JP4480294B2 - スパークプラグの取付構造及びスパークプラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダーヘッドに形成されたプラグホールにスパークプラグを組付けるにあたり、プラグホールに対してねじ込む必要がないスパークプラグと、その取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関における混合気への着火源として使用されるスパークプラグ10は、例えば図10に示すように、軸状の中心電極3と、その周囲を取り囲む絶縁体2と、その絶縁体2を保持する主体金具1とから構成される。主体金具1は、プラグ座面13が先端側(火花放電ギャップgの形成される側)に形成されたフランジ部11と、このプラグ座面13から軸線O方向先端に延びる先端部12とを有する。この先端部12の先端面には、中心電極3と対応して火花放電ギャップgを形成する接地電極4が結合され、結合部(接地電極結合部)17を形成している。さらに、この先端部12の外周には雄ネジ12aが形成されている。また、フランジ部11の後端側にはカシメ部16、六角部15、カシメ溝部14が形成されており、先端部12の外周には雄ネジ12aが形成されている。
【0003】
ここで、絶縁体2を詳細にみると、コルゲーション2cが形成された頭部2bと、最も径大なダイヤ部2eと、このダイヤ部2eよりも径小の中胴部2gと、最も先端に位置する脚長部2iとから構成されている。そして、一般に、脚長部2iと中胴部2gとの接続部分にあたる係止面2hは、主体金具1の内周面に内向きに突出した金具側係合部18(詳細には絶縁体を係止する面)に、パッキン51を介して係止される。この絶縁体2の係止面2hは、金具側係合部18とパッキン51を介して密着し、絶縁体2と主体金具1との間の気密を保つとともに、中心電極3及び絶縁体2の脚長部2iに流入する熱を、絶縁体2、パッキン51、金具側係合部18、先端部12(雄ネジ12a)を通じて、次述するシリンダーヘッドに放散する主要な経路の一部となる。
【0004】
そして、このようなスパークプラグ10は、内燃機関のシリンダーヘッドに取付けられて使用に供されることになる。スパークプラグ10をシリンダーヘッドに取付けるに際しては、シリンダーヘッドに形成されたプラグホールにスパークプラグ10を挿入し、主体金具1の六角部15にプラグレンチをあてがい、所定のトルクにて、プラグホールに形成された雌ネジに対し主体金具1の先端部12に形成された雄ネジ12aをねじ込むことで取付けが行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、スパークプラグ10を雌ネジが形成されたプラグホールの中心軸に沿って、その周りに正確に回転させた際には、両者は問題なく締結される。しかし、スパークプラグ10がプラグホールの中心軸から傾いた状態で、スパークプラグ10を回転されると、雄ネジ12aと雌ネジとが正しく噛み合わずにいわゆるカジリ状態となる。そのために、雄ネジ12aまたは雌ネジが損傷し、極端な場合には燃焼室内からの燃焼ガスの吹き抜けを招き、主体金具1の先端部12や中心電極3等が高温になり、プレイグニッション(過早点火)を生じたり、電極の溶損を生じたりするおそれがある。
【0006】
そこで、主体金具1の先端部12に雄ネジ12aを形成せず、さらにプラグホールに雌ネジを形成せずに、プラグホールに対してスパークプラグ10(先端部12)を遊嵌状に挿入可能とし、別途プラグ固定具等でスパークプラグ10をシリンダーヘッドに固定することが考えられる。但し、従来では、絶縁体2や中心電極3、接地電極4から主体金具1に流入する熱は、その先端部12の雄ネジ12aから、雌ねじを通じてシリンダーヘッドに放散できていた。しかしながら、先端部12に雄ネジ12aを有さない構成では、先端部12とプラグホール内壁面との間に隙間(クリアランス)が生ずるために、熱の移動が困難となりがちである。そのために、中心電極3の温度が上昇し易く、プレイグニッションを生じたり、電極の溶損を招いたりするおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、シリンダーヘッドに形成されたプラグホールに取付け容易で、しかも熱引きが良好で耐熱性の良好なスパークプラグ、及びスパークプラグとプラグホールとの取付構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段、及び発明の効果】
上記課題を解決するための本発明のスパークプラグの取付構造は、軸線方向に延びる中心電極と、中心電極を自身の先端側に配置して径方向周囲を取り囲む絶縁体と、絶縁体の径方向周囲を取り囲んで当該絶縁体を保持するとともに、先端側にプラグ座面を備えるフランジ部とこのフランジ部のプラグ座面から軸線方向先端側に延びる先端部とを有する主体金具とを備えるスパークプラグと、シリンダーヘッドに形成されるプラグホールとの取付構造であって、
主体金具の先端部は、プラグ取付用雄ネジを有することなく外周面略円筒状に形成されている一方、プラグホールは、この主体金具のフランジ部及び先端部にそれぞれ対応するフランジ対応部及び先端対応部を備えており、主体金具の先端部の外径をφd(単位:mm)、プラグホールの先端対応部の孔径をφD(単位:mm)としたときに、φD−φd≦0.15の関係を満足することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のスパークプラグは、軸線方向に延びる中心電極と、中心電極を自身の先端側に配置して径方向周囲を取り囲む絶縁体と、絶縁体の径方向周囲を取り囲むとともに、先端側にプラグ座面を備えるフランジ部とこのフランジ部のプラグ座面から軸線方向先端側に延びる先端部とを有する主体金具とを備え、シリンダーヘッドに形成されるプラグホールに取付けられるスパークプラグであって、
