JP4470078B2 - 薬剤感受性測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は薬剤感受性測定方法に関し、さらに詳細にいえば、溶存酸素量検出用電極を用いて薬剤感受性を測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から細菌の薬剤感受性を測定する方法として、薬剤溶液に対して測定対象となる細菌を添加して培養処理を行う方法が知られている。
【0003】
この方法を採用すれば、細菌が増殖するか否かに基づいて薬剤感受性の測定を達成することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法を採用した場合には、細菌の増殖に伴う溶液の濁度に基づいて薬剤感受性を測定することが必要であるから、濁度を判定できるようになるまで培養処理を行わなければならず、著しく長時間(例えば、18時間程度)が必要になるという不都合がある。
【0005】
特に、臨床用途においては、薬剤の投与に先だって行われる薬剤感受性の測定に長時間がかかると、その間に病状が進行し、治癒率が低下してしまう。また、薬剤感受性の測定結果が得られる前に薬剤を投与すると、耐性菌が発生し、この耐性菌を駆除するためにさらに強力な薬剤を使用することが必要になるので、医療費が嵩んでしまう。
【0006】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、薬剤感受性を迅速に測定することができる新規な薬剤感受性測定方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の薬剤感受性測定方法は、測定薬剤溶液の溶媒を収容した第1セルと、薬剤溶液を収容した第2セルとに、それぞれ溶存酸素量検出用電極を設けておき、所定の濃度の微生物を含む菌液を第1セルおよび第2セルに供給し、各溶存酸素量検出用電極から出力され続ける信号に基づいて各信号のピークを検出し、ピークから所定の期間に得られる信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得る方法である。そして信号どうしの関係として、各信号の傾きを採用する。
【0008】
請求項2の薬剤感受性測定方法は、所定の濃度の微生物を含む菌液を収容した第1セルと第2セルとに、それぞれ溶存酸素量検出用電極を設けておき、測定薬剤溶液の溶媒を第1セルに供給するとともに、薬剤溶液を第2セルに供給し、各溶存酸素量検出用電極から出力され続ける信号に基づいて各信号のピークを検出し、ピークから所定の期間に得られる信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得る方法である。そして信号どうしの関係として、各信号の傾きを採用する。
【0009】
請求項3の薬剤感受性測定方法は、両信号のピーク値を予め設定された所定値にすべく各信号を補正し、補正された信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得る方法である。
【0011】
【作用】
請求項1の薬剤感受性測定方法であれば、生理食塩水を収容した第1セルと、薬剤溶液を収容した第2セルとに、それぞれ溶存酸素量検出用電極を設けておき、所定の濃度の微生物を含む菌液を第1セルおよび第2セルに供給し、各溶存酸素量検出用電極から出力され続ける信号に基づいて各信号のピークを検出し、ピークから所定の期間に得られる信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得るのであるから、ピークが得られた後、短期間の信号に基づいて迅速に薬剤感受性を測定することができる。したがって、臨床用途においては、適切な薬剤(抗生物質など)を迅速に検出して治療を行うことができ、ひいては治癒率を高めることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができる。そして信号どうしの関係として、各信号の傾きを採用するのであるから、信号処理を簡単化できる。
【0012】
請求項2の薬剤感受性測定方法であれば、所定の濃度の微生物を含む菌液を収容した第1セルと第2セルとに、それぞれ溶存酸素量検出用電極を設けておき、測定薬剤溶液の溶媒を第1セルに供給するとともに、薬剤溶液を第2セルに供給し、各溶存酸素量検出用電極から出力され続ける信号に基づいて各信号のピークを検出し、ピークから所定の期間に得られる信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得るのであるから、ピークが得られた後、短期間の信号に基づいて迅速に薬剤感受性を測定することができる。したがって、臨床用途においては、適切な薬剤(抗生物質など)を迅速に検出して治療を行うことができ、ひいては治癒率を高めることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができる。そして信号どうしの関係として、各信号の傾きを採用するのであるから、信号処理を簡単化できる。
