以下、図面を参照して、本発明のプラズマ発生電極及びプラズマ反応器の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
図1は、本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態を模式的に示す説明図であり、図2は、図1に示すプラズマ発生電極に用いられる単位電極を拡大した説明図である。図1及び図2に示すように、本実施の形態のプラズマ発生電極1は、互いに対向する二つ以上の単位電極2を備え、単位電極2相互間に電圧を印加することによってプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生電極1であって、単位電極2が、板状の主電極3と、主電極3の少なくとも一方の表面に配設された一つ以上の支持部材5と、主電極3の表面から所定の隙間Aを空けた状態で、支持部材5によって主電極3と略平行に支持された一つ以上の板状の副電極4とを有し、主電極3が、少なくとも、板状の主セラミック誘電体6と、主セラミック誘電体6の内部に配設された主導電膜7とから構成されるとともに、副電極4が、少なくとも、板状の副セラミック誘電体8と、副セラミック誘電体8の内部に配設された副導電膜9とから構成され、主電極3の主導電膜7と副電極4の副導電膜9とが、支持部材5を介して電気的に接続され、互いに対向する一の単位電極2の主電極3と副電極4との隙間に、対向する他の単位電極2の副電極4が配設されたものである。
本実施の形態のプラズマ発生電極1は、互いに対向する一の単位電極2の主電極3と副電極4との隙間Aに、対向する他の単位電極2の副電極4が配設されており、副電極4の外周部分が拘束されていないため、熱膨張によって発生する応力が大幅に緩和され、耐熱衝撃性に優れたものとなり、対向する単位電極2相互間の距離を小さくして、低い投入エネルギーで安定した高い電界強度のプラズマを発生させることができる。このため、本実施の形態のプラズマ発生電極1は、所定の成分を含むガスを反応させるプラズマ反応器、例えば、自動車のエンジンや燃焼炉等から排出される排気ガスを処理する排気ガス処理装置や、空気等に含まれる酸素を反応させてオゾンを精製するオゾナイザ等に好適に用いることができる。
単位電極2を構成する主電極3の形状については、板状であれば、その表面の形状については特に制限はないが、単位電極2の作製が容易であるとともに、プラズマ発生電極1の小型化を実現可能であること等の理由から、表面の形状が四角形であることが好ましい。
また、図1及び図2に示すように、本実施の形態のプラズマ発生電極1においては、互いに対向する一の単位電極2の主電極3と副電極4との隙間Aに、対向する他の単位電極2の副電極4が配設され、複数の単位電極2が積み重なるように配設することが可能なものであれば、副電極4の形状については、板状であれば、その表面の形状については特に制限はないが、例えば、主電極3の表面の板状が長方形である場合には、副電極4の表面における一の辺の長さを主電極3と略同一とし、その一の辺に直交する他の辺の長さを主電極3より短くした長方形の板状であることが好ましい。このように構成することによって、互いに対向する二つの単位電極2を、互いにスライドさせるように対向配置させることにより、一の単位電極2の主電極3と副電極4との隙間Aに対向する他の単位電極2の副電極4を簡便に配設すことが可能となり、プラズマ発生電極1の組立てが容易になる。
本実施の形態のプラズマ発生電極1においては、図1及び図2に示すように、主電極2の両方の表面に、支持部材5がそれぞれ一つ以上ずつ配設されるとともに、それぞれの支持部材5に対して、それぞれ副電極4が支持されたものであることが好ましい。このように構成することによって、副電極4を多く配設することが可能となり、耐熱衝撃性をさらに向上させることができる。図1及び図2に示すプラズマ発生電極1においては、支持部材5がそれぞれ三つずつ配設され、副電極4がそれぞれの表面において三枚ずつ、即ち、一つの単位電極2に対して六枚支持されている。
また、上述したように支持部材5が、主電極3の両方の表面にそれぞれ一つ以上ずつ配設されるとともに、それぞれの支持部材5によって複数の副電極4がそれぞれ支持された場合に、主電極3の一方の表面と他方の表面とで、副電極4が対称的に支持されたものであることが好ましい。このように構成することによって、単位電極2の構造が簡便になるとともに、複数の単位電極2を、互いに対向させなが組合わせる作業が簡便になる。
