JP4462902B2 - 新規な電気泳動分析方法およびそれを行うための電気泳動分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な電気泳動分析方法、それを行うための電気泳動分析装置および光透過性基材に関する。詳しくは、本発明は、タンパク質を分析するための電気泳動分析方法および装置に関する。
ヒトゲノム解読が完了してポストゲノム時代を迎えた現在、プロテオミクスやプロテオーム研究が盛んになってきた。それと共に、生体関連試料中の種々の成分を詳細に分析するための手段も盛んに開発されている。二次元電気泳動分析法は、従来から広く使用されている一般的なタンパク質分離分析手段であり、あらゆるタンパク質を網羅的に検出する優れた方法であるが、従来の方法では、実施者が望むような充分な精度は得られず、手間の係る繰り返しなどが必要である場合も多い。従って、更なる分離や回収技術の向上が望まれている。
また、従来の二次元電気泳動分析法における検出は、対象となるタンパク質を放射性同位元素や色素によって標識し、それに応じた適切な観察手段によって観察および分析している。このような標識では、試料によっては感度や定量性が不十分となる原因になったり、放射性同位元素を用いる場合には、安全性や環境に対する配慮も問題となる。特に網羅性に欠けることが難点である。
一方、そのような標識を行わずに電気泳動の結果を観察する手段も幾つか提案されている。例えば、納谷らの方法は、表面プラズモン共鳴センサにより電気泳動後のゲルに存在するタンパク質の位置を観察するための手段である(特許文献1)。当該文献に記載される系の基本的な表面プラズモン共鳴センサとは、プリズムと、そのプリズムの一面に形成されて試料に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、前記光ビームをプリズムに通し、当該プリズムと金属膜との界面に対して種々の入射角が得られるように入射させる光学系と、上記の界面で全反射した光ビームの強度を種々の入射角毎に検出可能な光検出手段を具備する表面プラズモン共鳴センサである。
特開平10−78393号公報 河田聡、加野裕著、「表面プラズモン共鳴現象を用いた光センサ」、計測と制御、第36巻、第4号、1997年4月号
本発明の目的は、より高い分解能を有する電気泳動分析方法およびその方法を行うための電気泳動分析装置を提供することである。特に、生体のタンパク質の網羅的解析や、分類や分離に有効な電気泳動分析方法、およびその方法を実施するための電気泳動分析装置を提供する。
本発明の第1の態様に従うと、第1の方向への一次元目の泳動分離と、第1の方向の垂直方向に成分を有する方向である第2の方向への二次元目の泳動分離と、第1および第2の方向の垂直方向に成分を有する方向である第3の方向への三次元目の泳動分離を行うことを具備する電気泳動分析方法が提供される。
本発明の第2の態様に従うと、(1)被分析物について、第1の方向への第1の泳動用媒体による一次元目の泳動分離と、第1の方向の垂直方向に成分を有する方向である第2の方向への二次元目の泳動分離を行うことによって、第2の泳動用媒体の二次元領域に亘り前記被分析物を泳動分離すること、および
(2)前記(1)の泳動により得られた二次元領域に亘る被分析物成分を更なる泳動のために二次元領域に亘って第3の泳動用媒体に移動し、第3の泳動用媒体において前記被分析物成分が位置する二次元領域に対して垂直の方向を有する方向に、前記被分析物成分の三次元目の泳動を行うことを具備する電気泳動分析方法が提供される。
本発明の第3の態様に従うと、(1)被分析物について、第1の方向への第1の泳動用媒体による一次元目の泳動分離と、第1の方向の垂直方向に成分を有する方向である第2の方向への第2の泳動用媒体による二次元目の泳動分離を行うことによって、第2の泳動用媒体上に被分析物が二次元領域に亘り泳動分離されること、および
(2)前記(1)の泳動により得られた二次元領域に亘る被分析物成分を、更なる泳動のために二次元領域に亘って第3の泳動用媒体に移動し、第3の泳動用媒体において前記思料成分が位置する二次元領域の面内方向に、二次元領域に亘って前記被分析物成分の三次元目の泳動を行うことを具備する電気泳動分析方法が提供される。
発明の実施の形態
1.三次元電気泳動法
本発明の一側面に従うと、被分析物を分離するための電気泳動分析法であって、第1の方向への一次元目の泳動と、第2の方向への二次元目の泳動と、第3の方向への三次元目の泳動とを行うことを具備する電気泳動分析方法が提供される。
(1)垂直型三次元電気泳動法
本発明に従う三次元電気泳動法は、上述したように第1、第2および第3の方向への泳動が行われる。このような電気泳動は、例えば、図1に示すような3方向への泳動が可能な媒体1において行われてよい。当該媒体1は、第1、第2および第3の方向の何れの方向にも泳動を行うことが可能な塊状物体の形態である。当該泳動用媒体1は、一次元目の泳動を行うための第1の方向としてのX方向、二次元目の泳動を行うための第2の方向としてのY方向、三次元目の泳動を行うための第3の方向としてのZ方向を有する媒体である。即ち、当該泳動用媒体における電気泳動は、第1の方向への一次元目の泳動と、第1の方向の垂直方向に成分を有する方向である第2の方向への二次元目の泳動と、第1および第2の方向の垂直方向に成分を有する方向である第3の方向への三次元目の泳動を含む。ここにおいて「垂直方向に成分を有する方向」とは、少なくとも、それ以前に行われた泳動の結果得られた情報が失われないような方向であればよく、好ましくは、ほぼ垂直方向であっても、垂直方向であってもよい。
ここで使用される「塊状物体」の語は、板状および厚板状の物体であればよく、例えば、立方体を含む一般的な直方体であってもよい。また「塊状媒体」とは、形態を維持するのに充分な硬度を有する固体、または固体と液体が混在する状態の物質によって構成された所望の形態の塊状物体である媒体であっても、それ自身では形態を維持するには硬度が低いが容器などによって制限されることによって所望の形態が維持される硬度の低い固体、半固体、固体と液体との混合物および液体である媒体であってもよい。塊状媒体は、例えば、ゲル、ゾル、液体、セラミック(例えば、海綿状のセラミック)、プラスチック(例えば、海綿状のプラスチック)などであればよく、それらの内部の表面に化学的な修飾を行うことで準備しても良い。例えば、それ自身公知のストリップゲルやスラブゲルを組み合わせて構成してもよく、所望の形態が維持されてゾルまたは液体などであってもよい。また、これらのゲル、ゾルおよび液体を組み合わせて使用してもよい。複数形態および/または性質の媒体を組み合わせて使用する場合、それらを一体化した状態で使用しても、一体化せずに順次使用してもよい。
当該塊状媒体を使用して電気泳動を行う場合、所望する方向への泳動を行うために順次所望の方向で電圧を印加してもよく、或いは一度に所望する方向へ泳動が可能であるように電圧を印加してもよい。またこのとき、pH勾配の付けられた棒状のストリップゲルで一次元目の等電位泳動を行い、これを基にスラブゲルにおける二次元目の泳動を行って二次元領域に展開し、次に、この二次元目の泳動後のスラブゲルを基に塊状物体における三次元目の泳動を行ってもよい。この際、一次元目の泳動の際には、二次元目の泳動用媒体および三次元目の泳動用媒体と干渉しないように異なる場所で行い、また、一次元目の泳動用媒体から被分析物の成分を二次元目の泳動用媒体に転移して二次元目の泳動を行う際には、三次元目の泳動用媒体とは干渉しないように異なる場所で行い、二次元に展開された被分析物の成分を三次元目の泳動を行う際には、少なくとも一次元目用の泳動用媒体を取り除いて行うのが望ましい。
異なる泳動用媒体に被分析物の成分を転移する方法として、直接泳動用媒体を接続して転移させてもよく、或いは、展開された空間的な配置が記憶された状態で一旦別の媒質に移転した後に、次の泳動用媒体に転移してもよいことはいうまでもない。
特に、このような一次元目および二次元目の泳動については、従来技術として「プロテオミクス;タンパク質の系統的・網羅的解析」(ISBN4-521-61041-2 C3345)pp.2〜11に記載されている。二次元目の泳動を従来方法と同じ方法で実施することで、従来の二次元電気泳動による分離実験データを参照できるため望ましい。
本発明において使用される電気泳動は、泳動の対象となる被分析物に応じて、一般的に使用されるそれ自身公知の何れの方法を利用してもよい。また、使用される媒体も、対象となる被分析物の種類や、行われる電気泳動の種類によって実施者が選択してよい。また、電気泳動を行うための電極は、所望の方向への泳動が達成されるように配置されればよい。
また、第1、第2および第3の3方向への泳動は、方向毎に被分析物の異なる性質に依存して行われる。そのためには、一次元目の泳動を行うための媒体の泳動特性と、二次元目の泳動を行うための媒体の泳動特性と、三次元目の泳動を行うための媒体の泳動特性を変えることが必要である。
三次元電気泳動に続いて、当該媒体に泳動された夫々の成分を検出する。当該検出は、電気泳動に供される被分析物および/または泳動される成分に応じて行えばよい。例えば、媒体1をそのままの形態を維持しながら、共焦点レーザー走査顕微鏡、例えば、共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡などで三次元的な被分析物の分布を観察してもよい。或いは、媒体を切断し、切断して得られた層またはブロック毎にスポットの存在を検出してもよい。また、検出方法に応じて、それ自身公知の染色手段により成分に染色を施してもよい。また或いは、三次元目の泳動は媒体の終面またはその近傍にまで到達するように泳動させ、当該終面またはその近傍における表面プラズモン共鳴を観察してもよい。この観察によって、終面またはその近傍の同じ位置に複数の成分が存在しても、終点まで移動するのに必要とした時間の違いによって、複数の成分の分離および検出が達成される。各々の検出の詳細は後述において説明する。また、電気泳動に供する被分析物に由来する成分が、終面にまで到達するように泳動を行わなくとも、終面の近傍、即ち、終面側からの成分の存在が検出可能な位置まで泳動を行ってもよい。例えば、表面プラズモン共鳴を観察する場合には、エバネッセント場に到達するまで泳動を行えばよい。
このように三次元で電気泳動を行うことにより、従来よりも少ない手間で且つより高度に被分析物の分離および/または分析を行うことが可能である。また、一次元目および二次元目の電気泳動によって分離できない成分であっても、三次元目の泳動によって分離することが可能である。
(2)水平泳動型三次元電気泳動法
更に本発明に従う三次元電気泳動法は、図2に示すように行うことも可能である。即ち、図2の(a)に示すように、まず一次元目の泳動を行った後に、同図(b)に示すように、第2の泳動用媒体20により二次元目の泳動を行う。固定化pH勾配ゲルであるストリップを用いた一次元泳動を行った後に、二次元目としてSDS-PAGEなどスラブゲルによる二次元の面上にわたる泳動を行うのが望ましい。次に泳動後の泳動用媒体20に対して、被分析物の更なる性質に依存して三次元目の泳動が可能である三次元用の泳動用媒体21を重ね合わせ、電気泳動などによって二次元用の媒体20から三次元用の泳動用媒体21へスポットを移動する(c)。その後、当該二次元用の媒体20を取り除く(d)。続いて、当該三次元用の泳動用媒体21に電圧を印加して、三次元目の泳動を行う(e)。この三次元目の泳動では、当該泳動に際して複数の経過時点におけるスポットの移動状況を観察する。或いは、連続して泳動中のスポットの移動状況を観察すればよい。その結果、夫々のスポットがどのような過程を経て移動したかが分かるので、一次元および二次元で得られたスポットを更に詳しく分析することが可能である(e)。例えば、図2(e)に示すように、スポットA1はA2に移動し、スポットB1は、近くで移動するスポットD1を追い越してスポットB2にまで移動し、スポットC1はスポットC2に移動し、スポットD1はスポットD2まで移動し、スポットE1は、そこに含まれる複数の成分が異なる早さで移動してスポットE2、E3およびE4に移動したことが検出される。このように継時的にスポットの移動を観察することによって、複雑な泳動結果であっても容易に解析することが可能である。特に、3回以上の経過時点で異なる測定を行えば、より確度の高い測定を可能にする。例えば、泳動前のスポットと泳動後のスポットの関連付け、また媒体における複数のスポットの関連付けのために、様々な数学的な解析方法を利用してもよい。本明細書における「継時的」とは、三次元目の泳動を開始する前の時点を含んでもよく、泳動途中の何れの時点であってもよく、泳動開始時点でも泳動終了時点であってもよい。また、請求項17に記載する、複数の泳動経過時点における第三の泳動用媒体の二次元領域に泳動された被分析物成分の分布状態の検出について、複数の泳動経過時点のうちの1回を三次元目の泳動開始時点とする際には、泳動開始時点の前記被分析物成分の分布状態の検出を、第2の泳動用媒体の被分析物の分布状態を測定することによって行ってもよいこととする。また、継時的な観察は、電気泳動を一旦止めて行っても、泳動を行いながら行ってもよい。
