JP4478068B2 - 鉄道車両用ブレーキディスク - Google Patents

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Description

この発明は、新幹線等の高速鉄道車両及び在来線を含む鉄道車両一般に於いて、制動装置を構成する鉄道車両用ブレーキディスクの改良に関する。
新幹線等の高速鉄道車両には、通常、電気式と機械式との制動装置が使用されており、機械式としてはディスクブレーキが多く使用されている。この様にディスクブレーキを使用する高速鉄道車両で、高速から制動する場合には、通常、先ず、電気式の制動装置が作動し、所定の速度まで減速した後にディスクブレーキが作動して車両を停止させる。又、走行時に地震等、緊急事態が発生した場合には、高速走行中でも(例えば300km/hの速度からでも)ディスクブレーキが作動する場合がある。
この様なディスクブレーキとして、従来から、鉄道車両用車輪の両側に一対のブレーキディスクを結合して成る一体型のブレーキディスク付車輪を使用する事が考えられている。この様なブレーキディスク付車輪は、鉄道車両用車輪の複数個所に形成した第一の取付孔と、各ブレーキディスクの一部でこれら各第一の取付孔に整合する複数個所に形成した第二の取付孔とに挿通したボルトとナットとを螺合し、更に緊締する事により、上記鉄道車両用車輪とブレーキディスクとを一体に結合している。
この様なブレーキディスク付車輪の場合、制動に伴う各ブレーキディスクと摩擦材との摩擦に伴う発熱により、各ブレーキディスクが大きく温度上昇する。しかも、鉄道車両用の制動装置の作動時間は長く、且つ、作動時の摩擦材とブレーキディスクとの摩擦に基づく、単位時間当たりの発熱量も多い。この為、上記ブレーキディスクには、大きな応力(特に熱応力)が発生する。
即ち、異議2002−73163号の異議の決定の謄本に記載され、従来から知られている様に、鉄道車両用のディスクブレーキの場合、制動力の上限となる摩擦力(粘着力)は鉄道車両用車輪とレールとの金属同士の摩擦によって決定される為、ゴム製のタイヤを使用する自動車用の場合と異なり、この摩擦の上限は著しく小さくなる。この為、ブレーキディスクの摩擦材への押し付け圧力を特に高くする事は困難である。又、通常240km/h以上(場合によっては300km/h)の高速を制動初速度とする事を前提とする鉄道車両用ブレーキディスクの場合には、これよりも遥かに低い速度を制動初速度とする自動車用の場合とは異なり、停止までの時間が長く、比較的低い摩擦係数で高速から低速まで制動力が安定している事が必要になる。従って、鉄道車両用ブレーキディスクの場合には、自動車用の場合とは異なる摩擦性能を有する事が求められる。又、鉄道車両用ブレーキディスクは、自動車用のブレーキディスクの場合に比べて、径方向のサイズが著しく大きい。この様な鉄道車両用ブレーキディスクの場合には、高速からの制動により高負荷が加わる事と相俟って、制動に伴う大きな応力(特に熱応力)が発生する。
特に、鉄道車両用ブレーキディスクの場合、鉄道車両がより高速化し、制動時にブレーキディスクに加わる応力がより大きくなった場合には、制動時に摩擦材と摩擦し合う外径側半部が著しく温度上昇するのに対し、この摩擦材と摩擦せず、しかも低温の鉄道車両用車輪に当接している内径側半部の温度上昇は限られたものとなる。この結果、上記ブレーキディスクの内径側と外径側との間で大きな温度差を生じ、外径側が膨張して内径側を引っ張るので、このブレーキディスクの一部(特に内径側端部近傍)に大きな熱応力が発生する。
一方、近年は、鉄道車両(主に新幹線)の高速化が進んでおり、走行時の騒音や地盤振動等を抑える事に対する要求が高くなっている。この様な要求に応える為の対策として、鉄道車両の軽量化、特にばね下重量の軽減がある。そして、この様なばね下重量の軽減を図る為には、鉄道車両用ブレーキディスクを従来の鉄系材料から軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金に変える事が有効である。但し、鉄系材料に比べて硬度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金のみにより鉄道車両用ブレーキディスクを構成した場合、摩擦面部の耐摩耗性が低下する為、鉄道車両用制動装置の使用には耐えられない。
この様な事情から近年は、鉄道車両用ブレーキディスクを、アルミニウム合金にセラミックスを加えたアルミニウム合金基複合材料製とする事で、軽量化を図りつつ、摩擦面部の耐摩耗性を向上させる事も考えられている。そして、この様にブレーキディスクをアルミニウム合金基複合材料製としたもので、より高速(例えば300km/h以上)から安定して制動できる様にする事が求められている。
但し、ブレーキディスクに軽合金であるアルミニウム合金を使用した場合の最大の欠点として、アルミニウム合金の融点の低さに起因する耐熱性の低さがある。これは、ディスクブレーキの様に運動エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムでは、重要な問題である。この様なシステムでは、繰り返し高熱に曝される部分にアルミニウム合金を使用する場合に、この部分の熱変形を考慮する必要がある。
