JP4481545B2 - 電力制御方法及び電力制御装置 - Google Patents
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Description
[関連出願]
本願は、1999年9月30日に出願された米国仮出願第60/156,699号「無線通信システムの上り回線における電力オフセットの設定方法」を基礎として優先権を主張するものであり、その開示のすべては引用としてここに明示的に取り込まれる。
【0002】
[背景]
本発明は、通信システムにおいて送信される信号の電力レベルを制御する方法に係り、とりわけ、無線通信システムに関する。
【0003】
同時に送信を実行する多くの送信機を備えた通信システムにおいて、高いシステム収容能力を維持しつつ、そのような送信機の致命的な干渉を最小にするためには、優れた電力制御方法が重要となる。例えば、このような電力制御が重要となる通信システムには、広帯域符号分割多元接続(W−CDMA)を使用する通信システムがある。システム特性にも依存することではあるが、そのようなシステムにおける電力制御は、上り回線における送信(すなわち、リモート端末から網側への送信)、下り回線における送信(網側からリモート端末への送信)又はこれらの双方において重要となろう。
【0004】
各リモート端末において信頼性の高い信号の受信を実現するには、受信信号の信号対干渉比(SIR)が、各リモート端末ごとに所定の閾値(これを「所要信号対干渉」レベル又はSIRreqと呼ぶ。)を超える必要がある。例えば、図1に示すように、3機のリモート局が、W−CDMAのチャネル上でそれぞれ3つの信号を受信する場合を考慮してみよう。各信号は、それぞれエネルギーレベルE1、E2及びE3といった信号エネルギーを有しているものとする。また、通信チャネル上には、あるレベルの雑音(N)が存在しているものとする。第1のリモート局についていえば、第1のリモート局に向けて送信された信号を適切に受信するには、E2、E3及びNのレベルを合計したものとE1との比が、第1のリモート局の所要信号対干渉比SIRreqを超えるものでなければならない。
【0005】
受信信号のSIRを改善するには、受信機において測定されたSIRに依存して、送信信号のエネルギーを増加させればよい。この手法に従って、無線通信システムにおける送信電力を制御する技術は、一般に高速電力制御ループと呼ばれている。この技術によれば、初期の目標SIRは、特定のコネクション又はサービスのタイプについて必要とされるサービス品質(QoS)に基づいて確立される。非直交チャネルについて、特定のリモート局又は基地局によって測定される現実のSIR値は、次式で表現される。
【0006】
受信信号の平均電力
SIR = −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (1)
すべての干渉信号の平均電力についての和
SIRは、受信機によって測定され、測定されたSIRは、どの電力制御コマンドを送信機に送信すべきかを決定する際に使用される。例えば、もしリモート局において測定されたSIRが目標SIRよりも低ければ、基地局に送信電力を増加させることを指示するための電力制御コマンドが当該基地局に送信される。反対に、測定されたSIRが目標SIRよりも大きければ、送信電力制御コマンドは、基地局に送信電力を減少するように指示するものとなる。
【0007】
低速電力制御ループは、上記の手法を基礎として、目標となるSIR値を調整するために使用される。例えば、リモート局の受信機は、よく知られた、例えば、ビットエラーレート(BER)やフレームエラーレート(FER)を用いて、基地局から受信された信号の品質を測定することができる。受信信号の品質は、送信機と受信機との間でコネクションが張られている間に変動することもあるが、この受信信号の品質に基づいて、低速電力制御ループは、目標SIRを調整することができる。この目標SIRは、リモート局の高速電力制御ループにおいて、上り回線の送信電力を制御するために使用される。下り回線の送信電力を制御する際にも同様の技術を使用することができる。
【0008】
この電力制御技術の課題は、あるリモート局へと送信する信号のエネルギーを増加してしまうと、近隣の他のリモート局に送信される信号への干渉を増加させてしまうことである。それゆえ、無線通信システムは、同一の共通チャネルを共有しているすべてのリモート局の要件間のバランスをとらなければならない。与えられた無線通信チャネル内におけるすべてのリモート局についてのSIR要件が満たされたときに、安定状態が達成される。一般的にいって、安定平衡状態は、各リモート局に対して高すぎず低すぎない程度の電力レベルを用いて送信すると達成される。不必要なほどの高いレベルでもってメッセージを送信すれば、各リモート局で観測される干渉は増加し、共通チャネル上で成功裡に通信できるチャネルの数は制限され、すなわち、システム収容能力が低下する。
