JP4482693B2 - 抗体産生細胞の特異的選択方法 - Google Patents
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Description
[1] 所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法であって、特定の遺伝子の発現の停止により細胞死を誘導するが、B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより該遺伝子の発現の停止に起因する細胞死が抑制される遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを導入したB細胞を、所望の抗体に対する抗原の存在下で培養し、細胞表面に前記抗原に対するB細胞抗原レセプターを発現している細胞のみを生存させることを含む、所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[2] 所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法であって、特定の遺伝子の発現の停止により細胞死を誘導するが、B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより該遺伝子の発現の停止に起因する細胞死が抑制される遺伝子であって外部からの刺激により発現が停止される遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを導入したB細胞を、外部刺激があり前記遺伝子の発現が停止する条件下で、所望の抗体に対する抗原の存在下で培養し、細胞表面に前記抗原に対するB細胞抗原レセプターを発現している細胞のみを生存させることを含む、所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[3] 所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法であって、特定の遺伝子の発現の停止により細胞死を誘導するが、B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより該遺伝子の発現の停止に起因する細胞死が抑制される遺伝子であって外部からの刺激により発現が誘導される遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを導入したB細胞を、外部刺激がなく前記遺伝子の発現が停止する条件下で、所望の抗体に対する抗原の存在下で培養し、細胞表面に前記抗原に対するB細胞抗原レセプターを発現している細胞のみを生存させることを含む、所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[4] 外部からの刺激により発現が停止し、特定の遺伝子の発現の停止により細胞死を誘導するが、B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより該遺伝子の発現の停止に起因する細胞死が抑制される遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを導入したB細胞において、内在性の選択的スプライシング因子遺伝子が不活性化されており、薬剤抑制性のプロモーターの下流に外来性の選択的スプライシング因子遺伝子を連結した遺伝子コンストラクトが導入されており、前記薬剤による外部刺激により導入した選択的スプライシング因子遺伝子の発現が停止され細胞死が誘導されるが、細胞表面のB細胞抗原レセプターが抗原により架橋されると細胞死が抑制される、[2]の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[5] 薬剤抑制性のプロモーターがテトラサイクリン抑制性のプロモーター(tet-O)であり、薬剤がテトラサイクリンまたはその類縁体である[4]の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[6] さらに、B細胞において、tet-Oへの結合能を有するtetR(tet repressor)とherpes sinplex ウイルスVP16タンパク質の転写活性化ドメインを連結させた遺伝子コンストラクトが導入されている、[5]の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[7] B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより転写が活性化される遺伝子のプロモーターの下流に薬剤耐性遺伝子を連結した遺伝子コンストラクトが導入されており、前記薬剤存在下でB細胞を培養し、細胞表面に前記抗原に対するB細胞抗原レセプターを発現している細胞のみを生存させることを含む、所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[8] B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより転写が活性化される遺伝子が、NFκB遺伝子またはIκB遺伝子である、[7]の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[9] B細胞がニワトリB細胞株である[1]〜[8]のいずれかの所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[10] B細胞がニワトリB細胞株DT40である、[9]の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[11] 