また、支持部材5が、主電極3の両方の表面にそれぞれ一つ以上ずつ配設されるとともに、それぞれの支持部材5によって複数の副電極4がそれぞれ支持された場合に、主電極3が、それぞれの表面で支持された副電極4毎に、それぞれ電気的に接続する二つの主導電膜7a,7bを有することが好ましい。このように、主電極3が二つの主導電膜7a,7bを有し、それぞれの表面で支持された副電極4a,4b毎にそれぞれ電気的に接続する構成とすることにより、主電極3と副電極4との電気的な接続を、簡便、かつ確実に行うことができる。
さらに、図示は省略するが、本実施の形態のプラズマ発生電極においては、主電極を厚くして、副電極を薄くすることが好ましい。このように構成することによって、単位電極の剛性を高くした状態で、狭ギャップを構成することが可能となる。主電極と副電極の厚さを変えた場合、対向電極間の距離を、主電極と対向副電極、対向副電極と副電極、副電極と対向主電極の各々の導電膜間距離を同じに設定する必要がある。厚い主電極に二層の導電膜を設け、導体膜の表面からの距離を薄い副電極と同じ距離に設定することで、各々の導電膜間距離は等しくすることが可能となる。
本実施の形態のプラズマ発生電極1に用いられる主電極3を構成する板状の主セラミック誘電体6においては、誘電体として好適に用いることができるものであれば、その材料については特に限定されることはないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、ムライト、スピネル、コージェライト、マグネシウム−カルシウム−チタン系酸化物、バリウム−チタン−亜鉛系酸化物、及びバリウム−チタン系酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。このような化合物は、特に耐熱衝撃性に優れており、主セラミック誘電体6の材料として好適に用いることができる。この主セラミック誘電体6は、例えば、テープ状のセラミックグリーンシートや、押出成形で得られたシートを用いて形成することができる。また、粉末乾式プレスで作製した平板を用いても形成することができる。
本実施の形態のプラズマ発生電極1に用いられる主電極3を構成する主導電膜7は、互いに対向する単位電極2相互間に電圧を印加することによって、単位電極2相互間に有効に放電を起させることが可能なものであればよく、特に限定されることはないが、例えば、主導電膜7が、タングステン、モリブデン、マンガン、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、鉄、銀、銅、白金、及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含むことが好ましい。
また、主導電膜7を配設する方法については特に限定されることはないが、例えば、上述した金属を含むペーストを主セラミック誘電体6となるセラミックグリーンシートに塗工して形成、配設することが好ましい。具体的な塗工の方法としては、例えば、スクリーン印刷、カレンダーロール、スプレー、静電塗装、ディップ、ナイフコータ、インクジェット、化学蒸着、物理蒸着等を好適例として挙げることができる。このような方法によれば、表面の平滑性に優れ、かつ厚さの薄い主導電膜7を容易に形成することができる。
本実施の形態のプラズマ発生電極1に用いられる副電極4を構成する副セラミック誘電体8は、主電極3を構成する主セラミック誘電体6と同様の材料を用いることができ、例えば、テープ状のセラミックグリーンシートや、押出成形で得られたシートを用いて形成することができる。また、副電極4を構成する副導電膜9についても、主電極3を構成する主導電膜7と同様の材料を用いることができ、例えば、副セラミック誘電体8となるセラミックグリーンシートに塗工して形成、配設することができる。
本実施の形態のプラズマ発生電極1に用いられる支持部材5は、少なくとも、副電極4を支持するための支持用セラミック誘電体21と、主電極3の主導電膜7及び副電極4の副導電膜9を電気的に接続する接続用導電体22とから構成されたものであることが好ましい。支持用セラミック誘電体21による誘電体本来としての効果に加え、機械的強度に優れたセラミックによって副電極4を支持して破損を有効に防止することができる。
本実施の形態のプラズマ発生電極1に用いられる支持部材5は、例えば、一の表面から他の表面に貫通する貫通孔を穿設した帯状のセラミックグリーンシートを支持用セラミック誘電体21とし、その貫通孔に、主導電膜と同様の材料の接続用導電体22を充填したものを好適に用いることができる。この際、主セラミック誘電体6においても、この支持用セラミック誘電体21の貫通孔に対応する位置に貫通孔を穿設し、それぞれの貫通孔を経由して主導電膜7と接続用導電体22との電気的接続を確保するとともに、副セラミック誘電体8においても、この支持用セラミック誘電体21の貫通孔に対応する位置に貫通孔を穿設し、それぞれの貫通孔を経由して副導電膜9と接続用導電体22との電気的接続を確保することが好ましい。
