JP4136301B2 - 放射性イオン検出器 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は放射性イオン検出器に係り、とくにラドンおよびトロンと、その崩壊によって得られる放射性元素から成る放射性イオンの測定に用いて好適な放射性イオン検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気中にはラドンおよびトロンと、その崩壊によって作られる放射性核種が含まれている。これらの放射性核種の大部分は正イオンに帯電している。すなわち大気中には放射性イオンが含まれている。従って大気中でのこれらの放射性イオンの濃度を測定するために、従来は負の高電圧を印加した捕集板によってこれらの放射性イオンを静電的に捕集し、これらの核種から放出されるα線またはγ線を専用の放射線検出器によって検出し、これによって大気中でのラドンおよびトロン濃度の測定を行なっている。
【0003】
図7はとくに大気中に存在する放射性イオンを捕集する状態を示しており、捕集板1に負高電圧源2を接続し、これによって捕集板1を負に帯電させておくと、正イオンから成る放射性イオンがこの捕集板1によって捕集される。
【0004】
放射性イオンの捕集を終った後に図8に示すように、捕集板1を放射線検出器3の入射部に配置する。放射線検出器3は増幅器4および波高分析器5に接続されており、さらに波高分析器5がモニタ6に接続されている。
【0005】
従って捕集板1によって捕集された放射性イオンが放出するα線またはγ線を放射線検出器3によって検出するとともに、検出出力を増幅器4によって増幅し、波高分析器5で分析してモニタ6に出力することが可能になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のこのような放射性イオンの測定は、放射性イオンの捕集と捕集された放射性イオンの検出とを別々に行なうようにしている。すなわち測定がバッチ処理であって、連続的なリアルタイムでの測定を行なうことができなかった。また捕集板1による放射性イオンの捕集と放射線検出器3による検出とに時間差がある場合には、その間の時間に捕集板1で捕集された半減期が短い放射性イオンが崩壊し、他の元素に変換する可能性がある。従ってぐずぐずしていると測定値に誤差を生じ、これによって正しい測定が行なえなくなるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、放射性イオンをより正確にしかもリアルタイムで測定することが可能な放射性イオン検出器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、検出する放射性イオンとは逆極性の電圧が印加された捕集電極を放射線の入射部に設けた放射性イオン検出器であって、シリコン半導体検出器から構成され、該半導体検出器が半導体素子から成り、その一方の電極が直接捕集電極を構成し、該捕集電極に負のバイアス電源が接続されてマイナス電位が印加され、前記捕集電極を構成する一方の電極とは反対側の他方の電極がアース電位にされ、検出に伴う電流を前記一方の電極を通して取出すことを特徴とする放射性イオン検出器に関するものである。
【0010】
このような放射性イオン検出器によれば、通常の放射線検出器とほぼ同一の構造としながら、その放射線の入射部に設けられた捕集電極によって、正に帯電している放射性イオンを静電収集することができる。そして捕集電極に捕捉された放射性イオンが出すα線あるいはγ線をこの検出器によって直接的に直ちに測定することが可能になり、リアルタイムでの放射性イオンの検出が可能になる。
【0011】
また通常の放射線測定回路に接続してその計数率を観測することによって、ラドン濃度のモニタ等が可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の第1の実施の形態に係る放射性イオン検出器を示している。この放射性イオン検出器はフォトダイオードから成る半導体素子11を備えるとともに、この半導体素子11のアノード側に負のバイアス電源12を接続している。またアノード17には増幅器13を接続するとともに、検出に伴って流れる電流を増幅器13によって増幅し、波高分析器14によって検出するようにしている。
【0013】
図2はこのような半導体検出器の具体的な回路構成を示しており、フォトダイオードから成る半導体素子11の入射部を構成するアノード17に抵抗19を介して負バイアス電源12が接続されている。またアノード17はコンデンサ20と抵抗19とから成る前置増幅器21を介して主増幅器13に接続され、この主増幅器13の出力側が波高分析器14に接続されている。
【0014】
ここで負のバイアス電源12によって半導体素子11の入射部を構成するアノード17が例えばマイナス100Vの電圧を印加される。従って大気中に正イオンから成る放射性イオンが存在する場合には、このイオンがアノード17によって捕捉される。そしてアノード17に捕捉された放射性イオンからα線あるいはγ線が放出される。α線は正の帯電粒子であるから、半導体素子11内において電子と正孔の対が生成され、これらが電界によってアノード17およびカソード18にそれぞれ移動する。正孔の移動によってアノード17に電流が流れ、抵抗19の両端パルス電圧が生じる。この電圧信号が前置増幅器21および主増幅器13によって増幅され、波高分析器14によってそれぞれのα線のエネルギが分析される。
【0015】
