JP4509445B2 - 樹脂複合材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂複合材料に関するものであり、詳しくは、有機化された層状粘土鉱物を含有する樹脂複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂の機械的強度や耐久性(疲労寿命)等の特性を改良するために、カオリナイトやモンモリロナイト等の層状粘土鉱物を熱可塑性樹脂に添加することが従来より行われている。このとき、上記の層状粘土鉱物をそのまま添加するのではなく、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物を添加することによって、熱可塑性樹脂中の層状粘土鉱物の分散性を向上させること可能であることが知られている。
【0003】
このように、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物が熱可塑性樹脂に添加された樹脂複合材料は、例えば特開平9−217012号公報に開示されている。同公報によれば、オニウムイオンを有する有機物(有機化剤)が層間に挿入された層状粘土鉱物を熱可塑性樹脂に添加することにより、層状粘土鉱物を熱可塑性樹脂中で微分散させることが可能であるとされている。
【0004】
また、特開平10−1608号公報には、炭素数8以上の炭化水素鎖を有する四級オニウムイオン(有機化剤)を取り込んだ層状ケイ酸塩がポリアミド樹脂に添加された樹脂複合材料が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、樹脂複合材料の原料としてポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物を用いる場合、熱可塑性樹脂組成物中に層状粘土鉱物を均一に分散させるためには、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物を熱可塑性樹脂組成物に添加して高温下で混練する必要がある。しかしながら、このように過酷な条件下で混練を行うと、有機化剤の熱分解により層状粘土鉱物の層間距離が短くなり、その結果、層状粘土鉱物が十分に均一に分散されず、機械的強度や耐久性等の特性を十分に高めることができなかった。
【0006】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中と層状粘土鉱物とを含む樹脂複合材料であって、高温下で混練した場合であっても層間粘土鉱物が熱可塑性樹脂組成物中に十分に均一に分散されており、機械的強度や耐久性等の特性が十分に高められた樹脂複合材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物に、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と極性化合物とを添加し、熱可塑性樹脂組成物中で層状粘土鉱物と極性化合物との間に化学結合を形成させた場合に上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の樹脂複合材料は、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、前記層状粘土鉱物との間に化学結合を形成している極性化合物と、
を含有するものである。
【0009】
また、本発明の樹脂複合材料の第一の製造方法は、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、前記層状粘土鉱物との間に化学結合を形成している極性化合物と、
を含有する樹脂複合材料の製造方法であって、
ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に、極性化合物を分散させて、前記熱可塑性樹脂組成物と前記極性化合物の混合物を得るステップと、
前記混合物中に、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物を分散させて前記樹脂複合材料を得るステップと、
を含むものである。
【0010】
さらに、本発明の樹脂複合材料の第二の製造方法は、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、前記層状粘土鉱物との間に化学結合を形成している極性化合物と、
を含有する樹脂複合材料の製造方法であって、
有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と極性化合物とを混合して、前記層状粘土鉱物の層間において前記層状粘土鉱物と前記極性化合物との間に化学結合が形成された複合体を得るステップと、
前記複合体を、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に分散させて、前記樹脂複合材料を得るステップと、
を含むものである。
【0011】
