以下、図面を参照しながら本発明による投射型表示装置の実施例について詳細に説明する。図1〜図5は、本例の投射型表示装置の外観を示しており、図1は斜視図、図2は正面図、図3は左側面図、図4は右側面図、図5は底面図である。また図6は、本例の投射型表示装置の内部構造を示す平面図である。
ここで示す投射型表示装置1は、大きさがB5判サイズで厚さ50mm以下の小型・薄型で、かつ重量が約1.8kgの軽量化を実現したビデオプロジェクターである。
図6に示す如く、この投射型表示装置1は、外装キャビネット2の内部に、光源であるランプ28を収容したランプユニット29と、3色のライトバルブ44(R),44(G),44(B)及び投射レンズ49を備えた光学系ユニット30と、が組み込まれて構成され、ランプ28から出射された光を光学系ユニット30のライトバルブ44(R),44(G),44(B)に照射することで得られた映像を投射レンズ49によってスクリーンに投射して表示するものである。
先ずこの投射型表示装置1の外装構成について説明すると、この投射型表示装置1の外装キャビネット2は、光学系ユニット30等の内部部品が組み付けられるベースキャビネット3と、このベースキャビネット3を覆うように取り付けられるトップカバー4と、で構成されている。ここでベースキャビネット3は、マグネシウムやアルミニウムなどの金属を材料としたダイカスト製品あるいは硬質の樹脂を材料とした樹脂モールド成形品であり、外装キャビネット2の底部と左右の側面部及び前面部を構成するものである。一方、トップカバー4は、アルミニウム合金等の金属製の薄板板金を絞り成形して製作される板金加工品であって、外装キャビネット2の上面部及び後面部を構成するものである。このトップカバー4は、ベースキャビネット3に取り付けられた状態で、ベースキャビネット3の底面側から螺子18,19によって固定される。
図2に示すように、外装キャビネット2の前面部を構成する前面パネル3aには、透明の保護板20を介して投射レンズ49が表出されており、ここから映像光がスクリーンに向けて投射される。ここで透明の保護板20は、前面パネル3aと同一面に配置されており、この保護板20によって投射レンズ49が密閉保護されている。さらにこの保護板20の内側において投射レンズ49に近接する位置には、半透明部材21を介してオートフォーカス用の投射距離検出センサー24a,24bが設けられている。
ベースキャビネット3の左側面3bには、図3に示す如く、操作部6と端子部7が集中して配置されている。ここで操作部6は、電源スイッチ釦6a、入力信号切換釦6b、オートフォーカス切換釦6c、チルト調整釦6d、ズーム調整釦6e、フォーカス釦6fなどを有して構成され、また端子部7は、電源コード接続端子7aと映像信号入力端子7bを有して構成される。一方、これと反対側の右側面3cには、図4に示す如く、光源であるランプ28の熱を排出するための軸流ファン9の排気口(ルーバー)10が設けられている。
ベースキャビネット3の底面3dには、図5に示す如く、後部の左右に固定脚11が設けられていると共に、前部中央には伸縮脚12が設けられている。この伸縮脚12はベースキャビネット3から出没するように伸縮動作されるものであり、この伸縮脚12の動作によって装置の投射角度調整(チルト調整)が行なわれる。またベースキャビネット3の底面3dには、冷却手段のシロッコファン用の吸気部13と、多数の通気孔14が設けられており、さらには光源であるランプユニット29を交換するための開口を塞ぐ樹脂製のランプ蓋15が螺子16によって取り付けられている。このランプ蓋15には、ランプユニット29で発生する熱を排出するための多数の排熱孔17が設けられている。
上記の如き外装構成を有する本例の投射型表示装置1において、外装キャビネット2の上面部と後面部を構成するトップカバー4は、熱伝導性の高いアルミニウム合金等の金属を材料とする厚さ1mm程度の薄板板金を絞り成形して製作されるものであり、図7に示すように、このトップカバー4の裏面側には、ベースキャビネット3に螺子止めするための複数のボス部5が設けられている。
