JP4491732B2 - ポリオレフィン樹脂組成物の分析方法 - Google Patents

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本発明は、少なくともプロピレン成分とエチレン成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物のプロピレン成分とエチレン成分との割合を定量するポリオレフィン樹脂組成物の分析方法に関する。
少なくともプロピレン成分とエチレン成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物として、例えば、プロピレンブロック共重合体がある。このプロピレンブロック共重合体は、二種以上の成分がブロック状に共重合されたポリマーである。例えば、アイソタクチック−ポリプロピレン(iso-PP)に、相溶化剤やエチレン−プロピレンゴム(EPR)などの結晶部の少ない成分、または、ポリエチレン(PE)などの結晶部の多い成分を共重合させたブロックポリプロピレン(b-PP)がある。
ブロックポリプロピレン(b-PP)では、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やポリエチレン(PE)などのエチレンユニットを持つ成分の添加量(以下エチレン含有量という)により、柔軟性が左右される。また、ブロックポリプロピレン(b-PP)は、エチレン含有量によって柔軟性以外の他物性も変化することからエチレン含有量を正確に定量することが求められている。
ところで、ポリマーの構造を分析する方法としては、例えば特許文献1に示すような赤外線吸収スペクトル法(IR法)、核磁気共鳴吸収法(13C−NMR法、1H−NMR法)などによる手法が行われている。なお、1H−NMR法については、特許文献2参照。
そこで、プロピレンブロック共重合体中に含有されるエチレン含有量を前記した分析方法で定量することが考えられる。
特開2002−202255公報 特開2002−22685公報
赤外線吸収スペクトル法(IR法)では、エチレン含有量について、比較的簡単に測定・データ解析が可能であるが、微小なピークを用いてエチレン含有量を算出しなければならないため、ベースラインの引き方によっては、定量した際のバラツキが大きくなる。さらに、各成分の基本構成が同じ場合には、スペクトルのピークが同じように現れるため、判別が困難となる。
核磁気共鳴吸収法(13C−NMR法)では、化学シフトが大きく、隣接する元素の影響で各ピークが分離するため、分子構造解析技術に基づき個々のピーク面積値からエチレン含有量を定量できる。しかしながら、核磁気共鳴吸収法(13C−NMR法)では、信号強度が微弱なため、高濃度溶液試料の調整と長時間に及ぶ信号積算時間が必要となり、試料の作製と測定に長時間を有する。
また、核磁気共鳴吸収法(1H−NMR法)では、13C−NMR法に比べて感度は良いので短時間での測定が可能であるが、化学シフトが小さいため、隣接する元素の影響で各ピークが重なってしまう場合がある。このようにピークが重なってしまうと、エチレン含有量を定量できないという不具合がある。
従って、本発明は、核磁気共鳴吸収法(1H−NMR法)を用いながら、少なくともプロピレン成分とエチレン成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物のプロピレン成分とエチレン成分との割合の定量を高精度で行えるポリオレフィン樹脂組成物の分析方法を提供することを目的とする。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法は、少なくともプロピレン成分とエチレン成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物のプロピレン成分とエチレン成分との割合を定量分析する方法である。
本発明者は、iso-PP成分とPE成分のブロック共重合体の1H−NMR法によるスペクトルが、iso-PPの1H−NMR法によるスペクトルとPEの1H−NMR法によるスペクトルとを重ね合わせたものと同一であることを見出した。そして、本発明者は、ブロック共重合体のエチレン含有量を、スペクトル中のPE成分に該当する部分のピークの面積値を求めることにより定量化できると推定し、プロピレン成分とエチレン成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物であれば、成分の割合を高精度で定量できると推定し、本発明の定量分析方法の発明に至った。
