JP4494094B2 - 耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布 - Google Patents

耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布 Download PDF

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本発明は、高耐水性能及び耐毛羽性が要求され、また同時に、強度や耐熱性も要求され、更にはフィルター性能も要求される分野、例えば包材用途として使用される乾燥包材や滅菌包材等に有用なポリエステル不織布に関するものである。
従来、極細繊維不織布層と長繊維不織布層とを積層して熱圧着で一体化することは広く行われている。素材として、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を使用した場合は、素材が疎水性であるため高耐水性能を得ることは出来るが、素材の融点が低く耐熱性に劣り、高強度も得られないため、それらの特性を要求される分野には適さなかった。
タイベック(登録商標)に代表されるように、ポリエチレンを用いたフラッシュ紡糸(例えば、特許文献1参照)で繊維ウェブを製造し、その後、熱接着を行う方法(例えば、特許文献2、特許文献3参照)が採用されている。しかし、フラッシュ紡糸法は、紡糸する際にクロロフルオロメタンのような溶剤を用いる必要があり、環境汚染の問題や溶剤回収による操業安全面の問題等の欠点があった。また、この方法ではポリオレフィンを使用しているため、合成紙としては高耐水性及び高強力を得ることは出来るが、ポリエステル素材と比べて耐熱性で劣ってしまうという問題があった。
また、公知のスパンボンド法(例えば、特許文献4、特許文献5参照)と熱接着法とを組合わせて合成紙を得る方法において、ポリエステル系のポリマーを使用することにより高強度や耐熱性に優れた合成紙を得ることは出来るが、ポリエステル素材のみを使用した場合は、疎水性能の点で劣り、高耐水性能を必要とされる分野には適さず、繊維充填度が疎である(即ち、不織布の開孔度が大きい)ためにフィルター性能を必要とする分野にも適さなかった。
特許文献6には、ポリエステルとポリオレフィンとの混合物からなり、メルトブロー法により得られた極細繊維で構成された不織布を、カレンダー加工することによって合成紙を得ている。しかし、この方法では、極細繊維のみで構成されるため、高強力を有する合成紙を得ることが出来ない。
米国特許第3,081,519号明細書 特公昭43−21112号公報 特公昭44−21817号公報 特公昭49−30861号公報 特公昭37−4993号公報 特開平6−136656号公報
本発明の課題は、上記のような従来技術の問題を解決し、耐水性能や耐毛羽性に優れ、引張強力や耐熱性の高いポリエステル不織布を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂に特定量のポリオレフィン系樹脂を混合して溶融押出紡糸し、繊維化して極細繊維不織布と長繊維不織布の積層構造体とし、繊維表面に非連続な疎水点(帯域)を特定割合で点在化させ、更にカレンダー加工を施すことにより、耐水性と耐毛羽性の両者が共に向上することを見出し、本発明をなすに至った。
本発明は以下の通りである。
1.ポリオレフィン系樹脂が1〜50wt%の範囲で混合されたポリエステル系樹脂素材からなる繊径が5μm以下である極細繊維不織布層と、繊径が7μm以上であるポリエステル系樹脂を主体とした長繊維不織布層が、熱圧着により一体化された積層構造体を、カレンダー加工を施すことにより、3級以上の耐毛羽性及び2kPa以上の耐水圧値を有する積層不織布構造体からなることを特徴とする耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
2.積層構造体のポリエステル系樹脂の含有率が70wt%以上であることを特徴とする上記1に記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
3.極細繊維不織布を構成する極細繊維の表面にポリオレフィン系の樹脂の非連続な相が散在していることを特徴とする上記1または2に記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
4.長繊維不織布層を構成する長繊維が、ポリオレフィン系樹脂を7wt%以下で混合されているポリエステル系樹脂からなることを特徴とする上記2に記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
5.積層構造体の目付が10g/m以上であり、長繊維不織布層の目付けが8g/m以上であり、極細繊維不織布層の目付が2g/m以上であり、且つ、積層構造体が13N/3cm以上の引張強力値を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
6.極細繊維不織布層が、ポリオレフィン系樹脂を1〜30wt%混合したポリエステル系樹脂からなる極細繊維で構成されていることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
7.カレンダー加工を施すことにより耐毛羽性が3.5級以上であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
