JP4455689B2 - スパッタリング装置のマグネトロンカソード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスパッタリング装置のマグネトロンカソードに関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリング装置に使用するマグネトロンカソードの形状としては種々のものが提案されているが、それらの多くは、(1)得られる膜の膜厚分布の向上、(2)ターゲットの有効利用、(3)カソードからのパーティクルの低減、の少なくともいずれかを目的としている。
【0003】
膜厚分布の向上は、ターゲットのエロージョン領域をできるだけ大きくするようにカソード構造を工夫することで達成できることが知られている。また、表面が傾斜したターゲットや、円筒状のターゲットを用いることなども考えられてきた。表面が傾斜したターゲットの公知例としては、特開平3−28369号公報や特開平5−287524号公報に記載のものが知られている。
【0004】
ターゲットの有効利用に関しては、エロージョン領域での急峻性を緩和させて寿命を長くしたり、マグネットを回転させてエロージョン領域を広げたりすることで利用効率を向上させる方法が提案されている。
【0005】
カソードからのパーティクルの低減に関しては、ターゲット周辺のシールド形状を工夫するなどの構造的な対策のほかに、ターゲット全面をエロージョン領域にすることでターゲット表面に膜が堆積しないようにすることが有効であることが認識されてきた。
【0006】
ところで、マグネトロンカソードに要求される性能は成膜用途によって異なってくる。例えば、磁気ディスクや光ディスクなどのディスク状記憶媒体を成膜する場合を考えてみると、膜厚分布の均一性の向上とパーティクルの低減とが最も大きな問題となる。それ以外の問題はさほど重要ではない。このディスク状記憶媒体の成膜の分野では、半導体デバイス用の成膜のような1μm程度の厚い成膜は必要ないので、ターゲットの利用効率や寿命はそれほど大きな問題ではなく、また、半導体デバイスでは極力避けるべきとされる斜め入射もそれほど大きな問題とはならない。
【0007】
また、半導体デバイス用のスパッタリング装置の場合は、膜質特性の制限から膜質の均一な部分を使用するために、ターゲット径を大きくする傾向があるが、ディスク媒体用のスパッタリング装置では、コスト面の制約から半導体デバイス用に比べて比較的小径のターゲットを使用することが多い。このような背景から、ディスク状記憶媒体用のスパッタリング装置に使用するカソードは、ターゲット寿命までの総膜厚量はそれほど重要ではないが、長時間安定して連続使用できることが要求される。
【0008】
図15は一般的な従来のマグネトロンスパッタリング装置の正面断面図である。カソード10の表面にはターゲットが12があり、カソード10の内部には磁石ユニット14がある。磁石ユニット14はターゲット12の表面に磁力線16を発生させる。ターゲット12は成膜を行うごとに侵食され、エロージョン領域13を形成する。カソード10は絶縁部品18によって真空容器20から電気的に絶縁されていて、高圧電源(図示せず)に接続されている。成膜する基板22は基板ホルダー24で支持している。基板の形状及び基板ホルダーの形状は、目的とされるデバイスの要求により最適な構造を選択することになる。図15では排気系やガス導入系は図示を省略してある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
通常のマグネトロンカソードの場合には、その膜厚分布はターゲットの侵食部分であるエロージョン領域の形状に大きく依存することが知られている。したがって、エロージョン領域をターゲットの外周側に持って行くことにより膜厚分布を向上させることができる。または、より大きなターゲットを使用することでも膜厚分布を向上させることができる。
【0010】
