JP4459401B2 - 複合材ビームの成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複合材ビームの成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化複合材(プリプレグ)からなる複合材ビームは軽量で高強度であるため、自動車、船舶、航空機等の構造部材として広く使用されている。従来、I型、J型、T型等の断面形状を有する複合材ビームが多用されている。
【0003】
図1はウェブとフランジを有する複合材I型ビームの一例を示す斜視図である。通常、複合材I型ビーム1を成形する際には2組(4型)の合わせ型を用いるマッチドダイ成形法が用いられる。この方法では、図2に示すように一対のコ字状積層体2に複合材からなる楔形充填材4aを載置し、更に平板状積層体3を配置し、2個のウェブ成形型5a及び2個のフランジ成形型5bを用いて成形する。楔形充填材4aの充填量はコ字状積層体2及び平板状積層体3により形成される楔形空間の空間量より大きくする。そのため、フランジ成形型5bにより強制的にフランジを抑えて、フランジに凸部が形成されてしまうことを防ぐ必要がある。従ってこの方法では多数の成形型が必須であり高コスト化が避けられない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形不良を抑制でき低コスト化が可能な複合材ビームの成形方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、複合材ビームを成形する際に上記充填材の充填量を特定の値に設定することにより、成形型の数を削減しても成形不良を抑制でき、成形コストを低減できることを発見し、本発明に想到した。
【0006】
すなわち、本発明の複合材ビームの成形方法は、(a)成形型上に板厚Tを有する複合材積層体を敷いて、ウェブ部及びフランジ部、並びにそれらの間に形成された内側曲率半径Rを有するコーナー部を含む積層体Iを成形する工程、(b)一対の積層体Iを組み合わせ、それらのコーナー部に、板厚tと幅Cを有する複合材積層体を幅C方向に丸めて作製した充填材を載置し、その上に複合材からなる平板状の積層体IIを配置する工程、及び(c)加熱・加圧により積層体I、充填材及び積層体IIを一体硬化する工程を含み、積層体Iのコーナー部及び積層体IIにより形成される楔形空間の軸方向に垂直な断面積Sは下記式:
S=(4−π)・(R+T)2/2
により表され、充填材の軸方向に垂直な断面積(t・C)が下記式:
t・C=S
を満たすように板厚t及び幅Cを設定することを特徴とする。
【0007】
本発明の複合材ビームの成形方法においては、一体硬化する際に積層体IIの上に平板状成形板を載置するのが好ましい。また、本発明の複合材ビームの成形方法はI型の断面形状を有する複合材ビームの成形に特に好ましく適用できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の複合材ビームの成形方法は、(a)成形型上に複合材積層体を敷いて、ウェブ部及びフランジ部、並びにそれらの間に形成されたコーナー部を含む積層体Iを成形する工程、(b)一対の積層体Iを組み合わせ、それらのコーナー部に充填材を載置し、その上に平板状の積層体IIを配置する工程、及び(c)加熱・加圧により積層体I、充填材及び積層体IIを一体硬化する工程を含む。
【0009】
上記積層体I、充填材及び積層体IIは繊維強化複合材からなる。本発明では、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維に熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等)又は熱可塑性樹脂(PEEK、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート等)を含浸させてなる繊維強化複合材が使用可能である。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂としてはナイロンが好ましい。強化繊維と熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂との配合割合は任意に調整しうる。積層体I、充填材及び積層体IIを形成する繊維強化複合材は同じでも異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
【0010】
本発明で用いる複合材積層体の積層構造(各複合材の繊維方向)は特に限定されず、例えば(±45°/0°/0°/0°/0-90°)等に配列してよい。また積層数も任意に決定すればよい。
【0011】
成形型としては、例えば鉄、アルミ、繊維強化複合材等からなるものが使用できる。
【0012】
積層体I、充填材及び積層体IIを一体硬化する際の加熱・加圧はオートクレーブ等を用いて行うのが好ましい。加熱温度は120〜250℃とするのが好ましい。加熱温度が250℃より高いと樹脂が劣化し、120℃より低いと樹脂が未反応となるため好ましくない。また加圧は6〜7kg/cm2とするのが好ましい。7kg/cm2より大きいと樹脂不足となり、6kg/cm2より小さいとボイドが発生しやすくなるため好ましくない。加熱・加圧は積層体と成形型をバギングフィルム、真空バッグ等で覆って行うことができる。
