JP4474515B2 - アーチサポート及びこれを用いたインソール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アーチサポート、特に、足裏にかかる荷重を効率的に分散させることができるシューズ用アーチサポート及びこれを土踏まず部分に形成したインソールに関する。
【0002】
【従来の技術】
日本人は古くは草履や下駄を使用していたが、戦後、靴を履く習慣を獲得し、それに伴い日本人の足部形状も変化してきた。足部と地面のインターフェイスである靴は、近年スポーツシューズを中心にハイテク化が進み、特に、靴底及びアッパーの機能は向上している。しかし、各個人の足に適合した靴が提供されている状況にはなく、よりファッション性を重視した靴が多い。特に、パンプスやハイヒール等の婦人靴ではそれは顕著である。
【0003】
従来のシューズは、ファッション性が重視され、これによって生じる弊害をシューズの部分的な改善で補うものであったが、近時、科学的観点からスポットが当てられ、起立時及び歩行時における人体の生理学的、解剖学的、力学的特徴を考慮して、人の足に最も適合するシューズの開発が進められている(例えば、下記特許文献1参照)。また、これに対応して、シューズ用インソールについても科学的観点からスポットが当てられ、脱臭や硬さの調整のためのインソールの積層や、足の実測データに基づいたインソールの製造方法に関する提案がある(例えば、下記特許文献2〜5参照)。
【0004】
足底には、内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチという骨性の形状が存在し、それに、筋、腱、靭帯が複合して立位時のアライメントバランスを保っている。仮にその何れかが支障をきたすと、バランスは崩れ、結果、扁平足や外反母趾といった不都合が生じる場合がある。また、踵骨と中足骨部にかかる荷重分布は、立位時の加重中心と踵との距離と、加重中心と母指及び小指球との距離との比(例えば、下記非特許文献1の図中に示されるOR:YR比)に比例して荷重がかかるため、高さ40mmのヒールでは、中足骨頭にかかる力は裸足の1.5倍、高さ90mmのヒールでは、裸足の2倍となり、動的な状態では更なる負荷がかかると考えられており、これが足アーチ、足指の変形を助長しているものと考えられている。また、ヒールが高くなればなるほど、靴の中で足底筋膜はより緊張し、足部全体としてもストレスが増大すると考えられる。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−224106号公報
【特許文献2】
特開平8−280409号公報
【特許文献3】
特開平11−151102号公報
【特許文献4】
特開2000−116407号公報
【特許文献5】
特開2000−93201号公報
【非特許文献1】
石塚忠雄,「新しい靴と足の医学」,金原出版(株),平成8年9月30日発行,p.49
【0006】
更に、近年、靴を起因とする足部の障害の存在も指摘されており、幼年期に不適合な靴を履き始めることによって、扁平足の発生率が高くなるとの報告や、若年女性の約7割に軽度の扁平傾向を認めたとの報告もある。このような場合、踵の高い靴をはくと、足がつま先側にずれて親指が圧迫され、扁平足により、足が開き親指が圧迫される。また、婦人靴は特に、前足部が狭くなっており、親指が圧迫されやすいため足部への負荷は更に大きくなる。
【0007】
しかしながら、従来のアーチサポートやインソール、特にパンプスやハイヒール等の婦人靴用の従来のアーチサポートやインソールは、アーチの持ち上げが不十分であり、インソールにあっては、アーチをサポートするアーチ形状が付いていないものがほとんどである。このような形状のものでは足部形態に十分に適合しているかは疑問であり、硬めの素材を使用しているので違和感があり、かえって疲労度を増加させてしまうものも少なくない。
【0008】
また、従来のアーチサポートやインソールの大部分は消臭を目的としたものが多く、既成靴の形状に必ずしも適合するものではなく、また、各個人の足の形状に適合するものでもないので、これらが足の疲れ、足の痛みなどを十分軽減できていないという問題がある。
【0009】
