JP4481597B2 - ブレード間隔測定方法 - Google Patents

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JP4481597B2 JP2003194524A JP2003194524A JP4481597B2 JP 4481597 B2 JP4481597 B2 JP 4481597B2 JP 2003194524 A JP2003194524 A JP 2003194524A JP 2003194524 A JP2003194524 A JP 2003194524A JP 4481597 B2 JP4481597 B2 JP 4481597B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,切削装置におけるブレード間隔測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイシング装置等の切削装置は,一般的に,高速回転させたリング状の切削ブレードを,半導体ウェハなどの被加工物に切り込ませながら平行移動させることによって,被加工物を精密に切削加工する装置である。かかる切削装置においては,切削加工を実行する前に,所望の切り込み深さを得るべく,切削ブレードを被加工物に対して好適な高さにセットアップ(位置決め)する必要がある。
【0003】
かかるセットアップを行う手法としては,いわゆる非接触セットアップが知られている。この非接触セットアップでは,発光部と受光部とを備えるセンサ手段によって,当該発光部と受光部との間に挿入された切削ブレードの刃先位置を,非接触で検出して,切削ブレードを好適な高さにセットアップすることができる(特許文献1参照)。
【0004】
ところで,近年では,切削加工速度の向上の要請から,1つの回転軸に複数の切削ブレードが並設されたマルチブレードを備えた切削装置が提案されている(特許文献2参照)。かかるマルチブレードを用いることで,被加工物の複数の切削ラインを同時に切削することができるので,生産性を向上させることができる。
【0005】
かかるマルチブレードを非接触セットアップする手法としては,図16(a)に示すように,発光部114と受光部115とが回転軸122の軸方向に対向配置されたセンサ手段を用いて,切削ブレード46の刃先位置を検出する手法が考えられる。しかし,マルチブレード120を構成する個々の切削ブレード124は摩耗の度合いに応じて外径に差が生じているところ,図16(a)の手法では,これら複数の切削ブレード124のうち最大径の切削ブレード124’の刃先位置だけしか検出できなかった。このため,常に最大径の切削ブレード124’を基準としてマルチブレード120全体をセットアップせざるを得ないので,著しく摩耗して外径が過度に小さくなった切削ブレード124が存在する場合には,切り込み深さが不十分となり,切削加工に大きな支障を来すという問題があった。
【0006】
かかる問題を解決すべく,本願出願人らは,図16(b)に示すように,発光部214と受光部215とを結ぶ光軸216が1つの切削ブレード224のみによって遮られるように,当該光軸216と切削ブレード224側面とのなす角θを鋭角として,発光部214と受光部215を配置する構成のセンサ手段に想到した。かかる構成のセンサ手段を設けることにより,各切削ブレード224の刃先位置を個別に検出できるので,全ての切削ブレード224の刃先位置を考慮して,マルチブレード220のセットアップ位置を好適に決定することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−47943号公報
【特許文献2】
特開2002−246338号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,上記図16(b)の構成のセンサ手段を具備した切削装置では,全ての切削ブレードの刃先位置を考慮したマルチブレードの非接触セットアップを行うためには,当該マルチブレードを構成する複数の切削ブレード一枚一枚について,センサ手段の発光部と受光部との間に挿入してセットアップ位置を測定した後,抜き出すといった作業を繰り返していた。このため,マルチブレードの昇降動作およびアライメント動作を,切削ブレードの枚数分だけ繰り返さなければならない上に,個々の刃先位置の検出作業に時間がかかっていた。よって,マルチブレードを構成する切削ブレードの枚数が多くなればなるほど,セットアップに多大な時間を要し,生産性を著しく低下させてしまうという問題があった。
【0008】
また,上記構成の切削装置において,マルチブレードのセットアップを正確に行うためには,当該マルチブレードを構成する切削ブレード相互の間隔を正確に測定する必要がある。従って,かかるブレード間隔の測定を容易かつ正確に実行可能なブレード間隔測定方法が希求されていた。
【0009】
さらに,上記構成の切削装置において,マルチブレードのセットアップを好適に行うためには,当該マルチブレードを構成する個々の切削ブレードの状態(摩耗の度合い等)を判別する必要がある。従って,かかる切削ブレードの状態を容易かつ的確に検知可能な方法も希求されていた。
【0010】
本発明は,上記問題点に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,マルチブレードを正確にセットアップするために,ブレード間隔を容易かつ正確に測定することが可能な,新規かつ改良されたブレード間隔測定方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため,本発明の第1の観点によれば,被加工物を保持する保持手段と;被加工物の加工面と略平行に延びる回転軸と,回転軸に並設された複数の切削ブレードとを備えたマルチブレードと;発光部と受光部とを備え,発光部と受光部とを結ぶ光軸が1の切削ブレードのみによって遮断されうるように,光軸が切削ブレードの側面と鋭角をなすように構成され,切削ブレードを発光部と受光部との間に位置させたときの受光電圧に基づいて,切削ブレードの刃先位置を測定するセンサ手段と;を備えた切削装置において,相隣接する切削ブレードの間隔を測定する,ブレード間隔測定方法が提供される。このブレード間隔測定方法は,少なくともいずれかの切削ブレードの刃先がセンサ手段によって検出可能となる位置まで,マルチブレードを回転軸の軸方向に対して略垂直方向に移動させる段階と;マルチブレードを回転軸の軸方向に平行移動させながら,センサ手段によって,複数の切削ブレードの刃先が発光部と受光部との間を順次通過するに伴って略周期的に増減する受光電圧を連続して検出する段階と;略周期的に増減する受光電圧の各周期内の最小値を検出する間隔に基づいて,相隣接する切削ブレードの間隔を決定する段階と;を含むことを特徴とする。なお,上記「刃先位置」とは,回転軸に装着された切削ブレードの外周のうち最も被加工物に近接する点の位置をいう。
【0014】
