JP4512133B2 - テルペン化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なテルペン化合物、その製造方法および該テルペン化合物を有効成分として含むアズキゾウムシの誘引剤に関する。
鞘翅目マメゾウムシ科に属するアズキゾウムシ(Callosobruchus chinensis)は、東南アジア、インド、オーストラリア、アフリカ等、世界各地に分布している。体長は2〜3mm程度で、宿主となる豆にはアズキ(Vigna angularis)、ササゲ(V.ungulculata)、緑豆(V.radiata)などがある。
アズキゾウムシの雌成虫は宿主となる豆の表面に産卵し、孵化した幼虫は豆の内部へ摂食しながら進入する。幼虫期を豆の内部で過ごし、羽化すると豆から脱出、再び交尾し別の豆に卵を産み付けるというサイクルを繰り返す。摂食の被害にあった豆は栄養価の変性等商品としての価値を失う。このような被害は特に豆類を主要なタンパク源としている国にとっては深刻で、アズキゾウムシをはじめとするマメゾウムシ科に属する害虫による貯蔵豆のロスは20〜60%にまで及ぶという報告もある。
アズキゾウムシに対する防除法として、殺虫剤の散布および燻蒸剤が使用されているがいずれも神経系をターゲットとしているため安全性には限界がある。また、環境に対する残留性や薬剤耐性虫を生み出すなどデメリットも多く、必ずしもニーズにあっているとは言えない。
近年、これら害虫を直接殺すことなくその行動を制御することにより作物の被害を防止する手法が開発されている。すなわち、害虫による寄主の発見や摂食行動を人為的に制御できれば食害を防ぐことができる。また交尾にいたる一連の配偶行動や、産卵行動を制御することができれば、次世代の生育密度を低く抑えることができる。
アズキゾウムシの生殖行動には、フェロモンと言われる化学的刺激が関与している。アズキゾウムシの生殖行動に関与するフェロモンとして、交尾解発フェロモンと性誘引フェロモンの2種類のフェロモンが存在すると言われている。そのうち交尾解発フェロモンは、既にその構造が明らかにされている(非特許文献1参照)。一方、性誘引フェロモンは、その存在が示唆されながら現在まで構造の決定に至っていない。
Tanaka,K.et al.,J.Pesticide Sci.(1981)6.75−82.
そこで、本発明は、現在まで構造の決定に至っていない、アズキゾウムシの性誘引フェロモンの化学構造を明らかにし、新規化合物を提供することを目的とする。また本発明は、該新規化合物の製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、該新規化合物を有効成分として含むアズキゾウムシの誘引剤を提供することを目的とする。
本発明者は、アズキゾウムシの分泌物を、高度に精製し、GC−EAD(Gas Chromatographic−Electroantennographic Detector)によりスクリーニングを行うことにより、性誘引フェロモンを効率的に分離できることを見出し本発明を完成した。ここで、GC−EADとは、活性物質を感知したとき、触角に発生する生物電位を測定するための触角電位検出器を装着したガスクロマトグラフィーのことをいう(Nojima,S.et al.,J.Chem.Ecol.(2003)29,321−336.)。
即ち本発明は、下記式(X)
Figure 0004512133
で表されるテルペン化合物である。
また本発明は、下記式(I)
Figure 0004512133
で表される化合物を還元し、下記式(II)
Figure 0004512133
で表される化合物とした後、酸化することからなる
下記式(X)
Figure 0004512133
で表されるテルペン化合物の製造方法である。
さらに本発明は、下記式(X)
Figure 0004512133
で表されるテルペン化合物を有効成分として含むアズキゾウムシの誘引剤を包含する。
図1は、本発明の式(X)で表される化合物の合成の手順を示す。
符号の説明
(1) Cyclopropyl methyl ketone(シクロプロピルメチルケトン)
(2) Ethyl 3−cyclopropyl−3−oxopropanoate(3−シクロプロピル−3−オキソプロパン酸エチル)
(3) Ethyl α−(3−methyl−2−butenyl)−β−oxo−cyclopropylpropanoate(α−(3−メチル−2−ブテニル)−β−オキソ−シクロプロピルプロパン酸エチル)
(4) Cyclopropyl 4−methyl−3−pentenyl ketone(シクロプロピル4−メチル−3−ペンテニルケトン)
(5) 3−Cyclopropyl−7−methyl−6−octen−3−ol(3−シクロプロピル−7−メチル−6−オクテン−3−オール)