主体金具の先端部は、プラグ取付用雄ネジを有することなく外周面略円筒状に形成されている一方、プラグホールは、この主体金具のフランジ部及び先端部にそれぞれ対応するフランジ対応部及び先端対応部を備えており、主体金具の先端部の外径をφd(単位:mm)、プラグホールの先端対応部の孔径をφD(単位:mm)としたときに、φD−φd≦0.15の関係を満足することを特徴とする。
【0010】
本発明のかかる構成によれば、スパークプラグを構成する主体金具の先端部が、外周にプラグ取付用雄ネジを有することなく略円筒状に形成される一方、プラグホールが、この主体金具のフランジ部及び先端部の外周形状にそれぞれ対応する形状をなすフランジ対応部及び先端対応部を有している。これにより、スパークプラグの取付け時には、プラグホールに遊嵌状に挿入するだけでよく、プラグレンチ等を用いたネジ締め作業が不要となる。とりわけ、近年のDOHCエンジン等では、大面積の吸気・排気バルブを備えることが多くプラグホールが奥深く設計されるが、このようなエンジンのプラグホールにも、スパークプラグを遊嵌状に挿入するだけで取付け可能となる。従って、スパークプラグの取付け自体が容易になり、主体金具の雄ネジがプラグホールの雌ネジと噛み合わないにも拘わらず、回転させることにより発生するネジ部の損傷の心配もない。
【0011】
ところで、主体金具の先端部を外周面略円筒形状としたために、従来であれば先端部に形成される雄ネジからシリンダーヘッド(プラグホール内壁面)に逃がすことのできた熱が、放散されにくくなる。つまり、主体金具の先端部の外径をφd(単位:mm)、プラグホールの先端対応部の孔径をφD(単位:mm)としたときに、クリアランス量(φD−φd)が極僅かな場合には、主体金具に流入される熱をプラグホール内壁面に放散することができるものの、このクリアランス量(φD−φd)が比較的大きい場合には、熱の放散経路が不十分となるのである。
【0012】
つまり、クリアランス量(φD−φd)の大きさによっては、主体金具の先端部とプラグホール内壁面(プラグホールの先端対応部)との間の隙間に比較的大きな空気層(空気により形成される層)が介在することになる。そして、この空気層が、燃焼ガス等により高温下に曝された際に断熱層として機能してしまい、主体金具の先端部等に流入する熱をプラグホール内壁面に放散することを妨げてしまうのである。そのために、絶縁体や中心電極、接地電極が高温になりがちで、プレイグニッションや電極の溶損が発生し易くなる。
【0013】
これに対し、本発明のスパークプラグでは、上記クリアランス量(φD−φd)が、φD−φd≦0.15mmの関係を満たすように設定されている点が注目すべき点である。このクリアランス量(φD−φd)を上記範囲を満たす取付構造とした場合には、絶縁体や中心電極、接地電極から主体金具に流入される熱を、主体金具の先端部を通じて、シリンダーヘッドに速やかに放散することができるようになる。その結果、中心電極や絶縁体、接地電極の温度が低く保たれることになり、先端部に雄ネジを形成したものと同等またはそれ以上の耐熱性が得られ、プレイグニッションや電極溶損のおそれのないスパークプラグ、及びその取付構造とすることができる。なお、上記クリアランス量(φD−φd)の範囲は、スパークプラグのシリンダーヘッドへの挿入容易性をも考慮して0.05mm≦φD−φd≦0.15mmが好ましく、上記挿入容易性と耐熱性を良好に得る点を考慮すると0.05mm≦φD−φd≦0.10mmの関係を満たすことがより好ましい。
【0014】
上記クリアランス量(φD−φd)が0.15mm以下であるときに、スパークプラグの耐熱性が良好に得られる理由としては、上記空気層自体の介在する量が極僅かとなり、この空気層による断熱作用の影響が少なく、空気層を介して先端部からの熱をプラグホール内壁面に有効に放散することができる。また、別の理由として、主体金具は金属材料により構成されるものであるが故に、上記クリアランス量(φD−φd)が0.15mm以下である場合、燃焼ガス等により主体金具(先端部)が高温下に曝されて先端部が熱膨張を起こすことで、プラグホール内壁面にこの先端部が有効に接触するものと推測される。その結果、主体金具の先端部からプラグホール内壁面に対する熱の放散経路が、有効に確保されるものと考えられる。
【0015】
ところで、中心電極や絶縁体に流入する熱は、その放散経路として、絶縁体を係止するために主体金具の内周面に内向きに突出して形成される金具側係合部(詳細には、金具側係合部の絶縁体を係止する面)を経由することなる。そして、この熱は、金具側係合部から先端部を通ってシリンダーヘッド(プラグホール内面)に放散されるとともに、フランジ部のプラグ座面を通ってシリンダーヘッド(プラグホール内壁面)に放散される。そのことから、中心電極や絶縁体に流入する熱の放散経路としては、主体金具の先端部の他に、プラグ座面も主要な経路となる。
【0016】
そこで、上記スパークプラグにあっては、プラグ座面の先端側面から金具側係合部の基端側縁まで、軸方向先端に向けて測った距離L(単位:mm)が、−6≦L≦6の関係を満たすとよい。
【0017】
かかる構成を図ることで、金具側係合部(詳細には金具側係合部の絶縁体を係止する面)に流入する絶縁体や中心電極からの熱が、先端部に流入するとともにプラグ座面に容易に流入することになり、ひいては絶縁体や中心電極に流入する熱を、効率良くプラグ座面及び先端部からシリンダーヘッド(プラグホール内壁面)に放散することができる。その結果、中心電極や絶縁体の温度がより低く保たれることになり、より耐熱性に優れるスパークプラグ及びその取付構造を提供することができる。なお、上記距離Lの範囲は、−3≦L≦3の関係を満たすことが、さらに耐熱性を優れたものとする上で好ましい。
【0018】