本発明によれば、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物に、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と極性化合物とを添加し、熱可塑性樹脂組成物中で層状粘土鉱物と極性化合物との間に化学結合を形成させることによって、高温下で混練した場合であっても有機化剤の熱分解が十分に抑制され、また、仮に有機化剤が熱分解しても極性化合物によって層状粘土鉱物の層間距離が十分に保持されるので、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に層状粘土鉱物を十分に均一に分散することができ、その結果、樹脂複合材料の機械的強度や耐久性等の特性を十分に高めることが可能となる。また、本発明の製造方法によれば、このように優れた特性を有する本発明の樹脂複合材料を効率よく且つ確実に得ることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(熱可塑性樹脂組成物)
本発明においては、下記一般式(1):
【0013】
【化1】
(式中、nは整数を表す)
で表される構成単位を有するポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物が用いられる。ここで、ポリフェニレンオキサイドの固有粘度[η](25℃、クロロホルム中)は0.10〜1.5dl/gであることが好ましく、0.25〜1.0dl/gであることがより好ましい。ポリフェニレンオキサイドの数平均分子量が前記下限値未満であると、機械的特性が低下する傾向にあり、他方、前記上限値を超えると加工性が著しく低下する傾向にある。
【0014】
また、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンオキサイド以外にゴム、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマからなる群より選ばれる少なくとも1種(但し、ポリエステルを除く)を含有してもよい。本発明において用いられるゴムとしては、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、SEBS、SEPS、EPDM(エチレンプロピレンジエンターポリマー)、ニトリルゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム等;熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマとしては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられるが、中でも、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン等のスチレンを含む共重合体及びそのアロイ、スチレン−ブタジエンゴム、SEBS、SEPSをポリフェニレンオキサイドと組み合わせて用いると、流動性や耐衝撃性が向上する傾向にあるので好ましい。なお、ポリフェニレンオキサイドと他の熱可塑性樹脂とを組み合わせる場合、ポリフェニレンオキサイドの含有量は組成物全量基準で好ましくは10〜90重量%である。
【0015】
(層状粘土鉱物)
本発明にかかる層状粘土鉱物としては特に制限されないが、例えば、カオリナイト、ハロサイト等のカオリナイト族;モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、マイカ等のスメクタイト族;バーミキュライト族等の層状粘土鉱物を用いることができる。これらの層状粘土鉱物は天然物由来のものでも、天然物の処理品でも、膨潤性のフッ素化マイカのように合成品でもよい。また、本発明においては、上記の層状粘土鉱物のうちの1種を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0016】
上記の層状粘土鉱物の全陽イオン交換容量に関しても特に制限はないが、全陽イオン交換容量は10〜300meq/100gであることが好ましく、50〜200meq/100gであることがより好ましい。なお、本発明にかかる全陽イオン交換容量とは、後述するカラム浸透法により算出される数値をいう。
【0017】
すなわち、長さ12cm、内径1.3cmの浸出管中に脱脂綿と濾紙HVにより5mmの濾過層を作製し、その上に石英砂とともに層状粘土鉱物を0.2〜1g充填し、これに対し1規定酢酸アンモニウム液100mlを4〜20時間かけて浸透させアンモニウムイオンで飽和した層状粘土鉱物を得る。これを10%食塩水100mlで洗浄しアンモニウムイオンを交換浸出させ、アンモニウムイオンの含量を測定し、この測定値から層状粘土鉱物100g当りの陽イオンのミリグラム等量(meq)を算出し、全陽イオン交換容量とする。
(有機化剤)
本発明においては、上記の層状粘土鉱物を有機化剤により有機化したものが、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物に添加される。なお、本発明において有機化とは、有機物を上記の層状粘土鉱物の表面及び/又は層間に物理的、化学的方法により吸着及び/又は結合させることを意味する。また、有機化剤とはこのような吸着及び/又は結合が可能な有機物をいい、溶媒中でイオンを生じる極性基と有機基とを有する有機化合物が通常用いられる。