【0009】
消費者らによる無線通信サービスの需要が増大するにつれて、システム収容能力はさらに重要になってきている。ファクシミリ、電子メール、ビデオ、インターネットへのアクセス及びその他の付加的なサービス、および、テレビ会議などの異なるタイプのサービスに同時にアクセスしたいとのユーザの望みを実現するには、システムリソースの効率的な使用が必要とされる。
【0010】
データ通信の異なるタイプを処理するためのひとつの技術には、各サービスごとに異なる無線ベアラを提供することが含まれ、これはまた、トランスポートチャネルとかトランスポート・フォーマット・コンビネーション(TFC)などと呼ばれる。無線ベアラは、無線インタフェースを介して情報を転送する機能を提供するものであり、情報転送レート(すなわち、ビットレート又はスループット)、遅延要件及び他の性質によって特徴付けられるものである。無線ベアラは、ユーザデータ又は制御信号のどちらかを搬送する。典型的には、無線ベアラは特定のサービス、例えば、音声会話などのために使用される。各無線ベアラの帯域幅要件に依存して、無線ベアラは複数の物理チャネルに橋渡しをして使用してもよいし、ひとつの物理チャネルを複数の無線ベアラが共有してもよい。
【0011】
一以上の無線ベアラのみならず、典型的にユーザは、ユーザのデータビットを搬送する一以上の物理データチャネル(PDCH)や専用物理データチャネル(DPDCH)を割り当てられる。また、ユーザ又は端末は、オーバヘッドの制御情報をユーザへと搬送するための物理制御チャネル(PCCH)や専用物理制御チャネル(DPCCH)を割り当てられる。例えば、関連するPDCHのビットレート情報、送信電力制御ビットやパイロットシンボルなどを、一定のビットレートでもって搬送する。これらは、高速電力制御ループ処理において使用されるSIRの測定値を得るために利用される。
【0012】
DPCCHは、適切な電力制御を確保するため、すなわち、受信された電力制御ビットの適切な品質を確保するために必要となる電力レベルでもって送信される。一般に、適切な電力制御を確保するためには、DPCCHによって満足されなければならない最低のサービス品質(QoS)が存在する。必要とされるQoSを満たすためには、DPCCHが送信される際の電力レベルが、少なくとも最低レベルに達していなければならない。例えば、W−CDMAにおけるDPCCHは典型的に、FBIビット中の情報を復号しフィードバックできるようTFCIの適切なパフォーマンスをを確保するために必要となる電力レベルと一定の拡散率とでもって送信される。
【0013】
また、最小のQoSはDPDCHによって満たされなければならない。しかしながら、DPDCHの電力レベルはデータレートに依存する。
【0014】
DPDCH及びDPCCHは、典型的に異なる要件に基づいて、異なる電力レベルで送信される。従って、DPDCHとDPCCHとの間には電力オフセットが存在する。
【0015】
例示的な広帯域CDMAシステムの上り回線におけるDPDCHとDPCCHとのチャネル間の電力オフセットは、第3世代パートナーシッププロジェクト、技術規格グループ無線アクセス網、拡散及び変調(FDD)、3G TS 25.213、V3.1.0において規定されており、この文献のすべてをここに引用として取り入れる。上記のようなオフセットを含む電力制御技術の例として、米国特許出願第08/874,907号、「無線通信システムにおけるマルチ符号チャネルの電力制御」、1997年6月16日に出願されたものがあり、これを引用によってここに取り入れる。
【0016】
例えば、TFCに関連してデータレートが変化するにつれて、これらのオフセット値を決定し、更新するための手法は未だ確立されていない。このようなオフセットをどのようにして管理するかを考慮すると、次の点が非常に重要である。すなわち、DPCCHの送信電力と、DPDCHの送信電力との間における比が正しくなければ、DPCCHについて動作している電力制御ループは誤った目標SIRを設定されることになる。これはまた、DPDCHのEb/l0比(受信信号対干渉比)が、前のスロットに比較して低下するためDPDCHのパフォーマンスが劣化したり、DPDCHの品質を改善することにはなるが不必要なほど高い電力レベルによって他のチャネルへ与える干渉を増加させてしまうような事態をもたらしたりすることになろう。
【0017】
従って、無線通信システムにおいて、とりわけ、データチャネルと制御チャネルなどの複数のチャネル間における電力オフセットを管理調整するための技術への要請がある。
【0018】
[概要]
そこで、本願発明の目的は、信号の劣化と信号の干渉を低減すべく、データチャネルと制御チャネル間の電力オフセットを制御するための技術を提供することにある。
