JP4469772B2 - コエンザイムq10高負荷細胞の作製方法、コエンザイムq10高負荷細胞増殖添加剤及びコエンザイムq10高負荷培地 - Google Patents

コエンザイムq10高負荷細胞の作製方法、コエンザイムq10高負荷細胞増殖添加剤及びコエンザイムq10高負荷培地 Download PDF

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Description

本発明は、抗酸化剤であるコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法、コエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤、コエンザイムQ10高負荷培地及びコエンザイムQ10高負荷細胞に関する。
活性酸素は、水や酸素から生成され、不安定な不対電子を有する反応性に富んだ分子であり、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、そして一重項酸素が一般的である。活性酸素は、細胞の酸素呼吸過程にて発生する。また、生体への放射線若しくは紫外線照射又は発ガン物質の代謝過程等においても発生する。過剰な活性酸素は、核酸、タンパク質、脂質等の生体成分の酸化障害を誘引し、その結果、発ガン、動脈硬化、糖尿病等の発症や細胞老化の原因となる。
このように生体に対し傷害を与える原因となる活性酸素だが、人間においては活性酸素による生体内組織や器官の損傷を防ぐ機構が存在する。すなわち、有害な活性酸素を消去する働きをする抗酸化剤を体内に備えている。抗酸化剤としては、コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、α−リポ酸又はカタラーゼ若しくはスーパーオキシドディスムターゼ等の酵素などが知られている。
抗酸化剤の効能を研究するために細胞培養系を用いることができるが、このためには抗酸化剤を細胞へ取り込ませることが必要である。α−リポ酸などの水溶性の抗酸化剤は水溶液として比較的容易に細胞へ取り込ませることができる。また、脂溶性の抗酸化剤であるビタミンEでも、細胞培養系において添加する溶媒として一般的であるジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解することにより、細胞へ取り込ませることができる(非特許文献1)。
近年、抗酸化剤としてコエンザイムQ10が注目されている。コエンザイムQ10の生体に対する作用に関する研究成果は目覚しく、コエンザイムQ10の抗酸化作用に由来する心筋保護作用、発ガン予防、老化防止作用、血中LDL酸化抑制などが報告されている。これらはコエンザイムQ10の生体に対する効果に基づく研究成果であるが、細胞培養系による研究はまだ確立されていない。現在のところ、様々な外的ストレスから内部を守る皮膚に対するコエンザイムQ10の効果に関する知見は少ない。コエンザイムQ10は、前述のビタミンEと異なり、細胞培養系において添加する溶媒として一般的であるDMSOに溶解しないため、コエンザイムQ10を細胞へ取り込ませることが困難であった。このため、細胞培養系による研究を進展させることができず、皮膚に対するコエンザイムQ10の効果に関する知見が少ないことの一因となっていた。
特開2004−198409 高橋希之、高田恵子、二木鋭雄、ビタミンE研究の進歩VIII、ビタミンE研究会編、共立出版株式会社 p.128−132(1998) Organic solvents : physical properties and methods of purification 3rd ed. By John A. Riddick and William B. Bunger. New York : Wiley-Interscience, c1970.