即ち、ディスクブレーキでは、制動に伴う摩擦材との摩擦に基づく発熱により、ブレーキディスクが繰り返し高温状態になる。ブレーキディスクは形状に特に精度が要求されるが、この様な高温状態によりブレーキディスクが塑性変形すると、制動時の振動や騒音(ノイズ)が大きくなったり、摩擦材であるライニングの偏摩耗が生じる原因となりかねない。又、ブレーキディスクの塑性変形によりこのブレーキディスク自体に無理な熱応力が加わる事により、ブレーキディスクと鉄道車両用車輪との締結部の耐久性に支障を及ぼす原因ともなる。
しかも、鉄道車両用ブレーキディスクを、アルミニウム合金にセラミックスを加えたアルミニウム合金基複合材料製とする場合には、ブレーキディスクをアルミニウム合金製とする場合よりも脆性的な不安が高くなる。例えば、ブレーキディスクをアルミニウム合金基複合材料製とする場合、アルミニウム合金の溶湯にセラミックスを混合した複合材の鋳造により、ブレーキディスクを造る事が考えられる。但し、この様にしてブレーキディスクを造る場合、熱変形によりブレーキディスクに強度上好ましくない事態が生じる原因となり、繰り返し高温状態になる部分にアルミニウム合金基複合材料を使用する場合には、上記好ましくない事態の発生を有効に防止する為の特別な考慮をする事が望まれている。
これに対して、特許文献1、2には、鉄道車両用ブレーキディスクの熱変形を抑える為の技術手段が記載されている。このうちの特許文献1には、ブレーキディスクの摩擦面に円周方向の溝を形成する事が、特許文献2には、ブレーキディスクの外周側端部の形状に対応する一部の断面積を規制する事が、それぞれ記載されている。但し、これら特許文献1、2に記載された何れの技術手段の場合も、ブレーキディスクの形状を工夫する事のみにより熱膨張の緩和を図る事を狙いとしており、このブレーキディスクの材料に就いては特に工夫していない。本来、熱変形は材料の性質である熱膨張係数に応じて変わるものであり、単にブレーキディスクの形状を規制しただけでは、熱変形の緩和を図る事には限界があり、最良の対策とは言い難いものがある。
尚、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1、2の他に特許文献3がある。
特開2000−154837号公報 特開2002−364686号公報 特開2004−316829号公報
本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、この様な事情に鑑みて発明したものである。
本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、側面に摩擦材を押し付ける為の摩擦面を有する表層部が、SiC、アルミナ等のセラミックスの粒子又は繊維、若しくはその両方を含むアルミニウム合金基複合材料製であり、上記表層部以外の部分がアルミニウム合金製である、鉄道車両用車輪の側面に固定される。
そして、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、上記表層部の厚さを直径方向外側に向かうに従って大きくしている。
上述の様に構成する本発明の鉄道車両用ブレーキディスクによれば、軽量で且つ高靱性を有し、優れた耐摩耗性を有する鉄道車両用ブレーキディスクを得られる。即ち、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、アルミニウム合金製の部分とアルミニウム合金基複合材料製の部分とから成る為、十分な軽量化を図れる。又、この鉄道車両用ブレーキディスクの表層部が、セラミックスの粒子又は繊維若しくはその両方を含むアルミニウム合金基複合材料製である為、摩擦面の耐摩耗性を十分に高くできる。又、上記鉄道車両用ブレーキディスクのうちの上記表層部以外の部分がアルミニウム合金製である為、鉄道車両用ブレーキディスク全体の靱性を高くできる。しかも、本発明の場合には、上記表層部の厚さを直径方向外側に向かうに従って大きくしている為、制動に伴い鉄道車両用ブレーキディスクが繰り返し高温になる場合でも、この鉄道車両用ブレーキディスクの内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れる。この結果、この鉄道車両用ブレーキディスクの熱変形を最小限に抑える事が可能になり、この熱変形に基づく亀裂等の損傷の発生防止を有効に図れる。又、この様に鉄道車両用ブレーキディスクの熱変形を抑える事ができる為、制動時の振動や騒音(ノイズ)の発生を抑える事ができると共に、摩擦材の偏摩耗を抑える事ができ、更に、鉄道車両用ブレーキディスクと鉄道車両用車輪とをボルトにより結合する場合でも、このボルトの折損を有効に防止でき、このボルトの長寿命化を図れる。
又、好ましくは、請求項2に記載した様に、上記セラミックスを炭化珪素又はアルミナとする。
この好ましい構成によれば、上記表層部の硬度をより有効に高くでき、耐摩耗性をより有効に向上させる事ができる。この為、鉄道車両用ブレーキディスクの寿命を、より有効に向上させる事ができる。
又、より好ましくは、請求項3に記載した様に、上記表層部中での、上記セラミックスの粒子又は繊維、若しくはその両方の含有率を、体積換算で25〜40%とする。
このより好ましい構成によれば、上記表層部の硬度をより有効に高くでき、耐摩耗性の向上をより有効に図れる。この為、鉄道車両用ブレーキディスクの寿命を、より有効に向上させる事ができる。
又、より好ましくは、請求項4に記載した様に、上記表層部の内周縁を、鉄道車両用ブレーキディスクの内周縁のうちの最も外径側となる位置よりも3〜10mm(より好ましくは3〜5mm)外径側に外れた位置に位置させる。
