JP2000088776A - 薄膜の測定方法と薄膜の測定装置 - Google Patents

薄膜の測定方法と薄膜の測定装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 結晶基板上に形成された薄膜の密度を高精度
で測定することが可能な薄膜の測定装置を提供する。 【解決手段】 X線発生装置10は、試料14にX線を
照射する。検出器15,16は、結晶基板上に薄膜が形
成された前記試料と前記薄膜を除去した後の前記試料の
回折X線14Dおよび鏡面反射X線14Rを検出する。
X線強度測定装置17は、入射X線12Bの視斜角θを
変化させて検出信号S15に基づいて薄膜の除去前後の
回折X線14Dの強度特性を測定する。演算装置19
は、薄膜の除去前後の強度特性の比である規格化強度特
性を算出する。演算装置19は、薄膜の厚さdと密度ρ
をパラメータに有する回折X線の強度の理論値であって
前記薄膜が有る場合の前記理論値と無い場合の前記理論
値との比である規格化理論値を、前記規格化強度特性に
一致させるような前記パラメータの値を算出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶基板上に形成
された薄膜の厚さおよび密度を測定する測定方法とその
測定装置とに関する。
【0002】
【従来の技術】VLSI(Very Large Scale Integrate
d circuit )デバイス、ULSI(Ultra Large Scale
Integrated circuit)デバイスなどのシリコンデバイス
には、酸化膜や窒化膜などの薄膜の利用が不可欠となっ
ている。シリコン酸化膜は、選択拡散マスク、絶縁分離
膜、MOS用ゲート絶縁膜などに利用され、窒化膜につ
いては、その高い絶縁性や誘電率を生かしてゲート絶縁
膜や埋め込み絶縁膜などに用いられている。これらの薄
膜の絶縁耐圧などの電気的特性は、薄膜を利用したデバ
イスの特性に直接影響するため、その電気的特性の把握
することはデバイスの特性向上や不良率の低減に結びつ
く。さらに、その電気的特性の発現する仕組みを解明す
るためには、薄膜の膜質を評価する必要がある。この膜
質の評価項目としては、膜厚、膜表面の粗さ、膜基板界
面の粗さ、膜応力など様々あるが、その中でも膜の密度
は、薄膜を構成する原子の比率や稠密度(膜中の原子の
詰まり具合)を反映し、膜の完全性を知る上で有用な物
理量である。薄膜の密度は、バルク(充分厚い状態)の
それとは異なる場合があり、特に膜厚が0.1nm程度
〜10nm程度の薄い場合には、バルクの値から外れ
る。薄膜の密度を測定することは容易ではないが、従来
方法としては、次に述べるような三つの測定方法があ
る。
【0003】第1の測定方法として、エリプソメトリー
(偏光解析法)を用いる方法がある。この方法は、偏光
の2成分であるP偏光およびS偏光の複素振幅反射率の
絶対値の比と、反射の際のそれら2成分の位相差から、
薄膜の屈折率と膜厚が求められる。薄膜を構成する原子
(元素)の組成比が既知であれば、それらの光学定数を
使って屈折率から密度を求めることができる。
【0004】第2の測定方法として、X線の反射を利用
するX線反射率法を用いる方法がある。この方法は、測
定された反射率曲線に対して非線形の最小二乗法による
フィッティングを実行し、パラメータである薄膜の厚
さ、薄膜の密度、薄膜と基板との界面および薄膜の表面
の粗さを全て同時に求める方法である。
【0005】第3の測定方法として、極微小角入射X線
回折法と呼ばれる方法がある。この方法について、シリ
コンの熱酸化膜の密度を測定した秋本、長谷川両氏の報
告がある(「応用物理」(1993) Vol.62 ,No.11 ,pp.1
128-1131)。この報告では、酸化膜の密度を算出する際
に、熱酸化膜の密度は酸化膜形成法が同一ならば、酸化
膜の厚さによらず、一定であるという前提を置いてい
る。そして、熱酸化膜の形成されたシリコンウェハの基
板からのブラッグピークの強度を測定し、膜厚の異なる
試料で得られた複数の強度値から、一つの酸化膜密度を
フィッティングで求める。
【0006】なお、ブラッグ回折、全反射、屈折などX
線に関する参考文献は、多数出版されているが、X線の
原理的な解説については、「X線回折・散乱技術 上」
菊田惺志著(東京大学出版会)pp.240-243等に記載され
ている。また、主に理論的な取り扱いについては、S. K
ishino and K. Kohra, Jpn. J.Appl. Phys.10(1971)55
1.等に記載されており、S. Kimura, J. Harada and T.I
shikawa, Acta Cryst. A50(1994)337.等に記載されてい
る。また、主に理論的な取り扱いについては、L. G. Pa
rratt, Phys. Rev. 95 (1954) 359.等に記載されてお
り、B. Vidal and P. Vincent, Appl. Opt. 23 (1984)
1794. 等に記載されている。また、吉田貞史、矢嶋弘
義、「薄膜・光デバイス」(東京大学出版会)を参考に
することができ、和田順雄、Vol. 65, No. 11 「応用物
理」(1996) 1125.を参考にすることができる。また、理
学電機ジャーナル 25(2) (1994) 58.を参考にすること
ができ、N. Awaji, S. Ohkubo, T. Nakanishi, Y. Sugi
ta, K. Takasaki and S. Komiya, Jpn. J. Appl. Phys.