一方、各個人の足に靴を適合させるために各個人毎に靴自体を特注すれば、足の疲れ、足の痛みを軽減でき、健康的でかつ履き心地の良い靴を製造することができるものの、ファッション性等も考慮すると非常に高価となるため現実的ではなく、安価で効果的に足部の負担を軽減できるアーチサポートやインソールが望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、足裏の荷重を分散して痛みを軽減し、歩行時の疲労を防止することができ、通気性、靴の履き心地(フィット性)にも優れたアーチサポート及びこれを用いたシューズ用インソールを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、シューズ用アーチサポートを構成する材料として、気孔率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体を用いること、高分子多孔質体としてポリスチレン、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等の疎水性熱可塑性樹脂、及びポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー若しくはポリプロピレンエラストマー等の疎水性熱可塑性エラストマーの混合物を母材としたものが、足裏、特につま先にかかりやすい荷重を分散してつま先にかかる荷重・痛みを軽減し、歩行時の疲労を防止することができると共に、通気性、靴の履き心地(フィット性)にも優れることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、シューズ内に挿入されて使用され、下面の内側及び外側がそれぞれ上側に向けて傾斜するテーパ面をなすシューズ用アーチサポートであって、高分子材料として疎水性の熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの混合物を母材とし、この混合物に常温で固体であって上記高分子材料の成形温度で溶融する気孔形成材を混合分散させ、これを成形して得た充実成形体から、溶媒により上記気孔形成材を溶出することにより形成した連続気孔を有し、該連続気孔の気孔率が50〜80%である高分子多孔質体により形成されてなることを特徴とするアーチサポート及びこれを土踏まず部に形成したシューズ用インソールを提供する。
【0013】
【発明の実施の形態及び実施例】
以下、本発明につき図面を参照して更に詳述する。
図1は、本発明の一実施例に係るシューズ用アーチサポートを示すものであり、(A)は平面図、(B)は後側から見た側面図、(C)は外側から見た側面図である。なお、図1に示されたアーチサポートは、右足側のシューズ用として用いられるものであり、左足側用はこれと左右対称形に形成される。
【0014】
本発明のアーチサポート1は、図1に示されるように、その下面が、中間面11と内側テーパ面12と外側テーパ面13とから構成されている。この場合、中間面11は、ほぼ平面状に形成され、内側テーパ面12は、中間面11に連続して上側に傾斜し、外側テーパ面13は、中間面に連続して上側に傾斜して形成された断面略逆台形状に構成されている。
【0015】
また、本発明のアーチサポートにおいては、特に限定されるものではないが、図1(B)に示されるように、内側の高さを外側の高さより高く形成することが好ましい。これにより、装着時に足裏、特に土踏まずでのフィット感が向上すると共に、足裏の荷重を分散する効果が増大する。この場合、内側テーパ面の最大高さ(図1(B)中hiで示される)を16〜28mm、特に、18〜24mm、外側テーパ面の最大高さ(図1(B)中hoで示される)を10〜18mm、特に11〜15mmの範囲に形成することが好ましい。また、アーチサポートの前後方向の長さは94〜114mm、幅は60〜76mmであることが好ましい。
【0016】
更に、本発明のアーチサポートにおいて、上面(装着時に足裏と対向する面)14は、平面、凹面、凸面等に形成可能であるが、図1(B)及び(C)に示されるように、上面14が、その中央部から前後方向には下側(靴底側)、幅方向(内外方向)には上側(足裏側)に傾斜するように形成されていることが好ましい。上面14をこのような形状に形成すると、足裏の土踏まず部によりフィットさせることができると共に、アーチサポート自体は、後述するように、気孔率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体により形成されているので、その柔軟性と相俟って、荷重の重心位置の変化に合わせて内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチを更に効果的にサポートすることができる。
【0017】
次に、本発明のアーチサポートを構成する高分子多孔質体について説明する。
本発明のアーチサポートは、気孔率が50〜80%の連続気孔を有する高分子多孔質体からなり、この高分子多孔質体は、高分子材料に常温で固体である気孔形成材を分散させて成形することにより製造した充実成形体から、溶媒により気孔形成成分を溶出させることにより得ることができる。