このボス部5は樹脂製であり、アウトサート成形によってトップカバー4の板金と一体に成形される。この場合、NMT(ナノモールドテクノロジー)製法により、板金の表面に微細な凹凸を設け、樹脂との鍵構造による結合性を持たせて成形固着する技術を採用することで、トップカバー4に対する複数のボス部5の固定強度を安価で確実に維持できる構造としてある。なお、このボス部5は、NMT製法に限ることなく、他にも例えば溶接や強力な接着剤によってもトップカバー4と一体の固定構造とすることができる。そして、このボス部5を有するトップカバー4は、これをベースキャビネット3に被せた状態で、その後側の端部を螺子18によってベースキャビネット3の底面3dに固定すると共に、ベースキャビネット3の底面3d側からボス部5に螺子19を締め付けて固定される。
このトップカバー4は板金製であるため、樹脂等に比べて強度及び放熱性に優れており、本例のような投射型表示装置1の外装キャビネット2に採用して好適で、内部温度の低減に効果がある。そして、この板金製のトップカバー4を採用したことにより本例の投射型表示装置1では、外装キャビネット2の上面部を極限まで薄く形成することが可能となり、これによって厚さ50mm以下の超薄型化の達成に大きく貢献できたものである。
さらに本例の投射型表示装置1は、携帯可搬性を向上させるため、前述した外装構成で明らかな如く、操作部6及び端子部7を外装キャビネット2の一側面(左側面)に集中して配置し、これと反対側の側面(右側面)にランプユニット29で発生する熱の排気口10を設け、前面パネル3aに表出される投射レンズ40の開口部49aと反対側の後面部には部品を一切配置せず、この部分を手で掴んで持ち易い構造としている。この外装キャビネット2の後面部は前述したように板金製のトップカバー4で構成されており、ここで特に本例の投射型表示装置1では、このトップカバー4の後面部4aの形状を、側面から見て横U字形の曲面形状に形成してある。
このように本例の投射型表示装置1は、50mm以下の厚み寸法と、トップカバー4の後面部4aをU字形の曲面形状とした構成により、図8に示す如くこれを片手でしっかりと掴むことができる。即ち、トップカバー4の後面部4aが一般的な角型形状である場合には、指先までの握り込みが浅くなるため、片手での掴み状態が不安定となるが、本例ではトップカバー4の後面部4aをU字形の曲面形状としたことで、人間工学的にも掌にフィットし、指先まで装置を握ることが可能となるため、片手でもしっかりと確実に掴むことができるものである。
この構成においてトップカバー4の後面部4aは、外装キャビネット2の厚さ寸法Tの約2分の1を半径Rとする円弧形状(R=1/2×T)に形成するのが好ましく、あるいは連続する放物円や楕円等の曲線形状に形成してもよい。これにより、手で持つ際に掌の形にピッタリとフィットする曲面形状を実現することができ、携帯可搬性が向上する。
このトップカバー4は板金の絞り成形で製作されるものであるため、容易に曲面形状を出すことができる。そしてこのトップカバー4は、その裏面側に樹脂製のボス部5を有し、このボス部5でベースキャビネット3側に螺子止めされる構造であるため、表面には何ら突出するものがなく、また上記の如く板金の絞り成形で製作されるため、樹脂成形品で見られるような金型分割線上のパーティングラインが発生することはないので、すっきりとした外観デザインの投射型表示装置を提供することができる。
図9及び図10は、前面パネル3aにおける投射レンズ49の表出部付近の構造を示している。ここで示す如く本例の装置では、投射レンズ49の前面側に、前面パネル3aと同一平面に嵌め込まれる透明の保護板20が配置されており、この保護板20によって投射レンズ49の前面側を密閉して投射レンズ49を保護するようにした構造を有している。