35 (1996) L67. を参考にすることができる。また、古
宮聰、淡路直樹、堀井義正、富田博文、Vol. 39, No. 1
「日本結晶学会誌」(1997) 89.を参考にすることができ
る。また、秋本晃一、長谷川英司、Vol. 62, No. 11
「応用物理」(1993) 1128.を参考にすることができ、E.
Hasegawa, A. Ishitani, K. Akimoto, M. Tsukiji and
N. Ohta, J. Electrochem. Soc. 142(1995) 273. を参
考にすることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】第1の測定方法である
エリプソメトリーの場合は、実験値である反射率の比と
位相差から、屈折率が直接的に求まるのではなく、複雑
な数値解析による合わせ込み(フィッティング)が必要
となる。さらに、エリプソメトリーでは、膜厚10nm
以上での精度は一般に保証されているが、膜厚10nm
未満の膜については、実験上の特別の配慮をしなければ
膜厚10nm以上の場合と同程度までに測定誤差を抑え
ることが困難である。また、エリプソメトリーでは、入
射光に対する入射角および反射光に対する出射角の他
に、入射光および出射光の振幅を測定しなければなら
ず、誤差要因が多くあり、求められる密度の値の確度
(確からしさ)は低くなるおそれがある。
【0008】第2の測定方法であるX線反射率法の場合
は、測定されるのは1つの反射特性であるのに対し、決
定されるパラメータの数は4個となり、4個のパラメー
タについてフィッティングを用いているので、フィッテ
ィングの際の収束条件が複数存在し、密度の値の確度は
低くなるおそれがある。さらに、求められる物理量は互
いに線形独立ではないので、密度の誤差は他の膜厚の粗
さの絶対値等に依存し、実験条件だけからは決められな
いという問題点がある。
【0009】第3の測定方法である極微小角入射X線回
折法を用いた上記報告では、ブラッグピークの強度は、
X線の酸化膜による吸収で、膜厚に応じて変化するとい
う現象を利用している。上記報告には、三つの問題点が
ある。一つは、同じ条件で形成された薄膜は厚さが異な
っても同一の密度を持つという前提が、成り立たない場
合がしばしばある。次に、密度算出の際に膜厚を予め求
めておく必要がある。最後に、膜厚の算出にX線の動力
学的回折理論(Dynamical Theory of Diffraction )を
用いておらず、これらの点に鑑みると得られる密度の値
の確度は低くなるおそれがある。本発明の目的は、結晶
基板上の薄膜の密度の測定において、密度の値を高精度
で得ることができる薄膜の測定方法とその測定装置とを
提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の薄膜の測定方法
では、結晶基板上に薄膜が形成された試料にX線を照射
して回折X線の強度特性を測定し、前記薄膜を除去した
後の前記試料に前記X線を照射して回折X線の強度特性
を測定し、前記試料に前記薄膜が形成された場合の前記
強度特性と前記薄膜を除去した場合の前記強度特性との
比である規格化強度特性を算出し、前記試料の薄膜の厚
さおよび密度をパラメータとして有する回折X線の強度
の理論値であって前記薄膜が有る場合の前記理論値と無
い場合の前記理論値との比である規格化理論値を、前記
規格化強度特性に一致させるような前記パラメータの値
を算出する。
【0011】本発明の薄膜の測定方法では、好適には、
前記強度特性は、入射X線の視斜角をブラッグピークと
なる角の前後で所定の角度範囲で極微小角入射X線回折
法により測定され、前記規格化理論値を前記規格化強度
特性に一致させるような前記パラメータの値は、最小二
乗法により算出される。本発明の薄膜の測定方法では、
好適には、前記試料に照射されるX線は、ブラッグピー
クが全反射臨界角近傍で生じるような波長を有する。
【0012】本発明の薄膜の測定装置では、試料にX線
を照射するX線発生装置と、結晶基板上に薄膜が形成さ
れた前記試料と前記薄膜を除去した後の前記試料の回折
X線および鏡面反射X線を検出する検出器と、入射X線
の視斜角を変化させて前記検出器からの検出信号に基づ
いて前記薄膜が形成された前記試料と前記薄膜を除去し
た前記試料の回折X線の強度特性を測定するX線強度測
定装置と、前記X線強度測定装置の出力信号に基づいて
前記薄膜が形成された前記試料の回折X線の強度特性と
前記薄膜を除去した前記試料の回折X線の強度特性との
比である規格化強度特性を算出する手段と、前記試料の
薄膜の厚さおよび密度をパラメータとして有する回折X
線の強度の理論値であって前記薄膜が有る場合の前記理
論値と無い場合の前記理論値との比である規格化理論値
を、前記規格化強度特性に一致させるような前記パラメ
ータの値を算出する手段とを有する。
【0013】本発明の薄膜の測定装置では、好適には、
前記試料を載せるゴニオメータと、前記X線強度測定装
置からの制御信号に基づいて駆動され、入射X線の視斜
角をブラッグピークとなる角の近傍で変化させるように
前記ゴニオメータを回転させるパルスモータとを有す
る。本発明の薄膜の測定装置では、好適には、前記X線
発生装置は、X線発生源と、前記X線発生源が出力する
X線から、ブラッグピークが全反射臨界角近傍で生じる
ようなX線を取り出すモノクロメータとを有しており、