本発明の分析方法は、定量分析の対象であるプロピレン成分とエチレン成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物と同じ成分の二種のポリマーを混合した標準試料を、両ポリマーの混合比率が異なるように複数作製し、これらの標準試料から、エチレン成分の割合と、このエチレン成分の1H−NMR法により測定したスペクトルのピークの面積値との関係を示す検量線(関係式)を求めておくことに特徴を有する。
そして、定量分析対象のポリオレフィン樹脂組成物に対して1H−NMR法によりスペクトルを測定し、そのスペクトルから、前記した一方の成分のピーク面積値を求めて、このピーク面積値の検量線上での値を求めることにより、一方の成分の割合を求めることができる。
本発明の分析方法は、前記検量線を求めるとともに、定量分析対象のポリオレフィン樹脂組成物の2成分の割合を求めるために、以下の工程により定量の分析を行う。
測定対象のポリオレフィン樹脂組成物の2成分と同じ成分、即ち、プロピレン成分で構成される基準ポリマーとエチレン成分で構成される対象ポリマーを用いて、基準ポリマーと対象ポリマーを混合した標準試料を作製し、この標準試料の対象ポリマーのピーク面積値を混合率毎に求めて、対象ポリマーの混合率とピーク面積値との関係を示す検量線を求める第一工程。
定量分析の対象となるポリオレフィン樹脂組成物について、1H−NMR法によりプロピレン成分とエチレン成分のみのスペクトルの測定を可能な状態にして、プロピレン成分とエチレン成分を含んだポリオレフィン樹脂組成物のスペクトルを測定してピーク面積値の合計を求め、このピーク面積値の合計から、前記基準ポリマーのピーク面積値の合計を減ずることにより、ポリオレフィン樹脂組成物のエチレン成分のピーク面積値を求める第二工程。
第二工程で得られたポリオレフィン樹脂組成物のエチレン成分のピーク面積値の前記検量線上での値からポリオレフィン樹脂組成物中のエチレン成分の割合を求める第三工程。
なお、基準ポリマーは、基準ポリマーと対象ポリマーに対して1H−NMR法によるスペクトルを求め、基準ポリマーと対象ポリマーのピーク位置を対応させたときに、ピークの位置が重ならない部分を有する。
基準ポリマーについて、前記第一工程において、基準ポリマーのピーク面積値の合計の算出を行う。この算出は、まず、基準ポリマーの各ピークに対して、対象ポリマーのピークと重ならないピークの面積値を基準値とする。そして、基準ポリマーの前記基準値に対する残りのピークの面積値を求めて、各ピークの面積値を合計することにより基準ポリマーのピーク面積値の合計の算出を行う。
さらに、前記第一工程において、標準試料のピーク面積値の合計の算出を行う場合は、前記した基準ポリマーの基準値を基準として求める。
そして、基準ポリマーに前記したピーク面積値の基準値を設ける場合は、前記第二工程において、定量分析の対象となるプロピレン成分とエチレン成分を有するポリオレフィン樹脂組成物のピーク面積値の合計は、前記基準ポリマーの基準値を基準として算出する。
次に、前記第一工程における標準試料の対象ポリマーのピーク面積値の算出は以下のようにして行うことが好ましい。
まず、基準ポリマーの1H−NMR法によるスペクトルについて、ピーク面積値の合計を求める。そして、標準試料の1H−NMR法によるスペクトルについてピーク面積値の合計を求める。標準試料のピーク面積値の合計から、基準ポリマーのピーク面積値の合計を減ずることにより、標準試料のエチレン成分のピーク面積値を求める。
なお、標準試料のピーク面積値の合計から、基準ポリマーのピーク面積値の合計を減じて、標準試料のエチレン成分のピーク面積値を求める場合、標準試料および基準ポリマーのピーク面積値の合計値は、全てのピークの面積値を合計したものとしてもよいし、前記した基準値のピーク面積値を除いたピーク面積値の合計としてもよい。
前記した基準値のピーク面積値を除いたピーク面積値の合計とするのは、標準試料および基準ポリマーとも前記した基準値のピーク面積値が等しいことから、この基準値を除いたピーク面積値の合計値を用いても同じ結果が得られるからである。
そして、前記第一工程の標準試料の1H−NMR法によるスペクトルの測定は、基準ポリマーと対象ポリマーを混合した後、混合物を溶剤に溶かして1H−NMR法によりスペクトルを測定することが好ましい。基準ポリマーと対象ポリマーの混合は、凍結して粉砕したものを均一に混合するようにすることが、より高精度の定量を行うためにさらに好ましい。このように基準ポリマーと対象ポリマーを凍結粉砕して均一に混合することによりバラツキの小さい検量線が得られ、高精度の定量分析が可能となる。