【0018】
本発明において用いられる有機化剤の種類は特に制限されないが、層状粘土鉱物との反応性に優れる等の観点から、有機オニウム化合物を用いることが好ましい。有機オニウム化合物としては、有機アンモニウム化合物、有機ホスホニウム化合物、有機ピリジニウム化合物、有機スルホニウム化合物等が挙げられ、なかでも、生じる有機オニウムイオンの反応性が良好なことから、有機アンモニウム化合物及び有機ホスホニウム化合物を用いることがより好ましい。
【0019】
また、上記の有機オニウム化合物における孤立電子対を有する原子(例えば、有機アンモニウム化合物においては窒素原子)に結合する有機基の炭素数は特に制限されないが、最長鎖の有機基の炭素数は4〜30であることが好ましく、6〜24であることがより好ましい。最長鎖の炭素数が4未満である場合は、層状粘土鉱物の有機化の効果が不十分になる傾向にあり、30を超す場合は高分子中における層状粘土鉱物の分散が不十分になる傾向にある。また、上記の有機オニウム化合物における孤立電子対を有する原子に結合する有機基の数は1以上、結合が許される最大数以下である。なお、この有機基はカルボキシル基、水酸基、チオール基、ニトリル基等の置換基を有していてもよい。
【0020】
本発明にかかる有機化剤として用いられる有機アンモニウム化合物としては、第一級、第二級、第三級及び第四級の有機アンモニウム化合物がいずれも使用できる。このようなアンモニウム化合物としては、具体的には、ヘキシルアンモニウム化合物、オクチルアンモニウム化合物、デシルアンモニウム化合物、ドデシルアンモニウム化合物、テトラデシルアンモニウム化合物、ヘキサデシルアンモニウム化合物、オクタデシルアンモニウム化合物、ヘキシルトリメチルアンモニウム化合物、オクチルトリメチルアンモニウム化合物、デシルトリメチルアンモニウム化合物、ドデシルトリメチルアンモニウム化合物、テトラデシルトリメチルアンモニウム化合物、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム化合物、オクタデシルトリメチルアンモニウム化合物、ドデシルジメチルアンモニウム化合物、ドデシルメチルアンモニウム化合物、ジオクタデシルアンモニウム化合物、ジオクタデシルジメチルアンモニウム化合物、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム化合物等が挙げられる。本発明においては、上記の有機アンモニウム化合物のうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明において、層状粘土鉱物の有機化は、例えば、本出願人による日本特許第2627194号公報に開示されている方法により行うことができる。すなわち、層状粘土鉱物中のナトリウムイオン等の無機イオンを、上記の有機オニウム化合物から生じる有機オニウムイオン(例えば、有機アンモニウム化合物においては有機アンモニウムイオン)によりイオン交換することにより行うことができる。 また、有機オニウム化合物として有機アンモニウム化合物を用いる場合においては、例えば、次のような方法により有機化を行うことができる。すなわち、層状粘土鉱物が塊状の場合は、まずこれをボールミル等により粉砕し粉体化する。次いで、ミキサー等を用いてこの粉体を水中に分散させ層状粘土鉱物の水分散物を得る。また、これとは別に、塩酸等の酸及び有機アミンを水に添加し有機アンモニウム化合物の水溶液を調製し、この水溶液を上記層状粘土鉱物の水分散物に加え混合することによって、層状粘土鉱物中の無機陽イオンが有機アンモニウムイオンによりイオン交換される。次いで、この混合物から水を除去することにより有機化剤(有機アンモニウム化合物)によって有機化された層状粘土鉱物を得ることができる。なお、有機アンモニウム化合物や層状粘土鉱物の分散媒体としては、水以外にもメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、これらの混合物及びこれらと水の混合物等も使用することが可能である。
【0022】
(極性化合物)
本発明にかかる極性化合物としては、層状粘土鉱物との間に化学結合を形成し得るものである限りにおいて特に制限されないが、具体的には、リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノール、芳香族アミン等が挙げられる。中でも、リン酸エステル化合物を用いると、層状粘土鉱物の分散性がより向上し、樹脂複合材料の機械的強度や耐久性がより高められる傾向にあるので好ましい。なお、層状粘土鉱物と極性化合物との間に形成される化学結合としては、共有結合、イオン結合、水素結合等が挙げられる。
【0023】
本発明において用いられるリン酸エステル化合物としては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;
モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル;
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等、が挙げられるが、これらの中でも亜リン酸エステルを用いると層状粘土鉱物の分散性がより向上し、樹脂複合材料の機械的強度や耐久性がより高められるので特に好ましい。なお、これらのリン酸エステル化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
また、本発明にかかる極性化合物の含有量は、樹脂複合材料全量を基準として好ましくは0.01〜10重量%である。極性化合物の含有量が前記下限値未満であると、高温下での混練の際に層状粘土鉱物の層間距離が十分に保持されにくくなり、その結果、層状粘土鉱物が十分に均一に分散されず樹脂複合材料の機械的強度や耐久性が不十分となる傾向にある。他方、極性化合物の含有量が前記上限値を超えると、得られる樹脂複合材料を加工する際に、極性化合物がブリードアウトしやすくなり、その結果、成型品や金型が汚染されやすくなる傾向にある。
【0025】
なお、本発明においては、樹脂複合材料の特性を大きく損なわない限りにおいて、ポリフェニレンオキシドを含有する樹脂組成物、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物及び極性化合物に加えて、顔料、熱安定剤、難燃剤、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、強化剤等の添加剤を配合することができる。
【0026】
本発明においては、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物が層状粘土鉱物の層間に侵入(インターカレーション)することが可能となるために、層状粘土鉱物の層間距離が増大するが、このときの層間距離は、インターカレーションが生じる前の層間距離よりも10オングストローム以上広がることが好ましく、30オングストローム以上広がることがより好ましく、100オングストローム以上広がることが更に好ましく、層状粘土鉱物の層構造が消失する程度にまで層間距離が広がることが最も好ましい。なお、全ての層状粘土鉱物の層間が30オングストローム以上(更に好ましくは100オングストローム以上)広がることがより好ましいが、製造上の問題により、一部の層状粘土鉱物の層間距離が上記の条件を満たさなくともよい。
【0027】
なお、層状粘土鉱物の層間距離は、X線回折により測定することが可能であり、層間距離が増大したことはX線回折パターンにおいて、より小さい回折角度領域にピークが生じることにより確認でき、また、層構造の規則性が失われていることは、ピークが明瞭でなくなることやピークが現れなくなることから確認することが可能である。また、層状粘土鉱物の分散の状態は、粘度からも間接的に確かめることができる。すなわち、層状粘土鉱物の分散が微細な樹脂複合材料においては、層状粘土鉱物を含有しないものに比べて粘度(溶融粘度等)が大幅に上昇するが、層状粘土鉱物の分散の状態が悪い高分子組成物は粘度上昇が僅かである。
【0028】
(樹脂複合材料の製造方法)
本発明の樹脂複合材料の第一の製造方法においては、先ず、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に極性化合物を分散させることによって、熱可塑性樹脂組成物と極性化合物の混合物が得られる。
【0029】
ここで、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に極性化合物を分散させる方法について特に制限はないが、例えば、溶融混練法により行うことができる。溶融混練法とは、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物と極性化合物とを、当該樹脂組成物の融点若しくは軟化点以上に加熱して混合することにより混合物を得る方法である。具体的には二軸押出機、単軸押出機、バッチ式ミキサー、ラボプラストミル等の混練機により加熱しながら混練する方法である。加熱時には、せん断力を加え極性化合物を均一に分散させることが好ましく、加熱しつつせん断力を加える手段としては二軸押出機を用いることが好ましい。
【0030】
また、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物と極性化合物とを水や有機溶剤等の溶媒に分散若しくは溶解させて攪拌した後、溶媒を除去することにより混合物を得ることができる。
【0031】
上記の方法以外にも、例えば、熱可塑性樹脂組成物の原料モノマーに極性化合物を加え、極性化合物の存在下でモノマーの重合を行うことによって、混合物を得ることが可能である。
【0032】
熱可塑性樹脂組成物と極性化合物との配合比は特に制限されないが、極性化合物の配合量が、得られる樹脂複合材料全量を基準として0.01〜10重量部(より好ましくは0.05〜5重量部)となるような配合比であることが好ましい。極性化合物の配合量が前記下限値未満である場合は、得られる樹脂複合材料の力学特性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、得られた樹脂複合材料の加工時に極性化合物がアウトブリードしやすくなり、その結果、成形品や金型が汚染されやすくなる傾向にある。