【0013】
請求項3の薬剤感受性測定方法であれば、両信号のピーク値を予め設定された所定値にすべく各信号を補正し、補正された信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得るのであるから、請求項1または請求項2の作用に加え、薬剤感受性測定精度を高めることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明の薬剤感受性測定方法を詳細に説明する。
【0016】
図1はこの発明の薬剤感受性測定方法の一実施態様を説明するフローチャートである。
【0017】
ステップSP1において、生理食塩水のみを収容した第1セル、生理食塩水と第1の所定量の薬剤溶液とを収容した第2セル、生理食塩水と第2の所定量の薬剤溶液とを収容した第3セルのそれぞれに設けられた溶存酸素量測定用電極に所定の測定用電圧を印加して電流(出力信号)の測定を開始し、ステップSP2において、第1の所定時間(t分間)静置し、ステップSP3において、微生物を含む菌液をそれぞれのセルの溶存酸素量測定用電極の近傍に注入し、ステップSP4において、第2の時間間隔で第3の時間の間(例えば、1秒間隔で60秒間)、各溶存酸素量測定用電極からの電流を測定し、ステップSP5において、測定された電流に基づいて最大の電流が得られた時刻を検出し、ステップSP6において、最大の電流が得られた時刻以降の第4の期間における電流値を求め、ステップSP7において、第4の期間における各電流値の変化の様子に基づいて薬剤感受性を検出し、そのまま一連の処理を終了する。
【0018】
ただし、ステップSP2において第1の所定時間(t分間)静置する処理を行う代わりに、例えば、1分間の電流変化量が所定の閾値電流(例えば、bnA)以下になるまで待つ処理を行ってもよい。また、電流変化の様子としては、種々のファクターを採用することが可能であるが、処理の簡単化などの観点からは、電流変化率を採用することが好ましい。
【0019】
図1の薬剤感受性測定方法を採用した場合には、第1セル、第2セル、第3セルに菌液を注入して溶存酸素量を測定すれば、第1セルについては微生物の呼吸に伴って溶存酸素量が減少するのに対して、第2セル、第3セルについては、薬剤感受性がある場合には微生物が呼吸量を抑制させられることになる反面、薬剤感受性がない場合には微生物が呼吸量を抑制させられることなく呼吸を行うので、薬剤感受性の有無に対応して溶存酸素量が殆ど減少しないか、または第1セルと同様に溶存酸素量が減少するか、の何れかの傾向を示すことになる。
【0020】
そして、これらの傾向については、溶存酸素量測定用電極を用い、かつ第4の期間における各電流値の変化の様子を用いることにより、短時間で判定することができる。したがって、薬剤感受性を測定するための所要時間を大幅に短縮することができる。この結果、適切な薬剤の投与を迅速に行うことができ、治癒率を向上させることができ、しかも、MRSAなどの耐性菌の発生を抑制して医療費を低減することができる。
【0021】
次いで、具体例を説明する。
【0022】
薬剤溶液として、アンピシリン(以下、ABPCと略称する)を採用し、微生物として、E−coli{感受性菌株JM109と耐性菌株5W(ABPCプラスミド導入)との2種類}を採用した。
【0023】
そして、生理食塩水として濃度が0.7%のものを採用し、ABPC溶液の濃度を5.3μg/mlに調整し、2種類のE−coliをMcFarland2に調整した。
【0024】
そして、第1セル、第2セル、第3セルのそれぞれに対して、表1に示す割合で生理食塩水、薬剤溶液を収容するとともに、各セルに対応させて設けられたシリンジにそれぞれ菌液を入れた。
【0025】
【表1】
Figure 0004470078
【0026】
次いで、各セルに溶存酸素量測定用電極を装着し、第1セル、第2セル、第3セルを5分間静置して温度を恒温温度にし、この間に菌液の入ったシリンジをセットした。静置時間経過後、測定時間を360秒に設定して0.1秒間隔で各溶存酸素量測定用電極からの電流を測定する。5分間(300秒間)経過後、シリンジから一定の速度で速やかに菌液を各セルに注入し、360秒の測定時間が経過した後、測定電流を保存し、測定電流を解析した。この解析は次のように行った。
【0027】
各測定電流列のピーク位置を1.7秒の位置に合わせるべく全体を平行移動するとともに、測定電流の経時変化特性を示す図を得る(全量を0.25mlに設定した場合の測定電流の経時変化特性を示す図2、および全量を0.5mlに設定した場合の測定電流の経時変化特性を示す図3参照)。
