JP4499262B2 - 電離箱型放射線検出装置及び電離箱検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電離箱型放射線検出装置及び電離箱の検査方法に関し、特に高線量率の放射線に対する電離箱の検出特性の検査に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
原子力発電所等、放射性物質を取扱う施設では、一般に、施設外部や施設敷地内に環境放射線監視装置を設けて、施設内及びその周辺の放射線を監視している。環境放射線監視装置としては空間γ線量率を測定するモニタリングポストが知られている。モニタリングポストはγ線を検出するための電離箱やNaI型検出器等をモニタリングポスト建屋(局舎)屋上に備え、その測定信号を処理する各種モジュールを局舎内に収納する。
【0003】
モニタリングポストで使用される電離箱容器内には加圧ガス(例えば希ガス)が封入されている。放射線の入射に起因して封入されているガスが電離し、これにより生じた電荷を補集することで放射線の線量率が測定される。
【0004】
その出力電流は、入射する放射線の線量率に比例するが、電離箱の使用中に容器内表面からの不純ガスの湧き出しや、封入していたガスのリーク等が起こると検出器からの出力電流が減少し、電離箱の性能が劣化する。
【0005】
そこで、モニタリングポストの電離箱の検出特性が変化していないかどうかを確認するためには、定期的に照射試験を行い、電離箱の出力電流を検査する必要がある。放射線の線量率が低い領域、例えば吸収線量率が数μGy/hにおける電離箱の検出特性に関しては、137Cs(3.7MBq)等の低放射能線源を電離箱から所定の距離だけ離れた位置に設置して検査を行っている。具体的には、局舎屋上から例えば、1メートルの高さに密封線源を固定して検査が行われる。
【0006】
一方、放射線の線量率が高い領域、例えば吸収線量率が100mGy/hにおける電離箱の性能を検査する場合、もし前述した方法で検査を行おうとするとモニタリングポスト近傍に60Co(370GBq)等の高放射能線源を設置しなければならない。しかしながら、そのような線源を持ち込んで作業するのは非常に危険であり、局舎付近における検査は実際上不可能である。このため、高放射能線源を使う場合は、それを取扱うことができる別の施設に電離箱を移して検査を行う必要がある。
【0007】
しかし、検査の度に、局舎屋上に設置された電離箱を取外し、また細心の注意を必要とする高放射能線源を使用して検査を行うのは非常に時間と労力がかかる等問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は高線量率における電離箱の検出特性を高放射能線源を利用することなく検査できる電離箱型放射線検出装置及び電離箱の検査方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る電離箱型放射線検出装置は放射線を検出する電離箱と、前記電離箱に電圧を印加する電源と、前記電源の印加電圧を切り換える電圧切換手段と、を含み、低線量率の放射線を照射する線源を利用して高線量率での電離箱の検出特性を検査する場合に、前記電源の印加電圧が低電圧に切り換えられることを特徴とする。
【0010】
上記のように構成すれば、電圧切換手段により前記電離箱に印加される電圧を低電圧に切り換え、電離箱に低線量率の放射線を照射する線源を利用して、高線量率における電離箱の検出特性を検査できる。
【0011】
後述するように、高電圧を印加した電離箱に高線量率の放射線を照射した場合の電離箱の検出特性と低電圧を印加した電離箱に低線量率の放射線を照射した場合の電離箱の検出特性との間には相関関係があり、その関係に基づけば高線量率における検出特性を検査するために必ずしも高線量率の放射線を電離箱に照射する必要はない。すなわち、低放射能線源を使用して、電離箱に低い線量率の放射線を照射し、当該線量率に応じて印加電圧を下げて検出特性を検査するこで、前記高線量率における検出特性を間接的に検査できる。
【0012】