さらに、本実施の形態のプラズマ発生電極1に用いられる単位電極2においては、単位電極2の外周部分の少なくとも一部で、互いに対向する単位電極相互間にプラズマを発生させるための空間を確保するために、互いに対向する単位電極を保持する保持部材10をさらに有していることが好ましい。図1においては、単位電極2が、一対の端部のうちの片方で、互いに対向する一対の単位電極2を保持する保持部材10をさらに有したプラズマ発生電極1を示している。また、図3及び図4に示すように、一対の端部のうちの両方で、互いに対向する一対の単位電極2を保持する保持部材10をさらに有したプラズマ発生電極1であってもよい。図1に示すプラズマ発生電極1においては、単位電極2の片側の端部が開放されていることから、熱衝撃に対する耐久性に特に優れており、また、図3に示すプラズマ発生電極1においては、単位電極2を、両方の端部で保持していることから、振動等による衝撃に対する耐久性に特に優れている。なお、この保持部材10は、単位電極2の端部において副電極4を支持する支持部材5と一体的に形成されたものとすることが可能であり、このように構成することによって、単位電極の構造を簡便にすることができる。ここで、図3は、本発明(第一の発明)のプラズマ発生電極の他の実施の形態を模式的に示す説明図であり、図4は、図3に示すプラズマ発生電極に用いられる単位電極を拡大した説明図である。なお、図3及び図4において、図1及び図2に示す各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
また、図1及び図2に示すように、本実施の形態のプラズマ発生電極1においては、単位電極2が,所定の電源から主導電膜7に電圧を印加してプラズマを発生させるために、主導電膜7が、単位電極2の少なくとも一方の端部において、外部との電気的な接続が確保されている。具体的には、例えば、単位電極2の外周部分の少なくとも一部において、主導電膜7を主セラミック誘電体6の外部にまで延設して配設し、延設した主導電膜7に外部と通電可能な端子を配設している。
本実施の形態のプラズマ発生電極1においては、主電極3及び副電極4の厚さや大きさ、主電極3と副電極4との隙間の大きさ等については、特に制限はないが、例えば、主電極の厚さに対する、副電極の厚さの割合が1以下であることが好ましい。副電極が主電極より厚くなると、構造的に不安定になる。主電極の厚さは、0.3〜3mm、副電極の厚さは、0.1〜1mmであることがさらに好ましい。また、導体膜間に占める誘電体セラミックスの厚さに対する、対向する電極間の導体膜間距離の割合(以下、単に「導体膜間距離の割合」ということがある)が1.5以下であることが好ましい。導体膜間距離の割合が1.5を超えると、均一な放電を得る為に電圧を高くすると、絶縁破壊を生じることがある。なお、この対向する電極間の距離は、0.1〜3mmであることがさらに好ましい。
以下、本実施の形態のプラズマ発生電極の製造方法について具体的に説明する。
まず、プラズマ発生電極1を構成する主セラミック誘電体6及び副セラミック誘電体8(以下、単に「セラミック誘電体」ということがある)の形状に対応した、図5に示すような、主セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30a及び副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(以下、単に「セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30」ということがある)を形成する。
このセラミック誘電体用セラミックグリーンシート30は、例えば、所定のセラミック粉末に適当なバインダ、焼結助剤、可塑剤、分散剤、有機溶媒等を配合して調製したスラリーを得、得られたスラリーを、例えば、ドクターブレード法、カレンダー法、印刷法、リバースロールコータ法等の従来公知の手法に従って、所定の厚さとなるように成形して形成することができる。スラリーに使用するセラミック粉末としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素、ムライト、スピネル、コージェライト、窒化珪素、窒化アルミニウム等の粉末を好適に用いることができる。また、焼結助剤は、セラミック粉末100質量部に対して、3〜10質量部加えることが好ましく、可塑剤、分散剤及び有機溶媒については、従来公知のセラミックグリーンシートを形成するために用いられるスラリーに使用されている可塑剤、分散剤及び有機溶媒を好適に用いることができる。なお、このスラリーはペースト状であってもよい。スラリーを、ドクターブレード法、カレンダー法、印刷法、リバースロールコータ法等の従来公知の手法に従って、所定の厚さとなるように成形してセラミックグリーンシートを形成してもよい。