ここで、距離L測定の基準となる金具側係合部の基端側縁は、金具側係合部のうち、絶縁体を係止する面が軸に対して傾斜した面、即ちテーパ面である場合には、そのうちの最も基端側の縁を指す。一方、金具側係合部のうち、絶縁体を係止する面が軸に対して垂直な面、即ちフラット面である場合には、基端側縁の軸方向位置は、絶縁体を係止する面の軸方向位置に一致する。また、同様に、プラグ座面の先端側縁は、プラグ座面が軸に対して傾斜した面、即ちテーパ面である場合には、そのうちの最も先端側の縁を指すものとする。一方、プラグ座面が軸に対して垂直な面、即ちフラット面である場合には、そのうちの先端側縁の軸方向位置は、プラグ座面の軸方向位置に一致する。
【0019】
さらに、本発明のスパークプラグでは、一端が主体金具に結合されて接地電極結合部を形成し、他端が火花放電ギャップを隔てて中心電極と対向するように配置される1または複数の接地電極を備えており、主体金具のフランジ部及び先端部の少なくともいずれかが、スパークプラグをプラグホールに挿入しつつ軸線方向を中心に回転させたときに、プラグホールのうちフランジ対応部及び先端対応部の少なくともいずれかと、1または複数箇所にて互いに嵌合する嵌合位置制限形状とされている一方、1または複数の接地電極結合部の形成位置と、嵌合位置制限形状とされたフランジ部及び先端部の少なくともいずれかとの関係が、同一品番のスパークプラグを見たときにいずれも略同一とされているとよい。
【0020】
かかる構成によれば、主体金具のフランジ部及び先端部の少なくともいずれかが、プラグホール(プラグホールのフランジ対応部及び先端対応部の少なくともいずれか)に対する嵌合位置制限形状とされ、しかも、1または複数の接地電極結合部の形成位置と、嵌合位置制限形状とされたフランジ部または先端部との関係が略同一とされている点が注目すべき点である。このようにしたものでは、プラグホールにスパークプラグを遊嵌状に挿入しつつ嵌合させることで、接地電極結合部の位置が、プラグホール自身の軸線を中心とした周方向の特定位置に制限されることになる。つまり、スパークプラグをプラグホールに挿入するだけで、スパークプラグの接地電極を容易にかつ確実に燃焼室内の特定位置に設定することができるのである。
【0021】
通常、燃焼室内にて圧縮行程時に発生するスワールの流れを接地電極が妨げないように、スワールの流れ方向と接地電極結合部の形成位置との最適な位置関係を有することが知られている。そこで、スワールの流れ方向と接地電極結合部との位置関係を予め考慮して、接地電極結合部の形成位置と、嵌合位置制限形状とされるフランジ部または先端部との関係を制限することで、スワールの流れ方向と接地電極結合部の形成位置との関係を各気筒や各内燃機関につき常に一定に制限することができる。その結果、気筒や内燃機関毎に着火性がばらつかず、かつ良好な着火性が得られ、内燃機関を均一の空燃比(A/F)で駆動することができ、ひいては希薄空燃比で駆動することができる。
【0022】
ここで、嵌合位置制限形状は、主体金具のフランジ部または先端部をプラグホールのフランジ対応部または先端対応部に対応して配置させるにあたって、スパークプラグをプラグホールに対して挿入しつつ軸線方向を中心として回転させたとき、1または複数箇所にて互いに嵌合するものであればいずれの形状であってもよい。具体的に例示すると、プラグホールに軸線方向に延びるキー溝を形成し、先端部等にキー溝に嵌まるキー突起(条でも、突起でもよい)を設けたもの、或いは逆に、プラグホールにキー突起、主体金具側にキー溝を設けたもの、また主体金具のフランジ部等に面取りを施し、プラグホールをこの面取りに適合した形状としたもの、さらには本体部及びプラグホールのフランジ対応部の断面形状をそれぞれ卵形状、堕円形状、多角形状等としたものが挙げられる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、本実施形態にかかるスパークプラグ100の部分破断断面図、および内部構造を示す断面図である。このスパークプラグ100は、接地電極4が1つのみ形成されたいわゆる一極タイプで、主体金具1のフランジ部11と先端部12との間に設けられた平面を構成するプラグ座面13によってシールを行うフラットシートタイプのものである。なお、プラグ座面13には、環状のガスケットGが装着されている。
【0024】
このスパークプラグ100は、軸線O方向に延びる中心電極3と、この周囲を取り囲む絶縁体2と、その絶縁体2を保持する主体金具1とから構成される。この主体金具1は炭素鋼からなり、プラグ座面13が先端側に形成されたフランジ部11と、このプラグ座面13から軸線O方向先端側に延びる先端部12とを有する。この先端部12は、従来からのスパークプラグ(図10参照)とは異なり、外周にはプラグ取付用雄ネジを有しておらず、円筒状にされている。この先端部12の先端面には、接地電極4の一端が結合されて接地電極結合部17を形成している。そして、この接地電極4の他端は、中心電極3の先端面に向かって延設し、火花放電ギャップgを隔てて中心電極3と対向している。また、フランジ部11の後端側(基端側)には、フランジ部11から後端側に向かう順にカシメ溝部14、六角部15、カシメ部16が形成されている。なお、本明細書では、軸線線O方向において、火花放電ギャップgの形成される側を前方側(先端側)、これと反対側を後方側(基端側)として説明することにする。
【0025】
絶縁体2には、軸線O方向に貫通孔6が形成されている。そして、絶縁体2の貫通孔6の後方側に端子電極5が挿入・固定され、絶縁体2の貫通孔6の前方側に中心電極3が挿入・固定されている。また、この貫通孔6において端子電極5と中心電極3との間には、セラミック抵抗体7(ガラス粉末と導電材料粉末との混合物を、ホットプレス等により焼結した抵抗体組成物)が配置されている。このセラミック抵抗体7の両端部は、導電性ガラスシール層8、9を介して端子電極5と中心電極3にそれぞれ電気的に接続されている。なお、セラミック抵抗体7を省略し、一層の導電性ガラスシール層により中心電極3と端子電極5とを直接接合させる構成としてもよい。