8.極細繊維不織布を構成する極細繊維が、溶液粘度(ηsp/C)範囲0.2〜0.8のポリエステル系樹脂で形成されていることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
9.極細繊維を形成するポリエステル系樹脂に混合されるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレンもしくはポリエチレンであることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
10.極細繊維を形成するポリエステル系樹脂に混合されるポリオレフィンのMFRが100g/10分以上であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
11.極細繊維不織布層に表面張力の異なる試薬を滴下した際の濡れ・含浸開始レベルが50mN/m以下である極細繊維不織布層を用いていることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
12.極細繊維不織布層が、ポリオレフィン系樹脂を混合したポリエステル系樹脂を押出機を経て押出し、メルトブロー法で得られた極細繊維で構成されていることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
13.紡糸されコンベアネット上に蓄積された少なくとも1層の長繊維不織布の層の上に、同一のコンベアネット上に蓄積される少なくとも1層の極細繊維不織布層を積層し、更にその上に、紡糸された少なくとも1層の長繊維不織布層を重ねて形成される積層体を、熱圧着により一体化して得られる積層構造体で構成されていることを特徴とする上記12に記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
以下、本発明について詳述する。
本発明の高耐水圧ポリエステル不織布は、繊径及び組成が相互に相違する繊維で構成され、そして積層不織布の積層構造が部分熱圧着等の作用により熱固定されることで、顕著な高耐水圧性が付与される。更に、その積層構造体にカレンダー加工を施すことで、高耐水性能及び耐毛羽性に優れたポリエステル不織布となる。
本発明において、積層構造体を構成する不織布層の成分の一つは、繊径5μm以下の特定ポリオレフィン系樹脂が特定割合で混合されたポリエステル系樹脂の極細繊維で構成される不織布であり、不織布層成分の他の一つは、繊径が7μm以上、好ましくは7μm〜20μmであるポリエステル系樹脂を主体とした長繊維不織布である。
本発明では、このように樹脂組成及び繊径が相違する不織布が積層された積層構造が、部分熱圧着等による作用により、それぞれの不織布を構成するポリエステル繊維の表面に占めるポリエステル系樹脂の熱融着作用によって繊維間及び不織布層間の熱融着的接合を起こして固定されている。
本発明のポリエステル不織布の発揮する耐水性は、極細繊維不織布層を構成するポリエステル系極細繊維の繊維表面に、疎水性のポリオレフィン系樹脂が非連続に分布して散在し、それが疎水点として作用する構造によるものである。
また、優れた耐毛羽性は、カレンダー加工における加工線圧及び加工温度の条件を設定することで、熱融着作用による繊維間及び不織布層間の熱融着接合をより発現させ、より強固に固定された構造によるものである。
本発明において、極細繊維不織布層を構成する繊径が5μm以下のポリエステル系極細繊維は、ポリオレフィン系樹脂が1〜50wt%の範囲で混合されたポリエステル系樹脂組成物の極細繊維である。
より高い耐水性能を得るという観点からは、極細繊維不織布層におけるポリオレフィン系樹脂の混合率は大きいほうが好ましく、例えば、5〜75wt%が好ましく、より好ましくは10〜50wt%である。しかし、ポリオレフィン系樹脂の混合率が大きすぎると、耐毛羽性を付与するためのカレンダー加工を施す際に、ポリオレフィン系樹脂が溶出して、ピンホールの発生や、更に酷い場合は、破れを生じて安定した加工が出来なくなってしまう。従って、本発明においては、耐水性能と耐毛羽性を両立させるために、ポリオレフィン系樹脂の混合率を1〜50wt%としたものであり、混合率の好ましい範囲は1〜30wt%である。
本発明において、ポリエステル系樹脂は、熱可塑性ポリエステルであって、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートが代表例として挙げられる。熱可塑性ポリエステルは、エステルを形成する酸成分としてイソフタル酸やフタル酸等が重合または共重合されたポリエステルであってもよい。更には、生分解を有する樹脂、例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)、またはこれらを主たる繰返しの単位要素とする共重合体であってもよい。