上述したように、細胞培養系でのコエンザイムQ10の抗酸化効果に関する研究を進め、外的ストレスから内部を守る皮膚に対するコエンザイムQ10の効果に関する知見を得るためには、コエンザイムQ10を細胞へ効率良く取り込ませることが必要である。そこで本発明は、コエンザイムQ10を細胞へ取り込ませる方法を提供することを目的とする。
上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、細胞培養系において添加する溶媒として一般的であるDMSOではなく、特定の特性を有する溶媒を用いることにより、細胞毒性をおこさずにコエンザイムQ10を高濃度で細胞へ取り込ませることができることを見出した。このことより、コエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法、コエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤、コエンザイムQ10高負荷培地及びコエンザイムQ10高負荷細胞からなる本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
本発明の請求項1は、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を細胞増殖添加剤に吸着させる吸着工程と、前記吸着工程でコエンザイムQ10を吸着させた細胞増殖添加剤を含む培地中で細胞を培養する培養工程とを備えたことを特徴とするコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法である。
本発明の請求項2は、前記溶媒が1,4−ジオキサン又はエタノールのいずれか1であることを特徴とする請求項1記載のコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法である。
本発明の請求項3は、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を吸着させたことを特徴とするコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤である。
本発明の請求項4は、前記溶媒が1,4−ジオキサン又はエタノールのいずれか1であることを特徴とする請求項3記載のコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤である。
本発明の請求項5は、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を吸着させた細胞増殖添加剤を含むことを特徴とするコエンザイムQ10高負荷培地である。
本発明の請求項6は、前記溶媒が1,4−ジオキサン又はエタノールのいずれか1であることを特徴とする請求項5記載のコエンザイムQ10高負荷培地である
本発明の請求項1記載のコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法によれば、コエンザイムQ10を細胞へ高濃度で取り込ませることができる。
本発明の請求項2記載のコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法によれば、本発明の請求項1記載のコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法において、コエンザイムQ10を細胞へより高濃度で取り込ませることができる。
本発明の請求項3記載のコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤によれば、コエンザイムQ10を細胞増殖添加剤へ高割合で吸着できる。
本発明の請求項4記載のコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤によれば、本発明の請求項3記載のコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤において、コエンザイムQ10を細胞増殖添加剤へより高割合で吸着できる。
本発明の請求項5記載のコエンザイムQ10高負荷培地によれば、コエンザイムQ10を細胞へ高濃度で取り込ませるための培地を提供することができる。
本発明の請求項6記載のコエンザイムQ10高負荷培地によれば、本発明の請求項5記載のコエンザイムQ10高負荷培地において、コエンザイムQ10を細胞へより高濃度で取り込ませるための培地を提供することができる