さらに、膜厚分布を向上させる別の手段として、図16に示す形状のターゲットを用いることも知られている。図16のターゲット26は環状であり、その表面は中心部分が低くなったテーパ状である。すなわち、ターゲット26の断面形状において、中心部が低くて外周部が高い傾斜面28となっている。このターゲット26は外周部を磁石30で取り囲んであり、底部はヨーク32で取り囲んである。ターゲット26の中心部分には貫通孔を形成してあり、この貫通孔に陽極34を配置している。ターゲット26の傾斜面28の表面には磁石30によって磁力線36が形成される。このカソードは、同等の大きさのエロージョン領域をもつ平板状のカソードに比べて膜厚分布が良好である。その理由は、ターゲットよりも小さな基板に成膜することを想定すると、ターゲットから放出されるスパッタ粒子の放出量最大となる方向(ターゲット表面の法線方向)が基板側を向くからである。これにより、基板の外周部での膜付着効率が向上する。なお、ターゲットからの放出量は放出角度に依存しており、コサイン(cos)法則にほぼ従う。すなわち、ターゲット表面の法線方向に最も放出量が大きく、法線方向から離れるにしたがって放出量が減少していく。
【0011】
図16のようなターゲットを使うと、基板上での膜厚分布は向上するが、ターゲットの内周部分や陽極34に膜が付着してしまい、剥がれやすい成膜材料の場合はカソードからのパーティクル発生量が多くなる問題があった。
【0012】
次に、カソードからパーティクルが発生する問題を説明する。図17(A)は平板状のターゲット12の形状変化を示す断面図である。エロージョン領域13がターゲット12の外周付近にある場合には、ターゲットの中心付近には膜38が堆積してしまう。
【0013】
そこで、これを解決するために、マグネトロンカソードに内蔵した磁石を回転させることでエロージョン領域を中心領域まで拡大させることが行われている。図18は回転式の磁石ユニットを備えたマグネトロンカソードを示しており、(A)は磁石ユニットの動きを説明する平面図であり、(B)はマグネトロンカソードの正面断面図である。磁石ユニット14はモータ40によって駆動されて、ターゲット表面に垂直な方向から見て回転中心42の回りを回転する。これにより、エロージョン領域13がターゲット12の中心部まで拡大する。その結果、ターゲット12の中心付近に膜が堆積するのを防ぐことができる。
【0014】
次に、ターゲットの外周付近での膜堆積について説明する。図17(B)はターゲットの外周付近の拡大断面図である。ターゲット12の外周付近では、まず、ターゲットシールド44の表面に膜46が堆積する。さらに、ターゲットシールド44とターゲット12との隙間からスパッタ粒子が入り込んで、ターゲット12の周囲における裏板48の表面に膜50が堆積する。特に絶縁膜を成膜する場合には、膜50は絶縁膜となるから、カソードと膜50の表面との電位差によってアークが発生しやすくなり、パーティクル発生の原因となっていた。
【0015】
ところで、中心部分に孔を形成したハードディスクを両面同時に成膜するスパッタリング装置では、一方のターゲットから飛来する物質がハードディスクの孔を通過して他方のターゲットの中心付近に堆積することもある。したがって、このような両面スパッタリング装置では、片面スパッタリング装置と比較して、ターゲットの中心部分の膜堆積が顕著になる。ゆえに、両面スパッタリング装置ではターゲットの全面をエロージョン領域にすることが特に重要になる。ターゲットの全面をエロージョン領域にするには、ターゲットの中央部分での侵食量を増加させる必要があるが、そうすると、膜厚分布の観点からは基板の中心付近で膜厚が厚くなってしまうという問題が生じる。また、ターゲットの全面をエロージョン領域にした場合でも、ターゲットの周囲のターゲットシールドやターゲット押さえに膜が付着してしまう現象は改善されていない。
【0016】
以上説明したように、従来技術においては、膜厚分布を向上させることと、ターゲット表面への膜付着量を減らすことを両立させることは困難であった。また、ターゲット周辺に設けたターゲットシールドに堆積する膜付着量を減らすことも難しかった。
