JP4468282B2 - ガスタービンの性能診断方法及び診断システム - Google Patents

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本発明は運転中のガスタービン設備の性能を診断する方法及び診断システムに関する。
ガスタービンの性能は、燃料流量などの操作条件だけでなく、吸気温度などの大気条件によっても大きく変化する。このため、性能の計測値を時系列に並べるだけでは、性能の劣化や異常を診断することができない。これに対応するため、従来、様々な診断方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、運転条件による性能の変動を除外するために、実機のデータを一定の共通条件に揃えて評価することが記載されている。また、特許文献2には、いくつかの性能因子を特定の複数の運転条件と組み合わせてモデル化し、この結果に基づいて運転条件の変化による変動を除外する方法が記載されている。また、特許文献3には、特許文献2と同じように性能因子と運転条件を組み合わせてモデル化した上で、さらに変動の影響を除外するための移動平均処理方法が記載されている。
特開平11−15516号公報 特開2003−83089号公報 特許第3538670号公報
しかし、従来の方法には、以下の2つの課題がある。
第1の課題は、評価精度の限界である。前述の従来技術において、特許文献3は、劣化判定に関わる精度について、概ね、劣化判定のしきい値が90%、許容誤差が2%、移動平均処理時の目標変動幅基準が5%となっている。劣化の診断は、しきい値が90%を下回るかどうかで判定している。これらを、劣化の識別の点からみると、10%以上の性能劣化は判定できるが、2%以下の劣化については前述の許容誤差の範囲に含まれると推察され、また2〜10%の範囲の劣化についても判定の方法や基準が示されていない。
第2の課題は、保守を実施した際の性能特性の変化をどのように処理するかである。ガスタービンを保守して、圧縮機やタービン、吸気フィルタなどの主要部品を洗浄したり、交換したりすると、設備の性能は回復し特性が変化する。しかし、このような保守による性能の不連続変化を含む実機データに基づいて性能特性をモデル化すると、モデルの精度が低くなる。したがって、従来の方法で性能を診断しようとすると、保守を実施するたびに、その後の一定期間のデータを使って性能特性を再度モデル化したり、モデルのパラメータを調整したりする必要がある。この結果、保守後の一定期間は、モデル化に十分な量のデータが蓄積されるまで性能が診断できないことになる。このような問題に対する効果的な対応方法は、これまでに示されていない。
本発明の目的は、前記第1の課題或いは、更に第2の課題を解決できる性能診断方法及び診断システムを提供することにある。
発明者らは、前述の第1の課題である精度の限界について種々分析した結果、高精度な診断をするためには、「性能の負荷特性」と、「実機データに含まれる劣化の影響」という2つの要因を考慮する必要があるとの知見を得た。
ここで、「性能の負荷特性」とは、ガスタービンの性能特性が負荷率によって変化することである。例えば、発電効率は負荷率によって変化し、部分負荷時で負荷率が低くなるほど効率は低下する。このような負荷率による性能特性の変化に適切に対応して性能特性をモデル化することが必要となる。
また、「実機データに含まれる劣化の影響」とは、実機データを採取する期間中に生じる性能低下の影響を指す。これについて、以下で説明する。
ガスタービンの性能特性をモデル化する方法としては、性能特性関数などの設計情報を用いる方法と、実機の運転データに基づいてモデルを構築する方法とがある。このうち、前者の設計情報を使う方法は、これらの情報が一般には設計事業者から提供されないことが多く、設備の保有事業者や運転保守事業者にとっては不可知なことが多い。仮に開示された場合でも、経年機では度重なる保守や部品交換などによって、性能特性が設計時と異なっていることも多い。したがって、より汎用的な方法としては、後者の方法で、実機の運転データに基づいて性能特性モデルを構築することが求められる。このためには、代表的な運転条件である吸気温度、すなわち大気温度の範囲が運転範囲の全体を含むようにデータを採取する必要がある。例えば、年間の最高・最低気温の範囲を含めるために、望ましくは1年周期、少なくとも最高気温と最低気温の間の期間として約半年程度の期間が必要になる。これは連続運転設備の場合、稼働時間が約4000〜8000時間に相当する。
しかし、このような期間中にもガスタービンの性能は劣化する。例えば、運転開始後の5000時間において発電出力が約3%低下することが典型的な例として報告されている(例えば、Harry G. Stoll ,Creating Owner’s Competitive Advantage through Contractual Services, GE Power Systems, GER4208,P.10,(2001)参照)。このことによる問題点は、設備が劣化する前の正常状態のモデルを構築するために収集したデータのなかに劣化の影響が含まれてしまうことである。したがって、このように経時劣化の影響が含まれた実機運転データからでも、劣化前の性能特性モデルを同定できる方法が必要となる。
本発明は、上に述べた第1の課題である精度の限界に対応するために、前述の「性能の負荷特性」を考慮する方法として、ガスタービンの運転データの中から、負荷率が100%近くのデータ、あるいは運用上の上限負荷に近いデータのみを抽出する方法を提供する。このように負荷率が100%あるいは運用上限近傍のデータのみが抽出され、これに基づいて特性モデルが構築されることにより、本発明では特性モデルが高精度化される。そして、このために、以下の第1ないし第3の実施態様を提案する。
第1の実施態様は、ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データを入力として、発電出力、発電効率、圧縮機圧力比、燃料流量、圧縮機効率、タービン効率或いは吸気流量等の性能指標を、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数としてモデル化する手段(以下、特性モデル化手段と呼ぶ)と、前記性能指標を、少なくとも該性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、予め定めた吸気温度と吸気圧力における値(基準化データ)に換算する基準化手段と、前記診断対象期間中の或る範囲のデータに含まれる前記性能指標の値を前記基準化手段に入力して出力された、基準化データの時系列的な減少または増加によって性能の劣化または回復を判定する診断手段を備えたガスタービンの診断方法或いは診断システムにおいて、前記特性モデル化手段と前記診断手段に入力される、前記或る範囲の運転データを生成するために、診断対象期間中の複数時点の運転データから、少なくとも発電出力と吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数によって負荷率を計算し、予め定めた基準で分割された複数の負荷率範囲のうち、計算された負荷率の出現割合が最も多い負荷率範囲にある運転データ(以下、ベースロードデータと呼ぶ)を抽出するベースロード運転データ抽出手段を備える。
第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記ベースロード運転データ抽出手段として、発電出力と吸気温度、吸気圧力の関係を、前記診断対象期間中の複数時点での運転データに基づいて、吸気温度Tci、吸気圧力Pciを入力に含み、発電出力Weを出力する関数
We = f_We(Tci, Pci)
として同定する手段と、同定した該関数f_Weを使って、前記診断対象期間の運転データの吸気温度Tciと吸気圧力Pciに応じた発電出力の値Wecalcを計算し、この計算値Wecalcに対する実測値Weactの比
A = Weact/Wecalc
を負荷率として計算する手段と、或いは、更に前記Aについての診断対象期間中の各時点での値を、該時点を含む或る期間の移動平均値Amavで除した値
B = A/Amav
を負荷率として計算する手段と、負荷率についての前記Aの値、あるいは、さらに前記Bを計算している場合には該Bの値が、一定の範囲内にあるデータを抽出する手段とを備える。
第3の実施態様は、前記第1或いは第2の実施態様と同様に、特性モデル化手段と基準化手段と診断手段を備えたガスタービンの性能診断方法或いは診断システムにおいて、前記特性モデル化手段と前記診断手段に入力される、前記或る範囲の運転データを生成するために、該ガスタービンの運用上の最大負荷率における吸気温度Tciと排気温度Ttoの関係を示す特性モデル
Tto = f_Tex (Tci)
の関数関係を用いて、評価対象期間中の各運転データに対して、吸気温度Tciのデータを入力して排気温度の値Ttocalcを計算し、計算された排気温度の該計算値Ttocalcとその実測値Ttoactの偏差
ΔTto = Ttoact − Ttocalc
が一定の範囲内にあるデータを抽出する手段を備える。
また、発明者らは、第2の課題である保守を実施した際の性能特性の変化の処理について検討した結果、この課題に対応し、かつ、同時に前述の「実機データに含まれる劣化の影響」を考慮する手段として、次の第4の実施態様を導入する。
すなわち、前述の第1〜第3の実施態様における前記特性モデル化手段として、性能指標Yと吸気温度Tci、吸気圧力Pciの関係を示す次の特性モデル式
Y = a×(Tci−Tci) + a×(Pci−Pci) + α×t + Y00
(ここで、Tciは予め定めた一定の標準吸気条件における吸気温度の値、Pciは予め定めた一定の標準吸気条件における吸気圧力の値、tは診断対象期間中の累積稼働時間あるいは等価運転時間、a1,aは性能特性を表すモデル定数、αは劣化を表す定数係数、Y00は標準吸気温度・圧力における対象診断期間初期の性能値である)
の定数a,a,α、Y00の値を、前記或る範囲の運転データに基づいて決定する手段と、
前記基準化手段として、前記決定したモデル定数a,aを使った次式
= Y − a×(Tci−Tci) − a×(Pci−Pci