この保護板20は、透明な樹脂またはガラスで形成されており、その表裏両面にARコートを施すことで輝度効率の低下を1〜2%に抑えたものである。この保護板20を前面パネル3aに嵌め込み、トップカバー4とベースキャビネット3との間で挟む状態で取り付けてある。この保護板20の上下端面にはフランジ部20a,20bが形成されており、このフランジ部20a,20bが夫々トップカバー4とベースキャビネット3に係合して保護板20の脱落が防止される保持構造となっている。なお、この保護板20の左右両側に位置して前面パネル3aには、デザイン性を向上させるための飾り板22a,22bが装着されている。
さらに本例装置の内部において保護板20の内側には、保護板20より一回り大きい板状の半透明部材21が配置されている。この半透明部材21は前面パネル3aの内側に溶着固定されており、その中央部に投射レンズ49と対応する開口が設けられ、そこから投射レンズ49が表出されるようになっている。そしてこの半透明部材21の内側に、オートフォーカス用の投射距離検出センサー24a,24bを投射レンズ49に近接させて配置してある。この投射距離検出センサー24a,24bは、一方が赤外光の発光素子で、他方が受光素子であり、発光素子からスクリーンに向けて発光された赤外光の反射光を受光素子で受光することで投射距離を測定し、投射レンズ49のオートフォーカス調整や、煽り投射による台形歪の補正を自動的に行なうものである。
ここで半透明部材21には、可視光の透過率が10〜50%で、かつ投射距離検出用の赤外光の透過率が90%以上の半透明樹脂またはガラスが用いられる。これに最適な材料としては、例えば三菱レイヨン株式会社製のメタクリル樹脂成形材料「アクリペット(商標名)」を挙げることができる。このような半透明部材21を設けることにより、内部部品が外部より認識できなくなるため、投射距離検出センサー24a,24bを投射レンズ49に近接させて配置することが可能となっている。
上記の如く本例の投射型表示装置1は、投射レンズ49の前面側に、外装キャビネット2の前面パネル3aと同一平面に嵌め込まれる透明の保護板20を配置し、かつ、この透明の保護板20の内側に、投射レンズ49と対応する開口を有する半透明部材21を配置して、その内側にオートフォーカス用の投射距離検出センサー24a,24bを配置した構造により、表面にセンサー用の開口等のないシンプルな外観を実現している。
そしてこの構成では、外装キャビネット2の前面パネル3aに組み込まれる保護板20によって投射レンズ49が保護されるため、投射レンズ49に傷が付いたり異物が付着したりすることがなく、さらに保護板20は前面パネル3aと同一面に組み込まれているため、保護板20の周辺に埃が溜まるようなことはないので、埃等の付着による画像障害を低減することが可能となる。
またこの投射型表示装置においては、投射レンズ49の前面が保護板20によって密閉されるため、装置内部への埃等の侵入が完全に防止されると共に、装置内部を流れる冷却風の経路が安定し、冷却効率を向上させることができる。
またこの投射型表示装置では、保護板20の内側に半透明部材21を配置し、その内側に投射距離検出センサー24a,24bを配置した構造により、投射距離検出センサー24a,24bを投射レンズ49に近接させて配置することが可能となるので、装置内部におけるスペース効率が向上し、装置の小型薄型化に大きく貢献できるものである。
さらにこの構成において半透明部材21は、投射レンズ49と対応する開口の縁部に、投射レンズ49側に向けて突出するフランジ部21aを有している。このフランジ部21aを半透明部材21に設けたことにより本例の投射型表示装置では、装置内部におけるランプ28の光が不要な反射光(迷光)となって投射レンズ49の前面側に漏れることを確実に防止することができる。
またこの構成において保護板20は、トップカバー4とベースキャビネット3との間に挟まれる状態で組み込まれる構造であるため、この保護板20に傷が付いたり破損したような場合は、トップカバー4をベースキャビネット3から取り外すことにより、この保護板20を簡単に新しいものと交換することができる。
