JP4460700B2 - 術部観察システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、手術を行う患者の体内の術部の画像を観察する例えば脳外科手術に応用される術部観察システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、手術用顕微鏡を用いて微細な手術を行うマイクロサージャリーにおいては、画像診断技術の発展もあり、断層画像を用いた手術前の手術計画作成、さらには手術中にもそれら画像情報を有効利用し、より安全な手術を目指して手術機器の改良が進められている。
【0003】
特に、脳外科分野では、手術用顕微鏡での観察位置あるいは、手術で併用される内視鏡(硬性鏡)や、処置具等の位置を検出し、手術前に得られた断層画像との統合を図ることが行われている。
【0004】
また、本出願人は、特願平10−319190号において、手術前に得られた断層画像に基づいて作成した3次元画像データに、手術用顕微鏡の観察位置のデータと処置具先端の位置のデータとを重畳してモニタ上に表示する手術用顕微鏡のシステムを開示している。
【0005】
さらに、本出願人が特開平9−28663号公報に開示しているように、硬性鏡や、TVカメラの撮像部の位置を固定した状態で、撮像部の視野を移動させる視野移動機能を備えた内視鏡装置がある。この装置では、硬性鏡や、TVカメラの撮像部の位置を固定した状態で、撮像部の視野移動を行えるため、視野移動時に生体組織に損傷を与えることがなく、安全性が高い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特願平10−319190号の手術用顕微鏡のシステムと、この特開平9−28663号公報の装置とを組み合せた術部観察システムを処置対象の生体組織が非常にデリケートである脳外科手術に応用することは、微細な脳外科手術を安全に行ううえで絶大な効果を発揮できると考えられる。
【0007】
このように手術用顕微鏡と、視野移動機能を備えた内視鏡装置とを組み合せた術部観察システムを脳外科手術の分野に応用する場合、内視鏡の先端位置を検出して前述の3次元画像データに重畳してモニタ上に表示することで、術者に内視鏡装置での観察範囲のデータと、患者の解剖構造のデータとを関連付けて掌握可能な情報を呈示できる。
【0008】
この場合、従来の手術用顕微鏡の観察位置のデータを検出する位置検出手段で検出される位置データは内視鏡における挿入部の先端位置である。そのため、視野移動機能を備えていない通常の撮像装置が内視鏡と組み合わされているシステムの場合には、内視鏡の視軸中心位置は撮像画像の中心位置とほぼ一致するため、内視鏡の先端位置はほぼ撮像画像の範囲を表していると言える。
【0009】
しかしながら、前述の視野移動機能を備えた内視鏡装置と組み合わされているシステムの場合には、撮像装置の視野移動を行うことにより撮像画像の中心位置が内視鏡の光軸中心位置からずれる問題がある。そのため、この視野移動機能を備えた内視鏡装置を従来の手術用顕微鏡のシステムに組合わせて用いた場合、検出された内視鏡における挿入部の先端位置のデータは撮像画像の観察位置を正確には表していない場合がある。
【0010】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、手術用顕微鏡と、視野移動機能を備えた内視鏡装置とを組み合せたシステムを使用して、視野移動を行った場合でも、撮像画像の観察位置を正しく検出して術者に呈示することができる術部観察システムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、術部を顕微鏡観察する手術用顕微鏡と、前記術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、前記術部の所望の部位を観察する観察手段と、を具備し、前記手術用顕微鏡と、前記観察手段とを組み合せて手術前に得られた断層画像との統合を図る術部観察システムであって、前記観察手段に設けられ、前記観察手段の位置を固定した状態で、前記観察手段の視野を移動する視野移動手段と、前記観察手段の3次元位置を検出する位置検出手段と、前記画像データ保持手段が保持する前記術部の3次元画像データ、前記位置検出手段および前記視野移動手段による前記観察手段の視野の移動情報により、前記観察手段が観察している前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、この演算結果により求められた前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を前記術部の3次元画像データに重畳して表示出力する演算部と
を具備することを特徴とする術部観察システムである。
そして、本請求項1の発明では、観察手段によって術部の所望の部位を観察する際に、視野移動手段によって観察手段の視野を移動する。このとき、位置検出手段によって観察手段の3次元位置を検出する。さらに、画像データ保持手段が保持する術部の3次元画像データ、位置検出手段および視野移動手段による観察手段の視野の移動情報により、観察手段が観察している術部の観察部位の術部に対する3次元位置を演算部によって演算するとともに、この演算結果により求められた術部の観察部位の術部に対する3次元位置を術部の3次元画像データに重畳して表示出力するようにしたものである。
【0012】
請求項2の発明は、前記観察手段は、管腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と、この内視鏡に着脱自在に連結されるTVカメラとを具備し、前記TVカメラは、前記内視鏡によって観察される被検体の観察像を撮像する撮像手段と、前記観察像の変倍を行う変倍光学系と、前記内視鏡の位置を固定した状態で、少なくとも前記撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段または前記変倍光学系を移動させる変倍光学系移動手段のうちのいずれか一方とを具備することを特徴とする請求項1に記載の術部観察システムである。
そして、本請求項2の発明では、内視鏡と、この内視鏡に着脱自在に連結されるTVカメラとによって観察手段を構成する。さらに、内視鏡によって観察される被検体の観察像をTVカメラの撮像手段によって撮像し、変倍光学系によって観察像の変倍を行うとともに、撮像範囲移動手段によって撮像手段の撮像範囲を移動させ、または変倍光学系移動手段によって変倍光学系を移動させるようにしたものである。
【0013】