(6) 9−Bromo−6−ethyl−2−methyl−2,6−nonadiene(9−ブロモ−6−エチル−2−メチル−2,6−ノナジエン)
(7) 5−Ethyl−9−methyl−4,8−decadienenitrile(5−エチル−9−メチル−4,8−デカジエンニトリル)
(8) 6−Ethyl−10−methyl−5,9−undecadien−2−one(6−エチル−10−メチル−5,9−ウンデカジエン−2−オン)
(I) Methyl 7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienoate(7−エチル−3,11−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエン酸メチル)
(II) 7−Ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrien−1−ol(7−エチル−3,11−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール)
(X) 7−Ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienal(7−エチル−3,11−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエナール)
(性誘引フェロモンの単離)
本発明の性誘引フェロモンは、未交尾雌から分泌物を捕集し、精製し、GC−EADによりスクリーニングを行うことにより、単離することができる。
分泌物の捕集は、アズキゾウムシを飼育し、性誘引フェロモンをろ紙などに捕集することにより行う。アズキゾウムシの雌は最初の交尾前にしか性誘引フェロモンを放出しないと考えられ、アズキゾウムシは羽化直後に雌雄分別する必要がある。
ろ紙などに捕集した分泌物は、n−ペンタンなどの溶媒に抽出した後、濃縮し、精製する。シリカゲルなど充填したカラムにより行うことができる。精製したサンプルについて、未交尾のオスの触角を設置しGC−EADを用いてスクリーニングし、フェロモン含有フラクションを特定した後、フェロモン含有フラクションを精製しアズキゾウムシ由来のフェロモンを得ることができる。GC−EADによるフェロモン含有フラクションの特定と精製を繰り返すことが好ましい。精製はHPLC、GCなどにより行うこと出来る。
(構造決定)
単離したフェロモンは、GC−EI−MS、GC−CI−MSおよびH−NMRによる機器分析を行い、さらに微量誘導体処理によるジメチルヒドラゾン化、オゾン酸化を行い、構造を決定することができる。
その結果、アズキゾウムシの性誘引フェロモンは、下記式(X)
Figure 0004512133
で表される7−エチル−3,11−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエナール(7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienal)であることが確認された。
(合成)
同定したフェロモンは、下記式(I)
Figure 0004512133
で表される7−エチル−3,11−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエン酸メチル(Methyl7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienoate)を還元し、下記式(II)
Figure 0004512133
で表される7−エチル−3,11−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール(7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrien−1−ol)とした後、酸化して製造することができる。式(I)で表される化合物は、Mori,K.et al.,Agri.Biol.Chem.(1971)35,1116−1127.に記載の化合物である。還元は水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)などを用いて行うことができる。また酸化は、活性MnOなどを用いて行うことができる。本発明の式(X)で表される化合物は、図1に示すような手順で非立体選択的合成することができる。
(誘引剤)
本発明のアズキゾウムシの誘引剤は、式(X)で表されるテルペン化合物を有効成分として含む。該誘引剤は、式(X)で表されるテルペン化合物を有効量含有する。該誘引剤は、他の成分として、溶媒、分散媒、担体、添加剤などを含有してもよい。
実施例1
以下の手順で、アズキゾウムシの性誘引フェロモンを捕集、精製し、その構造を同定した。
(アズキゾウムシの飼育)
