JP4480521B2 - 風力エネルギーによる貯水池等の曝気循環装置 - Google Patents

風力エネルギーによる貯水池等の曝気循環装置 Download PDF

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Description

この発明は、貯水池や湖沼などの湖水中における水温の均一な温水からなる循環混合状態の浅層を形成するための風力エネルギーによる貯水池等の曝気循環方法及び装置に関するものである。
従来から湖水中に散気する装置は知られている(例えば、特許文献1参照。)。この既存の技術は、地上に設置したコンプレッサからなる給気源からパイプ、弁等を介して散気部材に空気を供給し、この散気部材から水中に散気するものである。
しかし、この既存の技術は、次のような問題点がある。すなわち、
(1)電力コストの問題
貯水池においては、富栄養化現象あるいは濁水長期化現象の水質問題が生じることがある。曝気循環設備はこういった問題への有効な対策手法であるが、圧縮空気を得るための電気代が必要であり、管理コストを圧迫している。
(2)1基あたりの空気量に関する問題点
管理の効率化のためには、圧縮空気を複数管に均等分配できると、単位空気量あたりの循環量が増加することから有効である。しかしながら、一般にこのような圧縮空気の複数管への分配技術は存在せず、実用上、圧縮空気の安定した均等分配は難しいことから、1吐出装置、1コンプレッサーとなり、施設規模が大きくなりがちであり、入力エネルギーに対する湖水の循環量の比率が小さくなる。
(3)風力エネルギー利用の問題点
貯水池における水質問題の発生の多くは成層の形成である。成層は太陽熱という自然エネルギーによって形成されるものであることから、同じく自然エネルギーである風力を利用して、成層破壊、すなわち湖水の鉛直混合ができると好ましい。自然エネルギーを利用すればコスト低減に有効であるが、たとえば風力発電でも、一度電力にエネルギーを変換することからエネルギー変換効率が低くなりがちである。一般の風力発電システムは、増速機等の機械・構造的な拘束条件によって、カットイン風速よりも弱い場合には発電できなくなる。
特許第2590425号公報
そこでこの発明は、前記従来のものの問題点を解決し、従来必要とした圧縮空気を得るための電気代を不要とし、カットイン以下の風速においても風力エネルギーにより圧縮空気を得ることができ、複数の分配管に圧縮空気を均等に分配して効率よく貯水浄化を行うことができ、水温の均一な温水からなる循環混合状態を水面から水深20m程度の浅層に形成することができ、前記混合循環によって藍藻類の増殖を抑制又は出水時に河川から流入する濁水を該浅層下部に導くことによって、浅層部の清澄水を保持して濁水長期化現象を抑制することができる風力エネルギーによる貯水池等の曝気循環装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、この発明は、風車によって風力エネルギーから圧縮空気を得る風車設備と、前記風車設備で発生させた圧縮空気量の時間的な平滑化を行うための圧縮空気貯蔵用レシーバータンクと、前記レシーバータンクから送風された圧縮空気を複数の送気管に均一に分配する空気分配装置と、前記空気分配装置からの圧縮空気を湖水中の複数の吐出口から吐出して湖水の循環を行う曝気装置とを装備し、前記曝気装置が、湖水中に所定の間隔をおいて固定された複数の送気管とそれぞれ接続された縦向き管と、これら縦向き管の上端とそれぞれの下端がヒンジによって揺動自在に接続された揺動管と、これら揺動管の上端間にわたりヒンジによって揺動自在に接続された横向き管とを有し、横向き管は所定ピッチ毎に前記吐出口としての散気孔が形成されているとともに、貯水池の水面に浮かぶフロートに繋がれて前記ヒンジによって水位に追従可能に吊り下げられていることを特徴とする。