かかる構成により,マルチブレードを構成する切削ブレードを交換した後などに,切削ブレード相互の間隔を容易かつ正確に実測できる。このため,かかる実測のブレード間隔を上記マルチブレードのセットアップ方法に適用すれば,正確なセットアップが可能となる。また,かかる構成により,まず,基準ブレードを非接触セットアップすることにより,1つの切削ブレードを基準としてマルチブレードの高さを仮セットアップした後,かかるマルチブレードの高さを維持したまま,1または2以上の切削ブレードの刃先位置を検出することにより,これら切削ブレードのセットアップ位置を,実際に非接触セットアップすることなく,求めることができる。これにより,複数の切削ブレードを有するマルチブレードをセットアップする場合であっても,非接触セットアップの実行回数が1回で済むので,当該マルチブレードを短時間でセットアップすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
(第1の実施の形態)
以下に,本発明の第1の実施形態について説明する。以下では,まず,本実施形態にかかる切削装置の構成について説明した上で,かかる切削装置におけるマルチブレードのセットアップ方法,ブレード間隔測定方法およびブレード状態検知方法について詳細に説明するものとする。
【0026】
まず,図1に基づいて,本実施形態にかかる切削装置として構成されたダイシング装置1の全体構成について説明する。なお,図1は,本実施形態にかかるダイシング装置1を示す全体斜視図である。
【0027】
図1に示すように,ダイシング装置1は,被加工物を切削加工(ダイシング)して個々のチップに分割する装置である。このダイシング装置1は,例えば,被加工物を切削加工するマルチブレード20と,被加工物を保持する保持手段であるチャックテーブル30と,マルチブレード20の刃先位置を測定するセンサ手段10と,被加工物を搬送する搬出入手段46および搬送手段48と,被加工物を位置調整するアライメント手段34などを備える。
【0028】
以下の説明では,このダイシング装置1による被加工物として,例えば,CSP(Chip Size Package)基板1の例を挙げて説明する。このCSP基板12は,LSI(Large Scale Integration)等の回路が形成された半導体チップを,共通の基板上にマトリクス状に配置し,全体を樹脂で封止して板状に形成した基板である。かかるCSP基板12は,例えば,粘着テープ14を介してフレーム16に支持された状態で取り扱われる。
【0029】
上記マルチブレード20は,例えばリング状の切削ブレードが複数並設されており(詳細は後述する。),かかる切削ブレードを高速回転させながらCSP基板12に切り込ませることで,CSP基板12を複数の切削ラインで同時に切削加工することができる。また,チャックテーブル30は,例えば,上記フレーム16に支持された状態のCSP基板12を,例えば真空吸着して保持することができる。
【0030】
かかる構成のダイシング装置1によってCSP基板12をダイシング加工する場合には,まず,センサ手段10を利用してマルチブレード20の刃先位置を検出し,加工しようとするCSP基板12の厚さや切り込み深さに応じて,マルチブレード20の高さ(Z方向の位置)を,セットアップする。かかるマルチブレード20のセットアップ手法は,本実施形態における特徴的な部分であり,その詳細については後述する。
【0031】
次いで,搬出入手段46は,上記フレーム16に支持された状態のCSP基板12を複数収容しているカセット42から,1つのCSP基板12を取り出して,仮置き領域44に載置する。その後,搬送手段48は,仮置き領域44に載置されたCSP基板12を,吸着部48aを用いてピックアップした上で旋回動し,当該CSP基板12をチャックテーブル30上に載置する。チャックテーブル30は,載置されたCSP基板12をフレーム16ごと吸着保持する。
【0032】
さらに,チャックテーブル30は,CSP基板12を保持した状態で+X軸方向に移動して,アライメント手段34が具備する撮像手段32の下方に位置づける。すると,アライメント手段34は,撮像手段32によってCSP基板12を撮像し,この撮像画像と既設定のキーパターンとのパターンマッチングにより切削領域を検出して,CSP基板12とマルチブレード20とのY軸方向の位置合わせ(アライメント)を行う。
【0033】
その後,高速回転させたマルチブレード20の刃先をCSP基板12に切り込ませながら,チャックテーブル30をマルチブレード20に対してX軸方向に相対移動させることにより,CSP基板12を切削加工して,CSP間の切削ラインに沿って極薄のカーフを同時に複数形成する。
【0034】
さらに,切削ライン数がブレード数より多い場合には,マルチブレード20をY軸方向に所定距離ずつ送り出しながら,チャックテーブル30をX軸方向に往復移動させることにより,同方向のすべての切削領域が切削加工される。
【0035】
その後,チャックテーブル30を90度回転させた上で,上記と同様にして切削加工を行うことにより,CSP基板12上のすべての切削領域が縦横に切削され,CSP基板12が個々のCSPペレットに分割される。
【0036】
次に,図2に基づいて,本実施形態にかかるマルチブレード20の構成について説明する。なお,図2は,本実施形態にかかるマルチブレード20を示す側面図である。
【0037】
図2に示すように,マルチブレード20は,回転軸22と,複数の切削ブレード24−1,2,…,7(以下では,「切削ブレード24」と総称する場合もある。)と,フランジ26と,相隣接する切削ブレード22間に挿入されるスペーサ28−1,2,…,6(以下では,「スペーサ28」と総称する場合もある。)と,から構成される。
【0038】
回転軸22は,例えば,電動モータ(図示せず。)などの回転駆動力を切削ブレード24に伝達するためのスピンドルであり,装着された切削ブレード24を例えば30000rpmで高速回転させることができる。この回転軸24は,その回転軸方向(Y軸方向)が被加工物の加工面(CSP基板12の表面)と略平行になるように設置される。また,この回転軸22は,マルチブレード移動機構(図示せず。)に連結されており,かかる回転軸22を移動させることにより,マルチブレード20全体をX,YおよびZ軸方向に移動させることができる。
【0039】
切削ブレード24は,例えば,略リング形状を有する極薄の切削砥石である。本実施形態にかかるマルチブレード20では,例えば7つの切削ブレード24が略平行に並ぶようにして同一の回転軸28に装着されている。かかる切削ブレード24は,その側面が回転軸28の軸方向(Y軸方向)に対して略垂直(Z軸方向)となるように設置されているので,切削加工時には切削ブレード24が被加工物に対して略垂直に切り込むことができる。
【0040】
フランジ26は,相互に螺合可能な第1フランジ26aと第2フランジ26bとから構成されている。かかるフランジ26は,第1フランジ26aと第2フランジ26bとの間に,複数の切削ブレード24およびスペーサ28を挟持して,回転軸22に軸設することができる。
【0041】
スペーサ28は,例えば略円筒形状の部材であり,相隣接する切削ブレード24間にそれぞれ挿入される。本実施形態にかかるマルチブレード20では,上記のように,例えば7つの切削ブレード24が装着されているので,これらの間に例えば6つのスペーサ28が配設されている。このスペーサ28の厚さ(Y軸方向の長さ)を調整することにより,相隣接する切削ブレード24の間隔を調整することができる。例えば,スペーサ28−1の厚さを大きくすれば,切削ブレード24−1と切削ブレード24−2とを隔離して配設することができる。このように,スペーサ28の厚さを変化させることによって,CSP基板12の切削ラインの間隔に合わせて,切削ブレード24相互の間隔を好適に調整できる。