によって、前記性能指標の値Yを、標準の吸気温度Tci、吸気圧力Pciにおける値Yに換算する手段を備える。
ここで、特性モデル化手段では、劣化を表す係数αを導入して定式化することによって、期間中の劣化を反映して性能特性モデルを構築できている。また、この際に、劣化を反映した項(右辺第3項)と、劣化以外の運転条件を補正する項(右辺第1,2項)を分けていることにより、前記基準化手段では、この劣化係数を除いた運転条件変化のみを補正することができている。これによって、前記基準化手段の計算式での評価結果は、実機の性能を運転条件による変動のみを補正して標準大気条件での換算値に直したものにある。従って、これの経時的性能を評価することにより、経時劣化の傾向を運転条件変動の影響と分離して取り出すことが出来る。
また、上式に示すようなモデルの定式化によって、本方式は、従来の方式のように、保守を実施した後に一定期間のデータを使ってモデルを再調整・再構築することが必要になったり、このデータ集積期間中に性能を評価できなくなるような不便がなく、保守実施による性能変動があっても継続的に性能を評価できる。これは、上述したように性能変化に及ぼす運転条件変動と経時劣化の影響が分離されたことによって、性能を、実測値を基準にして(右辺第1項)、運転条件の変動の影響のみを補正(右辺第2、3項)することで評価できるようになったためである。この結果、本方式では、常に、実測値を上式のY(右辺第1項)に入力し、運転条件による変動を右辺第2項以後の項で補正するだけで、保守実施の前後であるかや保守の有無にかかわらず、持続的に性能を基準化して評価できる。
本発明の性能診断方法とシステムにより、度重なる保守によって性能特性が変化した経年機や、詳細仕様が不明なガスタービンであっても、従来の診断方式で課題となっていた性能特性の負荷依存性の問題を解消することができた。また、診断のために収集した実機運転データ中に含まれる経時劣化の影響を適切に除外して性能特性をモデル化でき、更に、保守を実施した際の性能変化の影響をも考慮して性能の経時変化を評価可能である。これらによって、従来の方法よりも高精度にガスタービンの性能劣化または保守による性能回復を評価できるようになった。
以下、本発明の詳細を、図面を用いて説明する。
図1に、本発明によるガスタービン劣化診断方法の処理フロー例を示す。処理の手順は工程1〜4からなる。
工程1(以下、ベースロード運転データ抽出工程と呼ぶ)では、実機の時系列運転データから、ベースロード運転データを抽出する。ベースロード運転データとは、部分負荷状態を除く、負荷率100%近傍での運転データを指す。ただし、対象ガスタービンの運転計画で負荷率が100%でなく、例えば負荷率90%で連続運転するような場合や、あるいは夜間は負荷率70%で運転するような場合は、これらの一定の負荷率近傍での運転データをベースロード運転データの代わりに抽出するとよい。本発明では、説明しやすくするため、このような一定負荷率近傍の部分負荷データもベースロード運転データと総称する。
工程2(以下、モデル定数決定工程と呼ぶ)では、工程1で抽出されたベースロード運転データに基づいて、ガスタービンの性能特性モデルのモデル定数を決定する。性能特性モデルは、ガスタービンの運転条件を入力として性能の予測値を計算して出力するプログラムモジュールとして実装されている。モデル定数は、これらのプログラムモジュールにおいて設定される対象ガスタービンに固有の定数を指す。なお、本発明において、モデル及びモデル定数とは、以下同様に、データの入力を受けて演算し結果を出力するプログラムモジュールと、このプログラムモジュールで設定される定数を指す。
ここでいう性能とは、例えば発電出力のような計測値、あるいは、これに基づいて計算される発電効率(発電出力と燃料投入量のエネルギー比)のような値を指す。また、性能指標とは、上に述べた2例にとどまらず、劣化に伴って値が変わっていくような性能の種類全般を指す。特に典型的な例としては、発電出力、発電効率、圧縮機又はタービンの圧力比、吸気流量又は排気流量、排熱利用効率、燃料流量、圧縮機効率、タービン効率などを挙げることが出来る。なお、以下においては適宜、性能の値を性能、性能の種類を性能指標と呼んで区別する。運転条件は代表的には、吸気の温度と圧力であるが、この他に、吸気の湿度、燃料流量、燃焼器への蒸気や水の噴射量などの運転環境や運転操作の条件全般を含めてもよい。
工程3(以下、基準化工程と呼ぶ)では、工程2で決定されたモデル定数を使って、ベースロード運転データの性能実測値を、標準条件に直したときの相当値(基準化データ)に変換する。標準条件としては、例えばISOで定められた標準大気条件(吸気の温度15℃,気圧1atm,相対湿度60%)などの一定の固定された条件を採るとよい。これにより、実機の時系列データは、運転条件の変動の影響を補正して、一定運転条件下に揃えたときの性能の時系列データになる。
工程4(以下、診断工程と呼ぶ)では、工程3で生成された基準化データの時系列の推移により、性能劣化の進行状況や保守実施による性能回復効果などを診断する。
本方法は、工程1でベースロード運転データだけを抽出していることにより、後続の工程2及び工程3ではガスタービン性能の部分負荷特性に起因するモデルの精度低下の問題を回避して高精度にモデル化できる。このため、工程4での性能傾向の診断で高精度な結果が得られる。
なお、上記工程3と工程4の内容は次のようにしてもよい。すなわち、工程3では、工程1で抽出されたベースロード運転データ中の運転条件データを、工程2でモデル定数が決定されたガスタービンの性能特性モデルに入力して、運転条件に応じたガスタービンの性能を予測計算し、工程4では、この性能の予測結果と実測値の偏差を計算して、偏差の時系列の傾向の推移から劣化を評価する。例えば、劣化が進行すると、予測結果よりも実測値の方が小さくなり、偏差が拡大してゆくので、このような偏差の増減に基づいて劣化の進行や保守による性能回復などを定量評価するとよい。この方法の長所は、基準化のためのモデルが不要であるため、より簡便に診断できることである。
図2に、前述の図1における工程1のベースロード運転データ抽出方法の一例を示す。このベースロード運転データ抽出方法を以下、出力負荷率法と呼ぶ。その手順は工程5〜7からなる。
工程5(以下、出力特性モデル同定工程と呼ぶ)では、発電出力と吸気温度、吸気圧力の関係を表す特性モデルを実機時系列運転データに基づいて同定する。出力特性モデルは、吸気温度Tci、吸気圧力Pciを入力に含み、発電出力Weを出力する次式で示されるような関数である。
We = f_We(Tci, Pci) …(1−1)
この関数f_Weは具体的には例えば次のようにすると好適である。
We = a×(Tci−Tci) + b×(Pci−Pci) +α×t + We…(1−2)
ここで、tは稼働時間を表し、Tci、Pciは吸気温度と吸気圧力の標準条件値である。稼動時間tは時間経過を表すものであればよく、例えば等価運転時間など、劣化に影響する要因を加味して補正した時間を使ってもよい。以下の説明においても稼働時間tはこのような換算時間を含むものとする。この稼働時間tの項は、利用する実機運転データのセットにおいて、経時劣化の影響が無視できるほど小さいと考えられる場合は省略可能であるが、前述したようにデータ収集期間中に経時的に性能劣化していることが無視できない場合は、この項を含めておくことが望ましい。経時劣化の影響がこの項とその係数αに分離されることにより、出力の運転条件特性の項a,bに経時劣化によるバイアスが含まれることを避けることができ、出力特性を高精度にモデル化できる効果がある。
また、式(1−2)で、a、b、α、Weはモデル定数を示す。工程5におけるモデルの同定とは、これらのモデル定数値を決定することである。a、bは、吸気温度と圧力の標準条件からのずれによって、発電出力を補正する係数である。αは時間の経過tに伴う発電出力の低下率(以下、劣化係数と呼ぶ)を示す。劣化係数αは、工程5で使う実機時系列運転データの期間中の性能劣化が殆どないと考えられる場合は省略可能である。Weは、Tci、Pciが標準条件値のときの初期(期間中の劣化がはじまる前)の発電出力を示す。
これらのモデル定数a、b、α、Weの決定方法としては、実機の時系列運転データに含まれる運転条件を式(1−2)の右辺に代入して計算される発電出力の時系列の計算結果と、実機時系列運転データに含まれる発電出力の時系列データとの誤差が、データの期間を通じて最小になるように決定するとよい。これは最小二乗法などの公知の手法によって求めることができる。
なお、工程5では、実機時系列運転データの代わりに、吸気温度などの運転条件を種々に変化させて採取した実機データを使用してもよい。この場合、データの採取期間が短期間であれば、上述したのと同様に劣化係数αは省略可能である。
工程6〜7(以下、負荷率計算工程と呼ぶ)では、発電出力の実測値と、出力特性モデルによる計算値とに基づいて、負荷率を計算する。
工程6では、まず、工程5でモデル定数を決定した出力特性モデル(具体例としては式(1−2))に、劣化診断対象期間の実機時系列運転データの運転条件値(上の例では吸気温度と圧力の計測値)を入力して発電出力の値を計算(これをモデル計算値Wecalcと呼ぶ)する。ついで、次式で示すように、このモデル計算値Wecalcに対する実機時系列運転データの発電出力実測値Weactの比Aを計算(これを負荷率計算値Aと呼ぶ)する。
A = Weact / Wecalc …(2−1)
続く工程7では、下記の式(2−2)に示すように、ある時点での比Aの値を、その時点を含む或る期間の移動平均値Amavで除した値Bを計算(これを負荷率計算値Bと呼ぶ)する。このように移動平均との比をとることにより、上記負荷率計算値Aの変動が大きいような場合に計算負荷率の誤差変動幅を十分小さくし、かつ、プラント性能の経時劣化と季節的な性能変動の影響をほどよくバランスさせることが可能になる。
B = A / Amav …(2−2)