アズキゾウムシは、タッパーの上面にステンレス網をかけ通気性を持たせた容器を用い飼育した。容器中に、一度水洗いし一晩乾燥させた小豆(V.angularis,Dainagon)を二層になるくらい引きつめ飼育した。飼育中はインキュベータ内を気温27℃、湿度50%、24時間暗期に維持した。本条件下においてアズキゾウムシはアズキの表面に卵が産卵されてからおよそ25日で成虫が羽化した。
(性誘引フェロモンの捕集)
アズキゾウムシの雌は、実験室レベルにおいて羽化後一度しか交尾行動を示さないため、雌は最初の交尾前にしか性誘引フェロモンを放出しないと考えられる。そのため、アズキゾウムシを羽化直後に雌雄分別した。分別した雌のアズキゾウムシは300〜400個体ごとに一つの腰高シャーレ(外径90mm、高さ120mm)の中に入れた。腰高シャーレ内には上底と下底それぞれにろ紙(ADVANTEC No.2,90mm)をはりつけ、さらにひだ付ろ紙状に折ったろ紙をパイル上に積み上げたものを設置し、目的フェロモンを吸着した。フェロモンは各シャーレについて14〜20日間に亘って捕集し、計32,277匹のバージン雌から捕集した。
(抽出)
性誘引フェロモンを吸着したろ紙を細かく破砕し、円筒ろ紙(ADVANTEC No.84,40×150mm)に詰め込みソックスレー抽出器により溶媒抽出した。溶媒はn−pentane HPLC grade(Aldrich)を用い、抽出時間は24時間とした。得られた粗抽出液を1サンプルあたり約1,500匹相当量分になるように調整し、計20本のサンプルS1〜S20を得た。
(濃縮)
各サンプルをクデルナ−ダニッシュ濃縮器により濃縮した。約5mlまで濃縮し、使用するまで−30℃でストックした。
(オープンカラムによる精製)
各サンプルを氷上で窒素により1mlまで濃縮し、シリカゲルを充填剤に用いたオープンカラムにより精製した。カラムは2mlのピペットを用い、充填剤はWakogel C−200(Wako)1gを用いた。溶媒はn−pentane,diethyl ether残留農薬試験grade(Kokusan chemical)を用い、ステップワイズ法でpentane/ether=10ml/0ml,9.5ml/0.5ml,9ml/1ml,8ml/2ml,5ml/5ml,0ml/10mlで溶出させた。S1について、各フラクション10mlずつ分取し、S1−1,S1−2,S1−3,S1−4,S1−5,S1−6の計6本のフラクションを得た。他のサンプルS2〜S20についても同様にフラクションを得た。
(GC−EADによるスクリーニング)
各フラクションから約1.5匹雌相当量の試料をGCにインジェクションし、GC−EADによるスクリーニングを行った。
GC−EAD(Gas Chromatographic−Electroantennographic Detector)は、HP5890 series II(Agilent)を用い、カラムはDB−5(30m×0.25mm,0.25μm;J&W)を用いた。インジェクションはスプリットレス法で行い、サンプリングタイムは1分とした。GCコンディションはインジェクター側(inj)が250℃、検出器側(det)はFID,EADとも280℃に設定し、カラムオーブンは60℃で3分保持後、10℃/minで280℃まで昇温させ10分間保持した。キャリアガスにはNを用い、カラムヘッドプレッシャーは145kPaとした。
カラムは検出器側の出口においてヒューズドシリカユニバーサル三方コネクター(J&W)を用い、ラインをスプリットした。また、コネクター直前においてキャリアーガスを追加するために、TCDキャピラリー用アダプタメークアップガスライン付(Agilent)を接続し、Nを30ml/min追加した。スプリット後のラインは不活性処理済溶融シリカキャピラリーカラム(1m×0.25mm;Alltech)により一方をFIDポートに、もう一方をカラムオーブンからNPDポートを経由して外に出し、流出物が触角に受容するようにした。カラム出口から流出物を触角上まで運ぶために、300ml/minの空気を流した。この空気は活性炭を通し、バブリング、氷による冷却により、湿度を持たせた。
オペアンプにはTL082CP(TEXAS INSTRUMENTS)を使い、0.5Hzのhigh pass filterを用いた。そしてアンプ用に±15Vの定電圧直流電源を用いた。電極はAg電極を0.2M NaCl溶液中で30分通電させAg−Clメッキした。その上に0.5% NaCl溶液のドロップをのせ、アッセイ直前に切断した未交尾のオスの触角を設置した。なお、GC−EAD用のGCの改造はNojima,S.et al.,J.Chem.Ecol.(2003)29,321−336.を参照した。