【0017】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ターゲット径をそれほど大きくせずに基板上の膜厚分布を向上させて、かつ、ターゲットのほぼ全面をエロージョン領域にしてターゲット表面からのパーティクルの発生を防ぐことにある。また、本発明の別の目的は、ターゲット周辺のターゲットシールドへの膜付着量を減らして、ターゲットシールドからのパーティクルの発生を防ぐことにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、移動式の磁石ユニットをターゲットの背面に配置したタイプのマグネトロンカソードにおいて、円形のターゲットの表面を、中央の円形の平坦部と、この平坦部よりも外側に位置する傾斜部とで構成したものである。この傾斜部は、ターゲットの外周に近づくにつれて磁石ユニットから離れるような方向に傾斜している。簡単に言えば、この傾斜部は、ターゲットの内側に向かって傾斜している。ターゲットの底面が平面であると仮定すれば、前記傾斜部は、ターゲットの外周に近づくにつれてターゲットが厚くなるような方向に傾斜していることになる。そして、ターゲットの直径に対する平坦部の直径の比率は15〜60%である。
【0019】
基板を静止して成膜することを考えると、均一な膜厚分布を得るためには、ターゲットよりも小さな基板に成膜することになる。その場合、上述の傾斜部におけるスパッタ粒子の最大放出方向(ターゲット表面の法線方向)が基板側を向くので、基板の外周付近での膜厚の減少を抑え、膜厚分布が均一になる。また、成膜中に磁石ユニットを移動させることで、ターゲットのほぼ全面をエロージョン領域にすることができるので、ターゲットの表面に膜が堆積することがなくなり、ターゲット上でのパーティクルの発生を防ぐことができる。従来は、ターゲットの全面をエロージョン領域にすると、どうしても基板の外周付近の膜厚が中央部よりも薄くなってしまったが、上述のようにターゲットの外周部に傾斜部を設けることで、全面エロージョン領域と良好な膜厚分布とを両立させることが可能となった。
【0020】
本発明は、ディスク状記憶媒体用のスパッタリング装置のように、成膜膜厚は薄くてもよいが、膜厚分布が良好で膜の欠陥密度も低いことが要求されるような用途に特に適している。
【0021】
ターゲットの上述の傾斜部の傾斜角度αは5度〜45度の範囲内にするのが好ましい。5度以下にすると、膜厚分布を向上させる効果が十分でない。一方、45度以上にすると、ターゲットから放出されたスパッタ粒子がターゲット面に再付着する量が増加し好ましくない。
【0022】
ターゲットの外周部には、ターゲットの材質よりも透磁率の高い材料を、ターゲットの表面に露出しないように組み込むことができる。こうすると、磁石ユニットの発生する磁力線がターゲットの最外周側に引き寄せられ、エロージョン領域がターゲットの最外周側まで広がることになる。上述の傾斜部の存在により、ターゲットの外周部は中心部と比較して、磁石ユニットから離れることになるので、ターゲットの外周部では、ターゲットの表面に洩れてくる磁力線の強度がターゲットの中心部よりも小さくなってしまう。そこで、上述のように高透磁率材料をターゲットの外周部に組み込むことで、磁力線を外周部側に引き寄せて、外周部での磁力線の強度の低下を防ぐことができる。この高透磁率材料におけるターゲットの表面に対向する面は、ターゲットの外周に近づくにつれて磁石ユニットから離れるような方向に傾斜している。すなわち、ターゲットの傾斜部と同様の方向に傾斜している。上述の高透磁率材料はターゲットの中央部には組み込まれていない。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1の実施形態のマグネトロンカソードを示しており、(A)は磁石ユニットの動きを説明する平面図であり、(B)はマグネトロンカソードの正面断面図である。概略円形のカソード10の表面には概略円形のターゲット52があり、カソード10の内部には磁石ユニット14がある。磁石ユニット14はモータ40によって駆動されて回転中心42の回りを回転する。磁石ユニット14の中心は回転中心42から偏心している。ターゲット52の平坦部54(後述する)に垂直な方向から見て、回転中心42はターゲット52の中心と一致している。カソード10は絶縁部品18によって真空容器20から電気的に絶縁されていて、高圧電源(図示せず)に接続されている。