【0033】
次に、上記の混合物中に、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物を分散させることによって、本発明の樹脂複合材料が得られる。
【0034】
ここで、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物を混合物中に分散させる方法としては特に制限されず、例えば前述の熱可塑性樹脂組成物と極性化合物とを混合する方法と同様の方法によって、当該層状粘土鉱物を混合物中に分散させることができる。
【0035】
有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物の配合量は、混合物中のポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0.01〜200重量部であることが好ましく、0.1〜100重量部であることがより好ましく、0.1〜30重量部であることがさらに好ましい。層状粘土鉱物の配合量が0.01重量部未満である場合は、得られる樹脂複合材料の力学特性が不十分となる傾向にあり、他方、200重量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物が連続層を形成できなくなる傾向にあり、樹脂複合材料の力学特性が低下し、また粘度が高くなり加工性が損なわれる傾向にある。
【0036】
本発明の樹脂複合材料の第二の製造方法においては、先ず、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と極性化合物とを混合することによって、層状粘土鉱物の層間において有機化剤と極性化合物との間に化学結合が形成された複合体が得られる。
【0037】
ここで、有機化された層状粘土鉱物と極性化合物とを混合する方法については、層状粘土鉱物の層間において層状粘土鉱物と極性化合物との間に化学結合が形成される限りにおいて特に制限はないが、混合の際の温度は0〜350℃であることが好ましい。
【0038】
また、有機化された層状粘土鉱物と極性化合物との配合比は特に制限されないが、極性化合物の配合量が、得られる樹脂複合材料全量を基準として0.01〜10重量部(より好ましくは0.05〜5重量部)となるような配合比であることが好ましい。極性化合物の配合量が前記下限値未満である場合は、層状粘土鉱物の分散が不十分となり、その結果、得られる樹脂複合材料の力学特性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、得られる樹脂複合材料を加工する際に極性化合物がアウトブリードしやすくなり、その結果、成形品や金型が汚染されやすくなる傾向にある。
【0039】
次に、上記の複合体を、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に分散させることによって、本発明の樹脂複合材料が得られる。
【0040】
ここで、複合体を熱可塑性樹脂組成物中に分散させる方法としては、複合体を熱可塑性樹脂組成物中に十分に均一に分散できるものである限りにおいて特に制限はないが、例えば、上記第一の製造方法の説明において例示された溶融・混練法により好適に実施することができる。
【0041】
また、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物と複合体との配合比は、前者100重量部に対して後者0.01〜100重量部であることが好ましく、0.5〜30重量部であることがより好ましい。複合体の配合量が0.01重量部未満である場合は、得られる樹脂複合材料の力学特性が不十分となる傾向にあり、他方、100重量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物が連続層を形成できなくなる傾向にあり、樹脂複合材料の力学特性が低下し、また粘度が高くなり加工性が損なわれる傾向にある。
【0042】
さらに、本発明の樹脂複合材料は、第三の製造方法、すなわち、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物を分散させて、熱可塑性樹脂組成物と層状粘土鉱物との混合物を得た後、当該混合物中に極性化合物をさらに分散させる方法によっても得ることができる。
【0043】
さらにまた、本発明の樹脂複合材料は、第四の製造方法、すなわち、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物と、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と、極性化合物とを混合する方法によっても得ることができる。
【0044】