【0018】
上記高分子材料としては、気孔形成材と流動状態で混合することができるものが好ましく、これにより、気孔形成材を均一に分散させることができ、気孔が全体にわたって均一に存在する均質な多孔質体を製造することができる。また、高分子多孔質体を射出成形にて成形することができることから、これらは液体状態で成形することができるものであることが好ましい。
【0019】
液体状態を有する高分子材料としては、温度を上げることによって溶融状態となる熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーは勿論のこと、プレポリマーや液状ゴムのように成形初期には液体状態で、架橋により硬化する熱硬化型樹脂やゴムを用いることもできる。
【0020】
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、POMなどが挙げられ、射出成形、押出成形するのに好適な樹脂が好ましく用いられる。成形材料における高分子材料としては、これらの熱可塑性樹脂の1種類だけであってもよいし、2種類以上をブレンドしたものであってもよい。
【0021】
熱可塑性エラストマーとは、ゴム状弾性を示すソフトセグメント及び三次元網目の結び目となるハードセグメントから構成されるもので、常温ではゴム弾性を示し、高温で可塑化するので、射出成形、押出成形することができる。
【0022】
具体的には、ハードセグメントがポリスチレンで、ソフトセグメントがポリブタジエン、ポリイソプレン又はこれらの水素添加物であるポリスチレン系エラストマー、ハードセグメントがポリエチレン又はポリプロピレンで、ソフトセグメントがブチルゴム又はEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)であるポリオレフィン系エラストマー、ハードセグメントがポリアミドで、ソフトセグメントがポリエステル又はポリエーテルであるポリアミド系エラストマー、ハードセグメントがポリエステルで、ソフトセグメントがポリエーテルであるポリエステル系エラストマー、ハードセグメントがウレタン結合を有するポリウレタン系ブロックポリマーで、ソフトセグメントがポリエステル又はポリエーテルであるポリウレタン系エラストマーなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、これらの熱可塑性エラストマーと上記熱可塑性樹脂とを混合して用いる。
【0023】
熱硬化型樹脂の場合は、初期縮合物である液状のプレポリマーを本発明の高分子材料として用い、成形に際して架橋硬化させて用いることができる。具体的には、ウレタンプレポリマー、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などを用いることができ、これらは、硬化剤とともに用いてもよいし、射出成形や押出成形に際して動的架橋して硬化させてもよい。
【0024】
ゴムとしては、天然ゴム又はエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムなどのゴム、更には解重合により低分子量化した液状ゴムなどが用いられる。これらのうち、液状ゴムが、射出成形又は押出成形を採用することができるので好ましく用いられる。
【0025】
熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーとしては、疎水性の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを用いる。中でもポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系エラストマー、並びにポリエチレン系エラストマー又はポリプロピレン系エラストマー等のポリオレフィン系エラストマーの1種又は2種以上を用いることが好ましく、2種以上用いる場合は、ポリスチレン系エラストマー又はポリオレフィン系エラストマーを主材として用いることが好ましい。
【0026】
一方、上記気孔形成材としては、常温で固体であって、成形温度で溶融するものであればよい。ここで、成形温度とは、多孔体の骨格部分を形成する高分子材料の種類により異なるが、後述するように、本発明において成形温度は、100〜300℃程度が好ましいことから、これら溶融可能型気孔形成材としては、100〜300℃で溶融する化合物、好ましくは有機化合物が用いられる。特に、融点が40〜300℃程度、好ましくは150〜300℃程度の有機化合物が好ましく、有機化合物としては多価アルコールが好ましい。