細胞外刺激により外因性Creリコンビナーゼ遺伝子の発現が誘導され、発現されたCreリコンビナーゼにより外因性AID(activation induced cytidine deaminase)遺伝子の向きを反転させることにより、AID発現を誘導することおよび停止させることが可能な動物B細胞であって、以下の特徴:
1)内因性のAID遺伝子が機能的に破壊されており、内因性AID遺伝子発現によるAIDタンパク質は産生されないこと、
2)互いに逆方向の2つのloxP配列で挟まれた外因性のAID遺伝子、および該2つのloxP配列で挟まれた領域の上流側に存在する該動物細胞で機能し得るプロモーターを有し、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して順方向に配置されている場合には、該プロモーターによるAID遺伝子の発現が可能であり、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して逆方向に配置されている場合には、AID遺伝子の発現は停止すること、および
3)Creリコンビナーゼ遺伝子が、細胞外刺激によりCreリコンビナーゼ活性化が可能な形で導入されており、Creリコンビナーゼ活性化により、上記外因性AID遺伝子を含む2つのloxP配列に挟まれた領域の方向が反転すること、
を有する細胞において、内在性ASF遺伝子座の一方をテトラサイクリン応答性のプロモーター(tet-O)に連結したヒトASF(hASF)遺伝子コンストラクトで置換し、他方のASF遺伝子座はテトラサイクリン応答配列に結合して転写を促進する転写因子(tetR-VP16)の発現コンストラクトで置換したB細胞を用いる、[1]〜[6]、[9]および[10]のいずれかの所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
[12] 内在性ASF遺伝子座の一方をテトラサイクリン応答性のプロモーター(tet-O)に連結したヒトASF(hASF)遺伝子コンストラクトで置換し、他方のASF遺伝子座はテトラサイクリン応答配列に結合して転写を促進する転写因子(tetR-VP16)の発現コンストラクトで置換したB細胞。
[13] 細胞外刺激により外因性Creリコンビナーゼ遺伝子の発現が誘導され、発現されたCreリコンビナーゼにより外因性AID(activation induced cytidine deaminase)遺伝子の向きを反転させることにより、AID発現を誘導することおよび停止させることが可能な動物B細胞であって、以下の特徴:
1)内因性のAID遺伝子が機能的に破壊されており、内因性AID遺伝子発現によるAIDタンパク質は産生されないこと、
2)互いに逆方向の2つのloxP配列で挟まれた外因性のAID遺伝子、および該2つのloxP配列で挟まれた領域の上流側に存在する該動物細胞で機能し得るプロモーターを有し、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して順方向に配置されている場合には、該プロモーターによるAID遺伝子の発現が可能であり、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して逆方向に配置されている場合には、AID遺伝子の発現は停止すること、および
3)Creリコンビナーゼ遺伝子が、細胞外刺激によりCreリコンビナーゼ活性化が可能な形で導入されており、Creリコンビナーゼ活性化により、上記外因性AID遺伝子を含む2つのloxP配列に挟まれた領域の方向が反転すること、
を有する細胞において、内在性ASF遺伝子座の一方をテトラサイクリン応答性のプロモーター(tet-O)に連結したヒトASF(hASF)遺伝子コンストラクトで置換し、他方のASF遺伝子座はテトラサイクリン応答配列に結合して転写を促進する転写因子(tetR-VP16)の発現コンストラクトで置換したB細胞。
[14] B細胞がニワトリB細胞株DT40である、[12]または[13]のB細胞。
免疫系が抗原に対して親和性の高い抗体(高親和性抗体)を産生する過程は次のように進行する。図1に示すように、抗原で刺激されたB細胞の抗体可変部遺伝子に高頻度に変異が導入され、多様な抗体遺伝子を発現する細胞集団が形成される。この集団から、高親和性抗体を発現するB細胞のみが生存し、その他は死滅するという厳密な選択が行われるために、作られる抗体の親和性は増大する。