前記モノクロメータで取り出されたX線が前記試料に照
射される。
【0014】本発明の薄膜の測定装置および測定方法で
は、好適には、前記回折X線の強度の理論値であるR
(θ)は次式で表される。
【数3】 但し、{sin(θ+2α) /sin θ}×{|Eh /E1
2 }の値は動力学的回折理論に基づいて求められ、|E
0r/E0 2 の値は薄膜表面および薄膜と結晶基板との
界面におけるX線の境界条件から求められ、|E1 /E
0r2 の値は入射X線の薄膜中での位相変化から求めら
れ、θは視斜角、αは基板結晶のX線回折に関わる格子
面と試料表面とのなす角、Eh は薄膜中および真空中も
しくは薄膜中および空気中での回折X線の電界の振幅
値、E0 は真空中もしくは空気中での入射X線の電界の
振幅値、E0rは薄膜中かつ薄膜表面での入射X線の電界
の振幅値、E1 は薄膜中かつ薄膜と結晶基板との界面で
の入射X線の電界の振幅値である。
【0015】本発明の薄膜の測定方法では、先ず、結晶
基板上に薄膜が形成された試料にX線を照射して回折X
線の強度特性を測定する。次に、前記薄膜を除去した後
の前記試料に前記X線を照射して回折X線の強度特性を
測定する。次に、前記試料に前記薄膜が形成された場合
の前記強度特性と前記薄膜を除去した場合の前記強度特
性との比である規格化強度特性を算出する。次に、前記
試料の薄膜の厚さおよび密度をパラメータとして有する
回折X線の強度の理論値であって前記薄膜が有る場合の
前記理論値と無い場合の前記理論値との比である規格化
理論値を、前記規格化強度特性に一致させるような前記
パラメータの値を算出する。前記薄膜が有る場合の前記
理論値は、前記結晶基板上に薄膜が形成された状態の前
記試料に対応し、前記薄膜が無い場合の前記理論値は、
前記薄膜が除去された状態の前記試料に対応する。
【0016】本発明の薄膜の測定装置では、X線発生装
置は、試料にX線を照射する。検出器は、結晶基板上に
薄膜が形成された前記試料の回折X線および鏡面反射X
線を検出する。また、検出器は、前記薄膜を除去した後
の前記試料の回折X線および鏡面反射X線を検出する。
X線強度測定装置は、入射X線の視斜角を変化させて前
記検出器からの検出信号に基づき、前記薄膜が形成され
た前記試料の回折X線の強度特性を測定する。また、X
線強度測定装置は、入射X線の視斜角を変化させて前記
検出器からの検出信号に基づき、前記薄膜を除去した前
記試料の回折X線の強度特性を測定する。薄膜の測定装
置は、前記X線強度測定装置の出力信号に基づき、前記
薄膜が形成された前記試料の回折X線の強度特性と前記
薄膜を除去した前記試料の回折X線の強度特性との比で
ある規格化強度特性を算出する手段を有する。また、薄
膜の測定装置は、前記試料の薄膜の厚さおよび密度をパ
ラメータとして有する回折X線の強度の理論値であって
前記薄膜が有る場合の前記理論値と無い場合の前記理論
値との比である規格化理論値を、前記規格化強度特性に
一致させるような前記パラメータの値を算出する手段を
有する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面を参照し
て説明する。図1は、本発明の薄膜の測定装置を示す概
略ブロック図である。
【0018】この薄膜の測定装置100は、X線発生装
置10と、試料14を載せて固定するゴニオメータ13
と、検出器15,16と、X線強度測定装置17と、パ
ルスモータ18と、演算装置19とを有する。X線発生
装置10は、X線12Bを試料14に照射し、X線12
Bは入射X線を構成する。X線発生装置10は、X線発
生源11と、このX線発生源11が出力するX線11B
から特定の波長のX線を取り出すモノクロメータ12と
を有しており、モノクロメータ12で取り出されたX線
12Bが試料14に照射される。前記試料14は、結晶
基板上に薄膜が形成された試料14aと、当該試料14
aから前記薄膜を除去した後の試料14bとを意味す
る。
【0019】検出器15は、結晶基板上に薄膜が形成さ
れた試料14aの回折X線14Dを検出し、検出信号S
15を生成する。また、検出器15は、前記試料14a
から前記薄膜を除去した後の試料14bの回折X線14
Dを検出し、検出信号S15を生成する。検出器16
は、結晶基板上に薄膜が形成された試料14aの鏡面反
射X線14Rを検出し、検出信号S16を生成する。ま
た、検出器16は、前記試料14aから前記薄膜を除去
した後の試料14bの鏡面反射X線14Rを検出し、検
出信号S16を生成する。
【0020】X線強度測定装置17は、パルスモータ
(ステッピングモータ)18を制御するモータ制御信号
S17Mを生成する。パルスモータ18は、X線強度測
定装置17からのモータ制御信号S17Mに基づいて駆
動され、入射X線12Bの視斜角θをブラッグピークと
なる角の近傍で変化させるようにゴニオメータ13を回
転させる。X線強度測定装置17は、入射X線12Bの
視斜角θを変化させて検出器15からの検出信号S15
に基づいて試料14a,14bの回折X線14Dの強度
特性等を測定し、記憶する。X線強度測定装置17は、
検出器16からの検出信号S16に基づいて鏡面反射X
線14Rの強度特性等のデータを入力し、記憶する。
【0021】演算手段19は、CPUとROMとRAM
とを備えて各種演算を行う不図示のマイクロコンピュー
タを有し、一例としてディジタル・シグナル・プロセッ