当該泳動に際し、複数の経過時点における、または連続したスポットの移動状況の観察は、CCDカメラなどのそれ自身公知の撮像手段を用いてもよく、また、表面プラズモン共鳴検出手段または紫外線吸収検出手段などの手段を用いて継時的に三次元用の泳動用媒体におけるスポットをスキャンしてもよいが、測定手段によって、被検物質であるスポットを形成する成分の泳動特性を変質しない測定手段であることが重要である。各々の検出の詳細は後述において説明する。
(3)従来の二次元電気泳動を利用する方法
本発明の三次元電気泳動法は、従来の二次元電気泳動を行うことにより得た分離された成分を含む二次元電気泳動用媒体を利用してもよい。その場合、それ自身公知の二次元電気泳動を行った後に、更なる電気泳動を行えばよい。「更なる電気泳動」または「更なる泳動分離」とは、当該二次元電気泳動によっては分離されなかった成分を分離することが可能であればどのような泳動分離であってもよい。このような更なる電気泳動は、上述の第3の泳動分離に相当する。また、更なる電気泳動は、泳動する方向が限定されるものではなく、所望の方向であってよい。
2.タンパク質の三次元電気泳動法
本発明に従う三次元電気泳動法を、被分析物としてタンパク質を用いる例を用いて更に説明する。
(1)垂直型三次元電気泳動法
図3を参照されたい。図3には本発明に従う垂直型三次元電気泳動法に使用される泳動用媒体の1例を示した。当該泳動用媒体1は、一次元目の泳動を行うための第1の媒体2と、二次元目の泳動を行うための第2の媒体3と、三次元目の泳動を行うための第3の媒体4を具備する。このような泳動用媒体1を用いたタンパク質を分析するための三次元電気泳動法の1例を以下に説明する。
第1の媒体2は、夫々、タンパク質の第1の性質に依存した電気泳動の可能な媒体であり、そのための組成を有する。第2の媒体3は、タンパク質の第2の性質に依存した電気泳動の可能な媒体であり、そのための組成を有する。第3の媒体4はタンパク質の第3の性質に依存した電気泳動の可能な媒体であり、そのための組成を有する。
第1の媒体2は、所望の組成を有する泳動用媒体であればよく、例えば、所望の組成を有する一般的なストリップゲルを利用してもよく、所望の組成と寸法のそれ自身公知の泳動用ゲルの手段によって作成してもよい。第2の媒体3は、所望の組成を有する泳動用媒体であればよく、例えば、所望の組成を有する一般的なスラブゲルを利用してよく、それ自身公知の泳動用ゲルの手段によって作成してもよい。第3の媒体4は、所望の組成を有する泳動用媒体であればよく、例えば、所望の組成と寸法のそれ自身公知の泳動用ゲルの手段によって作成してもよく、或いは所望の組成を有する一般的なスラブゲルを重ねて密着させて使用してもよい。また、泳動用媒体は、所望の泳動が得られる媒体であればよく、ゲル、ゾルおよび液体などの何れであってもよい。
先ず、所望に応じた前処理を行うことにより、電気泳動に適したタンパク質を含む被分析物を調製する。この被分析物を第1の媒体2において泳動する。第1の媒体2は、それ自身公知の手段によってX方向に泳動が得られるように電圧を印加される。
続いて、一次元目の電気泳動によって得られたスポットを、第2の媒体3における第2の泳動(即ち、二次元目の泳動)に供する。例えば、第1の媒体2を第2の媒体3に接触させ、電圧を印加することにより第2の媒体3にスポットを移動してから、第2の泳動を行えばよい。第2の泳動は、第2の方向である図中Y方向に泳動が得られるような条件でそれ自身公知の手段によって電圧が印加される。
更に、上記の二次元目の泳動によって得られたスポットを第3の媒体4における第3の泳動(即ち、三次元目の泳動)に供する。例えば、二次元的な分布を持つ平面形状のゲルの膜である第2の媒体3を第3の媒体4の上面に接触させ、上方から下方へスポットが泳動するような条件で電圧を印加し、第2の媒体3のスポットを第3の媒体4に移した後で第3の方向(図中ではZ方向)への第3の泳動を行う。第3の泳動は、第3の方向である図中Z方向に泳動が得られるような条件でそれ自身公知の手段によって電圧が印加される。
図3では、第1の泳動を行う際にも媒体3、媒体4が接するように描かれているが、一次元目の泳動結果が、二次元領域に展開された後に三次元に展開されることを判りやすく示したものであって、従来の二次元電気泳動で行われている方法のように、一次元目の泳動と二次元目の泳動を夫々単独に別の泳動装置を使用して行っても良い。
また、第1、第2および第3の媒体として使用することの可能な例は、以下に示す3群の中から選択してよい。3種の媒体の選択および使用する順番は、目的に応じて決定すればよいが、各群から1種類ずつ選択することが好ましい。また、電気泳動に用いる緩衝液は、それ自身公知の一般的に使用される何れも使用してよい。なお、本発明の主旨に従えば、本発明において使用され得る媒体は下記に列記するものに限定するものではなく、それ自身公知の何れの媒体および将来開発されるであろう媒体であっても使用され得る。
[A群]
物質の電気的性質によって分離するための媒体、例えば、等電点電気泳動用媒体、濾紙、セルロースアセテート膜、無担体電気泳動用薄膜および緩衝液など;
[B群]
質量の差によって分離するための媒体、例えば、アガロースゲル、ポリアクリルアミドなど;
[C群]
媒体との親和性の違いによって分離するための媒体、例えば、レクチン添加ゲル、抗原固定化ゲルなど。
電気泳動法と使用する緩衝液については、「蛋白質・酵素の基礎実験法」(編集:堀尾武一、南江堂、1996年)、または「新生化学実験講座1、タンパク質I、分離・精製・性質」(東京化学同人、1990年)などの成書に詳しい。また、レクチン固定化ゲルについては、タンパクを共有結合でポリアクリルアミドゲルに固定することを述べた論文『Analytical Biochemistry 151, p268-281(1985): Reversible Covalent Immobilization of Ligands and Proteins on Polyacrylamide Gels』に記載の方法で調製することができる。タンパク質の親水性・疎水性の性質による分離のためのゲルについては、レクチン固定化ゲルの調製におけるレクチンタンパク質の代わりに、アルカン鎖などの疎水基とアミノ基を備えた分子を用いてレクチン固定化ゲルと同様の方法によって調製することができる。目的物が抗体のようなものについては抗原固定化ゲルを用いることができるが、これについては、免疫応答研究のための二次元親和性電気泳動(中村和行、生物物理化学、43、12、1999)などを参照すればよい。
これに限定するものではないが、例えば、第1の媒体がタンパク質の等電点に応じて電気泳動が可能なpH勾配依存性電気泳動に用いることが可能であるゲルであり、第2の媒体がタンパク質の分子量に応じて電気泳動が可能な分子量依存性電気泳動に用いることが可能なゲルであり、第3の媒体が分析しようとする一群の被分析物物質と親和性を持つことにより分離が可能となるゲル(レクチン固定化ゲル)であってもよい。また、これらの媒体と次元との組み合わせは所望に応じて変更してよい。例えば、pH勾配依存性電気泳動を二次元目または三次元目に行ってもよく、同様に、分子量依存性電気泳動を一次元または三次元目で行っても、或いは親和性電気泳動を一次元または二次元目以外で行ってもよい。
上述では、第1の媒体2としてストリップゲルを利用する例を記載したが、そのようなストリップゲルは一般的な市販のゲルであってもよく、所望の組成を有するスラブゲルで1以上の被分析物を泳動した後に所望のレーンを切り出してもよく、所望の組成と寸法のそれ自身公知の泳動用ゲルの手段によって作成してもよい。また、第2の媒体3も、所望の組成を有する市販のスラブゲルを利用してもよく、それ自身公知の泳動用ゲルの手段によって作成してもよい。第3の媒体4は、所望の組成と寸法のそれ自身公知の泳動用ゲルの手段によって作成してもよく、或いは所望の組成を有する一般的なスラブゲルを重ねて密着させて使用してもよい。但し、一次元目、二次元目および三次元目の電気泳動を夫々に行うための第1の媒体2、第2の媒体3および第3の媒体4は、互いに異なる泳動特性を有することが必須である。ここで用いられる「異なる泳動特性」とは、泳動速度および分離能などの何れの分離に関する性質が異なればよい。従って、第1の媒体2、第2の媒体3および第3の媒体4の何れか1つの媒体によっても分離されなかった成分であっても、他の媒体によって更に分離される。
第1の媒体から第2の媒体へのバンドまたはスポットの移動は、それ自身公知の何れの手段によって行ってもよいが、電気泳動により移動することが容易である。例えば、電気泳動により移動する場合は、第1の媒体から第2の媒体へのバンドまたはスポットの移動は、図2に示すように、第1の媒体をY方向に垂直に接触させて電圧を印加しても、第1の媒体と第2の媒体を上下に重ね電圧を印加して移動してもよい。或いは、浸透圧を利用して、媒体中のタンパク質を溶出するためのそれ自身公知の手段を利用して、第1の媒体から第2の媒体へバンドまたはスポットの移動してもよい。さらに、第1の媒体から別個の板の上に転写して、その後第2の媒体に接触転写させることによって第2の媒体の泳動に取りかかるなどしても良い。
また、上述の例では、第1の媒体で一次元目の泳動、第2の媒体で二次元目の泳動、および第3の媒体で三次元目の泳動を行う方法を示したが、一次元目の泳動および二次元目の泳動を1つの媒体において行ってもよい。例えば、1つのスラブゲルにおいて二方向への、即ち、二次元電気泳動を行ってもよい。
上述の(1)垂直型三次元電気泳動法に記載の電気泳動を行った後で、得られる第3の媒体における泳動された成分に由来するスポットの検出は、以下のような共焦点レーザー走査顕微鏡または共焦点型紫外線吸収顕微鏡などを用いても、後述する時間分析法を利用して行うことが可能である。
(i)共焦型顕微鏡による検出
垂直型三次元電気泳動法を行った後の塊状媒体、特に第3の媒体におけるスポットの検出は、それ自身公知の深度方向の光の発生や吸収分布を測定できる光学手段を用いて行い得る。そのような光学手段の例は、これらに限定するものではないが、共焦点レーザー走査顕微鏡および共焦点型紫外線吸収顕微鏡などの共焦点型の顕微鏡などである。その場合、これらにより当該媒体を立体的にスキャンしてもよく、予め第2の媒体において得られたスポットの位置を基に、それらスポットが第3の方向に移動していく道筋をスキャンしてもよい。
本発明において使用され得る共焦点型顕微鏡は、共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡および共焦点型紫外線吸収顕微鏡など、それ自身公知の何れの共焦点型顕微鏡を利用してもよい。
(ii)時間分解法による検出
また、垂直型三次元電気泳動法を行った後の塊状媒体、特に第3の媒体におけるスポットの検出は、当該電気泳動の終点に到達した成分の検出を継時的に行い、リテンションタイムを指標にするような時間分析法を利用してタンパク質を分離したり、解析することが可能である。このような時間分解法についての説明は、以下の項で詳しく述べる。
(2)時間分解垂直型三次元電気泳動法
時間分解法を利用する垂直型三次元電気泳動によるタンパク質の解析は、例えば、図4にその概略が示される時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置などによって実施することが可能である。この装置では、一次元目の泳動と二次元目の泳動によって二次元的にタンパク質が泳動分布された二次元泳動用媒体と、これを基に三次元目の泳動を行うための三次元泳動用媒体とを使用する。
