JP4476419B2 - 体温計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、人の耳孔内の温度を短時間で正確に測定するための体温計に関する。
【0002】
【従来の技術】
人の体温を測定するための体温計は、口や脇の下、あるいは直腸で測定されている。ところで、人体内において、脳は多量の血液を循環させている関係で、正確な体温は脳の温度を測定することにより得られる。そして、口は脳に近いので口腔内の温度は体温にほぼ等しいことから、口腔内で体温を計るのが最も適している。このため、口腔内に水銀体温計や電子体温計を差し込むことで体温を測定することが広く行われている。
【0003】
しかしながら、水銀体温計は、測定に約10分と長い時間がかかる欠点がある。この点、電子体温計の測定時間は、予測式で約60秒程度と比較的短いが、両者ともに測定時に口腔内に直接差し込まれるため、病原体の感染の問題があり、衛生上好ましくない。また、予測式電子体温計では正確な体温測定ではなく、実測式電子体温計では、約6分程度とやはり測定時間が長くかかっていた。
【0004】
そこで、耳孔内にプローブを差し込んで短時間で体温を計測することができる体温計が提案されている。すなわち、耳孔内は、脳に近く、その温度は体温にほぼ一致しており、体温測定には適しているからである。
【0005】
この種の体温計としては、例えば、特開平8−313357号公報に記載されたような体温計が知られている。この体温計を図9に示す。
【0006】
この体温計は、手で掴むことができる大きさの本体9から、耳孔内に差し込むためのプローブ4が突出している。プローブ4内の空洞部4aには、プローブ開口4bから取り入れた赤外線を温度センサ8まで導く導光管5が配置されている。温度センサ8は、入射した赤外線量から、温度に応じた電気信号を発生するため、この電気信号から体温を測定することができる。
【0007】
また、プローブ4の先端部には、プローブ開口4bからゴミ等の異物や湿気等が入ることを防止するため、円盤型のカバー6が取り付けられている。さらに、プローブ4は、汚れを防ぐため、ポリエチレン製のフィルム7が被着されている。このフィルム7は、測定毎に取り替えて、測定時に病原体に感染することを防ぐようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような耳孔式の体温計では、カバー6として、赤外線透過性のよい高価なシリコンガラスが用いられているが、1枚のガラスから円盤を切り出して円盤型のカバー6を製造することは難しく、かつ、1枚のガラスから多数の円盤を切り出すと、無駄になる部分も多く不経済であった。また、誤って体温計を落とした場合、カバーが割れ易いという問題もあった。
【0009】
このような問題を解消するため、製造が容易で、材料の無駄が少なく、誤って体温計を落とした場合にも割れにくいカバーを備えた体温計を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するために、請求項1に係る発明では、温度測定手段を収容した本体と、該本体に取付けられ先端に開口を有するプローブ部と、該プローブ部内に配置され、前記開口から取り入れた赤外線を温度測定手段へ導く導光管とを備えた体温計において、前記開口を塞ぎ赤外線を透過させる多角形の開口カバーと、該開口カバーの周縁に固定された弾性体リングと、該弾性体リングを前記導光管の先端に固定する開口カバー固定体とを備え、前記弾性体リングには、前記開口カバー周縁と係合する円周方向溝と、該円周方向溝から放射方向に向かう放射方向孔とが設けられ、該放射方向孔に前記開口カバーの各頂点が係止された。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態による体温計のプローブ部の縦断面図を示したものである。本発明の体温計10は、内部に導光管13を収容する細長いプローブ部12と、該プローブ部12と結合した本体11を備えている。本体11内には、導光管13で導かれた赤外線が入射する温度測定手段としての赤外線センサ14が配置されている。赤外線センサは入射した赤外線量から、温度に応じた電気信号を発生するため、この電気信号を体温に変換して、図示しない表示部に表示するようになっている。本体11は、プラスチック製で従来のものと同じであるから、図1では、プローブ部12との結合部以外は省略している。
【0013】
プローブ部12は、先端の開口12aと、この開口12aを塞ぐ開口カバー18と、この開口12aから本体11内へ延びる細い導光管13とを有している。