この発明は、前記のように風車によって風力エネルギーから圧縮空気を得る風車設備と、前記風車設備で発生させた圧縮空気量の時間的な平滑化を行うための圧縮空気貯蔵用レシーバータンクと、前記レシーバータンクから送風された圧縮空気を複数の送気管に均一に分配する空気分配装置と、前記空気分配装置からの圧縮空気を湖水中の複数の吐出口から吐出して湖水の循環を行う曝気装置とを装備し、前記曝気装置が、湖水中に所定の間隔をおいて固定された複数の送気管とそれぞれ接続された縦向き管と、これら縦向き管の上端とそれぞれの下端がヒンジによって揺動自在に接続された揺動管と、これら揺動管の上端間にわたりヒンジによって揺動自在に接続された横向き管とを有し、横向き管は所定ピッチ毎に前記吐出口としての散気孔が形成されているとともに、貯水池の水面に浮かぶフロートに繋がれて前記ヒンジによって水位に追従可能に吊り下げられている構成からなるので、従来の貯水池や湖沼など貯水域内の湖水中の曝気循環装置では不可能であった、コンプレッサを駆動する電力が確保できない状況においても、富栄養化現象あるいは濁水長期化現象を抑制することができる。したがって、従来必要とした圧縮空気を得るための電気代を不要とし、複数の分配管に圧縮空気を均等に分配して効率よく湖水の循環を行って循環混合状態の浅層を形成し、濁水長期化現象を抑制することができる効果がある。さらに、前記のように効果を陸地側と貯水池側にそれぞれ設置した簡素な設備により効率よく達成することができるとともに、設備費・補修費・維持費等も安価に抑えることができる。
この発明の一実施の形態を、以下に説明する。
図1.Aは、一実施の形態である風力エネルギーによる貯水池等の曝気循環装置の左半部(陸地側)を示す概略図、図1.Bは、同右半部(貯水池側)を示す概略図である。図において、1は風車設備、2は圧縮空気貯蔵用レシーバータンク、3は空気分配装置、4は曝気装置を示す。
風車設備1は、風車によって風力エネルギーから圧縮空気を得るもので、本例で2基設置されているように複数基、例えば管理所より風速が大きいと思われる貯水池のダムの左岸及び/又は右岸に設置される。図2に図1.AのA部拡大詳細を示すように、風車設備1は、所定の高さを確保して立設された中空円錐状のタワー部5と、該タワー部5の頂部に水平方向に旋回可能に支持され、複数の大型ブレードからなる風車6を有したナセル部7とから構成され、該ナセル部の風車6によって風力を回転駆動力に変換してこの回転駆動力をタワー部5に伝達し、このタワー部5は、ナセル部7から伝達された回転駆動力を用いて圧縮空気を生成し、この生成した圧縮空気をレシーバータンク2に配管を介して供給している。
ナセル部7は、タワー部5の中心線を旋回中心として、図示しない支持機構によって旋回可能に支持されており、風を受けて回転する風車6の回転駆動力を、タワー部5に伝達するように構成されている。
すなわち、ナセル部7には、ロータ軸8が水平に軸支され、その外側に突出した先端に風車6が取り付けられている。ロータ軸8は風車6により取得した風力エネルギーで回転する。ロータ軸8の中間部には傘歯車9が固着され、この傘歯車9と歯合する傘歯車10がその下方のタワー部5から垂直に延びる回転軸11の上端に固着されている。したがって、ロータ軸8の回転駆動力は、傘歯車9,10によって、水平方向から垂直方向のタワー軸方向に90度向きを変えて、タワー部5の回転軸11に伝達される。
12は、傘歯車10よりも伝達経路における下流側となる回転軸11上に設けられたクラッチであり、風車設備1のメンテナンス時などの任意の場合には、このクラッチ12を遮断動作させて、回転駆動力の伝達経路としてクラッチ12よりも下流側に位置した回転軸11に回転力を伝達させないようにしている。13は、ロータ軸8の後端に入力軸が接続されたオイルポンプであり、このオイルポンプ13によって、ナセル部7の旋回駆動用の動力となる油圧を発生するようにしている。
タワー部5には、変動する風向を検知してナセル部7の水平方向の向きを最適に調整するナセル制御部15と、ナセル部7から回転軸11に伝達された回転駆動力を用いて圧縮空気を生成する圧縮空気製造部16とが収容されている。