【0042】
また,マルチブレード20は,上記構成要素以外にも,例えば,回転軸22を覆いつつんで支持するスピンドルハウジング,加工点付近に切削水を供給して冷却する切削水供給ノズル,切削ブレード24の外周を覆って切削水や切り屑などの飛散を防止するホイルカバー(いずれも図示せず。)などを具備するようにしてもよい。
【0043】
以上のような構成のマルチブレード20は,回転軸22の回転駆動力により例えば7つの切削ブレード24を高速回転させ,かかる切削ブレード24をCSP基板12に切り込ませることができる。これにより,例えば,CSP基板12の加工面を同時に7つの切削ラインで切削加工して,極薄のカーフを形成することができる。
【0044】
なお,マルチブレード20を構成する複数の切削ブレード24は,均等な切り込み深さでの切削加工を行うためには,すべての外径が常に同一であることが好ましい。しかし,切削ブレード24を整形した時の誤差や,切削加工の進行に伴う摩耗等により,如何にしても,各々の切削ブレード24間で外径差が生じてしまう。後述するマルチブレードのセットアップ方法は,かかる切削ブレード24の外径差(刃先位置の差)に対応して,好適なセットアップ位置を定めようとするものである。
【0045】
次に,図3,図4および図5に基づいて,本実施形態にかかるセンサ手段10の構成について説明する。なお,図3は,本実施形態にかかるセンサ手段10を示す斜視図である。また,図4は,本実施形態にかかるマルチブレード20およびセンサ手段10の位置関係を示す正面図である。また,図5は,本実施形態にかかるマルチブレード20およびセンサ手段10の位置関係を示す平面図である。
【0046】
センサ手段10は,マルチブレード20を構成する各切削ブレード24の刃先位置を測定するための検知装置であり,切削ブレード24の刃先に触れずともその位置を検出可能な非接触セットアップ手段として構成されている。
【0047】
このセンサ手段10は,図3に示すように,基台11と,留め具12と,支持部13と,発光部14と,受光部15と,を備える。
【0048】
基台11は,センサ手段10が設置されるダイシング装置1の任意の位置に固設される。また,支持部13は,例えば,全体として略コの字型に形成された支持部材である。この支持部13は,その中央部において留め具12によって基台11に取り付けられており,かかる留め具12の部分を中心として,基台11に対して回動自在である。
【0049】
また,支持部13の両端において立設した部分の内側の面には,発光部14と受光部15とが対向して配設されている。発光部14は,例えば,発光素子などから構成されており,指向性の強い光を例えば一方向に向けて発光(投光)することができる。また,受光部15は,例えば,受光素子などから構成されており,受光した光を光電変換して,受光量に応じた受光電圧を出力することができる。
【0050】
この発光部14と受光部15とは,同一の光軸を有しており,発光部14は検出用の光を受光部15に向けて発光し,受光部15はその光を受光することができる。かかる発光部14と受光部15との間の距離は,切削ブレード24の径に応じて異なるが,例えば,60mmなどである。
【0051】
かかる構成のセンサ手段10は,ダイシング装置1において,マルチブレード20が移動可能な位置に設置される。具体的には,かかるセンサ手段10は,図1に示すように,例えば,チャックテーブル30の近傍に配設される。
【0052】
かかる位置にセンサ手段10を配設することにより,チャックテーブル30をX軸方向に移動させるとともに,マルチブレード20をY軸方向に移動させることによって,センサ手段10をマルチブレード20の下方に配置することができる。さらに,かかる状態から,マルチブレード20を所定の高さまで−Z軸方向に下降させることによって,図4に示すように,いずれか1枚の切削ブレード24を発光部14と受光部15との間に挿入して,当該切削ブレード24の切り刃部24aを発光部14と受光部15との間に位置させることができる。
【0053】
このようにして,1枚の切削ブレード24を発光部14と受光部15との間に挿入したときには,図5に示すように,発光部14と受光部15とを結ぶ光軸16は,当該切削ブレード24(図示の例では切削ブレード24−6)によってのみ遮断され,その隣の切削ブレード24(図示の例では切削ブレード24−5,7)とは交差していない。これは,上記センサ手段10の支持部13を回動させて,切削ブレード24に対する発光部14と受光部15の位置関係を調整することによって,当該光軸16と切削ブレード24の側面(X軸方向)とのなす角θが,好適な角度(例えば5°)となるように調整されているからである。
【0054】
なお,この角θは固定値ではなく,ブレード間隔に応じて適宜調整される。より詳細には,CSP基板1等の被加工物に形成された切削ラインの間隔は,被加工物の種類等によって異なる。このため,上記マルチブレード20においては,この被加工物の切削ライン間隔に応じて,スペーサ28の厚さを調整して,相隣接する切削ブレード24の間隔が調整される。一方,センサ手段10においては,発光部14及び受光部15が設けられた支持部13が,基台11に対して回動自在であるので,光軸16の向きを自在に調整することができる。このため,切削ライン間隔に応じてマルチブレード20のブレード間隔を変化させた場合であっても,支持部13を回動させて上記角θの大きさを調整することができる。従って,センサ手段10は,ブレード間隔が異なる種々のマルチブレード20に対応することができる。
【0055】
以上のように,センサ手段10は,その光軸16を,複数の切削ブレード24のうち1つの切削ブレード24のみと交差させることができるように構成されている。このため,かかるセンサ手段10を用いることで,マルチブレード20を構成する複数の切削ブレード24の刃先位置を個別に測定することができる。
【0056】
この切削ブレード24の刃先位置の測定は,受光部15の受光量(受光電圧)に基づいて実行できる。即ち,切削ブレード24の刃先を発光部14と受光部15との間に深く挿入したときには,かかる切削ブレード24の刃先によって,発光部14が発した光の多くが遮断されるため,受光部15の受光量が小さくなる。一方,切削ブレード24の刃先を発光部14と受光部15との間に浅く挿入したときには,発光部14が発した光の多くが遮断されることなく透過できるため,受光部15の受光量が大きくなる。従って,センサ手段10を用いて当該受光量を検出することにより,切削ブレード24の刃先が発光部14と受光部15との間にどの程度挿入されているかを判断し,当該刃先位置を特定することができる。
【0057】
次に,図6〜図8に基づいて,本実施形態にかかる特徴であるマルチブレードのセットアップ方法について説明する。なお,図6は,本実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法を示すフローチャートである。また,図7は,本実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法における,仮セットアップ段階を説明するための工程説明図である。また,図8は,本実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法における,マルチブレード20を平行移動させる段階を説明するための工程説明図である。