なお、このようなセラミックグリーンシートを用いてセラミック誘電体を形成する場合には、二枚のセラミック誘電体用セラミックグリーンシート30を重ね合わせて一つのセラミック誘電体を形成することが好ましく、例えば、セラミック誘電体として必要な厚さの半分の厚さのセラミック誘電体用セラミックグリーンシート30を、二枚が一対となるように形成する。なお、副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30bにおいては、支持用セラミック誘電体5(図1参照)に配設する組立工程が容易になるように、主電極3(図1参照)の同一側表面に配設されるものについては、それぞれが繋がった状態で一枚のセラミックグリーンシートとして形成し、この一枚のセラミックグリーンシートの組立が終了した後に、例えば、図5における一点破線に沿って切断し、不要な部分を除去して所定の大きさの副セラミック誘電体用セラミックグリーンシートとすることが好ましい。
また、このセラミック誘電体用セラミックグリーンシート30と同様の材料から構成された、帯状の支持部材用セラミックグリーンシート31を形成する。この支持部材用セラミックグリーンシート31は、主電極3(図1参照)と副電極4(図1参照)とに隙間A(図1参照)を形成するためのものであることから、例えば、複数枚のセラミックグリーンシートを複数枚重ねて、必要な厚さとなるように形成することが好ましい。
次に、主セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30a、副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b、及び支持部材用セラミックグリーンシート31に、主電極3(図1参照)と副電極4(図1参照)との電気的な接続を確保するための貫通孔32を穿設する。なお、一対となる二枚のセラミック誘電体用セラミックグリーンシート30においては、支持部材用セラミックグリーンシート31を配設する側の表面に貫通孔32を穿設すればよい。
一方、主導電膜33a及び副導電膜33b(以下、単に「導電膜33」ということがある)を形成するための導体ペーストを調製する。この導体ペーストは、例えば、モリブデン粉末にバインダ及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミルを用いて十分に混練して得ることができる。なお、上述したセラミック誘電体用セラミックグリーンシート30との密着性及び焼結性を向上させるべく、必要に応じて導体ペーストに添加剤を加えてもよい。
得られた導体ペーストを、一対の主セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30aのうちの一方の表面に、例えば、スクリーン印刷等を用いて印刷して主導電膜33aを形成するとともに、一対の副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30bのうちの一方の表面に、同様の方法によって副導電膜33bを形成する。なお、図5に示すように、主セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30aに主導電膜33aを形成する際には、その外周部分の少なくとも一部において、外部から電力を投入することができるように、主導電膜33aを主セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30aの一の端部にまで延接して配接することが好ましい。また、副導電膜33bについても、単位電極2(図1参照)における外側に位置するものについては、外部から直接電力を投入することができるように、副導電膜33bを副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30bの一の端部にまで延接して配設してもよい。
次に、印刷した導体ペーストを覆うように、一対のセラミック誘電体用セラミックグリーンシート30のうちの他方を重ね合わせて、図6に示すように、未焼成主電極35及び未焼成副電極36を形成する。