すなわち、タワー部5は、その内部が高さ方向に複数の小室に区画され、これらの小室を貫通し、かつタワー部5の中心線に揃えて垂直方向に配設された回転軸11が、回転可能に軸支されており、これら小室のうち最上段の小室には、ナセル制御部15が収容され、このナセル制御部15を収容した小室よりも下方の小室には、それぞれ回転軸11によって回転駆動力が入力され圧縮空気を発生する複数のコンプレッサが収容され、これらのコンプレッサによって、圧縮空気製造部16が構成されている。
ナセル制御部15は、ナセル旋回機構として、ロータ軸8の後端に接続され回転力が入力されて油圧を発生するオイルポンプ13と、このオイルポンプ13が生成した油圧が配管17を介して供給されモータ出力軸を所定に回転駆動する油圧モータ18と、配管途中に設けられ指令信号に基づき油圧供給の配管17を所定に切換えて油圧モータ18の発停止および正逆転動作を制御する電磁弁19とを有している。油圧モータ18は、そのモータ出力軸に固着されたギア21が、ナセル部7の基部に一体的に固定されたギア22に噛合され、油圧モータ18自体は、タワー部5側に固定されている。また、ナセル制御部15は、前記のナセル旋回機構の制御機構として、卓越風向を把握する風向検知器25と、この風向検知器25の風向検知信号が入力される制御回路26とを有している。制御回路26は、風向検知信号に基づき所定に判断して、電磁弁19の切換え動作を所定に制御する指令信号を出力するようにしている。すなわち、例えば制御回路26は、予め記憶した処理プログラムに従って、風向検知信号の入力状態に基づいて、風向きの変化が所定時間継続したり、過去の風向きの変化状況を記憶して、風向きの変動の動向を把握したりして、ナセル部7を旋回させるかを判断し、風向きの変動が激しい場合には、ナセル部7を無駄に動かすことなく、風力を効率的に利用するようにしている。
すなわち、風向検知器25は、ナセル部7の上部で風車6に対して後側に設置され、風車6の後流であるねじれた気流の影響を受けにくくし、かつ風車6を介することなく直接、向きが変化した卓越風が当たってその風向きを捕捉できるようにしている。また風向検知器25は、図2(A),(B)に示すように、ナセル部7に垂直に立設された支持部28と、この支持部28の上端に旋回可能に支持された検知器本体29とを有している。検知器本体29は、略長箱状に形成され、その前部に小型の風車30が配置されている。したがって、検知器本体29は、その前部を風向きに向けて自律的に旋回する。また検知器本体29の内部には、検知器本体側に固定されてナセル部7に対して検知器本体29とともに旋回するスイッチ作動部材31と、平面視におけるスイッチ作動部材31の両脇に、所定の間隙距離を確保して、支持部側に固定されて配置された2つのリミットスイッチ32とを有している。スイッチ作動部材31は、検知器本体29の前後方向に向けて検知器本体側に固定されており、また2つのリミットスイッチ32の出力線は、それぞれ制御回路26に接続されている。
したがって、風向検知器25では、ナセル部7の向きと卓越風の向きとが異なったときには、検知器本体29が旋回してその前後方向を卓越風の向きに向けるので、スイッチ作動部材31とリミットスイッチ32との相対的な位置関係が変更され、スイッチ作動部材31によって、卓越風の向きに対応した片方のリミットスイッチ32がオン操作される。したがって、このリミットスイッチ32のオン信号が、ナセル部7に対する卓越風向の向きを示した風向き検知信号として制御回路26に入力される。この風向き検知信号に基づき、制御回路26が所定に判断して、卓越風の向きにナセル部7の向きを一致させるための指令信号を生成し、この指令信号を電磁弁19に出力する。この指令信号が入力された電磁弁19は、油圧モータ18への油圧供給用の配管17を所定に切換える。このため、油圧モータ18はそのモータ出力軸を所定方向に回転し、このモータ出力軸のギア21に噛合されたナセル部側のギア22が回転駆動されて、ナセル部7が所定に旋回される。この結果、ナセル部7の向きが卓越風の向きに揃えられる。他方、このようなナセル部7の旋回に伴い、風向検知器25では、片方のリミットスイッチ32のオン操作が解除され、風向き検知信号の出力が停止される。