一方、ポリエステル系樹脂に混合されるポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンやポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレンは、一般的なチーグラナッタ触媒により合成されるポリマーでもよいし、メタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されたポリマーであってもよい。ポリエチレンは、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)等のポリエチレンであることができ、更には、ポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体やポリプロピレン中にポリエチレンや他の添加剤を添加したポリマーであることもできる。
疎水性のポリオレフィン系樹脂が繊維表面に非連続で存在する一方、繊維表面にはポリエステルの熱接着面を有することが好ましく、そのようなポリエステル極細繊維を調製するための好ましいポリエステル樹脂組成物の条件が必要であるということは、本発明者らにより見出された知見に基づくものである。
ポリエステル系樹脂は、溶液粘度(ηsp/C)が高すぎると、繊径を細くすることが難しくなり、また、低くすぎると、製造工程中に風綿(フライ)が発生し易い条件となり、安定した紡糸が困難となる。従って、溶液粘度の範囲としては、0.2〜0.8(ηsp/C)が好ましく、より好ましくは0.2〜0.6(ηsp/C)である。なお、溶液粘度の測定は、オルトクロロフェノール溶媒25mlに試料0.25gを溶解し、温度35℃の条件で常法により測定したものである。
この極細繊維不織布層の構造としては、繊維表面に疎水点が非連続に存在すればよいため、疎水点は、散在した点状や線状及び面状であっても良い。
また、極細繊維不織布層に表面張力の異なる試薬を滴下した際の濡れ・含浸開始レベルが50mN/m以下であることが好ましい。50mN/m以下であると、繊維表面での疎水点の存在が十分且つ適度であるため、長繊維不織布層との積層構造体における耐水性が良好である。
メルトインデクサー溶融流量装置を用い、実際に溶融紡糸する際の温度と同一の温度条件で試験荷重21.18Nで10分間当りの溶融ポリマーの吐出量を測定し、この量を溶融流量とした場合、ポリエステル系樹脂の溶融流量よりもポリオレフィン系樹脂の溶融流量のほうが大きな値を示すほど、よりブリードアウトしやすい状態となる。繊維の表面にポリオレフィン系樹脂がブリードアウトしやすい状態になるほど繊維表面の疎水効果が向上するので、十分な疎水効果を得るためには、本発明において使用するポリオレフィン系樹脂は、MFRが10g/10分以上であればよく、より好ましくはMFRが100g/10分以上、更に好ましくは500〜3000g/10分のハイフロータイプであることが好ましい。なお、MFRの測定は、JIS K 7210に準じて行い、試験条件は、試験温度230℃、試験荷重21.18Nとした。
本発明において、極細繊維不織布層は、例えば、押出機内で、前述したポリオレフィン系樹脂を熱可塑性ポリエステル系樹脂に混合してポリエステル樹脂組成物の溶融物を調製し、メルトブローノズルを経て、メルトブロー紡糸法により吐出し、極細繊維として捕集面上に堆積せしめることによって調製される。メルトブロー紡糸法は公知の方法でよく、例えば、特公昭62−2062号公報や特公昭56−33511号公報に記載されている方法が挙げられる。
極細繊維不織布層を構成する繊維の繊径としては5μm以下であり、好ましくは0.5〜3μmであり、特に好ましくは0.5〜2μmである。繊維径が5μmを超えると、繊維間隙が大きくなり十分な耐水性能を得ることができない。繊径が細くなればなるほど耐水性能は向上するが、0.5μm未満の繊径の場合には、繊維が切断しやすく、製造工程中で風綿(フライ)が発生しやすい条件となり、安定した紡糸が困難となる傾向がある。なお、紡糸工程での紡口ホール当りのポリマー吐出量を少なくし、細い繊径を得る方法もあるが、生産性が低下してしまうため経済的に好ましくない。
本発明において、繊径が7μm以上のポリエステル系長繊維不織布層は、例えば、特公昭49−30861号公報や特公昭37−4993号公報等に記載されているスパンボンド不織布の製造方法を、熱可塑性ポリエステル系樹脂に適用して調製される繊径が7μm以上のポリエステル系長繊維不織布で構成される。
ここでいうポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、またイソフタル酸やフタル酸等が重合されたポリエステル、更には生分解性を有する樹脂、例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)、またはこれらを主たる繰返しの単位要素とする共重合ポリエステルであってもよい。また、ポリエステル系長繊維不織布においてポリエステル系樹脂に、ポリエステル系樹脂の7wt%を超えない範囲でポリオレフィン系樹脂を混合した樹脂組成物であってもよい。ここで混合されるポリオレフィン系樹脂は、極細繊維不織布を形成するポリエステル系樹脂に混合されるポリオレフィン系樹脂から選ばれる重合体、共重合体であってよい。
これらのポリオレフィン系樹脂を混合したポリエステル系の長繊維不織布は、水分が表面に付着した際の疎水効果に優れ、表面張力の異なる試薬を滴下した際の濡れ・含浸開始レベルも向上し、水の浸入阻止性が良くなる。ポリエステル系長繊維不織布層は、ポリオレフィン系樹脂の混合率を増やすことにより表面の疎水効果も向上するが、安定した紡糸を行うためには、混合率が3wt%以下が最も好ましい。