【0019】
例示的な実施形態によれば、この目的及び他の目的は送信電力を制御するための方法及び装置によって満たされる。少なくとも第1のチャネルにおけるのデータレートが決定され、少なくとも第1のチャネルの送信電力は、決定されたデータレートに基づいて制御される。送信電力制御は、前記第1のチャネルと第2のチャネルとの電力比に基づいて調整されてもよく、また、前記電力比は第1のチャネルのデータレートに基づいて調整されても良い。前記第1のチャネルは、データチャネルであり、また、前記第2のチャネルは制御チャネルであってもよい。前記電力比は、前記第1のチャネルと前記第2のチャネルとの間の電力オフセットが前記第1のチャネルのデータレートに比例するように調整されてもよい。前記電力比は、符号化レート、データ送信速度及びレート整合パラメータの少なくとも1つに基づいて調整されても良い。また、送信電力は受信された電力制御コマンドに基づいて調整されても良い。送信電力は、上述の方法に従って、上り回線又は下り回線において調整されよう。
【0020】
[詳細な説明]
この説明の中には、携帯又は移動無線電話を含むセルラー通信システムに関する記述が含まれているが、当業者であれば本願発明を他の通信アプリケーションにも適用できることを理解できよう。さらに、本願発明はW−CDMA通信システムににおいて利用されるが、もちろん、他のタイプの通信システムにおいて利用しても良い。
【0021】
図2は、例示的なセル50を示しており、そのセル50の中では基地局(BS)100と移動局(MS)110とが通信を行う。MS110は1つだけが示されているが、基地局100が多数の移動局に対して同時並行的にコネクションを提供できることは当業者であれば理解できよう。本説明の目的からすれば、単一のMSと網との間における相互作用は、本願発明に係る電力制御技術を説明するのに十分である。例示的な実施形態の目的のために、図2に示されたシステムはCDMA技術を用いて全二重の上り回線チャネルと下り回線チャネルとを運用するものとする。この例に拠れば、MS110は、3つの双方向の矢印で示されたDPCCH、DPDCH1及びDPDCH2の3つの上り回線物理チャネルと下り回線物理チャネルとを割り当てられている。もちろん、物理チャネルは一方向性のものであってもよいし、MSが上り回線と下り回線とでは異なる数の物理チャネルを割り当てられてもよい。例えば、インターネットへのアクセスに際しては、上り回線よりも下り回線の方が多くの帯域幅を必要とする。また、下り回線と上り回線とではデータレートも異なっており、例えば、インターネットへの接続は、高速な下り回線データレートと低速な上り回線データレートを有するたった一つのチャネルだけを備えてもよい。
【0022】
例示的なW−CDMAシステムの説明において、物理チャネルは、その符号(チャネライゼーション符号、スクランブル符号又はこららの組み合わせの符号)と周波数とによって識別される。下り回線において、BS100はMS110に対して、各物理チャネルごとに対応付けられた電力レベルを用いて送信される。上り回線においては、MS110は、各物理チャネルごとに対応付けられた電力レベルを用いてBS100と通信する。図示されてはいないが、BS100は、移動通信交換局(MSC)を経由して、公衆回線網(PSTN)へとさらに接続される無線網制御装置(RNC)と通信する。
【0023】
図3において、例示的な通信機が示されている。説明目的のために、通信機は、MS110として考慮することができる。しかしながら、BSもまた類似の構成要素を含んでも良いことは理解できよう。図3に示すように、MS110は、受信機22を含んでおり、これは、アンテナ20からの信号を従来からの方法にしたがってフィルタ処理、増幅処理、復調処理などを実行する。第1の復調器24は、例えば、DPCCH上で送信されるBS100からの信号を選択的に受信して復調するために提供される。同様にして、MS110に割り当てられた、例えば、DPDCH1やDPDCH2は、それぞれ、第2の復調器26および第3の復調器27において復調される。これらの復調器からの出力データは、プロセッサ25において公知の手法により再構成され、搬送情報を出力し、例えば、無線により送信されるテレビ会議の音声出力及び映像出力として提供される。同時に、復調処理中に得られる情報は、MS110によって受信された信号のSIRを決定するために使用することができ、また、例えばBERやFERなどの他の品質測定を実行するためにも使用することができる。例えば、SIR及び品質測定ユニット28aは、MS100によって受信された信号のSIRを(1)式に基づいて計算により求めることができる。求められたSIRは、上り回線のTPC判定ユニット28bによって使用され、どの電力制御コマンドにすべきか(すなわち「上げ」か「下げ」)を決定する。また、上り回線において送信されるメッセージに含めるべき電力オフセット値を決定する。電力オフセット値は、BS100の電力制御ユニットにおいて使用されるものである。BERの測定及びFERの測定の少なくとも1つは、いずれかの公知技術を用いて下り回線の品質測定ユニット28cにおいて実行される。