次に、未焼成主電極35の少なくとも一方の表面に支持部材用セラミックグリーンシート31を配設し、さらに、配設した支持部材用セラミックグリーンシート31に未焼成副電極36を配設して組立てることにより未焼成単位電極37を得る。この際、それぞれに穿設した貫通孔32の位置を合わせて、それぞれ貫通孔32に上述した導体ペーストを充填することにより、未焼成主電極35と未焼成副電極36との電気的な接続が行われるようにする。貫通孔32への導体ペーストの充填は、未焼成主電極35、未焼成副電極36、及び支持部材用セラミックグリーンシート31単独の状態で予め行っていてもよい。未焼成主電極35と支持部材用セラミックグリーンシート31との組立の際、また、未焼成副電極36と支持部材用セラミックグリーンシート31との組立の際には、例えば、温度100℃、圧力10MPaで押圧しながら行うことが好ましい。なお、未焼成副電極36を支持部材用セラミックグリーンシート31に配設した後に、未焼成副電極36を構成する副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(図5参照)における不要な部分を除去、即ち、図5における一点破線に沿って切断して未焼成副電極36を分割する。
また、図5及び図6に示すように、互いに対向する単位電極2(図1参照)相互間にプラズマを発生させるための空間を確保するための保持部材用セラミックグリーンシート34を作製し、未焼成副電極36の、支持部材用セラミックグリーンシート31によって支持された側とは反対側の表面の少なくとも一部に配設してもよい。
未焼成主電極35の表面に支持部材用セラミックグリーンシート31を配設する場合には、その両方の表面に対して行ってもよいが、組立時の未焼成主電極35の変形を防止する等の観点から、図7及び図8に示すように、片側の表面に支持部材用セラミックグリーンシート31を配設し、この支持部材用セラミックグリーンシート31に未焼成副電極36を配設した未焼成単位電極37aを二つ作製し、この二つの未焼成単位電極37aの、支持部材用セラミックグリーンシート31を配設した表面とは反対側の表面同士を重ね合わせて一つの未焼成主電極37として用いてもよい。このように構成することによって、組立時の未焼成主電極35の変形を有効に防止することができるとともに、未焼成主電極35が、それぞれの表面で支持された未焼成副電極36毎に、それぞれ電気的に接続する二つの主導電膜33aを有することとなり、電気的な接続を、簡便、かつ確実に行うことができる。
また、上述した組立の工程においては、未焼成副電極36を形成する前や、副導電膜33b(図5参照)を配設する前の、一対の副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(図5参照)のうちの一方に対して行ってもよい。この場合には、一対の副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(図5参照)のうちの一方に支持部材用セラミックグリーンシート31を配設して組立を行った後に、この副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(図5参照)に副導電膜33b(図5参照)を配設し、その後、一対のうちの他方の副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(図5参照)を重ね合わせて未焼成副電極36を形成する。このように構成することによって、副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(図5参照)に副導電膜33b(図5参照)を配設する際に、副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート30b(図5参照)の貫通孔32を経由して支持部材用セラミックグリーンシート31の貫通孔32に導体ペーストが充填されるため組立の工程が容易になる。
次に、このようにして得られた未焼成単位電極37を焼成し、必要な枚数の単位電極2(図1参照)を形成する。
次に、図1に示すように、得られた単位電極2を、互いに対向する一の単位電極2の主電極3と副電極4との隙間Aに、対向する他の単位電極2の副電極4を配設するように対向配置させて、本実施の形態のプラズマ発生電極1を製造する。なお、本実施の形態のプラズマ発生電極1を製造する方法は上記の製造方法に限定されることはない。
次に、本発明(第二の発明)のプラズマ反応器の一の実施の形態について具体的に説明する。図9(a)は、本発明のプラズマ反応器の一の実施の形態を、ガスの流れ方向に沿って、プラズマ発生電極の導電体の表面に垂直な平面で切断した断面図、図9(b)は、図9(a)のB−B線における断面図である。
