーブ71eは、回転ロッド71bと相対回転可能、すなわち回転ロッド71bが回転しても回転せず、かつ、回転ロッド71bに沿って移動可能である。そして、このスライドスリーブ71eに、回転スリーブ71cが回転自在に連結されている。
【0025】
上記プラグ開閉装置74によると、プラグ47がインゴットケース40のインゴット排出口41bを塞いでいる状態から、伸縮シリンダ72のピストン72bが後退するとプラグ47はインゴット排出口41bから内筒41の軸方向に沿って離れ、次いで回転シリンダ71の回転ロッド71bが一方向に回転するとアーム71dが旋回してプラグ47は側方に移動する。以上によってプラグ47はインゴット排出口41bから退避し、その状態でインゴット排出口41bからインゴットを排出させることができる。
【0026】
以上が第1実施形態のインゴット製造装置であり、次いで該装置の動作を説明する。
C.インゴット製造装置の動作
初期設定として、インゴット成形装置30のインゴット排出シリンダ36によりプッシャ46を最も後退させてインゴットケース40(の内筒41)の内部に注湯および防燃ガスの供給を可能な状態とし、プラグ47によりインゴットケース40のインゴット排出口41bを封止しておく。そして、インゴットケース40の冷媒通路48に冷媒を循環させるとともに、防燃ガスであるSFガスをガス供給口61からインゴットケース40内に供給する。また、タンディッシュ23内にもSFガスを供給する。
【0027】
溶解炉10を傾動シリンダ19によって傾動させ、坩堝12内の溶湯を第1の注湯管21からタンディッシュ23に注湯する。溶湯は、さらに第2の注湯管22を経てインゴットケース40内に注湯される。溶解炉10の傾動角度は、上述したように傾動センサに基づき第1の注湯管21から溶湯が注湯されるレベルに制御される。インゴットケース40内に注湯された溶湯が所定量(例えば内筒41の内径の半分の高さ)に達しことが上記湯面センサによって検出されたら、溶解炉10の傾動が停止し、次いで溶解炉10が、溶湯が切れるように逆傾動して任意の角度で停止し、1回分の注湯が終了する。
【0028】
インゴットケース40内に注湯された溶湯は、冷媒通路48を循環する冷媒により冷却され、速やかに凝固して成形される。また、タンディッシュ23内およびインゴットケース40内に供給されるSFガスの作用により、溶湯の燃焼が抑えられる。凝固に要する設定時間が経過したら、プラグ開閉装置74によりプラグ47を開けて退避させ、次いで、インゴット排出シリンダ36によりプッシュロッド38を進出させてプッシャ46によりインゴットをインゴット排出口41bから押し出し、排出する。排出されたインゴットはシュート52で受けられ、このシュート52を滑り落ちて、上述したようにバケットに収集されたり、あるいはコンベヤで移送される。
以上で1つのインゴットの製造が終了し、この製造過程を繰り返すことにより、連続的にインゴットを製造することができる。
【0029】
次に、インゴットケース40をメンテナンスする際の動作を、図3(b)を参照して説明する。メンテナンスの内容としては、例えば内筒41内、注湯口60およびガス供給口61の清掃や補修等が挙げられる。
インゴットケース40の主外筒44のリング45に図示せぬ吊り下げ装置のフックを掛けてインゴットケース40を吊り下げ可能の状態とし、メンテナンスシリンダ35のピストン35bを後退させて移動台34を図3(b)において右側に移動させる。移動台34が移動すると、ブラケット43Aを介して右側の端部外筒43とが移動し、この端部外筒43が内筒41から抜ける。次いで、吊り下げ装置により内筒41および主外筒44を第1の基台31側に水平に移動させ、第2の基台32に固定されている左側の端部外筒42から内筒41を抜く。これにより、左右の端部外筒42,43が内筒41および主外筒44から分割されるので、必要な部分のメンテナンスを行うことができる。
【0030】