ここでの電離箱検査方法は特に電離箱が屋外に固定設置されている場合、例えば前述のモニタリングポストに使用される電離箱の検査には特に有用である。この場合においては、高線量率とは例えば従来施設に電離箱を移して検査を行う必要がある線量率のレベルをいう。
【0013】
望ましくは、前記電離箱へ印加する低電圧を可変する低電圧可変手段を含む。こうすれば、高線量率における電離箱の検出特性を詳細に検査することができる。また、前記電離箱の出力電流に基づいて、当該電離箱の検出特性の良否判定を行う良否判定手段をさらに含む。
【0014】
上記目的を達成するために本発明に係る電離箱検査方法は、電離箱に対して低線量率で放射線を照射する工程と、前記電離箱への印加電圧を通常の使用電圧から低電圧に切り換えて、当該電離箱の出力電流を検出する工程と、を含む。
【0015】
上記のように構成すれば、電離箱に対して低線量率で放射線を照射しつつ、前記電離箱への印加電圧を通常の使用電圧から低電圧に切り換えて、当該電離箱の出力電流を検出し、それに基づいて高線量率における電離箱の検出特性を検査できる。
【0016】
望ましくは、低線量率における電離箱の検出特性を検査する第1検査工程と、高線量率における前記電離箱の検出特性を検査する第2検査工程と、を含み、前記第1検査工程は、前記電離箱に対して低線量率で放射線を照射する第1照射工程と、前記電離箱へ高電圧を印加して、当該電離箱の出力電流を検出する第1検出工程と、を含み、前記第2検査工程は、前記電離箱に対して低線量率で放射線を照射する第2照射工程と、前記電離箱へ低電圧を印加して、当該電離箱の出力電流を検出する第2検出工程と、を含む。
【0017】
上記のように構成すれば、前記第1検査工程において、電離箱に対して低線量率で放射線を照射しつつ、電離箱に高電圧を印加し、電離箱から前記放射線の線量率における出力電流を検出し、それに基づいて低線量率における電離箱の検出特性を検査できる。また、前記第2検査工程において、電離箱に対して低線量率で放射線を照射しつつ、電離箱に低電圧を印加し、電離箱から前記放射線の線量率における出力電流を検出し、それに基づいて高線量率における電離箱の検出特性を検査できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)を図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電離箱型放射線検出装置を設けたモニタリングポスト10の全体構成を示す図である。モニタリングポスト10は設置場所における放射線環境を監視する設備である。
【0020】
最初にモニタリングポスト10の構成及び監視時の動作について説明する。電離箱型放射線検出装置は、電離箱12、電離箱12に電圧を印加する電源ユニット14、電離箱12からの出力電流を電圧信号に変換するエレクトロメータ16、エレクトロメータ16からの電圧信号に基づいて線量率等を演算する計数演算部18、計数演算部18による演算結果を出力する表示器20とから構成され、モニタリングポスト10はさらに、記録媒体22、送信器24とから構成される。なお、電離箱12とエレクトロメータ16はモニタリングポスト局舎上に設けられる。また、計数演算部18等は局舎内に設けられる。
【0021】
電離箱12は、例えば球形の集電極26とそれを取り囲む球殻状の容器電極28とから構成される。容器電極28は略球形に構成されているため全方向に対して放射線を検出できる。容器電極28内部には加圧した希ガスが封入されており、放射線が入射すると内部に封入されたガスが電離する。電離箱12に高電圧を印加し、電離により生じた電荷を補集し、出力電流として電離箱12から取り出す。容器電極28は例えば、半径30cm、容量14lで、内部には例えば圧力4atmのArガスが封入されている。但し、電離箱12の形状、及び封入ガスの種類は本実施例にあげたものに限らない。封入ガスとしては、一旦電離した電子等が付着しにくい窒素ガス等を使用してもよい。
【0022】
電離箱12へ電圧を印加する電源ユニット14は、使用時の電圧を供給する高電圧電源30と高線量率における電離箱12の検出特性検査用の低電圧電源32とを含む。また、電源ユニット14に設けられたスイッチ機構34により高電圧電源30と低電圧電源32は切り換え可能である。通常の装置使用時には高電圧電源30により容器電極28には例えば−1000Vの電圧が印加される。また、低電圧電源32の印加電圧は例えば−数Vであり、電圧値は可変することができる。