この場合の移動平均期間の取り方としては、例えば対象時点までの直前の1週間、あるいは100〜200点程度のデータ期間をとると好適である。これには以下の理由がある。例えば、典型的な計測記録として1時間間隔の運転データを保存しているような場合、1日〜2日(24〜48点)の期間で移動平均化すると、例えば週末休日の土曜日・日曜日のように電力需要が低下して負荷率が下がるような場合に、移動平均期間の大半がこの間に含まれることになり、式(2−2)での負荷率の計算結果が過大評価になる危険性がある。このようになると、実際には週末に負荷率が低下しているのに、計算上は負荷率が低下していないことになり、負荷率を正確に評価できなくなる。反対に、1ヶ月以上の期間で移動平均化すると、期間が長すぎるために一週間単位での性能の低下を捉えられなくなる危険性がある。これらを考えると、1時間間隔のデータに基づいて処理をする場合は、上述のような期間あるいはデータ点数で移動平均化すると、種々の運転条件変動や経時劣化の影響をほどよく反映することができ、好適である。
なお、これらの工程6〜7で負荷率を計算するときの実機時系列データの期間と、前述の工程5でモデル定数を決定するときに使う実機時系列データの期間は異なっていてもよい。例えば、工程5では実機時系列データのうちの或る一定の期間で出力特性モデルの定数を決定し、工程6〜7ではこのモデル定数を、負荷率を評価したい期間全体に適用することができる。このようにすると、劣化評価の対象期間の全データを使うことなく、少ないデータで効率的にモデル定数を決定できる。
また、工程7については、工程6の式(2−1)による比Aの計算結果の変動幅が十分小さいか、比Aの値が1に十分近い場合などは省略可能である。この場合、比Aの値を負荷率計算値とするとよい。
工程8(抽出工程)では、工程6〜7での負荷率計算値が一定範囲内のデータを抽出する。具体的には、診断対象期間中の複数時点の運転データから、少なくとも発電出力と吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数によって負荷率を計算し、予め定めた方法で分割された複数の負荷率範囲のうち、計算された負荷率の出現割合が最も多い負荷率範囲にある運転データであるベースロードデータを抽出し、これを前記或る範囲の運転データとする。その範囲は、幅が大きい場合は、設備の保守・休止期間などを挟む長期間のデータでは100±25%程度になることもあるが、ベースロード運転が多いガスタービンでは100±3%程度、特に負荷率が比較的一定している場合は100±1%の範囲を抽出するとよい。
本実施例(出力負荷率法)の式(1−1)、(1−2)、(2−1)、(2−2)で示した方法では、吸気温度、圧力、発電出力という3つの情報だけで負荷率を計算できる。したがって、運転条件の違いを加味したベースロード運転データの抽出を、少ない情報量と計算量で効果的に実施できる。
図3に、前述の図1における工程1のベースロード運転データ抽出方法の別の例を示す。本方式を以下、排気温度法と呼ぶ。その手順は工程9〜10からなる。
工程9(以下、排気温度計算工程と呼ぶ)では、吸気温度と排気温度の関係を示す特性モデル(以下、排気温度特性モデル)に基づいて、実機時系列運転データの吸気温度に対応する排気温度の予測値を計算する。排気温度特性モデルは、次式に示すように、吸気温度Tciを入力として、このときのタービン排気温度Ttoをある関数関係に従って計算して出力するものである。
Tto = f_Tex (Tci) …(3−1)
タービン排気温度Ttoは、タービン最終段のガス温度、タービン中間段のガス温度、又は、タービン制御用の燃焼温度管理指標の上限値ガス温度塔が挙げられる。
排気温度特性モデルの計算手順は、一般にはガスタービンの運転制御ロジックに組み込まれている関係式を使うことができる。ガスタービンの運転制御は一般に、吸気温度と、燃焼器への冷媒噴射量など、いくつかの運転条件が与えられたときに、排気温度として守られるべき上限温度が一定の関数関係によって設定されている。運転においては、排気温度がこの上限値以下になるように設備が制御されている。この上限温度は設備のベースロード運転時の排気温度に対応している。そこで、この関係式を式(3−1)のモデル式として使うと、実際の制御状態をそのまま反映して、正確にベースロード運転時の排気温度を予測できる。これにより、より高精度にベースロード運転データを抽出でき、最終的に高精度に劣化診断ができる。
排気温度特性モデルとして、このように制御ロジックが利用できない場合は、単純に次式のように表して、実機運転データや計画値に基づいてモデル化することもできる。
Tto = ato × (Tci−Tci) + bto × (Gs−Gs) +Tto …(3−2)
ここで、Gsは燃焼器への冷媒噴射量で、Gsは標準条件でのその値であるが、ガスタービンが冷媒噴射しない型式の場合は、この右辺第2項は省略する。また、吸気温度以外の運転操作条件として、排気温度への影響が強いものがあれば、Gsの代わりに使うか、あるいはその項を第1、第2項と同様の形でさらに追加するとよい。このような条件の例としては、圧縮機出口温度、タービン中間段のガス温度などがある。タービン中間段のガス温度とは、タービンの入口と出口の間にある複数の翼列段の間のガス温度を指す。また、上式のato、bto、Ttoはモデル定数であり、特にTtoは標準条件での排気温度である。これらのモデル定数は、複数の実機運転データ、あるいは計画値、試験運転データなどに基づいて、フィッティングして決定できる。すなわち、吸気温度と冷媒噴射量に応じた排気温度の複数組のデータを使って、右辺に吸気温度と冷媒噴射量を代入して計算した排気温度の値と、実際のデータの排気温度の値との誤差の二乗和が最小になるように、これらのモデル定数の値を決めるとよい。これには最小二乗法などの公知の方法を使うことができる。本方法によれば、排気温度制御ロジックの情報がなくても、吸気温度と冷媒噴射量、排気温度の組についての、運転データや計画値の情報があれば簡単にモデル化が可能である。
なお、式(3−2)は、さらに単純化して冷媒噴射量の項を省き、次に示す式(3−3)のようにしてもよい。蒸気噴射ガスタービンであっても、燃料流量と蒸気噴射流量の比率を一定に保つ制御方式の設備では、この方式でも排気温度と吸気温度の関係を十分高精度にモデル化できる。この場合の利点は、より少ない変数で簡便に排気温度を推定できることである。
Tto = ato × (Tci−Tci) + Tto …(3−3)
工程10(以下、抽出工程と呼ぶ)では、前述の式(3−1)あるいは式(3−2)、(3−3)で排気温度の予測値を計算し、これに対する実測値の偏差が予め定めた一定値以下に収まっているデータを抽出する。抽出条件としては、例えば偏差が±1〜2℃以内であることを基準に判定するとよい。特に実測値が予測値よりも低い場合は、さらに偏差の許容範囲を狭くすると好適である。このような場合は、運転状態が出力低下や燃料発熱量の減少などにより部分負荷状態の側にあるためである。このようにして部分負荷側のデータを極力除くと、負荷率100%近傍でより高精度に運転データを抽出でき、最終的により高精度に劣化を診断できる。
この方法(排気温度法)は、図2で説明した実施例(出力負荷率法)のように、負荷率の複雑な特性を実機データからモデル化する必要がない長所がある。ガスタービンの100%負荷出力は、吸気温度や燃料流量、冷媒噴射量などの条件によって変わるため、運転状態に応じた負荷率も、単純に出力の計測値だけからでは計算できない。このため図2では出力負荷率法による計算方法を示したが、それでもモデル構築には一定の計算量と処理手順を要するものであった。これに対して、排気温度法では、排気温度と吸気温度の関係が、通常は制御ロジックや、制御に使われる簡単な関係式が定まっていることが多いため、工程9においては特別なモデルを独自に構築することなく、これらの既存の関係式を流用することが出来る。したがって、省力的にモデル構築でき、かつ、はじめから精度の高いモデル(実際に制御に使われているので、実機の運転データはその値通りに制御されて運用されているのが通常である)を使うことができるので、効率的に診断システムを構築して運用できる。
また、式(3−1)〜(3−3)で示した方法で使用する情報は、吸気温度と排気温度、あるいはさらに冷媒噴射量と、2〜3個だけである。この方法では、種々の運転条件の様々な違いが負荷率にどのように影響するかを、これら数個の条件だけで代表させて負荷率が定常負荷近傍にあるかどうかを判定できる。したがって、運転条件の違いを加味したベースロード運転データの抽出を、図2の場合とは別に少ない情報量と計算量で効果的に実施できる。
排気温度法において、このように少ない変数量で、効果的にベースロード運転データを抽出できるのは、排気温度が次のような特性を持つためである。すなわち、排気温度は、熱力学的には、主として吸気流量と燃料流量と冷媒噴射流量という3つの要因によって決まっている。そして、これらの3要因は共通して、ガスタービンの排気温度制御の結果から決まっている。そして、排気温度制御はガスタービンの負荷率が最大近辺になるように制御されている。したがって、排気温度制御の主な入出力である吸気温度と排気温度の関係は、負荷率に影響する上記の3要因の影響を集約した入出力関係になっているといえる。排気温度法はこの特性に着目することによって、負荷率を判定するための入力変数を上記の2〜3項目に減らすことができている。
なお、以上の説明において、工程1のベースロード運転データ抽出方法には、上述の方法の他に、制御モードの情報を利用する方法がある。ガスタービンの運転制御のモードは、大きく分けると、100%負荷域での排気温度制御か、目標出力に合わせた出力制御になる。排気温度制御は、吸気温度に応じて排気温度の目標値を予め一定の関数関係で設定し、運転中の排気温度が目標値になるように運転操作を制御する。これはガスタービンの高温部の温度が材料の耐熱温度を超えないようにするためのものである。出力制御は主に部分負荷時に出力が目標値になるように運転操作する。
この運転モードが、どのモードかを示す制御用の信号(以下、運転モード信号と呼ぶ)を、制御装置または制御システムの一部から取得しておくと、時系列データのなかからベースロード運転データを効率的に抽出することができる。このためには、例えば、運転モード信号が100%負荷域の排気温度制御を示しているデータをベースロードデータとして抽出するとよい。