その結果、サンプルS1〜S20いずれにおいても2番目のフラクション(S1−2,S2−2,S3−2,・・・・,S20−2)にのみ活性がみられた。また、一回のアッセイでわずかにリテンションタイムの異なる2回の脱分極を検出した。しかしながら精製度が低いため夾雑物が多く、FID側でどのピークがフェロモン由来のピークであるか同定できなかった。
(High Performance Liquid Chromatography(HPLC)による精製)
GC−EADによるスクリーニングの結果、サンプルS1について活性のあったS1−2をさらにHPLCにより精製した。あらかじめフラクション中の溶媒を氷上で窒素により完全に留去させた後、pentane100μlで溶解させておいた。装置はLC−5A(Shimadzu)を用いた。検出器はSPD−2Aを用い検出波長は254nmとした。溶媒はn−pentane,diethyl etherを用い、pentane100%から1%/minでpentane/ether=50%/50%までグラジェント法で溶出させた。トータル流量は1mlで、各1mlずつ分取した。
S1−2について、S1−2−1からS1−2−50までの50本のフラクションを分取し、各フラクションをGC−EADによりスクリーニングにかけた。その結果S1−2−21〜23付近に活性が集中していた。サンプルS2−2〜S20−2についても同様に精製とスクリーニングを行なった結果、各サンプルの21〜23のフラクションに活性が集中していた。
HPLC精製により精製度が上がったため、各サンプルのフラクション21〜23をGCにかけて得られるFID上においてEADシグナルと比較しフェロモン由来の2つのピークを同定でき、それぞれを別のフラクションに分取することができた。(以下GCのFID上でリテンションタイムの早いほうからフェロモンA,Bとする)。
(GC−EI−MSによる解析)
フェロモンA,Bの各フラクションのGC−EI−MS解析を行った。装置はQP5000(Shimadzu Corporation)を用いた。カラムはDB−5(30m×0.25mm,0.25μm;J&W)を用いた。inj,detの温度はそれぞれ250℃,280℃とし、オーブン温度は60℃で3分保持後、10℃/minで280℃までの昇温プログラムを用いた。キャリアガスはHeを用い、カラムヘッドプレッシャーは100kPaとした。インジェクション法はスプリットレス法を用い、サンプリングタイムは1分とした。
その結果、どちらのフェロモンにおいても顕著な分子イオンピーク(M)を検出することができなかった。フラグメントイオンのパターンについてもフェロモンA,B間におけるパターンに顕著な差は見られなかった。また、NISTライブラリにおいてシミラリティー検索を行った結果、farnesolやcitralといったテルペン系の化合物に高い類似度を示した。以上よりフェロモンがテルペン系化合物であることが示唆された。
(GC−CI−MSによる解析)
次に分子量を決定するために各フラクションのGC−CI−MS解析を行った。
装置はQP2010(Shimadzu Corporation)により測定した。カラムはDB−5(30m×0.25mm,0.25μm;J&W)を用いた。inj,detの温度はそれぞれ250℃,280℃とし、オーブン温度は60℃、3分保持後、10℃/minで280℃までの昇温プログラムを用いた。キャリアガスはHeを用い、カラムヘッドプレッシャーは100kPaとした。反応ガスはiso−butaneを用いた。
その結果どちらのフェロモンにおいてもm/z=235にM+1の分子イオンピークを検出した。またm/z=217にM−HOと予想される顕著なフラグメントピークを検出した。以上の結果から、フェロモンA,Bの分子量が234であることがわかり、その構造中に−OHもしくは−CHO、もしくはその両方を有することが推定された。以上GC−CI−MS,GC−EI−MSの結果からフェロモンAとBは異性体であることが推定されたので、以下フェロモンAについて解析を行った。
(GCによる精製)
誘導体化、NMR等更なる解析を行っていくために、GCにより精製を行った。装置はHP5890 series II(Agilent)を用い、カラムはZB−1(30m×0.53mm,1.50μm;Phenomenex)を用いた。インジェクションはスプリットレス法で行ったが、インジェクションボリュームを増やすために、容量900μlの注入口ライナを用いた。サンプリングタイムは2分とした。カラムは検出器側にヒューズドシリカユニバーサル二方コネクター(J&W)を接続し、コレクター用に不活性処理済溶融シリカキャピラリーカラム(40cm×0.53mm;Agilent)を接続した。そして目的のリテンションタイムでカラムを引き上げ、氷により冷却した鞘を被せてカラム上に保持させ、溶媒により溶出させた。GCコンディションはinj側が250℃,det側は150℃に設定し、カラムオーブンは、60℃で3分保持後、10℃/minで280℃まで昇温させ10分保持した。キャリアガスにはNを用い、カラムヘッドプレッシャーは2psiとした。なお、GCによる分取の手法はNojima,S.et al.,J.Chem.Ecol.(2004)30,2153−2161.を参照した。
