JP4487418B2 - 歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置 - Google Patents

歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば高速FETに用いられる歪みSi層等の歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、Si(シリコン)ウェーハ上にSiGe(シリコン・ゲルマニウム)層を介してエピタキシャル成長した歪みSi層をチャネル領域に用いた高速のMOSFET、MODFET、HEMTが提案されている。この歪みSi−FETでは、Siに比べて格子定数の大きいSiGeによりSi層に引っ張り歪みが生じ、そのためSi層のバンド構造が変化して縮退が解けてキャリア移動度が高まる。したがって、この歪みSi層をチャネル領域として用いることにより通常の1.5〜8倍程度の高速化が可能になるものである。また、プロセスとしてCZ法による通常のSiウェーハを基板として使用でき、従来のCMOS工程、従来配線幅(ゲート長)で高速CMOSを実現可能にするものである。
【0003】
このような高速FETとして歪みSi層を用いるには、歪みSi層の歪み量及び膜厚とSiGe層のGe組成比を正確に設定しなければならず、そのためにこれらのパラメータを高精度に測定する必要がある。
従来、上記のような歪みSi層の歪み量を測定するには、ラマン線のシフト量から求めたり(ラマン分光法)、X線構造解析を行い、ロッキングカーブのモデルフィッティングにより決定したりしている。
【0004】
また、上記歪みSi層の膜厚を測定するには、試料断面のSEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)による観察で求めたり、SIMS(二次イオン質量スペクトル分析)、オージェ分光、RBS(ラザフォードバックスキャタリング:ラザフォード後方散乱)の深さ方向プロファイルから求めたり、また、上記X線構造解析により求めている。なお、SIMS及びオージェ分光は、歪みSi層及びSiGe層の膜厚を、試料のスパッタ速度から推定する方法である。
さらに、歪みSi層下のSiGe層におけるGe組成比を測定するには、SIMS、オージェ分光、RBS等の測定手段が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような課題が残されている。
すなわち、歪みSi層の歪み量を測定する手段として用いられている上記ラマン分光法では、ラマン散乱光が非常に弱いために複数の分光器が必要になり、複雑かつ高コストであると共に、歪みSi層の膜厚を同時に測定することができず、ラマン分光法による測定の他に上記の測定手段を行う必要があった。また、上記SEM、TEM、SIMS及びオージェ分光による測定は、破壊型測定手段であり、試料を一度測定に用いると他のパラメータを測定する試料として用いることができないという不都合がある。さらに、SIMS及びオージェ分光による測定は、SiGe層及び歪みSi層の膜厚も試料のスパッタ速度から推定することが可能であるが、あまり精度が良くない。なお、X線構造解析は、非破壊でSiの歪み量と膜厚とを同時に測定できるが、測定に比較的時間がかかってしまう方法である。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、歪み半導体層の歪み量を非破壊で高精度にかつ簡易に測定可能であり、さらにその膜厚や下地層の組成も同時に測定可能な歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、緩和SiGe層上に成長させた歪みSi層について研究を行ってきた結果、その歪み量と分光エリプソメトリーによる測定の歪みを考慮した解析結果とが高精度に一致することがわかった。さらに、歪みSi層の下地層である緩和SiGe層のGe組成比についても解析結果と一致することがわかった。したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の歪み半導体層の歪み量測定方法は、半導体単結晶上に積層された歪み半導体層の歪み量を測定する方法であって、前記歪み半導体層の表面に分光された光を偏光させて入射させ、歪み半導体層からの反射光の偏光状態を測定して得られた光学情報と歪み半導体層の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪み半導体層の歪み量を求めることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の歪み半導体層の歪み量測定装置は、半導体単結晶上に積層された歪み半導体層の歪み量を測定する装置であって、前記歪み半導体層の表面に分光された光を偏光させて入射させる光照射部と、前記歪み半導体層からの反射光の偏光状態を測定する受光部と、前記偏光状態を測定して得られた光学情報と歪み半導体層の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪み半導体層の歪み量を算出する演算部とを備えることを特徴とする。