このような方法は、ベースロード運転状態を設備の制御状態にあわせて正確に把握でき、明らかな部分負荷データを予め効率的に除外できる効果がある。しかし、その反面で、このような運転モード信号は、実機運転データの採取項目に含まれていないことが多い。この場合、制御装置または制御システムからこの信号を取得して伝送するための設備の追加や改造が必要となる。これに対して、上で述べた図2や図3のベースロード抽出方法では、このような改造をすることなく、既存の計測データだけを使って効率的にベースロード運転データを抽出できる。
また、工程1のベースロード運転データ抽出のさらに別の方法として、圧縮機入口案内翼開度によって負荷率を判定して抽出する方法であってもよい。この方法としては、入口案内翼開度について、通常運用で設定されている最大開度に対する比率が100%未満、例えば97〜99%以下になっているデータを除外して、残りのデータをベースロード運転データとして抽出するとよい。入口案内翼開度を可変制御するガスタービンは、吸気流量を変えることによって燃焼条件や燃焼温度を制御するために入口案内翼開度が操作されている。入口案内翼開度は、ガスタービンが最大負荷率近辺でベースロード運転されている状態では、吸気温度などの気象条件によらず一定である。このため、このような機種のガスタービンにおいては、入口案内翼開度が負荷率のよい目安になることがある。ただし、負荷率がある程度よりも下がらないと入口案内翼角度を操作しないことも多いため、開度情報だけでは負荷率判定のための精度は十分でないことがある。したがって、入口案内翼開度によるベースロード運転データ抽出方法は、負荷率の判定精度が大まかになる場合もあるが、上述の例で説明したような複雑な処理をすることなく、単純な処理によってベースロード運転データの範囲を抽出できる長所がある。
図4及び図5を援用して、図1における工程2のモデル定数決定の詳細手順の例を以下で説明する。工程2では、前述したように、工程1で抽出されたベースロード運転データに基づいて、ガスタービンの性能特性モデルのモデル定数を決定する。この際に、対象ガスタービンが、エネルギーサービス事業用に用いられているものや、経年機などの場合、設備の保有事業者や運転保守の実施事業者には、対象機の性能モデルやモデル定数が未知であることが一般的である。特にモデル定数は、対象設備の製造事業者の設計情報であり、一般にはほとんど開示されていない。仮に開示された場合でも、経年機では度重なる保守や部品交換などによって、性能特性が設計時と異なっていることも多い。
このような場合は、性能特性モデルを実機の運転データから構築する必要がある。このためには、代表的な運転条件である吸気温度、すなわち大気温度の範囲が運転範囲の全体を含むようにデータを採取する必要がある。例えば、年間の最高・最低気温の範囲を含めるために、望ましくは1年周期、少なくとも最高気温と最低気温の間の期間として約半年程度の期間が必要になる。しかし、このような期間中にもガスタービンの性能は劣化する。このことによる問題点は、設備が劣化する前の正常状態のモデルを構築するために収集したデータのなかに劣化の影響が含まれてしまうことである。したがって、このように経時劣化の影響が含まれた実機運転データからでも、劣化前の性能特性モデルを同定できる方法が必要となる。
これに対応するため、本発明では、劣化の影響を加味して実機データの性能特性をモデル化した後に、このモデルから劣化を反映する計算部分を除外することによって、劣化進行前の初期の性能特性モデルを得る方法を提供する。
これを模式的に説明すると図4を使って次のようになる。すなわち、本発明で使う性能特性モデルは、性能特性モデル11に、大気条件などの運転条件14と、設計条件によって決まる対象機固有のモデル定数12を入力して性能を計算し、その計算結果15(性能計算値)を出力する際に、さらに、劣化の進行を性能計算に反映させるためのモデル定数(以下、特に劣化係数13と呼ぶ)を加味するものとなっている。この特性モデルの使い方として、モデル定数12を同定する際には、前述の工程1(ベースロード運転データ抽出工程)で抽出した実機のベースロード運転の時系列データを使って、モデル定数12と劣化係数13を決定する。そして、性能劣化が起こる前の当初の性能特性モデルとしては、このうち劣化係数13及びこれを使った性能計算部分を除外したものを特性モデルとする。すなわち、図4において劣化係数13とこれに関連する計算部分を省いたものを、性能劣化前の特性モデルとする。
このような性能特性モデルのモデル化方法の例を以下に示す。式(4−1)、(4−2)、(4−3)は、本発明が提供するモデル化方法の1例であり、これらをまとめて式(4)と呼ぶ。式(4−1)は、性能Yを、運転条件が標準条件のときの性能Yに、標準条件からのずれによる性能の補正量ΔYを加えて計算する。この際に、式(4−2)は、性能の補正量ΔYを、少なくとも1つ以上の運転条件x(i=1,2,…)の関数f_opr(以下、運転条件補正関数と呼ぶ)として計算する。この運転条件補正関数f_oprの中に使用される係数や定数項の中に前述の図4のモデル定数12が含まれる。また、式(4−3)は、標準条件での性能Yを、劣化の進行に応じて変えるように関数f_dgr(以下、基準値経時低下関数と呼ぶ)によって計算する。基準値経時低下関数f_dgrは、変数として稼働時間tを含み、この他に、劣化が起こる前の当初の性能値Y00(標準条件での値であり、定数)と、稼働時間tの経過による性能低下の進行を模擬するための少なくとも1つ以上の定数係数α(j=1,2,…)(図4の劣化係数13)を定数として含んでいる。
ここで、性能Yは、代表的には、発電出力、発電効率、圧縮機圧力比、燃料流量、圧縮機効率、タービン効率、吸気流量である。Yはこれらに限定されるものではなく、設備の劣化或いは保守による影響により値が変化するような指標であれば対象となる。また、運転条件とは前述した大気温度・圧力などの環境条件や、燃料流量などの操作条件を示し、標準条件とは例えばISOで定められた標準大気条件や、この大気条件に対応する操作条件の値を示す。
Y = ΔY + Y …(4−1)
ΔY = f_opr(x) …(4−2)
= f_dgr(t) …(4−3)
これらの式(4)の特徴は、劣化による性能特性の変化の影響を、標準条件での性能を示す基準値経時低下項(式(4−1)の右辺第2項、式(4−3))に集約したことである。厳密には、劣化による性能特性の変化は、補正項ΔY(式(4−1)の右辺第1項)の運転条件補正関数f_opr(式(4−2))にも及ぶ。しかし、発明者らはガスタービンの性能特性を分析した結果、補正項ΔYへの影響は、標準条件換算性能Yの経時変化への影響に比べて、相対的に小さいことを見出した。そこで、性能の経時劣化を、このように標準条件での性能値Yの値を劣化に応じて変化させる基準値経時低下関数f_dgrのようにしてモデル化し、一方で、標準条件からのずれによって性能を補正する運転条件補正関数f_oprは劣化によらず一定とするモデル化方法を考案した。この方式は、ガスタービンの性能劣化の複雑な影響を、上のように標準条件での出力値の経時低下だけに着目してモデル化し、運転条件の違いによる性能補正への影響を省略している。この単純化によって、本方式では省力的かつ効率的に、ガスタービン性能の経時劣化と、運転条件による性能変化の複雑な特性を分離して評価できるようになっている。
この式(4)の性能特性モデル11のモデル式の具体的な一例を示すと式(5−1)の通りである。この式で、xi0は少なくとも1つ以上の運転条件x(i=1,2,…,n)の標準条件での値を示す。記号Σは項a×(x−xi0)をi=1,2,…nまで加算することを示す(Σの説明は以下同様とする)。係数a(i=1,2,…)は、i番目の運転条件xの標準条件xi0との偏差に応じた、性能Yの補正係数である。αは稼働時間に応じた性能Yの劣化係数である。定数項Y00は標準条件での性能値Yについての、性能が劣化する前の当初の値を示す。なお、本発明で、性能劣化前の当初の値とは、対象期間中における当初の値を指すものである。
Y = Σa×(x−xi0) + (α×t + Y00 ) …(5−1)
Y = Σa×(x−xi0) + Y00 …(5−2)
式(5−1)において、係数a(i=1,2,…)と定数項Y00は図4のモデル定数12に相当し、αは劣化係数13に相当する。これらa、α、Y00の値の決定方法としては、工程1で抽出したベースロードの実機時系列運転データを使って、公知の重回帰分析の最小二乗法や最尤推定法などの方法で計算するとよい。
式(5−1)において、このようにしてモデル定数を決定したら、式(5−2)に示すように経時劣化の項を取り去ることで、劣化進行前の性能特性を示すモデル式ができる。この方式では、式(5−1)に示す極めて単純な形で、性能の経時劣化と、運転条件変動の項を分離していることにより、ガスタービンの運転条件変動と劣化による性能の変化を、簡単かつ容易に模擬することができる。
表1に、式(5−1)で性能特性をモデル化する際の性能評価指標Yと運転条件の変数xの好適な対応例を示す。表1中で、◎印は対象となる性能指標をモデル化するための運転条件として特に使うことが望ましいもの、○印はモデルの精度が不十分な場合にさらに追加して使うことができるものである。
Figure 0004468282
表1に示すように、性能指標Yのうち、発電出力、発電効率、圧縮機圧力比、燃料流量、圧縮機効率、タービン効率、吸気流量は次式のように表すことで十分高精度にモデル化できる。なお、圧縮機圧力比は、変数xに吸気圧力を使わずに吸気温度のみの関数としてもよく、あるいは吸気温度と湿度の関数にするとさらに特性モデルを高精度化できる。
Y = a×(Tci−Tci) + a×(Pci−Pci) + α×t + Y00 …(5−3)
なお、表1の○印の変数の使い方としては、上述のようにモデル化の式に組み込むのではなく、前述のベースロード運転データ抽出工程1のデータ抽出条件として組み合わせてもよい。すなわち、前述したベースロード運転データ抽出工程1において抽出データを判定する工程8や工程10の判定条件は、これら○印の変数の値の上下限許容範囲の条件がさらに付け加えられたものであってもよい。このようにすると、性能指標の特性モデルに影響は及ぼすものの、中心的に影響するわけではない、これらの変数の変動の影響を、特性モデルを構築前のデータ抽出の段階(工程1)で予め除外することができる。したがって、工程2で性能特性をモデル化する際に、主要な影響を及ぼす運転条件に絞って、高精度にモデル化できる。