(i)時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置
図4を参照されたい。本発明の態様に従う1例を用いて時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置を説明する。本例である時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置40は、電気泳動を行うための泳動部41と表面プラズモン共鳴を利用して泳動終面またはその近傍における組成などの状況の変化を検出するための検出部42を具備する。
当該泳動部41は、第1の電極(陰極)43および第2の電極(陽極)47と、その間に位置する二次元泳動用媒体3および三次元泳動用媒体4と、二次元泳動用媒体および三次元泳動用媒体の間に位置する第1のセパレータ44と、三次元泳動用媒体4および第2の電極47の間に位置する第2のセパレータ45と、第1および第2の電極に接続されてそれらに対して電圧を印加する電圧制御手段46とを具備する。ここで、第2の電極47は表面プラズモン共鳴を得るための金属膜であり、光透過性基材48の表面に金などの蒸着やスパッタによって形成され、以下に説明する検出部42における表面プラズモン共鳴受感部としても機能する。また少なくとも泳動時には、第1および第2の電極の間に挟まれる二次元泳動用媒体3、第1のセパレータ44、三次元泳動用媒体4および第2のセパレータ45は適切な緩衝液53に浸される。この緩衝液53の存在により、三次元泳動用媒体4の終面および第2のセパレータ45は、当該金属膜と電気的に連絡される。その結果、当該金属膜のエバネッセント場における状況の変化(例えば、組成の変化や成分の存在など)が表面プラズモン共鳴の変化として反映される。
当該検出部42は、第2の電極47を表面プラズモン共鳴感受部として利用し、この表面プラズモン共鳴感受部に対して表面プラズモン共鳴を発生するための光透過性基材48と白色光源50と入射制御手段49とを含む光学系56を具備する。更に当該検出部42は、当該光学系56により生じた表面プラズモン共鳴を検出するための高空間分析能反射スペクトル測定手段51と反射率スペクトル解析手段52と含む検出系57を具備する。
本発明において使用され得る「光透過性基材」とは、所定の角度で光を入射および出射することが可能な光透過性基材をいい、例えば、三角柱や円柱のものや平板等の形態の光透過性基材であればよく、入射角を変えて測定するか、入射角を一定にして波長を変えた測定を行うか、測定面積がどの程度かに応じて光学的機械的理由で選択されるのがよい。
上述の例では、2つのセパレータを用いているが、セパレータの具備は必須ではなく、所望に応じて、何れか一方だけのセパレータを用いても、セパレータを具備しなくてもよく、そのような装置も本発明の範囲内である。
(ii)時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置によるタンパク質被分析物の分析
例えば、当該時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置によるタンパク質被分析物の分析は次のように行えばよい。まず、当該時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置にセットする前の二次元泳動用媒体を用いて前泳動の泳動を行う。即ち、分析しようとするタンパク質を含む被分析物を、それ自身公知の手段を利用して一次元の泳動を行い、さらに二次元泳動用媒体3での二次元電気泳動に供する。この前泳動の後、得られた二次元泳動用媒体3を当該時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置にセットする。図4に示すように全ての構成をセットした後に第1および第2の電極を所望の電圧で印加して、第2の電極(陽極)に向けてタンパク質成分を移動させる。この電気泳動を行うと同時に、第2の電極の検出部側表面である表面プラズモン共鳴受感部について、表面プラズモン共鳴の検出が行われる。即ち、白色光源からの照射光54は、当該光源50に接続された入射角制御手段49によって入射角度を制御されながら、光透過性基材48に入り、表面プラズモン共鳴受感部に照射にされる。更に、照射光54は、当該表面プラズモン共鳴受感部で反射し反射光55となる。反射光55は光透過性基材48を経て高空間分解能反射スペクトル測定手段51で測定され、反射率スペクトル解析手段52によって解析される。
このとき、泳動部41では、二次元泳動用媒体上に分布していたタンパク質の成分が、電圧の印加によって二次元泳動用媒体を抜けて第1のセパレータ44に到達し、これを介し三次元泳動用媒体に到達する。ここで、第1のセパレータ44は、図5に示すように多孔質シートであるので、二次元泳動用媒体から三次元泳動媒体への成分の移動は淀みなく行われ、且つ余分な拡散は防止される。三次元泳動用媒体に到達した成分は、更に第2のセパレータ45に向けて泳動される。三次元泳動用媒体を泳動しきったタンパク質成分は、第2のセパレータ45に到達する。ここで、第2のセパレータ45は、図6に示すように第1のセパレータよりも厚みがあり、泳動を経て到達した分離されたタンパク質成分をレーン毎に回収するためのセル60を具備する。三次元目の泳動後に回収された成分は、当該セルの底部に当たる第2の電極のエバネッセント場に到達する。当該エバネッセント場への当該成分の到達によって、検出部42で得られる表面プラズモン共鳴が影響されるので、検出部42におけるタンパク質成分の検出が達成される。ここで、表面プラズモン共鳴の利用した検出の原理などについての詳細は、後述する別の項で説明する。
以上、本発明において使用され得る時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置によるタンパク質被分析物の分析の例について説明したが、本発明の分析方法は、これに限定するものではなく、種々の変更および修飾をした方法によって行われてもよい。
(iii)泳動用媒体
ここで使用される二次元泳動用媒体および三次元泳動用媒体は、上述の(1)垂直型三次元電気泳動法の項において第1、第2および第3の媒体に使用可能な媒体として列記した種類の媒体より選択して使用してもよい。しかしながら、当該二次元電気泳動用媒体において行われる好ましい一次元目の泳動は等電点電気泳動であり、二次元目の泳動はSDS−PAGEである。また、二次元泳動用媒体の寸法は、通常の従来の二重原電気泳動分析で用いられる数センチ角から数十センチ角の大きさで良いが、厚さが2mm以下が望ましく、より好ましくは厚さは1mm程度である。
また、好ましい三次元泳動用媒体は、一般的に上述したB群またはC群に含まれる媒体であればよく、その組成および製造方法も当業者には公知である。また、レクチン等の物質を多孔質の無機材料の内部の表面に修飾しても良く、本発明はこれらを排除するものではない。三次元泳動用媒体の寸法は、数センチ角から数十センチ角で、二次元泳動用媒体と同等の大きさであれば良いが、泳動方向の厚さは数mm以上10cm以下であり、より好ましくは1cmである。厚さが厚すぎると泳動に時間がかかったり、高電圧が必要になるために、電極表面でのガスの発生や、他のイオン物質が集まり、例えばSPR測定を困難にする。また、時間分解垂直型三次元電気泳動法では、表面プラズモン共鳴を測定することにより間接的にタンパク質を検出する。従って、三次元泳動用媒体は、一次元および/または二次元泳動と異なるタンパク質の性質に依存する泳動が得られる媒体であればどのような媒体であってもよく、色や光透過性など外見的な何れの性質も問題とされない。。
(iv)一次元目および二次元目の電気泳動
一次元目の電気泳動と二次元目の電気泳動は、本発明に従う時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置41における電気泳動に対して二次元泳動用媒体3をセットする前に行っておくことが好ましい。その場合、最終的に二次元に被分析物成分が泳動された状態の二次元泳動用媒体3が得られればよく、一次元目および二次元目の電気泳動はそれ自身公知の何れの電気泳動手段により行えばよい。
例えば、図7に示すような従来の電気泳動分析装置70を用いて二次元目の電気泳動を行うのが好ましい。当該電気泳動分析装置70は、電気泳動媒体71である媒体と、これを挟むように具備される不導体壁72と、緩衝液75を介して当該媒体に電圧を印加するための電極73および74と、当該媒体71と不導体壁72を垂直に維持するための容器75を具備する。媒体71への被分析物の添加は、タンパク質がマイナス帯電されることにより陽極側に泳動するために、陰極に近い側に行う。当該電極は、一般的に上方の電極73が陰極であり、下方の電極74が陽極である。
(v)検出系1
当該装置における検出部42は、所謂、表面プラズモン共鳴センサである。「表面プラズモン」とは、金属中の自由電子が集団的に振動して生じた粗密波のうち、金属表面に生じる粗密波を量子化したものである。このような表面プラズモンは光波によって惹起される。その伝搬速度は周囲の誘電率や構造によって左右される。表面プラズモン共鳴センサは、このような性質を利用して、被分析物中の物質を定量分析するための装置である。そのような装置として、例えば、特開平10−78393号、特開平6−167443号および「計測と制御」第36巻、第4号、1997年4月号などに記載された例が挙げられる。これらの文献に記載の技術およびそれ自身公知の何れのの表面プラズモン共鳴センサも本発明において好ましく使用してよい。
本発明において使用され得る表面プラズモン共鳴センサの第1の例を図8に示す。基本的な表面プラズモン共鳴センサ80は、光透過性基材81と、前記光透過性基材81と被分析物83に対して夫々別の面で接触する金属膜82と、光ビーム85を発生させる光源84と、前記光ビーム85を光透過性基材81に通し、当該光透過性基材81と金属膜82との境界に対して種々の入射角が得られるように入射させる光学系86と、前記の界面で全反射した光ビーム87の強度を種々の入射角度毎に検出可能な光検出手段88とを備える。感受面をなす金属膜82は、通常、光透過性基材上への蒸着やスパッタによって形成される。
この場合、前記の種々の入射角を得るためには、比較的に細い光ビームを偏向させて当該界面に入射するようにしてもよく、種々の角度で入射するための成分を光ビームに含ませるように比較的太くビームを照射し、当該界面で集束するように入射してもよい。例えば、比較的細い光ビームを用いる場合には、出射角が変化可能な光ビームを、光ビームの反射角の変化に対して同期移動ができるように小さな光検出器を用いて検出してもよく、或いは出射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサを利用して検出してもよい。例えば、比較的太い集束ビームを用いる場合では、種々の出射角で出射された各々の光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサを利用して検出を行ってもよい。
図8に示すような表面プラズモン共鳴センサにおいては、表面プラズモン共鳴センサ面に垂直な偏向成分であるP偏向の光ビームを、金属膜に対して全反射角以上の特定の入射角θSPで入射させれば、前記金属膜に接している被分析物において、電解分布を有するエバネッセント波が生じる。その結果、このエバネッセント波により当該金属膜と被分析物との界面に表面プラズモンが励起される。このときに、エバネッセント光の波数ベクトルが、表面プラズモンの波数と等しくなり、波数整合が成立すれば、エバネッセント波と表面プラズモン波は共鳴状態となる。その結果、光のエネルギーは表面プラズモンに移行するので、当該光透過性基材と金属膜との界面において反射する光の強度は著しく低下する。
この現象が生じる入射角θSPを基に表面プラズモンの波数が分かれば、検出しようとする被分析物についての誘電率が得られる。これを数式で示すと、以下のような関係となる。
Figure 0004462902
ここで、KSPは表面プラズモンの波数であり、ωは表面プラズモンの角週波数であり、cは真空中の光速であり、εは金属の誘電率であり、εは被分析物の誘電率である。