フェロモンAを含むフラクションのうち、FIDより得られたクロマトグラム上でフェロモン由来のピーク付近に夾雑物の少ないフラクションを選抜し、一つのフラクションにまとめた。その際、pentane,etherでは作業中に溶媒が留去してしまうため、溶媒を蒸留したn−hexane(Aldrich)に置換した。フェロモンAについてあらかじめ測定しておいたリテンションタイムに合わせてサンプリングを行った結果、ほぼフェロモン単一のピークを得ることができた。
H−NMRによる解析)
GCにより精製したフェロモンAをH−NMRによる解析を行った。装置はJNM−ECA 400MHz(JEOL)を用いて測定した。ミクロ試料管を用い溶媒はCDClを用いた。その結果9.90ppmにホルミル基プロトン由来のダブレット(1H)を検出した。しかしながら解析にまわすことができたフェロモン量自体がおよそ数μgと少ないことから特に高磁場側において夾雑物由来のシグナルが多くなり、単独でのシグナルの帰属はこれ以上困難であった。
そのため、これまでに得られた情報から構造が類似すると予想できたテルペン系の他種由来のフェロモンや、幼若ホルモン等の文献からH−NMRの解析データを集積し、考察した。その結果今回得られたシグナルを次のように帰属した。
0.95ppmに7位もしくは11位にエチル側鎖を有する場合の末端メチルプロトン由来のトリプレット(3H)を検出し、2.60ppmにγ位のメチレン基プロトン由来のトリプレット(2H)を検出した。そして5.05−5.14ppmに6位と10位のビニルプロトン由来のマルチプレット(2H)を検出し、5.87ppmに2位のビニルプロトン由来のダブレット(1H)を検出した。これらの結果から、フェロモンAの推定構造は、3,7,11−trimethyl−2,6,10−tridecatrienal、もしくは7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienalであると推定された。
(誘導体化による解析)
GCにより精製したフェロモンAに対し、誘導体処理を行いGC−EI−MSにより解析を行った。GC−EI−MSの条件は上述と同様に測定した。
アセチル化
2μl acetic anhydride in 100μl benzeneと100nl pyridine in 100μl benzeneを混ぜ、フェロモンを加え、60℃で12時間インキュベートした。その後benzene 200μlとdistilled water 200μlを加え攪拌し、水層を除去した(2回繰り返した)。その結果、全く反応が起こらなかった。
TMS化
100μl BSA(N,O−bis(trimethylsilyl)acetamide)中にフェロモンを加え、60℃で12時間インキュベートした。その結果、全く反応が起こらなかった。アセチル化およびTMS化の結果より、フェロモンAの構造中には−OHを有しないことがわかった。
ジメチルヒドラゾン化
次に構造中の−CHOの有無を確認するために、50μg N,N−dimethylhydorazine in 50μl hexane中にフェロモンAを加え、撹枠しジメチルヒドラゾン化を行った。その結果、m/z=276にM+42の分子イオンピークを検出した。この結果、フェロモンAの構造中には−CHOを有することがわかった。また、m/z=125に顕著なフラグメントピークを検出した。
直鎖のα,β−不飽和アルデヒドにおいてアリル位での開裂によりm/z=111に顕著なフラグメントピークが検出されることが報告されていたため、α,β−不飽和アルデヒドでβ位にメチル側鎖を有するcitralを用いて同様の処理を行った。その結果、同様にアリル位での開裂により直鎖のα,β−不飽和アルデヒドによるm/z=111より14多いm/z=125に顕著なフラグメントピークを検出した。この結果から、フェロモンAの末端構造はα,β−不飽和アルデヒドでβ位にメチル側鎖を有すると推定された。また、フェロモンの構造中に−OHをもたず、−CHOのみ有することから分子中のOの数は1つであると予想し、さらに分子量が234であることから不足水素指標を計算すると4となり、構造中の不飽和結合は4つであるとわかった。
オゾン酸化
フェロモンAを含有する50μlのhexaneをdry ice/acetone浴中で−78℃に冷却しながら酸素ガスを3ml/分で吹き込み、テスラ・ランプチェッカーHF−20(信光電気)を用いて10〜15kVの高電圧を20秒かけた。その後、triphenylphosphineのdichloromethane溶液(1μg/μl)を1μl加え攪拌し、オゾン酸化を行った。
