JP4513958B2 - リング状磁石 - Google Patents

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Description

本発明は、厚さ1mm以下の薄型のリング状磁石に関するものである。
ハードディスクドライブのハードディスク回転駆動用スピンドルモータ等のモータの内部には、周面に多極着磁したリング状磁石が組み込まれている。リング状磁石には例えば磁石粉末を樹脂で固めて成形したボンド磁石、磁石粉末を成形し焼結してなる焼結磁石等があり、近年では、高磁気特性を実現可能なNd−Fe−B系等の希土類焼結リング状磁石の採用が急速に進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
電子機器は年々薄型化しており、これに伴い、電子機器に搭載されるモータやこれに組み込まれるリング状磁石に対しても、小型化や薄型化への要求は厳しくなりつつある。例えば近年では1インチ規格ハードディスクドライブを搭載した携帯用オーディオプレーヤーが登場しているが、これに用いられるスピンドルモータには、外径11mm以下、厚さ1mm以下のような薄型のリング状磁石が必要となる。また、ハードディスクドライブの小型化や薄型化は今後ますます進む傾向にあり、将来的には例えば0.85インチ規格といった1インチに満たない規格の小型のハードディスクドライブが登場すると予想される。
特公平8−28293号公報
ところで、リング状磁石の応用製品であるモータ等においては、小型化や薄型化と同時に特性の向上に対する要求も非常に高くなってきている。希土類焼結磁石の採用等、応用製品の特性向上を磁石で実現するための様々な試みがなされ、研究開発も各方面で行なわれているものの、厚さ1mm以下の薄型リング状磁石を組み込んだモータ等の特性は未だ不十分なものであり、さらなる改善が求められている。
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、厚さ1mm以下の薄型のリング状磁石のさらなる特性の向上を図り、例えばモータ等の応用製品に組み込んだときに高特性を実現することが可能なリング状磁石を提供することを目的とする。
通常のリング状磁石には、製造時に外周端縁が欠けたり割れたりするのを防止する目的で面取り加工が施されているが、薄型リング状磁石の特性の向上を図るべく本発明者らが長期にわたり検討した結果、厚さ1mm以下の薄型リング状磁石においては、外周端縁の面取り加工がモータ等の応用製品の特性に大きな影響を及ぼしており、この面取り量を低減することが特性向上に極めて有効であるという知見を得た。
本発明は、前記のような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係るリング状磁石は、R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)及びBを主成分とする原料合金粉末を成形し、焼結してなり、前記成形時に極異方配向され、焼結後の着磁により外周面に8以上の磁極が形成されているハードディスクドライブのスピンドルモータ用のリング状磁石であって、外径11mm以下、厚さ1mm以下であり、外周端縁が面取りされてなり、当該リング状磁石の厚さ方向の面取り寸法が、0.02mm以上且つ当該リング状磁石の厚さの15%以下であることを特徴とする。
リング状磁石の外周端縁を製造直後のまま角張った形状としておくと、その後の製造工程や搬送の際などで磁石に欠けが発生し易くなり、歩留まり低下を招くことから、従来のリング状磁石ではリング状磁石の外周端縁を面取りしておくことが必須とされている。ところが、リング状磁石を薄型のモータ等へ組み込み、このモータの回転に伴って誘起される電圧を測定すると、面取り量の大きいリング状磁石ほど誘起電圧が大きく低下し、モータの特性の低下が無視できないレベルとなることがわかってきた。誘起電圧低下の許容範囲は一般に5%以内とされており、誘起電圧の低下が5%を超えると、モータ制御を確実に行なうことが難しくなるため、この誘起電圧の低下を許容範囲内に抑えるためには、磁石を厚くして特性を維持する必要がある。しかしながら、磁石を厚くするという従来の対策では、磁石が組み込まれるモータを設計し直さなければならなくなること、場合によっては1インチ規格を下回るような小型のハードディスク用スピンドルモータへの組込みが不可能となること、小型モータへ組み込めたとしてもモータの薄型化を妨げるおそれがあること等、様々な他の不都合を招くことになる。