続いて、本例の投射型表示装置1の内部構造について説明する。図6に示す如く本例の投射型表示装置は、外装キャビネット2の内部に、光源であるランプ28を備えたランプユニット29、3つのライトバルブ44(R),44(G),44(B)及び投射レンズ49を備えた光学系ユニット30、上記ランプユニット29及び光学系ユニット30を冷却する冷却手段であるシロッコファン51,52と56,57及び軸流ファン9、ランプ28等に電力を供給するための電源回路ユニット25、信号処理回路ユニット26、操作部及び端子部ユニット27等が組み込まれて構成される。
ランプユニット29は、ユニットケースの内部にランプ28を組み込んで構成されるもので、ベースキャビネット3の底面3dのランプ蓋15を開けることによって交換可能となっている。光学系ユニット30は図11に示すように、フライアイレンズ31、偏光変換素子32、コンデンサーレンズ33、ダイクロイックミラー34,35、全反射ミラー36,37,38、リレーレンズ39,40、フィールドレンズ41,42,43、表示素子である液晶パネル45を備えた3つのライトバルブ44(R),44(G),44(B)、プリズム48、投射レンズ49等を有して構成されている。
この光学系ユニット30では、ランプ28で発光された偏りのない白色光が先ずフライアイレンズ31から偏光変換素子32を透過して直線偏光光に変換されると共にコンデンサーレンズ33で集光されて輝度むらのない均一の白色光が形成され、その輝度むらのない白色光がダイクロイックミラー34,35を経由して3つのライトバルブ44(R),44(G),44(B)に入射される。
その際、色分離手段であるダイクロイックミラー34,35によって白色光が赤色光(R)・緑色光(G)・青色光(B)に分離され、赤色光はリレーレンズ39、全反射ミラー36、リレーレンズ40、全反射ミラー37を介してフィールドレンズ41で集光されて、赤色用のライトバルブ44(R)に入射する。また、緑色光は、ダイクロイックミラー35からフィールドレンズ42で集光されて緑色用のライトバルブ44(G)に入射し、さらに青色光は、ダイクロイックミラー34から全反射ミラー38を介してフィールドレンズ43で集光されて青色用のライトバルブ44(B)に入射する。
3つのライトバルブ44(R),44(G),44(B)は夫々、液晶パネル45の入射側と出射側に偏光板46,47を有して構成され、入射側の偏光板46で各色光の偏光方向が揃えられて液晶パネル45に入射される。液晶パネル45は各色に対応して印加された映像信号により各色光を変調し、この3つの変調光が出射側の偏光板47を透過して偏光されて映像光となり、プリズム48に入射される。そして、プリズム48では各色の映像光が合成され、この合成された映像光が投射レンズ49によってスクリーンに投射されてフルカラーの映像が映し出されるものである。
上記の如く構成される投射光学系を備えた本例の投射型表示装置では、ランプユニット29、光学系ユニット30の偏光変換素子32やライトバルブ44(R),44(G),44(B)の付近、及び電源回路ユニット25において高い熱が発生するため、これらを強制的に冷却して動作保証温度以下に保持する必要がある。
この冷却構造について説明する。図6、図11及び図12に示すように、本例の投射型表示装置では、冷却手段として先ず第1及び第2のシロッコファン51及び52が組み込まれている。この第1及び第2のシロッコファン51及び52には同型の小型シロッコファンが用いられ、ここで第1のシロッコファン51は吸気口51aを上に向け、第2のシロッコファン52は吸気口52aを下に向けた状態で、これを上下に重ねるようにして光学系ユニット30の後方のスペースに配置してある。この場合、第1及び第2のシロッコファン51及び52は、装置内部での吸気口への吸気スペースを充分に確保した状態でベースキャビネット3に組み付けられ、その吸気は、ベースキャビネット3の底面3dに設けられた多数の通気孔14を通して行なわれる。
そしてこの構成において第1のシロッコファン51は、図12(A)に示す如くダクト53を介してランプユニット29及び光学系ユニット30の偏光変換素子の付近に送風して冷却を行ない、一方、第2のシロッコファン52は、同図(B)に示すようにダクト54を介して電源回路ユニット25に送風して冷却を行なう構造となっている。