本発明において、極細繊維不織布層と長繊維不織布層とからなる積層構造体は、目付が10g/m以上であることが好ましく、長繊維不織布層の目付は8g/m以上であることが好ましく、極細繊維不織布層の目付は2g/m以上であることが好ましい。この範囲であると、本発明の目的が十分に達成される。
本発明において、耐水性能は、主として、極細繊維不織布層の特性により付与されている。極細繊維不織布層のみで構成されている不織布は、その不織布構造が水圧をかけたときに目開きしてしまうほど強度を欠くので、耐水性能を十分に発揮することができない。長繊維不織布層の目付が8g/m以上であると、積層構造体内に配置された極細繊維不織布層を破壊することなく保持(ガード)する強度が十分に得られるので、優れた耐水性能が得られる。また、極細繊維層の目付が2g/m以上であると、優れた耐水性能が得られ、生産性も高い。
包材等に使用される場合は、更に高強力や高耐水圧が求められるため、積層構造体の目付が40g/m以上、長繊維不織布層の目付が20g/m以上、極細繊維不織布層の目付が6g/m以上に設計することがさらに好ましい。
本発明の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布は、長繊維不織布層の上に極細繊維不織布層を積層して熱圧着により一体化させ、更にカレンダー加工を施すことにより得られる。極細繊維不織布層の構成繊維は、繊維を形成するポリエステルの結晶化度が低く、またポリオレフィン系樹脂が繊維表面に存在している。このために、積層された不織布を構造固定する際、極細繊維不織布層が加熱されたプレスロールに直接接触すると、ロールに取られやすい状態となる。このような理由で、長繊維不織布層の上に極細繊維不織布層を積層し、さらにその上から長繊維不織布層を積層して、熱圧着で一体化させた積層構造体とし、更にはカレンダー加工を施すことが好ましい。積層構造体としては、例えば、極細繊維不織布層を2層にしたり、長繊維不織布層を2層重ねる等、長繊維不織布層を上下層として極細繊維層を中間層とする多層積層構造としてもよい。
本発明の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布は、長繊維と極細繊維をシート状に各々積層し、このシート状積層ウェブ体をフラットロールまたはエンボスロールで熱圧着して積層構造を固定し、更にはカレンダー加工を施してさらに積層構造を固定することにより製造することもできる。
本発明の耐水性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布の一例として、連続プロセスの概略図を図1に示す。
図1の連続製造プロセスにおいて、耐毛羽性に優れたポリエステル不織布(200)は、図面左から右に向かって進行する無端の捕集ネット(100)上に、左端上部に設備されたスパンボンド不織布紡糸ユニット(20)から紡糸された長繊維スパンボンドウェブ(S1)が堆積され、ついで、前記の長繊維スパンボンドウェブ上に、中央部上部に設備されたメルトブロー紡糸装置(30)から紡出された所定の繊径の極細繊維からなるシート状ウェブ(M)が重ねて堆積され、更に右の下流側上部に設けられたもう一つのスパンボンド不織布紡糸ユニット(20)から紡出された長繊維スパンボンドウェブ(S2)が極細繊維不織布層(M)面上に堆積して長繊維不織布(S1)/極細繊維不織布(M)/長繊維不織布(S2)で構成される三層不織布積層シートが調製される。
この三層不織布積層シートは、捕集搬送帯で、右に搬送され、その端部から外側に引取られ、ついで熱カレンダ(101)、(102)に通され、三層不織布構造が固定される。更には右側のカレンダー加工用の熱カレンダ(103)、(104)に通されることで、より強固に三層不織布構造が固定されて、本発明の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布が調製される。
このようなプロセスを用いることで、ウェブ捕集用のコンベアネット上に紡糸された少なくとも1層の長繊維不織布の層の上に、同一のコンベアネット上に紡糸されて蓄積される少なくとも1層の極細繊維不織布層を積層し、更にその上に、紡糸された少なくとも1層の長繊維不織布層を重ねて形成される積層構造体を容易に調製することができる。
なお、図1において、21はエクストルーダ、22はスパンボンド紡糸ノズル、23は冷却チャンバー、24は牽引装置である。また31はエクストルーダ、32はギアポンプ、33はメルトブロー紡糸ノズルである。
長繊維不織布層の層数を2層以上とすることで、地合斑や、例えば一方の紡糸機で、ピンホールやメクレ等の欠損部が発生した場合でも、残る他方で欠損部をカバーできるため、極細繊維不織布層の保持(ガード)効果を、積層構造体の全面においていっそう均一化することができる。極細繊維不織布層を多層にすることについても、同様に地合斑や、例えば一方の紡糸機でピンホール等の欠損部が発生した場合にも、残る他方で一方の欠損についてカバーすることができるため、物性(特に耐水圧性)のばらつきを小さく抑制することができ、好ましい。
積層構造体は、構造体内の不織布層間、繊維間が熱圧着により一体化され固定されることが必要である。熱圧着で、より高耐水圧を得るためには、例えば、金属フラットロールにより層面間に均一な熱接合を起こさせることが望ましい。