【0058】
本実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法は,概略的には,まず,上記マルチブレード20を構成する複数の切削ブレード24のうち1つの切削ブレード24を基準ブレードとして選択し,次いで,この基準ブレードを基準としてマルチブレード20全体を通常の非接触セットアップにより仮セットアップして,基準ブレードに関するセットアップ位置を得て,さらに,この仮セットアップした高さ(Z軸方向)を維持した状態でマルチブレード20を平行移動(Y軸方向)させて,その他の切削ブレード24(測定ブレード)の刃先位置を順次測定して,各測定ブレードのセットアップ位置をそれぞれ算出し,その後,上記で得られた全てのセットアップ位置に基づいて,マルチブレード20を最終的に本セットアップするものである。
【0059】
より詳細には,図6に示すように,まず,ステップS100では,マルチブレード20を構成する複数の切削ブレード24−1,2,…,7の中から,1つの基準ブレードが選択される(ステップS100)。この基準ブレードは,後述するステップS104での仮セットアップの基準となる切削ブレード24である。かかる基準ブレードの選択は,例えば,ダイシング装置1の制御部が予め設定された条件に基づいて自動的に行ってもよいし,あるいは,オペレータが任意に選択して設定してもよい。以下では,本ステップにおいて,例えば,回転軸22の+Y軸方向先端に配設された切削ブレード24−1(図2参照)が,基準ブレードとして選択された例について説明する。このように切削ブレード24−1を基準ブレードとすることにより,この切削ブレード24−1以外の切削ブレード24−2,3,…,7が,後述する測定段階(ステップS108)での測定対象となる測定ブレードとなる。なお,以下では,説明の便宜上,切削ブレード24−1を「基準ブレード24−1」と表記し,切削ブレード24−2,3,…,7を,「測定ブレード24−2,3,…,7」(或いは単に「測定ブレード24」)と表記する。
【0060】
次いで,ステップS102では,マルチブレード20をZ軸方向に下降させる(ステップS102)。詳細には,まず,上述したようにチャックテーブル30およびマルチブレード20をXおよびY軸方向に移動させることにより,マルチブレード20の基準ブレード24−1をセンサ手段10の上方に位置づける。次いで,図7に示すように,マルチブレード20をZ軸方向に降下させて,基準ブレード24−1の刃先をセンサ手段10の発光部14と受光部15との間に徐々に挿入する。
【0061】
さらに,ステップS104では,基準ブレード24−1を基準としてマルチブレードが仮セットアップされる(ステップS104;仮セットアップ段階)。詳細には,図7に示すように,マルチブレード20が降下され,基準ブレード24−1の刃先が発光部14と受光部15の間に徐々に挿入されると,これに伴ってセンサ手段10の受光部15の受光電圧も徐々に減少していく。一方,センサ手段10においては,好適なセットアップ位置に対応した受光電圧である基準電圧(セットアップ電圧)が,予め設定されている。従って,センサ手段10によって,受光電圧が当該セットアップ電圧に達した瞬間を捉えることにより,基準ブレード24−1が好適なセットアップ位置に達したことを検知することができる。
【0062】
そこで,本ステップでは,上記のようにマルチブレード20の降下に伴って受光電圧が減少し,セットアップ電圧にまで達した瞬間に,マルチブレード20の降下を停止して,マルチブレード20の高さを固定する。この結果,マルチブレード20が,基準ブレード24−1を基準としてある程度好適な高さに仮セットアップされる。
【0063】
なお,かかる仮セットアップを行うときには,マルチブレード20は例えば3000〜20000rpmで回転させられている。これにより,基準ブレード24−1の刃先が偏って摩耗している場合(即ち,ブレード外周が真円ではない場合)などでも,基準ブレード24−1の平均的な刃先位置を検出することができる。
【0064】
また,このようにして仮セットアップされたマルチブレード20の位置(即ち,仮セットアップ位置)は,基準ブレード24−1についての好適なセットアップ位置を表すものである。このため,かかる仮セットアップ位置の情報は,後述するブレード状態検知段階(ステップS112)や本セットアップ段階(ステップS116)などで利用するために,例えば,ダイシング装置1の記憶部(図示せず。)などに記憶される。
【0065】
その後,ステップS106では,マルチブレード20が,ブレード間隔分だけY軸方向に平行移動される(ステップS106)。具体的には,仮セットアップされた高さ(Z軸方向)を維持したままで,マルチブレード20を,相隣接する切削ブレード24の間隔分(取り付けピッチ分)だけY軸方向に平行移動させる。例えば,図8に示すように,基準ブレード24−1と測定ブレード24−2の間隔分だけ,マルチブレード20をY軸方向に平行移動させる。この結果,測定ブレード24−2の刃先が,発光部14と受光部15との間に位置づけられ,光軸16を遮ることとなる。
【0066】
このようなマルチブレード20の平行移動は,例えば,マルチブレード20の設計上予め決められているブレード間隔に基づいて移動させても良いが,実際に切削ブレード24を回転軸22に取り付けたときに誤差が生じることを考慮すると,セットアップを行う前に,各切削ブレード24間の実際の間隔を測定しておき,かかる実測のブレード間隔に基づいて行った方が,より正確なセットアップが可能となる。このブレード間隔測定方法の詳細に関しては後述する。
【0067】
次いで,ステップS108では,例えば測定ブレード24−2の刃先位置が測定される(ステップS108)。かかる測定ブレード24−2の刃先位置の測定動作を,図9に基づいて詳細に説明する。
【0068】
ここで,図9に基づいて,本実施形態にかかる測定ブレード24−2の刃先位置の測定動作フローについて詳細に説明する。なお,図9は,本実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法における,測定ブレード24−2の刃先位置の測定動作フローを示すフローチャートである。
【0069】
図9に示すように,まず,ステップS1080では,測定ブレード24−2が単位回転数だけ回転する間の,受光電圧が検出される。(ステップS1080)。より詳細には,まず,測定ブレード24−2の刃先が発光部14と受光部15との間に位置された状態で,測定ブレード24−2を回転(例えば3000〜20000rpm)させながら,センサ手段10によって受光電圧を検出する。このとき,測定ブレード24−2が例えば1回転する間に,受光電圧を所定のサンプル点数(例えば20点)分だけ検出するようにする。即ち,測定ブレード24−2の1回転に要する時間を例えば20分割した時間間隔をサンプル間隔とし,このサンプル間隔毎に受光電圧を例えば20点検出するようにする。
【0070】
このような検出結果例を,図10(a)に示す。図10(a)に示すように,測定ブレード24−2が1回転する間に,20点の受光電圧が検出されており,かかる20点の受光電圧は,測定ブレード24−2の刃先位置の変化に応じて増減している。このように測定ブレード24−2の刃先位置の変化が生じる原因は,上述したように,ブレードの設計誤差や,偏った摩耗などが原因である。