サ(DSP)を有してもよい。前記ROMまたはRAM
には、式(1)〜(23)または式(4)〜(23)の
計算を行うに必要な値が記憶されている。演算手段19
は、X線強度測定装置17の出力信号S17に基づいて
試料14aの回折X線14Dの強度特性と試料14bの
回折X線14Dの強度特性との比である規格化強度特性
を算出する。演算手段19は、前記試料14の薄膜の厚
さdおよび密度ρをパラメータとして有する回折X線1
4Dの強度の理論値であって前記薄膜が有る場合の前記
理論値と無い場合の前記理論値との比である規格化理論
値を、前記規格化強度特性に一致させるような前記パラ
メータd,ρの値を算出し、演算手段19に接続された
ディスプレイ装置またはプリンタ装置等の不図示の出力
装置に出力する。
【0022】薄膜の測定装置100を、以下に更に詳述
する。X線発生源11からのX線11Bは、モノクロメ
ータ12により、測定すべき薄膜と結晶基板とからなる
試料14に適した波長(例えば0.1nm程度)に、単
色化される。単色化されたX線12Bは、不図示のスリ
ットにより、試料14へ入射する形状に整えられる。通
常、全反射条件下でX線を物質に入射させると、物質表
面で屈折したX線は、物質の深さ方向に指数関数的に減
衰し、表面からごく微小に入り込む(しみ込む)。この
表面からごく微かに入り込む電磁波(X線を含む)をエ
バネッセント波と呼ぶ。エバネッセント波は、物質表面
に極めて敏感であるという性質を有する。薄膜の測定装
置100では、X線のブラッグ回折の強度のピークであ
るブラッグピークが全反射臨界角θc近傍で生じるよう
に、X線12Bの波長λを調整している。X線強度測定
装置17は、ブラッグピークの角度を示すデータを演算
装置19に出力する構成としてもよい。X線を入射させ
る視斜角θは全反射臨界角θc近傍のごく小さい角度で
あり、試料14の結晶基板がシリコンで薄膜が酸化膜の
場合は、一例として0度<θ≦0.4度程度とする。パ
ルスモータ18は、一例として0.001度程度〜0.
01度程度ずつ、ゴニオメータ13を回転させる。
【0023】薄膜の測定装置100では、X線の波長λ
を変えることでブラッグ角を調整し、ブラッグピークを
全反射臨界角近傍に生じさせるので、X線11Bとして
はシンクロトロン放射光の利用が適している。一方、金
属ターゲットに荷電粒子等を照射してX線を発生するX
線発生装置では、金属ターゲットの種類によりX線の波
長が固定される。このようなX線発生装置を用いる場合
は、試料14またはその結晶基板の回折に寄与する格子
面と表面とのなす角をブラッグ角に一致するように、予
めオフセットをつけた試料または結晶基板を用いてもよ
い。
【0024】入射X線12Bを試料14の表面に所定の
視射角θで入射させる。そして、試料14に入射したX
線12Bのうち、試料表面で全反射された鏡面反射X線
14Rは、検出器16の方向に進む。一方、エバネッセ
ント波は、試料14の格子面に対してブラッグ条件を満
たし、検出器15の方向に回折する。このとき、視射角
θと出射角(試料表面と回折X線14Dとのなす角)は
等しくないので、生じる反射は非対称反射である。試料
14と検出器16との間には不図示のスリットが設けて
あり、このスリットは、試料14に照射されずに検出器
16に到来するX線をカットし、試料表面で全反射され
た鏡面反射X線14Rのみを通過させ、検出器16で検
出されるようになっている。試料14と検出器15との
間には不図示のスリットが設けてあり、このスリット
は、試料14のブラッグ回折による回折X線14Dを通
過させ、ノイズの原因となる空気などによる散乱X線を
カットし、検出器15で回折X線14Dが検出されるよ
うになっている。なお、ここでの回折とは、結晶に入射
したX線が、結晶格子のある特定の面とブラッグ条件を
満たし、ブラッグ角の方向に強め合って散乱される干渉
現象をいう。
【0025】試料14にて鏡面反射したX線14Rは検
出器16で検出され、試料14の結晶基板にてブラッグ
回折したX線14Dは検出器15で検出される。試料1
4はゴニオメータ13に固定されており、X線強度測定
装置17からモータ制御信号S17Mをパルスモータ1
8に送ってゴニオメータ13を微小回転させることによ
り、試料14に対するX線の視斜角θを、ブラッグピー
クの前後で所定の角度範囲だけ変化させる。その変化に
応じて、鏡面反射X線14Rの強度および回折X線14
Dの強度をX線強度測定装置17は逐次記憶する。薄膜
が形成された状態で強度測定した後に、薄膜をエッチン
グなどで除去した後で再び同様の強度測定を行う。
【0026】薄膜の測定装置100におけるX線強度測
定結果の一例を図2に示す。鏡面反射X線14Rの強度
特性f3 (θ)を示す鏡面反射曲線において、変曲点を
与える角度θcが全反射臨界角であり、それより低角
側、すなわちグラフの左側が全反射条件下に相当する。
薄膜が形成された状態で、すなわち薄膜を除去する前に
測定された回折X線の強度特性f1 (θ)を示す回折強
度曲線のピーク(ブラッグピーク)は全反射臨界角θc
より微かに低角側に生じる。薄膜を除去した後に、すな
わち基板だけの状態で測定された回折X線の強度特性f
3 (θ)を示す回折強度曲線のピーク(ブラッグピー
ク)も全反射臨界角θcより低角側に、かつf1 (θ)
のピークよりも微かに低角側に生じる。
【0027】f1 (θ)とf2 (θ)の強度差は全反射