このような冷却手段では、小型のシロッコファンを2つ用いることによって冷却風量を充分に確保することができると共に、このシロッコファン51と52を上下に重ねて配置することで装置内部での設置スペースが少なく抑えられるので、本例の投射型表示装置の小型薄型化構造に大きく貢献することができるものである。
そしてさらにこの冷却手段では、第1のシロッコファン51はランプユニット29及び光学系ユニット30に送風し、第2のシロッコファン52は電源回路ユニット25に送風する構成となっているため、装置内部での冷却風の流れが最適化されて効率的な冷却が行なわれる。なお、ここで第1のシロッコファン51と第2のシロッコファン52を逆の構成、すなわち第1のシロッコファン51は電源回路ユニット25に送風し、第2のシロッコファン52はランプユニット29及び光学系ユニット30に送風する構成としても、同様の冷却効果を得ることが可能である。
さらに冷却手段として本例の投射型表示装置では、投射レンズ49を挟んでその左右両側に第3及び第4のシロッコファン56及び57が配置されている。この第3及び第4のシロッコファン56及び57は投射レンズ49の左右のスペースを有効に利用して配置されたもので、ここで第3のシロッコファン56と第4のシロッコファン57は同一形状ではなく、左右対称形状に形成されており、夫々吸気口56a,57aを投射レンズ49側に向けた状態でベースキャビネット3に組み付けられている。この第3のシロッコファン56と第4のシロッコファン57の吸気は、投射レンズ49の下方においてベースキャビネット3の底面3dに設けられた防塵フィルター付きの吸気部13を通して行なわれる。
そしてこの構成において第3のシロッコファン56と第4のシロッコファン57は、夫々ベースキャビネット3の底部に沿って設けられた薄型のダクト58と59を介して光学系ユニット30のライトバルブ44(R),44(G),44(B)付近に送風して冷却を行なう構造となっている。
このように第3のシロッコファン56と第4のシロッコファン57によって光学系ユニット30のライトバルブ44(R),44(G),44(B)付近の冷却を行なう構成としたことにより、装置内部での冷却風の流れがさらに最適化され、より効率的な冷却が行なわれることになる。
この場合、特にこの冷却手段では、左右対称形状のシロッコファン56,57を配置することにより、冷却効率をさらに向上させることが可能となっている。すなわち、この左右のシロッコファン56,57に同一形状のものを使用すると、左右のシロッコファンを反転して配置することになるので夫々の送風口が上下逆の位置となり、このため複雑な経路のダクトが必要となってダクト内での圧力損失による風量低下が発生する問題があるが、本例の冷却手段では左右のシロッコファン56,57に左右対称形状のものを用いることより、ベースキャビネット3の底部に沿った単純な経路の薄型ダクト58,59を使用できるので、シロッコファン56,57の送風口からの風を抵抗なく光学系ユニット30に導くことが可能となり、冷却効率が著しく向上するものである。
またこの構成においては、投射レンズ49の左右に配置されたシロッコファン56,57の吸気は投射レンズ49の下方においてベースキャビネット3の底面3dに設けられた防塵フィルター付きの吸気部13を通して行なわれる構造であるため、この吸気部13の防塵フィルターによって塵埃等の吸い込みが防止されるので、投射レンズ49及び光学系ユニット30を塵埃等から確実に保護することができる。
さらに本例の投射型表示装置では、特に発熱量が大きいランプユニット29の周辺の冷却効率を向上させるために、ベースキャビネット3の右側面3dの内側においてランプユニット29の近傍に位置する2つの軸流ファン9を並設し、ランプユニット28から発生する熱気をこの軸流ファン9によって排気口10から排出するようにしている。