【0023】
集電極26には導線36の一端が接続されており、導線36の他端は絶縁体38を介して容器電極28から電離箱12外部に引出される。導線36を介して電離箱12から取り出された出力電流はエレクトロメータ16で電圧信号に変換され、計数演算部18に入力される。エレクトロメータ16はオペアンプ40、抵抗42、コンデンサ44から構成されており、抵抗42及びコンデンサ44はフィードバック素子として使用される。例えば、抵抗値は1.5TΩ〜1.5×10MΩまで段階的に切り換えることができ、またコンデンサ44の容量は5pFである。エレクトロメータ16から出力される電圧信号の大きさは、補集された電荷の平均電流と抵抗42の抵抗値できまり、また電圧信号のパルスの時定数は抵抗42の抵抗値とコンデンサ44の容量との積により定まる。したがって、上記のように抵抗42及びコンデンサ44をフィードバック素子として使用すれば、補集した電荷の平均電流に応じた電圧信号を得ることができる。ここで、計数演算部18の前段に適宜、増幅器、波形整形回路等を設けてもよい。
【0024】
計数演算部18は、エレクトロメータ16からの電圧信号に基づいて放射線の線量率等を演算し、演算結果を表示器20、記録媒体22、送信器24に出力する。また、図1に示す例では、計数演算部18は電離箱12の検出特性検査時に良否判定を行う判定部46を含み、計数演算部18及び判定部46はマイコン上で実現される。但し、判定部46を特別に設けず、良否判定を人為的に行う場合も本発明の一態様である。
【0025】
表示器20はモニタリングポストの局舎正面等に設けられ、検出した放射線の線量率等を表示する。また、記録媒体22は計数演算部18からの線量率データ等を保存するメモリである。こうすれば、放射線環境に関するデータを後日詳細に分析できる。送信器24は線量率データ等を遠隔の監視センタ(図示せず)等に送信する。こうすれば、放射線環境を遠隔地にて把握できる。
【0026】
次に、電離箱12の低線量率(例えば数μGy/h)及び高線量率(例えば100mGy/h)における検出特性を検査する方法について説明するが、その前に電離箱12の正常動作時及び劣化時における検出特性を説明する。
【0027】
図2は、電離箱12に照射される放射線の線量率を固定した場合における電離箱12に対する印加電圧と出力電流との関係(飽和特性)を示した図である。横軸は電離箱12に印加する電圧の大きさ、縦軸は電離箱12の出力電流を示す。実線は電離箱12が正常な場合の飽和特性を示しており、一点鎖線は電離箱12の検出特性が劣化した場合、例えば容器内表面からの不純ガスの湧き出しや、封入していたガスのリーク等が起こった場合の飽和特性を示している。
【0028】
電離箱12の検出特性が正常な場合、印加電圧を低電圧側から上げていくにしたがって、電離箱12の出力電流は増加する(図中、A再結合領域参照)。しかし、さらに印加電圧を上げると出力電流はある値で飽和し、それ以上印加電圧を上げても一定範囲においては出力電流の値にあまり変化が見られない(図中、B飽和領域参照)。なぜなら、印加電圧が低い領域では、電離箱12内に生成される電場が弱いため、電離で生じたイオンの速度が遅く、集電極26、或いは容器電極28に到達する前に、正負のイオンが結合するからである。これは周知のように再結合といわれる。すなわち、印加電圧を上げていくと、イオンの速度が増し、電極に到達する前に結合する割合が減少するので出力電流は増加する。さらに印加電圧を増加すると、電離で生じたイオンのほとんどすべてを電極に集めることができるので、出力電力はそれ以上増加せず飽和値に達する。この飽和領域にある出力電流は飽和電流と称される。
【0029】
電離箱12が劣化した場合、例えば容器内表面からの不純ガスの湧き出しが起こった場合は電離箱12内の不純ガス濃度が増加するために、正常時よりもイオンの再結合する割合が多くなる。それゆえ、出力電流が飽和電流に達するためには正常時よりも高電圧を印加する必要がある。図2において、印加電圧V0における出力電流は正常時は飽和電流に達していたが、劣化時には出力電流が減少しており、飽和電流からの損失分(図中、a参照)が見られる。