なお、スイッチ作動部材31とリミットスイッチ32との間には、予め所定量の間隙を確保しているので、ナセル部7の向きと卓越風の向きとが僅かに異なった場合には、検知器本体29が旋回しても、いずれのリミットスイッチ32もオン操作されないので、前記したナセル部7の向きは安定して維持される。すなわち、この間隙距離によって、センサとしては不感帯域であり、ナセル部7の向きを変更しない許容角度が予め所定に設定されている。
また、上記のナセル制御部15が有した電気的な構成である電磁弁19、リミットスイッチ32および制御回路26は、該制御回路の近傍に配置されたバッテリ34に配線接続され、このバッテリ34から配線を介して給電されている。またこのバッテリ34は、太陽光を電力に変換するソーラパネル35によって充電するように構成されており、このソーラパネル35は、その太陽光パネル面を太陽側の上方に向けて、ナセル部7の上部に設置されている。
圧縮空気製造部16は、回転軸11に設けられた比較的に小さな増速比が設定された遊星増速機37と、各室ごとに複数設置され、回転軸11から回転駆動力が所定に入力されて圧縮空気を生成するコンプレッサ38とを有し、風速レベルの大きさに応じて、回転駆動力を入力するコンプレッサ38の稼動基数を増減している。
遊星増速機37は、遊星ギア機構を用いて構成され、この遊星ギア機構が有したギア同士の反力を軸中心方向に向かわせて、遊星増速機37を強固に保持する部材を不要にし、省スペース化や小型軽量化を図っている。また遊星増速機37は、増速比として値が3などのように、比較的に小さな増速比が設定され、回転駆動力の伝達経路における遊星増速機37よりも下流側に接続されるコンプレッサ38に対して、最低限に必要な回転数を確保している。すなわち、空気を圧縮して圧送するコンプレッサ38として、その圧縮動作時に、突出圧力不足で、コンプレッサ側から空気がリークしてしまうことを防ぐために、最低回転数が予め設定されている。したがって、一般的な風力発電設備のように、100などの増速比を設定した増速機を用いていないので、風力利用設備として機能を停止するカットイン風速が生じることが解消される。
これらのコンプレッサ38は、スクロール型のコンプレッサとされ、各コンプレッサは、それぞれの入力軸を回転軸11に平行にして、各小室ごとに回転軸11の回りに所定数が、小室側に固定して設置されている。また各コンプレッサの圧縮空気の吐出口は、それぞれの配管を介して単一の送気管40に集合され、この送気管40はレシーバータンク2に接続されている。なお、各コンプレッサ38の吐出口には、図示しない逆止弁が設けられ、それぞれの逆止弁によって、あるコンプレッサが稼動を停止している場合に、そのコンプレッサの吐出口に、送気管40からの圧縮空気が逆流することを防止している。
各室に対応した回転軸11の箇所には、大径の駆動ギア41が固着されており、この駆動ギアに噛合されたヘリカルギア42を介して各コンプレッサの入力軸が接続されている。またヘリカルギア42と入力軸との間には、図示しない遠心クラッチが介装されており、これらの各コンプレッサ38ごとに、それぞれの遠心クラッチは、クラッチとして異なる接続条件が設定されている。すなわち、例えば所定数のコンプレッサ38を1グループとして、これらの各グループごとに、それぞれ低い回転数の接続条件から順次高い回転数の接続条件までが予め所定に設定されている。したがって、まず低い回転数が設定されたグループの遠心クラッチが接続動作して、このグループのコンプレッサ38が稼動し、次に回転軸11の回転数の上昇に応じて、順次、この上昇した回転数の接続条件が設定された遠心クラッチが接続動作して、このグループのコンプレッサ38が稼動数に追加される。このため、回転軸11の回転数が低い場合には、コンプレッサの稼動数が少なく、高い場合には、コンプレッサの稼動数が多く制御される。このようにして、風速レベルの増大、減少に応じて、コンプレッサの稼動基数が段階的に増加、減少するようにしている。