【0024】
このマグネトロンカソードが図18の従来のカソードと異なる点は、ターゲット52の形状にある。ターゲット52は、その断面形状において、中央の平坦部54とそれよりも外側に位置する傾斜部56とからなる。平坦部54はカソード10の電極面60(裏板48の表面)と平行になっている。ターゲット52の側面62は平坦部54に対して垂直である。
【0025】
図6はターゲット52の斜視図であり、一部を切り欠いて示してある。中央は平坦部54であり、それよりも外側は、上に向かって広がる切頭円錐面58となっている。この切頭円錐面58を正面断面図で見ると図1(B)に示すような傾斜部56となる。この傾斜部56は、ターゲット10の外周に近づくにつれて磁石ユニット14から離れる方向に傾斜している。すなわち、ターゲット10の外周に近づくにつれてターゲット10が厚くなる方向に傾斜している。この傾斜部56は、平坦部54の延長線55に対して角度αだけ傾斜している。
【0026】
図1に示すような形状のターゲットを使うと、傾斜部56におけるスパッタ粒子の最大放出方向(ターゲット表面の法線方向)が基板側を向くために、基板の外周付近での膜厚の減少を抑え、膜厚分布が均一になる。
【0027】
図4は図1に示すターゲット52を使用していった場合の形状変化を示している。ターゲット52の表面において、一点鎖線64が元の表面形状であり、実線66が侵食された形状である。回転する磁石ユニット14の働きによってエロージョン領域はターゲット52の中心付近まで広がり、ターゲット52のほぼ全面にエロージョン領域が広がっている。したがって、ターゲット表面に膜が付着せず、ターゲット表面からのパーティクルの発生を防ぐことができる。ターゲット52の側面62はエロージョン領域の外側になるので侵食はほとんど認められない。
【0028】
図5は図4におけるターゲットシールド44の付近を示す拡大断面図である。ターゲット52の側面62の上端はターゲットシールド44の表面よりも上に大きく突き出している。その結果、ターゲットシールド44はターゲット52の側面62の陰になり、ターゲットシールド44の表面に堆積する膜46の付着量は、図17(B)に示す従来例と比較して非常に少なくなる。しかも、ターゲット52の表面の外周付近はターゲット52の内側に向かって傾斜しているので、ターゲット52の表面から放出されるスパッタ粒子がターゲットシールド44に到達する確率はなおさら低くなる。ターゲット52の周囲における裏板48の表面に堆積する膜50についても、ターゲットシールド44の表面の場合と同様に、堆積量が非常に少なくなる。ターゲットシールド44等に堆積する膜付着量が少なくなると、スパッタリング装置のメンテナンスサイクルを長くでき、スパッタリング装置の運用コストが下がる効果がある。
【0029】
図1(B)のターゲット形状を見ると分かるように、このターゲット52は外周付近が相当厚くなる。したがって、ターゲット表面に現れる磁場の強さは、ターゲットの外周付近で弱くならざるを得ない。これを避けるには内蔵磁石の構造を工夫することが考えられるが、その代わりに、図2に示すようにターゲットを工夫することでこの問題を解決することができる。
【0030】
図2は本発明の第2の実施形態の正面断面図である。このターゲット68は外周付近にリング70を組み込んである。このリング70は、ターゲット68の材質に比べて透磁率の高い材質(例えば鉄や鉄合金)でできている。このリング70はターゲット68の表面(上面側)に露出することはない。この高透磁率のリング70の働きで、ターゲット68の外周付近の磁力線16は最外周側に引き寄せられ、その結果、エロージョン領域はターゲット68の最外周側まで広がることになる。
【0031】