このより好ましい構成によれば、制動時に熱応力が過大となり易い部分に靱性が低いアルミニウム合金基複合材料製の表層部が存在する事を防止できると共に、この表層部の摩擦面となる部分の面積を十分に確保できる。これに対して、上記表層部を、鉄道車両用ブレーキディスクの内周縁のうちの最も外径側となる位置から外径側に3mm未満の範囲に上記表層部の内周縁が位置する様に配置した場合には、上記鉄道車両用ブレーキディスクの内径側端部に加わる熱応力が過大となり、ブレーキディスクの強度確保上好ましくない。又、上記表層部を、鉄道車両用ブレーキディスクの内周縁のうちの最も外径側となる位置よりも10mmを越えた大きさ分外径側に外れた位置に上記表層部の内周縁が位置する様に配置した場合には、この表層部の摩擦面となる部分の面積、つまり摺動摩擦部となる部分の面積を十分に確保する事が著しく困難になる。
又、より好ましくは、請求項5に記載した様に、上記表層部の厚さを、鉄道車両用ブレーキディスクの最大厚さの6〜20%とする。即ち、この表層部の厚さが最も小さい部分で最大厚さの6%以上、この表層部の厚さが最も大きい部分で最大厚さの20%以下とする。
このより好ましい構成によれば、セラミックスの粒子又は繊維若しくはその両方を固めて焼成して成る予備成形体にアルミニウム合金の溶湯を加圧含浸する事により上記表層部を構成する場合に、製造時に於ける上記予備成形体の取り扱い(ハンドリング)を容易に行なえると共に、ブレーキディスクの耐摩耗性をより有効に確保できる。又、上記予備成形体の全体にアルミニウム合金の溶湯を行き渡らせる事を、より有効に行なえると共に、この予備成形体にアルミニウム合金の溶湯を加圧含浸する際のこの予備成形体の潰れを有効に防止でき、しかも、制動時にブレーキディスクが強度低下する事をより有効に防止できる。これに対して、上記表層部の厚さを、鉄道車両用ブレーキディスクの最大厚さの6%未満とした場合には、上記予備成形体の使い勝手、鋳型への配置(セッティング)し易さ等、取り扱い性が著しく低下する。又、この場合には、高負荷の制動が繰り返される厳しい条件で使用された場合に、予備成形体が全摩耗して、ブレーキディスクの耐摩耗性を確保する事が著しく困難になる。又、上記表層部の厚さを、鉄道車両用ブレーキディスクの最大厚さの20%を越える大きさとした場合には、上記予備成形体の全体にアルミニウム合金の溶湯を行き渡らせる事が、著しく困難になる。この為、この予備成形体にアルミニウム合金の溶湯を加圧含浸する際のこの予備成形体の潰れを生じる可能性が著しく高くなり、歩留りが悪化する原因となる。即ち、予備成形体の一部のみにしか上記溶湯が含浸されない状態が生じ易くなり、この場合には、更に加圧含浸した場合に上記予備成形体が潰れ易くなってしまう。又、この場合には、制動時にブレーキディスクの強度上好ましくない事態が生じる原因となる。
図1〜5は、本発明の実施例1を示している。これら各図のうち、図1〜4は、本実施例の鉄道車両用のブレーキディスク1を示しており、図5は、このブレーキディスク1の製造方法を示している。先ず、本実施例のブレーキディスク1に就いて説明する。ブレーキディスク1は、アルミニウム合金製の本体部2と、アルミニウム合金をマトリックス材とし、これにSiC、アルミナ等のセラミックスの粒子又は繊維、若しくはその両方を分散配合したアルミニウム合金基複合材料製の表層部3とを有し、全体を円輪状としている。上記ブレーキディスク1は、上記本体部2の片面に上記表層部3を一体に結合して成る。本実施例の場合、上記ブレーキディスク1は、片面(図1の表側面、図2の裏側面、図3、4の左側面、図5(ニ)の上側面)の外径側半部を、制動時に図示しない摩擦材を押し付ける為の摩擦面4としている。この摩擦面4は、上記表層部3の片面により構成している。これに対して、上記ブレーキディスク1の他面(図1の裏側面、図2の表側面、図3、4の右側面、図5(ニ)の下側面)の内径寄り部分は、鉄道車両用車輪(図示せず)の側面に固定できる様に、この側面にがたつきなく突き当て可能な形状としている。尚、図1では斜格子部分により、上記表層部4を表している。
又、本実施例の場合には、上記ブレーキディスク1の他面外径寄り半部を、それぞれが放射状に形成された凸部と凹部とを円周方向に亙って交互に配置した形状としている。これにより、上記ブレーキディスク1の凸部が上記鉄道車両用車輪の側面に突き当たり、又は近接対向した状態で、上記ブレーキディスク1の他面外径寄り半部とこの鉄道車両用車輪の側面との間(上記凹部と側面との間)に、冷却用の空気が流通自在な通路が形成される様にしている。
又、上記ブレーキディスク1の内径側半部には、それぞれがこのブレーキディスク1の内周縁に開口する複数の切り欠き5、5を、円周方向に亙って等間隔に形成している。これら各切り欠き5、5の断面形状は、複数の円弧を連続させて成る複合円弧である。又、これら各切り欠き5、5は、上記摩擦面4よりも内径側に外れた位置に形成しており、上記ブレーキディスク1の内周縁の一部を構成している。又、本実施例の場合には、上記ブレーキディスク1の内周縁のうちの最も外径側となる位置である、上記各切り欠き5、5の奥端よりも3〜10mm(より好ましくは3〜5mm)外径側にずれた位置に、上記摩擦面4の内周縁が位置する様にしている。言い換えれば、前記表層部3の内周縁は、上記各切り欠き5、5の奥端よりも、3〜10mm(より好ましくは3〜5mm)外径側にずれた位置に存在する。これに対して、上記摩擦面4の外周縁は、上記ブレーキディスク1の外周縁にまで達している。又、円周方向に隣り合う上記各切り欠き5、5同士の間部分に、前記鉄道車両用車輪にブレーキディスク1を取り付ける為のボルト挿通用の取付孔6、6を設けている。そして、上記各切り欠き5、5の頂点(奥端)を、上記各取付孔6、6のピッチ円よりも外側に存在させている。