そこで、本発明のリング状磁石では、磁石厚さに対する外周端縁での面取り寸法を所定の範囲内に抑えることで、例えばモータに組み込んだときに誘起電圧の低下を抑えるようにしている。面取り寸法を低減することによる効果を確実に得るには、すなわち、前述のように誘起電圧の低下を5%以内に抑えるためには、磁石厚さに対する面取り寸法を15%以下に抑えることが必要である。磁石を厚くすることなく誘起電圧の低下を抑えられるので、モータ側の設計変更は不要となり、また、小型・薄型のモータへの組み込みが容易に実現される。
本発明によれば、厚さ1mm以下の薄型リング状磁石において、磁石厚さに対し外周端縁の面取り寸法を全体厚さの15%以下とすることで、例えばモータ等に組み込まれたときの誘起電圧の低下を抑えることができる。したがって、本発明によれば、例えばモータ等の応用製品に組み込まれたときに高特性を実現することが可能なリング状磁石を提供することができる。
以下、本発明を適用したリング状磁石について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明を適用したリング状磁石の一例として多極リング状磁石1を図1及び図2に示す。外周面2に形成された8以上の磁極は、成形時に8以上の磁極を持つように成形体が極異方配向されるとともに、焼結後に配向方向と略一致するように着磁することによって形成される。磁極数を8以上とすることで、モータに使用された場合にモータ回転音の発生や振動の発生を確実に抑え、静粛性の高いモータを実現することができる。なお、リング状磁石1の磁極数は8以上であれば特に限定されず、用途に合わせて適宜設定すればよいが、磁極数の多いものほど成形時に極異方を付与するための金型構造の製造が困難であることから、例えば24極以下とされる。
なお、本発明のリング状磁石1は、成形体を例えばラジアル配向させ、焼結後に多極着磁することにより形成されてもよく、また、成形体を配向させず、焼結後に多極着磁して形成した等方性磁石であってもよい。ただし、本発明のリング状磁石1を外径11mm以下の小型形状とし、且つ8以上の磁極を持つ多極構造とする場合には、成形体を極異方配向させた多極磁石が好ましい。小型の成形体を極異方配向させずに8以上の磁極を形成しようとすると、総磁束等の磁気特性が著しく低下するおそれがある。
また、リング状磁石1の厚さは、1mm以下とされている。後述するように、リング状磁石1の厚さ1mm以下の薄型とすることで、本発明の効果を顕著に得ることができる。また、1インチ規格以下のハードディスクドライブ用スピンドルモータの厚さは、通常、3mm程度以下であり、モータに使用されるリング状磁石にはその3分の1以下の厚さしか許容されないため、この観点からも、本発明を適用したリング状磁石1の厚さは1mm以下であることが必要となる。なお、リング状磁石1の厚さは1mm以下であれば特に限定されず、用途に合わせて適宜設定すればよいが、磁石の強度の点から、0.4mm以上であることが好ましい。
なお、ハードディスクドライブが1インチ規格以下であるとは、ハードディスク外径が1インチ(25.4mm)以下である場合、及びハードディスク外径は1インチを超えるもののハードディスクドライブがハードディスク外径1インチ以下の規格を採用している場合の両方を意味する。
図3に示すように、リング状磁石1の外周面2と両側の端面3とで構成される外周端縁は、例えば磁石の欠けや割れ等を防止する等の目的でそれぞれ面取りされ、面取り部4を形成している。本発明のリング状磁石1では、一方の面取り部4に着目したとき、リング状磁石1の厚さAに対する磁石の厚さ方向の端面からの面取り寸法Bを15%以下とする。リング状磁石1の厚さAに対する面取り寸法Bが15%を上回ると、面取り量が過剰となり、磁気特性の著しい低下を招く。また、欠けや割れ等を防止する観点では、リング状磁石1の外周端縁はある程度面取りされている方がよく、リング状磁石の厚さAに対する面取り寸法Bは、0.02mm以上が好ましい。
