JP4452331B2 - ママスタチンのヌクレオチドおよびタンパク質配列およびその使用法 - Google Patents

ママスタチンのヌクレオチドおよびタンパク質配列およびその使用法 Download PDF

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Description

発明の背景技術
乳癌は米国単独で毎年45,000人の女性を死亡させる疾患である。年間180,000件を超える乳癌の新症例が診断され、8人に1人の女性が乳癌になると推定されている。これらの数値は、乳癌が今日の女性が直面する最も危険な疾患のうちの1つであることを示している。癌の研究では、乳癌の原因を決定することができず、適当な癌療法または妨害法を見出さなかった。
乳癌と診断された女性は、外科的療法、ホルモン療法、化学療法および放射線療法により治療されるであろう。患者が転移性乳癌を患っているならば、脳、骨および肝臓などの離れた領域における癌を除去するために、放射線および多用量の化学療法が必要でなる。
乳癌の治療に利用可能な現在の療法は、有毒、危険、高価であり、その多くは特に、転移性乳癌の治療に無効である。下記の表はチャーチル・リビングストン(Churchill Livingston)、Clinical Oncology,1995から抜粋したものであり、現在の治療方法および予期される生存率に関して利用可能であるデータをまとめている。
Figure 0004452331
現在、リンパ節または遠位部位に転移した乳癌の長期治療に有効である療法は全くない。局所疾患は、癌全部を除去することができるなら、外科的手術によって有効に治療され得る。乳癌および転移性癌に由来する細胞の増殖を停止できる乳癌の有効な新規の治療法が即急に必要である。そのような療法は局所の乳癌の治療、転移性疾患の長期にわたる治療に有用であり、および腫瘍の外科的切除の後の追跡治療として有用である。他の応用には、初期治療としておよび防御的使用としての増殖インヒビターを含む。
乳房X線写真、身体検査、CAT−スキャン、および超音波などの乳癌の検出方法は、乳癌の初期検出を有意に改善した。しかしながら、これらの方法を用いて、疑わしい腫瘍はさらに、該腫瘍が良性または悪性であるかを決定するための、および組織型および悪性の程度の決定を試みるための病理学的検査ために、外科的切除をしなければならない。この病理学的診断は、以後の治療プロトコールに何を使用するかを決定するために役立つ。
乳癌に関して、適当な乳癌腫瘍マーカーが利用できないので、これらの方法は一般的に決定的ではない。CA 15−3およびCA 27−29などの利用可能なマーカーは転移の指標として使用されるが、しかしながらそれらは特異的ではない。例えば、新規のかつ特異的な乳癌マーカーを使用して、乳癌の有効かつ信頼できる診断が可能である診断手段および方法の必要性が多大である。さらに、乳癌の早期発見および早期診断用の信頼でき、かつ簡単な方法が顕著に必要とされている。好ましくは、そのような早期発見方法は、乳癌の初期段階で乳癌を同定し、進行した転移疾患による乳癌の進行を追跡し、ついで乳癌または進行した疾患の罹患傾向を診断するであろう。より好ましくは、該診断方法は、例えば血液などの体液などの分析によって組織生検なしに使用することができる。
ヒト乳房組織は月経の開始および各月経周期の間で、増殖活動の突発を被る。乳房組織および腫瘍へのエストロゲンの効果に関する研究は、エストロゲンが乳房組織の第1次増殖開始因子であることを示唆している。エストラジオール感受性増殖因子が特徴付けられた。さらに、本来ホルモンの影響を受けない乳房細胞増殖因子もまた記載される。
乳房組織増殖に刺激的影響を及ぼすことが示されている特異的な増殖因子は、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF−1)およびトランスフォーミング増殖因子(TGF)αが挙げられる。他方、TGF-βは乳房組織の増殖を抑圧することを示している。
乳房細胞増殖の調節は乳癌の診断および治療に非常に重要である。乳房組織の新生物的増殖は、調べなければ、年間何千人もの女性の死因である調節不可能に増殖する悪性腫瘍に進行する。乳房細胞増殖を特異的に抑圧することができる増殖阻害因子は、乳癌の診断および治療において使用するため、機能的手段を提供する。
従って、特異的な乳房細胞増殖インヒビターを単離し、特徴付け、その核酸配列およびアミノ酸配列を同定し、ついで精製したタンパク質としてインヒビターを組換え的に発現させることは非常に有効である。該核酸配列および/または組換え的に製造したインヒビターを使用した診断および治療方法は乳癌の診断および治療において非常に利用性が高い。
発明の要約
特異的な乳房細胞増殖インヒビターであるママスタチンを正常ヒト乳房細胞から単離し、ついで特徴付けた。現在ママスタチンは正常乳房細胞により製造されるが乳癌細胞では製造されないことがわかっている。さらに、現在、血液中のママスタチンの減少または不在が乳癌の存在と相関することもわかっている。活性化ママスタチンの投与により乳癌細胞の増殖が妨害される。
ママスタチンをコードする核酸配列は、現在のところクローニングされ、シークエンシングされ、ついで宿主細胞中で組換え的に乳房細胞の増殖の活性インヒビターとして発現されている。単離し特徴付けられた核酸配列(配列番号:1)およびその推定アミノ酸配列は乳癌の診断および治療において使用するための独特かつ特異的な手段を提供する。
