JP4461358B2 - 殺菌方法 - Google Patents

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Description

本発明は、殺菌手段によって変性する成分を含有する物質の殺菌方法に関し、特にコーヒー豆、ココア豆、麦茶の原料麦、緑茶等焙煎や蒸煮により殺菌が行われるとともにその成分が変性する食品の殺菌程度の管理方法に関するものである。
容器入りコーヒーの製造方法として無菌抽出飲料製造システムを利用する方法が考案されている。このシステムは、原料となるコーヒー生豆を焙煎熱により殺菌し、無菌空間において無菌水で抽出後、予め熱交器等で殺菌した牛乳や糖と混合して充填密封する。この方法により製造した容器入りコーヒーは抽出後の加熱による劣化がなく品質の高い製品が得られる。
このようにして無菌の原料を混合するコーヒーを製品化するにあたっては、システムの無菌状態の保証とともに、殺菌方法である焙煎によりコーヒー豆が充分に無菌化され、製品が商業的に安全であることを立証する必要がある。
通常、加熱による殺菌では、その殺菌対象物にかかるもっとも少ない加熱量の温度履歴を管理することにより、殺菌の安全性を保証している。しかし、焙煎による殺菌の度合いを測定するためにコーヒー豆の温度を測定しようとしても、焙煎中のコーヒー豆の温度を測定することは実際には極めて困難である。すなわち、焙煎中のコーヒー豆は常に撹拌混合されているので、無線式や記憶式の温度測定法では200℃を超える高温での耐熱性と撹拌への追随性を満たすことができない。また、非接触式または表面温度測定式の温度測定法もあるが、これらの方法はいずれも特定の方向からの測定であるので、個々の豆の熱履歴を追跡することができず、豆の内部温度の測定もできない。
また、コーヒー豆の温度を測定するかわりに、豆の最遅速加熱点に耐熱性が判明している細菌を所定数埋め込み、生残菌数を測定する植菌テスト法や、豆に似せた物体に細菌を入れて同様に生残菌数を測定するシミュレーター法も考えられるが、いずれの方法も菌を培養して菌数を測定しなければならないので、結果が出るまでに時間を要するだけでなく、培養した菌と野生菌との耐熱性の差異を処理できず、どの程度の殺菌価をどこに設定すれば安全かという基準を設定することが困難である。このように従来の各種測定方法では、焙煎によりコーヒー豆が充分に無菌化され、製品が商業的に安全であることを立証することができない。この問題は容器入りコーヒーのみならず、容器入りココアや麦茶等無菌抽出飲料製造システムを利用して原料を焙煎して殺菌する方法を使用する他の飲料にも当てはまることである。
特許文献1には粒状固形食品用の殺菌値モニター方法が開示されているが、この方法は無菌米飯等を加圧蒸煮釜で殺菌、調理する場合に適用されるものであって、コーヒー豆の焙煎に適用することはできない。
特開平9−187260号公報
本発明は、無菌抽出飲料製造システムを利用して容器入りコーヒーを製造する場合等に生じる上記問題点に鑑みなされたものであって、殺菌対象物の殺菌の度合いが従来の測定方法では測定することが困難であり製品の安全性について保証することが困難な場合に、殺菌対象物の殺菌の度合いを確認することが容易にでき製品の安全を保障することができる殺菌方法を提供することを目的とする。
本発明のより具体的な目的は、無菌抽出飲料製造システムを利用して原料を焙煎して殺菌する容器入り飲料等の製造方法において、殺菌を兼ねた焙煎により焙煎対象物が充分に無菌化され、製品が商業的に安全であることを立証することができる殺菌方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の殺菌方法は、殺菌対象物の加熱変性量から計算される最小殺菌価温度曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えるよう殺菌条件を定めることを特徴とする。
本発明の一側面においては、殺菌方法が焙煎であることを特徴とする。