コエンザイムQ10は、ベンゾキノン誘導体であり、広く生物界に存在する。コエンザイムQ10は、ミトコンドリアの電子伝達系の必須因子として、また、抗酸化剤として、生体内で重要な物質である。コエンザイムQ10には酸化型と還元型が存在する。還元型のコエンザイムQ10は酸化を受けやすい性質を有するため、活性酸素に水素を与え、無害な水などに変換する働きがある。そのため、細胞内では還元型コエンザイムQ10が抗酸化剤としての効果がある。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明はコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法に関する。本発明のコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤は、コエンザイムQ10が高割合で吸着した細胞増殖添加剤である。本発明のコエンザイムQ10高負荷培地は、コエンザイムQ10が高濃度で溶解した培地である。また、本発明のコエンザイムQ10高負荷細胞は、コエンザイムQ10が高濃度で細胞内へ取り込まれた細胞である。
本発明者は、コエンザイムQ10を溶解させる溶媒について検討を進めた結果、特定の特性を有する溶媒を用いることにより、コエンザイムQ10を溶媒に溶解させて、細胞毒性をおこさずにコエンザイムQ10を高濃度で細胞へ取り込ませることができることを見出した。
本発明のコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法は、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を細胞増殖添加剤に吸着させる吸着工程と、前記吸着工程でコエンザイムQ10を吸着させた細胞増殖添加剤を含む培地中で細胞を培養する培養工程とを備えたことを特徴とする。
細胞は、コエンザイムQ10を取り込ませることができる細胞であれば特に限定はされない。具体的な細胞の例として、表皮角化細胞、皮膚線維芽細胞、メラノサイト、小腸上皮細胞、肺線維芽細胞などの接着依存性細胞、リンパ球細胞、骨髄腫細胞、白血病細胞、及びある細胞と他の細胞との細胞融合によって得られたハイブリドーマ等の動物細胞である。
細胞を取り込ませるために、まずコエンザイムQ10を溶媒に溶解させる。溶媒としては、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒を用いる。
本発明者は、コエンザイムQ10は比誘電率が高い溶媒には溶けにくく、低い溶媒ほど溶けやすいことが見出した。そのため、コエンザイムQ10を溶解させる溶媒の比誘電率は30以下、のぞましくは20以下、さらにのぞましくは10以下が良い。コエンザイムQ10が高濃度に溶解する溶媒のうち、比誘電率20〜30の溶媒の例としては、アセトン、エタノール、比誘電率10〜20の溶媒の例としては、2−プロパノールが挙げられる。コエンザイムQ10が溶けやすい、比誘電率が0より大きくて10以下の溶媒として、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、イソペンタン、ヘキサン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。DMSO、エチレングリコール、アセトニトリル、プロピレングリコールなど比誘電率が30以上のものにはコエンザイムQ10は溶けにくく、コエンザイムQ10高濃度溶液を細胞増殖添加剤に溶かす本発明には適当でない。
本発明の「水溶性」は、水に溶けて水溶液をつくる性質を有することをいう。例えば、水と有機溶媒とが目的の割合で混和するとき、その有機溶媒は「水溶性」である。発明で用いる溶媒は、コエンザイムQ10高濃度溶液の水への溶解性が高い必要がある。つまり、発明で用いる溶媒は、水溶性である必要がある。これは、コエンザイムQ10を高濃度で溶解させた溶液を細胞増殖添加剤又は培養液に溶解させる必要があるからである。上記コエンザイムQ10が高濃度に溶解する溶媒のうち、イソペンタン、ヘキサン、ジエチルエーテル以外の溶媒は水への溶解性が高いため、本発明に適している。
本発明の「揮発性」は、室温付近(例えば、約10〜30℃程度)で当該溶媒が揮発(気化)するかどうかを示す性質である。本発明の「揮発性が低い(又は低揮発性)」とは、室温付近で当該溶媒が揮発しない溶媒を指す。本発明の「揮発性が高い(又は高揮発性)」は、室温付近で当該溶媒が揮発する溶媒を指す。揮発性が高い溶媒は、溶媒が揮発するために実験における正確な定量及び細胞増殖添加剤への添加が困難となる。そのため、本発明では揮発性が低い溶媒が適している。上記コエンザイムQ10が高濃度に溶解する溶媒のうち、例えば、1,4−ジオキサン又はエタノールは揮発性が低いため、実験において正確にハンドリングできる。
1,4−ジオキサンは、コエンザイムQ10の溶解性が高い、コエンザイムQ10高濃度溶液の水への溶解性が高い、揮発性が低い及び細胞毒性を生じないという理由から特に好ましく、後述する本発明の実施例で溶媒として用いられている。