【0009】
これらの歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置では、歪み半導体層の表面に分光された光を偏光させて入射させ、歪み半導体層からの反射光の偏光状態を測定して得られた光学情報と歪み半導体層の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪み半導体層の歪み量を求めるので、非破壊かつ高精度に歪み量を簡易に測定することができる。すなわち、分光エリプソメトリー法により得られた反射光の偏光状態は、歪み半導体層の歪み量に応じた屈折率や反射率等の光学定数の変化によって変化すると考えられ、半導体層の光学関数の歪み効果を考慮して測定結果をコンピュータ等でフィッティング処理することにより、後述するようにラマン分光法による測定値と高精度に一致した歪み量を得ることができる。
【0010】
また、本発明の歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置は、前記光学情報と前記歪み依存性とに基づいて前記歪み半導体層の膜厚又は前記半導体単結晶の組成の少なくとも一方も同時に求める技術を採用する。すなわち、この歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置では、上記光学情報及び上記歪み依存性に基づいて歪み半導体層の膜厚又は下地層である半導体単結晶の組成の少なくとも一方も同時に求めることにより、歪みを考慮した正確な上記膜厚及び組成を得ることができる。
【0011】
さらに、本発明の歪み半導体層の歪み量測定方法は、前記半導体単結晶が、SiGeであり、前記歪み半導体層が、歪みSi層である場合に好適である。すなわち、この歪み半導体層の歪み量測定方法では、高速FET等の緩和SiGe層上に形成された歪みSi層における歪み量を高精度に測定することに適している。
【0012】
また、本発明の歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置は、前記半導体単結晶が、SiGeであり、前記歪み半導体層が、歪みSi層であり、前記分光された光を3.0eVから3.5eVのエネルギーを有する光とすることが好ましい。すなわち、この歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置では、SiGe層上の歪みSi層において歪みのない場合と比べて顕著に変化するエネルギーの光として、3.0eVから3.5eVのエネルギーを有する光を照射するので、より正確な測定結果を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。
【0014】
本発明の歪み量測定装置は、半導体単結晶上に積層された歪み半導体層の歪み量及び膜厚と半導体単結晶の組成を、いわゆる分光エリプソメトリーにより測定する装置であって、図1に示すように、歪み半導体層の表面に分光された光を偏光させて入射させる光照射部1と、歪み半導体層からの反射光の偏光状態を測定する受光部2と、上記偏光状態を測定して得られた光学情報と歪み半導体層の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪み半導体層の歪み量を算出する演算部3とを備えている。なお、符号4は、測定用サンプルSを載置する試料台である。
【0015】
上記光照射部1は、光源として水銀ランプ1aを備えており、近赤外から近紫外まで(本実施形態では、2.8eVから4.5eVまで0.05eV間隔で)分光させた光を偏光状態のわかった完全偏光として照射可能となっている。また、上記受光部2は、上記反射光を受光する光電子増倍管である。
上記演算部3は、歪み半導体層表面での入射面に平行な偏光成分の反射率と垂直な偏光成分の反射率との振幅反射率比tanΨ(光学情報)及び両成分の位相差△(光学情報)を求め、得られたtanΨ及びcos△に対して半導体層に歪みがあるとした場合のモデル(光学定数の歪み依存性を考慮したモデル)に基づくフィッティングを行って歪み半導体層の歪み量及び膜厚と下地層である半導体単結晶の組成をコンピュータ処理により算出するものである。
なお、演算部3で取り込んだ測定結果のコンピュータ処理を、本装置の演算部3ではなく、別のコンピュータにより処理する方法を用いても構わない。
【0016】
次に、この歪み量測定装置による歪み量測定方法について、実際に作製した測定用サンプルの測定例をもって説明する。