【0026】
また、絶縁体2は、図2に詳細に示すように、軸線O方向の略中間部に、周方向外向きに突出するダイヤ部2eが形成されている。そして、絶縁体2には、ダイヤ部2eよりも後方側がこれよりも小径に形成された頭部2bとされている。一方、ダイヤ部2eの前方側には、これよりも小径の中胴部2gと、その中胴部2gよりも小径の脚長部2iが隣接して形成されている。なお、頭部2bの外面には釉薬層2dが形成され、頭部2bの後方側の外周にはコルゲーション2cが形成されている。また、絶縁体2の軸線O方向において最も前方側に位置する脚長部2iの外面は、先端に向かうほど縮径する略円錐状とされている。
【0027】
ついで、絶縁体2の貫通孔6は、略円筒状の第一部分6aと、その第一部分6aの後方側においてこれよりも大径に形成される略円筒状の第二部分6bとを有している。端子電極5とセラミック抵抗体7はこの第二部分6b内に収容され、中心電極3は第一部分6a内に挿通される。中心電極3の基端部には、その外周面から外向きに突出して凸状部3aが形成されている。そして、この貫通孔6の第一部分6aと第二部分6bとは、中胴部2g内において互いに接続し、その接続位置には中心電極3の凸状部3aを受けるための凸状部受け面6cがテーパ面、或いはR面状に形成されている。
【0028】
また、中胴部2gと脚長部2iとの接続部分は段付とされて係止面2hを形成し、この係止面2hは主体金具1の内周面に内向きに突出して形成された金具側係合部18(詳細には金具側係合部のうちの絶縁体を係止する面)に対し、環状の板パッキン51を介して係合することで、絶縁体2の軸線O方向先端側への抜き止めがなされている。他方、主体金具1の内周面後方側と絶縁体2の外周面との間には、ダイヤ部2eと係合する環状の線パッキン22、滑石23等が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具1に向けて前方側に押し込み、その状態でカシメ用金型を用いて主体金具1の基端側縁を絶縁体2の外面に向けて内側にかしめることでカシメ部16を形成し、絶縁体2を主体金具1に対して保持させる。
【0029】
ここで、この金具側係合部18は、中心電極3及び絶縁体2(脚長部2i)に流入した熱を、パッキン51、絶縁体係止面2hを通じて、主体金具1の先端部12及びプラグ座面13に、ひいては後述するシリンダーヘッドSHに放散する熱放散の主要な経路の一部となる。ところで、図2の吹出し図に示すように、プラグ座面13の先端側縁から金具側係合部18の基端側縁まで、軸線O方向先端側に向けて測った距離L(単位:mm)は、中心電極3や絶縁体2に流入する熱の放散度合に関係してくる(なお、図2の吹出し図では、ガスケットGを省略して記載している)。これに対し、本実施形態ではこの距離Lは、−6≦L≦6の関係を満足するように設定されている(例えば、L=0.5mm)。なお、上記距離Lを変化させることによるスパークプラグの耐熱性の変化についての測定結果は後述する。
【0030】
さらに、主体金具1における先端部12外周面のうちの一箇所には、キー突起19が突出して形成されている。そして、この先端部12のキー突起19は、後述するように、シリンダーヘッドSHに形成されたプラグホールPにおいてこのキー突起19に適合する凹状のキー溝39を一箇所に設けた先端対応部36と、互いに嵌合するようになっている。
【0031】
ついで、本実施形態にかかるシリンダーヘッドSHについて、図3を参照しつつ説明する。シリンダーヘッドSHのヘッド本体31は、ヘッド上面32及び燃焼室面33の間を貫通するプラグホールPを備え、さらにこの周囲のヘッド上面32に、後述するプラグ固定具41をネジ止めするためのネジ孔32a〜32dが形成されている。上記プラグホールPは、上記スパークプラグ100が完全に挿入される深さとされ、ヘッド上面32から、順に径小となる三段の丸孔から構成されている。
【0032】
このうち、ヘッド上面32側の挿入部34は、ヘッド上面32から燃焼室面33の近くにまで達する丸孔であり、上記スパークプラグ100の主体金具1のうち最も径大なフランジ部11よりも径大とされていることから、スパークプラグ100が遊嵌状に挿入できるようになっている。そして、燃焼室面33側の先端対応部36は、スパークプラグ100を挿入したときに、主体金具1における先端部12が遊嵌状に挿入される部分である。また、挿入部34と先端対応部36との間にはフランジ対応部35が位置し、スパークプラグ100を挿入したときに、主体間具1におけるフランジ部11が遊嵌状に挿入される部分を構成する。なお、フランジ対応部35と先端対応部36の境界部にあたるシール面37は、スパークプラグ100に装着されるガスケットGが当接してシールを行う面となる。さらに、この先端側対応部36には、図3(a)から判るように、上記スパークプラグ100のキー突起19に適合する幅及び深さで、キー溝39が形成されている。また、シリンダーヘッドSHには、冷却水を流通させるための流通孔38が形成されている。
【0033】
なお、本実施形態では、プラグホールPのキー溝39と、スパークプラグ100を構成する主体金具1のキー突起19とが、接地電極結合部17の形成位置を考慮した上で、それぞれ特定の位置関係を持って形成されている。ところで、燃焼室内にて圧縮行程時に発生するスワールの流れ方向と、接地電極4の燃焼室における配置位置との関係により、混合気への着火のし易さが異なることが知られている。即ち、火花放電ギャップgにスワールが流れ込むのを接地電極4が遮る場合には、火花放電ギャップgにスワールが流れ込みにくくなるために、相対的にリッチな混合気でしか着火しなくなる傾向にある。