【0028】
ここで、理論的な考察を行うと、先ず菌のみをコントロールとして、感受性菌、耐性菌を比較していく。耐性菌の場合は、薬剤注入後も薬剤の影響を余り受けず、酸素消費量は殆ど変化しないので、コントロールに近い測定電流経時変化特性が得られるはずである。逆に、感受性菌の場合は、薬剤を注入することにより呼吸が阻害されるので、酸素消費量が減少し、測定電流経時変化特性はコントロールと比較して緩やかになるはずである。
【0029】
図2、図3に示す実際の測定結果では、コントロールである”JM109”を比較対照として、感受性の”JM109+ABPC”、耐性の”5W+ABPC”を比べてみると、感受性菌株の曲線は、コントロールおよび耐性菌株の曲線よりも緩やかであり、耐性菌株の曲線は、コントロールの曲線と同じ、或いは耐性菌株の曲線の方が急峻であり、理論的な考察と一致する。
【0030】
また、図2、図3に示す測定結果を数値化すべく、ピークから10秒経過時点における電流値とピークの電流値との差を経過時間で除算することにより10秒間での傾きを求めることにより、図4、図5に示すグラフを得ることができる。
【0031】
ここで、コントロールの傾きを100%として各傾きを比較すると、感受性菌株では79.0〜85.4%となり、耐性菌株では96.1〜122.9%となった。
【0032】
したがって、コントロールの傾きを100%とした場合において、閾値を90%に設定すればよく、90%未満の場合に感受性菌株であり、90%以上の場合に耐性菌株であると判定することができる。
【0033】
ただし、ピークから5秒間の傾きに基づいて感受性の判定を行うようにしてもよい。また、傾き以外の測定電流の傾向に基づいて感受性の判定を行うことも可能である。
【0034】
【発明の効果】
請求項1の発明は、ピークが得られた後、短期間の信号に基づいて迅速に薬剤感受性を測定することができ、臨床用途においては、適切な薬剤(抗生物質など)を迅速に検出して治療を行うことができ、ひいては治癒率を高めることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができ、信号処理を簡単化できるという特有の効果を奏する。
【0035】
請求項2の発明は、ピークが得られた後、短期間の信号に基づいて迅速に薬剤感受性を測定することができ、臨床用途においては、適切な薬剤(抗生物質など)を迅速に検出して治療を行うことができ、ひいては治癒率を高めることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができ、信号処理を簡単化できるという特有の効果を奏する。
【0036】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の効果に加え、薬剤感受性測定精度を高めることができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の薬剤感受性測定方法の一実施態様を説明するフローチャートである。
【図2】全量を0.25mlに設定した場合の測定電流の経時変化特性を示す図である。
【図3】全量を0.5mlに設定した場合の測定電流の経時変化特性を示す図である。
【図4】図2に示す測定電流の傾きを示す図である。
【図5】図3に示す測定電流の傾きを示す図である。

Claims (3)

  1. 測定薬剤溶液の溶媒を収容した第1セルと、薬剤溶液を収容した第2セルとに、それぞれ溶存酸素量検出用電極を設けておき、所定の濃度の微生物を含む菌液を第1セルおよび第2セルに供給し、各溶存酸素量検出用電極から出力され続ける信号に基づいて各信号のピークを検出し、ピークから所定の期間に得られる信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得ることと、信号どうしの関係として、各信号の傾きを採用することを特徴とする薬剤感受性測定方法。
  2. 所定の濃度の微生物を含む菌液を収容した第1セルと第2セルとに、それぞれ溶存酸素量検出用電極を設けておき、測定薬剤溶液の溶媒を第1セルに供給するとともに、薬剤溶液を第2セルに供給し、各溶存酸素量検出用電極から出力され続ける信号に基づいて各信号のピークを検出し、ピークから所定の期間に得られる信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得ることと、信号どうしの関係として、各信号の傾きを採用することを特徴とする薬剤感受性測定方法。
  3. 両信号のピーク値を予め設定された所定値にすべく各信号を補正し、補正された信号どうしの関係に基づいて薬剤感受性を得る請求項1または請求項2に記載の薬剤感受性測定方法。
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