【0030】
なお、図2に示した飽和特性の振る舞いは基本的に電離箱12に照射される放射線の線量率の大きさによらない。すなわち、印加電圧を上げていくにしたがって、電離箱12の出力電流は増加し、さらに印加電圧をあげると出力電流はある値で飽和する。ただし、電離により生成されるイオン数は線量率に比例するので、飽和電流の値は線量率に比例する。
【0031】
次に、図3を用いて放射線の線量率を変化させた場合、電離箱12の出力電流の変化を説明する。ここで、電離箱12には通常の使用電圧(高電圧:1000V)が印加されている。横軸は電離箱12に照射された放射線の吸収線量率、縦軸は電離箱12の出力電流を示す。実線は電離箱12の検出特性が正常な場合を示しており、一点鎖線は電離箱12の検出特性が劣化した場合のものを示している。
【0032】
電離箱12の検出特性が正常な場合、出力電流が入射する放射線の線量率に比例している(線量率直線性)。なお、各線量率における出力電流は飽和電流である。一方、一点鎖線は電離箱12の検出特性が劣化した場合であり、低線量率側で出力電流は線量率にほぼ比例しているが、高線量率側では線量率直線性が低下している。これは、電離箱12内の不純ガス濃度が増加し、出力電流に飽和電流からの損失分(図中、b参照)が生じるためである。高線量率側で、損失分の割合が大きくなるのは、イオンの再結合する割合がその密度に依存するためであり、イオンの密度が大きいほど再結合する割合が多くなるからである。
【0033】
したがって、一般に所定の線量率における電離箱12の検出特性を検査するには電離箱12に使用電圧を印加し、目的の線量率に応じた線源により電離箱12を照射しそこからの出力電流を検出して出力電流が飽和電流に達しているかを検査すればよい。
【0034】
以下、図4に低線量率、例えば吸収線量率が数μGy/hにおける電離箱の検出特性を検査する工程を示す。まず、低放射能の線源48(図1中、点線参照)、例えば137Cs(3.7MBq)等を所定の位置に配置し、低線量率で放射線を電離箱12に照射する(S101)。ここで、線源48は例えば局舎屋上から1メートルの位置に固定される。次に、高電圧電源30により使用電圧を電離箱12に印加した状態で、電離箱12からの出力電流をエレクトロメータ16により検出する(S102)。エレクトロメータ16は出力電流を電圧信号に変換し、それに基づいて、電離箱12の検出特性の良否判定を予め定められた基準に基づいて行う(S103)。判定方法としては、例えば飽和電流に対して検出された飽和電流からの損失分の割合が±5%以内なら検出特性が正常であると判定し、そうでない場合は電離箱12が劣化していると判定すればよい。判定結果は表示器20、記録媒体22、送信器24等に出力される。
【0035】
検出特性を検査するに際し、検査したい線量率の値が十分低ければ目的の線量率に応じた線源を使えばよいが、目的とする線量率が高い場合(例えば数100mGy/h)、高線量率の線源を直接使えない場合があり、その時は上記の方法は使えない。
【0036】
しかしながら、使用電圧を印加した電離箱12に高線量率の放射線を照射した場合の電離箱12の検出特性は使用電圧よりも低電圧を印加した電離箱12に低線量率の放射線を照射した場合の電離箱12の検出特性と相関があり、高線量率の線源を使わずに低線量率の線源を使って電離箱12の検出特性を検査することができる。
【0037】
図5は高線量率(100mGy/h)において使用電圧(高電圧:1000V)付近の電圧を印加した場合の電離箱12の飽和特性と低線量率(数μGy/h)において低電圧(数V)を印加した場合の電離箱12の飽和特性を図示したものである。横軸は電離箱12に印加する電圧の大きさ、縦軸は電離箱12の出力電流を示す。実線は正常時の飽和特性であり、点線は劣化時の飽和特性である。右上には、吸収線量率が100mGy/hにおける飽和特性の一部が示されている。一方、左下には吸収線量率が数μGy/hにおける飽和特性が示されている。図からわかるように、高線量率の放射線を照射し、高電圧を印加した場合の飽和特性と、低線量率の放射線を照射し、低電圧を印加した場合の飽和特性とは類似しており、両者に相関関係があることがわかる。