フラットロールによる熱接着は、エンボスロールによる熱接着のように極細繊維層をエンボス部で損傷させることがないので、耐水性能を最高に発現させる上で好ましいが、エンボスロールによる熱接着も可能である。エンボスロールにより部分接着を行なう場合、エンボス形状やエンボス率は特に限定されないが、5〜40%のエンボス面積率の範囲における部分接着が行われることが好ましい。
しかし、一段プレスのみの熱接着では完全に表面の毛羽を止めることは困難であるため、後述する評価方法で毛羽試験を実施すると、毛羽等級が3級に満たなくなる。そこで、一段プレス実施後に更にカレンダー加工を施す必要がある。カレンダー加工時の熱接着条件は、目付構成により設定されるが、例えば、温度が210〜245℃、線圧が4〜50t/mが好ましい範囲である。温度が低すぎると、高い線圧をかけても毛羽を止めることができない。また、温度や線圧を高くしすぎると、ポリオレフィンの溶出によりピンホールや破れを生じるため安定した加工ができなくなってしまう。
従って、カレンダー加工時の熱圧着条件は、温度が220〜240℃、線圧が6〜30t/mの範囲がより好ましい範囲となる。また、一段プレス目をソフトプレスにしておくと、熱履歴(結晶化が進んでいない)を受けていないために、カレンダー加工時の表面の毛羽がより止まりやすくなる。毛羽等級としては、3級以上が必要であり、好ましくは3.5級以上である。
カレンダー加工により毛羽を止めることで、積層不織布構造体の表面が、一段プレスのみの場合よりも平滑性(表面のつるつる感)が向上し、触感が良好となり、取扱い性も良くなる。また、カレンダー加工により、積層不織布構造がより強固に固定され、この積層不織布構造体(合成紙)にシリコン系、ふっ素系等の撥水剤を用いて撥水処理を適用することで、耐水性能は更に向上する。
本発明の耐毛羽性に優れた高耐水性ポリエステル不織布は、積層不織布構造体の内に、極細繊維不織布層を含んでいるので、フィルター性能にも優れており、細菌のバリア性にも優れている。また、ポリオレフィン系樹脂を混合しているが、積層不織布構造体としては、ポリエステル系樹脂の含有量が多く、耐放射線性にも優れている。また、ポリオレフィンの混合により、積層不織布構造体同士をヒートシールした場合や、ヒートシール用フィルム、例えば滅菌包材等で用いられるPET/PPのヒートシール用フィルムをヒートシールした場合においても、ピール性(剥離時の強度及び耐毛羽性)に優れているといった特徴を有している。
本発明のポリエステル系不織布は、以上のような積層構造体とすることにより、耐毛羽性や耐水圧に優れており、耐熱性や引張強度も高く、通気性や透湿性が高いという優れた特徴を有する。
本発明のポリエステル不織布は、従来のものに比べ、耐水性及び耐毛羽性能に優れ、引張強度も高く、また、耐熱性やフィルター性能にも優れており、諸特性がバランスよく確保されているため、例えば、包材用途として使用される乾燥包材や滅菌包材等をはじめとして、各種用途に好適にかつ経済的に使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性の評価方法は下記の通りである。
(1)繊径(μm)
積層不織布構造体の両端10cmを除き、CD方向に5等分して1cm角の試験片をサンプリングし、極細繊維不織布層及び長繊維不織布層に分け、顕微鏡でそれぞれの繊維の直径を各50点ずつ測定し、その平均値から繊径を算出した(小数点第2位を四捨五入)。測定には、キーエンス製の高倍率マイクロスコープVH−8000を用いた。
(2)耐水圧(kPa)
積層不織布構造体の両端10cmを除き、CD方向に5等分、MD方向に3等分して、計15点に関して20cm角の試験片をサンプリングし、JIS−L−1092に準じて測定を実施し、その平均値から耐水圧を算出した。
なお、耐水圧値が1kPa以上あるものに関しては、測定見かけ上の瞬間的な耐水性の発現の可能性を除外するため、同装置を用いて1kPaの水圧をかけた状態で洩れ出しのないことを確認後、24時間放置して、洩れ出しの有無を再確認し、洩れ出しのある場合は耐水圧値を0とした。
(3)引張強力(N/3cm)
積層不織布構造体の両端10cmを除き、CD方向に5等分、MD方向に3等分して、計15点に関してCD、MD方向に3cm×20cmの試験片をサンプリングし、低速伸張試験型引張試験機に把握長10cmで取付け、引張速度30cm/分で試験片が破断するまで荷重を加える。MD、CD方向における試験片の最大荷重時の強さの平均値を求め、次式で引張強力を算出した(小数点第2位を四捨五入)。
引張強力(N/3cm)=(MD平均値+CD平均値)/2
(4)濡れ張力試験(濡れ・含浸が開始したレベル)
層成分として用いられた極細繊維不織布層及び積層不織布構造体をサンプリングし、試薬の表面張力を大きいものから順に段階的に下げていき、濡れ・含浸が開始したレベルを観察した。なお、試薬の滴下は各サンプル2〜3滴とした。
試薬は、和光純薬工業(株)製で、成分は、エチレングリコール、モノエチルエーテル、ホルムアミドであり、表面張力は54〜34mN/m(蒸留水:76mN/m)の範囲で変えた。
(5)耐熱性試験
積層不織布構造体の両端部10cmを除き、CD方向に3等分、MD方向に3等分して、計9点に関してCD、MD方向に20cm×30cmの試験片をサンプリングし、風速1m/分、90℃の雰囲気下における熱風オーブン内で加熱処理を実施した後、引張強力(MD、CD)を測定し、熱処理前の引張強力に対する強力保持率の平均値を求めた。
(6)粉洩れ試験