請求項3の発明は、術部を顕微鏡観察する手術用顕微鏡と、前記術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、前記術部の所望の部位を観察する観察手段と、を具備し、前記手術用顕微鏡と、前記観察手段とを組み合せて手術前に得られた断層画像との統合を図る術部観察システムであって、前記観察手段に設けられ、前記観察手段の位置を固定した状態で、前記観察手段の視野を移動する視野移動手段と、前記観察手段の3次元位置を検出する位置検出手段と、前記画像データ保持手段が保持する前記術部の3次元画像データ、前記位置検出手段および前記視野移動手段による前記観察手段の視野の移動情報により、前記観察手段が観察している前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、この演算結果により求められた前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を前記術部の3次元画像データに重畳して表示出力する演算部と、この演算部からの表示出力を表示する表示手段と、この表示手段で表示された前記術部の画像に対して前記観察手段が観察する観察目的位置を入力する入力手段と、この入力手段からの信号に基いて前記視野移動手段を駆動制御して前記観察目的位置に前記観察手段の視野を移動させる観察手段駆動制御手段とを具備することを特徴とする術部観察システムである。
そして、本請求項3の発明では、請求項1の演算部からの表示出力を表示手段に表示させる。さらに、この表示手段で表示された術部の画像に対して入力手段によって観察手段が観察する観察目的位置を入力したのち、この入力手段からの信号に基いて観察手段駆動制御手段によって視野移動手段を駆動制御して観察目的位置に観察手段の視野を移動させるようにしたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図5を参照して説明する。図1は本実施の形態の術部観察システムである手術用顕微鏡システム全体の概略構成を示すものである。図1中で、1は手術室に設置されている手術用顕微鏡(観察装置)、2はこの手術用顕微鏡1の鏡体、61は患者32が載せられている手術用ベッドである。ここで、手術用顕微鏡1の架台3には、床面を移動可能なベース4と、このベース4上に立設された支柱5とが設けられている。なお、手術用顕微鏡1の架台3は手術室内における手術用ベッド61の先端部側(例えばベッド61上の患者32の頭部が配置される側)に配置されている。
【0015】
さらに、支柱5の上部には、手術用顕微鏡1の鏡体2を任意の方向に移動可能に支持する支持機構62が設けられている。この支持機構62には第1アーム6と、第2アーム7と、第3アーム8とが設けられている。ここで、第1アーム6には図示しない照明用光源が内蔵されている。そして、この第1アーム6の一端部は支柱5の上部に略鉛直方向の軸O1を中心に回転自在に取付けられている。
【0016】
さらに、第1アーム6の他端部には、第2アーム7の一端部が略鉛直方向の軸O2を中心に回転自在に取付けられている。この第2アーム7はリンク機構とバランス調整用のスプリング部材とからなるパンタグラフアームによって形成され、上下方向に移動操作可能になっている。
【0017】
また、第2アーム7の他端部には、第3アーム8の一端が略鉛直方向の軸O3を中心に回転自在に取付けられている。この第3アーム8の他端には手術用顕微鏡1の鏡体2が連結されている。さらに、この第3アーム8は、略水平面上で、互いに直交する方向の2つの軸O4,O5を中心としてそれぞれ回転自在に支持されている。そして、鏡体2はこの第3アーム8によって軸O4を中心として術者の観察方向に対する前後方向の俯仰を可能に、かつ軸O5を中心として術者の左右方向の俯仰を可能にそれぞれ支持されている。
【0018】
また、支持機構62の各回転軸O1〜O5における軸受部には図示しない電磁ブレーキが各々設けられている。この電磁ブレーキは支柱5に内蔵された図示しない電磁ブレーキ電源回路と接続されている。さらに、この電磁ブレーキ電源回路は、図2に示すように鏡体2に一体に固定されたグリップ9に設けられたスイッチ10と接続されている。
【0019】
そして、スイッチ10によって各回転軸O1〜O5の電磁ブレーキがオンオフ操作されるようになっている。ここで、スイッチ10が例えばオン操作された場合には各回転軸O1〜O5の電磁ブレーキがオフ操作されることにより、支持機構62がロック解除状態で保持され、鏡体2が空間的に自由に位置調整を行うことができるようになっている。そして、スイッチ10がオフ操作された場合には各回転軸O1〜O5の電磁ブレーキがオン操作されて支持機構62がロック状態に切換えられ、鏡体2の位置固定が行われるようになっている。
【0020】
また、図4は手術用顕微鏡1の鏡体2の概略構成を示すものである。この鏡体2には、1つの対物レンズ11と、左右一対の観察光学系14A,14Bとが設けられている。ここで、左右の各観察光学系14A,14Bの観察光軸上には変倍光学系12と、左右の結像レンズ13a,13bと、左右の接眼レンズ14a,14bとが順に配置されている。そして、この左右一対の観察光学系14A,14Bによって立体観察光学系が構成されている。
【0021】
また、結像レンズ13a,13bによる結像面は、それぞれ接眼レンズ14a,14bの焦点位置に配置されるように設置されている。なお、図2中の15は鏡体2の立体観察光学系の焦点位置、図4中の16は対物レンズ11のレンズ位置を検出する位置センサーをそれぞれ示すものである。ここで、対物レンズ11は図示しないモーターと連結されて光軸方向に移動可能に支持されている。そして、この対物レンズ11の光軸方向のレンズ位置が位置センサー16により検出できるように構成されている。
【0022】
また、図2に示すように鏡体2上には、後述するデジタイザ(位置検出手段)26が鏡体2の3次元座標を検出するための信号板17がこの鏡体2の側面の所定の位置に位置決めされ、一体に固定されている。この信号板17には信号部材として複数、本実施の形態では3つのLED18a、18b、18cが一体的に固定されている。これらのLED18a、18b、18cはそれぞれ、図1、図3に示すLED制御装置19と接続されている。さらに、このLED制御装置19は計測装置20と接続されている。
【0023】
また、鏡体2には、多関節マニピュレータ21が連結されている。この多関節マニピュレータ21には複数のアームと、各アーム間の連結部に配置された回動可能な関節とが設けられている。この関節には各々図示しない電磁ブレーキが設けられている。さらに、この多関節マニピュレータ21の先端には内視鏡である硬性鏡(観察手段)33を把持可能な硬性鏡接続部22が設けられている。この硬性鏡接続部22には硬性鏡33が所定の位置に位置決めされた状態で、着脱可能に連結されている。
【0024】