面取り部4は、外周面2及び端面3に対し傾斜した形状であれば特に限定されず、例えば、外周端縁を端面3に対し45°傾斜して平面加工(いわゆるC面取り)したものであっても、外周端縁を曲面加工(いわゆるR面取り)したものであってもよい。
また、本発明を適用したリング状磁石1は、外径11mm以下の小型形状とされることが好ましい。外径が大きすぎると、外径が1インチ(約25mm)規格以下のハードディスクを回転駆動するためのスピンドルモータに組み込むことが難しくなるおそれがある。また、十分な強度及び磁気特性を確保するためには、外径は7mm以上であることが好ましい。
リング状磁石1の内径は、5mm以上であることが好ましい。内径が5mm未満であると、リング状磁石1のリング径内にベアリング等を配置することが困難となり、例えば小型スピンドルモータを構成できないおそれがある。なお、リング状磁石1の内径は用途に合わせて適宜設定すればよく、5mm以上であれば特に限定されないが、外径11mm以下のリング状磁石の磁気特性や磁石強度を確保する点から、8mm以下であることが好ましい。
リング状磁石1の材料は、磁石粉末と樹脂材料とを混合してなるボンド磁石、磁石粉末を焼結してなる焼結磁石等、特に限定されないが、磁気特性を考慮すると焼結磁石が好ましく、中でも、希土類元素(ただし希土類元素はYを含む概念である。)R、遷移金属元素T及びホウ素Bを主成分とする希土類焼結磁石が最も好ましい。リング状磁石1が希土類焼結磁石である場合、磁石組成は特に限定されず、用途等に応じて任意に選択すればよい。ここで、希土類元素Rとは、具体的にはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuのことをいい、これらから1種又は2種以上を用いることができる。中でも、資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。また、遷移金属元素Tは、従来から用いられている遷移金属元素をいずれも用いることができ、例えばFe、Co、Ni等から1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、焼結性の点からFe、Coが好ましく、特に磁気特性の点からFeを主体とすることが好ましい。また、本発明のリング状磁石1は、希土類元素R、遷移金属元素T及びBのほか、保磁力等の特性改善を目的として、例えばAl等の元素を添加してもよい。また、本発明のリング状磁石1には、これらの元素の他、不可避的不純物又は微量添加物として、例えば炭素や酸素等が含有されていてもよい。
以上のようなリング状磁石1は、磁石の厚さAに対し面取り寸法Bを15%以下とすることで、リング状磁石1が組み込まれたモータ等の応用製品の特性低下を抑えることができる。具体的には、面取りを全く行わないリング状磁石を組み込んだモータの誘起電圧を100%としたとき、本発明のリング状磁石1を組み込んだモータの誘起電圧の低下率を5%以内に抑えることができる。ここで、薄型化した本発明のリング状磁石で面取り量の制御が重要である理由について、図4を参照して説明する。モータの高特性化の観点では、図4(a)に示すような外周面2に対し垂直に発生する磁束が重要であるが、図4(b)に示すように面取り部4を設けるとこの方向の磁束が減少し、誘起電圧が低下してしまう。従来の肉厚リング状磁石では、外周面に対し面取り部の占める面積はごく僅かであるため、面取り部に起因する誘起電圧の低下は軽微であり、全く問題にならなかったが、厚さ1mm以下に薄型化すると僅かな面取り加工であっても外周面全体に占める比率が高くなり、面取り部に起因する誘起電圧の低下の影響が無視できないほど大きくなる。したがって、厚さ1mm以下の薄型リング状磁石では、磁石厚さAに対し面取り寸法Bを前述の範囲内とすることが応用製品の高特性化を図るうえで重要である。
以上のようなリング状磁石1は、例えば、ハードディスクドライブのハードディスクを回転駆動するためのスピンドルモータ、プリンタ用モータ等の各種モータ等、リング状磁石が用いられるあらゆる機器に使用可能である。厚さ1mm以下であり、外周端縁の面取り寸法を制御したリング状磁石を用いることで、薄型且つ高性能なモータを実現することができる。特に、本発明のリング状磁石は、例えば携帯電話やデジタルカメラ等の携帯型電子機器へ搭載されるハードディスクドライブであって、ハードディスク外径が0.85インチ(約20mm)規格等の1インチ(約25mm)規格以下である小型ハードディスクドライブ用のスピンドルモータに用いることが極めて有効である。