吸着工程で、溶媒に溶解したコエンザイムQ10を細胞増殖添加剤に吸着させる。コエンザイムQ10は細胞増殖添加剤と混和し攪拌することにより、吸着させることができる。細胞増殖添加剤は、細胞の増殖を促す物質をいう。細胞増殖剤として、血清、ヒト上皮細胞成長因子(hEGF)、ウシ脳下垂体抽出物(BPE)等が挙げられる。血清は、細胞培養に使用される血清であれば制限なく使用でき、ウシ胎児血清(FBS)、ウマ胎児血清、ヒト胎児血清等が例示される。後述する本発明の実施例では、FBSを用いた。
次の培養工程で、前記吸着工程で得られた細胞増殖添加剤を含む培地中で細胞を培養する。コエンザイムQ10が吸着された細胞増殖添加剤を培地へ添加して、その培地中で細胞を培養した。細胞の培養方法は、前記培地を用いて、細胞を培養することからなる。その他の培養条件としては、特に制限されず、従来の培養条件を適用できる。本発明における細胞増殖添加剤の培地への添加量は、対象細胞種により適宜調整すればよい。
培地は、培養する細胞に適したものであれば特に限定されず、市販の基本培地であっても、また、これらを適宜改変したものであってもよい。具体的な基本培地の例として、MEM、DMEM、HamF12等が挙げられる。後述する本発明の実施例では、DMEM培地を用いた。
上記培養工程を経ることにより、コエンザイムQ10を細胞へ取り込ませることができる。
本発明のコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤は、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を吸着させたことを特徴とする。上記のようにして、溶媒に溶解したコエンザイムQ10を細胞増殖添加剤に吸着させることができる。
本発明のコエンザイムQ10高負荷培地は、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を吸着させた細胞増殖添加剤を含むことを特徴とする。上記のようにして、溶媒に溶解したコエンザイムQ10を細胞増殖添加剤に吸着させた後、その細胞増殖添加剤を培地に添加することにより、本発明のコエンザイムQ10高負荷培地を作製できる。
本発明のコエンザイムQ10高負荷細胞は、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を吸着させた細胞増殖添加剤を含む培地中で培養することにより得られたことを特徴とする。上記のようにして、溶媒に溶解したコエンザイムQ10を細胞増殖添加剤に吸着させた後、その細胞増殖添加剤を培地に添加し、その培地中で細胞を培養することにより、コエンザイムQ10高負荷細胞を作製できる。
以下、具体的な実施例について説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実験1 コエンザイムQ10を溶解させる溶媒の検討]
コエンザイムQ10をイソペンタン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−プロパノール、アセトン、エタノール、プロピレングリコール、アセトニトリル、エチレングリコール、DMSOに各々添加して、その溶解性を比較した。また、各々の溶媒の水への溶解性及び溶媒の揮発性を比較した。下記の表1にその結果を示す。表1では、(非特許文献2)に記載されている各々の溶媒の比誘電率も併せて示す。
[実験1の結果]
表1より、比誘電率が低い溶媒(比誘電率が30以下の溶媒)は、コエンザイムQ10の溶解性が高いことが示された。イソペンタン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−プロパノール、アセトン、エタノールはコエンザイムQ10の溶解性が高かった。前記比誘電率が低い溶媒の中で、イソペンタン、ヘキサン、ジエチルエーテル以外の溶媒の水への溶解性は高かったため、本発明のコエンザイムQ10を細胞へ取り込ませる方法における溶媒として適していると考えられた。また、前記比誘電率が低い溶媒の中でイソペンタン、ジエチルエーテル、アセトン以外は揮発性が低いため、正確な定量ができて、実験操作に不便がない。そのため、それらは、本発明のコエンザイムQ10を細胞へ取り込ませる方法における溶媒として適していると考えられた。このことより、比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒が本発明の溶媒として適していることが示された。コエンザイムQ10の溶解性が高く、溶媒の水への溶解性が高く、揮発性が低い溶媒として、1,4−ジオキサンが特に好ましいと考えられた。
[実験2 コエンザイムQ10の細胞への取り込み]
所定の濃度のコエンザイムQ10を1,4−ジオキサンに溶解させた。この1,4−ジオキサン溶液をFBSに添加して、37℃にて一晩中転倒混和させ、コエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤を得た。このコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤をDMEMに10%添加し、培地中でのコエンザイムQ10濃度が25μMとなるコエンザイムQ10高負荷培地(以下、CoQ10(+)培地と称する)を作製した。CoQ10(+)培地を用いてヒト表皮(HaCaT)細胞を培養して、コエンザイムQ10高負荷細胞を作製した(以下、この細胞をCoQ10(+)細胞と称する)。