また、硬性鏡33には図3に示すように視野移動機能を備えたTVカメラ(観察手段)34が着脱自在に接続されている。図5はこの視野移動機能を備えたTVカメラ34を示すものである。このTVカメラ34には、観察像の変倍を行うズームレンズ(変倍光学系)40と、このズームレンズ40を移動させるズームレンズ移動機構(変倍光学系移動手段)41と、硬性鏡33によって観察される被検体の観察像を撮像するCCD(撮像手段)42と、このCCD42の撮像範囲を移動させるCCD移動機構(撮像範囲移動手段)43とが設けられている。このCCD移動機構43はXYステージで構成されている。なお、このCCD移動機構43の詳細構造については、本出願人より既に出願された特願平10−319190号に開示されている。
【0025】
また、TVカメラ34は図3に示すように視野移動制御装置35およびカメラコントロールユニット36に接続されている。ここで、カメラコントロールユニット36はモニタ(表示手段)37に接続されている。さらに、視野移動制御装置35は演算部にあたるワークステーション23および例えば、処置具等に取り付けられる視野移動指令スイッチ(入力手段)38と接続されている。
【0026】
また、TVカメラ34には、後述するデジタイザ26が3次元座標を検出するための信号板24が着脱自在に固定されている。この信号板24は、図2に示すようにTVカメラ34の側面の所定の位置に位置決めされている。さらに、信号板24には信号部材として4個のLED25a、25b、25c、25dが一体に固定されている。これらのLED25a、25b、25c、25dもまた図3に示すように、それぞれLED制御装置19と接続されている。
【0027】
また、手術室内には、鏡体2上の信号板17のLED18a、18b、18cおよびTVカメラ34の信号板24のLED25a、25b、25c、25dの3次元座標における位置を検出するための光学式位置検出装置であるデジタイザ26が設置されている。このデジタイザ26は図1に示すように手術室内における手術用ベッド61の基端部側(例えばベッド61上の患者32の足元側が配置される側)に配置されている。
【0028】
このデジタイザ26は、受信部材として2台のCCDカメラ27a、27bと、各CCDカメラ27a、27bの位置を固定させているカメラ支持部材28と、スタンド30とにより構成されている。また、各CCDカメラ27a、27bは夫々計測装置20と接続されている。この計測装置20はさらにA/D変換器29を介してワークステーション23と接続されている。
【0029】
このワークステーション23はモニタ39と接続されている。さらに、このワークステーション23には記憶部(画像データ保持手段)23aが内蔵されている。このワークステーション23の記憶部23aには術前においてあらかじめCTや、MRIといった図示しない画像診断装置による断層画像データ、および断層画像データを加工して3次元に再構築されたデータが記録されている。
【0030】
また、図2に示すように治療対象となる患者322の頭部32aには、3つのマーク部材31a、31b、31cが張り付けられている。なお、図2中で、Ob−XbYbZbはマーク部材31a、31b、31cを基準に定義される生体座標系である。
【0031】
次に、上記構成の本実施の形態の作用について説明する。ここでは、例えば患者32の頭部32aの脳外科手術を本実施の形態の手術用顕微鏡1のシステムで行う場合について説明する。まず、手術前にあらかじめ撮影したCT、MRI装置などの断層画像を3次元画像データに再構築し、ワークステーション23の記憶部23aに記録する。
【0032】
また、手術を始めるに当たっては、ワークステーション23内の断層画像データと術部との相関をとるべくマーク部材31a、31b、31cを用いてキャリブレーション(生体座標系Ob−ΧbYbZbの記憶)を行う。
【0033】
このキャリブレーションの作業時には手術前に、CT・MRI装置等で撮影可能なマーク部材31a、31b、31cを患者32の頭部32aに貼りつけ、CT・MRI装置等で、断層像を撮影する。この断層像を3次元画像に再構築し、ワークステーション23の記憶部23aに記録する。この3次元画像の座標系はマーク部材31a、31b、31cの位置を基準にして設定される。
【0034】
そして、手術を始めるに際して、術前に構築された3次元画像の座標系と実像の術部との相関は次のようにしてとる。まず、ベッド61に固定された患者32の頭部32aに貼りつけられたマーク部材31a、31b、31cを信号部材であるLED25a、25b、25c、25dが取り付けられたプローブである硬性鏡33で指し示し、デジタイザ26によってマーク部材31a、31b、31cの3次元位置を検出する。
【0035】
その後、ここで検出された位置に基づいて、デジタイザ26で検出する3次元位置座標系−すなわち生体座標系が定義される。そして、これら2つの座標系におけるマーク部材31a、31b、31cの位置により、構築された3次元画像の座標系を生体座標系に変換することによって、断層画像に基づいて構築された術部45の3次元画像は、生体座標系に基づいてモニタ39上に表示される。
【0036】
以上のキャリブレーション作業により、ワークステーション23には生体座標系が記憶され、術部45の3次元画像データはモニタ39上で画像における生体座標系に表示される。その後、術者44は手術用顕微鏡1の鏡体2のグリップ9を握り、スイッチ10を押すことにより軸O1〜O5に内蔵された電磁ブレーキを解除し、鏡体2を移動して術部45の観察部位に焦点位置15を位置決めする。
【0037】
また、手術用顕微鏡1による観察時には術部45から発せられた光束は、鏡体2に入射する。このとき、対物レンズ11から鏡体2に入射した光束は、変倍光学糸12、結像レンズ13a・13b、接眼レンズ14a・14bを透過して観察され、術者44は術部45を所望の倍率で観察する。なお、観察後の焦点位置が合わないときは、対物レンズ11を図示しないモータにより駆動し、合焦を行う。
【0038】
また、手術用顕微鏡1による観察中、デジタイザ26は鏡体2上の信号板17のLED18a、18b、18cを検出し、その検出信号は計測装置20およびA/D変換器29で信号処理されて、ワークステーション23によって信号板17の生体座標系における位置および姿勢が検出される。ここで、信号板17は鏡体2の所定位置に取り付けられているので、演算により鏡体2の生体座標系に対する位置および姿勢が算出される。
【0039】
また、位置センサ16により対物レンズ11の位置情報がワークステーション23に伝送される。このとき、ワークステーション23では対物レンズ11の位置情報から鏡体2に対する焦点位置15の相対位置が算出される。さらに、鏡体2の生体座標系における位置および姿勢と、鏡体2に対する焦点位置15の相対位置とから、生体座標系における焦点位置15の位置が演算される。このとき、モニタ39には画像上の生体座標系に3次元画像データと焦点位置15が重畳されて表示される。
【0040】