【0071】
なお,本ステップにおいて,受光電圧検出の単位となる測定ブレード24−2の単位回転数は,上記のように1回転に限定されるものでなく,2回転,3回転…など任意の回転数であってもよい。また,サンプル点数としては,センサ手段10の性能の限界によって,サンプル間隔が所定の時間以上でないと受光電圧を読み取れないという制限があるものの,上記のような20点に限定されるものではなく,任意に設定することができる。
【0072】
次いで,ステップS1082では,上記のようにして検出された測定ブレード24−2の単位回転数(1回転)当たりの受光電圧サンプルの中から,最小電圧のものが抽出されて記録される(ステップS1082)。例えば,上記図10(a)の例では,測定ブレード24−2の1回転中に検出された20点の受光電圧の中から,14番のサンプル点の最小電圧(2490mV)が抽出され,記憶部に記録される。このように最小電圧を抽出することにより,回転する測定ブレード24−2の刃先位置のうち最も突出した時の刃先位置(即ち,被加工物に切り込んだときに最も深くなる切り込み深さ)を検出することができる。
【0073】
さらに,ステップS1084では,最小電圧の測定を所定回数分行ったか否かが判断される(ステップS1084)。本実施形態では,例えば,測定ブレード24−2の1回転当たりの最小電圧の測定を,設定された回数(例えば100回)繰り返すこととしている。従って,本ステップでは,最小電圧の測定が設定回数だけ行われたか否かを判断し,行われていないと判断された場合には,次の回数(ステップS1085)の測定をすべく,ステップS1080に戻る。
【0074】
なお,最小電圧を100回測定する場合には,測定ブレード24−2の100回転中1回転毎に連続的に最小電圧を検出するようにしても良いが,例えば200回転中に100回転分の最小電圧を断続的に検出するようにしてもよい。連続的な検出よりも,断続的な検出の方が,検出精度が高まるため望ましいと考えられる。
【0075】
その後,ステップS1086では,測定された複数の最小電圧の例えば中央値に基づいて,測定ブレード24−2の刃先位置が特定される(ステップS1086)。詳細には,まず,上記のような測定によって得られた例えば100回分の最小電圧のデータを,大小順に並べた後に,中央値(メジアン)を抽出する。具体例を挙げて説明すると,図10(b)に示すように,例えば,上記100回の測定により100個の最小電圧のデータが存在するが,かかるデータを大小順に並び替え,このうち51番目の大きさを有する最小電圧(2491mV)を中央値として採用する。次いで,このようにして求めた中央値である最小電圧が,「測定ブレード24−2の刃先位置に対応する受光電圧」であると決定する。これによって,測定ブレード24−2の刃先位置が測定されたこととなる。
【0076】
このように,本実施形態では,最小電圧の平均値ではなく,中央値を採用して,測定ブレード24−2の刃先位置を特定している。この理由は,センサ手段10は水による影響を受け易いので,切削加工時に切削水として使用した純水が測定ブレード24−2やセンサ手段10に付着していたり,光軸16上に存在したりしていると,受光電圧が上下に大きくバラつくエラーとなり,正確な電圧を測定できないからである。例えば,100回の測定中20〜30回分の最小電圧は,エラーがある結果となっている。このため,最小電圧の平均値ではなく,中央値を採用することによって,エラーとなっている最小電圧を極力除外して,刃先位置を正確に特定することができる。
【0077】
次いで,ステップS1088では,測定ブレード24−2のセットアップ位置が算出される(ステップS1088)。この算出方法の具体例について,図11に基づいて説明する。なお,図11は,測定ブレード24−2のセットアップ位置の算出方法を説明するための説明図である。
【0078】
まず,上記ステップS1086で得られた▲1▼「測定ブレード24−2の刃先位置に対応する受光電圧(上記中央値)」と,既設定の▲2▼「基準ブレード24−1の刃先位置に対応するセットアップ電圧」との差(▲3▼「電圧差」)を算出する。<▲2▼−▲1▼=▲3▼>
【0079】
さらに,かかる電圧単位(mV)である▲3▼電圧差を,距離単位(μm)に換算して,▲4▼「基準ブレード24−1と測定ブレード24−2との間の刃先位置の差」を求める。この換算式は,例えば,センサ手段10のZ方向の特性(受光電圧と,Z方向のブレード位置との相関関係)を予め測定しておくことにより,例えば「8.74mv=1μm」と定めることができる。
<▲3▼/8.74=▲4▼>
【0080】
次いで,▲4▼「基準ブレード24−1と測定ブレード24−2との間の刃先位置の差」を,上記ステップS104で決定された▲5▼「基準ブレード24のセットアップ位置」に加算して,▲6▼「測定ブレード24−2のセットアップ位置」を得る。
<▲4▼+▲5▼=▲6▼>
【0081】
以上のようにして,測定ブレード24−2の刃先位置を測定して換算することにより,測定ブレード24−2をZ軸方向に昇降させることなく,測定ブレード24−2のセットアップ位置を正確に算出することができる。このように算出されたセットアップ位置の情報は,後述するブレード状態検知段階(ステップS112)や本セットアップ段階(ステップS116)などで利用するために,例えば,記憶部などに記憶される。
【0082】
以上までで,1つの測定ブレード24−2に関する刃先位置の測定動作フロー(図6のステップS108)が終了する。
【0083】
次いで,図6に示すステップS110では,全ての測定ブレード24−2,3,…,7について,刃先位置の測定が終了したか否かが判断される(ステップS110)。全ての測定ブレード24について測定が終了した場合には,ステップS112に進む。
【0084】
一方,全ての測定ブレード24について測定が終了していない場合には,ステップS106に戻り,上記と同様にして,まず,相隣接する測定ブレード24の間隔分(例えば,測定ブレード24−2と24−3の間隔分)だけマルチブレード20をY軸方向に平行移動させ(ステップS106),次いで,次の測定ブレード24(例えば測定ブレード24−3)の刃先位置を測定してセットアップ位置を算出する(ステップS108)という動作を繰り返す。この結果,全ての測定ブレード24−2,3,…,7について,セットアップ位置が算出される。
【0085】
次いで,通常であればステップS114の本セットアップ工程に進むが,次のような切削ブレード24の状態を判断する工程(ステップS112)をオプション的に追加することもできる。即ち,このステップS112では,全ての切削ブレード24−1,2,…,7の状態が正常であるか否かが判断される(ステップS112;ブレード状態検知段階)。本ステップでは,例えば,各切削ブレード24−1,2,…,7のセットアップ位置に基づいて,正常な状態にある切削ブレード24と,異常な状態にある切削ブレード24との判別を行う。ここでいう異常な状態にある切削ブレード24とは,例えば,過度に磨耗して交換する必要がある切断ブレード24や,他の切削ブレード24と比較してあまりにも外径が大きい切削ブレード24などのことである。
【0086】