臨界角θcよりも低い低角側で大きくなっている。これ
は、薄膜が無い場合に比べて薄膜が有る場合は、薄膜の
影響で結晶基板に到達するエバネッセント波の強度が減
少し、それだけ回折に寄与するX線の強度が低下するた
めである。一方、全反射臨界角θcよりも高い高角側で
は、X線の侵入深さは急激に増大し、薄膜の影響は非常
に小さくなり、両者の強度はほぼ一致する。こうして測
定された2つの強度特性f1 (θ)とf2 (θ)は、図
1の薄膜の測定装置100における演算装置19に転送
されて、理論計算による合わせ込みの対象として用いら
れる。以下の計算は演算装置19で実行される。
【0028】一般に基板には反りが存在するために理想
的な結晶状態からずれており、強度特性f1 (θ)とf
2 (θ)から理想的な結晶状態を計算で再現するのは非
常に困難である。そこで、薄膜の測定装置100では、
2 (θ)でf1 (θ)を割る(または、f1 (θ)で
2 (θ)を割る)ことにより、基板の反りの影響を回
折強度特性から除外する。これは、反りのない理想的な
状態における、薄膜除去前の回折X線の強度特性f1'
(θ)と薄膜除去後の回折X線の強度特性f2'(θ)に
より、 f1 (θ)=c(θ)f1'(θ) ……(1) f2 (θ)=c(θ)f2'(θ) ……(2) と表されることに基づく。ここで、c(θ)は反りによ
る修正因子で視斜角θの関数であり、f1 (θ)とf2
(θ)に共通に作用する。なお、c(θ)には、反り以
外に、基板に起因し、かつ薄膜の除去前後に共通である
誤差要因(例えば基板の格子歪みなど)を修正する因子
を含めることができる。上式(1),(2)の成立に
は、薄膜が試料の表裏に均一に形成されており、また表
裏共に均一に除去される場合が好ましい。または、X線
が入射する面にのみ形成されている場合は、薄膜と基板
との界面に生ずる応力が微小である場合が好ましい。こ
れらの条件は通常満足される。
【0029】X線強度の測定結果から得られる規格化強
度特性をfa (θ)とすると、式(1),(2)から、 fa (θ)=f1 (θ)/f2 (θ) ={c(θ)f1'(θ)}/{c(θ)f2'(θ)} =f1'(θ)/f2'(θ) ……(3) と表され、反りのない理想的な状態での回折強度を反映
した特性を、規格化強度特性fa (θ)から得ることが
できる。こうして得られた規格化強度特性fa (θ)を
示す規格化回折強度曲線の概念図を図3に示す。図3の
グラフでは、前記図2のグラフに示すように、全反射臨
界角θcより低角側ではf1 (θ)とf2 (θ)との差
が開いていることから、fa (θ)の値は小さくなり、
一方、全反射臨界角θcより高角側ではf1 (θ)とf
2 (θ)とはほぼ一致することから、fa (θ)の値は
1に近づく。このfa (θ)を理論的に再現しようとし
て計算される規格化理論値fc (θ)を示す規格化回折
強度曲線を、図3中に合わせて示す。
【0030】規格化理論値fc (θ)において、薄膜の
密度ρと厚さdがパラメータに採用されており、この計
算について以下に述べる。試料に対する入射X線と回折
X線及び鏡面反射X線の関係を図4に示す。図中の符号
141は結晶基板であり、符号140は結晶基板141
上に形成された薄膜である。回折X線の入射X線に対す
る相対強度であって、回折X線の強度の理論値R(θ)
は、次式(4)で表される。
【数4】 ここで、αは基板結晶の回折に関わる格子面と試料表面
とのなす角であり、E0 は真空中(または空気中)での
入射X線の電界の振幅値であり、Eh は薄膜中及び真空
中(または空気中)での回折X線の電界の振幅値であ
り、E0rは薄膜中かつ薄膜表面での入射X線の電界の振
幅値であり、E1 は薄膜中かつ薄膜と基板との界面での
入射X線の電界の振幅値である。回折X線と試料との成
す角は全反射臨界角θcよりもかなり大きく、回折X線
の薄膜中での吸収は無視できることを上記のEh の定義
は意味する。式(4)の右辺の第1成分sin(θ+2α)
/sin θは、試料14に照射される入射X線の幅と検出
器で検出される回折X線の幅の相違を補正するように作
用する。
【0031】式(4)の右辺第2成分を展開すると、次
のようになる。
【数5】 ここで、上式(5)中のg0 とg1 は、それぞれ次式
(6)と次式(7)で表される。
【数6】
【数7】 但し、上式(7)中の(1+χ0(1)/2)は薄膜の屈折
率を表す。
【0032】χ0(1)は複素数であり、実部χ'0(1) と虚
部χ"0(1) を用いて次式(8)〜(10)で表される。
【数8】
【数9】
【数10】 ここで、λはX線の波長であり、re は古典電子半径で
あり、NA はアボガドロ数であり、xj 、Zj 、Mj
j ' およびfj " は、それぞれ薄膜を構成するj番目
の元素(原子種)の組成比、電子数(原子番号)、原子
量、原子散乱因子の異常分散項の実部および原子散乱因
子の異常分散項の虚部であり、ρは薄膜の密度である。
例えば、1番目の元素をシリコンとし、2番目の元素を
酸素とする。
【0033】式(7)におけるθ1 は薄膜表面における
屈折角であり、スネルの法則より次式(11)で表され
る。
【数11】
【0034】式(5)の右辺のE0mは薄膜中かつ薄膜表
面での鏡面反射X線の電界の振幅値であり、E1mは薄膜
中かつ薄膜と基板との界面での鏡面反射X線の電界の振
幅値である。また、薄膜と基板との界面での鏡面反射X