以下、本発明のリング状磁石の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、リング状磁石としてリング状の極異方性希土類焼結磁石を例に挙げるが、本発明がこれに限定されないことは言うまでもない。
最初に、希土類焼結磁石の原料合金粉末を製造する。原料合金粉末の製造方法は特に限定されないが、例えば、原料を合金化し、これを粉砕する方法、還元拡散法によって得られた合金粉末を粉砕する方法等により製造することができる。なお、以下では、原料を合金化し、これを粉砕する方法を例に挙げて説明する。原料合金の酸化防止のため、焼結後までの各工程は、ほとんどの工程を真空中、あるいは不活性ガス雰囲気中(窒素ガス雰囲気中、Arガス雰囲気中等)で行うことが好ましい。
先ず、原料を合金化する。この合金化工程では、原料となる金属、あるいは合金を磁石組成に応じて配合し、不活性ガス、例えばAr雰囲気中で溶解し、鋳造することにより合金化する。鋳造法としては、溶融した高温の液体金属を回転ロール上に供給し、合金薄板を連続的に鋳造するストリップキャスト法(連続鋳造法)等が挙げられる。
次に、合金化した原料を粗粉砕する。この粗粉砕工程では、先に鋳造した原料合金の薄板、又は母合金インゴット等を、粒径数百μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用いることができる。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させて脆化させた後、粗粉砕を行うことが効果的である。
次に、粗粉砕した原料に対し、さらに微粉砕処理を行ない、原料合金粉末を得る。微粉砕は、例えば気流式粉砕機等を使用して行われる。微粉砕の際の条件は、用いる気流式粉砕機に応じて適宜設定すればよく、原料合金粉末を平均粒径が1〜10μm程度、例えば3〜6μmとなるまで微粉砕する。気流式粉砕機としては、ジェットミル等が好適である。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体の粒子を加速し、粉体の粒子同士の衝突や、衝突板あるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。ジェットミルは、一般的に、流動層を利用するジェットミル、渦流を利用するジェットミル、衝突板を用いるジェットミル等に分類される。
なお、前述の粗粉砕工程の終了後、及び/又は微粉砕工程の終了後、原料合金粉末に粉砕助剤を添加してもよい。粉砕助剤としては、例えば脂肪酸系化合物等の潤滑剤を使用することができるが、特に、脂肪酸アミドを粉砕助剤として用いることで、良好な磁気特性、特に高配向度で高い磁化を有する磁石を得ることができる。
次に、得られた原料合金粉末を用い、成形する。その際磁場を印加して磁気配向させても良い。また成形は、乾式成形法を用いてもよく、湿式成形法を用いてもよいが、希土類磁石を含む合金粉末に対しては、通常、乾式成形法を用いる。例えば、原料合金粉末を成形用金型内に充填し、磁界を印加することによって、極異方配向させるとともに、所望の形状に圧縮成形することにより成形体が得られる。なお、以下では、12の磁極が外周面に形成されたリング状磁石を製造する場合を例に挙げて説明する。
本発明で用いる成形用金型の構成例の断面図を、図5に示す。成形用金型は、内周面の断面形状が略円形である型枠11と、型枠11の内周面に沿って設けられたスリーブ12とを有する。スリーブ12の内周面の断面形状は略多角形とされ、図5では12角形状となっている。型枠11は磁性体から構成され、スリーブ12は非磁性体から構成される。スリーブ12の内側には、円柱状のコアロッド13が設けられ、スリーブ12の内周面が成形空間14の外周面を構成し、コアロッド13の外周面が成形空間14の内周面を構成している。成形空間14の形状及び寸法は、焼結後の形状及び寸法が外径11mm以下、厚さ1mm以下のリング状に近くなるよう、成形体の焼結時の収縮及び変形を考慮して定めることが好ましい。型枠11、スリーブ12、コアロッド13等の材料は、通常の希土類焼結磁石の製造に用いられる成形用金型と同様の材料を使用でき、特に限定されない。
