JP4460944B2 - マイクロ化学デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、両親媒性表面処理された微細流路を有するマイクロ化学デバイスとそれを用いた流体制御に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、微細流路を有するマイクロチップ等のマイクロ化学デバイスにおいて、精密微量分析や精密分離、あるいは精密化学合成等を行うのに有用な、親水性および疎水性を同時に示すように両親媒性表面処理された微細流路を有するマイクロ化学デバイスとそれを用いた多相層流の界面を安定に形成する方法などに関するものである。
シリコンやガラス基板等に形成した微細流路を利用して、精密に微量分析や分離、あるいは化学合成を行う方法が注目されている。例えば、このような微細流路を用いた化学操作の一つとして、マイクロスケールでの微小空間の特性を活した分離方法が各種提案されており、電気泳動法やクロマトグラフィー等についての検討が進められている。
しかしながら、これまでの多くの方法の場合には水溶液系にしか実際に適用できず、さらには複雑な集積化が必要とされる連続操作や多段操作に適用することが難しいという問題があった。また、マイクロチャンネルは同一基板面に形成されたものであることから、マイクロチップにおいて構成されるマイクロチャンネルの集積化には制約があり、また、液−液界面の形成についても主として界面張力によるものであることから、界面の安定性や相分離の困難さなどの問題が残されていた。
流体の状態を示す数としてレイノルズ数がある。レイノルズ数とは、慣性力と摩擦力の比であり,Re=UL/γ(γ:動粘性係数[m2/s],U:特性速度[m/s],L:特性長さ[m])で表される、無次元量である。マイクロスケールの微細流路内に流体を通液させた場合、レイノルズ数が小さいため流体は層流となって流れる。相溶性の低い流体を通液すると流体同士の界面を保ったまま層流を作る事ができる。この層流を用い液−液抽出、分離、界面反応の精密制御などが知られている。しかし微細流路内の流体制御は大変難しく、しばしば送液するポンプの脈流、送液チューブの振動、流体出口付近の圧力バランスなどの外的要因の影響を受けやすく、特に多相層流の界面を安定に形成し良好な層分離を行う事は難しい。
そこで、多相層流の界面を安定化する手法として多くの研究がなされており、その方法は微細流路の構造による安定化方法と表面性質による安定化方法の二つに大別される。
微細流路の構造により相流を安定化させる方法として、特許文献1に記載されているガイド構造を有する微細流路や、非特許文献1に記載されているピラー構造を有する流路が考案されている。しかし、これら複雑な構造を微細流路内に作成することは困難であり、多段階の処理を要したり、作成できる構造や大きさに制限が生じるなどの問題点がある。さらに、これら構造による安定化方法は界面の位置が安定化に寄与するガイドやピラーなどの構造付近に形成されることが必要なため、比較的狭い範囲の流量範囲においてのみ有効であり、流量を変化させたり、粘性の異なる流体に切り替えたりするなど複雑なプロセスに適応する場合には不向きである。
もう一つの表面性質による安定化方法に微細流路の壁面の表面処理を行っているものがある。特許文献2のように微細流路内の表面処理の多くは、その目的を流路内への試料の吸着防止を目的にしており、親水性、疎水性どちらか一方の性質を全体もしくは部分的に付与したものである。
微細流路壁面の表面処理により多相層流を安定化しているものに部分修飾を行う手法が知られている(特許文献3、非特許文献2参照)。特許文献3では安定した界面の形成のための手段として立体交差上下のマイクロチャンネルの一方の表面を疎水性とし、他方を親水性とすることが記載されている。しかし、流路の部分修飾を行う手法は高い安定性を実現できるが一度修飾してしまうと元の性質に戻せないという問題点がある。
また、このような微細流路を異なる処理を行ったのち基盤を張り合わせにより作成することは、一般的に用いられる熱融着など高温の処理ができず、漏れのない流路を形成することは困難である。微細流路を作成した後に部分修飾する場合においても、処理剤を含む溶液と処理剤を溶解しない溶媒の多相層流形成させることで処理などが考えられるが、そもそも多相層流が形成しにくいため困難である。