本発明の他の側面においては、殺菌対象物がコーヒーであることを特徴とする。
上記本発明の具体的な目的を達成する殺菌方法は、焙煎対象物を焙煎することにより殺菌を行う殺菌方法において、少なくとも焙煎時間と焙煎度を含み、焙煎機の温度記録等を参照して焙煎度等価の温度履歴曲線を作成する一方、殺菌対象菌の死滅速度式に基づき殺菌価を計算し、最小殺菌価となる温度履歴曲線を選択してこの曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えているか否かを判定し、この曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えているとき焙煎条件を決定することを特徴とするものである。
従来の測定方法では測定できなかった加熱殺菌対象物の殺菌程度の最低値を決定することができ、これによって製品の安全性を保証することができる。
以下添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
缶詰を中心とした加熱殺菌の長い歴史に基づく経験則として、Clostridium botulinumについては12D以上の、また、一般腐敗細菌であるBacillus subtilis等では、6D以上の殺菌効果があれば、食品としての安全性が確保されることが知られている。
一方、コーヒー液の抽出に適する状態まで、焙煎されたコーヒー豆は、200℃を越える高い温度で加熱され、乾熱滅菌できているものと想像されているが、焙煎中の実際の豆の温度を測定した事例は見あたらない。これは、焙煎中は、豆が常に攪拌されているために、その豆に追随する温度センサーが必要であるが、200℃を越える温度条件と、豆の攪拌を阻害しない無線または有線の温度測定システムが存在しないからである。また、豆の焙煎度は、豆そのものから測定できるが、その焙煎度に至るまでに受けた温度時間曲線の履歴は確定することができない。焙煎度の測定方法としては、表面や断面、あるいは粉末にしたものの色を直接カラーメーターで測定する方法以外に、抽出液として、特定波長の吸光度や透過度、あるいは、複数の特定波長の比や差を測定する方法がある。その焙煎度を実現すると推定される温度時間曲線は無数に推定することができ、数学的には焙煎度から温度時間曲線を計算することは不定であると見なされる。また、不定の温度時間曲線は、既知の条件を拘束条件に加えることにより範囲を限定していくことができるが、特定の一つの曲線に絞り込むことは不可能である。しかし、限定された範囲で推定された複数の温度時間曲線に基づいて、殺菌価を計算することは可能である。従って、推定された多くの温度時間曲線の殺菌価を比較して、最も少ない殺菌価の温度時間曲線を選び出すことができる。また、特定の条件であれば、理論的に殺菌価が最低となる温度時間曲線のパターンを求めることも不可能ではない。
このようにして求められた最低殺菌価と必要とされる所定の殺菌効果とを比較し、殺菌価が上回っていれば、他の温度時間曲線をたどっていた可能性があったとしても、少なくとも必要以上の殺菌価は確保されているのであるから、殺菌面での安全性は保証できる。このような方法で殺菌条件を満たしているかを判定した加熱条件で処理された製品は安全であると保証される。
微生物の殺菌効果、すなわち死滅量や殺菌価は、一定温度の加熱における死滅速度と、加熱温度が変化した場合の死滅速度の温度依存性により説明される積分値として表される。同様に、加熱変性量である焙煎度は、一定温度の場合の焙煎度の変化速度と、温度が変わった場合の変化速度の温度依存性により説明される積分値として表現される。通常、両者共にアレニウス則に従う一次反応として処理できるケースが多い。また、これが別の反応であっても、殺菌価や焙煎度を計算する上での妨げになるものではなく、計算量の増加をもたらすだけで、計算不可能になるわけではない。