このように本実施の形態の半導体検出器は放射性イオンを半導体素子11のアノード17の表面に直接静電捕集し、このアノード17の表面に捕集されたイオンから崩壊によって放出されるα粒子のエネルギをこの半導体素子11から成る検出器によって直接計測するようにしている。このような目的の検出器としてシリコン半導体検出器が好適である。通常このような検出器の放射線入射部17はアース電位として従来用いられている。
【0016】
これに対して本実施の形態の半導体検出器は、その入射部17に負のバイアス電圧を負バイアス電源12によって印加し、放射性イオン核種を直接入射部17で捕集し、捕集されたイオンから放出されるα線のエネルギ信号を直接計測するようにしている。すなわち検出器の表面17に静電捕捉された放射性イオンはそこで崩壊α線を放出する。このエネルギ信号をこの検出器が直接測定することになる。
【0017】
このような半導体検出器は、通常の放射線検出器と外観上および構造は変わらないが、その入射部を構成するアノード17の表面に放射性イオンを静電収集することができる点が極めて大きな特徴である。また通常の放射線測定回路に接続してその計数率をリアルタイムで観測することによって、ラドン濃度のモニタとして使用できる。
【0018】
所定時間、例えば1秒間に放射性イオンが崩壊する割合は、そのときに存在する放射性イオン元素の個数に比例する。従って例えば放射性崩壊する際にα粒子が放出されるとすると、このα粒子の個数を測定することによって放射性元素の濃度に関する情報が得られる。すなわち放射性元素の濃度変化のモニタが可能になる。このようなモニタの応用例は、例えば大気中に含まれるラドンあるいはトロンの濃度の測定である。
【0019】
大気中のラドンおよびトロンは、地中および建材のコンクリートあるいは各種鉱物等に含まれるウラン、ラジウム、トリウム等が崩壊して生成される。このラドン・トロン元素は不活性ガスのために中性原子となって大気中に放出されて拡散されていく。このラドン・トロンの濃度を知ることは極めて重要である。
【0020】
このためにこれらの元素が崩壊して放出するα粒子を測定すればよい。しかしこれらの元素は電気的に中性であるために静電的に捕集することができない。しかしラドン・トロンがα崩壊して生成されるポロニウム元素の90%以上は正イオンとなっているので、本実施の形態の検出器でこれらの正イオンを直接静電的に検出器表面17に捕集することができる。そしてこれらの検出器でポロニウム原子が崩壊して放出されるα粒子を効率50%で測定することができ、またこれらのα粒子のエネルギ値から親の元素がラドンかトロンであるかの識別が容易にでき、これらの濃度のモニタが可能になる。
【0021】
次に第2の実施の形態を図3および図4によって説明する。この実施の形態は電離箱から成る検出器に関するものであって、筒状をなす絶縁ケース24の入射側の開口部には捕集電極を構成するマイラー箔25が取付けられる。なおこのマイラー箔25の表面には例えばアルミニウムの蒸着による導電膜が形成される。マイラー箔25の厚さは例えば4μm程度であってよい。また捕集電極25と対向するように絶縁ケース24内には対向電極26が配される。そして対向電極26は増幅器27を介して波高分析器28に接続される。
【0022】
図4はより具体的な回路構成を示しており、ここでは例えばマイナス1000Vの負高圧電源31が捕集電極25に接続される。また対向電極26と抵抗34との接続点に前置増幅器32が接続され、この前置増幅器32の出力側が主増幅器27に接続される。そして主増幅器27の出力側が波高分析器28に接続される。
【0023】
このような電離箱から成る検出器において、大気中に存在する放射性イオンは正に帯電しているために、負高圧電源31によってマイナスに帯電しているマイラー箔25から成る捕集電極によって捕集される。そして捕集された放射性イオンがα線を放射すると、このようなα線がマイラー箔25を透過して絶縁ケース24の内部に侵入するとともに、絶縁ケース24の内部の気体を電離して電子と陽イオン対を作る。これらの電子と陽イオンは、それぞれ電離箱内の電場によってアノード26およびカソード25に移動する。このとき電子の移動速度は、陽イオンの移動速度に比べて約千倍速いので、通常電離箱では電子の移動によるアノード26からの信号を用いる。アノード26で生じる誘導電流を抵抗34を通してパルス電圧に変換して、前置増幅器32および主増幅器27で増幅し波高分析器28によってそのエネルギを計測する。
【0024】
とくにこの電離箱から成る検出器の特徴は、絶縁ケース24の上部側の入射窓にα粒子が透過できる程度の薄い導体膜、例えばアルミニウムを蒸着したマイラー箔に負の高電圧を負高電圧源31によって印加することが大きな特徴である。これによってマイラー箔25でその表面に放射性イオンを直接捕捉することが可能になり、捕捉された放射性イオンはそこで崩壊してα線を放出する。このようなα線が直接電離箱で検出されることになる。従ってこの場合においても、リアルタイムでの放射性イオンの測定が可能になる。
【0025】
次に第3の実施の形態を図5および図6によって説明する。この実施の形態は図5に示すように光電子増倍管40とプラスチックシンチレータ41とを用いたシンチレーション検出器に関するものである。そしてここではとくにプラスチックシンチレータ41の上面であってその入射側に捕集電極を構成するマイラー箔42を取付けている。マイラー箔42はアルミニウム蒸着マイラー箔から構成され、約4μmの厚さである。そしてこのようなマイラー箔42に負高電圧源43が接続されている。