【0017】
上記測定用サンプルSは、図2に示すように、LP−CVD(減圧CVD)を用いて、Si(001)基板SUB上に1.5μmの傾斜SiGe層L1を、Ge組成比が0から0.3まで連続に変化するように成膜し、さらにGe組成比が0.3で一定の緩和SiGe層(半導体単結晶)L2を0.75μm成膜し、その上に30nmのSi層を成膜して歪みSi層(歪み半導体層)L3を形成したものである。なお、図示しないが、歪みSi層L3表面には、極薄い自然酸化膜(SiO2)が形成されている。
【0018】
なお、Ge組成比が0.2〜0.3で組成比一定の緩和SiGe層0.75μm程度の上にSiを成膜した場合、可視域の入射光の消衰距離は0.75μm以下であるので、一定組成比のSiGe層上の歪みSi層というモデリングにより、歪みSi層L3の歪み量及び膜厚と緩和SiGe層L2のGe組成比とを決定することができる。
また、歪みSi層L3の下に可視域の入射光の消衰距離以下の緩和SiGe層L2があり、その下にSiO2等の絶縁膜があるような構造でも、一定組成比のSiGe層上に形成された絶縁膜上の一定組成比のSiGe層上に形成されたSi層というモデリングにより、歪みSi層L3の歪み量及び膜厚と緩和SiGe層L2のGe組成比を決定することができる。
【0019】
このように作製した測定用サンプルSを、歪み量測定装置の試料台4にセットし、測定用サンプルS表面に光照射部1から2.8〜4.5eVまで0.05eV間隔で分光させかつ偏光させた光を照射する。さらに、測定用サンプルSからの反射光を受光部2で受光し、その反射光の偏光状態から得られた光学情報と歪みSi層L3の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪みSi層L3の歪み量、膜厚及び緩和SiGe層L2のGe組成比を演算部3で算出する。
【0020】
上記演算部3の計算における緩和SiGe層L2の光学定数は、C.Pickering,R.T.Carline,D.J.Robbins,W.Y.Leong,S.J.Barnett,and,A.D.Pitt,J.Appl.Phys.73,239(1993).に記載されたデータを用いた。また、歪みSi層L3における光学定数の歪み依存性については、明記した文献等がないため、これを理論計算により算出した。この際の、誘電関数の実部と虚部との結果を、図3及び図4に示す。
【0021】
なお、上記光学定数の歪み依存性は、歪み半導体層の誘電関数の実部及び虚部における歪み量に対する変化であり、また、上記理論計算は、以下のようにして行った。
まず、第一原理計算により求められた歪みSiの電子状態により誘電関数を求め、1eVから7eVの範囲のピークの高さとエネルギー値の歪み依存性を求めた。これにより、Siの誘電関数の歪み0のピークからの高さとエネルギー値のシフトを算出した結果、図3,4が求められた。
【0022】
このような上記結果を元に、演算部3において分光エリプソメトリーの測定結果を解析処理する。すなわち、上記演算部3において、反射光から測定されたtanΨ及びcos△に対し、Siに歪みがあるとした場合の上記理論計算によるモデルに基づくフィッティング(Levenberg-Marguardt法)を行う。なお、このフィッティング結果及び歪みの無い通常のSiの光学関数を用いてフィッティングした結果を、図5及び図6に示す。これらの図からわかるように、歪みを考慮した本実施形態の測定方法では、3〜3.5eVの測定結果の特徴的な関数形をtanΨ及びcos△の双方で同時に再現できている。
【0023】
さらに、演算部3において、歪みSi層L3の歪み量及び膜厚と緩和SiGe層L2のGe組成比とを図5及び図6のフィッティング曲線から算出する。この算出結果を、図7の図表に示す。なお、比較のため、測定用サンプルSについて、緩和SiGe層L2のGe組成比をSIMSで測定し、また歪みSi層L3の歪み量をラマン分光法により別途測定した結果も示す。
【0024】
これらの結果からわかるように、本実施形態の測定方法では、分光エリプソメトリーの測定結果の解析にSiの光学関数における歪みの効果(歪み依存性)を考慮することにより、歪みSi層L3の歪み量を高精度に測定することができると共に、歪みSi層L3の膜厚及び緩和SiGe層L2のGe組成比を同時に非破壊で短時間に測定することができる。
特に、歪みSi層L3の歪み依存性が顕著に現れる3.0〜3.5eVのエネルギー光を照射することにより、より高精度に歪み量等を測定することができる。