なお、性能特性モデル式が式(5−1)〜(5−3)のように線形でない場合は、図5に示すような手順でモデル定数を決定するとよい。すなわち、モデル定数12と劣化係数13の初期値をはじめに設定(工程20)し、続いて、これらの定数を設定した性能特性モデル11に、運転条件14を入力して性能を計算して結果(性能計算値15)を出力(工程21)し、この性能計算値15が実測値に対して予め定めた一定の誤差範囲内にあるかを判定(工程22)するとよい。性能計算値15が実測値に対して予め定めた一定範囲内にない場合は、モデル定数12と劣化係数13を修正(工程23)して、上記工程21〜22を再度実行し、これを工程22の判定結果が一定範囲以下になるまで繰り返すとよい。この工程22の終了条件が満たされたときのモデル定数12と劣化係数13の値がそれぞれの最終的に決定される値である。これらは、公知の非線形最小二乗法などの方法で実施できる。
図6を用いて、図1における工程3の基準化の詳細手順の例を以下に説明する。工程3では、前述したように、工程2で決定したモデル定数12を使って、ガスタービンの実機性能の時系列データを標準条件での性能相当値に換算する。これを行うモデル(以下、基準化モデル17と呼ぶ)は、図6に示すように、モデル定数12と運転データ16を入力して、運転条件によって変化している実機の性能値を、一定の標準条件下に直したときの相当値(以下、基準化データ18と呼ぶ)に換算し、これを出力するものである。ここでモデル定数12は前述の工程2で決定した値を使うことができる。また運転データ16とは実機の運転条件14と、このときの実機の性能Yの実測値を合わせたデータを総称している。
基準化モデルのモデル式は式(6−1)のようになり、基準化データYを、性能値Yと先に式(4−2)で述べた運転条件補正関数f_opr(X)に基づいて計算する。より具体的には、例えば前述の式(5−1)に対応する形では式(6−2)のように、式(5−3)に対応する形では式(6−3)のようにするとよい。これらの場合、モデル定数aは、先に式(5−1)で求めたものを使うことができる。この方式による場合、基準化モデルを新たに始めから作ることなく、前の工程2で決定したモデル定数12を使って効率的に基準化計算を実行できる。
= Y − f_opr(X) …(6−1)
= Y − Σa×(x−xi0) …(6−2)
= Y − a×(Tci−Tci) − a×(Pci−Pci) …(6−3)
なお、以上で述べた工程2でのモデル定数決定に使う実機時系列データの期間と、工程3で実機データを基準化する実機時系列データの期間は異なっていてもよい。例えば、工程2では実機時系列データのうちの或る一定の期間で性能特性モデルのモデル定数を決定し、工程3ではこのモデル定数を性能劣化や保守による性能回復の傾向を評価したい期間全体に適用することができる。このようにすると、劣化評価の対象期間の全データを使うことなく、少ないデータで効率的にモデル定数を決定できる。これは、特に保守によって性能が復帰しているときを含むような期間を評価するときに有用な方法である。例えば、性能が経時的に低下している設備で保守を実施して、その直後から性能が一度に大幅に回復したような場合、このような性能の不連続期間を含む実機運転データに基づいて性能特性モデルのモデル定数を決定するとモデルの精度が悪くなる。このような場合、例えば、保守実施の前(あるいは後)の期間で性能特性モデルのモデル定数を決定(工程2)し、性能を基準化(工程3)する際には、このモデル定数を保守実施の前後に値を変えず、同じ値を使って性能の基準化データを計算するとよい。
図7に、本発明によるガスタービン診断システムの実施形態の例を示す。
本システムでは、まず、ガスタービン101についての一定時間周期で採取された運転データが、送信手段111から送信され、通信回線112を経て、受信手段113にて受信される。そして、受信された情報が計算手段102で処理され、出力手段103に出力される。ここで通信回線112と送信手段111,受信手段113は、公知の情報伝送手段とその送受信手段であればよく、例えばインターネットや、有線・無線の専用情報回線とその送受信手段など任意の通信手段を用いることができる。
計算手段102の内部構成と処理システムは次のようになっている。入力手段130は、受信手段113から受けた情報を次に示すベースロード運転データ抽出手段131に入力する。ベースロード運転データ抽出手段131は、入力手段130から入力された実機運転データに基づいて、工程1の内容を実行してベースロード運転データを抽出して出力する。モデル定数決定手段132は、前のベースロード運転データ抽出手段131で出力されたベースロード運転データを入力情報として、前述の工程2の内容を実行し、これによって決められたモデル定数12の値を出力する。基準化手段133は、前のモデル定数決定手段132で出力されたモデル定数12の値を用いて、前述の工程3の内容を実行し、基準化データ18を出力する。ここで前記手段131〜133の機能は、ガスタービン101に付属するデータ採取手段から、最終的な出力手段103に至る、情報経路上の任意の場所に分散していてよい。例えば、ベースロード運転データ抽出手段131を、送信手段111で情報を送信する前の段階に備えることが可能である。このようにすると、通信回線112を経て伝送される情報は抽出後のベースロードデータのみになるため情報通信量を軽減でき、また、計算手段側でのベースロード運転データ抽出手段131の実行が不要になるので、計算負荷を下げることができる。
以上のようにして計算手段102で処理された結果は、情報回線114を介して出力手段103に伝達されて出力される。出力手段103は具体的には、計算機のディスプレイなどの表示装置や、ハードディスクやメモリなどの電子データ格納手段、印刷機などの情報印字・描画手段など、公知の任意の手段を用いることができる。出力手段103におけるデータの出力形式は、基準化データの時系列の推移を示すトレンドグラフや、時系列レコードデータとして出力される。
本システムにおけるガスタービン101、計算手段102、出力手段103の設置場所の位置関係は、一例として、計算手段102と出力手段103がガスタービン101の設置サイトとは別の場所にあるものとする。このようにすると多数の設備の劣化状況を遠隔監視センターなどで集中的に監視して把握できる。また、計算手段102を診断事業者の管理化において運用し、また、計算手段の新型機器への更新や計算方法を改良したりすることができるため、長期的にみて柔軟かつ効率的に運用できる。
しかし、設置場所の位置関係はここに述べたものに限らず、任意でよい。例えば、出力手段103をガスタービン101の設置サイトに設置してもよい。これは、ガスタービン101を設置しているサイトの事業者(ここではサイト事業者と呼ぶ)が、ガスタービン101についての性能診断サービスを別の事業者(診断事業者と呼ぶ)から受ける場合に好適な形態である。サイト事業者は、計算手段102などの余分な設備を設置して維持管理することなく、最終的に必要な、劣化の診断結果の情報のみを入手することが出来る。
あるいは、例えば、出力手段103を、ガスタービン101の設置サイトとも、計算手段102の設置場所とも異なる、さらに別の場所として、ガスタービン101の設置事業者(サイト事業者)の本社などに配置してもよい。これは、ガスタービン101の劣化状況の診断結果情報に基づく、保守計画の立案・検討を行う部署がサイト事業者の本社など、サイトと別の場所にある場合に好適である。
図8〜10を用いて、本発明の方法によってガスタービンの性能の経時変化を評価した事例を以下に示す。
図8は、或るガスタービンの約17,000時間の稼動中における発電出力の推移の生データである。その経時推移は、吸気温度の年間変動によって年間周期で大きく波打っているだけでなく、さらに運転時の負荷率の変動や吸気温度の日変動によっても変動しているため、常に大きい上下変動幅を持っており、このままでは劣化の程度を判定できない。
図9は、これに対して、本発明の方法のうち、ベースロード運転データ抽出工程1を省略して、モデル定数を同定(工程2)し、標準の吸気温度・圧力での値に基準化(工程3)して出力した結果を示したものである。ここではISOで定める吸気温度15℃、相対湿度60%の条件での相当値に換算した。この結果を見ると、図8に見られた大きな上下変動が多少は解消されているものの依然として年間周期の変動が大きく残っており、性能の劣化を判定することは困難である。
図10は、これらに対して、本発明の方法で、ベースロード運転データの抽出を実施(工程1)してから、モデル定数を同定(工程2)し、標準の吸気温度・圧力での値に基準化(工程3)して出力した結果を示している。図中の三角マークはエンジン交換や、翼交換、その他の部品交換などの実施時期を示している。基準化データの経時推移をみると、保守を実施した直後には性能が回復し、その後、経時的に低下している様子が明らかになっている。特に、エンジン交換を示す(2)、(5)では性能が大幅に回復し、タービン翼の交換を示す(1)においても交換直後の暫くの間は性能が顕著に回復し、これらのいずれにおいてもその後は性能が経時低下している。また、その他の部品に異常があり交換した(3)、(4)においても、交換直前には性能が1%ほど急激に低下しており、部品交換によって、この低下が回復していることがわかる。また、基準化データの時々刻々の上下変動幅もほぼ相対比±1%以内に収まっており、その上下変動も均等であるため、上の保守時の性能回復で例示したのと同じように経時的な性能低下をほぼ1%単位で識別可能といえる。このように、図9においては図8と異なり、劣化の進行や保守の実施による性能の上下変動を高精度に評価可能である。これは、本発明の方法におけるベースロード運転データ抽出工程1による効果である。