図9(a)及び図9(b)に示すように、本実施の形態のプラズマ反応器11は、図1に示したような本発明(第一の発明)のプラズマ発生電極の一の実施の形態(プラズマ発生電極1)と、所定の成分を含むガスの流路(ガス流路13)を内部に有するケース体12とを備え、このガスがケース体12のガス流路13に導入されたときに、プラズマ発生電極1によって発生したプラズマによりガスに含まれる所定の成分が反応することが可能なものである。本実施の形態のプラズマ反応器11は、排気ガス処理装置や、空気等に含まれる酸素を反応させてオゾンを精製するオゾナイザ等に好適に用いることができる。特に、第一の発明の実施の形態であるプラズマ発生電極1は、図1に示すように、単位電極2が、板状の主電極3と、主電極3の少なくとも一方の表面に配設された一つ以上の支持部材5と、主電極3の表面から所定の隙間Aを空けた状態で、支持部材5によって主電極3と略平行に支持された一つ以上の板状の副電極4とを有し、互いに対向する一の単位電極2の主電極3と副電極4との隙間Aに、対向する他の単位電極2の副電極4が配設されたものであることから、耐熱衝撃性に優れるとともに、対向する単位電極2相互間の距離を短くして高い強度のプラズマを発生させることが可能であり、エンジンや焼却炉等から排出される高温の排気ガスを処理する処理装置等に好適に用いることができる。
図9(a)及び図9(b)に示すように、本実施の形態のプラズマ反応器11を構成するケース体12の材料としては、特に制限はないが、例えば、優れた導電性を有するとともに、軽量かつ安価であり、熱膨張による変形の少ないフェライト系ステンレス等であることが好ましい。
また、図示は省略するが、本実施の形態のプラズマ反応器においては、プラズマ発生電極に電圧を印加するための電源をさらに備えていてもよい。この電源については、プラズマを有効に発生させることができる電流を供給することが可能なものであれば、従来公知の電源を好適に用いることができる。また上述した電源としては、パルス電源であることが好ましく、この電源が、その内部に少なくとも一つのSIサイリスタを有することがさらに好ましい。このような電源を用いることによって、さらに効率よくプラズマを発生させることができる。
また、本実施の形態のプラズマ反応器においては、上述したように電源を備えた構成とせずに、外部の電源から電流を供給することが可能なようにコンセント等の通電用部品を備えた構成としてもよい。
プラズマ反応器を構成するプラズマ発生電極に供給する電流については、発生させるプラズマの強度によって適宜選択して決定することができる。例えば、プラズマ反応器を自動車の排気系中に設置する場合には、プラズマ発生電極に供給する電流が、電圧が1kV以上の直流電流、ピーク電圧が1kV以上かつ1秒当たりのパルス数が100以上(100Hz以上)であるパルス電流、ピーク電圧が1kV以上かつ周波数が100以上(100Hz以上)である交流電流、又はこれらのいずれか二つを重畳してなる電流であることが好ましい。このように構成することによって、効率よくプラズマを発生させることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
純度が93質量%の酸化アルミニウム粉末を用いて、セラミックグリーンシートを成形するためのスラリーを調製し、得られたスラリーを用いて、その表面の形状が、縦92mm、横50mmの長方形で、厚さが0.1mmの主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートをテープ成形した。得られた主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートは二枚を一対として使用し、その一対のうちの一方の主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートの片側の表面に、タングステンを用いた導体ペーストを、縦88mm、横48mm、厚さ0.01mmとなるように印刷して、主導電膜を形成した。また、一対のうちの一方の主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートには、表面の縦方向における一方の端部から38mmと68mmとの位置で、かつ横方向に略中心位置に、開口部直径が1mmの貫通孔を穿設した。
このようにして得られた一対の主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートを、主導電膜を覆うように重ね合わせて一体化させて未焼成主電極を作製した。この際、上述した貫通孔に主導電膜と同材質の導体ペーストを充填した。
次に、主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートを成形したスラリーと同様のスラリーを用いて、支持部材用セラミックグリーンシートを成形した。この支持部材用セラミックグリーンシートは、主電極の縦方向の端部において支持するための、縦6mm、横50mm、厚さ1.0mmの支持部材用セラミックグリーンシートを二つ、主電極の縦方向の中間部において支持するための、縦4mm、横50mm、厚さ1.0mmの支持部材用セラミックグリーンシートを二つの合計4つの支持部材用セラミックグリーンシートを形成した。なお、これらの支持部材用セラミックグリーンシートは、厚さ0.5mmのセラミックグリーンシートを二枚重ねて厚さを1.0mmとした。なお、主電極の縦方向の中間部において支持するための支持部材用セラミックグリーンシートには、縦方向及び横方向における略中心部分に、開口部直径が1mmの貫通孔を穿設した。