結果としての焙煎度から、その焙煎度を満たす温度履歴曲線を求めるには次のような方法を用いる。初期の温度パターンとして、直線やサイン・コサイン曲線の最小値から最大値までのπ相当範囲、また、雰囲気温度と品温との差の対数値が直線となるケースを想定する。直線の場合、傾きと最初の温度、時間によって規定される。時間は焙煎時間として容易に測定されることから、最も単純な拘束条件として最初から含められる。
焙煎度は、積分値であるが、数値計算としては各微小時間の温度を平均して、その間に進む褐変量の累積値として求められる。これが温度時間曲線から焙煎度を求めることはできるが、焙煎度から温度時間曲線を求めることができない理由である。従って、適当に仮定した温度時間曲線から、焙煎度を計算し、合わせたい焙煎度との差異を考慮して、仮定の条件を修正しながら、求める値に近づけ、所定の誤差範囲内に収まれば、その曲線が焙煎度を満たしているものと判定する。このようにして、同じ焙煎度であっても、様々な想定されるパターンの曲線を生成することができる。
一方、殺菌価はこれらの異なる温度時間曲線からは、致死率と時間の積分値として容易に計算できる。これらの殺菌価を比較することも、また、容易であるから、最も小さい殺菌価を示す温度時間曲線を見いだすことができる。この値が最小殺菌価であるから、これと必要とされる殺菌価とを比較することにより、殺菌に関する安全性保証の可否が判断できる。その値が必要な値を上回っていれば、その焙煎条件を殺菌条件として採用する。
本発明は、殺菌対象物の加熱変性量から計算される最小殺菌価温度曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えるよう殺菌条件を定めるものである。ここで、加熱変性量とは、殺菌対象物中加熱によって変性する成分が加熱によって変性して生成した物質の量を意味する。以下本発明を無菌抽出飲料製造システムを使用してコーヒーを焙煎により殺菌し容器入りコーヒーを製造する場合に適用した実施形態について説明する。
本実施形態においては、焙煎によりコーヒー豆が褐変することに着目し、コーヒー豆の褐変による褐色色素の生成量を加熱変性量として捉え、この量に基づき褐変の反応速度式を求め、この反応速度式を用いて焙煎時間、焙煎度および焙煎機の温度記録により焙煎度等価の温度履歴曲線を作成する一方殺菌対象菌の死滅速度式に基づき殺菌価を計算し、最小殺菌価となる温度履歴曲線を選択してこの曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えているか否かを判定し、この曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えているとき該温度履歴曲線に基づき焙煎条件を決定する。以下その具体的な手順につき、実験結果を踏まえて詳細に説明する。
Biological Indicatorの作成
指標菌B.stearothermophilus IAM11062保存株をSCD培地(タイゴ製薬:ポリペプトン17g/L、ポリペプトンS3g/L、CaHPO2.5g/L、ブドウ糖2.5g/L、NaCl 5g/L)10mlの入った試験管2本に白金耳で摂取し、55℃で48時間振とう培養を行った。培養液100μlを寒天平板培地(日本製薬:ポリペプトン 5g/L、極東製薬:肉エキス3g/L、MnSo・4HO 10mg/L、寒天15g/L、pH7.0)にコンラージ棒で塗布し、55℃で25日間培養して芽胞を形成させた。芽胞は無菌水に懸濁し、5℃で5000rpm20分間遠心分離した後上清を捨て、沈殿を再び無菌水に懸濁するという洗浄を3回行った。最終的に30mlの芽胞懸濁液を得た。芽胞懸濁液は85℃で15分間加熱処理した後−20℃で冷凍保存した。また希釈した芽胞懸濁液1mlをフイルム培地(一般細菌生菌数測定用ペトリフイルム、3M)に供し、55℃で48時間培養して測定したところ、その濃度は1.8×10芽胞/mlであった。
芽胞懸濁液を1/10に希釈して得られた希釈懸濁液100μlを、予め滅菌した2cm×1cmの濾紙(No.590クロマトグラフイー用、ADVANTEC)に染み込ませた後乾燥させ、予め滅菌したアルホイルで包んで常温冷暗所に保存した。