さらに、これら方法は層流の数が増えるほどプロセスが困難になるため、二層流以上の扱いには適さない。
他方、非特許文献3には両親媒性表面として疎水性を有するPTFE表面に親水性基を有するポリマーを結合させた物が知られており、暴露溶媒によって表面物性が変化することが知られている。しかし、これは微小空間における流体制御を目的としたものではない。
特開2002−001102号公報 特開2003−139761号公報 特開2003−028836号公報 第7回 化学とマイクロ・ナノシステム研究会 講演要旨集 p.52 第8回 化学とマイクロ・ナノシステム研修会 講演要旨集 p.42 S.Minko ,「Two-Level Structured Self-Adaptive Surfaces with Reversibly Tunable Properties」 ,J. Am. Chem. Soc. ,2003, 125 p3896-3900
本発明は、上記の課題を解決するものとして、微細流路の壁面全面を両親媒性処理することにより、安定した界面や良好な相分離性の実現をも容易とすることのできる、多層流形成のための新しい技術手段を提供することを課題としている。
そこで、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、両親媒性の性質を持たせた微細流路が多相層流の界面を安定に保つことを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、壁面が親水性と疎水性を併せ持つように両親媒性表面処理された微細流路を有するマイクロ化学デバイスに関する。
更に、本発明は、上記のマイクロ化学デバイスの両親媒性表面処理された微細流路に多相層流を通液することにより多相層流の界面を安定に形成する方法に関する。
更に、本発明は、上記のマイクロ化学デバイスの両親媒性表面処理された微細流路に多相層流を通液する際に、多相層流を構成する少なくとも一つの流体を部分処理する手段として用いて通液することにより、微細流路の両親媒性表面を部分的に処理する方法に関する。
更に、本発明は、上記の部分的に処理する方法において、多相層流を構成する少なくとも一つの流体として溶媒和可能な溶媒を用い、溶媒による溶媒和により微細流路の両親媒性表面を部分的に変化させる方法に関する。
更に、本発明は、上記の方法により部分的に変化された微細流路に、溶媒和した溶媒を溶解可能な他の溶媒を通液することにより、微細流路表面における溶媒による溶媒和を解除する手法に関する。
本発明は、従来法より簡便な微細流路を両親媒性表面処理する方法により多相層流の安定した界面形成や良好な相分離性を実現し、さらに従来の部分修飾法では困難であった広流量範囲における安定化などが達成できる。また、両親媒性表面処理した微細流路に通液する多相層流を構成する少なくとも一つの流体の溶媒による溶媒和により微細流路の両親媒性表面を部分的に変化させることができ、また、このように部分的に変化された微細流路に、溶媒和した溶媒を溶解可能な他の溶媒で通液することにより、あるいは熱処理により、微細流路における溶媒和を解除して元の状態に戻すことが可能である。
本発明による両親媒性微小流路内の液−液界面の安定形成は、溶媒抽出等による分離や試薬反応による分析、光学手段による分析、更には液−液界面反応による化学合成法等に有用であり、相分離後の多段操作などの集積化を容易に実現することができる。
本発明によって、微細流路の安定した界面や良好な相分離性の実現を容易とすることのできる簡便なマイクロ化学デバイス、該デバイスを用いた多相層流形成のための新しい技術手段が提供される。
本発明は、両親媒性の性質を持たせた微細流路を有するマイクロ化学デバイス、該マイクロ化学デバイスの微細流路を用いた多相層流の安定な界面を形成する方法、該マイクロ化学デバイスの微細流路の部分処理方法などに関するものである。
本発明において、微細流路とは、「固体基板上などにマイクロテクノロジーの適切なプロセスによって作成された、マイクロメートルサイズの幅と高さ有し、液体、気体などの流体を流すための通路」と定義する。
ガラス基板上などに形成される微細流路は、たとえばフォトリソグラフィー・ウェットエッチング等の各種の加工法によって形成することができる。作成される微細流路そのものについては、その幅について500μm以下、高さ200μm以下程度とすることが考慮されるが、これに限定されることはない。