【0034】
これに対し、本実施形態では、スパークプラグ100をプラグホールPに取り付けた際に、スワールの流れ方向と接地電極4の燃焼室内における配置位置とが最適な位置関係を満たすべく、接地電極結合部17の形成位置と先端部12のキー突起19の形成位置とが、さらにはそのキー突起19の形成位置と先端対応部36のキー溝39の形成位置とが、特定の位置関係を有するように形成されている。なお、ここでいうスワールの流れ方向と接地電極4の燃焼室内における配置位置との最適な位置関係とは、1極タイプのスパークプラグ100において、スワールの流れ方向の上流側ないし下流側に接地電極4を配置させず、図11に示すように、スパークプラグ100の軸線O方向先端側からみたときに、先端部12の中心Cを通るスワールMの流線Lmと、先端部12の外周面との交点のうち、上流側の交点Sを基準として、接地電極結合部17の周方向位置がθ=90°の角度を有する関係をいう。
【0035】
ついで、本実施形態にかかるプラグ固定具41について、図4を援用して説明する。プラグ固定具41は、金属(アルミニウム等)製で自身をシリンダーヘッドSHに固定するための突出部42と、略円筒形状の筒状部43とからなる。突出部42には、図示しないがシリンダーヘッドSHのネジ孔32a〜32dにそれぞれ対応した位置に、取付孔が複数形成されている。また、筒状部43は、その外周面がシリンダーヘッドSHの挿入部34よりもやや径小とされ、しかもその先端の先端面43aが、後述するように、スパークプラグ100を構成する主体金具1のフランジ部11の基端面を押圧可能とすべく、その内周面が六角部15よりも径大とされている。
【0036】
そして、図4に示すように、この筒状部43の内部には、コイルコア44と、一次巻線L1及び二次巻線L2と、二次巻線L2にて発生する放電用高電圧をスパークプラグ100の端子電極5に供給するための接続端子45とからなる点火コイル部50が収容されている。なお、コイルコア44の周囲には、二次巻線L2が巻かれた二次ボビンが配置され、更に二次ボビンの周囲に一次巻線L1が巻かれた一次ボビンが配置されている。また、筒状部43の内部には、耐熱性ゴムからなり、スパークプラグ100を構成する絶縁体2の頭部2bと接触する絶縁性保持部材46が、接続端子の周りを覆うようにして設けられている。さらに、二次巻線L2の一端と電気的に接続されているバネ状の接続端子45は、端子電極5に対して軸線O方向に圧縮された形態で接触することによって、両者の電気的な接続が図られることになる(図4参照)。このとき、絶縁性保持部材47は絶縁体2の頭部2bに接触し、点火コイル部50とスパークプラグ100との間の絶縁性を確保する機能を果たす。
【0037】
このように、本実施形態のプラグ固定具41は、点火コイル部50を内蔵しており、後述するようにプラグ固定具41によって、スパークプラグ100をプラグホールPに固定すると同時に、点火コイル部50をもプラグホールP内に配置させることができ、しかもスパークプラグ100と点火コイル部50との接続も完了させることができる。また、このようなプラグ固定具41を用いた場合には、スパークプラグ100と点火コイル部50とが直接接続されることになるので、両者を接続するためのハイテンションケーブル等が不要となり、ノイズの発生を低減させることができる。なお、このプラグ固定具41には、内部に点火コイル部50を有する関係上、電源装置やECU等の外部機器と接続するためのコネクタ部47、及び点火ユニット48が備えられている。この点火ユニット48には、一次巻線L1に電源装置から供給される電流(一次電流)を、ECUから出力される点火指令信号に基づいて通電・遮断するためのスイッチング素子(図示しない)等が内蔵されている。なお、この点火ユニット48はコネクタ部47に電気的に接続されるとともに、点火コイル部50に電気的に接続されている。
【0038】
ついで、シリンダーヘッドSHにスパークプラグ100及びプラグ固定具41を取り付ける。まず、図4に示すように、シリンダーヘッドSHのプラグホールP内に、スパークプラグ100を遊嵌状に挿入する。このとき、スパークプラグ100を軸線O方向を中心に回転させつつ挿入すると、主体金具1の先端部12に形成されるキー突起19が、プラグホールPの先端側対応部36に形成されたキー溝39に嵌まり、スパークプラグ100がプラグホールPに装着されることになる。即ち、キー突起19とキー溝39によって、主体金具1の先端部12とプラグホールPの先端対応部36とが互いに嵌合することになる。これにより、ガスケットGがシール面37に当接する。
【0039】
さらに、上述したプラグ固定具41を用いて、スパークプラグ100をシリンダーヘッドSHに固定する。まず、図4に示すように、プラグ固定具41の筒状部43をプラグホールPに挿入する。筒状部43の外周面は、挿入部34よりやや径小とされているので遊嵌状に挿入でき、筒状部43の先端面43aが、スパークプラグ100を構成する主体金具1のフランジ部11のプラグ座面13とは反対側に位置する後端面に当接する。このとき、筒状部43の内部では、接続端子45が、スパークプラグ100の端子電極5に圧接状態にて接触する。
【0040】
ついで、図4及び図5に示すように、プラグ固定具41の突出部42の向きを合わせて、複数の取付孔がネジ孔32a〜32dに適合するようにし、ボルト49a〜49dを用いてプラグ固定具41をシリンダーヘッドSHのヘッド上面32にネジ止めする。これにより、主体金具1のフランジ部11の後端面に当接する筒状部43に軸線O方向先端側に向けての付勢力が発生して、フランジ部11のプラグ座面13がシリンダーヘッドSHに対して付勢されることになり、プラグ座面13とシール面37との間のシールをガスケットGを介して行うことができる。そして、このプラグ固定具41のシリンダーヘッドSHへの固定により、プラグ取付用雄ねじが形成されていない主体金具1にて構成されるスパークプラグ100がシリンダーヘッドSHに固定されることになる。なお、適当な圧力で押圧できるように、スパークプラグ100やプラグホールPの寸法を考慮して、筒状部43の長さ(高さ)を適宜調整しておくとよい。