また、ポリオレフィン樹脂組成物が、結晶性成分と非晶性成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物である場合がある。
その場合は、ポリオレフィン樹脂組成物の非晶性成分と結晶性成分とを分離し、分離された非晶性成分と結晶性成分とを個別に1H−NMR法によって定量分析を行う。
具体的には、非晶性成分が溶解し、結晶性成分は溶解しない溶剤を、ポリオレフィン樹脂組成物が完全に溶融する温度まで加熱する。そして、ポリオレフィン樹脂組成物を、加熱された溶剤中で溶融させた後に冷却する。ポリオレフィン樹脂組成物と溶剤との混合物を冷却することにより、非晶性成分は溶剤に溶解させたまま、結晶性成分を析出させることができる。そして、結晶性成分と非晶性成分とをろ過により分離して、結晶性成分に対しては、前記した検量線を用いる定量分析を行い、非晶性成分についても、1H−NMR法によって定量分析を行う。
本発明の分析方法は、標準試料を作製して、この標準試料に基づいて、標準試料の1H−NMR法によるスペクトルのピーク面積値の合計から、標準試料中の基準ポリマーのピーク面積値の合計を減じて、対象ポリマーのピーク面積値を求めることより、対象ポリマーの割合とピーク面積値との関係を示す検量線を求めることを特徴としている。
そして、定量対象のポリオレフィン樹脂組成物のピーク面積値の合計から、標準試料中の基準ポリマーのピーク面積値の合計を減ずることにより、2成分のピークが重なっていても、ポリオレフィン樹脂組成物のエチレン成分のピーク面積値を求めることができる。さらに、前記した検量線を用いて、ポリオレフィン樹脂組成物のエチレン成分のピーク面積値からこのエチレン成分の割合を高精度に定量することができる。
このように、本発明の定量分析方法では、標準試料に基づいて求めた検量線を用いて、成分の定量を行うことにより、高精度の定量が可能となった。しかも、本発明の分析方法は、感度の良好な1H−NMR法により定量分析を行うので、測定、分析に要する時間を短くできる。
また、本発明の分析方法では、ポリオレフィン樹脂組成物が、結晶性の2成分と非晶性の1成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物であっても、前記した分離方法により、ポリオレフィン樹脂組成物の非晶性成分と結晶性成分とを分離し、分離された非晶性成分と結晶性成分とを個別に1H−NMR法によって定量分析を行うことができる。
さらに、非晶性成分と結晶性成分とを分離する場合、溶剤中で、両成分を完全に溶融させた状態にしたのち、溶剤に溶解しない結晶性成分のみを冷却により析出させているので、ポリオレフィン樹脂組成物と溶剤の濃度調整が容易となるばかりか、短時間で分離作業を行うことができる。
以下、本発明の分析方法に係る実施例について説明する。本実施例では、アイソタクチック−ポリプロピレン(iso-PP)に、非晶性のエチレン−プロピレンゴム(EPR)と結晶性のポリエチレン(PE)を共重合させたブロックポリプロピレンについての各成分の定量分析を行った。
まず、iso-PP(基準ポリマー)とPE(対象ポリマー)とが混合された標準試料を、iso-PPとPEとの混合比率が異なるように複数作製し、これら標準試料の1H−NMR法によるスペクトルを測定することにより、混合物中のPEの割合を定量するための検量線を求めた。
具体的には、標準試料を作製するための基準ポリマーとして、iso-PPのみを成分とする基準ポリマーと、PEのみを成分とする対象ポリマーとを作製した。なお、対象ポリマーは、高密度ポリエチレンを使用した。
基準ポリマーを溶剤(オルト−ジクロロベンゼン)に溶かして1H−NMR装置内で175℃で加熱して溶解させた。加熱溶解された基準ポリマーに対して、1H−NMR法によるスペクトルを測定した。1H−NMR法での内部標準物質として、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。その測定結果を図1のiso-PPのスペクトルで示す。
なお、対象ポリマーについても、基準ポリマーと同様に1H−NMR法によるスペクトルを測定した。図1のPEのスペクトルは、対象ポリマーの1H−NMR法によるスペクトルを示す。また、図1のb-PPのスペクトルは、iso-PPとPEとが共重合されたブロックポリプロピレンの1H−NMR法によるスペクトルを示す。