【0026】
図6に示すように光電子増倍管40のアノード端子49にはコンデンサ45を介して増幅器46が接続されるとともに、光電子増倍管40のアノード49とコンデンサ45との間に抵抗44が接続されている。また増幅器46の出力が波高分析器47に接続されている。また負高電圧源43はコネクタ48を介して光電子増倍管40のカソード端子50と上記マイラー箔42とに接続されるようになっている。すなわちこのシンチレーション検出器の特徴は、光電子増倍管40のカソード端子50に加えられるマイナスの電圧を同時にプラスチックシンチレータ41の上面の捕集電極42に接続することである。
【0027】
このようなシンチレーション検出器において、大気中に存在する放射性イオンは負高圧電源43によってマイナスの高電圧、例えばマイナス1500Vの電圧が印加されている捕集電極42によって捕集される。そして捕集電極42によって捕集された放射性イオンがα線を放出すると、このα線がプラスチックシンチレータ41を構成する物質の分子原子の電子状態を励起する。これによって原子がより低いエネルギ状態に移るときにプラスチックシンチレータ41が蛍光を発生する。この蛍光を光電子増倍管40によって光電子に変換してさらに電流増幅し、アノード電流として取出し抵抗43を通してパルス電圧信号に変換し、増幅器46によって増幅し、波高分析器47によって分析している。
【0028】
通常のシンチレーション検出器の入射窓を構成するプラスチックシンチレータ41の上面の入射部はアース電位として使用されていたのを、ここではこのプラスチックシンチレータ41の上部に捕集電極42を設けるようにし、このような捕集電極42に逆電圧を印加して大気中に存在する正イオンから成る放射性イオンを静電的に捕集するようにしている。そして検出器の捕集電極42に捕集された放射性イオンによってプラスチックシンチレータ41で蛍光を発生させ、この蛍光を光電子増倍管40で検出して検出出力を得るようにしている。従ってこのようなシンチレーション検出器によっても、大気中の放射性イオンをリアルタイムでかつ直接的に測定することが可能になる。
【0029】
以上本発明を図示の実施の形態によって説明したが、本発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想に基いて各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態では半導体検出器、電離箱、シンチレーション検出器を挙げているが、本願発明はそれ以外の比例計数管、GM計数管、チェレンコフ計数器等を応用した検出器として構成することが可能である。また上記実施の形態では捕集電極に負の電圧を印加しているが、負の放射性イオンの測定に用いる場合には、捕集電極に正の電圧を印加すればよい。
【0030】
【発明の効果】
本願発明は、検出する放射性イオンとは逆極性の電圧が印加された捕集電極を放射線の入射部に設けた放射性イオン検出器であって、シリコン半導体検出器から構成され、該半導体検出器が半導体素子から成り、その一方の電極が直接捕集電極を構成し、該捕集電極に負のバイアス電源が接続されてマイナス電位が印加され、捕集電極を構成する一方の電極とは反対側の他方の電極がアース電位にされ、検出に伴う電流を一方の電極を通して取出すことを特徴とするものである。
【0031】
従ってこのような放射性イオン検出器によれば、捕集電極に捕集された放射性イオンが発生するα線等の放射線を直接的にかつリアルタイムで測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体検出器のブロック図である。
【図2】同検出器の回路図である。
【図3】電離箱から成る検出器のブロック図である。
【図4】同検出器の回路図である。
【図5】シンチレーション検出器のブロック図である。
【図6】同検出器の回路図である。
【図7】従来の検出方法における放射性イオンの捕集のための装置のブロック図である。
【図8】同従来の放射性イオンの検出動作を示す検出器のブロック図である。
【符号の説明】
1 捕集板
2 負高電圧源
3 放射線検出器
4 増幅器
5 波高分析器
6 モニタ
11 半導体素子(フォトダイオード)
12 負バイアス電源
13 増幅器
14 波高分析器
17 アノード(入射部)
18 カソード
19 抵抗
20 コンデンサ
21 前置増幅器
24 絶縁ケース
25 マイラー箔(捕集電極)
26 対向電極(アノード)
27 増幅器
28 波高分析器
31 負高圧電源
32 前置増幅器
34 抵抗
40 光電子増倍管
41 プラスチックシンチレータ
42 マイラー箔(捕集電極)
43 負高電圧源
44 抵抗
45 コンデンサ
46 増幅器
47 波高分析器
48 コネクタ
49 アノード端子
50 カソード端子

Claims (1)

  1. 検出する放射性イオンとは逆極性の電圧が印加された捕集電極を放射線の入射部に設けた放射性イオン検出器であって、シリコン半導体検出器から構成され、該半導体検出器が半導体素子から成り、その一方の電極が直接捕集電極を構成し、該捕集電極に負のバイアス電源が接続されてマイナス電位が印加され、前記捕集電極を構成する一方の電極とは反対側の他方の電極がアース電位にされ、検出に伴う電流を前記一方の電極を通して取出すことを特徴とする放射性イオン検出器。
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