【0027】
気孔形成材の融点が高すぎると、成形温度を高分子材料の溶融温度よりもかなり高い温度に設定する必要があり、高分子材料の焼けや熱分解が起こるおそれがある。
【0028】
このような気孔形成材としては、ペンタエリスリトール、L−エリスリトール、D−エリスリトール、meso−エリスリトール、ピナコール等の炭素数2〜5程度の多価アルコールや尿素などが挙げられる。これらのうちでは、多価アルコールが好ましく、特にペンタエリスリトールが好ましい。多価アルコールを用いることにより、その親水性に基づいて、洗浄工程に用いる溶媒として水を選択することが可能となり、ペンタエリスリトールは、その純度にもよるが一般に180〜270℃で溶融するので、高分子材料の選択範囲が広く、しかも成形後の固化が速いので、充実成形体の冷却時間が短くなり、生産性に優れているからである。
【0029】
なお、上記気孔形成材は、1種類だけ用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。2種類以上混合する場合には、溶融温度、溶出に用いる溶媒が共通した組み合わせを選択する必要がある。また、溶媒として水を用いる場合、上記気孔形成材とともに、無機塩型気孔形成材を併用することもできる。
【0030】
上記気孔形成材の配合量は、高分子多孔質体の気孔率に応じて適宜選択することができ、配合する気孔形成材の含有量に応じて気孔率を制御することができる。即ち、高分子材料、気孔形成材及び後述の添加物を合わせた全成形材料中の気孔形成材の割合を、気孔率とほぼ同じ体積率にすることにより、所望の気孔率を有する高分子多孔質体を得ることができる。例えば、気孔率を50〜80%とするには、全成形材料中の気孔形成材の割合を約50〜約80容量%とすればよい。
【0031】
また、上記高分子材料及び気孔形成材の他、必要に応じて、老化防止剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、増粘剤、難燃剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、強化材などの添加剤を添加してもよい。このような添加剤は、高分子材料100質量部に対して50質量部以下の範囲で添加することが好ましい。また、熱硬化型樹脂やゴムの場合には、動的架橋や熱反応により架橋硬化することもできるが、必要に応じて、加硫剤や加硫促進剤、硬化剤、架橋剤など、高分子材料を硬化するための架橋系化合物を添加してもよい。
【0032】
高分子多孔質体は、気孔形成材及び必要に応じて添加した添加剤を高分子材料に混合分散させて得た成形材料混合物(コンパウンド)を成形して得た充実成形体から、溶媒により気孔形成成分を溶出することにより製造することができる。
【0033】
気孔形成材、添加剤の混合分散は、オープンロール、ニーダー、インテンシブミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機などの装置を使用して、混練、混合することが好ましい。また、混練に先立ち、各構成成分を、ヘンシェルミキサー、V字型混合機、ボールミル、リボンブレンダー、タンブルミキサー等の混合機を用いて予め混合してもよい。
【0034】
次に、調製されたコンパウンドを成形機で成形して、充実成形体を製造する。成形温度は、高分子材料を成形できる温度で、かつ気孔形成材が溶融する温度である。ここで、高分子材料を成形できる温度とは、高分子材料の種類に応じて異なるが、高分子材料が熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの場合には、これらが溶融する温度であり、高分子材料がゴムや熱硬化型樹脂の場合には架橋硬化できる温度であり、一般に100〜300℃の温度範囲が好ましく用いられる。
【0035】
成形方法は、特に限定されないが、例えば圧縮成形、トランスファ成形、射出成形、押出成形、吹込成形、カレンダ加工、注型などが挙げられ、この中でも生産性の点から射出成形、押出成形が好ましく用いられる。射出成形は、加熱シリンダー内のスクリューによって可塑化・混練された溶融混練物を任意の形状に加工した金型中に高速・高圧で充填させた後、冷却・固化または反応・固化させて成形体を製造する方法であって、射出成形機の加熱シリンダーで前記の溶融混練が行われるので、予め気孔形成材を分散させたコンパウンドを調製する必要がないことから好ましい。しかも、本発明で用いる気孔形成材は成形時には溶融状態であるから、成形用金型に射出される際にも、高分子材料と分離することなく射出することができることから好ましい。押出成形についても、射出成形と同様、成形材料の溶融混練と成形を続いて行なうことができ、高分子材料中に気孔形成材が分散した状態でダイを通過して均質な成形体を作製することができるので好ましく用いられる。