図1に示す基準ポリマー(iso-PP)のスペクトルにおいて、丸数字(1)(2)(4)で示すピークは、図3の(a)で示すiso-PPの化学構造式のHとCH3に示す丸数字(1)(2)(4)に対応している。また、図1の対象ポリマー(PE)のスペクトルのピーク(3)は、図3の(b)で示すPEの化学構造式のHに示す丸数字(3)に対応している。
ここで、基準ポリマー(iso-PP)のスペクトルと対象ポリマー(PE)のスペクトルとを重ね合わせたとき、基準ポリマー(iso-PP)のピーク(2)と対象ポリマー(PE)のピーク(3)とが重なってしまう。
そこで、本実施例では、ピークの重なりが生じていない基準ポリマー(iso-PP)のピーク(1)の面積値を基準値として後述するピーク面積値の算出に用いた。
なお、基準ポリマー(iso-PP)のスペクトルでは、ピーク(2)とピーク(4)が重なってしまい、全く重ならないピークは、ピーク(1)のみとなる。ピーク(2)と(4)が重なった面積値を基準値としてもよいが、計算を行いやすくするために、本実施例では、ピーク(1)を基準値としている。
次に、iso-PPとPEとが共重合されたブロックポリプロピレン(b-PP)に対応させた標準試料となる基準ポリマーと対象ポリマーとの混合物を作製した。
標準試料を作製するにあたっては、まず、基準ポリマーと対象ポリマーとをそれぞれ個別にフリーザーミルを用いて凍結粉砕した。そして、基準ポリマーと対象ポリマーとをエチレン含有量が所定の混合率となるように複数種類の混合率のものを作製した。
この混合作業は、粉砕した基準ポリマーと対象ポリマーとを、エチレン含有量が所定の割合となるように電子天秤で秤量し、円錐四分法に基づき、秤量した基準ポリマーと対象ポリマーとをふるいにかけて均一に混合を行った。標準試料は、エチレン含有量が、2〜80wt.%の範囲内となる13種のものを作製した。作製した標準試料は、基準ポリマーの測定と同様に、溶剤(オルト−ジクロロベンゼン)に溶かして1H−NMR装置内での175℃で加熱して溶解させた後に、1H−NMR法によるスペクトルを測定した。
測定結果の一部のスペクトルを図2に示す。図2においては、基準ポリマーのみ(エチレン含有量0wt.%)、エチレン含有量5wt.%,10wt.%,50wt.%, 対象ポリマーのみ(エチレン含有量100wt.%)のスペクトルを示している。
また、基準ポリマーの各ピークの面積値を積分により求めると、図1および図2に示す基準ポリマー(iso-PP)のスペクトルにおいて、丸数字(1)(2)(4)の上に括弧書きして示したように、ピーク(1)の積分値は1.00、1.4ppmに対応したピーク(2)の積分値は1.03、1.0ppmに対応したピーク(2)とピーク(4)の合計の積分値は3.97となる。
この結果から、各ピーク面積値の理論値を求めると、ピーク(1)の面積値を基準値1としたとき、ピーク(2)の全体の面積値は2、ピーク(4)の面積値は3となる。
したがって、ピーク(2)とピーク(4)の合計面積値は、2+3=5となる。基準ポリマーでは、PE成分が含まれていないので、ピーク(3)の面積値はゼロとなる。
そして、iso-PPの基準ポリマーにPEを添加していくと、図2に示すように、PEの増加に伴ってピーク(3)が大きくなっていく。そこで、基準ポリマーと対象ポリマーとが所定の比率で混合された標準試料についてスペクトルを測定し、各標準試料について、ピーク(2)(3)(4)の面積値を合計した。この合計値から、基準ポリマーのみスペクトルから求めたピーク(2)(4)の面積値の合計を減じて標準試料中のピーク(3)の面積値を求めた。
求めたピーク(3)の面積値(積分値)を、図4に示すように、ピーク(3)の積分値とエチレン含有量との関係を示すグラフにプロットしていき、検量線を求める。図4のグラフは、横軸を標準試料中のエチレン含有量とし、縦軸を標準試料のピーク(3)の面積値としている。なお、図中のnは試料番号を示しており、同一のエチレン含有量における各試料の平均値から検量線を求めた。
本実施例では、ピーク(1)の面積値を1としているため、エチレン含有量が80wt.%超の標準試料にあっては、算出したピーク(3)の面積値のバラツキが大きくなり、エチレン含有量が80wt.%を超える領域での定量は困難であった。
しかし、エチレン含有量が0〜80wt.%の範囲においては、定量のバラツキは5%以下であった。しかも、エチレン含有量が0〜40wt.%の範囲では、検量線は直線で表され、0.1%以下のバラツキで定量が行えた。また、エチレン含有量が40wt.%超〜80wt.%の範囲では、検量線は曲線で表され、1%以下のバラツキで定量が行えた。