以上の動作により、術者43はモニタ39の画面を目視することにより、モニタ39の画面に表示された3次元画像データによる術部45の画像に焦点位置15が重畳された画像を観察することができる。そして、このモニタ39の表示画像を観察することにより、3次元画像データによる画像上において、顕微鏡1の観察位置を知ることができる。
【0041】
また、硬性鏡33は、多関節マニピュレータ21に保持され、手術用顕微鏡1ではカバーしきれない領域を観察できるような位置に固定されている。そして、術者43自身、または助手が術者の指示に従って視野移動指令スイッチ38を操作することにより、TVカメラ34および硬性鏡33を移動することなしに視野移動を行い、所望の視野を得ることができる。
【0042】
このTVカメラ34の生体座標系における観察位置は、次のようにして算出される。まず、デジタイザ26は、TVカメラ34側の信号板24に一体に固定されているLED25a、25b、25c、25dを検出する。そのデジタイザ26からの検出信号は計測装置20およびA/D変換器29で信号処理されて、ワークステーション23によって信号板24の生体座標系における位置座標および姿勢が検出される。なお、手術用顕微鏡1の鏡体2に取り付けられている信号板17とTVカメラ34側の信号板24との区別は、それぞれの信号板に固定されているLEDの発光色を変えることや、LED制御回路19でそれぞれのLEDを時分割駆動することで識別を行うようになっている。
【0043】
また、硬性鏡接続部22は硬性鏡33を所定の位置で固定しているので、この硬性鏡33の固定部から硬性鏡33の先端までの硬性鏡33の長さは既知である。よって、この硬性鏡33の長さにより硬性鏡33先端の位置座標および姿勢がワークステーション23により検出される。
【0044】
さらに、TVカメラ34内のCCD42の2次元位置座標は視野移動制御装置35で保持されている。そして、この視野移動制御装置35から出力されるCCD42の2次元位置座標はワークステーション23に入力される。この2次元座標は、硬性鏡33の先端位置に対する相対位置であり、硬性鏡33によってTVカメラ34に伝達され、撮像される観察画像の光軸中心からのずれを表すものである。
【0045】
また、このCCD42の2次元座標の上下左右方向と、信号板24のTVカメラ34への取り付け位置との関係は既知であることから、ワークステーション23は、入力されたCCD42の2次元座標と硬性鏡33の先端位置座標および、TVカメラ34のズーム倍率により、生体座標系におけるTVカメラ34の観察位置を検出する。ここで、ズームレンズ40の位置は、視野移動制御装置35に保持されており、この位置の入力によりワークステーション23はTVカメラ34のズーム倍率を算出する。そして、手術用顕微鏡1の焦点位置15が重畳されている3次元画像データが表示されているモニタ39に、さらにTVカメラ34の観察位置が重畳して表示される。
【0046】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態では、手術用顕微鏡1と視野移動機能を備えたTVカメラ34とを併用した手術用顕微鏡システムにおいて、TVカメラ34の観察位置を検出してモニタ39上に表示されている術部45の3次元画像データにこのTVカメラ34の観察位置を重畳して表示するようにしたので、視野移動を行った状態でもTVカメラ34の観察位置を術者44に正確に認識させることができる。そのため、例えば微細な脳外科手術を安全に行う際に、手術時間の短縮、術者の疲労低減を図ることができる。
【0047】
なお、本実施の形態で用いているTVカメラ34の代わりに、可撓性のある挿入部を有し、その挿入部に湾曲機構が、また先端にCCDが備えられた軟性内視鏡を使用してもよい。この場合、内視鏡には挿入部の湾曲角を検出する手段が備えられ、ワークステーション23にはこの湾曲角から内視鏡の挿入部の先端位置を算出する処理アルゴリズムが備えられている。
【0048】
また、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図5参照)のTVカメラ34に取り付けられている信号板24を省略し、代わりにTVカメラ34の観察位置を検出してモニタ39上に表示されている術部45の3次元画像データに重畳して表示する構成に変更したものである。なお、図6および図7中で、第1の実施の形態の手術用顕微鏡システムと同一部分には同一の符号を付してここではその説明を省略する。
【0049】
また、本実施の形態では、図7に示すように鏡体2に連結されている多関節マニピュレータ46は次の通り構成されている。すなわち、本実施の形態の多関節マニピュレータ46には第1アーム47と、第2アーム48と、第3アーム49と、TVカメラ接続部50と、回動可能な6つの関節51a〜51fとがそれぞれ設けられている。
【0050】
ここで、第1アーム47の一端は、鏡体2に一体に固定されている。さらに、第1アーム47の他端と、第2アーム48の一端との間の連結部には回転軸S1を中心に回転する関節51aと、紙面に垂直な回転軸S2を中心に回転する関節51bとが配設されている。
【0051】
同様に、第2アーム48の他端と、第3アーム49の一端との間の連結部には回転軸S3を中心に回転する関節51cと、紙面に垂直な回転軸S4を中心に回転する関節51dとが配設されている。
【0052】
また、第3アーム49の他端と、TVカメラ接続部50の一端との間の連結部には回転軸S5を中心に回転する関節51eと、紙面に垂直な回転軸S6を中心に回転する関節51fとが配設されている。
【0053】
さらに、TVカメラ接続部50の他端にはTVカメラ34を支持可能な回動部52が設けられている。このTVカメラ接続部50の回動部52は回転軸S7を中心に回転可能に支持されている。そして、このTVカメラ接続部50の回動部52にはTVカメラ34が着脱可能に連結されている。このとき、TVカメラ接続部50の回動部52はTVカメラ34の所定の位置に位置決めされている。
【0054】
また、各関節51a〜51fおよび回動部52には、エンコーダ53a〜53gが備えられている。これらのエンコーダ53a〜53gは図6に示すようにワークステーション23と接続されている。これにより、各関節51a〜51fおよび回動部52の角度検出が可能である多関節マニピュレータ46が構成されている。さらに、各関節51a〜51fおよび回動部52には図示しない電磁ブレーキが各々設けられている。
【0055】
次に、本実施の形態の作用について説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の手順で手術用顕微鏡1の鏡体2が位置決めされ、生体座標系における焦点位置15の位置が術部45の3次元画像データに重畳されモニタ39上に表示される。
【0056】