特に、本実施例の場合には、図4に詳示する様に、アルミニウム合金基複合材料製の表層部3の両側面のうち、摩擦面4と反対側の他面を、直径方向外側(図4の下側)に向かうに従って上記摩擦面4から遠ざかる方向に傾斜した、摺鉢状のテーパ面14としている。そして、上記表層部3の軸方向の厚さt3 (径方向の任意の位置に於ける厚さ)を、直径方向外側に向かうに従って漸次増大させている。即ち、この表層部3の厚さt3 を内径側で薄くし、外径側で厚くしている。更に、この表層部3の厚さt3 を、この表層部3の径方向の全範囲に亙る総ての部分で、上記ブレーキディスク1の最大厚さT1 の6〜20%の範囲に納まる様に規制している(0.06T1 ≦t3 ≦0.20T1 )。例えば、上記表層部3の内周縁部での厚さt3aを、上記最大厚さT1 の6〜19%とする(0.06T1 ≦t3a≦0.19T1 )と共に、上記表層部3の外周縁部での厚さt3bを、この最大厚さT1 の7〜20%とする(0.07T1 ≦t3b≦0.20T1 )。又、本実施例の場合、上記表層部3中での前記セラミックスの粒子(又は繊維、或は繊維及び粒子の両方を分散配合する場合にはその両方)の含有率を、体積換算で25〜40%としている。
上述の様に構成する本実施例のブレーキディスク1は、次の様な製造方法により製造する。この製造方法を、図5を用いて説明する。先ず、上記表層部3を構成する予備成形体(プリフォーム)7を造る。この予備成形体7は、ブレーキディスク1の強化層部分である表層部3に於ける、強化材となるべきもので、SiC、アルミナ等のセラミックスの粒子又は繊維、若しくはその両方を適切な分量で十分に攪拌混合したものを高圧プレスにより所定の形状に形成し(固めて )、乾燥工程に於いて乾燥後、表面研磨工程を経た後、焼成する事により、全体を円輪状に造る。又、上記予備成形体7の摩擦面4(図5(ニ))と反対側となるべき側面は、直径方向内側から外側(図5の左側から右側)に向かうに従って上記摩擦面4となるべき面から遠ざかる方向に傾斜した摺鉢状のテーパ面15とする。尚、図5では、上記予備成形体7として、SiCの粒子とアルミナの繊維とを焼成し固める事により造ったものを、模式的に表している。又、上記予備成形体7は、上記粒子又は繊維、若しくはその両方を攪拌混合したものを適宜のバインダを用いて混練した後固めて、焼成する事により、全体を円輪状に造る事もできる。
又、ブレーキディスク1の完成品での表層部3(図5の(ニ))中での、上記セラミックスの粒子(又は繊維、或は繊維及び粒子の両方を分散配合する場合には、その両方)の含有率を、体積換算で25〜40%とする為に、上記予備成形体7での、上記セラミックスの粒子(又は繊維、或は繊維及び粒子の両方を分散配合する場合には、その両方)の含有率(予備成形体7の内部の空隙を除いた割合)を、体積換算で25〜40%とする様に、上記予備成形体7の密度を調整する。又、この予備成形体7の厚さを、ブレーキディスク1の完成品の最大厚さT1 (図4参照)の6〜20%に納まる様に規制する。
そして上述の様に構成する予備成形体7を、図5(イ)に示す様に、鋳造用の鋳型8内に設置する。この鋳型8は、上下二分割型で、それぞれが円輪状である、上型9と下型10とを有する。これら上型9と下型10とを突き合わせた状態で、鋳型8の内部には、ブレーキディスク1の完成品の外面とほぼ一致する形状を有するキャビティ11を形成する。又、上記鋳型8の内径側に、このキャビティ11に後述するアルミニウム合金の溶湯13を加圧注入する為の湯口(図示せず)を設けている。更に、上記上型9のうち、少なくとも上記予備成形体7と対向する部分に、それぞれが厚さ方向に貫通する複数の小孔(図示せず)を形成している。そして、この様な鋳型8を構成する下型10内に、その摩擦面4となるべき面が上記下型10の上端に位置する様に、上記予備成形体7を設置する。
尚、図示は省略するが、上記予備成形体7を上記鋳型8内の所定位置に設置する為に、例えば、上記下型10の外径側の内周面に段差面を設け、この段差面上に上記予備成形体7を設置する事もできる。但し、この場合には、ブレーキディスク1の完成後に上記表層部3の外周部が他の部分よりも外径側に突出した状態となる為、必要に応じてこの突出した部分を削り落とす。又、上記鋳型8内に上記予備成形体7を設置した状態で、上記上型9の片面(図5の下面)で、ブレーキディスク1の完成品の各切り欠き5、5(図1〜3参照)の奥端となるべき位置(図5の点D)から、外径側に3〜10mm(好ましくは3〜5mm)ずれた位置に、上記予備成形体7の内周縁12を位置させる。この様に各切り欠き5、5の奥端となるべき位置から予備成形体7の内周縁12を外径側にずらせる量は、図4の寸法Lに相当する。