【0024】
測定されたBER及びFERの少なくとも一方は、下り回線の品質測定ユニット28cからプロセッサ25に供給される。プロセッサ25は、この品質測定値を用いて、電力レベルコントローラ29へと供給される電力オフセット値を調整する。
【0025】
上り回線のDPCCH、DPDCH1及びDPDCH2上で送信される情報は、さらに処理され、例えば、変調され、送信される。異なる複数の物理チャネルが送信される際の電力レベルは、電力レベルコントローラ29によって制御され、この電力レベルはチャネル間で変動してもよい。電力レベルコントローラ29は、BS100から受信した電力オフセット値又はMS110によって求められた電力オフセット値及びBS100によって送信された下り回線送信電力制御(DLTPC)コマンドに基づいて、上り回線の送信電力を制御する。
【0026】
その上に位置以上の無線ベアラを配置することのできる複数の物理チャネルを介して情報を通信する例示的な基地局及び例示的な移動局、様々な信号強度及び品質測定値の導出方法などを説明してきたが、次に、図4を用いて、本願発明に係る電力制御コマンド及び電力レベルオフセット値の生成について例示的な技術を説明する。図4において、例示的な送信処理のチェーンが示されており、この中で各TFCは、引用符号200によって示される機能ユニットのセットを用いて処理される。各送信機は、複数の処理チェーン200を含んでもよく、その中の1つは各トラヒックチャネル用のものである。
【0027】
巡回冗長符号(CRC)のフィールドは、CRC付加ユニット210において、第1のTFCに関するデータ部に付加される。ブロックの連結処理及びブロックの分離処理は、連結・分離ユニット220において実行される。例えば、畳み込み符号化処理などのチャネル符号化処理は、チャネル符号化ユニット230において実行され、無線フレーム等価処理は、無線フレーム等価ユニット240において実行される。無線フレーム等価ユニット240の出力は、第1のインターリーブユニット250において第1のインターリーブ処理を施すべく供給され、その後で、無線フレーム分離ユニット260において無線フレームへと分割される。これらの処理の結果得られた無線フレームは、レート整合ユニット270においてレート整合処理され、これにより複数のTFC間の送信レートが調整される。
【0028】
レート整合ユニット270は、フレームの中のすべてのチャネルにおいて送信されるビットの数と、各チャネルごとのデータレートに依存して、データのビットを間引いたり繰り返したりする。間引き又は繰り返しの量は、レート整合パラメータ(RM)に比例する。レート整合パラメータRMは、複数のチャネルを優先順位付けるために使用され、BS100からMS110へと信号伝達される。
【0029】
各TFCからのレートの整合された無線フレームは、送信の準備を整えるべく多重化ユニット280において一緒に多重化される。結果として得られるデータストリームは分離ユニット285において、分離後のデータが含められて送信される物理チャネルに基づいて分離される。第2のインターリーブ処理は、各チャネルのデータごとに第2のインターリーブユニット288において実行される。第2のインターリーブユニット288の出力は、物理マッピングユニット290において、それぞれの物理チャネルへと配置(マッピング)される。この配置は、例えば、指定された対応の拡散符号を用いて出力を拡散することによって実行される。送信された物理チャネルの電力レベルは、DPDCHとDPCCHとの間の電力レベルオフセットに関連するゲインファクタを用いて重み付けがなされて適合される。(例えば、前のTFCとは異なるデータレートを有しているような)新規のTFCが送信される場合は、新規のオフセット値が必要となる。
【0030】
上記文献「拡散と変調」おいて規定されているように、制御チャネルのゲインファクタβcとデータチャネルのゲインファクタβdとは、各TFCごとに、例えばDPCCHを用いてBS100からMS110へと明示的に送信されてもよい。各TFCについてゲインファクタβcとβdとが送信されると、新しいTFCが使用されている第1のスロットの開始において、β値は、上り回線の送信電力を調整するためにMS110の中で適用することができる。例えば、次式に従ってβ値が変更されるのと同時に、出力送信電力を変更することができる。
【0031】
【数1】
ここで、
Pout,previous は、新しいTFCが使用される前のスロットにおける出力電力であり、