また、生体座標系におけるTVカメラ34の観察位置は以下のようにして算出される。すなわち、多関節マニピュレータ46の各関節51a〜51fおよび回動部52の回転角は、エンコーダ53a〜53gによりワークステーション23に伝送される。このとき、ワークステーション23では、一般的に知られている公知の数学的手法により鏡体2に固定されている第1アーム47に対する第2アーム48の位置と、第2アーム48に対する第3アーム49の位置と、第3アーム49に対するTVカメラ接続部50の位置とが順次計算される。
【0057】
さらに、TVカメラ接続部50の回動部52は所定の位置でTVカメラ34を固定しているので、この所定のTVカメラ34の固定位置から硬性鏡33の先端までの長さは既知である。よって、このTVカメラ34の固定位置から硬性鏡33の先端までの長さにより硬性鏡33の先端の位置座標および姿勢がワークステーション23により検出される。
【0058】
また、TVカメラ34内のCCD42の2次元位置座標は視野移動制御装置35で保持されている。そして、この視野移動制御装置35から出力されるCCD42の2次元位置座標はワークステーション23に入力される。この2次元座標は、硬性鏡33の先端位置に対する相対位置であり、硬性鏡33によってTVカメラ34に伝達され、撮像される観察画像の光軸中心からのずれを表すものである。
【0059】
さらに、多関節マニピュレータ46のTVカメラ接続部50の回動部52に設けられたエンコーダ53gにより、TVカメラ34の回転角を検出することにより、CCD42の2次元座標の上下左右方向と硬性鏡33の先端の位置との相関をとることができる。これにより、ワークステーション23は、CCD42の2次元座標と硬性鏡33の先端位置の座標とにより、生体座標系におけるTVカメラ34の観察位置を検出する。そして、手術用顕微鏡1の焦点位置15が重畳されている3次元画像データが表示されているモニタ39に、さらにTVカメラ34の観察位置も重畳して表示される。
【0060】
そこで、本実施の形態によれば、TVカメラ34の観察位置を検出してモニタ39上に表示されている術部45の3次元画像データに重畳して表示するようにしたので、第1の実施の形態のようにTVカメラ34に取り付けられている信号板24をデジタイザ26で撮影することなく、モニタ39上に表示されている術部45の3次元画像データにTVカメラ34の観察位置を重畳して表示することができる。そのため、デジタイザ26の設置の自由度が増し、限られた手術空間を有効に使うことができる。
【0061】
なお、第1の実施の形態と同様に、TVカメラ34の代わりに湾曲機構を有する内視鏡を使用しても同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、図8乃至図10は本発明の第3の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図5参照)の手術用顕微鏡システムの構成を次の通り変更したものである。
【0063】
すなわち、本実施の形態では図8に示すように、ワークステーション23に2Dポインタ54が接続されている。この2Dポインタ54は、2次元平面上の変位を検出可能であるトラックボール、ジョイスティックなどが適する。
【0064】
また、ワークステーション23と視野移動制御装置35との接続は、TVカメラ34に内蔵されたCCD42の2次元位置を伝送するための信号線に加え、視野移動指令を伝送する信号線が新たに設けられている。
【0065】
また、図9はモニタ39に表示される画像を示す。このモニタ39の表示画像には患者32の頭部32aの術前断層画像に基づいて3次元に再構築された術部45の画像とともに、ワークステーション23により算出される硬性鏡33の先端部分の画像と、さらに手術用顕微鏡1の焦点距離を表すグラフィックカーソル55と、視野移動機能を有するTVカメラ34の観察位置を示すグラフィックカーソル56とがそれぞれ重畳表示されている。
【0066】
次に、上記構成の本実施の形態の作用について説明する。本実施の形態の手術用顕微鏡システムの使用時には、モニタ39に図9に示す画像が表示されている状態で、術者44の指示を受けた助手は、術部45の3次元画像データに上記の情報が重畳表示されているモニタ39の画像を観察しながら、2Dポインタ54を操作する。このとき、ワークステーション23は、この2Dポインタ54で検出される2次元位置情報に基づいて、グラフィックカーソル56の位置を移動させる。
【0067】
そして、観察したい位置にまでグラフィックカーソル56を移動させたのち、図示しない動作スイッチをONすることにより、カーソル56で指定した位置が撮像されるようにTVカメラ34によって視野移動動作が行われる。
【0068】
この処理を図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1ではワークステーション23は、2Dポインタ54から入力される2次元位置信号に基づいて、グラフィックカーソル56を移動させる。このグラフィックカーソル56の移動は、硬性鏡33先端の3次元位置および姿勢から算出される撮像平面上に限定される。
【0069】
さらに、グラフィックカーソル56移動後、次のステップS2で視野移動指令スイッチ38がONされる状態を検知すると、次のステップS3に進む。このステップS3ではグラフィックカーソル56の生体座標系における位置座標を、硬性鏡33先端の3次元位置座標およびTVカメラ34のズーム倍率を用いて、TVカメラ34の内部のCCD移動機構43を動作させるための指令位置に変換する。
【0070】
その後、次のステップS4で、この算出した指令位置を視野移動制御装置35に出力し、グラフィックカーソル56によって指定した位置までの視野移動を行う。
【0071】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態では、観察したい位置をモニタ39上のグラフィックカーソル56で指定することで、TVカメラ34の視野移動を行うことができるため、視野移動指令スイッチ38による操作に比べて、より簡単な操作で所望の視野を得ることができる。
【0072】
なお、本実施形態は第2の実施の形態に応用してもよい。また、以上すべての実施の形態において、ワークステーション23によって生成される3次元画像データや、TVカメラ34によって撮像された画像を、図示しない画像信号ミキサーによって手術用顕微鏡1で観察を行う術部45と同時に観察できるように、図示しないハーフミラーを鏡体2に設ける構成にしてもよい。
【0073】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1) 術部に対する顕微鏡の3次元位置を検出する第1の検出手段と、
視野移動機能を具備する観察手段の術部に対する3次元位置を検出する第2の検出手段と、