又、上記予備成形体7は、予め予熱炉で350〜600℃(好ましくは400〜500℃)の範囲の所定温度に十分に予熱し、この状態で上記鋳型8内の表層部3(図5(ニ)参照)となるベき部分に配置する。そして、図5(ロ)に示す様に、上記鋳型8に上記湯口を通じて、アルミニウム合金の溶湯13を加圧した状態で送り込む。このアルミニウム合金としては、例えば、Al−Si−Mg合金を使用する。又、この溶湯13を送り込む際の圧力は、50MPa以上(例えば80MPa)の高圧とする。この様な溶湯13の送り込みにより、上記キャビティ11内でブレーキディスク1の本体部2となるべき部分に上記溶湯13が充填されると共に、上記予備成形体7にこの溶湯13が加圧含浸される。この予備成形体7に溶湯13が加圧含浸される際には、先ず予備成形体7中の空隙部分に存在する空気が、前記複数の小孔を通じて外部に排出される。尚、上記キャビティ11内に溶湯13を送り込むのに伴って、このキャビティ11内に存在する空気も上記複数の小孔を通じて外部に排出される。そして、このキャビティ11内に溶湯13が充填されると共に、上記予備成形体7中で上記空隙部分に上記溶湯13が加圧含浸され、温度低下後、上記鋳型8内からブレーキディスク1を取り出し、必要に応じて形状を整える為の仕上加工を施して、ブレーキディスク1(図1〜4)の完成品とする。
上述の様に構成する本実施例の鉄道車両用のブレーキディスク1によれば、軽量で且つ高靱性を有し、しかも、優れた耐摩耗性を有するブレーキディスク1を得られる。即ち、本実施例のブレーキディスク1は、アルミニウム合金製の本体部2とアルミニウム合金基複合材料製の表層部3とから成る為、十分な軽量化を図れる。又、この表層部3が、セラミックスの粒子又は繊維若しくはその両方を含むアルミニウム合金基複合材料製である為、摩擦面4の耐摩耗性を十分に高くできる。又、上記ブレーキディスク1のうちの上記表層部3以外の本体部2がアルミニウム合金製である為、ブレーキディスク1全体の靱性を高くできる。
しかも、本実施例の場合には、上記表層部3の厚さを直径方向外側に向かうに従って大きくしている為、制動に伴いブレーキディスク1が繰り返し高温になる場合でも、ブレーキディスク1の内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れ、このブレーキディスク1の熱変形を最小限に抑える事が可能になる。
この理由に就いて詳しく説明する。即ち、本実施例の場合と異なり、図6に示す様に、ブレーキディスク1の摩擦面4部分を含めて、全体を同じ材料により構成した場合、熱膨張に基づく引っ張り応力並びに歪みが、内径寄り部分で高くなる事が分かっている。即ち、制動時には、ブレーキディスク1の温度が、摩擦面4と摩擦材との摩擦により上昇する。但し、周速が早いこの摩擦面4の外径寄り部分と、周速が遅いこの摩擦面4の内径寄り部分とでは、摩擦により生じる熱量が相違し、即ち、外径寄り部分で熱量が多くなり、温度上昇にも違いが生じる。更に、上記ブレーキディスク1のうちで、上記摩擦面4と、この摩擦面4よりも更に内径寄り部分に存在する各切り欠き5、5同士の間部分16、16との間では、更に著しい温度上昇の相違が生じる。これら各間部分16、16は、鉄道用車輪の側面に当接する為、温度が上昇しにくい。そして、これら各間部分16、16の温度上昇の遅れは、径方向外方に隣接する、上記摩擦面4の内径寄り部分の温度上昇にも影響を与える(この内径寄り部分の温度上昇を遅らせる)。
具体的には、この摩擦面4の外径寄り部分の温度上昇が、内径寄り部分の温度上昇よりも著しくなる。そして、この外径寄り部分が、図6に矢印αで示す様に、径方向外方に膨張する傾向になり、この外径寄り部分に比べて膨張量が少ない内径寄り部分を引っ張る。この様にして上記摩擦面4の内径寄り部分が引っ張られる為、この内径寄り部分に引っ張り応力が、図6に矢印βで示す様に、円周方向に加わる。因に、膨張量が多くなる外径寄り部分には圧縮応力が加わる。圧縮応力は強度上、特に考慮する必要はないが、引っ張り応力の場合には、この応力が加わる部分に強度的に弱い部分が存在する事は設計上好ましくない。
これに対して、本実施例の場合には、靱性が比較的低く、熱膨張量が比較的小さい、アルミニウム合金基複合材料製の表層部3の厚さt3 を、直径方向外側に向かうに従って漸次大きくしている。即ち、この表層部3の厚さt3 を、内径寄り部分では小さくするのに対し、外径寄り部分では大きくしている。この為、上記表層部3の厚さt3 を直径方向の全範囲に亙る総ての部分で同じにしたと仮定した場合(両側面を互いに平行にした場合)と比較して、本実施例の場合には、上記表層部3以外の部分である本体部2の厚さが、内径寄り部分で大きくなり、外径寄り部分では小さくなる。この本体部2は、アルミニウム合金製で、上記表層部3よりも靱性が高く、熱膨張量が大きい。この様に、本実施例の場合には、ブレーキディスク1の外径寄り部分でアルミニウム合金製の本体部2の容積が小さくなる結果、このブレーキディスク1全体の熱膨張量を、外径寄り部分で小さくできる。この為、制動に伴いブレーキディスク1が繰り返し高温になる場合でも、外径寄り部分の熱膨張量を小さくできる為、内径寄り部分に加わる引っ張り応力を小さくでき、この内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れる。従って、上記ブレーキディスク1の熱変形を最小限に抑える事が可能になり、しかも靭性が低い表層部3の厚さt3 を内径寄り部分で小さくできる為、上記熱変形に基づく亀裂等の損傷の発生防止を有効に図れる。又、この様にブレーキディスク1の熱変形を抑える事ができる為、制動時の振動や騒音(ノイズ)の発生を抑える事ができると共に、摩擦材の偏摩耗を抑える事ができ、更に、ブレーキディスク1と鉄道車両用車輪とをボルトにより結合する場合でも、このボルトの折損を有効に防止でき、このボルトの耐久性向上を図れる。