本発明において、マイクロ化学デバイスとは、「マイクロ空間を利用した化学反応、分析、精製、溶液の吐出等を行うために使用される3次元構造体であり微細流路で反応などの操作を行うものであり、マイクロチップ、マイクロリアクタ、熱交換器、混合器、バルブ、センサーなど各種機能を適宜有するデバイス」と定義する。
本発明において両親媒性とは、広義には微細流路に通液する性質の異なる流体に対しそれぞれ親和性を有する性質であり、一般的には親水性と疎水性を併せ持つ性質を意味する。
本発明のマイクロ化学デバイスにおける微細流路が形成されるデバイスの材質は、例えば、硼珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、石英ガラス等などのガラス;ステンレス、ハステロイ、チタンなどの金属;ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、PMMAなどのアクリル樹脂;ポリカーボネート、PTFEなどのフッ素系樹脂;エポキシ樹脂などの樹脂を用いることができる、耐久性、耐薬品性の面および表面処理剤の性質から、好ましくはガラスを用い、特に好ましくはパイレックス(登録商標)を用いる。
ただし、通常の表面処理剤により修飾されないものも樹脂内などに表面処理剤と結合可能な添加剤を含有させたり、表面を他の薬品により改質したりすることにより修飾することができる。
本発明のマイクロ化学デバイスにおける両親媒性微細流路を作成するために用いる処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、クロム系カップリング剤、シリルパーオキサイドなどを用い、好ましくはシラン系カップリング剤を用いる。
より具体的には、両親媒性微細流路を作成するために、例えば親水性基を有する処理剤と疎水性基を有する処理剤との混合物を用いる。親水性基を有する処理剤としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、チオール基、ポリエーテル基、アミノ基、アンモニウム基を有する処理剤を用い、好ましくはアミノ基、ポリエーテル基を有する処理剤、更に好ましくは第1アミン系シランカップリング剤、ポリアミン系シランカップリング剤、ポリエーテル系シランカップリング剤を用いる。
疎水性基を有する処理剤としては、例えば、アルキル基、アリール基、スフッ化アルキル基、フッ化アリール基を有する処理剤を用い、好ましくはアルキル基、ポリフッ化アルキル基を有する処理剤、更に好ましくはC3からC24の長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤、C3からC24の長鎖ポリフッ化アルキル基を有するシランカップリング剤を用いる。
これらの親水性基を有する処理剤と疎水性基を有する処理剤との混合物におけるそれぞれの使用量は、得ようとする両親媒性、使用する処理剤の種類などにより変動し特に限定されないが、通常は、重量比で、親水性基を有する処理剤:疎水性基を有する処理剤=1:5〜5:1の範囲である。
これらの処理剤で微細流路を表面処理するためには、例えば処理剤の混合物をエタノールなどの有機溶媒に溶解し、それらの溶液を微細流路に通液した後に、エタノールなどで洗浄し、次いで窒素気流下で加熱処理することにより行なうことができる。
両親媒性微細流路を作成するために、例えば流路全面に親水性基を有する処理剤で処理した後に、親水性基の一部に疎水性基を化学結合させる手法を採用することもできる。より具体的には、例えば、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ポリエーテル基、カルボキシル基などの親水性基を有する処理剤で処理した後、例えば、アルキル基、アリール基、フッ化アルキル基、フッ化アリール基などの疎水性基を有する反応剤と反応させる。反応剤としては、例えば、ハロゲン化アルキル、カルボン酸塩化物、スルホン酸塩化物、エポキシド、疎水性基を有するクロロシランなどを用いる。疎水性基の一部を更に反応させてもよい。
親水性基を有する処理剤および疎水性基を有する反応剤の使用量も、同様に、得ようとする両親媒性、使用する処理剤および反応剤の種類などにより変動し特に限定されないが、通常は、疎水性基を有する反応剤が親水性基を有する処理剤に対し、重量比で0.1〜3倍程度である。