図11に、本発明のガスタービン性能診断システムに備えておくと好適な表示画面の例を示す。表示画面140は、出力手段103(図7)を示す表示装置の一画面例である。この表示画面140は、下記に述べる元グラフ141とオブジェジクト142及び抽出グラフ143を備える。元グラフ141は前記性能指標についての、診断対象期間中の複数時点の運転データ(前記元データ)の時系列変化を表示するグラフ141である。オブジェクト142は表示画面上に配されたボタン又は表示メニューなどのオブジェクトであって、クリックや画面上で選択されると、前記ベースロード運転データ抽出手段で前記元データからベースロード運転データの抽出が開始される。抽出グラフ143は前記ベースロード運転データ抽出手段で抽出されたベースロード運転データ(以下、抽出データと呼ぶ)の時系列変化を表示するグラフである。前記元グラフと前記抽出グラフの代わりに、前記元データと抽出データを区別できるようにプロットの記号や色を変えて1つのグラフに重ねて表示したグラフ(以下、抽出重ねグラフと呼ぶ)を備えても良い。また、さらに基準化手段から出力された基準化データの時系列変化を表示するグラフ144(以下、基準化グラフと呼ぶ)を備えても良い。
なお、抽出実行ボタン142は図では1個としたが、これに限る必要はなく、前述の出力負荷率法や、排気温度法、前述のその他の方法など、種々のベースロード運転データ抽出方法に対応する複数個のボタンを配置して、抽出方法の選択や、抽出条件(上下限範囲の設定など)を指定できるようにしてもよい。この際に、該複数個のボタンは、複数同時選択を許容するものとし、選択された複数通りの抽出方法による各抽出結果のAND条件(積集合)を抽出結果とするとなおよい。
ベースロード運転データの抽出は、性能診断の精度に大きく影響し、極めて重要であり、このことは先に図9と図10の事例を比較して説明した通りである。本表示画面140は、上述のように抽出実行ボタン142と、元グラフ141、抽出グラフ143、あるいは抽出重ねグラフを備えているので、診断にとって重要なベースロード運転データの抽出がどのようになされたか、ユーザが確認したいときに、迅速に表示できる。
さらに基準化グラフ144も備えられている場合は、ユーザが、ベースロード抽出の状況を、基準化グラフに示される性能推移の状況と対比させて見ることができる。これによって、ユーザが、性能劣化の状況と、これに影響するベースロード抽出の状況を総合的に判断して、直観的かつ高精度に診断業務を遂行するのを支援できる。
また、前述のように抽出実行ボタン142が抽出方法に応じて複数個備えられている場合、本システムのユーザは、例えば、ベースロード運転データの抽出状況を画面で観察していて抽出が十分適切にできていないと判断した場合などに、抽出の方法や組み合わせを変更できる。この変更に応じた抽出結果と劣化診断結果は、ただちに抽出グラフ143と基準化グラフ144に反映されるので、ユーザは、種々の抽出方法やその組み合わせを画面上で手軽に試して、表示される結果(抽出グラフ、基準化グラフ)を比較検討することができる。本システムはこのように、抽出方法に応じたベースロード運転データ抽出状況をユーザ入力に応じて対話的に表示できるので、最も精度の高い抽出方法をユーザが選定するのを効率的に支援できる。
以上に述べたガスタービンの性能劣化の診断方法においては、さらに次のようにすることで診断の精度を向上することができる。すなわち、工程1のベースロード運転データ抽出の際に、さらに運転条件が一定の範囲内にあるデータに絞り込んで(AND条件で)抽出するとよい。このような運転条件としては、例えば、蒸気噴射などの冷媒噴射量またはその温度・圧力・熱量、あるいは再熱サイクルの温度・流量・圧力条件などの、プロセスの入力に関連する条件が該当する。
また、同様に工程1のベースロード運転データ抽出における出力負荷率法の計算や、工程2,3での性能特性モデルの決定をする際に、複数の吸気温度条件範囲に分けて、モデル化をすることも有効な方法である。ガスタービンは吸気温度が低下すると出力が向上するが、実際には発電機の容量に併せて、吸気温度が低い領域での出力を抑える運転をすることも多く、このような場合に、この低吸気温度域では性能特性が変わることがある。本方法ではこのような特性変化に柔軟に対応することができる。
本発明の性能劣化診断方法の一例を示すフロー図。 本発明の性能劣化診断方法における、ベースロード運転データ抽出方法の一例を示すフロー図。 本発明の性能劣化診断方法における、ベースロード運転データ抽出方法の別の例を示すフロー図。 本発明の性能劣化診断方法における、性能特性モデルの一例の入出力を示す図。 本発明の性能劣化診断方法における、性能特性モデルのモデル定数同定手順の一例を示すフロー図。 本発明の性能劣化診断方法における、基準化モデルの一例の入出力を示す図。 本発明の性能劣化診断装置を用いた診断システムの一例を示す構成図。 ガスタービン性能(出力)の経時変化の生データを示すトレンド図。 図8のデータを、ベースロード運転データを抽出せずに、基準化した結果を示すトレンド図。 図8のデータを本発明の方法によって、ベースロードデータを抽出してから基準化した結果を示すトレンド図。 本発明を用いた診断システムの表示画面例を示す図。
符号の説明
1…ベースロード運転データ抽出工程、2…モデル定数決定工程、3…基準化工程、4…診断工程、5…出力特性モデル同定工程、6…負荷率計算工程、7…負荷率計算工程、8…抽出工程、9…排気温度計算工程、10…抽出工程、11…性能特性モデル、12…モデル定数、13…劣化係数、14…運転条件、15…性能計算値、16…運転データ、17…基準化モデル、18…基準化データ、101…ガスタービン、102…計算手段、103…出力手段、131…ベースロード運転データ抽出手段、132…モデル定数決定手段、133…基準化手段、140…表示画面。

Claims (22)

  1. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データに基づいて、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数として特性モデル化し、
    特性モデルの関数関係に基づいて、前記性能指標を予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化モデルを、少なくとも前記性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、前記基準化データを出力する関数としてモデル化し、
    前記基準化モデルを使って、前記診断対象期間中の或る範囲の運転データに含まれる前記性能指標の値を基準化データに換算して出力し、出力された該基準化データの時系列的な減少または増加によって性能の劣化または回復を判定するガスタービンの性能診断方法であって、
    前記診断対象期間中の或る範囲の運転データとして、前記診断対象期間中の複数時点の運転データから、少なくとも発電出力と吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数によって負荷率を計算し、予め定めた方法で分割された複数の負荷率範囲のうち、計算された負荷率の出現割合が最も多い負荷率範囲にある運転データであるベースロードデータを抽出し、これを前記或る範囲の運転データとすることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  2. 請求項1において、前記性能指標が発電出力、発電効率、圧縮機圧力比、燃料流量、圧縮機効率、タービン効率、吸気流量のうちから選ばれた少なくとも1つよりなることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  3. 請求項1において、前記ベースロードデータを抽出する方法が、発電出力と吸気温度、吸気圧力の関係を、前記診断対象期間中の複数時点での運転データに基づいて、吸気温度Tci、吸気圧力Pciを入力に含み、発電出力Weを出力する関数
    We = f_We(Tci, Pci)
    として同定し、
    同定した関数f_Weを使って、前記診断対象期間の運転データの吸気温度Tciと吸気圧力Pciに応じた発電出力の値Wecalcを計算し、この計算値Wecalcに対する実測値Weactの比
    A = Weact/Wecalc
    を負荷率として計算し、あるいは、さらに前記Aについての診断対象期間中の各時点での値を、該時点を含む或る期間の移動平均値Amavで除した値
    B = A/Amav
    を負荷率として計算し、
    負荷率についての前記Aの値、あるいは、さらに前記Bを計算している場合は該Bの値が、所定の範囲内にあるデータを抽出する方法であることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  4. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データに基づいて、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数として特性モデル化し、
    特性モデルの関数関係に基づいて、前記性能指標を予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化モデルを、少なくとも前記性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、前記基準化データを出力する関数としてモデル化し、
    前記基準化モデルを使って、前記診断対象期間中の或る範囲の運転データに含まれる前記性能指標の値を基準化データに換算して出力し、出力された該基準化データの時系列的な減少または増加によって性能の劣化または回復を判定するガスタービンの性能診断方法であって、
    前記診断対象期間中の或る範囲の運転データとは、該ガスタービンの運用上の最大負荷率における吸気温度Tciと、排気温度またはタービンの中間段のガス温度または制御用の燃焼温度管理指標の上限値Ttoとの関係を示す特性モデル
    Tto = f_Tex (Tci)
    の関数関係を用いて、診断対象期間中の複数時点の運転データである元データについて、吸気温度Tciのデータを入力して排気温度の値Ttocalcを計算し、排気温度の計算値Ttocalcとその実測値Ttoactの偏差
    ΔTto = Ttoact − Ttocalc
    が所定の範囲内にあるデータを抽出したものであることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  5. 請求項1において、前記特性モデル化の方法が、性能指標Yを、少なくとも1つ以上の運転条件x(i=1,2,…,n)の予め定めた標準運転条件値xi0からのずれによる影響を補正する運転条件補正関数f_opr(x)と、標準条件値における性能値の累積稼働時間あるいは等価運転時間tに応じた経時的低下を表す基準値経時低下関数f_dgr(t)の和として、次の特性モデル式で表し、