また特に本例の投射型表示装置のように、厚さ50mm以下の薄型化と携帯可搬性を実現するためには、ランプユニット29とトップカバー4との間の空間を最小限にしながら、発熱量が大きいランプユニット29の近くのトップカバー4において、これを手で持つことのできる温度を達成しなければならない。そのため本例の投射型表示装置においては、ランプユニット29とトップカバー4との間の空間に、空気よりも熱伝導性が高い高熱伝導性の板金部品であるランププレート61を配置することで、トップカバー4の温度低減を可能としている。
図13に示す如くこのランププレート61は、ランプユニット29の上方を大きく覆うように設置される板金部品あり、このランププレート61を形成する高熱伝導性材料の熱拡散効果により、ランプユニット29からトップカバー4までの距離を最小限にした構成でトップカバー4の温度低減を可能とするものである。さらにこのランププレート29の上面側には、空気よりも熱伝導性が低い低熱伝導性の断熱シート62がほぼ全面にわたって貼り付けられており、この断熱シート62の断熱効果によってトップカバー4のさらなる温度低減を可能としている。この構成において、ランププレート61の材料には、例えば純アルミニウム(JIS規格A1000系)や銅などの高熱伝導性金属が用いられ、また断熱シート62には例えば真空断熱材が好適に用いられる。
この構成においてトップカバー4の温度を、手で掴んでも問題のない40〜50℃に抑えたい場合、断熱シート62としては熱伝導率0.0044W/mK、厚さ1.5mm程度のものを使用し、ランププレート61の温度は約70〜80℃に抑える必要がある。この温度を達成するためにランププレート61は高耐熱性かつ高熱伝導率を有する材料を使用し、ランプ28から受熱した熱量を面方向に効率的に拡散させて放熱するようにしている。ここでランプ28に例えば165Wクラスの超高圧水銀ランプを使用した場合、ランププレート61に純アルミニウムなどの熱伝導率200W/mK程度の材料を使用すれば、9000mm2の放熱面積でランププレート61の温度を80℃程度とすることができ、また銅などの熱伝導率400W/mK程度の材料を使用した場合には、放熱面積が6000mm2程度でランププレート61の温度を80℃以下にすることができる。
このように本例の投射型表示装置は、ランプユニット29とトップカバー4との間に配置したランププレート61による熱拡散効果と、断熱シート62による断熱効果により、ランプユニット29とトップカバー4との間の空間を最小限にした薄型化構造を実現しながら、トップカバー4の温度低減を達成したものである。
この構成での配置は、ランプユニット29、ランププレート61、断熱シート62、トップカバー4の順であり、ここでは断熱シート62とランプユニット29の間に高熱伝導材料のランププレート61が配置されているので、断熱シート62には比較的耐熱温度の低い低熱伝導材料を使用することができる。この場合、ランププレート61に高耐熱性材料である金属を使用することで、ランプユニット29付近の高温状況下でも問題なく対応することが可能である。
またこの構成においてランププレート61は、高熱伝導率であることに加えて高反射率の板金部品を用いることが好ましい。すなわち、このような高反射率のランププレート61を採用することにより、ランプ28からの直接光や輻射熱による受熱を最小限に抑えることができるので、トップカバー4の温度低減を図る上でさらに有効である。
さらにこの構成においてランププレート61は、装置内部での冷却風の流速が比較的高い軸流ファン9の近くの空間に放熱面が臨むように配置されており、これによって高い効率での放熱を可能としている。すなわち、装置内部における軸流ファン9付近の空間は、軸流ファン9の排気力によって冷却風Wの流れが1〜1.5m/s程度と比較的速く、その空間に放熱面が臨むようにランププレート61を配置することにより、ランプ28から受熱した熱量を冷却風によって効率的に拡散させることができるので、より高い効率での放熱が可能となり、トップカバー4の温度低減に大きく貢献できるものである。
またこの構成においてランプユニット29は、内側に反射板(リフレクター)を有するユニットケース29aの内部にランプ28を収納して構成されているが、ここで特に本例の投射型表示装置では、ユニットケース29aの上面を開放した形状とし、その開放面を覆うようにランププレート61を近接配置して反射板を兼ねる構成としてある。このような構成とすることにより、ランプ28とランププレート61との間の距離を最小限にできるので、装置の薄型化を図る上でさらに有利な構造となっている。