更に、本実施例の場合には、上記表層部3の内周縁を、上記ブレーキディスク1の内周縁のうちの最も外径側となる位置である、各切り欠き5、5の頂点(奥端)よりも図4の寸法Lに相当する、3〜10mm(好ましくは3〜5mm)外径側に外れた位置に位置させている。この為、制動時に熱応力が過大となり易いブレーキディスク1の内径側端部近傍部分に、靱性が低いアルミニウム合金基複合材料製の表層部3が存在する事を防止できると共に、この表層部3の摩擦面4となる部分の面積を十分に確保できる。即ち、本実施例の様に、ブレーキディスク1の内周縁に切り欠き5、5を設けると共に、これら各切り欠き5、5の頂点(奥端)を、ボルト挿通用の取付孔6、6のピッチ円よりも外側に存在させた場合には、特許文献3に記載されている様に、熱膨張に基づく引っ張り応力並びに歪みが最大となる部分が、上記各切り欠き5、5の頂点部分(奥端部分)となる事が分かっている。又、この様に熱膨張に基づき歪みが最大となる上記頂点部分に靱性が低い部分が存在すると、この部分での熱応力が更に大きくなってしまう。本実施例の場合、この様に歪みが最大となる上記各切り欠き5、5の頂点から外径側に3〜10mm(好ましくは3〜5mm)外れた位置に靱性が低い表層部3の内周縁を位置させている為、ブレーキディスク1の内径寄り部分に加わる熱応力の更なる緩和を図れる。又、このブレーキディスク1の耐久性向上を図れる。又、上記表層部3の径方向の長さを十分に確保でき、この表層部3の片面の摩擦面4となる部分の面積を十分に確保できる。これに対して、上記表層部3を、上記各切り欠き5、5の頂点から外径側に3mm未満の範囲に上記表層部3の内周縁が位置する様に配置した場合には、上記ブレーキディスク1の内径側端部に加わる熱応力が過大となり、ブレーキディスク1の強度確保上好ましくない。又、上記表層部3を、上記各切り欠き5、5の頂点よりも10mmを越えた大きさ分外径側に外れた位置に上記表層部3の内周縁が位置する様に配置した場合には、この表層部3の径方向の長さが小さくなり、摩擦面4となる部分の面積、つまり摺動摩擦部となる部分の面積を十分に確保する事が著しく困難になる。本実施例の場合には、この様な不都合を何れもなくす事ができる。
又、本実施例の場合には、上記表層部3を構成するセラミックスを炭化珪素又はアルミナとしている為、この表層部3の硬度をより有効に高くでき、耐摩耗性をより有効に向上させる事ができる。この為、ブレーキディスク1の寿命を、より有効に向上させる事ができる。更に、上記表層部3中での上記セラミックスの粒子又は繊維、若しくはその両方を分散配合している場合にその両方の含有率を、体積換算で25〜40%としている。この為、上記表層部3の硬度をより有効に高くでき、耐摩耗性の向上をより有効に図れる。この結果、ブレーキディスク1の寿命を、より有効に向上させる事ができる。
又、本実施例の場合には、上記表層部3を構成する予備成形体7を焼成により造った後、この予備成形体7を予熱し、温度を所定値(例えば400℃)以上にした状態でこの予備成形体7を鋳型8内に、この鋳型8の内側で表層部3となるベき部分に配置し、上記予備成形体7に前記アルミニウム合金の溶湯13を加圧含浸する事により上記ブレーキディスク1を造っている。この為、この溶湯13が、予備成形体7の極く一部に含浸した後、直ちに温度低下する事を防止できる。この為、上記予備成形体7の極く一部のみにしか上記溶湯13が含浸されない事を防止でき、この予備成形体7中にアルミニウム合金を、ほぼ均一に含浸させる事ができる。この結果、良好な表層部3を実現し易くできる。
更に、本実施例の場合には、上記予備成形体の厚さとほぼ同じになる、上記表層部3の厚さt3 を、この予備成形体7の製造品質上の限界、ブレーキディスク1に発生する応力、制動に伴う摩耗等を考慮して適切に規制している。具体的には、上記表層部3の厚さt3 を、上記ブレーキディスク1の最大厚さT1 の6〜20%としている(0.06T1 ≦t3 ≦0.20T1 )。この為、本実施例の様に、セラミックスの粒子又は繊維若しくはその両方を固めて焼成して成る予備成形体7にアルミニウム合金の溶湯13を加圧含浸する事により上記表層部3を構成する場合に、製造時に於ける上記予備成形体7の取り扱い(ハンドリング)を容易に行なえると共に、ブレーキディスク1の耐摩耗性をより有効に確保できる。又、上記予備成形体7中にアルミニウム合金の溶湯13を全体に行き渡らせる事を、より有効に行なえると共に、この予備成形体7にアルミニウム合金の溶湯13を加圧含浸する際のこの予備成形体7の潰れを有効に防止でき、しかも、制動時にブレーキディスク1が強度低下する事をより有効に防止できる。これに対して、上記表層部3の厚さt3 を、ブレーキディスク1の最大厚さT1 の6%未満とした(t3 <0.06T1 )場合には、上記予備成形体7の使い勝手、鋳型への配置(セッティング)し易さ等、取り扱い性が著しく低下する。又、この場合には、高負荷の制動が繰り返される厳しい条件で使用された場合に耐摩耗性を確保する事が著しく困難になる。又、上記表層部3の厚さt3 を、ブレーキディスク1の完成品の最大厚さT1 の20%を越える大きさとした(t3 >0.20T1 )場合には、上記予備成形体7の全体にアルミニウム合金の溶湯13を行き渡らせる事が、著しく困難になる。この為、この予備成形体7にアルミニウム合金の溶湯13を加圧含浸する際のこの予備成形体7の潰れを生じる可能性が著しく高くなり、歩留りが悪化する原因となる。又、この場合には、制動時にブレーキディスク1の強度上好ましくない事態が生じる原因となる。