マルチブレード20内にこのような異常な切削ブレード24がある場合には,切削加工を行う前に,正常な状態の切削ブレード24に交換する必要がある。即ち,磨耗した切削ブレード24については交換が必要であるのは言うまでもないが,あまりにも外径が大きい切削ブレード24についても,次のような理由で交換の必要がある。即ち,マルチブレード20は最大外径の切削ブレード24を基準として本セットアップが行われる(詳細は後述する。)が,あまりにも外径が大きい切削ブレード24が存在する場合,かかる切削ブレード24に合わせてセットアップしてしまうと,その他の切削ブレード24の切り込み深さが浅くなってしまい,好適に被加工物を切断することができなくなるからである。
【0087】
そこで,本ステップでは,例えば,切削ブレード24(基準ブレード24−1および測定ブレード24−2,…の双方を含む。)のセットアップ位置に基づいて,切削ブレード24の状態判別を行う。この状態判別は,例えば,上記のようにして測定された切削ブレード24のセットアップ位置と,予め設定されたセットアップ位置の許容範囲内とを比較することによって実行できる。かかる比較の結果,全ての切削ブレード24について,測定されたセットアップ位置が許容範囲内にあり正常な状態であると判断された場合には,ステップS114に進む。一方,例えば,少なくとも1つの切削ブレード24について,測定されたセットアップ位置が許容範囲外にあり異常な状態であると判断された場合には,ステップS118に進み,当該異常な切削ブレード24が交換される(ステップS118)。
【0088】
また,測定ブレード24−2,…に関しては,上記▲1▼「測定ブレード24−2の刃先位置に対応する受光電圧(上記中央値)」などの受光電圧値に基づいて,状態判別することもできる。即ち,過度に磨耗した切削ブレード24は外径が小さくなるため,上記のように検出した受光電圧が大きくなる。一方,外径が過度に大きい切削ブレード24は,当該受光電圧が小さくなる。従って,正常と考えられる受光電圧の許容範囲を予め設定しておくことにより,実測の受光電圧(上記▲1▼の値等)がこの許容範囲外となる測定ブレード24は,異常な切削ブレードであると判断することもできる。
【0089】
その後,ステップS114では,マルチブレード20が,例えば最大外径を有する切削ブレード24を基準として,本セットアップされる(ステップS114;本セットアップ段階)。以上までのステップで,基準ブレード24−1に関するセットアップ位置が設定され,また,全ての測定ブレード24−2,3…,7に関するセットアップ位置が算出され,記録部等に記憶されている。本ステップでは,まず,記録部等からこれら複数のセットアップ位置を読み出して,かかる複数のセットアップ位置に基づいて,最大外径を有する切削ブレード24を選定する。次いで,マルチブレード20のセットアップ位置が,当該最大外径を有する切削ブレード24のセットアップ位置となるように,マルチブレード20全体をZ軸方向に移動させて本セットアップする。この結果,マルチブレード20が,全ての切削ブレード24の刃先位置を考慮した好適な位置にセットアップされる。
【0090】
以上,本実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法について説明した。かかるセットアップ方法によれば,マルチブレード20を構成する複数の切削ブレード24のうち,1つの切削ブレード24(基準ブレード)のセットアップ位置を求めるときにだけ,マルチブレード20をZ軸方向に移動させて本格的に非接触セットアップし,その他の切削ブレード24(測定ブレード)については,マルチブレード20をZ軸方向に昇降させることなく,Y軸方向に移動させるだけで,刃先位置を測定してセットアップ位置を算出することができる。
【0091】
このため,従来のセットアップ方法のように,全ての切削ブレード24についてそれぞれ,マルチブレード20をZ軸方向に昇降させて非接触セットアップする必要がない。即ち,本実施形態では,一旦,基準ブレードの非接触セットアップを行えば,それ以後はマルチブレード20をY軸方向にのみ移動させればよく,Z軸方向に移動させる必要がない。
【0092】
従って,マルチブレード20のセットアップ時間を大幅に短縮することができる。例えば,4つの切削ブレード24を使用したマルチブレード20についてセットアップ時間を測定した結果によれば,従来では90秒程度必要であったセットアップ時間を,40秒程度に短縮することができた。このように,本実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法は,マルチブレード20のセットアップに要する時間を半分以下に抑制することができる。また,かかるセットアップ方法は,マルチブレード20を構成する切削ブレード24の枚数が増えれば増えるほど,その効果を発揮することとなる。
【0093】
なお,上記のセットアップ方法では,基準ブレード24−1と測定ブレード24−2,3…,7とは,異なる方法でセットアップ位置を求めているが,かかる例に限定されない。例えば,基準ブレード24−1に基づいて仮セットアップした後に,再度,この基準ブレード24−1を測定ブレードとして,刃先位置の測定やセットアップ位置の算出を行うようにしてもよい。これにより,すべての切削プレ一ド24に関して,同一の方法によって,セットアップ位置の算出やブレード状態の判別を行うことができる。
【0094】
特に,上記のようにマルチブレード20の+Y軸方向先端に位置した切削ブレード24を基準ブレードとするのではなく,中心部に位置する切削ブレード24(例えば切削ブレード24−2〜6等)を基準ブレードとして選択した場合などには,基準ブレードを測定ブレードとして再度測定した方が効率的であると考えられる。
【0095】
次に,図12および図13に基づいて,本実施形態にかかるブレード間隔測定方法について説明する。なお,図12は,本実施形態にかかるブレード間隔測定方法を示すフローチャートである。また,図13は,本実施形態にかかるブレード間隔測定方法において検出された受光電圧の一例を説明するためのグラフである。
【0096】
本実施形態にかかるブレード間隔測定方法は,例えば,上記のようなセットアップを行う前に,切削ブレード24相互の間隔(ブレード間隔)を予め測定しておくための手法である。
【0097】
図12に示すように,まず,ステップS200では,マルチブレード20をZ軸方向に降下させて,所定の高さに設定する(ステップS200)。具体的には,まず,センサ手段10の上方にマルチブレード20を位置づけ,次いで,マルチブレード20をZ軸方向に降下させて,例えば全ての切断ブレード24の刃先がセンサ手段10の光軸16に接触できる程度の高さ(即ち,全ての切削ブレード24の刃先位置をセンサ手段10によって検出可能な高さ)で停止させる。
【0098】
このようなZ軸方向の高さ設定は,例えば,上記マルチブレードのセットアップ方法のステップS100〜S104(図6参照)と同様に,いずれかの切削ブレード24を発光部14と受光部15との間に挿入するようにしてマルチブレード20を降下させ,センサ手段10の受光電圧が所定の基準電圧に達した瞬間に,マルチブレード20の降下を停止するようにすることで,実行できる。なお,このZ軸方向の高さ設定の基準となる切削ブレード24は,任意に選択することができるが,+Y軸方向先端(オペレータ側)に位置する切削ブレード24−1,または−Y軸方向終端(マシン側)に位置する切削ブレード24−7を基準とすれば,以下のステップS202でのマルチブレード20の平行移動距離が少なくて済み,迅速なブレード間隔測定が可能になる。