積層不織布構造体の両端部10cmを除き、CD方向に3等分、MD方向に3等分して、計9点に関してCD、MD方向に20cm×30cmの試験片をサンプリングし、ロータップ篩振とう器(田中化学機器株式会社製:型式R−2)を用いて、0.7〜3μmの石灰を振盪数270回/分、上下打数156回/分の条件下で粉洩れの発生の有無を確認し、1点でも粉洩れが発生した場合は、粉洩れ有りと判定した。
(7)細菌透過性試験
積層不織布構造体の両端部10cmを除き、CD方向に3等分してMD、CD方向に5cm×5cmの試験片をサンプリングし、121℃、15分間高圧蒸気滅菌し試料とした。寒天平板培地上に試料を置き、その上に大腸菌の菌液を0.5ml滴下した。室温で放置し、1、3及び24時間後に寒天平板培地上の試料を取除き、同平板培地を35±1℃、2日間培養後、培地上に生育する集落数を測定した。
試験菌:Escherichia coli NBRC 3301(大腸菌)
試験用培地:NA培地:普通寒天培地(栄研化学株式会社)
SA培地:標準寒天培地(栄研化学株式会社)
菌液の調製:試験菌をNA培地で35±1℃、18〜24時間培養後、得られた試験菌の菌体を滅菌生理食塩水に懸濁させ、1ml当たりの菌数が10〜10になるように調整し、それぞれを菌液とした。
なお、この菌液の生菌数をSA培地を用いた混釈平板培養法(35℃±1℃、2日間培養)により測定した。
(8)毛羽試験
積層不織布構造体の両端10cmを除き、幅20cmあたりCD、MD方向に25mm×300mmの試験片を採取し、日本学術振興会型堅牢度試験機を用いて、摩擦子の荷重が200g、摩擦子側には摩擦係数が適当と考えられるリンレイクロス一重梱包用No.314布粘着テープを使用し、50回動作させて、以下の基準で、耐毛羽性を各々の試験片で等級づけ、平均値により、毛羽等級を決定した(小数点第2位で四捨五入)。
1級:試験片が破損するほど繊維が剥ぎ取られる。
2級:繊維が10本以上、もしくは毛玉が大きくはっきり見られる、または複数箇所で繊維が浮き上がりはじめる。
3級:繊維が3〜10本程度、もしくははっきりとした毛玉ができはじめ、または小さな毛玉が複数見られる。
4級:繊維が1〜2本程度、もしくは一ヶ所に小さな毛玉ができはじめる程度に毛羽立っている。
5級:毛羽立ちがない。
〔実施例1〜7、比較例1〜3〕
長繊維不織布層を上下にして極細繊維不織布層が覆われた3層の積層構造体において、長繊維不織布層の目付を各25g/m、極細繊維不織布層の目付を10g/mとし、フラットロールを用いて210℃の温度、線圧3.5t/mにて熱圧着し一体化させた後、230℃の温度、線圧15t/mの条件にてカレンダー加工を実施した。
長繊維不織布層の素材はポリエステルのみで繊径を13μmとし、極細繊維不織布層においては、溶液粘度が0.48(ηsp/C)のポリエステル素材にMFR700g/10分のポリプロピレンを1wt%(実施例1)、5wt%(実施例2)、10wt%(実施例3)、30wt%(実施例4)、75wt%(比較例1)混合し、極細繊維不織布層の繊径を2μmとした。
比較例2は、実施例2においてカレンダー加工を実施せずに積層不織布構造体を採取した。
実施例5は、実施例2において長繊維不織布層のポリエステル素材にポリプロピレンを3wt%混合させた。
実施例6は、実施例2において長繊維不織布層の目付を各16.5g/m、極細繊維不織布層の目付を7g/mとして採取した。
実施例7は、実施例2においてエンボス率15%の織目柄におけるエンボスロールを用いて210℃の温度、線圧3.5t/mにて熱圧着し一体化させた後、235℃の温度、線圧15t/mの条件にてカレンダー加工を実施した積層不織布構造体を採取した。
比較例3は、長繊維不織布不織布層の積層構造体(2層)において、長繊維不織布層の目付を各々30g/mとし、フラットロールを用いて210℃の温度、線圧3.5t/mにて熱圧着し一体化させた後、235℃の温度、線圧15t/mの条件にてカレンダー加工を実施した積層不織布構造体を採取した。
各試料の引張強力、耐水性能、耐毛羽性を評価した結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例では、ポリプロピレンを添加することで、強力値は若干低下傾向となるが、明らかに耐水性能は向上することがわかる。また、一段目の熱圧着にエンボスロールを用いると、フラットロールに比べて耐水性能は若干低下するものの、2kPa以上の耐水圧を十分に有することができ、強力値も殆ど変わらない。
しかし、比較例1では、ポリプロピレンの混合量が75wt%にもなると、表面の毛羽が止まり難くなってしまい、表面の毛羽を止めるために、カレンダー加工時の温度や線圧を上げていくと、ポリプロピレンが溶け出し、極細繊維不織布層の繊維構造が破壊され、亀裂やピンホール更に酷い場合は破れを生じ、カレンダー加工ができなくなってしまう結果になった。
また、比較例3では、極細繊維不織布層を積層しない長繊維不織布層のみでは、耐水性能は発現せず、耐毛羽性も3級に満たないレベルとなってしまう。
〔実施例8〕
同一コンベアネット上で、長繊維不織布層を2層積層し、その上から極細繊維不織布層を2層積層し、更に、その上から長繊維不織布層を積層させた5層構造体において、1〜2層目の長繊維不織布層の目付をそれぞれ12.5g/m、3〜4層目の極細繊維不織布層の目付を5g/m、5層目の長繊維不織布層の目付を25g/mとし、フラットロールを用いて210℃の温度、線圧3.5t/mにて熱圧着し一体化させた後、230℃の温度、線圧15t/mの条件にてカレンダー加工を実施した。