【0025】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明の歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置では、歪み半導体層の表面に分光された光を偏光させて入射させ、歪み半導体層からの反射光の偏光状態を測定して得られた光学情報と歪み半導体層の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪み半導体層の歪み量を求めるので、高速FETに用いられる歪みSi層等の歪み量を非破壊で高精度にかつ簡易に測定することができ、さらには、その膜厚や下地層の半導体単結晶の組成をも高精度にかつ同時に非破壊で測定することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態における歪み量測定装置を示す概略的な構成図である。
【図2】 本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態における歪み量測定装置にセットされる測定用サンプルを示す要部断面図である。
【図3】 本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態において、入射する光のエネルギーに対するSiの誘電関数の実部の歪み依存性を示すグラフである。
【図4】 本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態において、入射する光のエネルギーに対するSiの誘電関数の虚部の歪み依存性を示すグラフである。
【図5】 本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態において、歪みを考慮した場合と考慮しない場合の入射した光のエネルギーに対するtanΨの測定結果及びフィッティング結果を示すグラフである。
【図6】 本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態において、歪みを考慮した場合と考慮しない場合の入射した光のエネルギーに対するcos△の測定結果及びフィッティング結果を示すグラフである。
【図7】 本発明に係る歪み半導体層の歪み量測定方法及び歪み量測定装置の一実施形態において、歪みを考慮した本実施形態の場合と考慮しない場合及び他の測定手段による場合のそれぞれの歪みSi層の膜厚及び歪み量と緩和SiGe層のGe組成比とを示す図表である。
【符号の説明】
1 光照射部
2 受光部
3 演算部
L2 緩和SiGe層(半導体単結晶)
L3 歪みSi層(歪み半導体層)
S 測定用サンプル

Claims (7)

  1. 半導体単結晶上に積層された歪み半導体層の歪み量を測定する方法であって、
    前記歪み半導体層の表面に分光された光を偏光させて入射させ、歪み半導体層からの反射光の偏光状態を測定して得られた光学情報と歪み半導体層の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪み半導体層の歪み量を求めることを特徴とする歪み半導体層の歪み量測定方法。
  2. 請求項1に記載の歪み半導体層の歪み量測定方法において、
    前記光学情報と前記歪み依存性とに基づいて前記歪み半導体層の膜厚又は前記半導体単結晶の組成の少なくとも一方も同時に求めることを特徴とする歪み半導体層の歪み量測定方法。
  3. 請求項1又は2に記載の歪み半導体層の歪み量測定方法において、
    前記半導体単結晶は、SiGeであり、
    前記歪み半導体層は、歪みSi層であることを特徴とする歪み半導体層の歪み量測定方法。
  4. 請求項3に記載の歪み半導体層の歪み量測定方法において、
    前記分光された光は、3.0eVから3.5eVのエネルギーを有する光であることを特徴とする歪み半導体層の歪み量測定方法。
  5. 半導体単結晶上に積層された歪み半導体層の歪み量を測定する装置であって、
    前記歪み半導体層の表面に分光された光を偏光させて入射させる光照射部と、
    前記歪み半導体層からの反射光の偏光状態を測定する受光部と、
    前記偏光状態を測定して得られた光学情報と歪み半導体層の光学定数の歪み依存性とに基づいて、歪み半導体層の歪み量を算出する演算部とを備えることを特徴とする歪み半導体層の歪み量測定装置。
  6. 請求項5に記載の歪み半導体層の歪み量測定装置において、
    前記演算部は、前記光学情報と前記歪み依存性とに基づいて、に基づいて前記歪み半導体層の膜厚又は前記半導体単結晶の組成の少なくとも一方も同時に算出する機構を有していることを特徴とする歪み半導体層の歪み量測定装置。
  7. 請求項5又は6に記載の歪み半導体層の歪み量測定装置において、
    前記半導体単結晶は、SiGeであり、
    前記歪み半導体層は、歪みSi層であり、
    前記光照射部は、前記分光された光として3.0eVから3.5eVのエネルギーを有する光を照射可能であることを特徴とする歪み半導体層の歪み量測定装置。
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