βd,current は、新しいTFCについて使用されるβdの値であり、
βc,current は、新しいTFCについて使用されるβcの値であり、
βd,previous は、前のTFCについて使用されるβdの値であり、
βc,previous は、前のTFCについて使用されるβcの値であり、
TPCは、送信電力制御処理手続きに従って送信される送信制御コマンドから結果として得られる送信電力の変更を示している。
【0032】
TFCが変更される度にゲインファクタを明示的に送信する案に代えて、例えば、異なるTFCについて使用されるデータレートの変化に基づいて、MS110及びBS100が電力オフセットを計算により求めるといったメカニズムを提供してもよい。DPDCHとDPCCH間の電力オフセットは、(1)送信される際のデータレートの如何にかかわらず、DPDCH上で(符号化される前の)送信されるEbを一定に保ち、(2)電力制御の電力ステップを除き、電力制御メカニズムが影響しないようにDPCCHについて使用されている送信電力を一定に保つように決定することができる。
【0033】
例示的な実施形態によれば、チャネル間の電力オフセットは、トランスポートチャネルのビットレートに従って調整されても良い。この解決策は、すべてのTFCが同一の符号化レートと同一の整合パラメータとを有しているときには良い結果が得られるが、しかし、複数のTFCがそれぞれ有する符号化レートが異なっていると上手く動作しない。トータルの符号化レートは、考慮に入れられなければならない。この符号化レートRc,totには、実際の符号化器の符号化レートRcとレート整合レートRc,rateが含まれている。トータルの符号化レートRc,totは、Rc,tot=Rc*Rc,rateによって得ることができよう。従って、データレート変更に加えて、電力オフセットをどの程度調整するかを決定する際に、符号化レートとレート整合パラメータとの双方を考慮に入れるべきである。さらに、オフセットの決定は、レート整合が実行される前のデータレートを記述している情報に基づくべきである。若しくは、拡散率だけが考慮されても良い。なぜなら、ユニット270においてレートマッチングが実行された後に、上り回線で送信される各フレームが充填されるからである。
【0034】
レート整合ユニット270において採用される例示的なレート整合アルゴリズムは、チャネルビットレートの特性を有しており、それゆえ、各TFCについて電力設定は、和Σi RMi・Niに比例する。ここで、図4に示されるように、Niは、TFCiについての無線フレーム分離ユニット260から転送されてきたビットの数を表し、RMiは、TFCについて信号伝達されたレート整合パラメータである。この情報が、DPDCHの送信電力とDPCCHの送信電力との間の電力比について使用されるときは、異なるTFCチャネルについての符号化レートとレート整合パラメータとは、レート整合処理が実行される前に考慮に入れなければならない。
【0035】
前述の考慮をする際に、各フレームごとの電力オフセットを以下の不等式に基づいて決定することができる。
【0036】
【数2】
ここで、インデックス「signaled」は、β値が信号伝達されているTFCに関連するパラメータであることを示しており、インデックス「current」は、β値が計算により求められるTFCに関連するパラメータであることを示している。
【0037】
現行(current)のβ値は、次のより高い振幅比に従った値へと量子化されるべきである。簡略化の観点からは、β値の1つは常に1.0に設定されることができ、それゆえβ値は、いつも良い値に定義される。もしβdが1.0であれば、βcは下方に向かって量子化されるべきであり、もし、βcが1.0であれば、βdは次により高い値へと量子化されるべきである。より特別には、この不等式は、図5に示された手続きを用いて近似的なβパラメータを計算により求めるために使用することができる。
【0038】
ステップ500において、すべてのTFC用のレート(Rate)TFCjは、β値のセットが信号伝達されている場合に計算により求めることができる。パラメータRateTFCjは「j」番目のTFCについて次のように定義される。
【0039】
【数3】
ステップ510において、TFCについてのRate(レート)TFCは、β値が計算により求められる場合に、求められる。ステップ520において、(RateTFCj−RateTFC)を最小にするTFCが、βセットの演算の基礎として使用される。ステップ530において、近似的なβパラメータは次式を用いて求められる。
【0040】
【数4】
ここで、「quantized」は、次のより高い値に量子化されることを意味する。このケースにおいて、βc,currentは電力オフセットである。
【0041】
【数5】