【0014】
開口カバー18は、赤外線透過性の良いシリコンガラス製で、図2に示したように正六角形をしており、また、図3に示したように、1枚のシリコンガラスから無駄なく多数の開口カバー18を切り出すことによって得られる。
【0015】
導光管13は、赤外線を効果的に導くことができる材料、例えば真鍮やアルミニウム等により直管状に形成されており、先端に開口を有していて、プローブ部12を耳孔内に挿入すると、耳孔内の鼓膜等の測定対象部位における温度に応じて放射される赤外線を本体11内の赤外線センサ14まで導く機能を有している。導光管13の基部には、太くなった部分があり、この部分に本体11との係合部13cが形成されている。
【0016】
開口カバー18は、周縁に衝撃吸収用の弾性体リング15を固定している。 図4−図7に、開口カバー18の周縁に固定される弾性体リング15を示す。ここで、図4は平面図であり、図5は正面図であり、図6は側面図であり、いずれの図も中心線の片側を断面図で示してある。また、図7には弾性体リング15の斜視図を示す。
【0017】
弾性体リング15は、衝撃吸収能力の高いゴム等の弾性体からなり、矩形断面のリング形状をしている。本実施例では、弾性体として、ショア硬度が70−80°程度のシリコンゴムを用いた。また、弾性体リング15は、中心側面に開口カバー18の周縁と係合する周方向溝15aが設けられており、この周方向溝15aの底面には、正六角形の開口カバー18の各辺が当接するようになっている。さらに、開口カバー18の頂点に対応させて、周方向溝15aの底面からは放射方向外側面へと貫通する放射方向孔15bが設けられ、放射方向外側面には、放射方向孔15bと連続する縦溝15cが設けられている。
【0018】
開口カバー18は、導光管13の先端に開口カバー固定体16によって固定される。この開口カバー固定体16は、比較的硬いプラスチックからなり、導光管13の周囲に密着した円筒体であり、基部に雌ねじ16bが切られ、先端には中心側に折り曲げられた弾性体リング押え部16aが設けられている。この弾性体リング押え部16aと導光管13の先端の間に、開口カバー18の周縁に固定された弾性体リング15を挟持し、この状態で、開口カバー固定体16に切られた雌ねじ16bを導光管13の周囲に切られた雄ねじ13bに螺合させ、開口カバー固定体16を回転させることにより、開口カバー18を導光管13の先端に固定する。
【0019】
開口カバー固定体16の周囲は、ゴム等の柔らかい材料からなり、先細にテーパしたプローブカバー17で覆うようになっている。プローブカバー17は、先端に開口カバー固定体16の弾性体リング押え部16aを覆う開口周縁部17aを、基部に本体11と係合するための係止部17cを備えている。プローブカバー17は、人に傷をつけないようにするとともに、導光管13を熱絶縁して、近くにある熱源等の影響による測定誤差が出ないようにしている。
【0020】
以上のような実施形態によれば、次のような効果がある。
【0021】
開口カバー18は、正六角形をしているから、1枚のシリコンガラスから無駄なく多数の開口カバーを切り出すことができ、しかも、直線に沿って切断するだけであるから、この切り出し作業は容易である。
【0022】
また、開口カバー18は、衝撃吸収性のよい弾性体リング15を介して、導光管13の先端に固定されるとともに、開口カバー18がプローブカバー17の開口周縁部17aより引っ込んだ位置にあり、体温計を落としたときに開口カバー18が直接床に衝突しないようになっているので、開口カバー18が割れにくくなっている。
【0023】
さらに、開口カバー固定体16の先端の弾性体リング押え部16aと導光管13の先端との間に、開口カバー18の周縁に固定された弾性体リング15を挟持するとともに、開口カバー固定体16の基部に切られた雌ねじを導光管13の周囲に切られた雄ねじに螺合させることにより、開口カバー18を導光管13の先端に固定することは容易である。周縁に弾性体リング15を固定した開口カバー18の予備を用意しておけば、開口カバー18を割った場合にも、開口カバー18の交換は容易である。
【0024】
しかも、弾性体リング15には、開口カバー18の頂点に対応する放射方向孔15bと縦溝15cが設けられていて、弾性体リング15は変形し易く、かつ、開口カバー18の各頂点をこの放射方向孔15bに係止させると、開口カバー18と弾性体リング15とが滑らなくなるため、開口カバー18の周縁に弾性体リング15を固定することも容易となる。