野生型DT40株または発明者らが独自に樹立したDT40-SW株(変異機能を司る遺伝子AIDの発現を可逆的にスイッチすることにより、その抗体変異機能をON/OFF制御できる変異株(詳細はKanayama, N., Todo, K., Reth, M., Ohmori, H. Biochem. Biophys. Res. Commn. 327:70-75 (2005)に記載)の内在性ASF遺伝子座の一方をテトラサイクリン応答性のプロモーター(tet-O)に連結したヒトASF(hASF)遺伝子コンストラクトで置換し、他方のASF遺伝子座はテトラサイクリン応答配列に結合して転写を促進する転写因子(tetR-VP16)の発現コンストラクトで置換することにより、DT40-ASF、DT40-SW-ASF株を作製した(図2B)。tetR-VP16は、テトラサイクリン非存在下において、tet-Oへの結合能を有するtetR(tet repressor)とherpes sinplex ウイルスVP16タンパク質の転写活性化ドメインを連結させた遺伝子コンストラクトであり、Wang, L.Y., Manley, J. Genes Dev. 10:2588-2599 (1996)の記載に従い作製した。これらの細胞株では、テトラサイクリン非存在下では、tetR-VP16がtet-Oプロモーターに結合しhASFが発現するため、細胞は正常に増殖する。一方、テトラサイクリンやその誘導体ドキシサイクリン(Dox)を添加すると、tetR-VP16にDoxが結合しtet-Oから遊離するため、hASFの発現が停止するので、細胞は生存できなくなる。このようにして得られたhASF発現制御可能なDT40-ASF株、DT40-SW-ASF株は以下の実施例2および3に示すような、目的抗体産生細胞の選択に使用し得る。特にDT40-SW-ASF株を用いると、抗原とDox存在下で、抗原特異的なクローンを選択した後、得られた細胞のAID発現をOFFの状態にして変異機能を停止させ、目的クローンを遺伝的に安定な形で増殖させることが可能となるので極めて有用である。
1)内因性のAID遺伝子が機能的に破壊されており、内因性AID遺伝子発現によるAIDタンパク質は産生されないこと、
2)互いに逆方向の2つのloxP配列で挟まれた外因性のAID遺伝子、および該2つのloxP配列で挟まれた領域の上流側に存在する該動物細胞で機能し得るプロモーターを有し、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して順方向に配置されている場合には、該プロモーターによるAID遺伝子の発現が可能であり、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して逆方向に配置されている場合には、AID遺伝子の発現は停止すること、および
3)Creリコンビナーゼ遺伝子が、細胞外刺激によりCreリコンビナーゼ活性化が可能な形で導入されており、Creリコンビナーゼ活性化により、上記外因性AID遺伝子を含む2つのloxP配列に挟まれた領域の方向が反転すること、を有する細胞である。また、上記Creリコンビナーゼ遺伝子が、Creリコンビナーゼがエストロゲンレセプターとの融合タンパク質を発現するような形で存在し、上記細胞外刺激がエストロゲンまたはその誘導体による刺激であり、細胞を細胞外からエストロゲンまたはその誘導体で刺激することにより、細胞内でCreリコンビナーゼの活性化が誘導される細胞である。さらに、上記2つのloxP配列に挟まれた領域内に、AID遺伝子と同じ向きのマーカー遺伝子をさらに含み、ここで、AID遺伝子が該プロモーターに対して順方向に配置されている場合には該マーカー遺伝子も順方向に配置されているため該マーカー遺伝子が発現して、AID遺伝子が該プロモーターに対して順方向に配置されてAID遺伝子が発現可能である細胞を該マーカーにより選択可能である細胞である。さらに、上記2つのloxP配列に挟まれた領域内に、AID遺伝子とは逆向きのマーカー遺伝子をさらに含む細胞であり、ここで、AID遺伝子が該プロモーターに対して逆方向に配置されている場合には該マーカー遺伝子は順方向に配置されているため該マーカー遺伝子が発現して、AID遺伝子が該プロモーターに対して逆方向に配置されてAID遺伝子を発現できない細胞を該マーカーにより選択可能である細胞である。さらに、上記2つのloxP配列に挟まれた領域内に、AID遺伝子とは逆向きのマーカー遺伝子がピューロマイシン耐性遺伝子であり、AID遺伝子と同じ向きのマーカー遺伝子がGFP遺伝子である細胞である。図3にDT40-SW株作製のためのコンストラクトを示す。
DT40-ASF細胞はWangらの方法(Wang, L.Y., Manley, J. Genes Dev. 10:2588-2599 (1996))により樹立したもの、または実施例1の方法により作製されたDT40-ASF株を用いた。
ウシ血清アルブミン(BSA)に4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニルアセチル基(NP)またはp-ニトロフェニルアセチル基(pNP)をハプテンとして、BSA1分子あたり約20個共有結合させたNP-BSA、pNP-BSAを選択抗原として用い、NPまたはpNPに特異的に結合するBCRを発現するDT40-ASF細胞の正の選択が可能かどうか検討した。96ウェルの培養プレート1枚の各ウェルに1×103個のDT40-ASF細胞を含む0.2mlの培地を分注し、10〜1000ng/mlとなるようにNP-BSAまたはpNP-BSAを添加した。さらに各ウェルに10ng/mlとなるようにドキシサイクリンを添加し、10日間培養した。対照として、選択抗原を含まない同条件のプレートを用いた。図5に示すように、NP-BSA、pNP-BSA存在下では対照に比べて明らかに多数のコロニーの増殖が確認された。単離したコロニーを増殖させ、それぞれの抗原に対する結合性をフローサイトメトリーにより評価すると、選択前の細胞と比較して、明らかに、蛍光標識抗原による染色後に測定される平均蛍光強度(MFI)が増加したコロニーが見られた。従って、DT40-ASFに導入されたASF発現制御機構は、抗原特異的なクローンの正の選択に利用することができる。総数〜105個の細胞より、数クローンが選択されたことになり抗原特異的クローンの出現頻度から考えて、妥当な選択効率と考えられる。