これらの処理剤および反応剤で微細流路を表面処理するためには、例えば処理剤をエタノールなどの有機溶媒に溶解し、それらの溶液を微細流路に通液した後に、洗浄、加熱処理し、次いで同様に反応剤を通液して反応処理することにおり行なうことができる。
また、本発明のマイクロ化学デバイスにおける両親媒性微細流路を作成するために、一分子内に親水性基と疎水性基の両方を有する処理剤、即ち、両親媒性処理剤を用いることもできる。このような処理剤としては、例えば、長鎖アルキルアンモニウム塩シランカップリング剤、長鎖アルキルポリエーテル系シランカップリング剤、長鎖アルキルスルホン酸塩シランカップリング剤等を用いることができ、好ましくはC3からC24の長鎖アルキルアンモニウム塩シランカップリング剤を用いる。
これらの第1アミン系シランカップリング剤、ポリアミン系シランカップリング剤、ポリエーテル系シランカップリング剤、C3からC24の長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤、C3からC24の長鎖ポリフッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、C3からC24の長鎖アルキルアンモニウム塩シランカップリング剤等の処理剤は、常法により合成する事も出来るが、多くは容易に市場から入手する事が出来、例えば信越化学工業株式会社、Gelest社製のもの等が挙げられる。
これらの処理剤で微細流路を表面処理するためには、上記した親水性基を有する処理剤と疎水性基を有する処理剤との混合物の処理と同様に行なうことができる。
かくして得られる本発明の両親媒性微細流路によって安定化される多相層流を形成する流体としては、水もしくは水溶液と有機溶媒もしくは有機溶媒溶液を用いることができる。また、例えば、疎水性や親水性の程度がそれぞれ相違する、有機溶媒もしくは有機溶媒溶液と他の有機溶媒もしくは有機溶媒溶液を用いることもできる。また、例えば、疎水性や親水性の程度がお互いに相違する3種以上の流体を組み合わせて用いることもできる。
多相層流を形成する流体として用いる水溶液は、水溶液のpHおよび溶解している塩などによって、両親媒性微細流路の例えば親水性基に対する親水性が増したり、減ったりするため各々液体の性質や、表面張力、比重、相溶性等の点を考慮しpH、濃度を調節することで、更なる多相層流形成の安定化が達成できる。
多相層流を形成する流体として用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル系;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系;シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系;トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、フロリナートTMFC−72、フロリナートTMFC−77(住友スリーエム株式会社製)などのフッ素系などの様々な有機溶媒を用いることが可能である。
これらのいずれの流体を用いる場合であっても、液−液界面の形成については、安定した界面の形成のために、各々の流体の性質や、表面張力、比重、相溶性等が考慮されることになる。また、当然にも、これらの点を考慮して、流速、あるいは液温等が定められることになる。流路への流体の供給手段、そして流路からの液の排出手段も適宜に定められることになる。
本発明のマイクロ化学デバイスに流体を流す場合の流速については、通常100μl/min以下程度であるが、これに限定されることはない。
本発明のマイクロ化学デバイスにおける両親媒性表面処理した微細流路に、例えば親水性や疎水性が相違する2種以上の流体から構成される多相層流を通液することにより、それぞれの流体と両親媒性微細流路との関係により、それぞれの流体の流路が安定化し、安定化した液−液界面が形成される。
本発明のマイクロ化学デバイスの両親媒性微細流路に、多相層流を通液する際に、多相層流を構成する少なくとも一つの流体を部分処理する手段として用いて通液することにより、微細流路の両親媒性表面を部分的に処理することができる。即ち、例えば、多相層流を構成する1つの流体中に反応性試薬を溶解させ層流として通液させることにより、微細流路中の反応性試薬を含む流体が通液した部分のみの壁面もしくは壁面修飾した処理剤の官能基を更に修飾、変換、分解することができる。これにより流路内の濡れ性などの表面物性の部分的コントロールや、化学触媒、酵素、抗体などの部分的な固定化が可能になり、より高度なマイクロ化学プロセスの実現が可能になる。