耐熱性の測定
Biological Indicator(以下「B.I.」と略する)を電気オーブンにて90℃15分間予備加熱した後131℃、140℃、152℃、162℃でそれぞれ加熱し、所定時間後に取出した。10mlの無菌水および直径3mmのガラスビース15個が入った試験管にB.I.を入れ、濾紙の繊維がほぐれるまでボルテックスで1分間振とうさせた後、所定濃度まで希釈して1mlをベトリフイルムに供し、55℃24時間培養して生菌数を測定した。比較として未加熱処理B.I.の生菌数を測定した。
コーヒー豆の加熱処理
コーヒー豆は2002年度ガテマラ・アンテイグアを使用した。生豆を電気オーブンで140℃、160℃、180℃、200℃、220℃でそれぞれ加熱し所定時間後に3個ずつ取出した。この時、豆の表面と中心部に熱電対を接着し加熱中の温度を測定した。
サンプル豆の調整
コーヒー豆の焙煎度は褐変程度で表し、生豆と焙煎豆との色差ΔEを指標とした。ΔE測定点の決定は、生豆、浅煎り豆、深煎り豆をエポキシ樹脂に埋包した後、コーヒー豆の長手方向に対して垂直面が出るようにミクロトーム(2050SUPERCUT、(株)フアインテック)で切断し、コーヒー豆末端から0.5mm間隔おきの切断面を出して行った。加熱褐変程度の測定は、加熱処理した豆をエポキシ樹脂に埋包した後、コーヒー豆の長手方向に対して垂直面が出るようにミクロトームで切断しコーヒー豆の中心切断面を出して行った。
コーヒー豆切断面の撮影
コーヒー豆切断面の撮影をデジタルカメラ(COOLPIX995, NIKON)を使用して行った。画像は色情報が省略されないTIFF-RGB形式で保存した。撮影するコーヒー豆切断面を同一平面に標準板(X20.403,Y17.879,Z3.163)を固定し、暗条件・一定光線の下で、絞り、シャッタースピードを調整しながらコーヒー豆切断面と標準板を同時に撮影した。標準板には厚さ2mmの市販ベークライトを用いた。
撮影画像のデータ解析
撮影された画像の各画素には、RGBの各値が8ビットずつ0から255までの値で収められている。画像データの色彩解析は、各ピクセルの座標とその色情報を読み出せる画像処理ソフトを用いて行った。この実験ではImage Pro Plus (Media Cybemetics Inc.製)を用いてsRGB色空間に表された色情報を得た。画像データをImage Pro Plusに取り込み、コーヒー豆が1マス0.25mm四方となるように画像上で分画して各画分のsRGB平均値を求めた。sR、sG、sBの値から
R’=sR/255
G’=sG/255
B’=sB/255
をガンマ変換して
R=R’2.2
G=G’2.2
B=B’2.2
を求めた。ITU−Recommendations BT 709-5:2002, Parameter values for the HDTV* standards for production and international programme exchangeに基づき、
X=(0.4124R+0.3576G+0.1805B)×100
Y=(0.2126R+0.7152G+0.0722B)×100
Z=(0.0193R+0.1192G+0.9504B)×100
から
L=116(Y/Yn)1/3−16
=500{(X/Xn)1/3−(Y/Yn)1/3
=200{(Y/Yn)1/3−(Z/Zn)1/3
(ただしXn=95.05、Yn=100、Zn=108.9とした。)を求めた。
また標準板のL値を色差計で測定し、L絶対値とした。標準板のL計算値との差からコーヒー豆測定画分のL計算値を補正した。生豆と焙煎豆の3次元的に対応する2マスの平均L補正値から、ΔEを次の式により求めた。
ΔE={(L −L +(a −a +(b −b 1/2
(ただし添字のGは生豆を、Rは焙煎豆を表す)
菌死滅速度の温度依存性
各温度におけるB.stearothermophilus IAM11062の乾熱時生残曲線を最小自乗法により求めた。その結果を図4に示す。得られたD値と乾熱時加熱温度との関係を最小自乗法により求めた。その結果を図5に示す。B.stearothermophilus IAM11062の死滅速度の温度依存性はアレニウス則に従い、その反応速度式は