前記観察手段の位置に対する観察位置を検出する第3の検出手段と、
前記第1、第2および第3の検出手段の検出結果に基づき、前記観察位置の術部に対する3次元位置を演算する演算部と、
を具備した手術用顕微鏡システム。
【0074】
(付記項2) 付記項1において、観察手段は、
硬性の内視鏡と、
前記内視鏡の観察像を撮像する撮像手段と、前記観察像の変倍を行う変倍光学系と、前記撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段と、前記変倍光学系を移動させる変倍光学系移動手段とを具備し、前記内視鏡と着脱自在に連結されるTVカメラと、
からなる。
【0075】
(付記項3) 付記項1において、観察手段は、
可とう性を有する挿入部と、前記挿入部先端を湾曲させる湾曲機構と、前記挿入部先端に配置された撮像手段とを具備した内視鏡である。
【0076】
(付記項4) 術部に対する顕微鏡の観察位置を検出する第1の検出手段と、
視野移動機能を具備する観察手段の術部に対する3次元位置を検出する第2の検出手段と、
前記観察手段の位置に対する観察位置を検出する第3の検出手段と、
前記第1、第2及び第3の検出手段の検出結果に基づき、前記観察位置の術部に対する3次元位置を演算し、演算された3次元位置と術部の断層画像との重畳画像を生成する演算部と、
前記重畳画像を表示する表示手段と、
前記観察手段による観察目的位置を入力する入力手段と、
前記入力手段からの信号に基づいて、前記観察目的位置を観察可能とするように観察手段の視野を移動量させる観察手段駆動制御手段と、
を具備した手術用顕微鏡システム。
【0077】
(付記項5) 付記項4において、観察手段は、
硬性の内視鏡と、
前記内視鏡の観察像を撮像する撮像手段と、前記観察像の変倍を行う変倍光学系と、前記撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段と、前記変倍光学系を移動させる変倍光学系移動手段とを具備し、前記内視鏡と着脱自在に連結されるTVカメラと、
からなる。
【0078】
(付記項6) 付記項4において、
観察手段は、可とう性を有する挿入部と、前記挿入部先端を湾曲させる湾曲機構と、前記挿入部先端に配置された撮像手段とを具備した内視鏡である。
【0079】
(付記項7) 付記項4〜6において、
入力手段は、前記表示手段の画像表示面に組み付けられたタッチパネルである。
【0080】
(付記項1〜7の従来技術) 近年、手術用顕微鏡を用いて微細な手術を行うマイクロサージャリーにおいては、画像診断技術の発展もあり、断層画像を用いた手術前の手術計画作成、さらには手術中にもそれら画像情報を有効利用し、より安全な手術を目指して手術機器の改良が進められている。
【0081】
特に脳外科分野では、手術用顕微鏡での観察位置あるいは、手術で併用される内視鏡(硬性鏡)や処置具等の位置を検出し、手術前に得られた断層画像との統合を図ることが行われている。本出願人は特願平10−319190において、手術前に得られた断層画像に基づいて作成した3次元画像データに、手術用顕微鏡の観察位置と処置具先端の位置を重畳して表示するシステムを開示している。
【0082】
一方、本出願人は特開平9−28663に開示しているように、視野移動機能を備えた内視鏡装置を開示している。この装置は、視野移動を撮像部(硬性鏡・TVカメラ)の位置を固定した状態で行えるため、視野移動時に生体組織に損傷を与えることがなく、安全性が高い。このような点から、処置対象組織が非常にデリケートである脳外科手術に、手術用顕微鏡とこの装置を組み合せたシステムを応用することは、絶大な効果を発揮できると考えられる。
【0083】
(付記項1〜3が解決しようとする課題) 手術用顕微鏡と視野移動機能を備えた内視鏡装置を組み合せて用いる場合、内視鏡の先端位置を検出して前述の3次元画像データに重畳して表示することで、術者に内視鏡装置での観察範囲と患者の解剖とを関連付けて掌握可能な情報を呈示できる。しかしながら、従来の位置検出手段で検出されるのは内視鏡先端の位置である。視野移動機能を有しない通常の撮像装置が内視鏡と組み合わされている場合、内視鏡の視軸中心は撮像画像の中心と一致するため、内視鏡先端位置はほぼ撮像画像範囲を表していると言える。しかしながら、前述の視野移動機能を備えた内視鏡装置の場合は、視野移動を行うことにより撮像画像の中心は内視鏡の光軸中心からずれる。よって、この内視鏡装置を従来のシステムに用いた場合、検出された内視鏡先端位置は撮像画像の観察位置を表してはいない。
【0084】
(付記項1〜3の目的) 視野移動を行った状態でも、撮像画像の観察位置を検出して術者に呈示することが可能である、手術用顕微鏡と視野移動機能を有する内視鏡装置とを組み合せた手術用顕微鏡システムの提供。
【0085】
(付記項4〜7が解決しようとする課題) 前述の内視鏡装置において、視野移動を行う入力手段は処置具に取り付けられた操作スイッチや、フットスイッチ、あるいは音声認識装置などがあるが、いずれも視野移動方向(上下左右斜め)を入力するものである。この入力手段を用いて、観察したい領域への視野移動を行うには1アクションの操作で済ますことは困難であり、煩雑な操作を必要とする。その上、撮像装置の上下左右方向のオリエンテーションが掴みづらい場合は、意図した方向への視野移動ができずに混乱してしまうおそれがある。
【0086】
(付記項4〜7の目的) 簡単な操作で、直接的に観察したい領域に内視鏡画像の視野移動を行うことができる、手術用顕微鏡と視野移動機能を有する内視鏡装置とを組み合せた手術用顕微鏡システムの提供。
【0087】
(付記項1〜7の効果) 本発明によれば、視野移動機能を有する内視鏡装置の観察位置を、術部に対する3次元位置として検出することにより、視野移動を行った状態でも、撮像画像の観察位置を検出して術者に呈示することが可能である、手術用顕微鏡と視野移動機能を有する内視鏡装置とを組み合せた手術用顕微鏡システムを提供することができる。
【0088】
(付記項8) 術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、
前記術部の所望の部位を観察する観察手段と、
前記観察手段に設けられ、前記観察手段の視野を移動する視野移動手段と、
前記観察手段の3次元位置を検出する位置検出手段と、
前記画像データ保持手段の保持する前記術部の3次元画像データ、前記位置検出手段および前記視野移動手段による前記観察手段の視野の移動情報により、前記観察手段が観察している前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、前記術部の3次元画像データに重畳して、前記演算部による演算結果により求められた前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を表示出力する演算部と、