【0038】
印加電圧が1000Vの場合、正常時は飽和電流I1が出力電流であり、劣化時は再結合による飽和電流からの損失分δI1(図中、c参照)を生じる。一方、低電圧側において、正常時に得られる飽和電流をI2とし、劣化した場合の飽和電流からの損失分をδI2(図中、d参照)とすると、電圧の値をうまく選ぶことにより飽和電流と損失分の比δI1/I1とδI2/I2とが等しくなるようにすることができる。逆にいえば、I2及びδI2を測定すれば、吸収線量率が100mGy/h、印加電圧が1000Vにおける電離箱12の検出特性が検査できる。
【0039】
以下、簡単のために平行平板電極間に電圧を印加した電離箱において上記の相関関係を具体的にみる。電離箱の飽和電流Iと再結合による飽和電流からの損失分δIとの比δI/Iは次式で与えられる。
【0040】
【数1】
δI/I=(α・N0・d2)/(6・w+・w-) (1)
ただし、δIは損失する場合を正にとる。ここでαは再結合係数、N0は単位時間あたりのイオン発生率、dは電極間距離、w+は正のイオンの速度、w-は負のイオンの速度、である。正/負イオンの速度w±は、電離箱内の電場E、電離箱内のガスの封入圧P、正/負イオンの移動度μ±により定まり、w±=μ±・E/Pの関係がある。ここで、単位時間あたりのイオン発生率N0が吸収線量率に比例していること、また電場が電圧とE=V/dの関係にあることに注意すると、δI/Iは吸収線量率に比例し、V2に反比例する。使用電圧1000Vを印加し、高線量率、例えば100mGy/hの吸収線量率におけるδI/Iを測定したい場合、低放射能線源を使用して同じδI/Iが測定できる。例えば吸収線量率が0.3μGy/hとすると簡単な計算で印加電圧を約1.7Vまで下げれば同じδI/Iを測定できる。
【0041】
なお、式(1)は平行平板電極を備えた電離箱においてのみ成立する関係であるが、電離箱の飽和電流Iと再結合による飽和電流からの損失分δIとの比δI/Iが吸収線量率が大きくなれば大きくなり、また印加電圧、すなわち電離箱内の電場が大きくなれば小さくなるという関係は電離箱の形状によらず一般的に成立する。
【0042】
したがって、高線量率の線源を使わないで、高線量率における電離箱12の検出特性を検査するには、低線量率の線源で電離箱12を照射し、印加電圧を使用電圧から低電圧に切り換えて電離箱12の出力電流を検出し、低線量率の線源で電離箱12を照射した場合の正常時の出力電流と比較すればよい。
【0043】
以下、図6に高線量率、例えば吸収線量率が100mGy/hにおける電離箱の検出特性を高放射能線源を用いずに検査する工程を示す。まず、低放射能の線源48(図1中、点線参照)、例えば137Cs(3.7MBq)等を所定の位置に配置し、低線量率で放射線を電離箱12に照射する(S201)。ここで、当該低放射能の線源48は前述の低線量率における電離箱の検出特性を検査する際に使用した線源と同じものを使用してもよい。次に、スイッチ機構34により電離箱12の電源を高電圧電源30から低電圧電源32に切り換えた状態において、電離箱12からの出力電流をエレクトロメータ16により検出する(S202)。計数演算部18はエレクトロメータ16からの電圧信号を記録する(S203)。次に、印加電圧を変化させて(S204)その変化にともなう電圧信号を逐次、計数演算部18により記録する。その記録に基づいて、予め定められた基準と照らして電離箱12の検出特性の良否を判定し(S205)、その結果を表示器20、記録媒体22、送信器24に出力する。
【0044】
良否判定は、印加電圧を変化させずに行ってもよく、その場合、例えば飽和電流に対して検出された飽和電流からの損失分の割合が±5%以内なら検出特性が正常であると判定し、そうでない場合は電離箱12が劣化していると判定すればよい。印加電圧を変化させる場合は、電離箱12の正常時に得られる既知の電圧信号と比較してもよいし、印加電圧の変化にともない得られた一連の電圧信号のグラフ形状例えば傾き等に基づいてもよい。また、良否判定は本実施形態においては判定部46において行われるが、人為的に行う場合も本発明の一態様である。
【0045】