LogD =6.6285×(10/T)−14.776 (式1)
で示された。従来の殺菌に用いられているZ値は160℃近傍で26.6℃であった。
コーヒー豆における褐変程度ΔEの測定箇所の決定
焙煎豆0.5mm間隔切断面の測定点を豆の外周A1〜A8,内周C1〜C7、その中間B1〜B8に設定し、生豆とのΔEをそれぞれ求めた結果、浅煎り豆、深煎り豆とも切断面の中心に近い測定点A1、A8、B1、B2、B5、C1、C5でΔEが小さいことがわかった(図6)。また特に中心付近の切断面でこれらの測定点のΔEが小さくなる傾向が確認されたことから、コーヒー豆の3次元中心点は焙煎時の加熱速度が最も小さいことがわかった。したがって、焙煎豆の中心切断面の測定点C1をΔEの測定箇所に決定した。
加熱による褐変程度
各加熱温度において生豆とのΔEを測定した。その結果を図7に示す。測定の結果、加熱によって褐変程度は大きくなり、高温で加熱するほど褐変速度が速いことがわかった。また各加熱温度において、加熱時間が長くなるにつれ褐変速度は遅くなり、ΔEに飽和値があることが示唆された。加熱温度が高いほどΔEの飽和値は大きくなることが示された。各焙煎温度において、加熱時間が長くなるほどΔE増加の速度が減少することから、褐変前駆物質の存在を定義したとき、その消費速度は一次反応に従うことが示唆された。220℃で20分加熱した時ΔE=49.0であったが、油がしみ出すほどの深煎りで豆は非常によく膨らみサンプリング直後の香りは焦げ臭が強かった。
焙煎による殺菌保証に関する理論化
焙煎熱によってコーヒー豆の焙煎と殺菌の両方が行われるが、褐変速度と菌死滅速度の温度依存性の違いにより、焙煎度から直接的に菌の死滅速度を求めることは不可能である。また焙煎中にコーヒー豆中心部の温度を求めることも現実的ではない。したがって、本発明においては、焙煎度から熱履歴を測定し、得られた熱履歴から殺菌価を演算する手順で最低殺菌レベルを保証する方法を採用した。以下その理論的根拠を示す。
コーヒー豆の褐変反応
コーヒー豆の褐変は褐色色素が形成されることで進むが、褐色色素の性質や構造、生成経路に関する化学反応機構の詳細は未解明である。中林は焙煎豆の熱水抽出液をセフアデックスG−25カラムにかけ蒸留水で展開し、分子量の大きい方から黒褐色色素A、赤褐色色素B、黄褐色色素Cを得た。そしてクロロゲン酸による褐色色素の形成反応を中心に、カラメル化とメイラード反応を併せて焙煎豆の褐色色素の推定形成経路を図8に示すようにまとめている(中林敏郎他「コーヒー焙煎の化学と技術」1995、弘学出版株式会社、pp68−81)。ここで褐色色素A、B、Cはいずれも分子量が近似した多数の異なった成分の混合である。コーヒー豆の褐変反応において、褐変程度ΔEは褐色色素の蓄積量、即ち褐色色素A、B、Cの生成量の和と考えられる。これらの褐色色素はアミノ酸、ショ糖、クロロゲン酸を褐変前駆物質として複雑な反応経路を経て生成される。
褐変速度
「褐変反応」としてコーヒー褐変色素の形成反応全体を捉えた場合、その反応は一次反応として扱えると想定できる。褐変前駆物質残存量をΔE飽和値から褐色色素A、B、C生成量の和を減じた値と定義する時、褐変前駆物質消費速度は一次反応でアレニウス則に従うと仮定してこの仮定の検証を行い、褐変速度を求めた。
ここで140℃加熱を例に挙げる。ΔE飽和度ΔEmax140を仮定した時仮定
ΔEmax140と各加熱時間nにおけるΔE値ΔEとの差は、褐変前駆物質残存率Sr%の値を表わしている(図9)。このようにいくつか仮定したΔEmax140に対して各加熱時間における褐変前駆物質残存率Srを求めた(図10)。各仮定値について最小自乗法により褐変前駆物質消費曲線を求め、この中で最も高い直線性を示した仮定値32をΔEmax140と決定した。得られた曲線は140℃加熱における褐変前駆物質曲線を示している。同様にして各加熱温度Tにおいて仮定ΔEmaxγを最適化し、褐変前駆物質消費曲線を得た(図11)。