本実施例では、エチレン含有量が0〜40wt.%の範囲の検量線は、
y=10.9x ・・・・式1
で表すことができた。
本実施例では、エチレン含有量が40wt.%超〜80wt.%の範囲の検量線は、
y=0.16e0.045x ・・・・式2
で表すことができた。
次に、定量分析の対象となるブロックポリプロピレンに対して、プロピレン成分(iso-PP)とエチレン成分(PE)の割合を定量する。本実施例で用いるブロックポリプロピレンは、iso-PP成分とPE成分とEPR成分とを共重合させてブロック共重合体を構成している。3つの成分を含有したままで1H−NMR法によるスペクトルの測定を行うと、PE成分中のエチレン含有量とEPR成分中のエチレン含有量とを区別して定量することが困難であるため、本実施例では、ブロックポリプロピレンからEPR成分を分離させた。
ここで、PE成分は結晶部分が多く、EPR成分は結晶部分が少ないので、結晶部分の少ないEPR成分のみが溶解し、結晶部分が多いPE成分は溶解しない溶剤を用いて、この溶剤をブロックポリプロピレン(試料)が完全に溶融する温度(150〜200℃)まで加熱した。
溶剤としては、オルト-ジクロロベンゼンを用いた。なお、溶剤としては、ポリオレフィン樹脂組成物が完全に溶融でき、かつ、非晶性のポリマーのみを溶解する溶剤であれば、オルト-ジクロロベンゼンに限らず用いることができる。
溶剤の量に対する定量する試料の量の濃度は、0.01〜0.015g/mlとし、溶剤の温度は150〜200℃、溶剤による資料の溶融の時間は、溶剤の温度条件により異なるが試料が完全に溶融するまでの時間とした(本例では、30〜60分)。
溶融された試料を冷却していき、iso-PP成分とPE成分を再結晶化させて析出させ、EPR成分は溶剤に溶解させた。析出されたiso-PP成分とPE成分をろ過によりEPR成分から分離した。本実施例では、成分の分離作業に要した時間は、約1.5時間であった。
なお、析出された成分に対して、示差走査熱量測定法(DSC法)により分析したところ、120℃付近と165℃付近にピークが検出された。これらのピークは、PE成分とiso-PP成分の融点ピークと一致した。また、溶剤に溶解した成分は、DSC法によりピークが検出されなかった。
次に、析出された成分に対して1H−NMR法によるスペクトルの測定を行い、スペクトルの測定で得られた全ピークの面積値を合計し、この面積値の合計から、基準ポリマーのスペクトルから得られたピーク面積値の合計を減じて、エチレン含有量となるピーク(3)の面積値を求めた。このとき、基準ポリマーのピーク(1)の面積値を基準にして、析出された成分のピーク面積値を求めた。
検量線が描かれた、エチレン含有量とピーク(3)の面積値との関係のグラフを用いて、求めたピーク(3)の面積値の検量線上での値からエチレン含有量を求めた。
さらに、溶剤に溶解成分に対しては、溶解した量から、分離する前のポリオレフィン樹脂組成物に対するEPRの量を求めてエチレン含有量を求めた。
本実施例では、結晶性成分と非晶性成分とを分離して、ポリオレフィン樹脂組成物のエチレン含有量の定量を行った結果、定量値のバラツキを5%以下とすることができた。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法は、少なくともプロピレン成分とエチレン成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物のプロピレン成分とエチレン成分との割合を定量する場合に好適である。
本発明ポリオレフィン樹脂組成物の分析方法における基準ポリマー、対象ポリマー、ポリオレフィン樹脂組成物の1H−NMR法によるスペクトルの測定結果を示す。 本発明ポリオレフィン樹脂組成物の分析方法におけるエチレン含有量が異なる標準試料の1H−NMR法によるスペクトルの測定結果を示す。 (a)はポリプロピレンの化学構造式を示し、(b)はポリエチレンの化学構造式を示す。 本発明ポリオレフィン樹脂組成物の分析方法における、エチレン含有量とエチレン成分のピーク(3)の積分値(面積値)との関係を示したグラフであって、標準試料から得られたピーク(3)の積分値をプロットして検量線を求めた状態を示す。

Claims (8)

  1. 少なくともプロピレン構造をもつ成分(以下プロピレン成分という)とエチレン構造をもつ成分(以下エチレン成分という)とを有するポリオレフィン樹脂組成物のプロピレン成分とエチレン成分との割合を定量するポリオレフィン樹脂組成物の分析方法であって、以下の工程により成分定量の分析を行う。