長繊維不織布層の素材はポリエステルのみで繊径を13μmとし、極細繊維不織布層においては、溶液粘度が0.48(ηsp/C)のポリエステル素材にMFR700g/10分のポリプロピレンを5wt%混合し、極細繊維不織布層の繊径を2μmとして積層不織布構造体(合成紙)を採取した。この引張強力、耐水性能、耐毛羽性を評価した結果を表2に示す。
3層構造品と比較して、表面毛羽特性は殆ど変わらず優れており、また耐水圧値は若干高い値を示した。更には、測定した耐水圧値が、3層構造のものと比較して高くなっている。これは、長繊維不織布層における極細繊維不織布層の保持(ガード)効果の均一化及び極細繊維不織布層の地合の均一化の効果が現れているからである。
〔実施例9、10〕
実施例2と同様の方法で、極細繊維不織布層をポリエステル素材に対して5wt%のMFR53g/10分のHDPE(実施例9)、MFR132g/10分のLDPE(実施例10)を混合し、繊径2μmとし積層不織布構造体を採取した。各試料につき引張強力、耐水性能、耐毛羽性を評価した結果を表3に示す。
ポリプロピレンを混合した場合と同様に、ポリエチレンの種類を変えても耐水性能及び耐毛羽性が向上することがわかる。
〔実施例11、12、比較例4〕
実施例2と同様の方法で、極細繊維不織布層の繊径を1.5μm(実施例11)、2.8μm(実施例12)、6.0μm(比較例4)とし、積層不織布構造体を採取した。各試料につき引張強力、耐水性能、耐毛羽性を評価した結果を表4に示す。
極細繊維不織布層の繊維径が5μmを超えると、強力値及び耐毛羽性は殆ど変化は生じないが、極細繊維不織布層におけるカバーリング効果が低下してしまうため、耐水性能が低下してしまう。
〔実施例13、比較例5、6〕
実施例2と同様の方法で、総目付を10g/mとし、極細繊維不織布層の目付を2g/m(実施例13)、1g/m(比較例5)、4g/m(比較例6)とし、230℃の温度、線圧7t/mの条件にてカレンダー加工を実施し積層不織布構造体を採取した。各試料につき引張強力、耐水性能、耐毛羽性を評価した結果を表5に示す。
極細繊維不織布層の目付が1g/mでは、極細繊維不織布層の絶対目付が少なくなりカバーリング効果が低下してしまうため、高耐水性能を発現することができない。また、極細繊維不織布層の目付が4g/mでは、極細繊維不織布層を保持する強力値が13N/3cm以下に低下してしまい、高耐水性能を発現することが困難となる。
〔実施例14〜20、比較例7〕
実施例2と同様の方法で、極細繊維不織布層の目付を30g/mとし、ポリエステル素材にMFR700g/10分のポリプロピレンを1wt%(実施例14)、5wt%(実施例15)、30wt%(実施例16)混合したもの及びポリプロピレンを混合しないポリエステル素材のみ(比較例7)と変化させ、極細繊維不織布層の繊径を2μmとして積層不織布構造体を採取した。また、実施例15において、混合するポリプロピレンのMFRを40g/10分(実施例17)、1500g/分(実施例18)と変化させ積層不織布構造体を採取した。各試料につき濡れ張力試験を実施した結果を表6に示す。
更に、実施例2における積層不織布構造体(合成紙)(実施例19)、実施例5における積層不織布構造体(実施例20)のそれぞれについて濡れ張力試験を実施した結果を表6に示す。
極細繊維不織布層にポリプロピレンを混合しない場合は、表面張力の大きな試薬でも含浸してしまうが、ポリプロピレンを混合することで、表面張力の小さな試薬でも含浸しなくなることがわかる。また、混合するMFRを変化させても試薬が含浸する表面張力に変化はなかった。更には長繊維不織布と一体化した積層構造体においても同じように、極細繊維不織布層にポリプロピレンを混合することにより、表面張力の小さな試薬でも含浸しなくなることがわかる。長繊維不織布にポリプロピレンを混合した積層不織布構造体は、更に表面張力の小さな試薬でも含浸しなくなることがわかる。
以上の結果が示すように、ポリプロピレンを混合することで、表面張力の小さな試薬でも含浸し難くなる。従って、この事実は水を通さない(耐水性が向上する)一つの要因と考えることができる。
〔実施例21〜24〕
実施例2における積層構造体を用いて、熱風オーブン内で加熱処理を200時間(実施例21)、1200時間(実施例22)、また実施例4における積層構造体を用いて熱風オーブン内で加熱処理を200時間(実施例23)、1200時間(実施例24)とした後の強力保持率を評価した結果を表7に示す。極細繊維不織布層にポリプロピレンを添加しても1200時間後における強力値の低下は殆ど見られず、耐熱性に優れていることがわかる。
〔実施例25〕
実施例2における積層構造体において、篩振とう器にて粉漏れの評価を実施した結果を表8に示す。0.7μ程度の紛体(石灰)でも極細繊維不織布層のフィルター効果により粉漏れが発生しないことがわかる。
〔実施例26〕
実施例2における積層構造体を用いて、細菌透過性試験を実施(実施例26)した結果を表9に示す。24時間放置後においても、培地上に生育する集落数はなく、菌液が透過しないため、細菌のバリア性にも優れていることがわかる。
〔実施例27〜29、比較例8〜13〕