次の表1は、本発明の発明者が、本実施例でのブレーキディスク1の最大厚さT1 に対する表層部3の好ましい厚さt3 の割合を求める為に行なった検討結果を整理したものを示している。この表1に示した検討結果からも、上記割合を適切な範囲に規制した(0.06T1 ≦t3 ≦0.20T1 )場合には、製造時の予備成形体7の取り扱いを容易に行なえると共に、ブレーキディスク1の耐摩耗性を有効に確保でき、予備成形体7にアルミニウム合金の溶湯13を加圧含浸する際のこの予備成形体7の潰れを有効に防止できる。又、この様な検討結果から、ブレーキディスク1の最大厚さT1 を49mmとした場合には、上記表層部3の厚さ(=予備成形体7の厚さ)t3 を、2.9〜9.8mmの範囲に規制する事が好ましい事が分かる。
Figure 0004478068
次に、本発明者が本実施例の効果を確認すべく、ブレーキディスク1の各部に発生する熱応力の分布を求める為に行なったシミュレーションの結果に就いて説明する。シミュレーションは、前述の図1〜4に示した実施例のブレーキディスク1と同様の構造を有する1種類の実施品(表層部3の内周縁を、切り欠き5の頂点(奥端)からの距離L(図4)で5mm外径側に位置させたもの)と、この実施品と基本構造を同じにし、表層部3の厚さを径方向の全長に亙り同じにする(両側面を互いに平行にする)と共に、この表層部3の内周縁を切り欠き5(図1等参照)の頂点(奥端)に合わせた(L=0)位置とした比較品1と、この比較品1の場合よりも表層部3の内周縁を外径側に5mmずらせた(=表層部3の内周縁を切り欠き5の頂点から外径側に5mm外れた(L=5mm)位置とした)比較品2とを使用した。又、上記実施品では、表層部3の内周縁を、切り欠き5、5の頂点(奥端)から外径側に5mm外れた(L=5mm)位置としている。そして、上記実施品及び比較品1、2で、台上試験結果で得られた温度分布に基づいて、各部に発生する熱応力の分布を求めるシミュレーションを行なった。
この様にして行なったシミュレーションの結果を、図7に示している。図7では、(a)が比較品1を、(b)が比較品2を、(c)が実施品を、それぞれ示している。又、図7で黒地で塗りつぶした部分が、熱応力が最も高い値を示した事を表しており、これよりも熱応力が低いものを、熱応力が高いものから順に斜格子部分、梨地部分、白地部分により表している。図7に示したシミュレーション結果から明らかな様に、表層部3の厚さを直径方向外方(図7の奥側)に向かうに従って大きくすると共に、この表層部3の内周縁を、切り欠き5の頂点から外径側に5mm外れた(L=5mm)位置とした実施品(図7(c))の場合には、ブレーキディスク1の内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れ、強度を十分に確保できる。
次に、図8は、本発明に関する参考例のブレーキディスク1aを示している。本例のブレーキディスク1aの場合には、表層部3aのうち、本体部2側となる他面(図8の右側面)の径方向中間部2個所位置に、短円筒状の段差面17、18を設けている。そして、上記表層部3aの他面に、それぞれが摩擦面4と平行な第一〜第三の面19〜21を設け、隣り合う第一〜第三の面19〜21同士を上記各段差面17、18により連続させている。そしてこの構成により、上記表層部3aの厚さta 、tb 、tC を、径方向内寄り部分(図8の上寄り部分)で小さくし、径方向外寄り部分(図8の下寄り部分)で大きくし、径方向中央部で中間の厚さとしている(ta <tb <tC )。
この様な本例の場合には、上述の図1〜5に示した実施例1の場合と異なり、表層部3aの厚さta 、tb 、tC を、直径方向内側から外側に向かうに従って漸次大きくすると言った構成を採用してはいない。但し、この様な本例の場合も、制動に伴いブレーキディスク1aが繰り返し高温になる場合でも、このブレーキディスク1aの内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れる。即ち、本例の場合も、上述の実施例1の場合と同様に、靱性が比較的低く、熱膨張量が比較的小さい、アルミニウム合金基複合材料製の表層部3aの厚さta 、tb 、tC を、内径寄り部分で小さく、外径寄り部分で大きくしている。この為、上記表層部3aよりも靱性が高く、熱膨張量が大きい、アルミニウム合金製の本体部2の厚さは、内径寄り部分で大きく、外径寄り部分で小さくなる。この結果、ブレーキディスク1a全体の熱膨張量を、外径寄り部分で小さくでき、このブレーキディスク1aの内径寄り部分に加わる引っ張り応力を小さくできる為、この内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れる。従って、ブレーキディスク1aの熱変形を最小限に抑える事が可能になり、しかも靱性が低い表層部3aの厚さta 、tb 、tC を内径寄り部分で小さくできる為、上記熱変形に基づく亀裂等の損傷の発生防止を有効に図れる。又、制動時の振動や騒音(ノイズ)の発生を抑える事ができると共に、摩擦材の偏摩耗を抑える事ができ、更に、上記ブレーキディスク1aと鉄道車両用車輪とを結合するボルトの折損を有効に防止でき、このボルトの長寿命化を図れる。