ここで、「quantized」は、次のより低い値に量子化されることを意味する。このケースにおいて、βd,currentは電力オフセットである。
【0042】
電力オフセットが変更された後に送信アンテナでの出力電力は、インナーループの電力制御手続きによって生成される電力変更を除き、DPCCHの現在のフレームが以前のフレームと同様の電力レベルを維持するように制御される。それゆえ、DPCCHについては、新規のレート整合を伴う最初のスロットである現在のスロットと以前のスロットとの間における電力ステップが存在するであろう。
【0043】
各物理データチャネルごとに決定される電力オフセットは、いずれかの好ましい回路構成をを用いて異なる電力レベルでこれらのチャネル上で情報を送信するために使用することができる。これらの電力オフセットを実装される例示的なデバイスが図6に示されている。図6において、DPDCH1、DPDCH2及びDPCCHの各々は、それぞれミキサ600、610及び620において、それぞれ固有の拡散符号CSPREAD,DPDCH1、CSPREAD,DPDCH2、CSPREAD,DPCCHにより拡散される。図6において、βcは1に仮定される。それゆえ、制御チャネルDPCCHの重み付けは必要とされない。加算器660において他の物理チャネルと加算され、ミキサ670においてスクランブル処理されるのに先立って、DPDCH1は可変ゲイン増幅器630によって調整(増幅)される。増幅器640のゲインは、電力制御ユニット650(例えば、MS110の電力レベルコントローラ29)から搬送される電力制御コマンドと式1に従うゲインファクタによって設定される。β値は、例えば、電力制御ユニット650において受信された電力制御コマンド、すべてのチャネルについてのデータレート、レート整合パラメータ及び信号伝達されたオフセット値に基づいて計算される。DPDCH2の送信電力は、電力制御ユニット640を用いた類似の手法に従って、DPCCHの送信電力からオフセットされる。例えば、BS100から受信された電力制御コマンドは、増幅器680で出力信号を調整するために使用される。
【0044】
図7は、本実施形態に係る送信電力調整方法を示す図である。ステップ700において本方法は開始され、例えばデータチャネルなど、少なくとも第1のチャネルのデータレートが決定される。説明を簡潔にするために、たった一つのチャネルだけを例示する。しかしながら、複数のチャネルが使用されてもよいことは明であろう。ステップ710において、第1のチャネルと、例えば制御チャネルなどの第2のチャネルとの間の電力比は、例えばデータチャネルのデータレートなど決定されたデータレートに基づいて調整される。また、電力比は、符号化レート及びレート整合パラメータの少なくとも一方に基づいて調整されても良い。レート整合パラメータは図5に示された手法に従って計算により求められてもよいし、例えば基地局から受信しても良い。ステップ720において、第1のチャネルの送信電力は、調整された電力比に基づいて調整される。しかしながら、ステップ710ステップ720は簡略化のために分割して説明したが、これらのステップは同時に実行されても良い。すなわち、電力比が調整されるにつれて電力が調整されても良い。ステップ730において、第1及び第2のチャネルの送信電力は、電力制御コマンドに基づいて調整されてもよい。
【0045】
例示的な実施形態によれば、データチャネルと制御チャネルのようなチャネル間の電力オフセットを処理するための技術が提供された。この技術は、信号間の干渉を最小にしつつ十分な送信電力でもって信号を送信することを補償するものである。
【0046】
本願発明の例示的な実施形態によれば、無線フレーム分離ユニットからの出力ビットの数と、レート整合ユニットおいて使用されているレート整合パラメータとに比例するようにDPDCHとDPCCHとの間の電力オフセットを設定することにより、電力オフセットは、トランスポートチャネルのレートに比例することになろう。DPDCHのデータレートが変化すると、DPDCHとDPCCHとの間の出力電力及び振幅比は、例えば移動局などの端末によって決定することのできる手法にしたがて変更される。この方法によれば、電力制御ループと、DPCCHが検出される手法とは、影響されることはない。なぜなら、DPCCHの電力は、TFCの変更に依存しては変更されないからである。同時に、DPDCH上で送信されるデータは、同一のビットエネルギーを用いて送信される。これは、例えばDPDCH上で受信される信号の品質などのパフォーマンスが影響されないことを意味する。
【0047】
上述してきた例示的な実施形態においては、ユーザにはDPCCHが割り当てられ、また、関連するDPCCHについて電力制御コマンドを生成できるようにするためにDPCCHはリファレンスのチャネルとして利用可能であるが、当業者であればこの手法に従ってDPCCHを利用しなくてもよいシステムが存在することを理解できよう。もしDPCCHがユーザに割り当てられない場合は、他のいずれかのチャネル、例えば複数のDPDCHのうちの1つはリファレンスチャネルとして利用できる。