以上説明したように、本発明においては、層状粘土鉱物の層間若しくは外部表面において層状粘土鉱物との間に化学結合を形成し得る極性化合物を用いることによって、高温下で混練した場合であっても、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂中において層状粘土鉱物を微細に分散させることができる。層状粘土鉱物の分散が微細であることは、層状粘土鉱物と熱可塑性樹脂組成物との接触面積が大きいことを意味するため、熱可塑性樹脂組成物が層状粘土鉱物により拘束される割合が増え、この結果、得られる樹脂複合材料の機械的強度や耐久性等の力学特性が向上する。このため、本発明の樹脂複合材料は高い力学特性が要求される分野等使用可能である。また、本発明の樹脂複合材料は優れたガスバリア性を有しており、コーティング材料や包装材料等のガスバリア性が特に重要視される分野においても好適に使用される。
【0045】
[実施例]
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
参考例1
先ず、ポリフェニレンオキシド(固有粘度[η]:0.46)とハイインパクトポリスチレン樹脂(重量平均分子量:230,000)とを混合比6:4で混合して熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物100gに、トリデシルホスファイト2gを添加して、二軸押出機を用いて溶融・混練を行って混合物を得た(トリデシルホスファイト含有量:2重量%)。混練時の樹脂温度は280℃とした。
【0047】
次に、ナトリウムモンモリロナイト(クニミネ工業社製層状粘土化合物、商品名:クニピアF、全陽イオン交換容量:119meq/100g)100gを80℃の水6500mlに分散させた。このモンモリロナイト分散液中に、オクタデシルアミン38.5gと濃塩酸14.5mlとを80℃の水2500mlに溶解した溶液を加えたところ沈殿物を得た。この沈殿物を濾過し、80℃の水で3回洗浄し、凍結乾燥することによって有機化された層状粘土鉱物を得た。
【0048】
さらに、上記の混合物に有機化された層状粘土鉱物を加えて溶融混練法により混合し、有機化された層状粘土鉱物7重量%を含有する目的の樹脂複合材料を得た。
【0049】
得られた樹脂複合材料のストランドを水冷し、カッティングして樹脂ペレットとし、さらに真空下、80℃で乾燥して、以下の引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定に用いた。
【0050】
引張試験においては、得られた樹脂複合材料を射出成形機を用いてダンベル状試験片に成形したものを用い、ASTM−D−638に規定される方法に準拠して試験を行い、引張強度、引張弾性率及び破断伸びを求めた。その結果を表1に示す。
【0051】
疲労寿命試験においては、先ず、得られた樹脂複合材料を射出成形機を用いて100mm×150mm×1mmの平板に成形し、この平板から幅2mm×長さ50mmの試験片を切り出した。この試験片に2%歪を与えて引張、圧縮を繰り返し、試験片が破断したときの引張、圧縮の繰り返し数を疲労寿命とした。その結果を表1に示す。なお、試験温度は25℃とした。
【0052】
X線回折測定においては、上記の疲労寿命試験で使用した平板から試験片を切り出したものを用い、回折ピークの有無、並びに回折ピークが存在する場合にはその位置を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0053】
参考例2
参考例1におけるトリデシルホスファイトの代わりにトリフェニルホスファイトを用いたこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0054】
参考例3
トリデシルホスファイトの含有量を0.05重量%としたこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0055】
参考例4
ポリフェニレンオキシドとハイインパクトポリスチレン樹脂との混合比を8:2としたこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0056】
参考例5
ポリフェニレンオキシドとハイインパクトポリスチレン樹脂との混合比を3:7としたこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0057】
参考例6
参考例1におけるハイインパクトポリスチレン樹脂の代わりにポリスチレン樹脂(重量平均分子量:230,000)を用いたこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0058】
参考例7
ハイインパクトポリスチレン樹脂を用いず、ポリフェニレンオキサイド中に有機化された層状粘土鉱物を分散させたこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0059】
参考例8
オクタデシルアミンにより有機化されたモンモリロナイトの代わりに、ドデシルアミンにより有機化された膨潤性合成マイカ(ドデシルアミン含有量:20重量%)を用いたこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0060】