なお、45は、回転軸11における各室の中間箇所に介装された軸継ぎ手の一種であるカップリングであり、このカップリング45によって、回転軸11を直線状に整列させており、タワー部5全体がある程度たわんだり、回転軸11に対する回転負荷としてのコンプレッサ38の接続箇所が変動したりしても、単一の回転軸11として回転運動を安定して継続できるようにしている。
圧縮空気貯蔵用レシーバータンク2は、風車設備1で発生させた圧縮空気量の時間的な平滑化を行うためのもので、コンプレッサ38に必須な施設である。換言すると、風車設備1によって生成する圧縮空気量は、風速の短期的な変動によって変動するが、このような変動を平滑化して、平均的に安定した風量にするための設備である。装置の構造としては、図3に示すように風車設備1より送風されてきた時間的な変動の大きい圧縮空気を貯留するレシーバータンク2を主体に構成され、このレシーバータンク2から空気分配装置3へ送風する送気管51を有している。
レシーバータンク2は、所定のタンク容量が確保されて密閉された耐圧容器であり、略長円筒状に形成され、所定の台座上に横向きに支持され、安定して設置されている。このレシーバータンク2の一端側には、圧縮空気製造部16からの送気管40が接続され、他端側には、空気分配装置3に至る送気管51が接続されており、これらの両者の空気流動が互いに干渉することを防止して、少なくとも、送気管51に安定した送気流量を確保するようにしている。また、レシーバータンク2のタンク容量は、送気管51を介したレシーバータンク2からの排出流量と比較して、この流量を充分に安定できる大きさが確保されている。なお、52は、レシーバータンク2内の空気圧が、所定圧力以上になるとタンク内を大気側に開放してタンク内圧力を低下させる安全弁である。
レシーバータンク2から送給される圧縮空気の供給経路は、空気分配装置3か、冬季発電部55かのいずれかを、択一的に選択して供給可能に構成されている。すなわち、空気分配装置3への送気管51の所定箇所には、第1の切替弁56が設けられており、この送気管51における第1の切替弁56よりも上流側の箇所は、配管57を介してエアーモータ58が接続され、この配管上には、第2の切替弁59が設置されている。冬季発電部55は、圧縮空気が供給されてそのモータ出力軸を回転駆動するエアーモータ58と、このモータ出力軸に入力軸が接続され、この入力軸に入力された回転駆動力を用いて電力を発生する発電機61と、この発電機が発生した電力を所定に昇圧して充電するバッテリ62とを有している。
したがって、レシーバータンク2から空気分配装置3への圧縮空気の供給を選択した場合には、第1の切替弁56を開放し、第2の切替弁59を閉止することにより、レシーバータンク2から空気分配装置3に至る経路が確保され、空気分配装置3に圧縮空気が供給される。他方、冬季発電部55への圧縮空気の供給を選択した場合には、第1の切替弁56を閉止し、第2の切替弁59を開放することにより、レシーバータンク2から冬季発電部55に至る経路が確保され、冬季発電部55に圧縮空気が供給され、冬季発電部55によって発電およびバッテリ充電が行われる。したがって、湖水が自然に循環している冬季には、曝気循環を実施する必要がないことから、余剰となる圧縮空気を用いて発電を行うことによって、冬季の風力エネルギーを有効活用できる。
装置の特性としては、レシーバータンク2で貯留する対象が、圧縮性流体である空気であることから、レシーバータンク2の大きさを小型化できる。このため、レシーバータンクの設置に必要なスペースの効率化が可能である。また実用上は、レシーバータンク内の圧力を1〜2MPaで空気を貯留し、湖水へ供給する曝気用の空気には、0.4MPaを確保すれば十分であると考えられる。
空気分配装置3は、レシーバータンク2から供給された圧縮空気を用いて、同じ風量を安定して複数管に送風する、つまり複数の送気管65に対して、均等な空気量を送気するようにしている。