【0099】
次いで,ステップS202では,マルチブレード20をY軸方向に平行移動させながら,受光電圧を連続的に検出する(ステップS202)。具体的には,上記ステップS200で設定されたZ軸方向の高さを維持したまま,マルチブレード20をY軸方向に所定の移動速度で平行移動させる。例えば,上記ステップS200で切削ブレード24−1を基準として高さ設定した場合には,少なくとも,切削ブレード21−7の刃先がセンサ手段10の光軸16を遮る位置まで,マルチブレード20を+Y軸方向に平行移動させる。一方,例えば,上記ステップS200で切削ブレード24−7を基準として高さ設定した場合には,少なくとも,切削ブレード21−1の刃先が当該光軸16を遮る位置まで,マルチブレード20を−Y軸方向に平行移動させる。
【0100】
このようにマルチブレード20をY軸方向に平行移動させることにより,各切削ブレード24−1,2,…,7の刃先が順次,発光部14と受光部15との間を通過し,光軸16の少なくとも一部が断続的に遮られることとなる。
【0101】
さらに,かかるマルチブレード20の平行移動時には,センサ手段10によって受光電圧が連続的に検出されている。かかる受光電圧は,光軸16上に切削ブレード24の刃先が位置したときには減少する一方,当該刃先が位置しない場合には増加する。従って,連続的に検出された受光電圧は,ブレード間隔に応じて略周期的に増減することとなる。
【0102】
かかる受光電圧の検出結果の具体例を図13に示す。図13に示すように,検出された受光電圧は,切削ブレード24の通過に伴って波打つように増減しており,各波形のうちで受光電圧が最小値となる点(A点,B点,C点)が,各切削ブレード24の刃先が存在する位置に対応する箇所であるといえる。
【0103】
さらに,ステップS204では,上記受光電圧の最小値の間隔(周期)に基づいて,ブレード間隔が算出される(ステップS204)。マルチブレード20をY軸方向に平行移動させたときには,例えば,かかる平行移動の駆動力を生成する電動モータのモータ軸の位置(移動距離)は,容易に計測可能である。このため,上記のように略周期的に変化する受光電圧のうち,ある波形の最小値になる点(例えば図13のA点)と,それに隣接する波形の最小値になる点(例えばB点)における,それぞれのモータ軸の位置を取得し,かかるモータ軸の位置の差を算出することにより,切削ブレード24と切削ブレード24との間隔(例えばL1)を求めることができる。かかる手法により,すべての切削ブレード24相互の間隔(取り付けピッチ)を,それぞれ求めることができる。
【0104】
以上のような本実施形態にかかるブレード間隔測定手法によれば,例えば,マルチブレード20のセットアップ前に,マルチブレード20を構成する各切削ブレード24の間隔を,迅速かつ正確に測定できる。従って,かかる実測値のブレード間隔を,上記マルチブレードのセットアップ方法に適用(例えば図6のステップS106で利用)することによって,各切削ブレード24に取り付け誤差等がある場合などにも対応できるため,マルチブレード20のセットアップ精度を高めることができる。なお,かかるブレード間隔測定は,例えば,マルチブレード20の切削ブレード24を交換しない限り,マルチブレード20を最初に使用する前に一度だけ行えば十分である。
【0105】
なお,このようなブレード間隔測定方法は,上記マルチブレードのセットアップ目的に限られるものではなく,データとして取り付けピッチを利用するものであれば,いかなる手法にも適用することができる。
【0106】
また,かかるブレード間隔測定方法によって,マルチブレード20で切削加工を行う前に,被加工物上の切削予定ラインと,実際の切削ラインとの誤差(位置ずれ)を検知することができる。従って,かかる切削ラインの誤差について予め許容範囲を設定しておき,当該許容範囲外となった切削ブレード24を取り付け直すことによって,より正確に被加工物を切削加工することができるようになる。
【0107】
次に,図14および図15に基づいて,本実施形態にかかるブレード状態検知方法について説明する。なお,図14は,本実施形態にかかるブレード状態検知方法を示すフローチャートである。また,図15は,本実施形態にかかるブレード状態検知方法において検出された受光電圧の一例を説明するためのグラフである。
【0108】
図14に示すように,まず,ステップS300では,マルチブレード20をZ軸方向に降下させて,所定の高さに設定する(ステップS300)。次いで,ステップS302では,マルチブレード20をY軸方向に平行移動させながら,受光電圧を連続的に検出する(ステップS302)。なお,このようなブレード状態検知方法におけるステップS300およびS302は,上記図12で説明したブレード間隔測定方法におけるステップS200およびS202と略同一であるので,その詳細説明は省略する。
【0109】
次いで,ステップS304では,上記ステップS302で検出された受光電圧の各周期内の最小値の大きさに基づいて,ブレード状態が判別される(ステップS304)。上述したように,検出された受光電圧は,切削ブレード24の通過に伴って略周期的に増減している。かかる受光電圧の検出結果の具体例を図15に示す。図15に示すように,検出された受光電圧は,略周期的に増減しており,各波形において受光電圧が最小値となる点(D点,E点,F点,G点)は,各切削ブレード24の刃先が存在する位置に対応している。従って,当該最小値の大きさは,切削ブレード24の刃先位置と相関関係がある。即ち,この最小値は,切削ブレード24の刃先が光軸16をどの程度遮っているかで増減するものであり,かかる最小値が大きいほど当該刃先がZ軸方向上方(被加工物から遠い位置)に位置しており,一方,最小値が小さいほど当該刃先がZ軸方向下方に位置していることを表している。
【0110】
従って,ブレード状態が正常と考えられる受光電圧の最小値の許容範囲を予め設定しておくことにより,実際に検出された各波形における最小値がこの許容範囲内にあるか否かによって,当該最小値に対応する切削ブレード24の状態が正常であるか異常であるかを判別することができる。
【0111】
図15の例について具体的に説明すれば,最小値の許容範囲は,上限がVmax,下限がVminと設定されており,検出された最小値がこのVmin〜Vmaxの範囲に有る場合(D点,G点)には,当該最小値に対応する切削ブレード24は正常であると判断される。一方,検出された最小値がVmaxより大きい場合(F点)には,当該最小値に対応する切削ブレード24は例えば極度に摩耗しており異常であると判断され,また,検出された最小値がVminより小さい場合(E点)には,当該最小値に対応する切削ブレード24は外径が標準よりも過度に大きいものであり異常であると判断される。
【0112】
以上のように,本実施形態にかかるブレード状態検知方法によれば,マルチブレード20のセットアップ前や切削加工途中に,マルチブレード20に装着された複数の切削ブレード24の状態を,迅速かつ容易に判別することができる。なお,かかる方法によるブレード状態検知は,例えば,上述したブレード間隔の測定と同時に行うことも技術的には可能である。
【0113】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0114】