    Y = f_opr(x) + f_dgr(t)
    該特性モデル式における運転条件補正関数f_opr(x)と、基準値経時低下関数f_dgr(t)を、前記或る範囲の運転データに基づいて同定する方法であることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  6. 請求項5において、前記特性モデルの関数関係に基づいて、前記性能指標を予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化モデルを、少なくとも前記性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、前記基準化データを出力する関数としてモデル化する方法とは、
    前記性能指標の値Yを、同定された前記運転条件補正関数f_opr(x)を使った次式
    = Y − f_opr(x
    の計算によって標準条件での値に換算して出力する方法であることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  7. 請求項1において、前記特性モデル化の方法が、性能指標Yと吸気温度Tci、吸気圧力Pciの関係を次の特性モデル式で表し、
    Y = a×(Tci−Tci) + a×(Pci−Pci) + α×t + Y00
    (ここで、Tciは予め定めた所定の標準吸気条件における吸気温度、Pciは予め定めた所定の標準吸気条件における吸気圧力、tは診断対象期間中の累積稼働時間あるいは等価運転時間、a,aは性能特性を表すモデル定数、αは劣化を表す定数係数、Y00は標準吸気温度・圧力における対象診断期間初期の性能値である)
    該特性モデル式における定数a,a,α、Y00の値を、前記或る範囲の運転データに基づいて決定する方法であることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  8. 請求項7において、前記特性モデルの関数関係に基づいて、前記性能指標を予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化モデルを、少なくとも前記性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、前記基準化データを出力する関数としてモデル化する方法とは、
    前記性能指標の値Yを、前記決定したモデル定数a,aを使った次式
    = Y − a×(Tci−Tci) − a×(Pci−Pci
    の計算によって標準の吸気温度Tci、吸気圧力Pciにおける値Yに変換して、出力する方法であることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  9. 請求項4において、前記特性モデル化の方法が、性能指標Yを、少なくとも1つ以上の運転条件x(i=1,2,…,n)の予め定めた標準運転条件値xi0からのずれによる影響を補正する運転条件補正関数f_opr(x)と、標準条件値における性能値の累積稼働時間あるいは等価運転時間tに応じた経時的低下を表す基準値経時低下関数f_dgr(t)の和として、次の特性モデル式で表し、
    Y = f_opr(x) + f_dgr(t)
    該特性モデル式における運転条件補正関数f_opr(x)と、基準値経時低下関数f_dgr(t)を、前記或る範囲の運転データに基づいて同定する方法であり、
    前記特性モデルの関数関係に基づいて、前記性能指標を予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化モデルを、少なくとも前記性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、前記基準化データを出力する関数としてモデル化する方法が、前記性能指標の値Yを、同定された前記運転条件補正関数f_opr(x)を使った次式
    = Y − f_opr(x
    の計算によって標準条件での値に換算して出力する方法であることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  10. 請求項4において、前記特性モデル化の方法が、性能指標Yと吸気温度Tci、吸気圧力Pciの関係を次の特性モデル式で表し、
    Y = a×(Tci−Tci) + a×(Pci−Pci) + α×t + Y00
    (ここで、Tciは予め定めた所定の標準吸気条件における吸気温度、Pciは予め定めた所定の標準吸気条件における吸気圧力、tは診断対象期間中の累積稼働時間あるいは等価運転時間、a,aは性能特性を表すモデル定数、αは劣化を表す定数係数、Y00は前記標準吸気温度・圧力における対象診断期間初期の性能値である)
    該特性モデル式における定数a,a,α、Y00の値を、前記或る範囲の運転データに基づいて決定する方法であり、
    前記特性モデルの関数関係に基づいて、前記性能指標を予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化モデルを、少なくとも前記性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、前記基準化データを出力する関数としてモデル化する方法が、前記性能指標の値Yを、決定したモデル定数a,aを使った次式
    = Y − a×(Tci−Tci) − a×(Pci−Pci
    の計算によって標準の吸気温度Tci、吸気圧力Pciにおける値Yに変換して、出力する方法であることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  11. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データを入力として、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数としてモデル化する特性モデル化手段と、
    前記性能指標を、少なくとも該性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化手段と、
    前記診断対象期間中の或る範囲の運転データに含まれる前記性能指標の値を前記基準化手段に入力して出力された、基準化データの時系列的な減少または増加によって性能の劣化または回復を判定する診断手段を備えた性能診断システムであって、
    前記特性モデル化手段と前記診断手段に入力される、前記或る範囲の運転データを生成するための手段として、前記診断対象期間中の複数時点の運転データから、少なくとも発電出力と吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数によって負荷率を計算し、予め定めた方法で分割された複数の負荷率範囲のうち、計算された負荷率の出現割合が最も多い負荷率範囲にある運転データであるベースロードデータを抽出するベースロード運転データ抽出手段を備えたことを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  12. 請求項11において、前記ベースロード運転データ抽出手段が、発電出力と吸気温度、吸気圧力の関係を、前記診断対象期間中の複数時点の運転データである元データに基づいて、吸気温度Tci、吸気圧力Pciを入力に含み、発電出力Weを出力する関数
    We = f_We(Tci, Pci)
    として同定する手段と、
    同定した関数f_Weを使って、前記診断対象期間の運転データの吸気温度Tciと吸気圧力Pciに応じた発電出力の値Wecalcを計算し、この計算値Wecalcに対する実測値Weactの比
    A = Weact/Wecalc
    を負荷率として計算する手段と、
    あるいは、さらに前記Aについての、診断対象期間中の各時点での値を、該時点を含む或る期間の移動平均値Amavで除した値
    B = A/Amav
    を負荷率として計算する手段と、
    負荷率についての前記Aの値、あるいは、さらに前記Bを計算している場合は該Bの値が、所定の範囲内にあるデータを抽出する手段とを含むことを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  13. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データを入力として、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数としてモデル化する特性モデル化手段と、
    前記性能指標を、少なくとも該性能指標と吸気温度と吸気圧力を含む変数を入力として、予め定めた吸気温度と吸気圧力における値である基準化データに換算する基準化手段と、
    前記診断対象期間中の或る範囲の運転データに含まれる前記性能指標の値を前記基準化手段に入力して出力された、基準化データの時系列的な減少または増加によって性能の劣化または回復を判定する診断手段を備えた性能診断システムであって、
    前記特性モデル化手段と前記診断手段に入力される、前記或る範囲の運転データを生成するための手段として、該ガスタービンの運用上の最大負荷率における吸気温度Tciと排気温度Ttoの関係を示す特性モデル
    Tto = f_Tex (Tci)
    の関数関係を用いて、診断対象期間中の複数時点の運転データである元データに対して、吸気温度Tciのデータを入力して排気温度の値Ttocalcを計算し、排気温度の計算値Ttocalcとその実測値Ttoactの偏差
    ΔTto = Ttoact − Ttocalc