線および入射方向のX線の電界ベクトルと磁界ベクトル
の境界条件から、次式(12)が成立する。
【数12】 ここで、Γ0 (1) は、基板の結晶中で回折が生じている
場合に存在し得る入射方向の波数ベクトル↑k
2 (1) の、試料表面に垂直な成分を用いて次式(13)
で表される。
【数13】 ここで、↑nは試料表面に垂直な単位ベクトル、k1
入射X線の薄膜中の波数、δ0 は共鳴不足度であり、ま
た、次式(14)が成立する。
【数14】 ここで、k2 は基板結晶中のX線の波数であり、1+χ
0(2)/2は基板結晶の屈折率を表す。
【0035】Γ0 (1) は、マクスウェル方程式とブロッ
ホの定理から導かれる結晶中の電磁波の波数ベクトルが
満たす基本方程式を、2波近似とラウエ条件を用いて変
形して得られた次の4次方程式(15)の解の1つであ
る。
【数15】 ここで、χp とχq はそれぞれ逆格子ベクトル↑hと−
(↑h)に対応する、基板結晶の電気感受率のフーリエ
級数(の係数)である。逆格子ベクトル↑hは回折に関
わる格子面に対応し、その絶対値hは次式(16)によ
り表される。
【数16】 ここで、θB はブラッグ角である。また、次式(17)
が成立する。
【数17】 式(15)の他の3つの解をΓ0 (2) 、Γ0 (3) および
Γ0 (4) とすると、次のような判定条件を用いてΓ0
(1) を選択する。 Im(Γ0 (1) )<0、Im(Γ0 (4) )<0、Im
(Γ0 (2) )>0、Im(Γ0 (3) )>0、|Re(Γ
0 (1) )|<|Re(Γ0 (4) )|、|Re
(Γ0 (2) )|<|Re(Γ0 (3) )|
【0036】式(5)のδ1 は入射X線が薄膜を通過す
る際に生じる位相変化であり、次式(18)が成立す
る。
【数18】 ここで、dは薄膜の厚さであり、Kは入射X線の真空中
(または空気中)の波数である。
【0037】式(4)の右辺第3成分は、前記位相変化
に伴って入射X線が薄膜中で受ける吸収を考慮したもの
で、次式(19)で表される。
【数19】
【0038】式(4)の右辺第4成分は、基板結晶にご
く小さい角度で入射したX線の強度に対する基板結晶で
回折したX線の強度を表しており、次式(20)で表さ
れる。
【数20】 ここで、Γh (1) はラウエ条件から次式(21)が成立
する。
【数21】 以上に説明したように、式(4)〜(21)を用いて、
入射X線に対する回折X線の相対強度R(θ)を計算す
ることができる。薄膜の密度ρは、式(9)と式(1
0)に表されるように、薄膜の屈折率に関係する。薄膜
の厚さdは、式(18)に表されるように、薄膜を通過
する際の入射X線の位相変化に関係する。薄膜の厚さd
を0にして計算される相対強度は、薄膜を除去した後に
測定される回折X線強度に相当する。この場合の相対強
度R(θ)を特にR0 (θ)とすると、計算で得られる
規格化理論値fc (θ)は、次式(22)で表される。
【数22】 図3に示したように、X線強度の測定結果から得られる
規格化強度特性fa (θ)と似た特性曲線となる。
【0039】演算装置19は、次のような最小二乗法に
よる演算を最終的には実行する。X線強度の測定と同じ
範囲内に、有限なN個の視斜角θi (i=1、2、…、
N)を設定し、それらの視斜角におけるfa (θ)とf
c (θ)の差の相対値の二乗和SUMが最小になるよう
に、薄膜の密度ρと厚さdを変化させる。二乗和SUM
は、次式(23)で表される。
【数23】 そして、二乗和SUMが最小値となる場合の薄膜の密度
ρと厚さdとが、薄膜の測定装置100による測定結果
となる。
【0040】式(4)の右辺の成分のうち、|E0r/E
0 2 は薄膜表面および薄膜と結晶基板との界面におけ
るX線の境界条件から求められ、|E1 /E0r2 は入
射X線の薄膜中での位相変化から求められ、{sin(θ+
2α) /sin θ}{|Eh /E1 2 }はX線の動力学
的回折理論から求められる。それらを組み合わせて理論
計算を行うことにより、薄膜の密度ρと厚さdとを同時
に高精度で求めることができる。
【0041】試料14に関しては、基板結晶の組成と構
造と薄膜の組成は、既知である必要がある。式(14)
におけるχ0(2)や、式(15)におけるχp とχq は既
知の結晶に対して値が与えられている。一般に、基板に
用いられる結晶はシリコン、ガリウムヒ素、サファイア
などよく知られた物が多く、既知であるという条件は満
たされる。
【0042】式(9)と式(10)では、薄膜を構成す
る元素の組成比が必要である。但し、元素の組成比が正
確に分からない場合でも、次のような近似を利用できる
ときがある。例えば、シリコンウェハ上に形成されたシ
リコン酸化膜を薄膜として測定する場合、酸化膜の平均
した組成をSiOx とする。以下のSiとOからなる添
字を各々シリコンと酸素に関わる量とすると、シリコン
の原子量MSi≒2ZSi(ZSiはシリコンの原子番号)で
あり、酸素の原子量MO ≒2ZO (ZO は酸素の原子番
号)である。また、X線の波長が0.1nm程度では、
シリコンの原子散乱因子の異常分散項の実部fSi’≒Z
Si/70であり、酸素の原子散乱因子の異常分散項の実
部fO ’≒ZO /20である。よって、SiOx のxの
とり得る範囲0〜4の間では、xの値にかかわらず、3
桁の有効数字の範囲内で、式(9)および式(10)の