実施例2における積層構造体を用いて、電子線の照射強度を20kGy(実施例27)、40kGy(実施例28)、60kGy(実施例29)と変化させた。また、フラッシュ紡糸法により得られたポリエチレンの不織布を用いて、同様に電子線の強度を20kGy(比較例8)、40kGy(比較例9)、60kGy(比較例10)と変化させた。更にはポリプロピレンのスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド積層体を用いて、電子線の強度を20kGy(比較例11)、40kGy(比較例12)、60kGy(比較例13)と変化させた。
各試料につき、照射後の引張強力を測定し、各々の照射前の引張強力に対する引張強力保持率を評価した結果を、表10及び図2に示す。
実施例2における本発明の積層構造体(合成紙)に関しては、60kGyの照射強度でも引張強力値の変化はなく耐放射線性に優れていることがわかる。しかし、ポリエチレン不織布やポリプロピレン不織布に関しては、照射強度が増すにつれ臭気が発生し、引張強力値が低下してしまい、耐放射線性に劣っていることがわかる。
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本発明の積層不織布構造体からなる高耐水圧ポリエステル不織布の製造方法の一例を示す概略図である。 本発明の積層不織布構造体(合成紙)の一例につき、電子線照射後の引張強力保持率と電子線強度の関係を、従来の不織布と対比して示す図である。
符号の説明
20 スパンボンド不織布紡糸ユニット
21 エクストルーダ
30 メルトブロー紡糸装置
31 エクストルーダ
S1 長繊維不織布
S2 長繊維不織布
M 極細繊維不織布
100 捕集ネット
200 積層不織布構造体からなるポリエステル不織布
101、102 熱カレンダ
103、104 カレンダー加工用の熱カレンダ

Claims (11)

  1. ポリオレフィン系樹脂が1〜50wt%の範囲で混合されたポリエステル系樹脂素材からなる繊径が5μm以下であるメルトブロー法で得られた極細繊維不織布層と、繊径が7μm以上であるポリエステル系樹脂を主体とした長繊維不織布層とを、熱圧着により一体化さらにカレンダー加工を施すことにより得られる積層不織布構造体からなる耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布であって該積層不織布構造体は、3級以上の耐毛羽性及び2kPa以上の耐水圧値を有し、そして該積層不織布構造体の目付は10g/m 以上であり、該長繊維不織布層の目付けは8g/m 以上であり、該極細繊維不織布層の目付は2g/m 以上であり、且つ、該積層不織布構造体が13N/3cm以上の引張強力値を有することを特徴とする前記高耐水圧ポリエステル不織布
  2. 積層不織布構造体のポリエステル系樹脂の含有率が70wt%以上である、請求項1に記載の高耐水圧ポリエステル不織布。
  3. 極細繊維不織布を構成する極細繊維の表面にポリオレフィン系の樹脂の非連続な相が散在している、請求項1または2に記載の高耐水圧ポリエステル不織布。
  4. 長繊維不織布層を構成する長繊維が、ポリオレフィン系樹脂を7wt%以下で混合されているポリエステル系樹脂からなる、請求項2に記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
  5. 極細繊維不織布層が、ポリオレフィン系樹脂を1〜30wt%混合したポリエステル系樹脂からなる極細繊維で構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
  6. カレンダー加工を施された積層不織布構造体の耐毛羽性が3.5級以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の高耐水圧ポリエステル不織布。
  7. 極細繊維不織布を構成する極細繊維が、溶液粘度(ηsp/C)範囲0.2〜0.8のポリエステル系樹脂で形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の耐毛羽性に優れた高耐水圧ポリエステル不織布。
  8. 極細繊維を形成するポリエステル系樹脂に混合されるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンである、請求項1〜のいずれか1項に記載の高耐水圧ポリエステル不織布。
  9. 極細繊維を形成するポリエステル系樹脂に混合されるポリオレフィンのMFRが100g/10分以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の高耐水圧ポリエステル不織布。
  10. 表面張力50mN/m以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の高耐水圧ポリエステル不織布。
  11. 紡糸されコンベアネット上に蓄積された少なくとも1層の長繊維不織布の層の上に、同一のコンベアネット上に蓄積される少なくとも1層の極細繊維不織布層を積層し、更にその上に、紡糸された少なくとも1層の長繊維不織布層を重ねて形成される積層体を、熱圧着により一体化して得られる積層構造体で構成されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高耐水圧ポリエステル不織布。
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