この四つの支持部材用セラミックグリーンシートを、未焼成主電極の縦方向の両端部に、端部を支持するための支持部材用セラミックグリーンシートを配設し、縦方向の一方の端部から38mmと68mmとの位置に、中間部を支持するための支持部材用セラミックグリーンシートを配設した。中間部を支持するための支持部材用セラミックグリーンシートを配設する際には、それぞれの貫通孔の位置を合わせるように配設し、その後、この支持部材用セラミックグリーンシートの貫通孔に主導電膜と同材質の導体ペーストを充填した。
次に、主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートを成形したスラリーと同様のスラリーを用いて、表面の形状が、縦92mm、横50mmの長方形で、その厚さが0.1mmの副セラミック誘電体用セラミックグリーンシートをテープ成形した。この副セラミック誘電体用セラミックグリーンシートは、三つの副電極を一枚で形成したものであり、後の工程において、縦方向の一方の端部から18mm、24mm、52mm、58mm、86mmの位置で切断して三分割する。この副セラミック誘電体用セラミックグリーンシートについても、二枚を一対として使用し、その一対のうちの一方の副セラミック誘電体用セラミックグリーンシートの片側の表面に、表面の縦方向における一方の端部から38mmと68mmとの位置で、かつ横方向に略中心位置に、開口部直径が1mmの貫通孔を穿設するとともに、タングステンを用いた導体ペーストを三箇所に分けて印刷して、三つの副導電膜(以下、それぞれの副導電膜を、第1の副導電膜、第2の副導電膜、及び第3の副導電膜ということがある)を形成した。三つの副導電膜は、副セラミック誘電体用セラミックグリーンシートの表面の縦方向に、縦11mm、横48mmの第1の副導電膜と、縦26mm、横48mmの第2の副導電膜と、縦26mm、横48mmの第3の副導電膜とから構成されている。それぞれの副導電膜の厚さは0.01mmである。
このようにして得られた一対の副セラミック誘電体用セラミックグリーンシートを、三つの副導電膜を覆うように重ね合わせて一体化させて未焼成副電極を作製し、未焼成主電極に配設した支持部材用セラミックグリーンシートに、得られた未焼成副電極を配設して組合わせた。
また、主セラミック誘電体用セラミックグリーンシートを成形したスラリーと同様のスラリーを用いて、対向する単位電極を保持するための保持部材となる保持部材用セラミックグリーンシートを成形した。この保持部材用セラミックグリーンシートは、縦5mm、横50mm、厚さ0.25mmとし、未焼成副電極の縦方向の一方の端部に配設した。また、未焼成副電極は、上述したように、縦方向の一方の端部から18mm、24mm、52mm、58mm、86mmの位置で切断して三分割した。
次に、このようにして得られた、その一方に表面に未焼成副電極が配設された未焼成主電極を、二つを一組として、未焼成副電極が配設された表面とは反対側の表面を押圧しながら重ね合わせて未焼成単位電極を作製した。本実施例においては、この未焼成単位電極を、20個作製した。
次に、得られた未焼成単位電極を、1450℃で焼成して単位電極を製造し、得られた単位電極を、一の単位電極の主電極と副電極との隙間に、対向する他の単位電極の副電極を配設するように、互いにスライドさせるように対向配置させてプラズマ発生電極を製造した。得られたプラズマ発生電極を、SIサイリスタを有するパルス電源と接続するとともに、ステンレス(SUS430)製のケース体の内部に配設してプラズマ反応器(実施例1)を製造した。
本実施例のプラズマ反応器に、空気を5L/minで通気し、オゾン生成試験を行った。4kV、100mJ、2kppsの条件で、プラズマ反応器のガス流路の出口にて100g/Nm3のオゾンが計測できた。
1…プラズマ発生電極、2…単位電極、3…主電極、4,4a,4b…副電極、5…支持部材、6…主セラミック誘電体、7,7a,7b…主導電膜、8…副セラミック誘電体、9…副導電膜、10…保持部材、21…支持用セラミック誘電体、22…接続用導電体、30a…主セラミック誘電体用セラミックグリーンシート、30b…副セラミック誘電体用セラミックグリーンシート、31…支持部材用セラミックグリーンシート、32…貫通孔、33…導電膜、33a…主導電膜、33b…副導電膜、34…保持部材用セラミックグリーンシート、35…未焼成主電極、36…未焼成副電極、37,37a…未焼成単位電極、40…プラズマ発生電極、41…電極、42…導電体、A…隙間。