この式から分かるように、金属膜の近傍の被分析物の誘電率εが分かれば、所定の校正曲線に基づいて被分析物中の特定物質の濃度が分かる。それにより全反射解消角θSPが分かる。従って、目的とする被分析物に含まれる特定の物質を定量分析することが可能となる。ここで使用される「全反射解消角」の語は、上記の反射光強度の低下する入射角のことを示す。
本発明において使用され得る「光透過性基材」とは、所定の角度で光を入射および出射することが可能な光透過性基材をいい、その形状は、例えば三角柱、あるいは円柱、あるいは平板の形態の光透過性基材であればよく、入射角を変えて測定するか、あるいは入射角一定で波長に依存した測定を行うか、測定面積がどの程度かに応じて光学的機械的理由で選択されるのが好ましい。
また本発明において使用され得る金属膜は、それ自身公知の金属膜であればよく、例えば、金および銀などの金属で当該光透過性基材の一面に膜を形成してもよく、そのように光透過性基材と一体化されずに独立して存在してもよい。当該金属膜の厚さは、一般的に表面プラズモン共鳴センサにおいて使用される厚さでよく、例えば、“金”を用いる場合は550Å程度が望ましい。
本発明において使用され得る光源は、一定の入射角で照射し、反射系の波長依存性を測定して表面プラズモンを観察する場合には、例えば、ハロゲンランプでよい。更に、能動的に波長依存性を測定する場合には、発振波長を変更できるレーザーなどの光源であればよい。また、本発明において使用され得る、光透過性基材と金属膜との境界に対して種々の入射角が得られるように入射させるための入射角変更機構は、例えば、光の進行方向を変えるための角度可変ミラーでもよい。また、光源をレールステージに搭載し、当該レールステージ上を移動することによって入射角度を変更してもよい。また、そのような光学系は、更に光ビームの幅を限定するためのスリットや、平行光を作るためのコリメータや、所望する波長を得るためのフィルターなどの光波調整手段を具備していてもよい。
本発明においては、表面プラズモン共鳴を観察する際に、光の反射率の入射角依存性を測定するが、光の入射角依存性を測定する方法としては、光の反射角を測定をしてもよい。これは波動光学から明かである。具体的には、平行光を入射角を変えながら照射し、その反射光を画像観察手段、例えばビデオなど、で測定してもよい。或いは、入射させる光として、集束光のように様々な入射角成分を含んだ光を用い、例えば、反射光を測定する際に特定の角度の光だけを通すコリメーターを介して受光する光学系を組んで、その設置角度を連続的に変更して測定してもよい。更に、その他の反射角に依存した反射率を一括で測定するために提案されたそれ自身公知の何れの光学系を用いてもよい。しかしながら、本発明に使用し得る測定手段および測定方法は、これらに制限されるものではない。また、そのような手段やその境界の光の反射率の入射角依存性の測定方法は、更に様々なものが考えられ、また種々の変更や修飾も考えられるが、それらの手段および方法も好ましく本発明において使用してよい。
本発明において使用され得る、当該界面で全反射した光ビームの強度を種々の入射角度毎に検出可能な光検出手段は、一般的なCCDカメラなど、それ自身公知の光検出手段であればよい。
また、本発明の表面プラズモン共鳴センサは、二次元表面に分布するプラズモン共鳴を測定することが可能であってもよい。そのような表面プラズモン共鳴センサの例を図9と図10に示し、以下に説明する。
(vi)検出系2
図9に示す表面プラズモン共鳴センサ90の第2の例は、光透過性基材91と、前記光透過性基材91上に形成され且つと被分析物83に対して別の面で接触する金属膜92と、一定波長の光ビーム95を照射する単色光源96と、前記光ビーム95を光透過性基材91に通し、当該光透過性基材91と金属膜92との境界に対して種々の入射角が得られるように入射させる光学系94と、前記入射された光ビーム95の反射光99の金属膜上の位置に対応した強度分布に関する情報を回収するための撮像手段98と、当該金属膜92からの反射光99を前記撮像手段98に集光するための光学系97とを具備する。
図9に示す第2の例では、金属膜により制限される二次元領域である面上の複数の位置に係る情報が、撮像素子において1つのグループの情報として捉えられる。この情報は、実施者に最終的には二次元的な情報として捉えられる形態で出力されてもよい。ここで、金属膜により制限される二次元領域である面上の複数の位置に係る情報の検出は、例えば、入射角を変更しながら、金属膜全域の反射光強度を一度に測定し、それを入射角を変えながら行うことで、金属膜全域の全反射解消角や強度極小となる角を測定すれば良い。情報の集積のために、CPUやメモリを具備する一般的なコンピュータを利用してもよい。
ここで、複数の位置に係る情報とは、例えば、当該金属膜92の媒体側表面近傍に存在する成分22の存在なとであり、例えば、タンパク質がどの程度の濃度で存在するという情報などである。ここで「媒体側表面近傍」とは、金属膜のエバネッセント場を指す。上記の情報は全反射解消角を指標として検出される。また、金属膜表面の走査は、金属膜により制限される二次元領域のX方向、Y方向および/またはZ方向に、当該光透過性基材91、単色光源96、入射角変更機構93、光波調整手段、光学系97および/または撮像手段98を移動することにより、当該表面の全体または複数の位置を走査すればよい。
また、図9に示す第2の例は、表面プラズモン共鳴の検出を当該金属膜表面を走査して行うこと以外は、上述の第1の例と同様な構成要素からなる装置であってよく、第1の例と同様に変更してよい。
(vii)検出系3
上述の図9に示す第2の例は、入射角θを変更しながら撮像素子98を用いて反射光99を撮像することにより、全反射解消角の検出を行う例であるが、以下に説明する図10に示す表面プラズモン共鳴センサの第3の例は、入射角θは一定に保持するが、光スペクトルアナライザー108を用いて反射光109をのスペクトルを測定し、撮像された反射光109の波長の違いや全反射解消が生じる波長を検出することにより、当該金属膜102の媒体側表面に存在する成分の検出を行うための例である。
図10に示す表面プラズモン共鳴センサの第3の例は、光透過性基材101と、前記光透過性基材101と被分析物83に対して夫々別の面で接触する金属膜102と、光ビーム105を照射する白色光源106と、前記光ビーム105を光透過性基材101に通し、金属膜102境界に対して所望の入射角と所望の波長が得られるように調整して入射させるためのコリメーター103と、入射された光ビーム105の反射光109に関する情報を回収するための光スペクトルアナライザー108と、当該金属膜102からの反射光109を前記光スペクトルアナライザー108に集光するための走査ステージ付高空間分解能反射光スペクトル測定手段107とを具備する。ここで、上記金属膜は光透過性基材上への性幕によって形成されている。
照射する第3の例は、光源が様々の波長の光を出し、あえて入射角変更機構を要しない。当該コリメーター103は、平行光を作るための光学系で構成できて、その方法は公知である。
また、第3の例によれば、金属膜により制限される二次元領域に分布する複数の位置に係る情報は、走査ステージ付高空間分解能反射光測定手段が有する走査ステージの稼動を行いながら、金属膜上に亘って全反射解消波長を検出することにより当該金属膜102の媒体側表面の成分22の存在を検出することが可能である。ここで、「全反射解消波長」とは、上記の反射光強度の低下する入射波長を示す。
上述した表面プラズモン共鳴センサの第1、第2および第3の例では、全反射解消角または全反射解消波長により、金属膜の媒体側表面に存在する成分の検出を行う例を示したが、リフト上の反射率曲線の解析によってより高精度の当該検出を行ってもよい。当該反射率は、図4で示す照射光54の入射角および波長、プラズモン共鳴受感部を提供する金属膜の種類、プラズモン共鳴感受部を提供する金属膜のエバネッセント場の状況などに影響される。
(viii)セパレータ
次に第1のセパレータについて説明する。上述したように当該時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置41では、二次元泳動用媒体における二次元電気泳動により移動されるべき位置にまで移動されたタンパク質成分を、三次元泳動用媒体に移動し、終点でのタンパク質の出現を継時的にまたは断続的に観察しながら三次元泳動用媒体において三次元目の電気泳動を行う。従って、二次元電気泳動によって移動すべき位置に適切に移動されたタンパク質成分が、三次元泳動用媒体に移動する際に再度混じり合ったり、他に移動することは望ましくない。従って、第1のセパレータ44は、意図しない成分の移動、混合および汚染などを防ぐための部材であり、そのような移動や混合などを防ぐことが可能な手段であれば、どのような手段であっても第1のセパレータ44として使用してもよい。第1のセパレータ44の例は、テフロンメッシュシートなどである。また、テフロンメッシュシートは、例えば、ポアサイズ1mm以下であればよく、好ましくはポアサイズ50μm、ポア間隔70μm、厚さ12μmである。ポアサイズが大きすぎると、微細に分離された成分が混じり合ってしまう。
次に第2のセパレータについて説明する。上述したように、三次元泳動用媒体を泳動しきったタンパク質成分は、第2のセパレータ45に到達する。第2のセパレータ45は、泳動を経て到達した分離されたタンパク質成分を、三次元泳動用媒体終面またはその近傍における状況を維持したままで回収するためのセル60を具備する。従って、第2のセパレータ45は、分離された成分の意図しない混合、汚染および移動などを防止しながら回収しこれを維持し、検出するべき成分毎に表面プラズモン共鳴センサのエバネッセント場に到達させる。特に、金属膜である第2の電極面に対して水平にタンパク質成分が拡散した場合、当該金属膜に亘る空間分解能が悪化してしまう。この空間分析能の悪化も第2のセパレータは防ぐことが可能である。また第2のセパレータは、三次元泳動用媒体が直接に表面プラズモン共鳴センサの一部として機能する第2の電極に接触するのも防ぐ。従って、そのような効果を得ることの可能な手段であれば、どのような手段であっても第2のセパレータ45として使用してもよい。第2のセパレータ45の例は、テフロンメッシュシートなどである。また、テフロンメッシュシートのポアサイズは、表面プラズモン測定のための光の進入投影方向に、1mm以下、好ましくは5μm以上1mm以下の長さであればよく、より好ましくはポアサイズ500μm、ポア間隔70μm、厚さ1mmである。ポアサイズが5μm以下であると、表面プラズモン共鳴が発生しても、反射光が回折されて反射角度が変化する等、反射光に正確にその影響を反映することが困難であり、1mm以上であると、分解能が低くなる。また、第2のセパレータ45に代わって、媒体の終面側の表面に凹凸を付してもよい。
(ix)表面プラズモン共鳴センサによる測定
上述のような時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置を用いて、三次元目の電気泳動を行いつづ、表面プラズモン共鳴センサによる測定の手順の例を説明する。表面プラズモン共鳴センサの第2の電極である金属膜と対向電極の間には、図11に示すように高圧過程と低圧過程を繰り返すことにより、電気泳動とイオン緩和を繰り返し、この状態で表面プラズモン共鳴センサによる測定を行う。高圧過程は、望ましくは数Vの電圧を印加する。この過程においてタンパク質は泳動する。また、低圧過程は電圧制御系を停止(即ち、両電極間を非短絡、或いは、開放)してもよく、電圧を0V(ゼロV)で制御してもよく、0Vでの制御と電圧制御系停止(即ち、両電極間を非短絡、或いは、開放)とを組み合わせて行ってもよい。また、高圧過程と低圧過程の繰り返しは、高圧過程で必要な泳動の分析がなされる程度の回数で行えばよく、好ましくは10回以上繰り返して行う。当該高圧印加は、約0.3Vから約30Vで行えばよく、好ましくは約1.0Vから約5Vで行えばよく、より好ましくは2Vである。各過程の長さは約0.5分から約1時間でよく、好ましくは約5分から約30分であり、より好ましい長さは、高圧過程が10分で、低圧過程は約5秒であり、且つ低圧過程の初期に0V制御を5秒間行えばよい。これによって、電圧印加により不必要に金属膜に集合していた電解質成分等を放出してタンパク質のみの影響による測定を短時間で行うことができる。