空気分配装置3は、図4に示すように、複数のエアーモータ66を、互いにモータ出力軸が平行となるように所定間隔をおいて並列に配置し、隣りのエアーモータ同士のモータ出力軸を無端ベルト67で接続しており、すべてのエアーモータ66が均一に同一の回転出力動作を行うように構成されている。すなわち、レシーバータンク2からの単一管を、分岐して複数の分配管に接続し、それぞれの分配管に同じ仕様であり、1回転あたりの排出容積の等しいエアーモータ66に接続している。すなわち、容積型の流体機械として、同一の性能を有したエアーモータ66が用いられている。隣接したエアーモータ同士は、前記の無端ベルト67やカップリングによってモータ出力軸が連結されている。レシーバータンク2より送風された圧縮空気は、これらのエアーモータ66を通じて複数の送気菅65に送られる。このとき、単に分岐した配管によって圧縮空気が送給された場合には、分岐箇所から特定の到達箇所に至るまでの配管経路の長さや形状等の様々な要因によって、抵抗が経路毎に異なっているので、到達した圧縮気体の圧力あるいは風量は不均一にならざるを得ない。しかしながら、エアーモータ66を通じて本装置から送気されるときには、容積が等しい、複数のエアーモータ66のモータ出力軸がすべて連係しており、すべてのエアーモータ66の出力動作としての回転数が強制的に同一に揃えられているので、これらのエアーモータ66から吐出される単位時間当たりの各空気の流量、つまり各圧縮空気の量は、同様にすべて同一に揃えられ、等しくなる。なお、圧縮空気のエアーモータ66への逆流を防ぐために、エアーモータが有した突出口には、逆止弁68および圧力調整弁69が配置されている。70は送気菅65に設けられた電磁弁である。
さらに、各配管の間では、エアーモータ66から水中への吐出口に至るまで配管経路としての長さや、経路全体としての形状が異なっているので、空気流路として抵抗の違いが生じ、この抵抗差によって、管内圧力に差が生じる。しかしながら、本装置の目的は、貯水池等の湖水中から吐出する空気量を、等しくすることである。管内圧力が均一でなくても、単位圧力に換算すれば同一の風量となり、水中に放出されればその水深に応じた水圧において同一の空気放出量に揃えられることから、複数配管内で圧力差が生じても問題はなく、むしろ当然のこととなる。
ただし、複数の配管内での抵抗力が著しく違う場合には、ある特定のエアーモータ66からの排出管内の圧力が高まり、管が破損するおそれがある。これは、本装置においては、例えば、ある1つのエアーモータ66の排出側の圧力が高まった場合においても、複数のエアーモータの出力軸を連動させているので、圧力上昇による負荷に応じてこの1つのエアーモータの出力軸の回転数が減少することなく、強制的にこの回転数による稼動が継続するためである。極端な場合には、ある任意のエアーモータからの排出先の管が詰まった場合にも、エアーモータの稼動が継続されるので、きわめて危険な状態となる。
そこで、各エアーモータの排気経路の途中に、並列的に配管を接続し、この配管上に圧力調整弁69と逆止弁68とを配設した構成を設けて、前記の事態が生起することを未然に防止している。これは、上に述べた場合においも、排気管系統の耐圧限界を管内の圧力が超えさせないための装置である。すなわち、この装置は、排気経路の所定箇所に、配管を介して順次、圧力調整弁69および逆止弁68を配設した構成とされており、この逆止弁によって、逆止弁から排気経路に至る経路を大気側に連通させずに閉止する一方、圧力調整弁には、耐圧限界に応じた予め所定の圧力値が設定され、排気管内の圧力がこの設定圧力値を超えた場合に、逆止弁の逆止め動作を停止させ、排気管内を大気中に接続するようにしている。したがって、上に述べたように、排気管において何らかの理由により抵抗が高まり、管内の圧力が所定圧よりも上昇した場合には、圧力調整弁が逆止弁を開放し、当該エアーモータからの排出経路である排気管内の圧力を大気側に逃がすことができる。この結果、空気分配装置特有の問題である、特定のエアーモータ排気管における高圧状態となることを回避でき、これにともなう管の破損を未然に防止することができる。