右辺の密度ρ以外の係数の値に影響はない。一般に、こ
のことは、原子量が原子番号の2倍で表される軽元素で
構成される薄膜で成り立つ。但し、この場合でも、薄膜
を構成する元素の種類は既知であることが必要である。
【0043】薄膜の測定装置100では、第1に、薄膜
の除去前後でそれぞれ試料の回折X線の強度特性を測定
する。これにより、薄膜の存在が回折強度に及ぼす影響
を明瞭に抽出し、測定精度を高めることができる。ま
た、個々の試料で密度ρと厚さdを求めることができ
る。また、薄膜の厚さdを変えた複数の試料を用いて、
それらに共通の密度ρの値を求める必要がない。なお、
結晶基板上に形成する薄膜の厚さdとしては、0.1n
m程度から10nm程度としてもよく、好適には1nm
(ナノメートル)程度から10nm程度としてもよい。
【0044】薄膜の測定装置100では、第2に、薄膜
の除去後の回折強度で薄膜の除去前の回折強度を規格化
する。一般に、回折強度特性(回折強度曲線)は基板の
反りの影響を受けるが、反りの影響は薄膜の除去前後で
同程度であり、測定装置100では反りの影響を回避で
きる。
【0045】薄膜の測定装置100では、第3に、薄膜
の密度ρと厚さdを同時に求める。薄膜が形成された基
板の回折強度曲線は、薄膜の密度ρおよび厚さdに依存
する。よって、それらを共にパラメータに採用した理論
計算による合わせ込みで、密度ρと厚さdの値が同時に
得られる。
【0046】薄膜の測定装置100では、第4に、X線
の動力学的回折理論と、薄膜の表面と界面におけるX線
の境界条件、および薄膜中でのX線の位相変化に伴う吸
収効果とに基づいて計算する。X線の動力学的回折理論
は、基板におけるX線の回折現象の説明に適している
が、その上に形成された薄膜中での反射・屈折現象を説
明できない。したがって、薄膜が形成された基板の回折
現象は、動力学的回折理論と、薄膜の表面と界面におけ
るX線の境界条件、および薄膜中でのX線の位相変化に
伴う吸収効果とを全て利用して解釈する方が、試料14
における物理現象をより正確に把握することができる。
【0047】薄膜の測定装置100は、組成が同じで薄
膜の形成条件を変えた複数の試料の膜質の比較評価に用
いることができる。また、薄膜を用いた半導体デバイス
の動作特性を向上させるための指針を与えることができ
る。例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などシリ
コンウェハ上の薄膜を対象とすれば、シリコンデバイス
の電気的特性(酸化膜耐圧など)の向上に対する指針を
与えことができる。また、薄膜の密度ρと厚さdの値を
利用すれば、エリプソメトリーや、X線反射率法で求め
られる値の精度を評価でき、さらにX線反射率法で求め
られる表面粗さや界面粗さの測定精度の向上に役立てる
ことができる。
【0048】
【発明の効果】本発明の薄膜の測定方法と本発明の薄膜
の測定装置によれば、試料から薄膜を除去する前後で回
折X線の強度測定をするので、薄膜が回折強度に及ぼす
影響を抽出することができ、薄膜の測定精度を向上する
ことができる。また、薄膜の除去後の回折強度と薄膜の
除去前の回折強度との比を求めて規格化することで、基
板の反りの影響を除外することができ、薄膜の測定精度
を向上することができる。また、試料の回折強度は薄膜
の密度と厚さに密接に関連することから、薄膜の密度お
よび厚さをパラメータに有する理論値を用いて回折強度
の測定値に一致させることで、薄膜の密度および厚さを
同時に得ることができると共に、薄膜の測定精度を向上
することができる。更に、X線の動力学的回折理論と薄
膜の表面と界面におけるX線の境界条件、および薄膜中
でのX線の位相変化に伴う吸収効果に基づく前記理論値
を用いることで、結晶基板上に薄膜が形成された試料に
おけるX線の回折、反射、屈折等を加味して薄膜を測定
することができ、測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜の測定装置の一例を示す概略
ブロック図である。
【図2】図1の薄膜の測定装置によるX線強度測定結果
の一例を示す図である。
【図3】規格化強度特性fa (θ)を示す規格化回折強
度曲線と、規格化理論値fc (θ)を示す規格化回折強
度曲線とを示す図である。
【図4】試料に対する入射X線と回折X線及び鏡面反射
X線の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10…X線発生装置、11…X線発生源、11B…X
線、12…モノクロメータ、12B…入射X線、13…
ゴニオメータ、14…試料、14D…回折X線、14R
…鏡面反射X線、15,16…検出器、17…X線強度
測定装置、18…パルスモータ、19…演算装置、10
0…薄膜の測定装置、140…薄膜、141…結晶基
板、S17M…モータ制御信号、θ…視斜角、θc…全
反射臨界角。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川戸 清爾 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 2F067 AA00 AA27 BB17 CC17 HH04 JJ03 KK09 LL00 RR24 RR33 2G001 AA01 BA15 BA18 CA01 DA02 DA03 DA06 EA09 FA02 FA06 FA08 GA13 KA01 KA11 LA11 MA05 RA04 SA01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶基板上に薄膜が形成された試料にX線