図3は図2に示すターゲットの外周付近を拡大して示す断面図である。高透磁率のリング70に磁力線16は集中し、その結果、磁力線16はターゲット68の最外周部から洩れるようになる。これにより、エロージョン領域が最外周付近まで広がる。図3に示すように、高透磁率のリング70は、ターゲット68の表面に対向する面(図3においては上面)が、ターゲットの外周に近づくにつれて磁石ユニットから離れるような方向に傾斜している。すなわち、ターゲット68の傾斜部と同様の方向に傾斜している。また、図2に示すように、高透磁率材料はターゲット68の中央部には組み込まれていない。
【0032】
次に、従来のカソードで成膜した場合の膜厚分布と本発明のカソードで成膜した場合の膜厚分布とを比較する。図7は図18に示す従来のマグネトロンカソードで成膜した場合の基板上の膜厚分布のグラフである。横軸は基板の中心からの距離、縦軸は規格化膜厚(基板上の最大膜厚を100%として規格化したもの)である。使用したターゲットの直径は164mmである。ターゲットの材質は高純度カーボンである。基板の直径は95mmである。ターゲット・基板間距離は37mmである。得られた膜厚分布は、基板上の直径90mmの測定範囲内で±12%であった。
【0033】
これに対して、図8は図1に示す本発明のマグネトロンカソードで成膜した場合の膜厚分布のグラフである。ターゲットの直径は164mmで、中央の平坦部54の直径は64mmである。ターゲットの直径に対する平坦部の直径の比率は約39%である。平坦部54よりも外側の傾斜部56の傾斜角度α(図1を参照)は23.5度である。ターゲットの材質は高純度カーボンである。基板の直径は95mmである。ターゲット・基板間距離は41mmである。得られた膜厚分布は、基板上の直径90mmの測定範囲内で±4.5%であった。このように、図1(B)に示す形状のターゲットを用いることで膜厚分布が向上した。
【0034】
次に、別のターゲットを用いて成膜した例を説明する。図9は図18に示す従来のマグネトロンカソードで成膜した場合の基板上の膜厚分布を等高線で表示したグラフである。横軸は基板の中心からのX方向の距離(X座標)であり、縦軸は基板の中心からのY方向の距離(Y座標)である。使用したターゲットの直径は203mmである。ターゲットの材質はアルミニウムである。基板の直径は130mmである。ターゲット・基板間距離は55mmである。図10は図9に示した等高線表示のグラフを、X方向における膜厚分布のグラフと、Y方向における膜厚分布のグラフとで示したものである。図9と図10において、基板上の直径120mmの測定範囲内での膜厚分布は±6.6%であった。また、図10のX方向のグラフにおいて、図の左側の領域における膜厚が右側の領域における膜厚よりも厚くなっている。このような非対称の膜厚分布は、カソードの周辺のシールド等によるプラズマの偏在に起因するものと考えられる。したがって、従来のマグネトロンカソードを使った場合の膜厚分布は、カソードの周辺の影響を受けていることになる。なお、図9は、等高線グラフの形状が八角形になっているが、これは膜厚測定点(周方向に8個所)を直線的に結んでグラフ化したことによるものであり、八角形に特別な意味はない。測定点を増やせば膜厚分布の等高線は滑らかな曲線になるものと考えられる。後述の図11と図13も同様である。
【0035】
図11は図1に示す本発明のマグネトロンカソードで成膜した場合の基板上の膜厚分布を等高線で表示したグラフである。使用したターゲットの直径は203mmである。ターゲットの材質はアルミニウムである。基板の直径は130mmである。ターゲットの中央の平坦部54の直径は40mmである。ターゲットの直径に対する平坦部の直径の比率は約20%である。平坦部54よりも外側の傾斜部56の傾斜角度αは約3度である。ターゲット・基板間距離は53mmである。図12は図11に示した等高線表示のグラフを、X方向における膜厚分布のグラフと、Y方向における膜厚分布のグラフとで示したものである。図11と図12において、基板上の直径120mmの測定範囲内での膜厚分布は±6.0%であった。図10で見られたような膜厚分布の非対称性は図12では少し抑制されている。