型枠11内には溝15が設けられ、隣接する2つの溝の間に、スリーブ12の内周面、すなわち成形空間14の多角形の頂点が存在する。溝15内にはコイル16が設けられる。これらのコイル16を中心として、成形空間14内には、前記多角形の頂点付近が磁極となるような円弧状の磁束が存在することになる。
磁場中成形工程では、成形用金型の成形空間14に原料合金粉末を充填し、コイル16に電流を流して多角形の成形空間14の頂点付近を磁極として隣り合う磁極を円弧状に結ぶような配向用磁界を発生させる。また、成形空間14に上下方向から上パンチ及び下パンチを嵌入させ、原料合金粉末を加圧圧縮して成形する。磁場中成形後に成形用金型から取り出すことで、極異方配向された成形体が得られる。配向用磁界を発生させるときには、磁界印加用コイルの発熱及び絶縁破壊を抑える観点から、例えば1000A〜4000A、持続時間0.1m秒〜0.3m秒のパルス磁界を印加することが好ましい。
成形体の外周形状は、真円に近い形状でもよいが、外周形状が焼結後に磁極に対応する位置を頂点とする略多角形状とすることが好ましい。図5に示す成形用金型を用いて得られる成形体は、焼結時の径方向での収縮率が多角形の頂点付近で大きく、また、多角形の辺の中央付近で小さいことから、焼結することで、真円に近い理想的な外周形状の焼結体を得ることができる。したがって、焼結後の研削加工が不要となるか、又は研削加工代が少なくて済み、製造コスト低減が可能となる。また、略多角形状の頂点付近に磁束が集中するため、同じ強度の配向用磁界を印加した場合でも、希土類焼結磁石の表面磁束密度が高くなるような配向状態を得ることができる。さらに、配向用磁界強度を上げると焼結時に割れ易いという不都合があるが、成形体を略多角形状とすることで、前述の理由から配向用磁界強度を下げられるので、焼結時の割れを抑制して歩留まりを高めることができる。逆に、歩留まりを従来と同等とし、配向用磁界強度を高めることで、表面磁束密度のさらなる向上も可能である。
成形体の厚さは、焼結後に1mm以下となるように設定してもよいが、量産時の生産効率を考慮すると、1つの成形体から多数個の磁石を得られるように成形体を円筒形状とすることが好ましい。
次に、得られた成形体を真空中、又は窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整すればよい。また、焼結後、焼結体を急冷することが好ましい。さらに、焼結体に時効処理を施すことが好ましい。
焼結後、必要に応じて焼結体を機械的に加工する。焼結体の機械的な加工は、例えばリング状の焼結体の外周面、内周面及び両端面の研磨等が挙げられる。また、長尺の円筒形状の焼結体の場合は、焼結体を1mm以下の厚さに切断する。
機械加工後、厚さ1mm以下とされた焼結体に対しめっき処理を施す。リング状の希土類焼結磁石をめっき処理する際は、通常、砥粒等の研磨剤を含む液体中で研磨して焼結体の外周端縁を面取りするバレル研磨処理工程、焼結体表面を洗浄又は活性化するエッチング処理工程等を経た後、焼結体表面に例えばニッケル被膜等を形成するめっき処理工程を実施するが、本発明では、機械加工工程後、前記バレル研磨処理工程を省略することが好ましい。機械加工後の焼結体にバレル研磨処理を施すと、面取りが不用意に進行してしまい、面取り量を本発明で規定する範囲内におさめることが難しくなるためである。ただし、単にバレル研磨処理を省略しただけでは、リング状磁石の外周端縁は角張った形状のままとされるため、製造時に外周端縁の欠けや割れを生じるという不都合を招くおそれがある。したがって、本発明では、バレル研磨処理工程を省略するとともに、エッチング処理を実施することが好ましい。エッチング処理を実施することで、化学的研磨や焼結体同士の接触等によって焼結体の外周端縁はわずかに面取りされ、本発明で規定する理想的な面取り量が実現される。さらに、得られた希土類焼結磁石の酸化を抑えるために、例えば樹脂被膜等で表面処理してもよい。
次に、得られた焼結体に着磁用磁界を印加し、着磁を行なう。着磁用磁界の方向は、効率よく磁化することが可能なことから、成形体の異方性方向と略一致させることが好ましい。以上のようにして、外周面に例えば12の磁極を持つ、小型且つ薄型の極異方性のリング状希土類焼結磁石が得られる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