本発明のマイクロ化学デバイスの両親媒性処理された微細流路に、溶媒和可能な溶媒を通液することにより、微細流路壁面が溶媒和され表面物性を変化させることもできる。例えば、両親媒性処理された微細流路に、水とシクロヘキサンもしくはジクロロメタンの2つの流体からなる多相層流を通液することにより、水の流体と接触した微細流路表面は、水が溶媒和して親水性表面に変化し、シクロヘキサンの流体と接触した微細流路表面は、シクロヘキサンが溶媒和して疎水性表面に変化する。
他方、溶媒和した後に、溶媒和した溶媒を溶解できる溶媒を、同じ流路に通液することにより、溶媒による溶媒和を解除することができる。例えば、ヘキサンやジクロロメタンなどの有機溶媒と水により溶媒和した場合には、エタノールやメタノールを通液すると溶媒和がエタノール、メタノールに置換される。また熱処理などにより脱溶媒和することにより通液前の状態に戻すことも可能である。
また、上記したように、流体として通液する水溶液のpHおよび溶解している塩などによって、微細流路表面の親水性基の親水性が増したり、減ったりするため、各々液体の性質や、表面張力、比重、相溶性等の点を考慮しpH、濃度を調節することで、本発明のマイクロ化学デバイスの両親媒性微細流路を部分処理することができ、これにより更なる安定化が得られる場合がある。
また、本発明による微細流路内での多相層流の界面安定形成により、一つの相に表面処理剤などを含有させ部分修飾を行うことも容易に実施可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシランと3−アミノプロピルトリエトキシシランの混合溶液によるマイクロ化学チップの両親媒性表面処理
疎水性基を有する処理剤であるヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン(Gelest社製、63mg)および親水性基を有する処理剤である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(LS-3150(商品名)、信越化学工業株式会社製、61mg)のエタノール(1.5g)溶液を50℃に加熱したパイレックス(登録商標)ガラス製マイクロ化学チップ(IMT社製DY−15型)に10μL/minの流量速度で2時間通液した。その後、窒素気流下120℃で30分間熱処理した。エタノール(1mL)で通液洗浄し、窒素を通気し溶媒を乾燥させて、両親媒性表面処理された微細流路を有する本発明のマイクロ化学チップを得た。
用いたマイクロ化学チップの流路形状の平面図を図1に、流路形状の断面図および流路部分の拡大図を図2に、各マイクロチップの部位名を図3に示す。
オクタデシルトリエトキシシランと3−アミノプロピルトリエトキシシランの混合溶液によるマイクロ化学チップの両親媒性表面処理
疎水性基を有する処理剤であるオクタデシルトリエトキシシラン(LS-69708(商品名)、信越化学工業株式会社製、60mg)および親水性基を有する処理剤である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(LS-3150(商品名)、信越化学工業株式会社製、60mg)のエタノール(1.5g)溶液を50℃に加熱したパイレックス(登録商標)ガラス製マイクロ化学チップ(IMT社製DY−15型)に10μL/minの流量速度で2時間通液した。その後、窒素気流下120℃で30分間熱処理した。エタノール(1mL)で通液洗浄し、窒素を通気し溶媒を乾燥させて、本両親媒性表面処理された微細流路を有する発明のマイクロ化学チップを得た。
オクタデシルジメチル(3−アミノプロピルトリメトキシシリル)アンモニウムクロリドによるマイクロ化学チップの両親媒性表面処理
一分子内に親水性基と疎水性基の両方を有する処理剤である4wt%オクタデシルジメチル(3−アミノプロピルトリメトキシシリル)アンモニウムクロリドのメタノール溶液(オクタデシルジメチル(3−アミノプロピルトリメトキシシリル)アンモニウムクロリド60%メタノール溶液(Gelest社製)を希釈)をパイレックス(登録商標)ガラス製マイクロ化学チップに50℃で2時間通液した後、窒素気流下120℃で30分間熱処理した。エタノール(1mL)で通液洗浄し、窒素を通気し溶媒を乾燥させて、両親媒性表面処理された微細流路を有する本発明のマイクロ化学チップを得た。