さらにランプユニット29の周辺の放熱構造として本例の投射型表示装置では、ランプユニット29を交換するためのランプ蓋15の構造に特徴を持たせてある。このランプ蓋15の構造を図14〜図16で説明する。図14は、ランプ蓋を外した状態のベースキャビネット3の底面を示しており、このようにランプ蓋を外した状態でベースキャビネット3の底面3dには、ランプユニット29を収納する収納部64の開口65が表出され、この開口65からランプユニット29を交換できるようになっている。
この開口65を塞ぐ樹脂製のランプ蓋15は、開口65の周囲の取り付け凹部66に嵌め込まれる状態で螺子によってベースキャビネット3に取り付けられるものであり、その大きさは、開口65の2倍以上の大きな面積に形成されている。さらに図15に示す如く、このランプ蓋15の裏面側には、ランプ蓋15よりやや小さい面積の金属製の輻射熱遮蔽板67が配置されており、これが1mm程度の所要空隙を設けてランプ蓋15に装着されている。この輻射熱遮蔽板67には、ランプ蓋15よりも熱反射率の高い金属(例えばアルミニウム、ステンレス等)の薄板が用いられる。
そしてこのランプ蓋15をベースキャビネット3に取り付けた状態では、図16に示すように、ランプ蓋15は、裏面側の輻射熱遮蔽板67がその2分の1以上の面積でベースキャビネット3の取り付け凹部66に対し面接触する状態で取り付けられる。
このように本例の投射型表示装置では、ランプユニットの収納部64の開口65を塞ぐランプ蓋15の裏面側に金属製の輻射熱遮蔽板67を設けたことにより、この輻射熱遮蔽板67がランプユニット29からの熱に対する緩衝材として働き、しかもこの輻射熱遮蔽板67とランプ蓋15との間には空隙を有するため、輻射熱遮蔽板67からランプ蓋15に熱が伝わりにくいので、ランプ蓋15の温度上昇を効果的に抑制することができる。
そしてさらにこの構成においてランプ蓋15は、裏面側の輻射熱遮蔽板67がベースキャビネット3に対し面接触する状態で取り付けられるため、ランプユニット29から受ける熱を輻射熱遮蔽板67からベースキャビネット3に伝達して放熱することができる。この場合、特に本例の構成では、ランプ蓋15を開口65の2倍以上の大きさに形成し、輻射熱遮蔽板67をその2分の1以上の面積でベースキャビネット3に面接触させる構造としたことで、より効率的な放熱効果が得られ、その結果、ランプ蓋15とベースキャビネット3の表面温度が均一化し、装置の内部温度の安定化を図ることができる。
また、図15に示す如く輻射熱遮蔽板67には、多数の排熱孔68が形成されている。この輻射熱遮蔽板67の排熱孔68は、ランプ蓋15の排熱孔17と対応する位置に形成されており、これらの排熱孔17,68で通気性を確保し、これによって装置内部での熱の篭りを防止してより効果的な放熱を可能としている。
上記のような放熱構造により本例の投射型表示装置では、実験の結果、ランプ蓋の表面温度が4℃程度低減されることが確認された。
なお、この構成においてベースキャビネット3は、所要の強度を有する上に軽量でかつ放熱性に優れた金属、例えばマグネシウム、アルミニウム、チタンや、あるいはこれらの金属を一部含んだ合金で形成することが好ましく、これによって本例の投射型表示装置は、上記のような放熱効果を維持しながら小型軽量化を実現できるものである。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこの実施例の構成に限定されることなく、他にも種々に実施形態を採り得るものであることは言うまでもない。
1…投射型表示装置、2…外装キャビネット、3a…前面パネル、20…保護板、21…半透明部材、21a…フランジ部、24a,24b…投射距離検出センサー、28…ランプ(光源)、29…ランプユニット、30…光学系ユニット、44…ライトバルブ、49…投射レンズ