本実施形態においては、高線量率における電離箱の検出特性を低放射能線源を用いて検査したが、一般には所定の線量率の放射線を電離箱に照射した状態で、印加電圧を変化させれば、任意の線量率における電離箱の検出特性が検査できる。
【0046】
また、電源ユニット14のスイッチによる電圧電源の切り換えは手動で行ってもよく、判定部46で制御するようにしてもよい。
【0047】
上記の電離箱型放射線検出装置及び電離箱検査方法は、γ線測定用電離箱に限らず、封入ガスの電離作用を利用するものであればいずれの電離箱にも適用可能である。
【0048】
【発明の効果】
上記のように構成したので、本発明に係る電離箱型放射線検出装置および電離箱検査方法によれば高線量率における電離箱の検出特性を高放射能線源を利用することなく検査できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る電離箱型放射線検出装置を設けたモニタリングポストを示す図である。
【図2】 電離箱の飽和特性を示す図である。
【図3】 電離箱の検出特性を示す図である。
【図4】 低線量率における電離箱の検出特性を検査する工程を示すフローチャートである。
【図5】 高線量率における電離箱の飽和特性と低線量率におけるものとの相関関係を示す図である。
【図6】 高線量率における電離箱の検出特性を検査する工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 モニタリングポスト、12 電離箱、14 電源ユニット、16 エレクトロメータ、18 計数演算部、20 表示器、22 記録媒体、24 送信器。
Claims (5)
- 放射線を検出する電離箱と、
前記電離箱に電圧を印加する電源と、
前記電源の印加電圧を通常の使用電圧から低電圧に切り換える電圧切換手段と、
前記電離箱の検出特性の良否を判定する良否判定手段と、
を含み、
前記良否判定手段は、前記低電圧を印加された前記電離箱により検出される低線量率の放射線に関する検出特性に基づいて、高線量率の放射線に対する前記電離箱の検出特性の良否を判定する、
ことを特徴とする電離箱型放射線検出装置。 - 請求項1に記載の電離箱型放射線検出装置において、
前記良否判定手段は、前記低電圧を印加されて前記低線量率の放射線を検出した前記電離箱の飽和特性と予め定められた正常時の飽和特性との比較に基づいて、高線量率の放射線に対する前記電離箱の検出特性が劣化しているか否かを判定する、
ことを特徴とする電離箱型放射線検出装置。 - 請求項2に記載の電離箱型放射線検出装置において、
前記良否判定手段は、前記低電圧を変化させつつ前記低線量率の放射線を検出することにより得られる前記電離箱の飽和特性と前記正常時の飽和特性を比較する、
ことを特徴とする電離箱型放射線検出装置。 - 高線量率での電離箱の検出特性の良否を検査する電離箱検査方法であって、
前記電離箱に対して低線量率で放射線を照射する工程と、
前記電離箱への印加電圧を通常の使用電圧から低電圧に切り換えて、当該電離箱の出力電流を検出する工程と、
前記検出により得られる低線量率の放射線に関する検出特性に基づいて、高線量率の放射線に対する前記電離箱の検出特性の良否を判定する工程と、
を含むことを特徴とする電離箱検査方法。 - 低線量率における電離箱の検出特性の良否を検査する第1検査工程と、
高線量率における前記電離箱の検出特性の良否を検査する第2検査工程と、
を含み、
前記第1検査工程は、
前記電離箱に対して低線量率で放射線を照射する第1照射工程と、
前記電離箱へ高電圧を印加して、当該電離箱の出力電流を検出する第1検出工程と、
前記第1検出工程において得られた検出結果と予め定められた基準とに基づいて、低線量率における電離箱の検出特性の良否を判定する第1判定工程と、
を含み、
前記第2検査工程は、
前記電離箱に対して低線量率で放射線を照射する第2照射工程と、
前記電離箱へ低電圧を印加して、当該電離箱の出力電流を検出する第2検出工程と、
前記第2検出工程において得られた検出結果と予め定められた基準とに基づいて、高線量率における電離箱の検出特性の良否を判定する第2判定工程と、
を含むことを特徴とする電離箱検査方法。
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