例えば,上記実施形態では,切削装置としてダイシング装置1の例を挙げて説明したが,本発明は,かかる例に限定されない。例えば,高速回転するマルチブレードを用いて被加工物を切削加工する装置であれば,例えば,ダイシング加工以外の切削加工を行う各種の切削装置であってもよい。
【0115】
また,上記実施形態では,被加工物として,CSP基板12の例について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。被加工物は,例えば,略円盤形状を有する半導体ウェハ(シリコンウェハ等),GPS基板,BGA基板,ガラス基板,石英板,サファイア基板,セラミックス材,金属材などであってもよい。
【0116】
また,上記実施形態では,切削ブレード24としてリング状の切刃部のみからなるいわゆるワッシャーブレードを用いたが,本発明は,かかる例に限定されない。例えば,基台となるハブ(HUB)と切刃部を一体形成したハブブレードを用いてもよい。
【0117】
また,上記実施形態では,マルチブレード20を構成する複数の切削ブレード24は,略均等な間隔(取付ピッチ)で装着されていたが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,切削ブレード24の取付ピッチは,被加工物の切削ライン幅に応じて,自由に変更可能であり,必ずしも略均等ピッチである必要はない。また,マルチブレード20を構成する切削ブレード24数も,2以上であれば任意の数であってもよい。
【0118】
また,上記実施形態では,センサ手段10は,チャックテーブル30の近傍に設置されたが,本発明はかかる例に限定されず,切削装置内の任意の位置に設置することが可能である。
【0119】
また,上記実施形態では,基準ブレードとして,Y軸方向先端に位置する切削ブレード24−1を選択したが,本発明はかかる例に限定されず,マルチブレードを構成する複数の切削ブレード24のうち,任意の1つの切削ブレード24を基準ブレードとして選択してもよい。
【0120】
また,上記実施形態では,測定ブレード24−2,3,…,7のみの刃先位置を測定したが,本発明はかかる例に限定されず,測定ブレード24と同様にして,仮セットアップ後の基準ブレード24−1を測定してもよい。
【0121】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明にかかるマルチブレードのセットアップ方法によれば,マルチブレードを構成する複数の切削ブレードについて個別に非接触セットアップしなくても,全ての切削ブレードについての好適なセットアップ位置をそれぞれ取得することができるので,マルチブレード全体を迅速かつ正確にセットアップすることができる。
【0122】
また,本発明にかかるブレード間隔測定方法によれば,マルチブレードを構成する切削ブレード相互の間隔を容易かつ正確に測定することができる。また,本発明にかかるブレード状態検知方法によれば,マルチブレードを構成する個々の切削ブレードの状態を容易かつ的確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,第1の実施形態にかかるダイシング装置を示す全体斜視図である。
【図2】図2は,第1の実施形態にかかるマルチブレードを示す側面図である。
【図3】図3は,第1の実施形態にかかるセンサ手段を示す斜視図である。
【図4】図4は,第1の実施形態にかかるマルチブレードおよびセンサ手段の位置関係を示す正面図である。
【図5】図5は,第1の実施形態にかかるマルチブレードおよびセンサ手段の位置関係を示す平面図である。
【図6】図6は,第1の実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法を示すフローチャートである。
【図7】図7は,第1の実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法における,仮セットアップ段階を説明するための工程説明図である。
【図8】図8は,第1の実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法における,マルチブレードを平行移動させる段階を説明するための工程説明図である。
【図9】図9は,第1の実施形態にかかるマルチブレードのセットアップ方法における測定ブレードの刃先位置の測定動作フローを示すフローチャートである。
【図10】図10(a)は,第1の実施形態にかかる測定段階において検出された測定ブレード1回転当たりの受光電圧の変化を示すグラフである。図10(b)は,第1の実施形態にかかる測定段階における刃先位置の測定により得られた例えば100回分の最小電圧のデータを大小順に並べた表である。
【図11】図11は,測定ブレードのセットアップ位置の算出方法を説明するための説明図である。
【図12】図12は,第1の実施形態にかかるブレード間隔測定方法を示すフローチャートである。
【図13】図13は,第1の実施形態にかかるブレード間隔測定方法において検出された受光電圧の一例を説明するためのグラフである。
【図14】図14は,第1の実施形態にかかるブレード状態検知方法を示すフローチャートである。
【図15】図15は,第1の実施形態にかかるブレード状態検知方法において検出された受光電圧の一例を説明するためのグラフである。
【図16】図16(a)は,従来のセットアップ方法におけるマルチブレードおよびセンサ手段の位置関係を示す側面図である。図16(b)は,従来の別のセットアップ方法におけるマルチブレードおよびセンサ手段の位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
1 : ダイシング装置
10 : センサ手段
14 : 発光部
15 : 受光部
16 : 光軸
20 : マルチブレード
22 : 回転軸
24 : 切削ブレード
24−1 : 基準ブレード
24−2,3,…,7 : 測定ブレード
28 : スペーサ
30 : チャックテーブル

Claims (1)

  1. 被加工物を保持する保持手段と;前記被加工物の加工面と略平行に延びる回転軸と,前記回転軸に並設された複数の切削ブレードとを備えたマルチブレードと;発光部と受光部とを備え,前記発光部と前記受光部とを結ぶ光軸が1の前記切削ブレードのみによって遮断されうるように,前記光軸が前記切削ブレードの側面と鋭角をなすように構成され,前記切削ブレードを前記発光部と前記受光部との間に位置させたときの受光電圧に基づいて,前記切削ブレードの刃先位置を測定するセンサ手段と;を備えた切削装置において,相隣接する前記切削ブレードの間隔を測定する,ブレード間隔測定方法であって:
    少なくともいずれかの前記切削ブレードの刃先が前記センサ手段によって検出可能となる位置まで,前記マルチブレードを前記回転軸の軸方向に対して略垂直方向に移動させる段階と;
    前記マルチブレードを前記回転軸の軸方向に平行移動させながら,前記センサ手段によって,前記複数の切削ブレードの刃先が前記発光部と前記受光部との間を順次通過するに伴って略周期的に増減する受光電圧を,連続して検出する段階と;
    前記略周期的に増減する受光電圧の各周期内の最小値を検出する間隔に基づいて,相隣接する前記切削ブレードの間隔を決定する段階と;
    を含むことを特徴とする,ブレード間隔測定方法。
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