【0048】
本願発明は上述の特定の実施形態に限定されるものではなく、当業者によって設計変更がなされてもよい。例えば、電力オフセットをどのように設定するかを決定する際の基礎情報として利用可能な送信されたフラグを含むリファレンスTFCを使用することもできる。本願発明の技術的範囲は添付の請求の範囲によって確定され、技術的範囲内におけるいずれか及びすべての変更は、技術的範囲に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
本願発明の機能と目的は、添付の図面とともに詳細な説明を読むことによってより良く理解できるであろう。
【図1】 例示的なスペクトル拡散システムについての電力対周波数に関するグラフである。
【図2】 無線通信システムにおいて通信を行う基地局と移動局とを例示した図である。
【図3】 図3は、本願発明を適用できる例示的な通信機を示した図である。
【図4】 図4は、本実施形態に係る例示的な送信処理を示した図である。
【図5】 図5は、オフセットパラメータを決定するための例示的な処理手続きを示した図である。
【図6】 図6は、本願発明に係る送信電力を調整するための例示的な実装回路を示した図である。
【図7】 図7は、本実施形態に係る送信電力を調整するための方法を示した図である。
Claims (14)
- 送信電力制御方法であって、
少なくとも第1のチャネルについてデータレートを決定するステップと、
前記決定されたデータレートに基づいて前記少なくとも第1のチャネルの送信電力を制御するステップと、
前記第1のチャネルのデータレートに基づいて前記少なくとも第1のチャネルと第2のチャネルとの間の電力比を調整するステップと
を備え、
前記調整された電力比を用いて、前記少なくとも第1のチャネルの送信電力を制御することを特徴とする送信電力制御方法。 - 前記第1のチャネルはデータチャネルであって、前記第2のチャネルは制御チャネルであることを特徴とする請求項1に記載の送信電力制御方法。
- 前記少なくとも第1のチャネルと前記第2のチャネルとの間の電力オフセットが前記第1のチャネルのデータレートに比例するように前記電力比を調整することを特徴とする請求項1に記載の送信電力制御方法。
- 前記電力比は符号化レートに基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の送信電力制御方法。
- 前記電力比はデータ送信レートに基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の送信電力制御方法。
- 前記電力比はレート整合パラメータに基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の送信電力制御方法。
- 電力制御コマンドを受信するステップと、
前記電力制御コマンドに基づいて前記送信電力を調整するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の送信電力制御方法。 - 送信電力制御装置であって、
少なくとも第1のチャネルについてデータレートを決定する決定手段と、
前記決定されたデータレートに基づいて前記少なくとも第1のチャネルの送信電力を制御する制御手段と、
前記第1のチャネルのデータレートに基づいて前記少なくとも第1のチャネルと第2のチャネルとの間の電力比を調整する調整手段と
を備え、
前記制御手段は、前記調整された電力比を用いることを特徴とする送信電力制御装置。 - 前記第1のチャネルはデータチャネルであって、前記第2のチャネルは制御チャネルであることを特徴とする請求項8に記載の送信電力制御装置。
- 前記少なくとも第1のチャネルと前記第2のチャネルとの間の電力オフセットが前記第1のチャネルのデータレートに比例するように前記電力比を調整することを特徴とする請求項8に記載の送信電力制御装置。
- 前記電力比は符号化レートに基づいて調整されることを特徴とする請求項8に記載の送信電力制御装置。
- 前記電力比はデータ送信レートに基づいて調整されることを特徴とする請求項8に記載の送信電力制御装置。
- 前記電力比はレート整合パラメータに基づいて調整されることを特徴とする請求項8に記載の送信電力制御装置。
- 電力制御コマンドに基づいて前記第1のチャネルの送信電力及び前記第2のチャネルの送信電力を調整する調整手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の送信電力制御装置。
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