【0036】
図13及び図14は、ターゲットの傾斜部の傾斜角度αを約3度から約9度に変更した場合における図11及び図12と同様のグラフである。傾斜角度以外の条件は図11及び図12と同じである。この図13と図14では基板上の直径120mmの測定範囲内での膜厚分布は±3.3%まで向上した。また、図10で見られたような膜厚分布の非対称性は図14では全くなくなった。
【0037】
図9〜図14に示した実験結果及びその他の実験結果を総合的に検討すると、図1に示すターゲットの傾斜部56の傾斜角度は次のようにするのが好ましい。まず、膜厚分布を向上させるには、傾斜角度は5度以上にするのが効果的である。5度以下の場合は、膜厚分布を向上させる効果は十分ではない。一方、傾斜角度を45度以上にすると、ターゲットから放出されたスパッタ粒子がターゲット面に再付着する量が増加し、好ましくない。したがって、傾斜角度の最大許容値は45度程度である。ゆえに、傾斜角度の好ましい角度範囲は5度〜45度である。
【0038】
ところで、ターゲットに傾斜部を形成すると、ターゲットの価格が上昇し、また加工も困難になるという問題が生じる。しかしながら、ターゲットの価格の問題は、ターゲットの寿命や、スパッタリング装置のメンテナンス・コストも加味して、総合的に判断すべき問題である。傾斜部を形成したターゲットを使用することで、ターゲットの寿命が延びて、メンテナンス・コストも下げることができれば、全体的にはコスト低下につながると考えられる。
【0039】
一方、加工上の問題については、ターゲット材質によっては傾斜部を形成するのが困難なものがある。しかし、傾斜角度を小さくすれば加工はしやすくなるので、その場合は、傾斜角度を5度程度と小さくしてもよい。その場合でも、平坦なターゲットと比較すれば、膜厚分布の改善が少しは期待できる。
【0040】
本発明において、ターゲットの厚さや、平坦部と傾斜部の割合、傾斜部の角度などは、さまざまに選択することが可能である。本発明においては、ターゲットの外周部に傾斜部を設けたことによる膜厚分布の改良度合は、ターゲット寸法と基板寸法の比率や、ターゲット・基板間距離に依存するので、これらの条件に応じて、ターゲットの平坦部と傾斜部の割合や、傾斜部の角度についての最適な値を実験的に定めることができる。また、カソードに内蔵する回転磁石ユニットの構造についても特に限定はなく、ターゲットのほぼ全面にエロージョン領域が広がれば、図1に示す以外の構造でもかまわない。さらに、図2に示す高透磁率のリング66の材質についても、ターゲットの材質やその他の条件を考慮して、鉄や鉄合金以外の材質を使ってもかまわない。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、移動式の磁石ユニットをターゲットの背面に配置したタイプのマグネトロンカソードにおいて、ターゲット表面の中央を平坦にして外周部を内側に向かって傾斜させたので、基板上の膜厚分布が向上する。これにより、比較的小径のターゲットを用いても、大径のターゲットを用いたのと同等の良好な膜厚分布を得ることができる。また、成膜中に磁石ユニットを移動させることで、ターゲットのほぼ全面をエロージョン領域にできるので、ターゲットの表面に膜が堆積することがなく、ターゲットからのパーティクルの発生を防ぐことができる。さらに、ターゲットの側面が平坦部に対して垂直になっていて、かつ、ターゲットの外周部が内側に向かって傾斜していることにより、ターゲットを取り囲むターゲットシールドに膜が堆積しにくくなり、ターゲットシールドからのパーティクルの発生も少なくなる。ターゲットシールドに膜が堆積しにくくなれば、スパッタリング装置のメンテナンスサイクルも長くでき、装置の運用コストが低くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のマグネトロンカソードにおいて磁石ユニットの動きを説明する平面図と、マグネトロンカソードの正面断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の正面断面図である。