同時に、対照として、コエンザイムQ10を溶解させていない1,4−ジオキサンのみを、上記コエンザイムQ10溶液と同量、FBSに添加し、上記工程に従って、コントロール細胞(以下、この細胞をCoQ10(−)細胞と称する)を作製した。また、CoQ10(−)細胞を培養した培地を以下CoQ10(−)培地と称する。
[実験3 CoQ10(+)細胞の抗酸化効果]
過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)及びtert−ブチルヒドロペルオキシド(t−BuOOH)という3種類の酸化ストレスについて、実験2で得たCoQ10(+)細胞及びCoQ10(−)細胞の抗酸化効果を調べた。
(1)過酸化水素に対する抗酸化効果
CoQ10(+)細胞及びCoQ10(−)細胞を、1,4−ジオキサンやコエンザイムQ10を含まないFBS(以下、通常のFBSと称する)を10%含むDMEMにてそれぞれ8×104細胞/mlの濃度で24穴プレートに播種した。細胞接着後、無血清培地に置換、一晩放置し細胞外の血清を完全に除去した。過酸化水素を所定量添加した培地に置換し2、4時間後、それぞれの細胞生存率を測定、比較した(図1)。
(2)AAPHに対する抗酸化効果
CoQ10(+)細胞及びCoQ10(−)細胞を、通常のFBSを10%含むDMEMにてそれぞれ1×105細胞/mlの濃度で24穴プレートに播種した。細胞接着後、低血清培地に置換、一晩放置した。AAPHを所定量添加した培地に置換し3時間後、それぞれの細胞生存率を測定、比較した(図2)。
また同時に、コエンザイムQ10をCoQ10(−)細胞に直接添加することによる抗酸化効果を調べた。CoQ10(−)細胞を、通常のFBSを10%含むDMEMにて1×105細胞/mlの濃度で24穴プレートに播種した。細胞接着後、所定量のコエンザイムQ10を含有した低血清培地に置換し一晩放置した。翌日AAPHを50mM添加した無血清培地(又はコントロールとしてAAPHを添加していない無血清培地)に置換し3.5時間後、それぞれの細胞生存率を測定、比較した(図3)。
(3)t−BuOOHに対する抗酸化効果
CoQ10(+)細胞及びCoQ10(−)細胞を、通常のFBSを10%含むDMEMにてそれぞれ1×105細胞/mlの濃度で24穴プレートに播種した。細胞接着後、低血清培地に置換、一晩放置した。t−BuOOHを所定量添加した培地に置換し3時間後、それぞれの細胞生存率を測定、比較した(図4)。
(4)α−リポ酸との組合せによるAAPHに対する抗酸化効果
CoQ10(+)細胞及びCoQ10(−)細胞を、通常のFBSを10%含むDMEMにてそれぞれ8×104細胞/mlの濃度で24穴プレートに播種した。細胞接着後、低血清培地で洗浄・放置した。次にα−リポ酸を所定量添加した培地に置換し、6時間後AAPHを25mM添加した培地に置換した。18時間後それぞれの細胞生存率を測定、比較した(図5)。
[実験3の結果]
図1より、酸化ストレスである過酸化水素で処理したところ、CoQ10(−)細胞に比べて、CoQ10(+)細胞は生存率が有意に高かった。このことより、CoQ10(+)細胞は過酸化水素による傷害を抑制することが明らかとなった。また、この抗酸化効果は、過酸化水素を所定量添加した培地に置換した2時間後(図1(A))、4時間後(図1(B))ともに見られた。
図2より、酸化ストレスであるAAPHで処理したところ、CoQ10(−)細胞に比べて、CoQ10(+)細胞は生存率が有意に高かった(図2)。このことより、CoQ10(+)細胞はAAPHによる傷害を抑制することが明らかとなった。一方、図3より、培地にコエンザイムQ10を直接添加した細胞(AAPH 50mM、コエンザイムQ10 25μM)は、コントロール(AAPH 50mM、コエンザイムQ10無配合)群と生存率に大きな差はなく、図2の同条件(AAPH 50mM、コエンザイムQ10 25μM)のCoQ10(−)細胞がCoQ10(−)細胞より細胞死を有意に抑制したような結果は得られなかった。このことより、コエンザイムQ10は直接添加しただけでは細胞に取り込まれず、本発明の方法に従うことにより細胞に取り込まれ抗酸化効果を発揮することが示された。
図4より、酸化ストレスであるt−BuOOHで処理したところ、CoQ10(−)細胞に比べて、CoQ10(+)細胞は生存率が有意に高かった。このことより、CoQ10(+)細胞はt−BuOOHによる傷害を抑制することが明らかとなった。
図5より、CoQ10(+)細胞は、他の抗酸化剤であるα―リポ酸を加えることにより、抗酸化効果に対して相加効果を示した。
これらの結果より、CoQ10(+)細胞は三種類の酸化ストレスに対して抗酸化効果を示すことが明らかとなった。