その他の構成及び作用に就いては、上述の図1〜5に示した実施例1の場合と同様である為、重複する説明は省略する。
次に、図9は、本発明の実施例2のブレーキディスク1bを示している。本実施例の場合には、表層部3bの本体部2側の他面(図9の右側面)の内径寄り部分を、摩擦面4と平行にし、この部分での厚さta を小さくすると共に、同図の点Pと対応する径方向中間部から外径側部分での、上記表層部3bの厚さを、直径方向外側に向かうに従って漸次増大させている。この為に、本実施例の場合には、上記点Pよりも外径側での上記表層部3bの他面を、直径方向外側に向かうに従って摩擦面4から離れる方向に傾斜したテーパ面14aとしている。
この様な本実施例の場合も、前述の図1〜5に示した実施例1の場合と同様に、ブレーキディスク1bの内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れ、熱変形を最小限に抑える事が可能になる。
その他の構成及び作用に就いては、前述の図1〜5に示した実施例1の場合と同様である為、重複する説明は省略する。
次に、図10は、本発明の実施例3のブレーキディスク1cを示している。本実施例の場合には、表層部3cの本体部2側の他面(図10の右側面)の内径寄り部分を、摩擦面4と平行にし、この部分での厚さta を小さくすると共に、同図の点Q1 と対応する径方向中間部から点Q2 と対応する径方向中間部までの部分での、上記表層部3cの他面を、断面形状が曲率半径R1 の円弧である、第一の凹曲面22としている。そして、この第一の凹曲面22に対応する表層部3cの厚さを、直径方向外側に向かうに従って漸次増大させている。又、上記点Q2 よりも外径側での上記表層部3cの他面を、断面形状が上記曲率半径R1 よりも小さい曲率半径R2 (<R1 )の円弧である、第二の凹曲面23としている。そして、この第二の凹曲面23に対応する表層部3cの厚さを、直径方向外側に向かうに従って漸次増大させている。
この様な本実施例の場合も、前述の図1〜5に示した実施例1の場合と同様に、ブレーキディスク1cの内径寄り部分に加わる熱応力の緩和を図れ、熱変形を最小限に抑える事が可能になる。
その他の構成及び作用に就いては、前述の図1〜5に示した実施例1の場合と同様である為、重複する説明は省略する。
尚、図示は省略するが、本実施例の場合で、上記表層部3cの点Q1 よりも内径側での他面を、断面形状が上記曲率半径R1 よりも大きい曲率半径の円弧である、凹曲面としたり、上記表層部3cの他面を、内径側の第一の凹曲面と外径側の第二の凹曲面とを、径方向中間部で連続させる等により構成する事もできる。
本発明の実施例1のブレーキディスクの片半部を示す図。 図1の裏側から見た片半部を示す図。 図1のA−O−B断面図。 図3のC部拡大断面図。 実施例1のブレーキディスクを得る為の製造方法での鋳造工程を、模式的に示す断面図。 制動時に加わる熱応力を説明する為の部分正面図。 実施例1の効果を確認すべく行なった熱応力の分布を求めるシミュレーションの結果を、(a)は比較品1で、(b)は比較品2で、(c)は実施品で、それぞれブレーキディスクの内径寄り部分の一部を切り出して示す斜視図。 本発明に関する参考例のブレーキディスクを示す、図4と同様の図。 本発明の実施例2のブレーキディスクを示す、図4と同様の図。 同実施例3のブレーキディスクを示す、図4と同様の図。
符号の説明
1、1a、1b、1c ブレーキディスク
2 本体部
3、3a、3b、3c 表層部
4 摩擦面
5 切り欠き
6 取付孔
7 予備成形体
8 鋳型
9 上型
10 下型
11 キャビティ
12 内周縁
13 溶湯
14、14a テーパ面
15 テーパ面
16 間部分
17 段差面
18 段差面
19 第一の面
20 第二の面
21 第三の面
22 第一の凹曲面
23 第二の凹曲面

Claims (5)

  1. 側面に摩擦材を押し付ける為の摩擦面を有する表層部が、セラミックスの粒子又は繊維、若しくはその両方を含むアルミニウム合金基複合材料製であり、上記表層部以外の部分がアルミニウム合金製である、鉄道車両用車輪の側面に固定される鉄道車両用ブレーキディスクであって、
    上記表層部の厚さを直径方向外側に向かうに従って大きくした鉄道車両用ブレーキディスク。
  2. 上記セラミックスを炭化珪素又はアルミナとした、請求項1に記載した鉄道車両用ブレーキディスク。
  3. 上記表層部中での、上記セラミックスの粒子又は繊維、若しくはその両方の含有率を、体積換算で25〜40%とした、請求項1又は請求項2に記載した鉄道車両用ブレーキディスク。
  4. 上記表層部の内周縁を、鉄道車両用ブレーキディスクの内周縁のうちの最も外径側となる位置よりも3〜10mm外径側に外れた位置に位置させた、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した鉄道車両用ブレーキディスク。
  5. 上記表層部の厚さを鉄道車両用ブレーキディスクの最大厚さの6〜20%とした、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した鉄道車両用ブレーキディスク。
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