【0036】
なお、射出成形条件、押出成形条件は、使用する高分子材料や気孔形成材の種類や量比によって適宜決定すればよい。
【0037】
更に、以上のようにして製造された充実成形体を、上記高分子材料は溶解させないが気孔形成材は溶解させる溶媒で洗浄することにより高分子多孔質体が得られる。
【0038】
上記溶媒としては、高分子材料および気孔形成材の種類によって適宜選択され、例えば水、グリコール、グリコールエーテル、高分子量アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリコールエステル、鉱油、石油、アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンエステル、グリセロール、グリセロールエステルなどを挙げることができる。溶媒として有機溶剤などを使用した場合、後処理などの付帯設備が必要となるので、そのような設備が不要となる水を溶媒として使用できるような高分子材料と気孔形成材の組み合わせを選ぶのが望ましい。気孔形成材として、多価アルコールを用いた場合、溶媒として水が好適に使用できる。
【0039】
この溶媒での洗浄工程により、充実成形体に含まれていた気孔形成材が溶媒に溶解して溶出され、個々の気孔が微小な連続気孔を有する高分子多孔質体が得られる。
【0040】
本発明のアーチサポートは、シューズ全般に適用可能であるが、特に、婦人靴等の局部的に荷重がかかりやすい形状の靴、とりわけハイヒール用のアーチサポートとして好適である。また、上記したアーチサポートをインソールの土踏まず部分に形成し、アーチサポート一体型のインソールとして形成することも可能である。
【0041】
なお、本発明のアーチサポートの形状は、図1に示した形状に限定されるものではなく、例えば、外周部の耐久性を高めるために面取りを施したり、靴の形状に合わせて内側の縁部の一部が欠けた形状とすることも可能であり、その他の構成についても本発明の要旨を逸脱しない限り種々変更して差し支えない。
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
高分子材料としてポリスチレン系エラストマー(「ハイブラー(登録商標)7125」クラレ社製)60質量部、ポリスチレン系エラストマー(「レオストマー(登録商標)SR2274」リケンテクノス社製)30質量部、ポリプロピレン(「グランドポリプロ(登録商標)J708」グランドポリプロ社製)10質量部、気孔形成材としてペンタエリスリトール(「ペンタエリスリトール」三井化学社製)350質量部、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(「イルガノックス(登録商標)1010」チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.5質量部、抗菌剤として無機系抗菌剤(「バクテノン(登録商標)MB−2」日本電子材料社製)1.0質量部、消臭剤(「ダイムシュー6000P」大日精化工業社製)1.0質量部を混合機で均一に混合し、この混合物(コンパウンド)を二軸押出機を用いて210℃で混練りした後、ペレタイザーでペレット化した。
【0044】
得られたペレットを用い、200℃でアーチサポート金型内に射出成形して充実成形体を作製し、冷却後、この充実成形体を水洗し、充実成形体中のペンタエリスリトールを溶出させてスチレン系エラストマーを主材とする多孔質体からなり、図1に示す形状を有する表1に示すサイズのアーチサポートを作製した。
【0045】
このアーチサポートの物性及び特性について測定、評価した結果を表2に示す。なお、各測定、評価方法は下記のとおりである。
【0046】
硬さ
アスカーC硬さ(JIS K 7312)計を使用
通気度
各実施例と同様の条件で作成した厚さ5mmの多孔質体サンプルを用い、フラジール型試験機(東洋精機社製織布通気度試験機)により、JIS L 1096に準拠した方法(通気性A法 オリフィス径φ1mm)により測定した。
体圧分散性
ヒール高さの異なる4種の婦人靴(ヒール高さ(差高) A;0mm,B;40mm,C;60mm,D;90mm)に、実施例のアーチサポート又は比較例のインソールを装着し、体重50kgの人が靴を履いて歩行したときの靴底にかかる荷重の分布を、圧力分布測定器(フットスキャン)により測定し、各靴で測定された最大荷重値の平均値を体圧分散性の指標とした。