曝気装置4は、前記空気分配装置3からの圧縮空気を湖水中の複数の吐出口から吐出して湖水の循環を行うもので、特に、季節などによる貯水量の変化によって水位が変動しても特定の水深を維持して、この水深に保持された複数の吐出口から水中に圧縮空気を吐出することによって、特定の水深から上部に水温勾配が均一で温水の浅層を形成して藍藻類の増殖を抑制すること、あるいは濁水の浅層への流入を防止して貯水池の濁水長期化現象を防止することを目的とするものである。複数(図中では、20mピッチに散気孔を10箇所設置)の散気孔を、水位の変動に応じて特定の水深に安定して定置させ、特定の水深から常に安定して圧縮空気を吐出する。
曝気装置4は、図1.Bに示すように、水底部に、所定の間隔をおいて垂直方向に固定して設置された縦向き管73と、貯水池の水面に浮揚したフロート75に水平姿勢を確保して吊架されその長手方向に多数の散気孔76を有した横向き管77と、これらの縦向き管と横向き管とにヒンジ78を介してその両端が接続されて両管73,77を連通するとともに揺動可能に構成された揺動管79とを有し、縦向き管73に送気管65を介して送気された曝気用の空気を、貯水池の水面の水位の変動に拘わらず、常に水面から一定の深度を維持して吐出口としての散気孔76から放出するように構成されている。
すなわち、縦向き管73は、貯水池の曝気箇所の水底部に、横向き管77の長さに応じた所定の間隔をおいて、1対が固定して設置され、ワイヤ81などによって垂直方向の姿勢を保持するように強固に固定されている。したがって、縦向き管73は、揺動管79を介して接続されたフロート75および横向き管77が、水位の変動などに応じて位置変更しても、この変更した位置は、所定の範囲内に留まるように保持している。各縦向き管73は、それぞれ専用の送気管65に接続され、空気分配装置3から圧縮空気が供給されている。
横向き管77は、所定長さに形成され、その両端が、それぞれ同一長さのワイヤ83等でフロート75に繋がれており、このフロートは、少なくとも、横向き管77および揺動管79を水面から所定深度に保持する浮上体として充分な浮力が確保されている。すなわち、横向き管77は、例えば数十m〜数百mの長さのもの(本例では200m)からなり、その長さ方向には所定ピッチ(本例では20m)毎に散気孔76が複数個形成され、ワイヤ83等の長さは、数十m(本例では20m)の長さが確保されている。したがって、横向き管77は、ほぼ水平に吊り下げられ、水面から所定水深を維持している。
揺動管79は、その下端が縦向き管73の上端に、その上端が対応した横向き管77の一端に、可撓性の管体であるヒンジ85を介して、連通接続されている。したがって、水面の水位が変動して、この変動した水位に応じて水底からの距離が変化する横向き管77と、水底に固定された縦向き管73との相対距離が変化しても、これに連動して揺動管79の揺動姿勢が変更され、この姿勢変更によって距離の変化分を吸収できるので、横向き管77を所定深度で水平姿勢に維持しながら、揺動管79を介した縦向き管73と横向き管77との連通状態を保持できる。
なお、これらの各管73,79,77やヒンジ78,85は、それぞれ材質や管壁の厚さなどが所定に選択されており、その設置された深度に応じて、水圧に抗して空気通路の管体として断面形状を変形させない剛性強度が確保されている。また、フロート75は、横向き管77の両端位置と対応して2つ設けたが、これは一例であって、これ以外の中間箇所に追加して設けてよい。
したがって、曝気装置4によれば、各送気管65に、空気分配装置3によって、均等に空気量が確保された曝気用の圧縮空気が供給されると、この空気が、縦向き管73、ヒンジ78、揺動管79、ヒンジ85を、順次通過して横向き管77に到達し、フロート75に吊架されて一定の深度に保持された横向き管77に形成した複数の散気孔76から水中に放出される。貯水池は一般に水位が変動するが、散気孔部は負の浮力を有しているので、フロート75から垂下しており、水位変動が生じても水深は維持される。水位変動が生じた場合でも、曝気装置4が有した散気孔76より下側の構成が、ヒンジ85,78を介して湖底に固定されているので、フロート75の位置が大きくずれることなく、一定の範囲内に留まる。