【0013】
本発明はI型、J型、T型等の断面形状を有する複合材ビームの成形に好ましく適用できる。以下、本発明により図1に示す複合材I型ビーム1を成形する場合について図面を用いて詳細に説明するが、本発明はそれらにより限定されるものではない。
【0014】
図3に示すように、まず成形型5cに複合材積層体を敷いて、ウェブ部及びフランジ部、並びにそれらの間に形成されたコーナー部を含むコ字状積層体2を得る。複合材積層体は所定の板厚Tを有する。また、コーナー部は所定の内側曲率半径Rを有する。
【0015】
上記のように得られた一対のコ字状積層体2をウェブ部で組み合わせ、それらのコーナー部に充填材4bを載置し、更にその上に平板状積層体3を配置する。続いてこれらを一体硬化し、I型ビームを得る。充填材4bは、図4(a)に示す板厚tと幅Cを有する複合材積層体7を用いて、図4(b)のように丸めて作製してよい。
【0016】
コ字状積層体2のコーナー部の外側曲率半径は実質的に(R+T)として良いので、該コーナー部及び平板状積層体3により形成される楔形空間の軸方向に垂直な断面積Sは下記式: S=2(R+T)2−2[π/4(R+T)2] =(4−π)・(R+T)2/2 により表される。本発明では上記充填材の側面積(t・C)を上記楔形空間の軸方向に垂直な断面積Sに等しくなるように設定する。即ち、下記式: t・C=S を満たすように板厚t及び幅Cを設定する。例えば、成形型5cに厚さ0.2mmの複合材10枚を積層して板厚Tが2mm、内側曲率半径Rが3mmのコ字状積層体2を成形し、このコ字状積層体2のコーナー部に板厚tが0.2mmの複合材1枚からなる充填材4bを載置し、更に平板状積層体3を配置して一体硬化する場合には、上記楔形空間の面積はS=(4−π)・(3+2)2/2=10.73[mm2]であるので、充填材4bをなす複合材の幅Cは、C=S/t=10.73/0.2=53.65[mm]に設定すればよい。これによりフランジ部に凸部が生じず、フランジ成形型が実質不要となる。
【0017】
一体硬化する際には平板状積層体3の上に薄い平板状成形板6(プレッシャープレート)を載置するのが好ましい。平板状成形板は鉄、アルミ、繊維強化複合材等の材質からなるのが好ましい。平板状成形板の厚みは0.5〜1.5mmであるのが好ましい。このように本発明で用いる平板状成形板は非常に薄く軽量であるので、形状になじみやすく、取り扱いが容易である。
【0018】
以上の通り、図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
【0019】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の複合材ビームの成形方法によれば、成形不良のない複合材ビームを低コストで成形できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 複合材I型ビームの一例を示す斜視図である。
【図2】 従来のマッチドダイ成形法により図1に示す複合材I型ビームを成形する様子を示す正面図である。
【図3】 本発明の成形方法により図1に示す複合材I型ビームを成形する様子を示す正面図である。
【図4】 本発明で用いる充填材を作製する様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
1・・・複合材I型ビーム
2・・・コ字状積層体
3・・・平板状積層体
4a、4b・・・充填材
5a、5b、5c・・・成形型
6・・・平板状成形板
7・・・複合材積層体

Claims (2)

  1. (a)成形型上に板厚Tを有する複合材積層体を敷いて、ウェブ部及びフランジ部、並びにそれらの間に形成された内側曲率半径Rを有するコーナー部を含む積層体Iを成形する工程、(b)一対の前記積層体Iを組み合わせ、それらの前記コーナー部に、板厚tと幅Cを有する一枚の複合材積層体を幅C方向に丸めて作製した充填材を載置し、その上に複合材からなる平板状の積層体IIを配置する工程、及び(c)前記積層体IIの上に厚み0.5〜1.5 mmの平板状成形板を載置し、加熱・加圧により前記積層体I、充填材及び積層体IIを一体硬化する工程を含む複合材ビームの成形方法において、
    前記積層体Iのコーナー部及び前記積層体IIにより形成される楔形空間の軸方向に垂直な断面積Sは下記式:
    S=(4−π)・(R+T)2/2
    により表され、前記充填材の軸方向に垂直な断面積(t・C)が下記式:
    t・C=S
    を満たすように前記板厚t及び幅Cを設定することを特徴とする複合材ビームの成形方法。
  2. 請求項1に記載の複合材ビームの成形方法において、前記積層体Iはコ字状であり、前記複合材ビームはI型の断面形状を有することを特徴とする複合材ビームの成形方法。
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