【0047】
[実施例2,3]
外側及び内側の高さを表1に示す値とした以外は、実施例1と同様の方法でアーチサポートを作成し、この物性及び特性を測定、評価した。結果を表2に示す
【0048】
[実施例4]
実施例1において、高分子材料をポリスチレン系エラストマー(「ハイブラー7125」クラレ社製)30質量部、ポリスチレン系エラストマー(「レオストマーSR2274」リケンテクノス社製)60質量部、ポリプロピレン(「グランドポリプロJ708」グランドポリプロ社製)10質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でアーチサポートを作成し、この物性及び特性を測定、評価した。結果を表2に示す。得られた多孔質体は、実施例1に比べて反発弾性が高いものであった。
【0049】
[実施例5]
実施例1において、高分子材料をポリスチレン系エラストマー(「ハイブラー7125」クラレ社製)30質量部、ポリプロピレン(「グランドポリプロJ708」グランドポリプロ社製)を70質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でアーチサポートを作成し、この物性及び特性を測定、評価した。結果を表2に示す。得られた多孔質体は、実施例1〜4に比べて、硬さの高いものであった。
【0050】
[実施例6]
実施例1において、高分子材料をポリオレフィン系エラストマー(「ミラストマー5530N」三井化学社製)90質量部、ポリプロピレン(「グランドポリプロJ708」グランドポリプロ社製)10質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でアーチサポートを作成し、この物性及び特性を測定、評価した。結果を表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
[比較例1〜4]
市販のシューズ用インソール(比較例1〜3)について、実施例と同様の方法にて物性及び特性を測定、評価し、アーチサポートを使用しない場合(比較例4)と併せて体圧分散性について測定した。
【0053】
【表2】
【0054】
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアーチサポート及びこれを用いたインソールによれば、つま先にかかる荷重・痛みを軽減し、歩行時の疲労を防止することができ、これにより外反母趾や扁平足の予防が期待できると共に、通気性に優れ、靴の履き心地(フィット性)も良好である。また、既成靴に装着することが可能で、足部のサイズや形状に左右されにくいため、低コストで上記のような効果を得ることができる。更に、洗濯機での洗濯が可能であり、耐久性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るシューズ用アーチサポートを示すものであり、(A)は平面図、(B)は後側から見た側面図、(C)は外側から見た側面図である。
【符号の説明】
1 アーチサポート
11 中間面
12 内側テーパ面
13 外側テーパ面
14 上面
Claims (5)
- シューズ内に挿入されて使用され、下面の内側及び外側がそれぞれ上側に向けて傾斜するテーパ面をなすシューズ用アーチサポートであって、高分子材料として疎水性の熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの混合物を母材とし、この混合物に常温で固体であって上記高分子材料の成形温度で溶融する気孔形成材を混合分散させ、これを成形して得た充実成形体から、溶媒により上記気孔形成材を溶出することにより形成した連続気孔を有し、該連続気孔の気孔率が50〜80%である高分子多孔質体により形成されてなることを特徴とするアーチサポート。
- 内側の高さを外側の高さより高く形成したことを特徴とする請求項1記載のアーチサポート。
- 熱可塑性樹脂がポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンであり、熱可塑性エラストマーがポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー又はポリプロピレンエラストマーであることを特徴とする請求項1又は2記載のアーチサポート。
- ハイヒール用のアーチサポートである請求項1乃至3のいずれか1項記載のアーチサポート。
- 請求項1乃至4のいずれか1項記載のアーチサポートを土踏まず部に形成したシューズ用インソール。
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