[実験4 CoQ10(+)細胞内のコエンザイムQ10の定量]
実験2で得たCoQ10(+)細胞及びCoQ10(−)細胞のそれぞれに対するコエンザイムQ10の細胞内への取り込み量を定量した。コエンザイムQ10の細胞内への取り込み量を定量するために、(特許文献1)で開示されたコエンザイムQ10の分析方法に従った。この方法によれば、細胞内の酸化型及び還元型コエンザイムQ10を正確に定量できる。図6に細胞内の還元型コエンザイムQ10の定量の結果を示す。
以下、実験手順を述べる。まず、通常のFBSを10%含有したDMEM培地で培養したHaCaT細胞の培地へ1,4−ジオキサン又はコエンザイムQ10(終濃度:250μM)を添加し培養後、トリプシンで細胞を回収し、1.5×106細胞をイソプロパノールで懸濁し高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて還元型コエンザイムQ10量を測定した(それぞれの還元型コエンザイムQ10量を、図6のDMEM+10%FBS+ジオキサン、DMEM+10%FBS+CoQ10で表す)。
また、実験2に従って得たCoQ10(+)細胞及びCoQ10(−)細胞を、それぞれ上記のように回収し、HPLCにて定量した(それぞれの還元型コエンザイムQ10量を、図6のDMEM+10%FBS(CoQ10+)、DMEM+10%FBS(CoQ10-)で表す)。さらに、CoQ10(+)培地と同様の方法で、その半分の濃度のコエンザイムQ10を含有させた培地も作製し、同様に培養して細胞を回収した(還元型コエンザイムQ10量を、図6のDMEM+10%FBS(CoQ10 1/2+)で表す)。
[実験4の結果]
図6より、CoQ10(−)細胞及び1,4−ジオキサンを添加しただけ培地で培養した対照細胞に比べて、CoQ10(+)細胞は多くの還元型コエンザイムQ10が存在した。また、半分の濃度のコエンザイムQ10を含有させた培地で培養した細胞は、CoQ10(+)細胞の約60%程度の還元型コエンザイムQ10を有していた。このことより、還元型コエンザイムQ10が細胞内に取り込まれたことが確認できた。さらに、コエンザイムQ10を直接添加した培地で培養した細胞に比べて、CoQ10(+)細胞には約2.5倍の還元型コエンザイムQ10が存在した。これより、コエンザイムQ10は溶解してFBSに吸着することにより、細胞に取り込まれることが確認できた。前述のように、還元型コエンザイムQ10は酸化を受けやすい性質を有するため、活性酸素に水素を与え、無害な水などに変換する働きがある。実験3のCoQ10(+)細胞の抗酸化効果は、細胞内に取り込まれた還元型コエンザイムQ10の作用によるものであると考えられる。
過酸化水素に対するコエンザイムQ10の抗酸化効果を示した図である。(A)は過酸化水素を所定量添加した培地に置換した2時間後、(B)は過酸化水素を所定量添加した培地に置換した4時間後のコエンザイムQ10の抗酸化効果を示した図である。 AAPHに対するコエンザイムQ10の抗酸化効果を示した図である。 培地にコエンザイムQ10を直接添加したときのAAPHに対するコエンザイムQ10の抗酸化効果を示した図である。 t−BuOOHに対するコエンザイムQ10の抗酸化効果を示した図である。 α−リポ酸との組み合わせによるCoQ10(+)細胞のAAPHに対する抗酸化効果を示した図である。 細胞内のコエンザイムQ10の定量の結果を示した図である。

Claims (6)

  1. 比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を細胞増殖添加剤に吸着させる吸着工程と、前記吸着工程でコエンザイムQ10を吸着させた細胞増殖添加剤を含む培地中で細胞を培養する培養工程とを備えたことを特徴とするコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法。
  2. 前記溶媒が1,4−ジオキサン又はエタノールのいずれか1であることを特徴とする請求項1記載のコエンザイムQ10高負荷細胞の作製方法。
  3. 比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を吸着させたことを特徴とするコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤。
  4. 前記溶媒が1,4−ジオキサン又はエタノールのいずれか1であることを特徴とする請求項3記載のコエンザイムQ10高負荷細胞増殖添加剤。
  5. 比誘電率30以下の水溶性低揮発性溶媒に溶解したコエンザイムQ10を吸着させた細胞増殖添加剤を含むことを特徴とするコエンザイムQ10高負荷培地。
  6. 前記溶媒が1,4−ジオキサン又はエタノールのいずれか1であることを特徴とする請求項5記載のコエンザイムQ10高負荷培地。
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