また、各加熱温度Tにおいて使用不可能な褐変前駆物質量SuγはΔEb=65.19として
Suγ=ΔEb−ΔEmaxγ (式2)
ΔEb:コーヒー豆を限りなく褐変させた時取り得る最大褐変程度
ΔEmaxγ:各加熱温度TにおけるΔE飽和値
より求められる。加熱温度との関係は
Log Su=−0.0047×T+3.3926 (式3)
で示された(図12)。
褐変前駆物質消費曲線の傾きは褐変前駆物質消費速度Vsを表わしており、加熱温度との関係から褐変前駆物質消費速度曲線が得られる(図13)。褐変前駆物質消費速度Vsの温度依存性は低温域でアレニウス則に従い、その反応方程式は、
Log |Vs|= −3.2013×(103/T)+5.8448 (式4)
で示された。褐変前駆物質消費速度Vsを1/10にする温度Zsは焙煎温度180℃近傍で59.6℃であった。高温域の褐変前駆物質消費速度Vsが式4から求めた値よりも小さいのは、コーヒー豆周辺から豆中心部への伝熱の遅れによるものと考えられる。以上より、コーヒー豆の褐変反応はアレニウス則に従って扱えることがわかった。
最小殺菌レベルの保証
与えられた焙煎豆の最低殺菌レベルを求めることで、焙煎による乾熱滅菌を保証する方法について検討した。ある焙煎豆熱履歴は焙煎時間、焙煎度、焙煎機の温度記録が既知の項目である。数学的には、これらの情報からコーヒー豆の褐変の反応速度式を用いて焙煎度等価な温度履歴曲線が無数に作成できる。それらのうち代表的なものについて指標菌の乾熱時死滅速度式より殺菌価を求め、最小殺菌価となる温度履歴曲線を特定した。最小殺菌価をもって所定殺菌価到達の判断を行い、最低殺菌レベルを保証した。方法を以下に示す。
ここで、ある焙煎豆が焙煎時間30分で焙煎度がΔE=45.0であったとする。n分後の焙煎温度Tを仮定した時Tにおける褐変前駆物質消費速度Vsは、式4のTにTを、VsにVsを代入して求められる。n分後の褐変前駆物質残存率SrはSr=100としたとき
Sr=Srnー1×Srt (式5)
LogSrt=Vs×t (式6)
Srt:微小時間t分間に減少する褐変前駆物質残存率(%)
より求められる。この時n分後の褐変前駆物質残存量Scは
Sc=ΔEmax×Sr (式7)
により求められる。ここでΔEmaxは式2、3より求めたΔEmax240=55.6とした。これは、現実的な焙煎温度履歴において最終的にコーヒー豆の中心温度は240℃に達していると予想できるためである。n分後のΔE
ΔE=k(Sc−Sc) (式8)
により求められる。式8において、kは任意の定数であり、ここでは相対速度を取り扱っているので、1として差し支えない。仮定した焙煎温度を変化させてΔE30=45.0となるような温度履歴を逆算した。その結果を表1に示す。


表1 焙煎温度履歴の推定例

焙煎時間 焙煎温度 褐変前駆物質 褐変前駆物質 褐変前駆物質 焙煎度ΔE
(分) (℃) 消費速度Vs 残存率Sr(%) 残存量Sc
0 25.00 −1,27x10-5 100.0000 55.6000 0
0.1 25.61 −1,33x10-5 99.9997 55.5998 0.000170
0.2 26.22 −1,40x10-5 99.9994 55.5997 0.000350
0.3 26.83 −1,47x10-5 99.9990 55.5995 0.000538
: : : : : :
20.0 147.1 −1.78 87.0605 48.4056 7.19
20.1 147.7 −1.76 86.7161 48.2141 7.39
20.2 148.3 −1.75 86.3642 48.0185 7.58
: : : : : :
29.8 207.0 −0.150 80.4682 11.3803 44.2
29.9 207.6 −0.153 19.7618 10.9876 44.6
30.0 208.2 −0.156 19.0667 10.6011 45.0