【0025】
図8に、第2の実施形態を示す。図8は、プローブ部12の先端部以外は、図1と同じであるから、この部分以外は省略する。弾性体リングとしては、開口カバー18の周縁に沿い、溝や孔を設けない単純な弾性体リング25a、25bを2つ用い、一方の弾性体リング25bを開口カバー18と導光管13の先端との間に配置し、他方の弾性体リング25aを開口カバー18と開口カバー固定体16の弾性体リング押え部16aとの間に配置する。開口カバー18の外径は、開口カバー固定体16の内径より少し小さくして、開口カバー固定体16から開口カバー18へ衝撃力が直接伝わらないようにする。その他は、図1に示した実施形態と同じであるから説明を省略する。この実施形態によれば、弾性体リング25a、25bとして従来のOリングをそのまま使えるから、製造が容易で経済的である。
【0026】
ところで、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。たとえば、次のような実施形態がある。
【0027】
開口カバー18は、正六角形でなくとも、正方形等のように曲線部分を有しない多角形であればよい。この場合には、開口カバー固定体16の先端部と弾性体リング15の形状を開口カバー18の形状に合わせる必要がある。
【0028】
弾性体リング15に設けた放射方向孔15bは、開口カバー18の頂点を係止できればよく、貫通孔ではなく、盲孔としてもよい。また、製造工程を減らすため、弾性体リング15には、縦溝15cを設けなくてもよい。
【0029】
開口カバー固定体16としては、開口カバー18の周縁に固定された弾性体リング15を導光管13の先端に固定する固定手段であれば、どのようなものを用いてもよい。たとえば、開口カバー固定体16の代りに接着剤を用い、弾性体リング15を導光管13の先端に直接固定してもよい。
【0030】
温度検出手段として、赤外線センサーではなく、熱電対、サーミスタ等その他の温度検出手段を用いてもよい。また、測定精度を高めるため、上記本体11またはプローブ部12を予備的に加熱する手段を設けて、測定前に体温程度まで温度上昇させてから、検出を行うようにしてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に係る発明によれば、開口カバーは、衝撃吸収性のよい弾性体リングを介して、導光管の先端に固定されるから、体温計を落としたときに開口カバーが割れにくくなっている。さらに、弾性体リングには、開口カバーの頂点に対応する放射方向孔が設けられていて弾性体リングは変形し易く、かつ、開口カバーの各頂点をこの放射方向孔に係止させると、開口カバーと弾性体リングとが滑らなくなるため、周縁に弾性体リングを固定した開口カバーを製造することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る体温計のプローブ部の断面図である。
【図2】プローブ部の先端の開口を塞ぐ開口カバーの平面図である。
【図3】1枚のガラスから開口カバーの切り出し方を説明する図である。
【図4】弾性体リングの平面図であり、中心線の右側は断面図である。
【図5】弾性体リングの正面図であり、中心線の右側は断面図である。
【図6】弾性体リングの側面図であり、中心線の右側は断面図である。
【図7】弾性体リングの斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る体温計のプローブ部の断面図である。
【図9】従来の体温計のプローブ部の断面図である。
【符号の説明】
10 体温計
11 本体
12 プローブ部
13 導光管
15 弾性体リング
16 開口カバー固定体
17 プローブカバー
18 開口カバー
25a、25b 弾性体リング
Claims (1)
- 温度測定手段を収容した本体と、該本体に取付けられ先端に開口を有するプローブ部と、該プローブ部内に配置され、前記開口から取り入れた赤外線を温度測定手段へ導く導光管とを備えた体温計において、
前記開口を塞ぎ赤外線を透過させる多角形の開口カバーと、該開口カバーの周縁に固定された弾性体リングと、該弾性体リングを前記導光管の先端に固定する開口カバー固定体とを備え、
前記弾性体リングには、前記開口カバー周縁と係合する円周方向溝と、該円周方向溝から放射方向に向かう放射方向孔とが設けられ、該放射方向孔に前記開口カバーの各頂点が係止されたことを特徴とする体温計。
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