    が所定の範囲内にあるデータを抽出する手段を備えたことを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  14. 請求項11において、前記特性モデル化手段とは、性能指標Yを、少なくとも1つ以上の運転条件x(i=1,2,…,n)の予め定めた標準運転条件値xi0からのずれによる影響を補正する運転条件補正関数f_opr(x)と、標準条件値における性能値の累積稼働時間tあるいは等価運転時間tに応じた経時的低下を表す基準値経時低下関数f_dgr(t)の和として表した次の特性モデル式における、該運転条件補正関数f_opr(x)と基準値経時低下関数f_dgr(t)を、前記或る範囲の運転データに基づいて同定する手段であり、
    Y = f_opr(x) + f_dgr(t)
    前記基準化手段とは、前記性能指標の値Yを、同定された前記運転条件補正関数f_opr(x)を使った次式
    = Y − f_opr(x
    の計算によって標準条件での値に換算する手段であることを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  15. 請求項11において、前記特性モデル化手段とは、性能指標Yと吸気温度Tci、吸気圧力Pciの関係を示す次の特性モデル式の定数a,a,α、Y00の値を、前記或る範囲の運転データに基づいて決定する手段であり、
    Y = a×(Tci−Tci) + a×(Pci−Pci) + α×t + Y00
    (ここで、Tci、Pciは、予め定めた所定の標準吸気条件における吸気温度、吸気圧力の値、tは診断対象期間中の累積稼働時間あるいは等価運転時間、a1,aは性能特性を表すモデル定数、αは劣化を表す定数係数、Y00は前期標準吸気温度・圧力における対象診断期間初期の性能値である)
    前記基準化手段とは、決定したモデル定数a,aを使った次式
    = Y − a×(Tci−Tci) − a×(Pci−Pci
    によって、前記性能指標の値Yを、標準の吸気温度Tci、吸気圧力Pciにおける値Yに換算する手段であることを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  16. 請求項13において、前記特性モデル化手段とは、性能指標Yを、少なくとも1つ以上の運転条件x(i=1,2,…,n)の予め定めた標準運転条件値xi0からのずれによる影響を補正する運転条件補正関数f_opr(x)と、標準条件値における性能値の累積稼働時間tあるいは等価運転時間tに応じた経時的低下を表す基準値経時低下関数f_dgr(t)の和として表した次の特性モデル式
    Y = f_opr(x) + f_dgr(t)
    における、該運転条件補正関数f_opr(x)と基準値経時低下関数f_dgr(t)を、前記或る範囲の運転データに基づいて同定する手段であり、
    前記基準化手段とは、前記性能指標の値Yを、同定された前記運転条件補正関数f_opr(x)を使った次式
    = Y − f_opr(x
    の計算によって標準条件での値に換算する手段であることを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  17. 請求項13において、前記特性モデル化手段とは、性能指標Yと吸気温度Tci、吸気圧力Pciの関係を示す次の特性モデル式の定数a,a,α、Y00の値を、前記或る範囲の運転データに基づいて決定する手段であり、
    Y = a×(Tci−Tci) + a×(Pci−Pci) + α×t + Y00
    (ここで、Tci、Pciは、予め定めた所定の標準吸気条件における吸気温度、吸気圧力の値、tは診断対象期間中の累積稼働時間あるいは等価運転時間、a1,aは性能特性を表すモデル定数、αは劣化を表す定数係数、Y00は前期標準吸気温度・圧力における対象診断期間初期の性能値である)
    前記基準化手段とは、決定したモデル定数a,aを使った次式
    = Y − a×(Tci−Tci) − a×(Pci−Pci
    によって、前記性能指標の値Yを、標準の吸気温度Tci、吸気圧力Pciにおける値Yに換算する手段であることを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  18. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データに基づいて、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数として特性モデル化し、
    特性モデルに前記或る範囲の運転データを入力して、運転条件に応じたガスタービンの性能を予測し、この性能の予測結果と実測値の偏差を計算して、偏差の時系列的な推移から劣化を判定するガスタービンの性能診断方法であって、
    前記診断対象期間中の或る範囲の運転データとして、前記診断対象期間中の複数時点の運転データから、少なくとも発電出力と吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数によって負荷率を計算し、予め定めた基準で分割された複数の負荷率範囲のうち、計算された負荷率の出現割合が最も多い負荷率範囲にある運転データであるベースロードデータを抽出し、これを前記或る範囲の運転データとすることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  19. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データを入力として、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数としてモデル化する特性モデル化手段と、
    特性モデルに前記或る範囲の運転データを入力して、運転条件に応じたガスタービンの性能を予測し、この性能の予測結果と実測値の偏差を計算して、偏差の時系列的な推移から劣化を判定する診断手段を備えたガスタービンの性能診断システムであって、
    前記特性モデル化手段と前記診断手段に入力される、前記或る範囲の運転データを生成するための手段として、前記診断対象期間中の複数時点の運転データから、少なくとも発電出力と吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数によって負荷率を計算し、予め定めた基準で分割された複数の負荷率範囲のうち、計算された負荷率の出現割合が最も多い負荷率範囲にある運転データであるベースロードデータを抽出するベースロード運転データ抽出手段を備えたことを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  20. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データに基づいて、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数として特性モデル化し、
    特性モデルに前記或る範囲の運転データを入力して、運転条件に応じたガスタービンの性能を予測し、この性能の予測結果と実測値の偏差を計算して、偏差の時系列的な推移から劣化を判定するガスタービンの性能診断方法であって、
    前記診断対象期間中の或る範囲の運転データとは、該ガスタービンの運用上の最大負荷率における吸気温度Tciと、排気温度またはタービンの中間段のガス温度または制御用の燃焼温度管理指標の上限値Ttoとの関係を示す特性モデル
    Tto = f_Tex (Tci)
    の関数関係を用いて、診断対象期間中の複数時点の運転データである元データについて、吸気温度Tciのデータを入力して排気温度の値Ttocalcを計算し、排気温度の計算値Ttocalcとその実測値Ttoactの偏差
    ΔTto = Ttoact − Ttocalc
    が所定の範囲内にあるデータを抽出したものであることを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  21. ガスタービンの診断対象期間中の或る範囲の運転データを入力として、ガスタービンの性能指標の少なくとも1つを、少なくとも吸気温度と吸気圧力を入力に含む関数としてモデル化する特性モデル化手段と、
    特性モデルに前記或る範囲の運転データを入力して、運転条件に応じたガスタービンの性能を予測し、この性能の予測結果と実測値の偏差を計算して、偏差の時系列的な推移から劣化を判定する診断手段を備えたガスタービンの性能診断システムであって、
    前記特性モデル化手段と前記診断手段に入力される、前記或る範囲の運転データを生成するための手段として、ガスタービンの運用上の最大負荷率における吸気温度Tciと、排気温度またはタービンの中間段のガス温度または制御用の燃焼温度管理指標の上限値Ttoとの関係を示す特性モデル
    Tto = f_Tex (Tci)
    の関数関係を用いて、診断対象期間中の複数時点の運転データである元データについて、吸気温度Tciのデータを入力して排気温度の値Ttocalcを計算し、排気温度の計算値Ttocalcとその実測値Ttoactの偏差
    ΔTto = Ttoact − Ttocalc
    が所定の範囲内にあるデータを抽出する手段を備えたことを特徴とするガスタービンの性能診断システム。
  22. 請求項11に記載のガスタービン性能診断システムに備えられた表示画面であって、
    前記性能指標についての、診断対象期間中の複数時点の運転データである元データの時系列変化を表示する元グラフと、
    クリックまたは画面上の選択によって、前記ベースロード運転データ抽出手段で前記元データからベースロード運転データの抽出が開始される、ボタン又は表示メニューなどのオブジェクトと、
    前記ベースロード運転データ抽出手段で抽出されたベースロード運転データである抽出データの時系列変化を表示する抽出グラフと、
    あるいは、前記元グラフと前記抽出グラフの代わりに、前記元データと前記抽出データを区別できるようにプロットの記号や色を変えて1つのグラフに重ねて表示した該グラフと、あるいは、さらに前記基準化手段から出力された基準化データの時系列変化を表示するグラフを備えたことを特徴とする表示画面。
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