上記インゴット製造装置によれば、溶解炉10からインゴットケース40への溶湯の注湯経路が短く、しかも、注湯時のインゴットケース40内は、注湯口60およびガス供給口61があるものの、ほぼ密閉空間となっているので、SFガスの流出はほとんど起こらない。また、インゴットケース40に注湯された溶湯は冷媒通路48を循環する冷媒により冷却され速やかに凝固する。したがって、SFガスによる金属の防燃効果が大きく、SFガスの使用量も少なくて済み、その結果として安全かつ効率的にインゴット製造の操業を行うことができる。
【0031】
また、溶湯の注湯経路、すなわち第1の注湯管21から、タンディッシュ23、第2の注湯管22を経てインゴットケース40内へ流れる溶湯の経路は、ジグザク状となっているので、溶湯の流れが緩衝されてインゴットケース40内へは溶湯が穏やかに注湯される。このため、溶湯の乱流や空気の巻き込み、あるいは注湯口60からの溶湯の跳ね返り等が起こりにくくい。
【0032】
なお、上記実施形態では、インゴットケース40を冷却するための冷媒通路は内筒41に溝48として形成されているが、冷媒通路は、この他に、左右の端部外筒42,43、プッシャ46、プラグ47等に設けることができ、これによって冷却効率の向上を図ることができる。
【0033】
次に、本発明の第2,第3実施形態を説明する。なお、これら実施形態で参照する図において上記第1実施形態と同一構成要素には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。
【0034】
[2]第2実施形態(図5,図6)
第2実施形態では、インゴットケース40の主外筒44から内筒41内に向けて注湯口60が形成されており、この注湯口60に円筒状のタンディッシュ80が設置されている。第2実施形態では注湯管が1本であり、その注湯管21は、図6に示すように溶解炉10を傾動させると先端がタンディッシュ80の直上に配置され、溶湯はタンディッシュ80を経てインゴットケース40内に注湯される。インゴットで成形されたインゴットは、上記第1実施形態と同様の動作で排出される。
【0035】
[3]第3実施形態(図7〜図12)
次に、図7〜図12を参照して本発明の第3実施形態を説明する。この第3実施形態では、インゴットケースの別形態を示すとともに、そのインゴットケースに適合した坩堝の注湯管およびその注湯管の加熱手段の一具体例を示す。
【0036】
図7に示すように、第3実施形態では溶解炉10の傾動軸16がフレーム15の上端の成形装置30側の面に固定されており、この傾動軸16を支点として溶解炉10はシリンダ19により傾動させられる。第3実施形態でも注湯管は1本であるが、その注湯管90は、図8に示すように、坩堝12の上端より所定深さ至った箇所から成形装置30側(図8で左側)に向かって斜め上方に延びている。図7に示すように、注湯管90は、その先端部の下面部分が傾動軸16の軸線に交差して配されている。
【0037】
図8に示すように、坩堝12への注湯管90の接続口91の高さは、坩堝12内の溶湯面M1よりも同等かそれよりも低く設定されている。換言すると、溶湯の量は溶湯面M1が接続口91よりも高いレベルになるように設定される。また、坩堝12の内面には、接続口91を覆う筒状のカバー92が設けられている。このカバー92は坩堝12の軸方向に沿って延びており、溶湯内に所定深さ入り込み、かつ溶湯面M1上に浮遊する酸化物や金属滓等の不純物層M2から上方の空間に突出する長さを有している。そしてその上端開口は、坩堝12の内部に向かうにしたがって下方に傾斜する斜面に形成されている。カバー92の下端開口から溶湯がカバー92内に入り込み、溶解炉10が注湯する側に傾動すると、カバー92内の清浄な溶湯が接続口91から注湯管90へ導入されていく。そして、その溶湯は注湯管90から溶湯受け93を経てインゴットケース100内に注湯される。
【0038】