【0041】
このようにしてスパークプラグ100は、シリンダーヘッドSH(プラグホールP)に取り付けられる訳だが、本実施形態ではその取付構造において、図4に示すように、主体金具1の先端部12の外径をφd(単位:mm)、プラグホールPの先端対応部36の孔径をφD(単位:mm)としたときに、クリアランス量(φD−φd)は、φD−φd≦0.15の関係を満たすようにされている。プラグホールPの先端対応部36の孔径φDは、シリンダーヘッドSH設計毎に種々のサイズのものがあり、いずれのプラグホールPに対しても、上記範囲(関係)を満たすように先端部12の外径φdが定められるのである。なお、本実施形態においては、例えばφD=13.70mm、φd=13.60mmであって、φD−φd=0.10mmとされている。
【0042】
このように、クリアランス量(φD−φd)を0.15mm以下とすることにより、絶縁体2や中心電極3、接地電極4から主体金具1の先端部12に流入される熱を、シリンダーヘッドSHに速やかに放散することができるようになる。その結果、中心電極3や絶縁体2、接地電極4の温度が低く保たれることになり、先端部12に雄ネジを形成したものと同等またはそれ以上の耐熱性が得られ、スパークプラグ100はプレイグニッションや電極溶損のおそれのないものとなる。なお、上記クリアランス量(φD−φd)を変化させることによるスパークプラグの耐熱性の変化についての測定結果は後述する。
【0043】
さらに、上述のようにしてシリンダーヘッドSHにスパークプラグ100を取り付けた状態において、スワールの流れ方向と接地電極4との関係についてみてみる。ここで、本実施形態では、スパークプラグ100をシリンダーヘッドSHに取り付けた際に、上述したようにスワールの流れ方向と接地電極結合部17とが最適な位置関係を満たすべく、接地電極結合部17の形成位置、キー突起19及びキー溝39の形成位置のそれぞれが所定の位置関係を有するようになっている。したがって、スパークプラグ100をシリンダーヘッドSHに取り付けたときには、接地電極結合部17の位置は常に特定位置に制限されることになる。したがって、接地電極4の燃焼室内における配置位置は、スワールの流れを妨げない位置に設定されることになることから、火花放電ギャップgにて発生する火花放電にて確実に混合気を着火させることができる。さらに、同一品番のスパークプラグ及びシリンダーヘッドの任意の組み合わせにより、常に希薄空燃比で内燃機関を駆動することができ、燃費を向上させることも可能となる。
【0044】
以上、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、上記実施形態では、スパークプラグ100として接地電極4が一つのみ主体金具に結合された一極タイプのものを用いたが、接地電極4が複数主体金具1に結合された多極タイプであってもよい。また、主体金具1の形成材料としては炭素鋼を用いたが、絶縁体2や中心電極3、接地電極4から流入する熱の放散性を高めるべく、炭素鋼よりも熱伝導性に優れる銅合金やアルミニウム合金により主体金具1を形成してもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態では、図6(a)に示すように、スパークプラグ100を構成する主体金具1の先端部12に凸状のキー突起19を形成し、プラグホールPの先端対応部36に凹状のキー溝39を形成した上で、両者を一箇所のみで嵌合させるようにしていたが、このような嵌合位置制限形状は他の形状であってもよい。例えば、図6(b)に示すものは、(a)とは逆に、主体金具1の先端部12に凹状のキー溝19aを設け、プラグホールPの先端対応部36に凸状のキー突起39aを設けた上で、両者を嵌合させるようにしたものである。
【0046】
また、図7(a)に示すものは、主体金具1におけるフランジ部11の外周側面の一部を面取りして平坦面19bを設け、プラグホールPのフランジ対応部11にもこの平坦面19aの形状に対応した平坦面39bを設けた上で、両者を嵌合させるようにしたものである。また、図7(b)に示すものは、フランジ部11を円形ではなく、破線で示す円形より膨らむ拡径部19cを設けた断面略卵形状とし、プラグホールPのフランジ対応部35もこれに合わせた拡径部39cを設けて、両者を嵌合させるようにしたものである。
【0047】
そして、このような形状のいずれの場合でも、主体金具1の先端部12とプラグホールPの先端対応部36、もしくは主体金具1のフランジ部11とプラグホールPのフランジ対応部35とが嵌合する位置は、1箇所に限定される。従って、これらの嵌合位置制限形状とスパークプラグ100における接地電極結合部17との位置関係を、スワールの流れ方向を考慮して制限すれば、プラグホールPに対してスパークプラグ100を遊嵌状に挿入して嵌合することで、燃焼室内における接地電極4の配置位置を常に特定なものとすることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、図4に示すように、プラグ固定具41の筒状部43の先端面43aを主体金具1のフランジ部11の後端面に当接させるとともに、その後端面に対してプラグ固定具41の固定により生ずる付勢力を及ばせ、プラグ座面13をシリンダーヘッドSHに対して付勢させる構造であったが、図12に示すように、筒状部43の先端部43cを、主体金具1のカシメ部16に当接可能な形状としつつ、そのプラグ固定具41を用いてスパークプラグ100をシリンダーヘッドSHに固定する構造としてもよい。なお、この構造においても、プラグ固定具41の筒状部43の先端部43cを主体金具1のカシメ部16に当接させるとともに、プラグ固定具41のシリンダーヘッドSHへの固定により生ずる軸線O方向先端側への付勢力を主体金具1のカシメ部16に及ばせ、プラグ座面13をシリンダーヘッドSHに付勢させるようにしている。