このような電圧の制御と同時に表面プラズモン共鳴センサによる測定を行う。即ち、第2の電極である金属膜の一つの面に二次元領域で、反射率極小入射角の分布の測定を表面プラズモン共鳴センサで継時的に行うか、複数の経過時間において複数回測定を行えばよい。継時的な測定または複数の経過時間で複数回の測定を行うことにより、反射率が極小となるような入射角の分布の時間に依存した変化を観察する。例えば、金属膜上に波長870nmの偏向レーザービームを集束させ、その反射光をアレイ状の受光素子である撮像手段によって観察すればよい。このような反射率極小になる反射角を測定する走査を、当該金属膜上に亘って行う。このような二次元領域に亘る高空間分析能における表面プラズモン共鳴角測定方法は、上述の何れの検出系を用いて行ってもよく、或いはそれ自身公知の検出系を利用して行ってもよい。
このような測定により得られる一般的なデータの例を図12(A)および(B)に示す。図12(A)および(B)は、電圧制御方法を変えた時の反射率極小入射角度の変化を示すチャートである。図12(A)および(B)のグラフは、何れも横軸に時間、縦軸に反射率極小入射角、即ち、反射率が極小となるような入射角を示す。まず図12(A)を参照されたい。表面プラズモン共鳴センサにより測定後5分に2Vの電圧印加を行うと、二相性に反射率極小入射角度が変化する。第一相は、緩衝液中の電解質等の低分子物質が金属膜面に直接集合することによる急激な入射角度の増加であり、第二相は更なる緩衝液中の物質の集合により生じる増加であると考えられている(図12(A))。このときにエバネッセント場にタンパク質など泳動成分が存在すると、入射角度はこれよりも更に増加する。更に、測定後10分に回路を開放して電圧抑制を停止すると、入射角度は二相性に低下し、やがて基底値に戻る(図12(A))。またこのときに、エバネッセント場にタンパク質など泳動成分が存在すると、基底値よりも大きい入射角度で安定する。一方、測定10分後における電圧制御停止に代えて、先ず10秒間の電圧0V制御に続き電圧制御停止を行うと図12(B)のような結果が得られる。即ち、0Vにすることにより急激に集合した物質が再拡散し、その後は緩やかに更なる拡散が生じる。しかしながらこのときに、エバネッセント場にタンパク質など泳動成分が存在すると、図12(A)の方法と同様に基底値よりも大きい入射角度で安定する。
図12(A)の方法を行い、20分毎に入射角度をプロットした図が図13である。黒丸はコントロールであり、白丸は当該エバネッセント場に2種類のタンパク質成分が存在する場合の入射角度の変化を示した。まず、1時間20分にタンパク質成分Pがエバネッセント場に到達し、更に3時間20分後にタンパク質成分Qがエバネッセント場に到達した。コントロールでは、基底値は僅かな上昇しか見られないのに対して、エバネッセント場に電気泳動により移動された成分が到達し、存在していると入射角度は増加する。これにより従来の二次元電気泳動では分離できなかった成分についての分離が達成される。実際の測定では、入射角度の増加により検出を達成してもよく、或いはコントロールと比較することによって検出を達成してもよい。
(x)面分析による高精度測定
また、上記の測定を金属膜により制限される面について二次元的分布から解析を行ってもよい。即ち、上記の(ix)表面プラズモン共鳴センサによる測定で示した方法では、基底値に相当する入射角度、即ち、平衡角度、の絶対値は、緩衝液の塩析や媒体に含まれる不要物の析出によって、本来検出しようとする電気泳動により得たタンパク質成分の影響を厳格に反映することは時間の経過と共に困難になる。しかしながら、当該金属膜により制限される面について二次元的に平衡角度の分布を時間と共に観察することにより、媒体内の不純物や緩衝液中の物質による影響を取り除くことが可能になる。図14を参照されたい。図14(A)、(B)および(C)は、0分、60分および80分と継時的に同じ部位を1mm間隔の格子間隔にて観察した結果である。夫々の交点が実際に入射角度を測定した点である。(A)と(B)では平らであった部分が、(C)では楕円で囲んだ部分が上昇していることが分かる。この上昇は入射角度の上昇を反映している。このように二次元的に変化を分析することにより、高精度に検出を行うことが可能である。
(xi)電圧印加過程での角度測定による分析方法
以上の方法では、電圧を印加しない時間領域、即ち、低圧過程、における平衡に達した角度の変化を用いてタンパク質の分離を行った。しかしながら、電圧印加後のピーク時の到達角度の変化からも同様な分析を行ってもよい。また、その場合も上記の面分析などにより結果を得てもよく、またコントロールと比較してもよい。
また、図11に示すような鋸状の電圧印加を行わずに、連続印加を行いながら増加する角度の変化率を測定してもよい。その場合でも、増加する角度の変化率から、上述と同様に、表面プラズモン共鳴センサのエバネッセント場に到達した泳動成分を継時的に観測することが可能である。
(3)時間分解水平型三次元電気泳動法
更に時間分解法は、例えば、図15に示すような水平型三次元電気泳動分析装置などを用いて行ってもよい。図15に示す当該水平型三次元電気泳動分析装置は、三次元泳動用媒体を用いて、水平方向に電気泳動を行う装置である。
(i)時間分解水平型三次元電気泳動
図15を参照されたい。この時間分解水平型三次元電気泳動分析装置150は、電気泳動を行うための泳動部151と、表面プラズモン共鳴によりタンパク質の存在を検出するための検出部152とを具備する。
当該泳動部151は、第1の電極153および第2の電極157と、その間に位置する三次元泳動用媒体21と、第1の電極153および三次元泳動用媒体21の間に位置する第1のセパレータ154と、前記三次元泳動用媒体21および第2の電極の間に位置する第2のセパレータ155と、前記第1の電極153と第2の電極157に接続されてそれらの間の電圧制御を行うための電圧制御手段168と、前記三次元泳動用媒体21において水平方向の泳動を行うための第3の電極156aおよびb、前記第3の電極156aおよびbに接続されてそれら電圧の制御を行う電圧制御手段163とを具備する。また、少なくとも泳動時には、第1および第2の電極に挟まれる部分は図示しない緩衝液に浸される。
当該検出部152は、第2の電極157を表面プラズモン共鳴感受部として利用し、この第2の電極とは、実際には光透過性基材表面に形成された厚さ500Å程度の金の膜である。また、この表面プラズモン共鳴感受部に対して表面プラズモン共鳴を発生するための光透過性基材158と光源160と入射制御手段159とを含む光学系166を具備する。更に当該検出部152は、当該光学系166により生じた表面プラズモン共鳴を検出するための高空間分析能反射スペクトル測定手段161と反射率スペクトル解析手段162とを含む検出系167を具備する。
(ii)時間分解水平型三次元電気泳動分析装置によるタンパク質被分析物の分析
例えば、当該時間分解水平型三次元電気泳動法装置によるタンパク質被分析物の分析は次のように行えばよい。
まず、当該時間分析水平型三次元電気泳動分析装置にセットする前の三次元電気泳動用媒体21に前泳動として行った一次元目および二次元目の泳動結果を移す。例えば、図2(a)および(b)に示すように予め一次元目および二次元目電気泳動を行って得られた媒体20に分散されて含まれる成分22A〜22Eを電気泳動などのスポット移動手段などによって三次元目泳動用媒体21に移せばよい(図2(a)〜(e)を参照されたい)。
次に、これを図15に示す当該時間分析水平型三次元電気泳動分析装置にセットし、三次元目の電気泳動を行う。三次元目の電気泳動は、電圧制御手段163による制御下での第3の電極156aおよびbへの印加によってY方向に行われればよい。電極153および電極157について、図15の(B)に記すように短冊状電極パターン169形状をしており、Y方向への泳動を行う際に、各短冊状の電極が電気的に連絡していると電極付近では等電位となるため、水平方向の泳動を行う間は電気的に独立させるか、或いは水平方向の泳動を助けるように角短冊状電極間に電圧勾配を積極的に加えることが必要になる。また、この電気泳動を行うと同時またはその前後の少なくとも1回は、電圧制御手段168の制御下での第1および第2の電極への印加によって、Z方向への電気泳動が行われてもよい。このZ方向への泳動は、表面プラズモン共鳴受感部である第2の電極157のエバネッセント場に充分な量の泳動成分を存在させるために行う。
その結果、第2の電極の検出部側表面である表面プラズモン共鳴受感部について、表面プラズモン共鳴が検出される。即ち、光源160からの照射光164が、当該光源160に接続された入射角制御手段159によって入射角度を制御されながら光透過性基材158に入って表面プラズモン共鳴受感部に照射にされる。照射光164は、当該表面プラズモン共鳴受感部で反射し反射光165となる。反射光165は光透過性基材158を経て高空間分解能反射スペクトル測定手段161で測定され、反射率スペクトル解析手段162によって解析される。
(iii)泳動用媒体
ここで使用される三次元泳動用媒体は、前泳動として行った一元目の泳動と二次元目の泳動とは異なるタンパク質の性質に依存した電気泳動の可能な媒体であり、且つそのために必要な組成を有する。従って、当該三次元目の泳動を行うための三次元泳動用媒体21は、所望の組成を有する泳動用媒体であればよく、例えば、所望の組成と寸法のそれ自身公知の媒体を使用してもよい。例えば、一次元目のストリップゲルにはアマシャムバイオサイエンスのイモビラインドライストリップを用いて等電点電気泳動を、二次元目の泳動は一般的なSDS-ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEを、三次元目の泳動にはConA、PHAなどのレクチンをゲル担体に固定したポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動を行うことができる。タンパク質は一般的に糖を伴う糖タンパク質であり、その糖鎖の性状によって各種レクチンとの親和性が異なる。適当なレクチンを固定化した電気泳動媒体を用いることで一次元目、二次元目とは異なる分離が可能となる。また、三次元目の電気泳動では、レクチンの代わりに疎水基を固定して調製したゲル媒体を用いることで、タンパク質の疎水性・親水性の性質による分離が可能となる。
レクチンはゲル中に共有結合で固定されているが、必要に応じてゲルを緩衝液中でゆるく振盪することで非結合レクチンを除去することができる。また、電気泳動分析装置でゲルの先端から十分時間電気泳動することによっても除去することができる。
(iv)セパレータ
本態様に従う第1のセパレータ154は、意図しない成分の移動、混合および汚染などを防ぐための部材であり、そのような移動や混合などを防ぐことが可能な手段であれば、どのような手段であっても第1のセパレータ154として使用してもよい。第1のセパレータ154の例は、PVDFやテフロンメッシュシートなどの多孔質シートであってよい。また、テフロンメッシュシートは、ポアサイズポアサイズ2μm〜500μm、厚さ1μm〜1000μmであればよく、好ましくはポアサイズ50μm、ポア間隔70μm、厚さ25μmである。
本態様に従う第2のセパレータは、Z方向への泳動によって当該エバネッセント場に向かって移動した成分を、分離された成分毎に回収し維持するとともに表面プラズモン感受部に直接泳動用媒体が接触しないためのセルの役割を担う。第2のセパレータに回収された成分は、当該セルの底部に当たる第2の電極のエバネッセント場に到達する。当該エバネッセント場への当該成分の到達によって、検出部152で得られる表面プラズモン共鳴が影響されるので、検出部42におけるタンパク質成分の検出が達成される。ここで、表面プラズモン共鳴を利用した検出の原理などについての詳細は、上述した通りである。従って、第2のセパレータ155は、分離された成分の意図しない混合、汚染および移動などを防止しながら回収しこれを維持し、検出するべき成分毎に表面プラズモン共鳴センサのエバネッセント場に到達させるものである。特に、金属膜である第2の電極面に対して水平にタンパク質成分が拡散した場合、当該金属膜に亘る空間分解能が悪化してしまう。この空間分析能の悪化も第2のセパレータは防ぐことが可能である。また第2のセパレータは、三次元泳動用媒体が直接に表面プラズモン共鳴センサの一部として機能する第2の電極に接触するのも防ぐ。従って、そのような効果を得ることの可能な手段であれば、どのような手段であっても第2のセパレータ155として使用してもよい。第2のセパレータ155の例は、第1のセパレータとほぼ同様でよいが、表面プラズモンの励起を阻害しないように、ポアは光の入射方向10μm以上の長さに形成されている必要がある一方、その垂直方向には最低5μmであってもよい。また、第2のセパレータ45に代わって、媒体の終面側の表面に凹凸を付してもよい。