    を照射して回折X線の強度特性を測定し、 前記薄膜を除去した後の前記試料に前記X線を照射して
    回折X線の強度特性を測定し、 前記試料に前記薄膜が形成された場合の前記強度特性と
    前記薄膜を除去した場合の前記強度特性との比である規
    格化強度特性を算出し、 前記試料の薄膜の厚さおよび密度をパラメータとして有
    する回折X線の強度の理論値であって前記薄膜が有る場
    合の前記理論値と無い場合の前記理論値との比である規
    格化理論値を、前記規格化強度特性に一致させるような
    前記パラメータの値を算出する薄膜の測定方法。
  2. 【請求項2】前記回折X線の強度の理論値であるR
    (θ)は次式で表される 【数1】 (但し、{sin(θ+2α) /sin θ}×{|Eh /E1
    2 }の値は動力学的回折理論に基づいて求められ、|
    0r/E0 2 の値は薄膜表面および薄膜と結晶基板と
    の界面におけるX線の境界条件から求められ、|E1
    0r2 の値は入射X線の薄膜中での位相変化から求め
    られ、θは視斜角、αは基板結晶のX線回折に関わる格
    子面と試料表面とのなす角、Eh は薄膜中および真空中
    もしくは薄膜中および空気中での回折X線の電界の振幅
    値、E0 は真空中もしくは空気中での入射X線の電界の
    振幅値、E0rは薄膜中かつ薄膜表面での入射X線の電界
    の振幅値、E1 は薄膜中かつ薄膜と結晶基板との界面で
    の入射X線の電界の振幅値である。)請求項1記載の薄
    膜の測定方法。
  3. 【請求項3】前記強度特性は、入射X線の視斜角をブラ
    ッグピークとなる角の前後で所定の角度範囲で極微小角
    入射X線回折法により測定され、 前記規格化理論値を前記規格化強度特性に一致させるよ
    うな前記パラメータの値は、最小二乗法により算出され
    る請求項1記載の薄膜の測定方法。
  4. 【請求項4】前記試料に照射されるX線は、ブラッグピ
    ークが全反射臨界角近傍で生じるような波長を有する請
    求項1記載の薄膜の測定方法。
  5. 【請求項5】試料にX線を照射するX線発生装置と、 結晶基板上に薄膜が形成された前記試料と前記薄膜を除
    去した後の前記試料の回折X線および鏡面反射X線を検
    出する検出器と、 入射X線の視斜角を変化させて前記検出器からの検出信
    号に基づいて前記薄膜が形成された前記試料と前記薄膜
    を除去した前記試料の回折X線の強度特性を測定するX
    線強度測定装置と、 前記X線強度測定装置の出力信号に基づいて前記薄膜が
    形成された前記試料の回折X線の強度特性と前記薄膜を
    除去した前記試料の回折X線の強度特性との比である規
    格化強度特性を算出する手段と、 前記試料の薄膜の厚さおよび密度をパラメータとして有
    する回折X線の強度の理論値であって前記薄膜が有る場
    合の前記理論値と無い場合の前記理論値との比である規
    格化理論値を、前記規格化強度特性に一致させるような
    前記パラメータの値を算出する手段とを有する薄膜の測
    定装置。
  6. 【請求項6】前記回折X線の強度の理論値であるR
    (θ)は次式で表される 【数2】 (但し、{sin(θ+2α) /sin θ}×{|Eh /E1
    2 }の値は動力学的回折理論に基づいて求められ、|
    0r/E0 2 の値は薄膜表面および薄膜と結晶基板と
    の界面におけるX線の境界条件から求められ、|E1
    0r2 の値は入射X線の薄膜中での位相変化から求め
    られ、θは視斜角、αは基板結晶のX線回折に関わる格
    子面と試料表面とのなす角、Eh は薄膜中および真空中
    もしくは薄膜中および空気中での回折X線の電界の振幅
    値、E0 は真空中もしくは空気中での入射X線の電界の
    振幅値、E0rは薄膜中かつ薄膜表面での入射X線の電界
    の振幅値、E1 は薄膜中かつ薄膜と結晶基板との界面で
    の入射X線の電界の振幅値である。)請求項5記載の薄
    膜の測定装置。
  7. 【請求項7】前記試料を載せるゴニオメータと、 前記X線強度測定装置からの制御信号に基づいて駆動さ
    れ、入射X線の視斜角をブラッグピークとなる角の近傍
    で変化させるように前記ゴニオメータを回転させるパル
    スモータとを有する請求項5記載の薄膜の測定装置。
  8. 【請求項8】前記試料に照射されるX線は、ブラッグピ
    ークが全反射臨界角近傍で生じるような波長を有する請
    求項5記載の薄膜の測定装置。
  9. 【請求項9】前記X線発生装置は、 X線発生源と、 前記X線発生源が出力するX線から、ブラッグピークが
    全反射臨界角近傍で生じるようなX線を取り出すモノク
    ロメータとを有しており、 前記モノクロメータで取り出されたX線が前記試料に照
    射される請求項8記載の薄膜の測定装置。
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