を備えたことを特徴とする術部観察システム。
【0089】
(付記項9) 前記観察手段は、
挿入部を有する内視鏡と、
被検体の観察像を撮像する撮像手段、前記観察像の変倍を行う変倍光学系、および前記撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段、前記変倍光学系を移動させる変倍光学系移動手段のうちの少なくとも一方の手段、を有し、前記内視鏡に着脱自在に連結されるTVカメラと、
を備えたことを特徴とする付記項8に記載の術部観察システム。
【0090】
(付記項10) 術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、
前記術部の所望の部位を観察する観察手段と、
前記観察手段に設けられ、前記観察手段の視野を移動する視野移動手段と、
前記観察手段の3次元位置を検出する位置検出手段と、
前記画像データ保持手段の保持する前記術部の3次元画像データ、前記位置検出手段および前記視野移動手段による前記観察手段の視野の移動情報により、前記観察手段が観察している前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、前記術部の3次元画像データに重畳して、前記演算部による演算結果により求められた前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を表示出力する演算部と、
前記演算部の表示出力を表示する表示手段と、
前記表示手段で表示された前記術部の画像に対して前記観察手段の観察する観察目的位置を入力する入力手段と、
前記入力手段からの信号に基づいて、前記観察目的位置に前記観察手段の視野を移動させる観察手段駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする術部観察システム。
【0091】
(付記項8〜10の課題) (1)視野移動を行う内視鏡装置の撮像画像の中心が内視鏡の光軸中心よりずれるので、検出された内視鏡の先端位置は撮像画像の観察位置を表していない。(2)従来の視野移動の入力手段では意図した方向への視野移動が容易にできない。
【0092】
(付記項8〜10の手段) (1)内視鏡を固定したままで内部のCCDを移動させて視野移動を行う。(2)タッチパネルを設置したモニタに表示された画像上の任意の部位に触れることにより観察部位を指示し、視野移動を行う。
【0093】
(付記項11) 術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、
前記術部を観察する第1の観察手段と、
前記第1の観察手段に設けられ、前記第1の観察手段の3次元位置を検出する第1の検出手段と、
前記術部の所望の部位を観察する第2の観察手段と、
前記第2の観察手段に設けられ、前記第2の観察手段の視野を移動する視野移動手段と、
前記第2の観察手段を保持して移動し、所望の位置に固定する移動手段と、
前記第2の観察手段または前記移動手段に設けられ、前記第2の観察手段の3次元位置を検出する第2の検出手段と、
前記画像データ保持手段の保持する前記術部の3次元画像データ、前記第1の検出手段、前記第2の検出手段および前記視野移動手段による前記第2の観察手段の視野の移動情報により、前記第2の観察手段が観察している前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、前記術部の3次元画像データに重畳して、前記演算部による演算結果により求められた前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を表示出力する演算部と、
を備えたことを特徴とする手術用顕微鏡システム。
【0094】
(付記項12) 前記第2の観察手段は、
挿入部を有する内視鏡と、
被検体の観察像を撮像する撮像手段、前記観察像の変倍を行う変倍光学系、および前記撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段、前記変倍光学系を移動させる変倍光学系移動手段のうちの少なくとも一方の手段、を有し、前記内視鏡に着脱自在に連結されるTVカメラと、
を備えたことを特徴とする付記項11に記載の手術用顕微鏡システム。
【0095】
(付記項13) 術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、
前記術部を観察する第1の観察手段と、
前記第1の観察手段に設けられ、前記第1の観察手段の3次元位置を検出する第1の検出手段と、
前記術部の所望の部位を観察する第2の観察手段と、
前記第2の観察手段に設けられ、前記第2の観察手段の視野を移動する視野移動手段と、
前記第2の観察手段を保持して移動し、所望の位置に固定する移動手段と、
前記第2の観察手段または前記移動手段に設けられ、前記第2の観察手段の3次元位置を検出する第2の検出手段と、
前記画像データ保持手段の保持する前記術部の3次元画像データ、前記第1の検出手段、前記第2の検出手段および前記視野移動手段による前記第2の観察手段の視野の移動情報により、前記第2の観察手段が観察している前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、前記術部の3次元画像データに重畳して、前記演算部による演算結果により求められた前記術部の所望の部位の、前記術部に対する3次元位置を表示出力する演算部と、
前記演算部の表示出力を表示する表示手段と、
前記表示手段で表示された前記術部の画像に対して前記第2の観察手段の観察する観察目的位置を入力する入力手段と、
前記入力手段からの信号に基づいて、前記観察目的位置に前記第2の観察手段の視野を移動させる観察手段駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする手術用顕微鏡システム。
【0096】
(付記項14) 術部に関する3次元画像データを保持する記憶部と、
前記術部の所望の部位を観察する内視鏡と、
この内視鏡に着脱自在に連結されるTVカメラと、
前記TVカメラに設けられ、前記TVカメラの視野を移動するCCD移動機構と、
前記TVカメラの3次元位置を検出するデジタイザと、
前記記憶部が保持する前記術部の3次元画像データ、前記デジタイザおよび前記CCD移動機構による前記TVカメラの視野の移動情報により、前記TVカメラが観察している前記術部の所望の部位の前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、この演算結果により求められた前記術部の所望の部位の前記術部に対する3次元位置を前記術部の3次元画像データに重畳して表示出力するワークステーションと
を具備することを特徴とする術部観察システム。