(v)検出系
当該態様の装置における検出系は、時間分解垂直型三次元電気泳動法の項など、上述の何れの検出系を同様に利用することが可能である。
時間分解水平型三次元電気泳動分析装置を用いて泳動すると、例えば図2(e)に示すような結果が得られる。このような結果に至るまでの三次元目の泳動における複数の経過時点を観察することにより、また、連続して三次元目の泳動の状態を観察することにより、一つの面に複数存在するスポットの移動状態を、スポット毎に解析することが可能である。例えば、そのような複数の経過時点または連続しての観察は、表面プラズモン共鳴センサにより得られる結果をCCDカメラなどの撮像手段によって行うことが可能であり、これら応用手法は公知である。
また、泳動前のスポットと泳動後のスポットの関連付け、また媒体における複数のスポットの関連付けは、様々な数学的な解析方法を利用してもよい。
(vi)金属膜
本時間分解水平型三次元電気泳動分析装置において使用され得る金属膜は、表面プラズモン共鳴を本発明の環境下で励起して観測可能な物質によりなる金属膜であればよく、例えば、金および銀などの金属で当該光透過性基材の一面に膜を形成する。当該金属膜の厚さは、一般的に表面プラズモン共鳴センサにおいて使用される厚さでよく、例えば、約550Åの厚みの金薄膜であってよい。
また、本時間分解水平型三次元電気泳動分析装置において使用され得る金属膜は、図15Bに示すように、複数の短冊状の金属膜を用い、短冊状金属膜の長手方向が当該泳動方向に対して直交するように並列に配して形成してあることが望まれ、さらに泳動方向に大きな寸法を有すると電気泳動が発生しない。このように形成することで、より有効に水平型の三次元目の電気泳動が達成される。また、短冊状の金属膜の長手方向の長さは、当該泳動用媒体の寸法に合わせて決定すればよく、長手方向に垂直な方向の長さ、即ち、幅は、5から1mm以下、好ましくは10から100μmである。また、隣合う短冊状の金属膜の間には、長手方向に垂直な方向の金属膜の長さと同程度かそれより長い隙間、即ち、スペースを空ける。また、この短冊状の金属膜は、互いに接続されていてはいけない。接続されると泳動のための電界が発生せず、泳動が起きなくなる恐れがある。接続されずに各々が独立していてもよいが、夫々独立して電圧制御が可能であることが望ましい。各短冊形金属膜に所望の電位を印加することで、泳動用媒体における泳動速度を部分的に変更することも可能である。
以上述べた金属膜の形状およびそれに印加する電位については、電圧印加用電極153についても同様である。
(vii)時間分解水平型三次元電気泳動分析装置の更なる例
上述の時間分解水平型三次元電気泳動分析装置は、更に図16に示すような構成であってもよい。即ち、時間分解水平型三次元電気泳動分析装置170は、電気泳動用の容器171に緩衝液174に浸されて具備された三次元目の電気泳動用媒体172と、所望の電気泳動を行うための電極173aおよび173bと、前記電極に電圧を印加するための電圧印加手段181と、前記媒体172に接して配置される金属膜182と、それを表面に保持していている光透過性基材175とを具備する。表面プラズモン共鳴センサの測定は、平行光を照射できる白色光源176により比較的広い領域に同時に照射された光177は、表面プラズモン共鳴感受部である金属膜182において反射され、高空間分析能光学系180と光スペクトルアナライザー179と観測点二次元走査手段183とを具備する検出手段178によって、入射角または波長などの光学的信号の変化を検出すればよい。以上の構成以外は、上述した他の時間分解水平型三次元電気泳動分析装置と同様の構成を有してよく、他の当該装置と同様に変更してよい。
(viii)時間分解水平型三次元電気泳動分析装置の更なる例
また更に時間分解水平型三次元電気泳動分析装置は、図17AおよびBに示すような以下のような構成であってもよい。電気泳動用の容器198と、前記容器に含まれる緩衝液と、これに浸されて配置される三次元目の電気泳動用媒体191と、電極193aおよび193bと、当該電極193aおよび193bに所望の電圧を印加するための電圧印加手段195と、前記媒体191に接して配置される金属膜192と、前記金属膜192に接して配置される光透過性基材197とを具備する(図17A)。また、前記金属膜192は、図17Bに示すように複数の短冊状の金属膜が並列してなり、この短冊状の金属膜は長手方向が泳動方向に直交するように配置される。表面プラズモン共鳴センサによる検出は、光源196からの光を光透過性基材に対して照射し、その反射光を検出して関連する入射角や波長などの光学信号を検出手段197により検出して所望の解析を行うことによって検出を達成すればよい。
また図には示していないが、当該時間分解水平型三次元電気泳動分析装置は、好ましくは、上記の金属膜192を、当該光透過性基材に接する側に配置するだけではなく、媒体191と容器198との間にも同様に第2の金属膜199を配置してもよい。その場合は、緩衝液や泳動媒体に接している必要はないが、泳動方向における金属膜の短冊幅は短い方が泳動を妨害しないので好ましい。短冊幅が長いと、短冊幅が大きくなるにつれて、その区間で泳動のための電界が被泳動成分に係らなくなり、測定が困難になる。
(ix)時間分解水平型三次元電気泳動分析装置の更なる例
また、時間分解水平型三次元電気泳動分析装置の検出部として、上述する様な表面プラズモン共鳴センサではなく、紫外線を利用した検出手段を用いてもよい。そのような例を図18に示す。時間分解水平型三次元電気泳動分析装置200は、電気泳動用容器201と、この容器201に具備された緩衝液208と、前記緩衝液208に浸された泳動用媒体202と、電極203aおよび203bと、前記電極203aおよび203bに制御された電圧を印加する電圧印加手段205と、前記媒体中に泳動されたタンパク質成分を検出するための紫外線光源204と、光源204から照射され、媒体202を経た光学信号を検出するための紫外線強度分布測定手段206と、測定された光学信号を分析するための透過紫外線分布測定解析手段207とを具備する。
当該光源204から照射される紫外線は、タンパク質に特異的に吸収される波長であることが好ましく、波長200nmから300nm台の光が使用されればよい。また、紫外線強度分布測定手段206による測定は、点または線状に観察可能な手段を用いて走査によって行われてもよく、或いは二次元的な面として観察可能な手段を用いてもよい。
また、本発明に従う時間分解水平型三次元電気泳動法は、上述の紫外線を利用する検出と、表面プラズモン共鳴センサを利用する検出とを組み合わせて、所望の検出および解析を行ってもよい。
3.セルを具備する光透過性基材
上述した表面プラズモン共鳴センサにおいて用いられる光透過性基材は、図19〜21に示す例のようにセルを具備したプリズムであってもよい。図19Aを参照されたい。プリズム218は、泳動用媒体と接する側に複数のセル210を具備する。セルは、当該プリズムの泳動部側に接する面に、それ自身公知の何れかの手段によって、窪み(cavity)や孔として形成されればよい。全てのセル210の底面には、金属膜211が配置され、表面プラズモン共鳴感受部として機能する。見やすさのために一つセルを取り出して図19Bに示した。当該セルの寸法は特に規定されるものではないが、レーザー光が入射する方向に5〜1.0mm、好ましくは10〜300mmである。また、深さは光の波長より大きい必要がある。また、1つの光透過性基材に具備されるセルの容量および形態は必ずしも等しい必要はないが、空間分解能は、このセルの大きさに制限されることは明かである。更に、セルの深さが異なると反応の大きさが異なるために、均一であることが望ましく、更に当該金属膜面(即ち、セル底面)は歪みのない平面でないと正確な測定ができない。従って、当該金属膜面およびセル底面は、正確な測定が可能なために歪みのない平面であることが望ましい。
図20に示す例は、泳動用の電極と、表面プラズモン共鳴センサのための金属膜を、セルの内外で別々に設ける例である。図20Aを参照されたい。図20Aは、縦x横x深さが50μmx100μmx40μmのセル210の夫々の底部に配置された短冊状泳動用電極211と、隣合うセル210の間に配置された短冊状の金属膜212とを具備する光透過性基材としてのプリズム218の例である。図20Bは、図20Aの線B−Bに沿った断面図である。
また、このようなセルを具備するプリズム218を、前述した図4と組み合わせて用いる例を以下に説明する。図4に示した時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置の第2のセパレータ、第2の電極47および光透過性基材48の代わりに、図20に示すセル210、金属膜212および電極211を具備するプリズム218を用いる以外は、上述の構成と同様な構成を用いて、上述した方法と同様に時間分解垂直型三次元電気泳動を行うことが可能である。当該三次元目の電気泳動を行った際の当該セル210周辺の被分析物および緩衝液中のイオンの状態を模式的に示したのが図21である。電気泳動により、緩衝液中のイオンはイオン自身の有する電荷によって電極211に引きつけられる。図21中、そのようなイオンの動きは、セル211内の電極211周辺の斜線で示した。斜線が示すように当該電極211の周辺ではイオン濃度が高くなる。これに対して被分析物は、電気泳動によって当該セル211の底部の電極211に引きつけられると同時に、その移動途中に存在する金属膜212上に留まるかその表面近傍を通過する。セル211の底部では、イオン濃度が高いために正確な表面プラズモン共鳴を検出することが困難であると考えられるが、泳動用の電極と当該センサのための金属膜212を独立して配置することによって、より好ましい表面プラズモン共鳴の検出が可能となる。
このようなセルを具備する光透過性基材は、上述した例に限らず、本発明に従って提供される何れの電気泳動分析装置において使用することも可能である。
4.基本的な三次元電気泳動の流れ
以上、本発明に従う三次元電気泳動について幾つかの例を用いて説明したが、更に図22を用いて本発明に従う基本的な三次元電気泳動の流れを説明する。
まず、第1および第2の電気泳動媒体を用いた一次元目および二次元目の電気泳動を行い、タンパク質などの分離したい成分を含む被分離材料を二次元に展開する(22a)。
次に、22aにおいて二次元展開された電気泳動媒体におけるタンパク質などの被分離材料中の成分の分布を維持しながら、第1および第2の電気泳動媒体とは異なるタンパク質の泳動特性に依存する第3の電気泳動媒体に転移する(22b)。
以下の分離は、実施者の所望に応じた垂直型または水平型の三次元目の電気泳動によって行われる。
22cでは垂直型の例を示す。第3の電気泳動媒体の厚さ方向に泳動を行う。泳動を行う過程で、第3の電気泳動媒体の第2の電気泳動媒体と接する面とは反対側の面、即ち、厚さ方向に泳動物が泳動しきって到達する面における二次元的な被分離物の存在量を、少なくとも2つの経過時点で、または連続して測定する(22c)。ここで言う経過時点とは開始点と終了点のいずれかまたは両方を含んでもよいが、これ以外にその中間点でも測定されていることが望ましい。開始点と終了点だけでは終了時のスポットと開始点のスポットの関連付けが困難であるからである。中間点での測定結果があると、これが容易になることが明らかである。
22dでは、平行型の例を示す。第3の電気泳動媒体の面方向に泳動を行う。第3の電気泳動媒体の少なくとも片方の面から、第3の電気泳動媒体に存在する二次元的な被分析物の量を、少なくとも2つの経過時点で、または連続して測定する(22d)。
最後に、22cまたは22dで測定され得られた第3の電気泳動媒体中の被分析物の二次元的な被分析物成分の量を継時的な変化を解析することにより、被分析物の各成分の第3の電気泳動媒体中の泳動速度の情報を導く(22e)。