【図3】図2に示すターゲットの外周付近を拡大して示す断面図である。
【図4】図1に示すターゲットの形状変化を示す断面図である。
【図5】図1のマグネトロンカソードにおけるターゲットシールドの付近を示す拡大断面図である
【図6】図1に示すターゲットの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図7】図18に示す従来のマグネトロンカソードで成膜した場合の基板上の膜厚分布のグラフである。
【図8】図1に示す本発明のマグネトロンカソードで成膜した場合の膜厚分布のグラフである。
【図9】図18に示す従来のマグネトロンカソードで成膜した場合の基板上の膜厚分布を等高線で表示したグラフである。
【図10】図9に示した等高線表示のグラフを、X方向における膜厚分布のグラフと、Y方向における膜厚分布のグラフとで示したものである。
【図11】図1に示す本発明のマグネトロンカソードで成膜した場合の基板上の膜厚分布を等高線で表示したグラフである。
【図12】図11に示した等高線表示のグラフを、X方向における膜厚分布のグラフと、Y方向における膜厚分布のグラフとで示したものである。
【図13】ターゲットの傾斜部の傾斜角度を約3度から約9度に変更した場合における図11と同様のグラフである。
【図14】ターゲットの傾斜部の傾斜角度を約3度から約9度に変更した場合における図12と同様のグラフである。
【図15】一般的な従来のマグネトロンスパッタリング装置の正面断面図である。
【図16】従来の別のターゲットの正面断面図である。
【図17】平板状のターゲットの形状変化を示す正面断面図とターゲットの外周付近の拡大断面図である。
【図18】回転式の磁石ユニットを備えた従来のマグネトロンカソードにおいて磁石ユニットの動きを説明する平面図と、マグネトロンカソードの正面断面図である。
【符号の説明】
10 カソード
14 磁石ユニット
40 モータ
44 ターゲットシールド
52 ターゲット
54 平坦部
56 傾斜部
62 側面
70 リング
Claims (4)
- 円形のターゲットと、前記ターゲットの裏側に配置された磁石ユニットと、前記磁石ユニットを前記ターゲットに対して移動させる磁石ユニット移動機構とを備えるスパッタリング装置のマグネトロンカソードにおいて、前記ターゲットの表面が、中央の円形の平坦部と、前記平坦部よりも外側に位置する傾斜部とからなり、前記傾斜部はターゲットの外周に近づくにつれて前記磁石ユニットから離れるような方向に傾斜しており、この傾斜部は、前記平坦部の延長線に対して傾斜角度αで傾斜していて、この傾斜角度αが5度〜45度の範囲内であり、前記ターゲットの直径に対する前記平坦部の直径の比率は15〜60%であり、前記ターゲットの外周部において、ターゲットの材質よりも透磁率の高い材料(以下「高透磁率材料」という。)が、ターゲットの表面に露出しないようにターゲットに組み込まれていて、前記高透磁率材料における前記ターゲットの表面に対向する面は、前記ターゲットの外周に近づくにつれて前記磁石ユニットから離れるような方向に傾斜していて、前記ターゲットの中央部では、前記高透磁率材料がターゲットに組み込まれていないことを特徴とするマグネトロンカソード。
- 請求項1に記載のマグネトロンカソードにおいて、前記平坦部に垂直な方向から見て、前記磁石ユニットの中心は前記ターゲットの中心から偏心しており、前記磁石ユニット移動機構の働きによって前記磁石ユニットは前記ターゲットの中心の回りを回転することを特徴とするマグネトロンカソード。
- 請求項1または2に記載のマグネトロンカソードにおいて、前記ターゲットの側面は前記平坦部に対して垂直であることを特徴とするマグネトロンカソード。
- 請求項1から3までのいずれか1項に記載のマグネトロンカソードにおいて、前記ターゲットの側面の上端はターゲットシールドの表面よりも上に突き出していることを特徴とするマグネトロンカソード。
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