図9は、そのインゴットケース100を示している。このインゴットケース100は、上記第1実施形態の内筒41と外筒42,43,44からなる二重構造のインゴットケース40とは異なり、単筒によって構成されている。このインゴットケース100の中空には、図9における右側の開口のプッシャ挿入口100aからプッシャ46が摺動自在に挿入される。また、図9における左側の開口のインゴット排出口100bは、上記第1実施形態と同様にしてプラグ47で封止される。また、右側の上部には注湯口101が形成されており、さらに、両端部の上部には、中空の長手方向中央部に向かって斜めに延びるガス供給口102がそれぞれ形成されている。
【0039】
図8に示すように、インゴットケースの注湯口101には、注湯管90から注湯される溶湯を受けてインゴットケース100内に導く上記溶湯受け93が配されている。この溶湯受け93の注湯管90側の先端は注湯を受けるように斜面に形成されている。溶湯受け93は、インゴットケース100に固着されていてもよく、また、注湯管90の先端にヒンジを介して連結され、インゴットケース100の注湯口101に載置された状態とされていてもよい。
【0040】
インゴットケース100の下半分の半円筒部には、図10(a),(b)に示すように冷媒循環用の冷媒通路103が形成されている。図11はその半円筒部を平面的に展開した断面図であって、同図に示すように、冷媒通路103は、インゴットケース100の長手方向に沿った複数の直線部103aと、隣り合う直線部103aの一端部どうしと他端部どうしとを交互に接続する接続部103bとによりジグザグ状に形成されている。そして、その両端はプッシャ46の挿入側の開口端面に冷媒口103cとして開口している。このように冷媒通路103を構成することにより、インゴットケース100を単筒で構成することができ、この点から第1実施形態のインゴットケース40と比べるとコストダウンを図ることができる。
【0041】
インゴットケース100は、図9に示すように、第1実施形態のインゴットケース40と同様にして、第1の基台31上の移動台34と第2の基台32とに、ブラケット42A,43Aを介して架け渡された状態で設けられる。この場合、図10に示すように、各ブラケット42A,43Aには、インゴットケース100の各ガス供給口102に通じる孔110がそれぞれ形成されている。また、図示は省略するが、右側のブラケット43Aには、インゴットケース100の各冷媒口103cに連通する孔が形成されており、これら孔のうちの一方に冷媒供給菅が、また、他方の孔に冷媒排出管が接続される。また、インゴットケース100内には、第1実施形態と同様に溶解炉10の傾動制御用の湯面センサが設けられている。
【0042】
第3実施形態では、図8に示すように、坩堝12に接続された注湯管90には、この注湯管90を加熱する誘導コイル120が断熱材121を介して巻かれている。そしてこのコイル(以下、注湯管コイルと称する)120は、溶解炉10の坩堝12の周囲に巻かれたコイル(以下、坩堝コイル)から分岐して注湯管90に巻かれており、すなわち、電源を坩堝コイルと共有している。
【0043】
図12は、両コイルの接続形態を示しており、同図で符号130は坩堝コイルである。注湯管コイル120の一対の配線122,123は、一方の配線122が坩堝コイル130の接続点Aに接続され、他方の配線123は、切換器124を経て2つに分岐し、これら分岐配線123b,123cが坩堝コイル130の接続点B,Cにそれぞれ接続されている。切換器124により、坩堝コイル130から分岐する電流は、接続点A−B間か、これよりも坩堝コイル130のターン数が長い接続点A−C間のいずれかに流される。配線123の途中には、注湯管コイル120への通電をON/OFFするスイッチ125が設けられている。注湯管コイル120による加熱温度は温度調節計126により測定され、その加熱温度が所定温度範囲を超えるとスイッチ125がOFF、所定温度範囲を下回るとスイッチ125がONとなるようにフィードバック制御される。
【0044】
図13は、コイルの接続形態の他の例を示しており、この場合では、配線123におけるスイッチ125と注湯管コイル120との間から接続点Cに分岐配線123cを接続し、この分岐配線123cに、接続点C側のスイッチ127を介在させている。また、配線125には、接続点B側のスイッチ125が介在されている。そして、これらスイッチ125,127は、温度調整計126から信号を受ける切換器128によりON/OFFの制御がなされる。