以上の方法は既に上述で説明した何れかの構成および方法に従って実施者の所望に応じて変更してもよい。
なお、本発明は上記の実施の形態のそのままに限定されるものではなく、実施の段階において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で何れの構成要素を変形して具体化してもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせてもよく、それにより種々の発明を本発明として形成できる。また、例えば、上記の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよく、異なる実施形態に含まれる何れかの構成要素を適宜組み合わせてもよい。
実施例1:表面プラズモン共鳴センサによる測定
使用した表面プラズモン共鳴センサは、図8に示すような構成であり、光透過性基材としてのプリズム81と、前記プリズム81と被分析物83に対して夫々別の面で接触する寸法1cm×1.5cm×500Åの金薄膜82と、光ビーム85を発生させるためのハロゲンランプ84と、前記光ビーム85をプリズム81に通し、当該プリズム81と金薄膜82との境界に対して種々の入射角が得られるように入射させる光学系86としての傾斜ステージ付きコリメータと、前記の界面で全反射した光ビーム87の強度を種々の入射角度毎に検出可能な光検出手段88としての光強度分布検出用アレイとを備える。ここで使用するSPR信号測定のための光の入射と反射光の検出方法について光学的配置や光強度検出用アレイ等は光学技術者にとって良く知られたものである。さらに、従来のSPR測定器で用いられたものがあり、これ以上の説明をここで要しない。
被分析物は、泳動バッファー液(トリス15g/L、グリシン72g/L、SDS5g/L)に入れた緩衝液にアルブミンを0.3%濃度で溶解し、プリズム81の金薄膜82を陽極として1Vを印加しながらこれについて表面プラズモン共鳴の観察を行った。
その結果、図23に、表面プラズモン共鳴センサにより被検物質を測定して得たデータを示す。タンパク質成分が当該溶液に含まれている場合、入射角度のピークは、当該成分が存在しない場合よりも約0.03度上昇した(図23)。また、同様に、当該成分が含まれている場合には、電圧制御停止後の20分目に測定した入射角も実験開始時よりも約0.03度上昇していた。この20分目の入射角の上昇も当該成分を含まない溶液では観察されなかった(図23)。
実施例2:垂直型三次元電気泳動
(1)一次元目の泳動と二次元目の泳動
一次元目をストリップゲルpH3〜10を用いた等電位泳動によって行なった後に、15cmx15cmx1mmの寸法のSDS-PAGEゲルを、二次元目の泳動を行うための泳動用媒体として用意した。当該ゲルの組成と作成方法は周知である。
二次元目の15cmの泳動は、3時間に亘り100Vの電圧を印加して行った。被分離物はαフェトプロテイン(AFP)とヒト血清アルブミンHSAを含んでいる。電気泳動分析装置は、図7に示した装置を用いた。
(2)三次元目の泳動用媒体
三次元目の泳動を行うための泳動用媒体は、一次元及び二次元目と異なる泳動原理によるものであればレクチン固定化ゲルや疎水性担体固定化ゲル等を利用可能である。タンパク質(分子上にアミノ基を持つもの)とポリアクリルアミドゲルの架橋反応用試薬であるN-[2[[3[[4-(2,5-dioxo-1-pyrrolidinyl)oxy]-4-oxobutyl]amino]-3-oxopropyl]dithio]ethyl]-2-propenamide(以下AEMAS)は、Analytical Biochemstry 151, p268-281(1985)を参考に合成した。ConAまたはPHAレクチン(アミノ基含量として約75μmol)と等mol量のAEMASを5mLの無水エタノール中で室温で30分間反応させてアミド化合物を得た。これに40%(w/v)アクリルアミドおよび2.5%(w/v)ビスアクリルアミド水溶液4mLを添加した。この混合物からエバポレーターによりエタノールを除去した後、純水を加えて約7mLに調整した。イオン交換担体を通して得られた溶液7mLに、1Mリン酸緩衝液(pH7.0)O.4mL及び3%(v/v)N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)O.27mLを添加した。さらに、過硫酸アンモニウム(0.2-0.4%(w/v))を添加した後15cm×15cm×1cmの容器に入れて共重合させてレクチン固定化ゲルを作製した。ゲルの分子量分画範囲はアクリルアミドおよびビスアクリルアミドの濃度を変えて調整できる。また、始めにAEMASとアクリルアミドおよびビスアクリルアミドを同時に用いて目的の分子量分画範囲に応じた活性化ゲルを作製し、その後レクチンを結合させる方法もあるが、固定化の効率が低く均一性にも劣る。レクチンはゲル中に共有結合で固定されているが必要に応じてゲルを緩衝液中でゆるく振盪することで非結合レクチンを除去することができる。また、電気泳動分析装置でゲルの先端から十分時間電気泳動することによっても除去することができる。得られたゲルは泳動方向の長さが1cmとなるように使用する。--
(3)三次元目の泳動
図4に示す電気泳動分析装置を用いて三次元目の電気泳動を行った。まず、メッシュ間隔0.5mmで厚さ0.05mmの正方のテフロンメッシュシートを介して、二次元目の泳動用媒体と三次元目の泳動用媒体とを、15cmx15cmからなる面同士を密着させた。このように重ね合わせた後に、13cmx13cmx550Åの金薄膜が光透過性基材(BK7)上に形成されたプリズムと、13cmx13cmの対向電極に挟んで密着させた。前記金薄膜は表面プラズモン共鳴センサの表面プラズモン感受部を提供する。またこのとき、当該金薄膜と三次元目の泳動媒体との間にも、メッシュ間隔0.5mm、厚さ1mmの正方のテフロンメッシュシートを配置した。更に、前記金薄膜と三次元目の泳動媒体の間、および対向電極と二次元目の泳動用媒体との間を、以下の組成を有する緩衝液で満たした。当該緩衝液は、蒸留水に、トリス15g/L、グリシン72g/L、SDS5g/Lを溶解したものであり、pHは8.3である。
表面プラズモン共鳴センサの金薄膜と対向電極の間には、最大2Vの電圧を印加した。表面プラズモン共鳴センサの金薄膜を陽極とするの言うまでもない。印加の方法は、図11に示すように10分間の電圧を印加した後(即ち、図11中のt=10分)、5秒間OVにして更に5分間電圧制御を行わずに電気的に開放とする(即ち、図11中のt=5分5秒)のサイクルを繰り返した。表面プラズモン共鳴センサは、当該金薄膜により提供される面全体について二次元的に、反射率極小入射角の分布の測定を行い、電気泳動による継時的変化を観測した。表面プラズモン共鳴センサの入射光は、波長870nmの偏光レーザービームを集束させて与えた。また、その反射光をアレイ状の受光素子により観察して、反射率極小になる反射角を測定する操作を繰り返した。このように二次元領域に亘る高空間分解能を利用した表面プラズモン共鳴角測定は、図9に模式的に示す装置を用いて行った。撮像素子はCCDカメラを使用した。
泳動後に得られた入射角に関する結果の30分ごとの測定値を図24に示す。当該垂直型三次元電気泳動分析装置において電気泳動を行い、その間に一点について継時的に入射角を測定した結果を示す。泳動開始から4時間までの平衡に達した角度をプロットしたグラフである。点Pにおいて平衡に達した入射角が上昇した。続けて継時的に測定した結果、更に点Qにおいても平衡に達した角度が上昇した。このような結果から、観測した一点では、2つの異なる成分が異なる泳動速度で泳動された結果、時間をおいて当該金薄膜のエバネッセント場に到達したと考えられる。この測定結果から従来のSDS-PAGEを使用した二次元電気泳動で分離困難なHSAとAFPを分離可能でそれぞれのConAレクチンを用いた流動による移動速度の比はHSA:AFP=8:5であることを示した。
以上のような本発明に従う垂直型三次元電気泳動分析装置を用いた電気泳動により、これまでは分離できなかった成分を明確に分離することが可能となった。
実施例3:水平型三次元電気泳動
(1)一次元目の泳動と二次元目の泳動
一次元目と二次元目の電気泳動を実施例2と同じゲル及び手法を用いて13cm×13cm×1.5mmのSDS-PAGEゲル上に泳動した。サンプルは同様にαフェトプロテイン(AFP)と人血清アルブミン(HSA)を含むものである。
(2)三次元目の泳動用媒体
三次元目の泳動を行うための媒体は、上述の一次元用の泳動用媒体および二次元用の泳動媒体とは異なるタンパク質の性質に依存した電気泳動を行うことが可能な媒体である。タンパク質は一般的に糖を伴う糖タンパク質であり、その糖鎖の性状によって各種レクチンとの親和性が異なる。適当なレクチンを固定化した電気泳動媒体を用いることで一次元目、二次元目とは異なる分離が可能となる。PHAレクチン固定化ゲルは実施例2−(2)と同様の方法により15cm×15cm×1mmの寸法で調製した。
(3)二次元目の泳動用媒体から三次元目の泳動用媒体への成分の移動
図2(c)のように、二次元目の泳動用媒体と三次元目の泳動用媒体を重ね合わせて、更に、二次元目の泳動用媒体と三次元目の泳動溶媒との間には、メッシュ間隔が0.2mmで厚さが0.01mmのテフロンメッシュシートを配置させ、互いに密着させた。このように重ね合わせた後に、媒体の厚さ方向の泳動が可能となるように電極を配置して電圧を印加した。印加電圧は1Vであり、印加時間は30分とした。これによって、二次元目の泳動パターンを維持したままで、泳動された成分を三次元目の泳動用媒体に移動した。図示しないが、三次元目の泳動媒体側の電極(陽極)と三次元目の泳動媒体の間にはバッファー液を1cmの長さに満たして電極に集まるイオン等による三次元目の泳動媒体及びタンパクが変質しないように離した。
三次元目の泳動用媒体に成分が移動したことの確認は、紫外線吸収により行った。三次元目の泳動用媒体面に対して垂直方向に紫外線を照射し、その吸収の程度を観察し、それにより各成分の分布を測定した。
また更に、三次元目の泳動用媒体に成分が移動したことの確認を、表面プラズモン共鳴センサを用いても行った。図15において、表面プラズモン共鳴センサの金属膜を電極(陽極)として、三次元目の泳動用媒体を挟んだ反対面に対向電極を位置させ、1Vの電圧印加を30分行った。その間、表面プラズモン共鳴センサの金属膜面に対して、プリズムを介して、波長870nmの集光したレーザービームを照射した。照射した光の反射波を観測し、反射率極小になる反射角の測定を当該媒体の全体に亘って走査しながら行った。その結果、ヒト血清アルブミンが存在する位置において、反射率極小になる反射角がコントロールに比較して約0.02度上昇した。
(4)三次元目の泳動1
上記の(3)で得た泳動成分を具備する三次元目の泳動用媒体について、図15に示した電気泳動分析装置を用いて電気泳動を行った。 電気泳動の後に、上記(3)で行った方法と同様に表面プラズモン測定を行う際に表面プラズモン共鳴センサの感度を高くするために、表面プラズモン共鳴センサの金属膜157と当該媒体を挟み込んだ対向電極153の間に電界を掛けて、当該媒体中のタンパク質を金属膜157近傍に泳動した。次に表面プラズモン共鳴センサによる測定を行った。その後、逆方向に再度泳動を行って当該培地の内部にタンパク質成分を移動させ、更なる三次元目の泳動を電極156aと156bに50Vを30分印加して行った。
図15の(B)に示す電気泳動分析装置の金属膜は短冊状であり、夫々の短冊状金属膜は、電気的に独立している。短冊状金属膜の長手方向は、当該媒体の大きさに亘り、当該媒体において電界を掛ける方向には金属膜の幅0.02mm、隣合う膜間のスペースは0.2mmとした。金属膜の厚さは500Åとした。当該金属膜と三次元目の泳動用媒体との間には、メッシュ間隔0.1、厚さ0.1mmのテフロンメッシュシートを配置した。また、当該媒体のプリズム側面とは反対の面側にも、前記金属膜と同様の大きさの金属膜を該媒体を挟んで対向する位置に配置した。
当該媒体の面方向に三次元目の電気泳動を行った。表面プラズモン共鳴センサである短冊状金属膜(即ち、短冊状電極)に対してレーザービームを照射し、短冊の長手方向の表面プラズモンの測定を行った。短冊状電極に入射するレーザー光の入射は当該短冊状電極の長手方向とした。更に、各短冊状電極に亘って、表面プラズモン共鳴を継時的に測定した結果、当該媒体の面におけるタンパク質成分の泳動の様子を時間の関数として測定できた。