マイクロ化学チップの安定流量範囲の評価
実施例1、2および3で得られた両親媒性表面修飾したマイクロ化学チップと未修飾のマイクロチップを用い有機溶媒および水を通液し、形成される界面の安定性を評価した。
通液を行った実験装置の概略図を図4に、界面安定性の評価基準を図5に示す。有機溶媒は酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、フロリナートTMFC−72、フロリナートTMFC−77を用いた。各種有機溶媒及び水を1〜100μL/minの等流量でシリンジポンプを用い通液した。界面の安定性の評価はDY−15マイクロチップの分岐部より1mm上流で界面が安定に保たれるかによって行った。フロリナートTMFC−72、フロリナートTMFC−77については実施例1,2の表面処理チップを用いた。
得られた結果を図6および7に示す。図6および7から明らかなように、本発明のマイクロ化学チップを用いた場合には、広範囲の流量範囲で、界面の安定化が達成された。
マイクロ化学チップの安定流量比範囲
実施例1、2および3で得られた両親媒性表面修飾したマイクロ化学チップと未修飾のマイクロチップを用い有機溶媒および水を通液し、形成される界面の安定性を評価した。ジクロロメタンおよび水を総流量が20μL/minになるように各々の流量比を変化させ通液した。界面の安定性の評価はDY−15マイクロチップの分岐部より1mm上流で界面が安定に保たれるかによって行った。実験装置及び安定性の評価は実施例4と同様に行った。
得られた結果を図8に示す。図8から明らかなように、本発明のマイクロ化学チップを用いた場合には、広範囲の流量比範囲で、界面の安定化が達成された。
マイクロ化学チップの相溶性の低い有機溶媒同士の界面安定性評価
実施例1で得られた両親媒性表面修飾したマイクロ化学チップと未修飾のマイクロ化学チップを用いヘキサンおよびメタノールを通液し、形成される界面の安定性を評価した。界面の安定性の評価はDY−15マイクロチップの分岐部より1mm上流で界面が安定に保たれるかによって行った。ヘキサンおよびメタノールの流量を1〜100μL/minの等流量で通液した。実験装置および安定性の評価は実施例4と同様に行った。
その結果、両親媒性修飾したマイクロ化学チップは2μL/minずつ通液した場合でも安定であったが、未修飾では10μL/minまでしか安定ではなかった。
マイクロ化学チップの溶媒通液による表面濡れ性の変化とエタノール通液による流路の溶媒和置換
実施例1で得られた両親媒性表面修飾したマイクロチップに図4の導入口aよりジクロロメタン、図4の導入口bより水を10μL/minずつ通液した後に、それぞれの導入口を取替えaより水を、bよりジクロロメタンを通液した。流量を1:1で1から50μL/minずつまで変化させたときの界面の形成具合や流体の反転が起こるかどうかなど観察した。その後エタノールを100μL/minずつ計2mL通液した後、再びaより水を、bよりジクロロメタンを10μL/minずつ通液し、界面の形成具合や流体の反転が起こるかどうかなど観察した。実験装置および安定性の評価は実施例4と同様に行った。
その結果、いずれの場合にも界面は安定に形成されたが、それぞれの導入口を取替えた場合、界面の反転が起こった。その写真を図9の中央に示す。その後エタノール通液した後には、図9の右側に示すように安定な界面が形成された。これにより、水およびジクロロメタンの通液により、これらが微細流路の表面に溶媒和し、また、エタノールを通液することにより、これらの溶媒和が解除されたことが分かる。
以上に詳細に説明したとおり、両親媒性表面処理を行った微細流路内に多相層流を通液すると、多相層流の界面が安定に形成された。また、微細流路壁面がそれぞれの流体により部分的に溶媒和され表面物性が変化し、多相層流の界面が安定に形成された。
これらの結果から、本発明による両親媒性微小流路内の液−液界面の安定形成は、溶媒抽出等による分離や試薬反応による分析、光学手段による分析、さらには液−液界面反応による化学合成法等に有用であり、相分離後の多段操作などの集積化を容易に実現することができる。これにより、マイクロ化学リアクターによる製薬・合成、マイクロ化学チップ技術を利用したパーソナル健康監視システムや環境汚染物質モニタリングシステム、バイオデバイスとの組み合わせによるテーラーメイド医療への応用など多くの産業への利用可能性がある。またマイクロ化学デバイスのみならず新しい流体制御手法としてインクジェットプリンタやマイクロディスペンサーなどにも利用可能である。