Claims (5)
- 特定の遺伝子の発現の停止により細胞死を誘導するが、B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより該遺伝子の発現の停止に起因する細胞死が抑制される遺伝子であって外部からの刺激により発現が停止される遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを導入したB細胞を、外部刺激があり前記遺伝子の発現が停止する条件下で、所望の抗体に対する抗原の存在下で培養し、細胞表面に前記抗原に対するB細胞抗原レセプターを発現している細胞のみを生存させることを含む、所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法であって、外部からの刺激により特定の遺伝子の発現が停止し、発現の停止により細胞死を誘導するが、B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより該遺伝子の発現の停止に起因する細胞死が抑制される遺伝子を含む遺伝子コンストラクトおよびtet-Oへの結合能を有するtetR(tet repressor)とherpes sinplex ウイルスVP16タンパク質の転写活性化ドメインを連結させた遺伝子コンストラクトを導入したB細胞において、内在性の選択的スプライシング因子遺伝子が不活性化されており、テトラサイクリンまたはその類縁体抑制性のプロモーター(tet-O)の下流に外来性の選択的スプライシング因子遺伝子を連結した遺伝子コンストラクトが導入されており、前記薬剤による外部刺激により導入した選択的スプライシング因子遺伝子の発現が停止され細胞死が誘導されるが、細胞表面のB細胞抗原レセプターが抗原により架橋されると細胞死が抑制される、所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
- B細胞表面のB細胞抗原レセプターの抗原による架橋により発生するシグナルにより転写が活性化される遺伝子であるNFκB遺伝子またはIκB遺伝子のプロモーターの下流に薬剤耐性遺伝子を連結した遺伝子コンストラクトが導入されており、前記薬剤存在下でB細胞を培養し、細胞表面に前記抗原に対するB細胞抗原レセプターを発現している細胞のみを生存させることを含む、所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
- B細胞がニワトリB細胞株である請求項1または2に記載の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
- B細胞がニワトリB細胞株DT40である、請求項3記載の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
- 細胞外刺激により外因性Creリコンビナーゼ遺伝子の発現が誘導され、発現されたCreリコンビナーゼにより外因性AID(activation induced cytidine deaminase)遺伝子の向きを反転させることにより、AID発現を誘導することおよび停止させることが可能な動物B細胞であって、以下の特徴:
1)内因性のAID遺伝子が機能的に破壊されており、内因性AID遺伝子発現によるAIDタンパク質は産生されないこと、
2)互いに逆方向の2つのloxP配列で挟まれた外因性のAID遺伝子、および該2つのloxP配列で挟まれた領域の上流側に存在する該動物細胞で機能し得るプロモーターを有し、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して順方向に配置されている場合には、該プロモーターによるAID遺伝子の発現が可能であり、上記AID遺伝子が該プロモーターに対して逆方向に配置されている場合には、AID遺伝子の発現は停止すること、および
3)Creリコンビナーゼ遺伝子が、細胞外刺激によりCreリコンビナーゼ活性化が可能な形で導入されており、Creリコンビナーゼ活性化により、上記外因性AID遺伝子を含む2つのloxP配列に挟まれた領域の方向が反転すること、
を有する細胞において、内在性ASF遺伝子座の一方をテトラサイクリン応答性のプロモーター(tet-O)に連結したヒトASF(hASF)遺伝子コンストラクトで置換し、他方のASF遺伝子座はテトラサイクリン応答配列に結合して転写を促進する転写因子(tetR-VP16)の発現コンストラクトで置換したB細胞を用いる、請求項1、3および4のいずれか1項に記載の所望の抗体を産生するB細胞を選択する方法。
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