【0097】
(付記項15) 前記TVカメラの3次元位置を検出する手段は、前記TVカメラを保持する多関節マニピュレータの動作を検出することにより、生体座標系におけるTVカメラの観察位置を検出するものであることを特徴とする付記項14に記載の術部観察システム。
【0098】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、視野移動機能を有する内視鏡装置の観察位置を、術部に対する3次元位置として検出するようにしたので、手術用顕微鏡と、視野移動機能を備えた内視鏡装置とを組み合せたシステムを使用して、視野移動を行った場合でも、撮像画像の観察位置を正しく検出して術者に呈示することができる。
【0099】
請求項2の発明によれば、内視鏡と、この内視鏡に着脱自在に連結されるTVカメラとによって観察手段を構成し、内視鏡によって観察される被検体の観察像をTVカメラの撮像手段によって撮像して変倍光学系によって観察像の変倍を行うとともに、撮像範囲移動手段によって撮像手段の撮像範囲を移動させ、または変倍光学系移動手段によって変倍光学系を移動させるようにしたので、手術用顕微鏡と、視野移動機能を備えた内視鏡装置とを組み合せたシステムを使用して、視野移動を行った場合でも、撮像画像の観察位置を正しく検出して術者に呈示することができる。
【0100】
請求項3の発明によれば、請求項1の演算部からの表示出力を表示手段に表示させ、この表示手段で表示された術部の画像に対して入力手段によって観察手段が観察する観察目的位置を入力したのち、この入力手段からの信号に基いて観察手段駆動制御手段によって視野移動手段を駆動制御して観察目的位置に観察手段の視野を移動させるようにしたので、手術用顕微鏡と、視野移動機能を備えた内視鏡装置とを組み合せたシステムを使用して、視野移動を行った場合でも、撮像画像の観察位置を正しく検出して術者に呈示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態の術部観察システムにおける手術用顕微鏡システム全体の概略構成図。
【図2】 第1の実施の形態の手術用顕微鏡における鏡体部分を拡大して示す側面図。
【図3】 第1の実施の形態の手術用顕微鏡におけるシステム全体の接続状態を示すブロック図。
【図4】 第1の実施の形態の手術用顕微鏡における鏡体部の内部構成を示す縦断面図。
【図5】 第1の実施の形態の手術用顕微鏡におけるTVカメラの内部構成を示す縦断面図。
【図6】 本発明の第2の実施の形態の手術用顕微鏡におけるシステム全体の接続状態を示すブロック図。
【図7】 第2の実施の形態の手術用顕微鏡における鏡体部分を拡大して示す側面図。
【図8】 本発明の第3の実施の形態の手術用顕微鏡におけるシステム全体の接続状態を示すブロック図。
【図9】 第3の実施の形態の手術用顕微鏡における3次元画像データが表示されるモニタ画像を示す正面図。
【図10】 第3の実施の形態の手術用顕微鏡における視野移動動作指令の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
1 手術用顕微鏡
23 ワークステーション(演算部)
23a 記憶部(画像データ保持手段)
26 デジタイザ(位置検出手段)
33 硬性鏡(観察手段)
34 TVカメラ(観察手段)
37 モニタ(表示手段)
38 視野移動指令スイッチ(入力手段)
40 ズームレンズ(変倍光学系)
41 ズームレンズ移動機構(変倍光学系移動手段)
42 CCD(撮像手段)
43 CCD移動機構(撮像範囲移動手段)
Claims (3)
- 術部を顕微鏡観察する手術用顕微鏡と、
前記術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、
前記術部の所望の部位を観察する観察手段と、
を具備し、
前記手術用顕微鏡と、前記観察手段とを組み合せて手術前に得られた断層画像との統合を図る術部観察システムであって、
前記観察手段に設けられ、前記観察手段の位置を固定した状態で、前記観察手段の視野を移動する視野移動手段と、
前記観察手段の3次元位置を検出する位置検出手段と、
前記画像データ保持手段が保持する前記術部の3次元画像データ、前記位置検出手段および前記視野移動手段による前記観察手段の視野の移動情報により、前記観察手段が観察している前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、この演算結果により求められた前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を前記術部の3次元画像データに重畳して表示出力する演算部と
を具備することを特徴とする術部観察システム。 - 前記観察手段は、
管腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と、
この内視鏡に着脱自在に連結されるTVカメラとを具備し、
前記TVカメラは、
前記内視鏡によって観察される被検体の観察像を撮像する撮像手段と、
前記観察像の変倍を行う変倍光学系と、
前記内視鏡の位置を固定した状態で、少なくとも前記撮像手段の撮像範囲を移動させる撮像範囲移動手段または前記変倍光学系を移動させる変倍光学系移動手段のうちのいずれか一方と
を具備することを特徴とする請求項1に記載の術部観察システム。 - 術部を顕微鏡観察する手術用顕微鏡と、
前記術部に関する3次元画像データを保持する画像データ保持手段と、
前記術部の所望の部位を観察する観察手段と、
を具備し、
前記手術用顕微鏡と、前記観察手段とを組み合せて手術前に得られた断層画像との統合を図る術部観察システムであって、
前記観察手段に設けられ、前記観察手段の位置を固定した状態で、前記観察手段の視野を移動する視野移動手段と、
前記観察手段の3次元位置を検出する位置検出手段と、
前記画像データ保持手段が保持する前記術部の3次元画像データ、前記位置検出手段および前記視野移動手段による前記観察手段の視野の移動情報により、前記観察手段が観察している前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を演算するとともに、この演算結果により求められた前記術部の観察部位の前記術部に対する3次元位置を前記術部の3次元画像データに重畳して表示出力する演算部と、
この演算部からの表示出力を表示する表示手段と、
この表示手段で表示された前記術部の画像に対して前記観察手段が観察する観察目的位置を入力する入力手段と、
この入力手段からの信号に基いて前記視野移動手段を駆動制御して前記観察目的位置に前記観察手段の視野を移動させる観察手段駆動制御手段と
を具備することを特徴とする術部観察システム。
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