それぞれの推定構造をオゾン酸化処理した場合に期待される生成物のうち比較的分子量の大きい2種の生成物に着目した。3,7,11−trimethyl−2,6,10−tridecatrienalからは4−oxopentanal(MW100)のみ生成するが、7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienalからは4−oxopentanalと4−oxohexanal(MW114)の両化合物が生成する。この差が生じることを期待してフェロモンAをオゾン酸化処理したところ、m/z=100の4−oxopentanalはサンプル量が少なく検出できなかったが、m/z=114の4−oxohexanalは検出した。この4−oxohexanalは3,7,11−trimethyl−2,6,10−tridecatrienalからは生成せず、7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienalからのみ生成する。以上の結果からフェロモンAの構造は式(X)で表される7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienalであることがわかった。
実施例2
以下の手順で、式(X)で表される化合物を合成した。式(II)の化合物、式(I)の化合物、式(X)の化合物はそれぞれ以下の通りである。
式(I)で表される化合物:methyl 7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienoate
式(II)で表される化合物:7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrien−1−ol
式(X)で表される化合物:7−ethyl−3,11−dimethyl−2,6,10−dodecatrienal
(式(I)で表される化合物の合成)
式(I)で表される化合物は、森らの手法を参照し調製した(Mori,K.et al.,Agri.Biol.Chem.(1971)35,1116−1127.)。
(式(II)で表される化合物の合成)
式(I)で表される化合物を以下の手順で還元した。即ち、式(I)で表される化合物1.6g(6.1mmol)をdry hexane 20mlに溶解させ、dry ice/acetone浴中(−78°C)で冷却しながら1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)のhexane溶液16ml(16mmol)を滴下した。滴下後、10分撹枠した。反応はAr雰囲気下で行った。Methanol 4mlを加え反応を停止した。その後、5% HCl水溶液を加え室温まで戻し、etherにて抽出を行った。抽出液は、水、飽和NaHCO水溶液、飽和NaCl水溶液で洗い、MgSOで乾燥後、溶媒をエバポレータで留去、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/ethyl acetate)で精製し、式(II)で表される化合物を合成した。収量1.4g(5.9mmol;97%)。
(式(X)で表される化合物の合成)
式(II)で表される化合物1.4g(5.9mmol)をhexane 100mlに溶解し、氷浴中0℃で活性MnO 16.5gを加え、8時間攪拌し酸化した。ろ過後、エバポレータで溶媒を留去し式(X)で表される化合物を得た。収量1.2g(5.1mmol;86%)。
(GC−EADによる確認)
合成した式(X)で表される化合物についてGC−EADによるアッセイを行ったところ、触角上で脱分極が生じ、アズキゾウムシの性誘引フェロモンであることが確認された。
発明の効果
本発明のテルペン化合物は分解されやすく人体に対する害もない。本発明のテルペン化合物を用いて大量の雄成虫を捕獲したり、雌雄の配偶行動を撹乱したりすることができる。
本発明のテルペン化合物は、アズキゾウムシの発生予測調査へ利用したり、交信撹乱剤などに利用することができる。

Claims (3)

  1. 下記式(X)
    Figure 0004512133
    で表されるテルペン化合物。
  2. 下記式(I)
    Figure 0004512133
    で表される化合物を還元し、下記式(II)
    Figure 0004512133
    で表される化合物とした後、酸化することからなる
    下記式(X)
    Figure 0004512133
    で表されるテルペン化合物の製造方法。
  3. 下記式(X)
    Figure 0004512133
    で表されるテルペン化合物を有効成分として含むアズキゾウムシの誘引剤。
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