逆算した温度履歴から、式1を用いて各温度におけるD値を算出し、殺菌価を求めた。温度履歴が図14のような一次曲線に従う場合、30分間の焙煎により殺菌価は23.94Dとなる。同様にして、焙煎時間30分で焙煎度がΔE=45.0となるような温度履歴曲線をいくつか推定し、それぞれ殺菌価を算出して比較した(図15)。その結果、殺菌価が最小となる温度履歴曲線は、
T=a (式9)
a:焙煎温度定数(焙煎時間30分、ΔE=45.0のときa=155.9)
で示されることがわかった。菌死滅速度の温度依存性(Z=26.6℃)は褐変速度の温度依存性(Z=59.6℃)よりも大きく、焙煎温度が殺菌温度領域で変化すると、焙煎温度が一定の場合と比較して豆の褐変程度の差以上に殺菌価の差が広がるためである。
式9の温度履歴曲線の殺菌価が殺菌完了となる所定殺菌価に到達していれば、同じ焙煎時間・焙煎度となるすべての温度履歴曲線で所定殺菌価に到達していると判断できる。以上のことから、最低殺菌レベルを計算することにより乾熱滅菌を保証する方法が存在することを立証した。ここで、計算上は焙煎度から無限に温度履歴が推定できるが、現実的な焙煎では式9の温度履歴曲線に従うことはない。焙煎時間30分で焙煎度ΔE=45.0のコーヒー豆の最低殺菌レベルは6.26Dであるが、焙煎初期の温度と終了直前の温度が等しいことはあり得ないので、現実的な温度履歴の殺菌価はこれよりはるかに大きくなる。したがって、コーヒーとして飲めるレベルの焙煎では殺菌レベルが非常に高いと考えられる。豆の初品温と焙煎終了時の温度、さらには焙煎機の温度記録等の情報により設定条件の因子を増加させれば、より現実に近い温度履歴曲線を推定することができ、より現実に近い殺菌価を求めることができる。
上記方法により、焙煎中のコーヒー豆の温度履歴を直接測定できなくても、焙煎度管理により、最低殺菌レベルを保証することができる。この管理は、市販のデジタルカメラや、画像解析ソフト、計算ソフトを使って容易に行うことができる。
本発明は、コーヒー豆に限らず、ココア豆、麦茶の原料麦など焙煎により殺菌が行われるとともに焙煎により変性する成分を含んでいる食品に適用することができる。また、本発明は、焙煎以外でも加熱により変性する成分を含有する物質であって、その温度履歴を直接測定することが困難な物質の殺菌程度の管理と保証のために広く適用することができる。
殺菌価の計算方法示すフロー図である。 焙煎度等価温度時間曲線の生成方法を示すフロー図である。 焙煎殺菌における条件設定の流れを示すフロー図である。 指標菌の乾熱時生存曲線を示すグラフである。 指標菌のD値と乾熱時加熱温度の関係を示すグラフである。 コーヒー豆断面におけるΔEを示すグラフである。 各焙煎温度における褐変程度を示すグラフである。 コーヒー豆褐変色素の推定形成経路を示すグラフである。 140℃加熱における褐変を示すグラフである。 140℃加熱におけるΔE飽和度の最適化を示すグラフである。 各焙煎温度における褐変前駆物質消費速度を示すグラフである。 使用不可能な褐変前駆物質を示すグラフである。 褐変前駆物質消費速度曲線を示すグラフである。 温度履歴曲線の1例を示すグラフである。 種々の温度履歴曲線における殺菌価を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 焙煎対象物を焙煎することにより殺菌を行う殺菌方法において、焙煎時間、焙煎度および焙煎機の温度記録等により焙煎度等価の温度履歴曲線を作成する一方、殺菌対象菌の死滅速度式に基づき殺菌価を計算し、最小殺菌価となる温度履歴曲線を選択してこの曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えているか否かを判定し、この曲線に基づく殺菌価が必要殺菌価を越えているとき焙煎条件を決定することを特徴とする殺菌方法。
  2. 焙煎対象物がコーヒーであることを特徴とする請求項1記載の殺菌方法。
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