【0049】
さらに、上記実施形態のスパークプラグ100の構造に加えて、図12を援用して示すように、主体金具1のフランジ部11の外周側面に有底状の凹部(図示せず)を周方向にわたって設け、その凹部に弾性変形可能な環状の弾性材61(ゴム等)を嵌め込んで構成してもよい。このようなスパークプラグ100では、シリンダーヘッドSHに取り付けた後において、フランジ部11とプラグホールP内壁(フランジ対応部35)との間が弾性材61によって確実にシールされるので、スパークプラグ100とシリンダーヘッドSHとの間の気密性がより向上することになる。
【0050】
(実施例1)
本発明の効果を確認するために、図1(または図4)に示す主体金具1の先端部12の外径φdを変化させるとともに、プラグホールPの先端対応部36の孔径φDは一定(13.7mm)とし、クリアランス量(φD−φd)の値を変化させることで、スパークプラグ100の耐熱性を評価した。なお、スパークプラグ100においては、先端部12の軸O方向長さT1=15.0mm、先端部12の内径φd1=8.4mm、金具係合部18の最小内径φd2=7.5mmに、それぞれ寸法設定して評価を行った(図1参照)。また、プラグ座面13の先端側縁から金具側係合部18の基端側縁までの軸O方向先端に向けて測った距離L(図2参照)については、0mmに寸法設定した。さらに、本評価にあたり、絶縁体2の脚長部2iの軸O方向の距離T2を、T2=14mm(脚長部2iの先端外径φd3=5.1mm)のものと、T2=17mm(脚長部2iの先端外径φd3=5.1mm)のものそれぞれについて行った(図1参照)。
【0051】
ここで、スパークプラグ100の耐熱性の評価は、以下の方法により行った。図8に示すように、点火コイル部50及び突出部42の中央を除去したプラグ固定具41によって、スパークプラグ100をシリンダーヘッドSHに固定することで行った。このプラグ固定具41は、突出部42に筒状部43の内周面に連なる貫通孔43bを形成したものでスパークプラグ100を固定し、ケーブル51に接続された接続端子45を内部に有する絶縁性保持部材46を、この貫通孔43bから挿入して、接続端子45とスパークプラグ100の端子電極5とを圧接状態にて接触させる。このケーブル51は、高耐圧のダイオード52を介して、図示しない点火回路に接続するとともに、高耐圧のダイオード53を通じて、図示しないプレイグニッションテスタに接続している。
【0052】
このプレイグニッションテスタは、いわゆるイオン電流を計測するものである。即ち、プレイグニッションが発生した場合に、火花放電ギャップgが火炎に包まれると、火炎中のイオンによって、火花放電ギャップ間が導通状態となる。従って、火花放電ギャップ間に予め数100Vの電圧をかけておくと、プレイグニッションが発生した場合に、イオン電流が流れる。そこで、点火回路で放電させる前に、イオン電流を検出した場合には、プレイグニッションが発生したことが判別できる。
【0053】
そして、上述のようにスパークプラグ100をシリンダーヘッドSHに固定した上で、内燃機関を駆動(1600cc、直列4気筒、スロットル全開状態)し、正規の点火時期より1度ずつ順に過進角を変化させて、2分間保持し、プレイグニッションがその間に発生したか否かを測定し、初めてプレイグニッションが発生した過進角を測定した。各クリアランス量(φD−φd)と過進角との関係を図9のグラフに示す。
【0054】
なお、本評価にあたり、主体金具の先端部に雄ネジ(M14S)が形成された従来のスパークプラグ(図11参照)についても、脚長部の距離T2=14mm、17mmの2種類を、それぞれ同様に評価した(なお、プラグ座面の先端側面から金具側係合部の基端側縁までの軸方向先端に向けて測った距離Lは0mmとした)。そして、従来のスパークプラグでは、脚長部の距離T2=14mmのものではプレイグニッションが発生した過進角が20度、脚長部の距離T2=17mmのものでは同過進角が15度であった。
【0055】
これに対し、本実施形態のスパークプラグ100については、図9のグラフに示すように、クリアランス量(φD−φd)=0.15mmでは、脚長部2iの距離T2=14mm、17mmの2種類ともに、上記従来例と同等の過進角までプレイグニッションを生じないで駆動できることが判った。また、クリアランス量(φD−φd)=0.02mm、0.05mm、0.10mmでは、脚長部2iの距離T2=14mm、17mmの2種類ともに、上記従来例以上の過進角までプレイグニッションを生じないで駆動でき、耐熱性が向上することが判った。一方、クリアランス量(φD−φd)=0.15mmを超えるものでは、脚長部2iの距離T2=14mm、17mmの2種類ともに、上記従来例よりも耐熱性が劣ることが判った。
【0056】
(実施例2)
実施例1にて用いた本実施形態のスパークプラグ100のうち、脚長部2iの距離T2=17mmで、クリアランス量(φD−φd)=0.05mmのものに限って、プラグ座面13の先端側縁から金具側係合部18の基端側縁までの軸O方向先端に向けて測った距離Lを−6.5mm、−3.0mm、±0mm(実施例1のものに相当)、3.0mm、6.0mmの5種類に変化させたものを準備し、実施例1と同様の手法にてスパークプラグ100の耐熱性を評価した。
【0057】