    プロピレン成分で構成される基準ポリマーとエチレン成分で構成される対象ポリマーを用いて、基準ポリマーと対象ポリマーを混合した標準試料を作製し、この標準試料の対象ポリマーのピーク面積値を混合率毎に求めて、対象ポリマーの混合率とピーク面積値との関係を示す検量線を求める第一工程、
    定量分析の対象となるポリオレフィン樹脂組成物について、1H−NMR法によりプロピレン成分とエチレン成分のみのスペクトルの測定が可能な状態にして、スペクトルを測定し、ピーク面積値の合計を求め、このピーク面積値の合計から、基準ポリマーのピーク面積値の合計を減ずることにより、ポリオレフィン樹脂組成物のエチレン成分のピーク面積値を求める第二工程、
    第二工程で得られたポリオレフィン樹脂組成物のエチレン成分のピーク面積値の前記検量線上での値からポリオレフィン樹脂組成物中のエチレン成分の割合を求める第三工程。
  2. 前記第一工程における基準ポリマーは、基準ポリマーと対象ポリマーに対して1H−NMR法によるスペクトルを求め、基準ポリマーと対象ポリマーのピーク位置を対応させたときに、ピークの位置が重ならない部分を有することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法。
  3. 前記第一工程における基準ポリマーと対象ポリマーを混合した標準試料の1H−NMR法によるスペクトルの測定は、基準ポリマーと対象ポリマーとを混合した後、混合物を溶剤に溶かして1H−NMR法によりスペクトルを測定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法。
  4. 前記第一工程における基準ポリマーと対象ポリマーを混合した標準試料における対象ポリマーのピーク面積値の算出は、
    基準ポリマーのスペクトルについて、ピーク面積値の合計を求め、標準試料のスペクトルについてピーク面積値の合計を求め、標準試料のピーク面積値の合計から、基準ポリマーのピーク面積値の合計を減ずることにより、標準試料のエチレン成分のピーク面積値を求めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法。
  5. 前記第一工程においては、基準ポリマーのピーク面積値の合計の算出を行い、この算出は、基準ポリマーの各ピークに対して、対象ポリマーのピークと重ならないピークの面積値を基準値とし、この基準値に基づいて残りのピークの面積値を求めて、各ピークの面積値を合計することを特徴とする請求項2に記載のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法。
  6. 前記第一工程においては、標準試料のピーク面積値の合計の算出を行い、この算出は、前記した基準ポリマーの基準値に基づいて求めることを特徴とする請求項5に記載のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法。
  7. 前記第二工程において、プロピレン成分とエチレン成分を有するポリオレフィン樹脂組成物のピーク面積値の合計の算出は、基準ポリマーの各ピークに対して、対象ポリマーのピークと重ならないピークの面積値を基準値として求めることを特徴とする請求項2に記載のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法。
  8. 少なくともプロピレン成分とエチレン成分を有するポリオレフィン樹脂組成物が、結晶性成分と非晶性成分とを有するポリオレフィン樹脂組成物である場合には、
    非晶性成分が溶解し、結晶性成分は溶解しない溶剤を、ポリオレフィン樹脂組成物が完全に溶融する温度まで加熱し、ポリオレフィン樹脂組成物を、加熱された溶剤中で溶融させた後に冷却することにより、非晶性成分を溶剤に溶解させ、結晶性成分を析出させて、結晶性成分と非晶性成分とを分離し、非晶性成分が分離された結晶成分のみからなるポリオレフィン樹脂組成物に対して請求項1から請求項7のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の分析方法を行うことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物の分析方法。
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