IMT社製マイクロチップ、DY−15のマイクロチップおよび流路形状の平面図を示したものである。 IMT社製マイクロチップ、DY−15のマイクロチップおよび流路形状の断面図および流路部分の拡大図を示したものである。 IMT社製マイクロチップ、DY−15のマイクロチップ平面図における部位の説明である。 実施例4〜7における実験装置の概略図である。 界面安定性の評価基準の説明図である。 実施例1、2、3および未修飾のマイクロチップを用いたときの各種有機溶媒と水を各々等流量で通液した場合の2相層流界面の安定性を示したものである。 実施例1、2および未修飾のマイクロチップを用いたときのフッ素系溶媒と水を各々等流量で通液した場合の2相層流界面の安定性を示したものである。 実施例1、2および3のマイクロチップを用いたときのジクロロメタンと水を総流量一定のまま各流量比を変化させた場合の2相層流界面の安定性を示したものである。 実施例7において実施例1で得られたマイクロチップに水とジクロロメタンを導入し、導入口を取り替えた場合の界面の反転を表す図である。
符号の説明
a 導入口
b 導入口
c ドレイン
d ドレイン
e 合流部
f 分岐部

Claims (8)

  1. 壁面が親水性と疎水性を併せ持つように両親媒性表面処理された微細流路を有する多相層流の流体制御用のマイクロ化学デバイスであって、
    親水性基を有する処理剤として、アミノ基、スルホニル基、ポリエーテル基およびカルボキシル基を有するシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種と、疎水性基を有する処理剤として、アルキル、アリール、フッ化アルキルおよびフッ化アリールを有するシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種、との混合物により表面処理された、該マイクロ化学デバイス。
  2. 親水性基を有する処理剤として、アミノ基を有するシランカップリング剤と、疎水性基を有する処理剤として、アルキルおよびフッ化アルキルを有するシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種、との混合物により表面処理された、請求項1に記載のマイクロ化学デバイス。
  3. 壁面が親水性と疎水性を併せ持つように両親媒性表面処理された微細流路を有する多相層流の流体制御用のマイクロ化学デバイスであって、
    両親媒性表面処理を、一分子内に親水性基と疎水性基の両方を有する処理剤として、長鎖アルキルアンモニウム塩シランカップリング剤、長鎖アルキルポリエーテル系シランカップリング剤および長鎖アルキルスルホン酸塩シランカップリング剤からなる群から選ばれる1種以上により行われた、該マイクロ化学デバイス。
  4. 両親媒性表面処理を、一分子内に親水性基と疎水性基の両方を有する処理剤として、長鎖アルキルアンモニウム塩シランカップリング剤により行われた、請求項3に記載のマイクロ化学デバイス。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロ化学デバイスの両親媒性表面処理された微細流路に多相層流を通液することにより多相層流の界面を安定に形成する方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロ化学デバイスの両親媒性表面処理された微細流路に多相層流を通液する際に、多相層流を構成する少なくとも一つの流体を部分処理する手段として用いて通液することにより、微細流路の両親媒性表面を部分的に処理する方法。
  7. 多相層流を構成する少なくとも一つの流体として溶媒和可能な溶媒を用い、溶媒による溶媒和により微細流路の両親媒性表面を部分的に変化させる請求項に記載の方法。
  8. 請求項の方法により部分的に変化された微細流路に、溶媒和した溶媒を溶解可能な他の溶媒を通液することにより、微細流路表面における溶媒による溶媒和を解除する手法。
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