実施例1
参考例1と同様にして得られた有機化された層状粘土鉱物(オクタデシルアミンで有機化されたモンモリロナイト)100gとトリデシルホスファイト35gとを混合し、80℃に加熱した。有機化されたモンモリロナイトの層間距離が23オングストロームであるのに対し、得られた混合物におけるモンモリロナイトの層間距離が32オングストロームであることから、モンモリロナイトの層間若しくは外部表面において層状粘土鉱物とトリデシルホスファイトとの間で層間化合物が形成されたことが確認された。
【0061】
次に、得られた混合物10gを参考例1と同様の熱可塑性樹脂組成物に加えて混練することによって樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
トリデシルホスファイトを用いなかったこと以外は参考例1と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0063】
比較例2
トリデシルホスファイトを用いなかったこと以外は参考例4と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0064】
比較例3
トリデシルホスファイトを用いなかったこと以外は参考例5と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0065】
比較例4
トリデシルホスファイトを用いなかったこと以外は参考例6と同様にして樹脂複合材料を作製し、X線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0066】
比較例5
トリデシルホスファイトを用いなかったこと以外は参考例7と同様にして樹脂複合材料を作製し、X線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0067】
比較例6
トリデシルホスファイトを用いなかったこと以外は参考例8と同様にして樹脂複合材料を作製し、引張試験、疲労寿命試験及びX線回折測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、参考例1〜8及び実施例1の樹脂複合材料においては、X線回折スペクトルにおける回折ピークが検出されず、層状粘土鉱物の層間距離が十分に大きく、層状粘土鉱物が十分に均一に分散されていることが確認された。また、これらの樹脂複合材料は、引張試験及び疲労寿命試験において十分に高い機械的強度及び耐久性を示した。
【0070】
これに対して、比較例1〜6の樹脂複合材料においては、X線回折スペクトルにおいて回折ピークが存在し、層状粘土鉱物の分散性が不十分であることが確認された。また、比較例1〜3、6の樹脂複合材料は、引張試験及び疲労寿命試験において機械的強度及び耐久性が不十分であった。
【0071】
参考例9
参考例1の樹脂複合材料について、透過型電子顕微鏡による観察、並びにトリデシルホスファイト中のリン元素(P)に着目した元素分析を以下の手順で行った。この観察・分析には、元素分析装置(VANTAGE(EDX)、NPRAN社製)を備える透過型電子顕微鏡(HD−200、日立製作所製)を用いた。
【0072】
先ず、加速電圧200kV、観察倍率450,000倍で透過型電子顕微鏡による樹脂複合材料の観察を行った。得られた電子顕微鏡写真を図1に示す。図1に示したように、参考例1の樹脂複合材料においては、層状粘度鉱物の単位層が繊維状に分散していることが確認された。
【0073】
次に、分散した層状粘土鉱物の層の部分(図1中の部位1)及び粘土鉱物が分散していない樹脂の部分(図1中の部位2)のそれぞれについて、X線検出器(Si/Li半導体検出器)を用い、加速電圧200kVでエネルギー分散型X線分光法(EDX法)による元素分析を行った。得られた結果をそれぞれ図2及び図3に示す。
【0074】
図2に示したように、分散した層状粘土鉱物の層の部分においては、樹脂(ポリフェニレンエーテルやハイインパクトポリスチレン)に由来する炭素(C)及び酸素(O)、層状粘土鉱物に由来するアルミニウム(Al)及びケイ素(Si)、並びにトリデシルホスファイトに由来するリン(P)が検出された。なお、図2では銅(Cu)の検出も認められるが、これは、観察試料を支持するための銅製支持膜に由来するものである。
【0075】
一方、粘土鉱物が分散していない樹脂の部分では、図3に示したように、C、Oが強いピーク強度で検出されたが、Pは検出されなかった。なお、Al及びSiも弱いピーク強度で検出されているが、これは、周囲に分散している粘土鉱物の影響を受けて検出されたものであると本発明者らは推察する。
【0076】
以上の結果は、予め樹脂にトリデシルホスファイトを混練したものを作製し、これに有機化された層状粘土鉱物[組成式:(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4010(OH)2・nH2O]を溶融混練して分散した実施例1において、かかる層状粘土鉱物の分散の際にトリデシルホスファイトが層状粘土鉱物の層の近傍に濃縮されたことを示すものであり、樹脂中に分散された層状粘土鉱物とトリデシルホスファイトとの間に化学結合が形成されたことを示すものである。