上記距離Lを5種類に変化させた上記スパークプラグにてプレイグニッションが発生した過進角は、上記距離Lが−6.5mmのものでは16度、−3.0mmのものでは20度、±0mmのものでは21度、3.0mmのものでは20度、6.0mmのものでは18度となった。これらの結果より、上記距離Lが−6mm≦L≦6mmの関係を満たす4種類のスパークプラグについては、距離Lが−6mm未満のL=−6.5mmのものよりも優れた耐熱性の向上の効果が得られることが判った。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態にかかるスパークプラグの全体形状を示す部分破断断面図である。
【図2】 実施形態にかかるスパークプラグの内部構造を示す軸方向断面図である。
【図3】 実施形態にかかるシリンダーヘッドのプラグホール近傍の形状を示す平面図及び軸方向断面図である。
【図4】 図1(図2)に示すスパークプラグを、図3に示すシリンダーヘッドのプラグホールに挿入し、嵌合させた状態にあるスパークプラグの取付構造を示す説明図(部分破断断面図)である。
【図5】 図1(図2)に示すスパークプラグを、図3に示すシリンダーヘッドのプラグホールに挿入し、嵌合させた状態を示す平面図である。
【図6】 主体金具の先端部とプラグホールの先端対応部との互いに嵌合する嵌合位置制限形状の例を示す説明図である。
【図7】 主体金具のフランジ部とプラグホールのフランジ対応部との互いに嵌合する嵌合位置制限形状の例を示す説明図である。
【図8】 実施形態にかかるスパークプラグ(スパークプラグの取付構造)のプレイグニッション試験の様子を示す説明図である。
【図9】 図8に示すプレイグニッション試験を、図4に示すスパークプラグの取付構造において、クリアランス量(φD−φd)を変化させて行った結果を示すグラフである。
【図10】 従来のスパークプラグの全体形状を示す部分破断断面図である。
【図11】 スパークプラグの接地電極の配置位置とスワールの流れ方向との関係を説明する説明図である。
【図12】 図4に示すスパークプラグの取付構造とは異なる別実施形態の取付構造を示す説明図である。
【符号の説明】
100…スパークプラグ、1…主体金具、11…フランジ部、12…先端部、17…接地電極結合部、18…金具側係合部、19…キー突起、2…絶縁体、2i…脚長部、3…中心電極、4…接地電極、5…端子電極、32…ヘッド上面、33…燃焼室面、34…挿入部、35…フランジ対応部、36…先端対応部、39…キー溝、41…プラグ固定具、42…突出部、43…筒状部、44…コイルコア、45…接続端子、50…点火コイル部、SH…シリンダーヘッド、P…プラグホール、L1…一次コイル、L2…二次コイル、g…火花放電ギャップ
Claims (5)
- 軸線方向に延びる中心電極と、上記中心電極を自身の先端側に配置して径方向周囲を取り囲む絶縁体と、上記絶縁体の径方向周囲を取り囲んで当該絶縁体を保持するとともに、先端側にプラグ座面を備えるフランジ部とこのフランジ部のプラグ座面から軸線方向先端側に延びる先端部とを有する主体金具とを備えるスパークプラグと、
シリンダーヘッドに形成されるプラグホールとの取付構造であって、
上記主体金具の先端部は、プラグ取付用雄ネジを有することなく外周面略円筒状に形成されている一方、
上記プラグホールは、この主体金具のフランジ部及び先端部にそれぞれ対応するフランジ対応部及び先端対応部を備えており、
上記主体金具の先端部の外径をφd(単位:mm)、上記プラグホールの先端対応部の孔径をφD(単位:mm)としたときに、
φD−φd≦0.15
の関係を満足することを特徴とするスパークプラグの取付構造。 - 上記主体金具の内周面には、上記絶縁体を係止するための金具側係合部が内向きに突出して形成されており、上記プラグ座面の先端側縁から上記金具側係合部の基端側縁まで、軸方向先端に向けて測った距離L(単位:mm)が、
−6≦L≦6
の関係を満足することを特徴とする請求項1記載のスパークプラグの取付構造。 - 軸線方向に延びる中心電極と、上記中心電極を自身の先端側に配置して径方向周囲を取り囲む絶縁体と、上記絶縁体の径方向周囲を取り囲むとともに、先端側にプラグ座面を備えるフランジ部とこのフランジ部のプラグ座面から軸線方向先端側に延びる先端部とを有する主体金具とを備え、シリンダーヘッドに形成されるプラグホールに取付けられるスパークプラグであって、
上記主体金具の先端部は、プラグ取付用雄ネジを有することなく外周面略円筒状に形成されている一方、上記プラグホールは、この主体金具のフランジ部及び先端部にそれぞれ対応するフランジ対応部及び先端対応部を備えており、
上記主体金具の先端部の外径をφd(単位:mm)、上記プラグホールの先端対応部の孔径をφD(単位:mm)としたときに、
φD−φd≦0.15
の関係を満足することを特徴とするスパークプラグ。 - 上記主体金具の内周面には、上記絶縁体を係止するための金具側係合部が内向きに突出して形成されており、上記プラグ座面の先端側縁から上記金具側係合部の基端側縁まで、軸方向先端に向けて測った距離L(単位:mm)が、
−6≦L≦6
の関係を満足することを特徴とする請求項3記載のスパークプラグ。 - 請求項3または4に記載のスパークプラグであって、
一端が上記主体金具に結合されて接地電極結合部を形成し、他端が火花放電ギャップを隔てて上記中心電極と対向するように配置される1または複数の接地電極を備えており、
上記主体金具のフランジ部及び先端部の少なくともいずれかが、上記スパークプラグを上記プラグホールに挿入しつつ軸線方向を中心に回転させたときに、該プラグホールのうち上記フランジ対応部及び先端対応部の少なくともいずれかと、1または複数箇所にて互いに嵌合する嵌合位置制限形状とされている一方、
1または複数の上記接地電極結合部の形成位置と、上記嵌合位置制限形状とされた上記主体金具のフランジ部及び先端部の少なくともいずれかとの関係が、同一品番のスパークプラグを見たときにいずれも略同一とされていることを特徴とするスパークプラグ。
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