このような三次元目の泳動の結果を図25に示す。染色法とSPRによる測定の泳動前と泳動後の測定結果を示す。ゲルの直接的な染色はクマシーブリリアントブルーの方法を用いた。
泳動前のパターンについては2次元目の泳動ゲルから三次元目の泳動ゲルヘのタンパク質の移動操作後に、二次元目の泳動ゲルに対して染色を行って初期のスポットの位置を測定している。SPRを用いた測定によるスポット中央を横切る線上における共鳴角の変化は染色のスポットを再現する。
泳動後の染色結果は三次元目の泳動ゲルを元に行なっているが、二次元電気泳動では血清アルブミンのスポットに隠れて分離できなかったタンパク質(αフェトプロテイン)が分離できており、その泳動速度はヒト血清アルブミンの3分の2であることをこれにより判明している。αフェトプロテインの分離はSPR信号からも示されており、従来の二次元電気泳動では困難だったタンパク質を二次元目とは異なる泳動媒体を用いて可能なことを示した。
(5)三次元目の泳動2
上記(4)に記載の方法とは異なる方法による解析も行った。上記の(3)で得た泳動成分を具備する三次元目の泳動用媒体について、以下のように三次元目の電気泳動を行った。この泳動は、図7に示した従来型の電気泳動分析装置を用いて可能であり、30分間に亘り50Vの電圧を印加して行った。
三次元目の泳動を行った後、図4に示す装置にセットして表面プラズモン共鳴によるタンパク質分布の測定をする。電極43と47への印加によって媒質中のタンパク質を金薄膜からなる電極47に泳動して表面プラズモン共鳴の測定を行うと共に、その後にクマシーブリリアントブルーによる染色によるスポットの測定も行った。このような三次元目の泳動の結果、図25のSPR測定結果に比べSNも良好で、同様のAFPとHSAの泳動速度の違いがスポットの移動として測定可能であった。
以上のような本発明に従う水平型三次元電気泳動分析装置を用いた電気泳動により、これまでは分離できなかった成分を明確に分離することが可能となった。
[発明の効果]
以上のような本発明により、より高い分解能を有する電気泳動分析方法およびその方法を行うための電気泳動分析装置が提供された。また、本発明の電気泳動分析方法は、網羅性が高いので疾患関連タンパク質のスクリーニングや、プロテオミクスやプロテオームの研究に有意に使用することが可能である。
本発明に従う三次元目の電気泳動用媒体の1例を示す図。 本発明に従う水平型三次元電気泳動分析方法の1例を示すスキーム。 本発明に従う垂直型三次元電気泳動の1例を示す図。 本発明に従う垂直型三次元電気泳動分析装置の1例を示す図。 本発明に従うセパレータの1例を示す図。 本発明に従うセパレータの1例を示す図。 従来の電気泳動分析装置を示す図。 本発明に使用される得る表面プラズモン共鳴センサの1例を示す図。 本発明に使用され得る表面プラズモン共鳴センサの1例を示す図。 本発明に使用され得る表面プラズモン共鳴センサの1例を示す図。 本発明において金属膜に対する電圧印加のパターンの1例を示す図。 本発明の表面プラズモン共鳴センサにより得られるデータの1例を示すグラフ。 本発明の表面プラズモン共鳴センサにより得られるデータの1例を示すグラフ。 本発明の表面プラズモン共鳴センサにより得られるデータの1例を示す図。 本発明に従う水平型三次元電気泳動分析装置の1例を示す図。 本発明に従う水平型三次元電気泳動分析装置の1例を示す図。 本発明に従う水平型三次元電気泳動分析装置の1例を示す図。 本発明に従う水平型三次元電気泳動分析装置の1例を示す図。 本発明において使用され得るセルを具備する光透過性基材の1例を示す図。 本発明において使用され得るセルを具備する光透過性基材の1例を示す図。 図20の光透過性基材上で行われる電気泳動の様子を示す模式図。 本発明に従う三次元電気泳動法の基本的な手順を示すフローチャート。 実施例1の実験によって得られた結果を示すグラフ。 実施例2の実験によって得られた結果を示すグラフ。 三次元目の泳動の前後の状態を示す示す図。
符号の説明
1.被分析物 2,3,4,202.媒体 20.二次元泳動用媒体 21.三次元泳動用媒体 22.成分 40.時間分解垂直型三次元電気泳動分析装置 41,151.泳動部 42,152.検出部 43,153.第1の電極 44,154.第1のセパレータ 45,155.第2のセパレータ 46,163,168.電圧制御手段 47,157.第2の電極 48,81,91,101,158,175,194,197.光透過性基材 49.入射制御手段 50,106,176.白色光源 51,161.高空間分析能反射スペクトル測定手段 52,162.反射率スペクトル解析手段 53,76,163,174,208.緩衝液 54,164.照射光 55,87,99,109,165.反射光 56,166.光学系 57,167.検出系 58.孔 60.セル 70.電気泳動分析装置 71.電気泳動媒体 72.不導体壁 73,74,173,193,203.電極 75,171,191,198,201.容器 80,90,100.表面プラズモン共鳴センサ 82,92,157,182,192,199,211,212.金属膜 83,被分析物 84,160,196.光源 85,95,105.光ビーム 86.光学系 88.光検出手段 93,159.入射角変更機構 94,97,104.光学系 96.単色光源 98.撮像手段 103.コリメーター 107.走査ステージ付高空間分解能反射光スペクトル測定手段 108.光スペクトルアナライザー 150,170,190,200.時間分解水平型三次元電気泳動分析装置 156.第3の電極 169.短冊状電極パターン 172.三次元目の電気泳動用媒体 177.入射光 178.検出手段 179.光スペクトルアナライザー 180.高空間分析能光学系 180,195,205.電圧印加手段 183.観測点二次元走査手段 204.紫外線光源 206.紫外線強度分布測定手段 207.透過紫外線分布測定解析手段 210.セル

Claims (15)

  1. (1)被分析物について、第1の方向への第1の泳動用媒体による一次元目の泳動分離と、第1の方向の垂直方向に成分を有する方向である第2の方向への第2の泳動用媒体による二次元目の泳動分離を行うことによって、第2の泳動用媒体上に被分析物が二次元領域に亘り泳動分離されること、および
    (2)前記(1)の泳動により得られた二次元領域に亘る被分析物成分を、更なる泳動のために二次元領域に亘って第3の泳動用媒体に移動し、第3の泳動用媒体において前記被分析物成分が位置する二次元領域の面内方向に、二次元領域に亘って前記被分析物成分の三次元目の泳動を行うことを具備する電気泳動分析方法。
  2. 前記第1の泳動用媒体の泳動特性と、第2の泳動用媒体の泳動特性と、第3の泳動用媒体の泳動特性が互いに異なる請求項1に記載の電気泳動分析方法。
  3. 第1の泳動用媒体、第2の泳動用媒体および第3の泳動用媒体が、夫々に物質の電気的性質によって分離するための電気泳動用媒体、分子の大きさや形状の差によって分離するための電気泳動用媒体、および媒体との親和性の違いによって分離する電気泳動用媒体からなる群より選択される泳動用媒体である請求項1または2の何れか1項に記載の電気泳動分析方法。
  4. 第1の泳動用媒体、第2の泳動用媒体および第3の泳動用媒体が、夫々に等電点電気泳動用媒体、濾紙、セルロースアセテート膜、無担体電気泳動用薄膜、緩衝液、アガロースゲル、ポリアクリルアミド、レクチン固定化ゲル、および抗原固定化ゲルからなる群より選択される泳動用媒体である請求項1から3の何れか1項に記載の電気泳動分析方法。
  5. 前記(2)の泳動において複数の泳動経過時点における前記第3の泳動用媒体の二次元領域に泳動された被分析物成分の分布状態を検出し、当該複数の経過時点での被分析物成分の分布状態の違いから前記被分析物に含まれる各成分の第3の泳動用媒体中における泳動特性に関する情報を得ることを、更に具備する請求項1から4の何れか1項に記載の電気泳動分析方法。
  6. 前記泳動用媒体の二次元領域における泳動された被分析物成分の分布状態の検出が、当該泳動用媒体の表面において行われる請求項5に記載の電気泳動分析方法。
  7. 前記第3の泳動用媒体の二次元領域における泳動された被分析物成分の分布状態の検出が、第3の泳動用媒体の二次元の紫外線吸収率測定によって行われる請求項1から6の何れか1項に記載の電気泳動分析方法。
  8. 前記第3の泳動用媒体の二次元領域における泳動された被分析物成分の分布状態の検出が、表面プラズモン共鳴センサによって行われる請求項1から6の何れか1項に記載の電気泳動分析方法。
  9. 前記表面プラズモン共鳴センサが、前記第3の泳動用媒体の泳動面に対面する金属膜と、前記金属膜の他方の面に接し、光の入射および出射の可能な光透過性基材と、前記光透過性基材を介して前記金属膜に対して光を照射するための光源と、前記光源から照射されて前記金属膜で反射される光の反射率の入射角依存性を測定するための入射角変更手段と、前記照射される光に関する前記金属膜での反射光を検出するための検出手段とを具備する請求項8に記載の電気泳動分析方法。
  10. 前記表面プラズモン共鳴センサが、前記第3の泳動用媒体の泳動面に対面する金属膜と、前記金属膜の他方の面に接している光透過性基材と、前記光透過性基材を介して前記金属膜に対して光を照射するための光源と、前記金属膜における反射率の波長依存性を検出するための検出手段とを具備する請求項8に記載の電気泳動分析方法。
  11. 泳動部と表面プラズモン共鳴センサを具備する水平型三次元電気泳動分析装置であって、
    前記泳動部は、第1の電極と第2の電極を有し、前記二つの電極の間に、第1の方向への第1の泳動用媒体による一次元目の泳動分離と、第1の方向の垂直方向に成分を有する方向である第2の方向への第2の泳動用媒体による二次元目の泳動分離とを行うことによって二次元領域に亘り泳動分離された後の第2の泳動用媒体上の被分析物の成分を転移させた第3の泳動用媒体を配置するための空間を有するとともに、さらに前記第1の電極と前記第2の電極の間に電圧を印加して、前記第3の泳動用媒体中において被分析物の成分が二次元に展開されている前記二次元領域の面内方向に沿い且つ前記第2の電極に向って、前記二次元領域に亘る前記被分析物の成分が前記第3の泳動用媒体中を泳動するための電圧制御手段を具備し、
    前記表面プラズモン共鳴センサは金属膜を備えた光透過性基材を有し、且つ前記金属膜は前記第3の泳動用媒体の前記二次元領域に亘って対向し、前記光透過性基材を介して前記金属膜に対して光を照射するための光源、および前記光源から照射された光に関する前記金属膜における反射光を検出するための検出手段を具備することを特徴とする水平型三次元電気泳動分析装置。
  12. (1)前記第3の泳動用媒体とは泳動特性の異なる第2の泳動用媒体において、被分析物に関する二次元電気泳動を行うことと、
    (2)前記(1)によって泳動された前記被分析物に由来する成分を前記第2の泳動用媒体から前記第3の泳動用媒体に移動することと、
    (3)前記第3の泳動用媒体を、前記第3の泳動用媒体を配置するための空間に配置することと、
    (4)所望の時期に所望の回数で、前記第3の泳動用媒体に対面した導電極に向かう電気泳動を行った後で前記反射光の検出を行うことを含んで、当該第3の泳動用媒体における泳動を行うことと、
    を具備する請求項11に記載の水平型三次元電気泳動分析装置の使用方法。
  13. 更に、前記第3の泳動用媒体と表面プラズモン共鳴センサの感受部をなす金属膜との間に位置する第1のセパレータを具備する請求項11または12の何れか1項に記載の水平型三次元電気泳動分析装置。
  14. 前記金属膜は並列する複数の短冊状に形成されており、当該短冊状金属膜の長手方向は、前記泳動用媒体における泳動方向に直交する方向であることを特徴とする請求項11、12および13の何れか1項に記載の水平型三次元電気泳動分析装置。
  15. 前記短冊状金属膜の泳動方向の幅が1mm以下である請求項14に記載の水平型三次元電気泳動分析装置。
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