【0045】
上記のような両コイル120,130の接続形態によれば、例えば、溶解電力が低い場合には、坩堝コイル130のターン数が多い方の接続点A−C間に電流を流して注湯管90を加熱し、溶解電力が高い場合には、坩堝コイル130のターン数が少ない方の接続点A−B間に電流を流すといったように、適正な電流で温度コントロールすることにより、省エネルギー運転を行うことができる。そして、注湯管コイル120の電源を坩堝コイル130の電源と共有しているので、部品点数の削減に伴うコストダウンが図られるとともに、装置の規模の拡大が抑えられる。このように注湯管に加熱用のコイルを巻き、このコイルに坩堝側のコイルから電流を分岐させて加熱する形態は、上記第1、第2実施形態にも勿論適用することができる。
【0046】
以上が本発明の実施形態であるが、これら実施形態のインゴット成形装置30は、シリンダ36によってインゴットケース内で成形されたインゴットを押し出して排出する形式を採っているが、インゴットの排出形式としてはこれに限られない。例えば、インゴットケースを上下半割式として上下の型を互いにヒンジ結合し、下型を開けて成形インゴットを落下させたり、上方が開口するインゴットケースを180゜回転させて成形インゴットを落下させたりといったように、落下形式のインゴットケースが挙げられる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、マグネシウム等の金属を溶湯からインゴット化させるにあたり、防燃ガスを無駄なく使用することができるとともに安全かつ効率的な操業が可能となるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態のインゴット製造装置の平面図である。
【図2】 図1のII方向矢視図である。
【図3】 (a)は第1実施形態のインゴット製造装置を構成するインゴット成形装置の平面図、(b)は同正面図である。
【図4】 第1実施形態のインゴット成形装置を構成するインゴットケースの断面図である。
【図5】 本発明の第2実施形態のインゴット製造装置の平面図である。
【図6】 図5のVI方向矢視図である。
【図7】 本発明の第3実施形態のインゴット製造装置の側面図である。
【図8】 第3実施形態のインゴット製造装置の注湯構造を示す断面図である。
【図9】 第3実施形態のインゴット成形装置を構成するインゴットケースの断面図である。
【図10】 (a)は図9のXa−Xa矢視のインゴットケース部分、(b)は図9のXb−Xb矢視のインゴットケース部分である。
【図11】 冷媒通路の構造を示すインゴットケースの展開断面図である。
【図12】 第3実施形態の注湯管の加熱構造を示す図である。
【図13】 第3実施形態の注湯管の加熱構造の別の例を示す図である。
【符号の説明】
10…溶解炉
21,90…注湯管(注湯部)
23…タンディッシュ
40,100…インゴットケース
48,103…冷媒通路(冷却手段)

Claims (1)

  1. 傾動可能に支持され、傾動状態でマグネシウムあるいはマグネシウム合金の溶湯を注湯する注湯部を有する溶解炉と、
    この溶解炉の前記注湯部から前記マグネシウムあるいはマグネシウム合金の溶湯が注湯されるとともに、該溶湯を凝固させてインゴットに成形するインゴットケースと、
    このインゴットケースを冷却する冷却手段と、
    前記インゴットケースで成形されたインゴットをインゴットケースから排出させる排出手段と
    を備え
    前記インゴットケースは、円筒状の内筒を備え、
    前記円筒状の内筒は、前記溶湯の注湯口と防燃ガスを供給するガス供給口が設けられ、且つ、着脱自在なプラグと前記内筒内に摺動自在に挿入されているプッシャにより密閉空間とされていることを特徴とする金属インゴットの製造装置。
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