本実施例では磁極数が12のリング状の極異方性Nd−Fe−B系焼結磁石を作製した。先ず、原料合金を水素粉砕し、さらに微粉砕し、Nd30重量%、Dy3重量%、B1重量%、Al0.5重量%、Co0.5重量%、残部Feなる組成の原料合金粉末を得た。
次に、得られた原料合金粉末を成形工程に供した。成形工程では、成形空間の外周が略12角形状の金型を備える成形装置を用いて磁場中成形を行なった。この金型の成形空間に原料合金粉末を充填し、上下方向から加圧圧縮し、また、金型に組み込まれたコイルに3000A、持続時間0.2m秒の条件にて電流を1回流し、成形体を極異方配向させた。成形体の外径は直径12mmの円が内接する12角形状、内径は8mm、厚さは18mmであった。
得られた成形体を焼結した後、焼結体の加工を施した。焼結体の外周面をセンタレス加工機を用いて研削し外径10mmに加工した。次に内周面を内周自動研削機を用いて研削し、内径7.5mmに加工した。更に、内周スライサを用いて焼結体を厚さ0.6mmに切断した。次に焼結体の両主面をGC#360の砥粒にてラップ研磨した。このときの厚さは0.55mmであった。
次に、焼結体の表面を5%硝酸水溶液で3分間エッチング処理した後、青化銅浴にて電気Cuめっきを、次いでワット浴にて電気Niめっきを施した。めっき厚はCu層がおよそ10μm、Ni層がおよそ5μmであった。
次に、成形体の極異方配向の方向に略一致するように着磁を行なうことにより、試料番号1の磁石を得た。試料番号1の面取り量を表1に示す。また、焼結体の両主面をラップ研磨した後、砥石に対して45度焼結体を傾けて外周端縁にC面取り処理を施す工程を追加することにより、試料番号2〜6の磁石を得た。めっき後の試料番号2〜6の磁石の面取り寸法は、表1に記載した量であった。
以上のように作製した各磁石をモータに類似した磁気回路内に組み込んだ。次いで磁石を3600rpmにて回転させ、固定子巻線に発生する誘起電力を測定し、評価した。結果を表1及び図6に示す。なお面取り寸法が0である場合(試料番号0)の誘起電力値は試料番号1〜6の面取り寸法と誘起電力値を基に外挿して求めた。
Figure 0004513958
表1及び図6から、外周端縁の面取り寸法の増加に伴って誘起電圧が減少する傾向にあり、面取りを行わない(面取り量0)場合を100%としたとき、特性低下を5%以内に抑えるためには、面取り寸法を0.08mm程度、すなわち、全体厚さ(0.55mm)に対し面取り寸法を15%以下とする必要があることが判明した。
本発明を適用したリング状磁石の一例を示す平面図である。 図1に示すリング状磁石の縦断面図である。 リング状磁石の厚さと面取り寸法との関係を説明するための断面図である。 図4(a)は、外周端縁に全く面取りが施されていないリング状磁石の磁束の発生の様子を示す模式図であり、図4(b)は、外周端縁に面取り部を持つリング状磁石の磁束の発生の様子を示す模式図である。 本発明で用いる成形用金型の横断面図である。 リング状磁石の面取り寸法と誘起電圧との関係を示す特性図である。
符号の説明
1 希土類焼結磁石、2 外周面、3 端面、4 面取り部、11 型枠、12 スリーブ、13 コアロッド、14 成形空間、15 溝、16 コイル

Claims (2)

  1. R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)及びBを主成分とする原料合金粉末を成形し、焼結してなり、前記成形時に極異方配向され、焼結後の着磁により外周面に8以上の磁極が形成されているハードディスクドライブのスピンドルモータ用のリング状磁石であって、
    外径11mm以下、厚さ1mm以下であり、外周端縁が面取りされてなり、
    当該リング状磁石の厚さ方向の面取り寸法が、0.02mm以上且つ当該リング状磁石の厚さの15%以下であることを特徴とするリング状磁石。
  2. 前記ハードディスクドライブが1インチ規格以下であることを特徴とする請求項1記載のリング状磁石。
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