この曝気循環装置は、前記のようであって、風車設備1において風力エネルギーから得た圧縮空気を送気管40からレシーバータンク2へ送って貯蔵するとともに、圧縮空気量の時間的な平滑化を行い、さらにレシーバータンク2から送気管51を経て空気分配装置3へ送って、ここで圧縮空気を複数の送気管65に均一に分配した後、均一分配された圧縮空気を、さらに送気管65を経て曝気装置4へ送って、ここでフロート75に吊られた横向き管77の複数の散気孔76から水中に放出し、これにより貯水池の湖水の循環を行い、富栄養化現象あるいは濁水長期化現象を抑制するものである。
前記のような曝気循環装置においては、貯水池の湖水の循環量は、吐出空気量の1/2乗に比例することから、単位空気量あたりの循環量、すなわち循環効率は吐出空気量が少ない方が効率よい。風力曝気の場合には、基本的には風車設備1は風速によって発生風量が変動する圧縮空気製造部であることから、従来の圧縮空気製造装置と曝気循環装置とが1対1の関係の場合には、風速が強いときに、効率の低下を引き起こす。これは、風速が強くない場所で風力曝気を行う場合には、風力という限りあるエネルギーを前提にして風力曝気を行う上では、効率の悪化や、効果が不十分になることにつながるおそれがある。上記2点を組み合わせることによって、維持管理費を、ダム付近に存在する風という運動エネルギーから圧縮空気に変換して、さらには限られた空気量において最大限の効果を発揮するために、圧力にかかわらずこれを均等分配して個別の吐出装置からの吐出量を低下することによって、単位空気量あたりの湖水循環量を向上させ、確実に湖水の循環を行って循環混合状態の浅層を形成し、貯水池の富栄養化現象あるいは濁水長期化現象の抑制対策を行うものである。
前記に示した曝気循環装置はあくまでも一例であって、図示したものに限定されるものではない。曝気循環装置が設置されるところも必ずしも貯水池でなくともよく、湖沼であっても水深が深く、例えば平均水深10m以上ならばよい。また、図2に示す風車設備1の具体的な構成や、図1.Bに示す曝気装置4の具体的な構成も好ましい一例であって、同様な作用効果を奏するものであれば他の構成に代えてもよい。
この発明の一実施の形態である曝気循環装置の左半部(陸地側)を示す概略図である。 同右半部(貯水池側)を示す概略図である。 (A)は図1.AのA部拡大詳細図、(B)は(A)の矢示Bの部分図、(C)は電磁弁の詳細図である。 レシーバータンク廻りの詳細図である。 空気分配装置の詳細図である。
符号の説明
1 風車設備
2 レシーバータンク
3 空気分配装置
4 曝気装置
5 タワー部
6 風車
7 ナセル部
15 ナセル制御部
16 圧縮空気製造部
40,51,65 送気管
73 縦向き管
75 フロート
76 散気孔(吐出口)
77 横向き管
78,85 ヒンジ
79 揺動管

Claims (1)

  1. 風車によって風力エネルギーから圧縮空気を得る風車設備と、前記風車設備で発生させた圧縮空気量の時間的な平滑化を行うための圧縮空気貯蔵用レシーバータンクと、前記レシーバータンクから送風された圧縮空気を複数の送気管に均一に分配する空気分配装置と、前記空気分配装置からの圧縮空気を湖水中の複数の吐出口から吐出して湖水の循環を行う曝気装置とを装備し、前記曝気装置が、湖水中に所定の間隔をおいて固定された複数の送気管とそれぞれ接続された縦向き管と、これら縦向き管の上端とそれぞれの下端がヒンジによって揺動自在に接続された揺動管と、これら揺動管の上端間にわたりヒンジによって揺動自在に接続された横向き管とを有し、横向き管は所定ピッチ毎に前記吐出口としての散気孔が形成されているとともに、貯水池の水面に浮かぶフロートに繋がれて前記ヒンジによって水位に追従可能に吊り下げられていることを特徴とする風力エネルギーによる貯水池等の曝気循環装置。
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