【0077】
実施例2
実施例1の樹脂複合材料について、先ず、参考例9と同様にして透過型電子顕微鏡による観察を行った。得られた電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0078】
次に、分散した層状粘土鉱物の層の部分(図4中の部位1)及び粘土鉱物が分散していない樹脂の部分(図4中の部位2)のそれぞれについて、参考例9と同様にして元素分析を行った。得られた結果をそれぞれ図5及び図6に示す。
【0079】
図5に示したように、分散した層状粘土鉱物の層の部分においては、樹脂(ポリフェニレンエーテルやハイインパクトポリスチレン)に由来する炭素(C)及び酸素(O)、層状粘土鉱物に由来するアルミニウム(Al)及びケイ素(Si)、並びにトリデシルホスファイトに由来するリン(P)が検出された。なお、図5では銅(Cu)の検出も認められるが、これは、観察試料を支持するための銅製支持膜に由来するものである。
【0080】
一方、粘土鉱物が分散していない樹脂の部分では、図6に示したように、C、Oが強いピーク強度で検出されたが、Pは検出されなかった。なお、Al及びSiも弱いピーク強度で検出されているが、これは、周囲に分散している粘土鉱物の影響を受けて検出されたものであると本発明者らは推察する。
【0081】
以上の結果は、有機化された層状粘土鉱物[組成式:(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4010(OH)2・nH2O]にトリデシルホスファイトを接触させて両者の複合体(層間化合物)を作製し、その複合体を樹脂と溶融混練して分散した実施例9において、かかる複合体の分散の際にトリデシルホスファイトは複合体から分離せずに層状粘土鉱物と結合したまま樹脂中に分散されたことを示すものであり、樹脂中に分散された層状粘土鉱物とトリデシルホスファイトとが強く化学結合していることを示すものである。
【0082】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の樹脂複合材料によれば、高温下で混練した場合であっても層間粘土鉱物が熱可塑性樹脂組成物中に十分に均一に分散されて、十分に高い機械的強度と十分に高い耐久性とを達成することが可能となる。また、本発明の製造方法によって、本発明の樹脂複合材料を効率よく且つ確実に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例9で得られた、参考例1の樹脂複合材料の走査型電子顕微鏡写真(倍率450,000倍)を示す図である。
【図2】 図1中の部位1について測定された元素分析の結果を示すグラフである。
【図3】 図1中の部位1について測定された元素分析の結果を示すグラフである。
【図4】 実施例2で得られた、実施例1の樹脂複合材料の走査型電子顕微鏡写真(倍率450,000倍)を示す図である。
【図5】 図4中の部位1について測定された元素分析の結果を示すグラフである。
【図6】 図4中の部位2について測定された元素分析の結果を示すグラフである。
Claims (2)
- ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物(但し、ポリエステルを含有する熱可塑性樹脂組成物を除く)と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、前記層状粘土鉱物との間に化学結合を形成している亜リン酸エステルと、
を含有する樹脂複合材料であって、
前記有機化剤によって有機化された前記層状粘土鉱物と前記亜リン酸エステルとを混合して、前記層状粘土鉱物の層間において前記層状粘土鉱物と前記亜リン酸エステルとの間に化学結合が形成された複合体を得、該複合体を、前記熱可塑性樹脂組成物中に分散させることにより得られることを特徴とする樹脂複合材料。 - ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物(但し、ポリエステルを含有する熱可塑性樹脂組成物を除く)と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と、
前記熱可塑性樹脂組成物中に分散されており、前記層状粘土鉱物との間に化学結合を形成している亜リン酸エステルと、
を含有する樹脂複合材料の製造方法であって、
有機化剤によって有機化された層状粘土鉱物と亜リン酸エステルとを混合して、前記層状粘土鉱物の層間において前記層状粘土鉱物と前記亜リン酸エステルとの間に化学結合が形成された複合体を得るステップと、
前記複合体を、ポリフェニレンオキサイドを含有する熱可塑性樹脂組成物中に分散させて、前記樹脂複合材料を得るステップと、
を含むことを特徴とする樹脂複合材料の製造方法。
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