本発明は乳房細胞増殖、特に乳癌細胞増殖の特異的なタンパク質インヒビターであるママスタチンをコードする単離し、精製した核酸配列を提供する。本発明はまた、ママスタチン核酸配列、ママスタチンのアミノ酸配列および精製した乳房細胞増殖インヒビターを製造し、乳癌を診断および治療するためのママスタチン核酸またはアミノ酸配列を利用する方法、キットおよび組成物を含むプラスミドおよびベクターを含む。本発明組成物には、ママスタチン核酸配列およびそのRNA産物に特異的にハイブリダイズするプローブおよびプライマーを含む。
本発明はママスタチンを投与することによって乳癌を治療する方法をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
図1は真核細胞Cos-7細胞における組換えママスタチンの発現を示すウエスタンブロットである。
図2は、昆虫細胞中のママスタチンの発現を示すイムノブロットである。
図3は、イン・ビトロ転写および翻訳によって製造される組換えママスタチンによる乳房細胞増殖の阻害を示すイムノブロットである。
図4は、ママスタチンcDNAでトランスフェクションしたCos-7細胞のならし培地での処置により、ヒト乳癌細胞増殖における増殖阻害を示すグラフである。
図5は、ヒト正常乳房細胞および癌性乳房細胞における53、49、および44kDママスタチンの相対量を示すウエスタンブロットである。
図6は、ママスタチンのホスファターゼ消化を示すイムノブロットである。
図7は、ママスタチンの活性に及ぼすホスファターゼの影響を示すグラフである。
図8は、ヒト正常乳房細胞および癌性乳房細胞からのママスタチンならびに正常細胞および癌性細胞の混合培養物中のママスタチンを示すウエスタンブロットである。
図9は、ELISAによって分析された正常ヒト血清中のママスタチンを示すグラフである。
図10は、ママスタチンのELISA標準曲線を示すグラフである。
図11は、治療過程での乳癌患者におけるママスタチンレベルを示すグラフである。
図12は、レトロウイルスによって誘発されたママスタチンの発現を示すウエスタンブロットである。
図13A、13Bおよび13Cは、ヌードマウスにおけるMCF7腫瘍細胞へのママスタチン治療の効果を示すグラフである。
図14A、14Bおよび14Cは、ヌードマウスにおける腫瘍細胞へのママスタチン治療の効果を示すグラフである。
図15は、正常女性からの血液中のママスタチンと乳癌患者からの血液中のママスタチンの不在を示すドットブロットアッセイである。
好ましい態様の詳細な記載
ママスタチン
ママスタチンは正常ヒト乳房上皮細胞によって製造され分泌されるタンパク質増殖インヒビターである。乳房細胞増殖インヒビターは正常ヒト乳房細胞の増殖によってならし培地中に存在する阻害性タンパク質活性として最初は記載された。阻害活性は正常ヒト乳房細胞からのならし培地中で同定されたが、ヒト乳癌細胞の増殖によってならし培地中では同定されなかった。阻害活性はバイオアッセイと約53、49および44kDa(アービン(Ervin,Paul R.)、ミシガン大学博士論文、1995)の分子量を有する3つのタンパク質に存在する抗体の作成によって決定した。
現在、特異的な乳房細胞増殖インヒビターであるママスタチンが、49kDa〜53kDaへ分子量を増加リン酸化的に増加させる44kDaのタンパク質として発現することが決定された。ph44kDaでない形態は活性インヒビターではないが、リン酸化した49kDaおよび53kDaの形態は乳癌細胞の増殖を阻害する。活性53および/または49kDaリンタンパク質は正常ヒト乳房細胞によって発現されるが、一般的に乳癌細胞では製造されない。癌細胞の中にはリン酸化を欠如しており、不活性な44kDaタンパク質を製造するものもある。
以下の表は正常細胞および組織および癌性細胞および組織中のママスタチンの発現および活性を示すデータをまとめたものである。
Figure 0004452331
ヒト乳癌細胞での用量応答実験は、癌細胞増殖は10ng/mlのママスタチンで50〜70%阻害され、25〜50ng/mlで完全に停止されていた。
MDA-MB-435およびMDA-MB-231などの高度に転移性の細胞は増殖を停止させるために50ng/mlを必要とする。イン・ビトロおよびイン・ビボ臨床データ実験は、該効果は可逆的であり、低濃度で癌細胞増殖を停止させるためには、インヒビターの反復投与が必要であることを示唆している。しかしながら、50ng/mlを超えた用量で、ママスタチンは細胞壊死などのような組織学によって示されるように、アポトーシスを誘発するようである。
ママスタチンは乳癌細胞増殖を阻害する天然に存在する増殖インヒビターであり、活性化ママスタチンを製造する腫瘍は全くないので、ママスタチン置換療法は乳癌治療のための治療法として理想的である。以下の例で提供された臨床データはママスタチン置換療法の有効性を証明する。
ママスタチンタンパク質をコードする核酸配列は、現在単離され、特徴付けられ、シークエンシングされ(配列番号:1)、全部で3つの(53、49、および44kDa)分子量のタンパク質をコードすると決定されており、「ママスタチン(mammastatin)」と名づけられた。3形態の分子量における差異はタンパク質のリン酸化の範囲が原因であると決定された。培養中ママスタチン中のヒト正常乳房細胞(NHMC)によって製造されたママスタチンおよび組換え的に発現されたママスタチンはヒト乳癌細胞の増殖を阻害し、乳癌の治療における治療剤として有用である。
正常女性からのヒト血清および乳癌患者からのヒト血清の分析は、ママスタチンの減少した血液レベルは乳癌の進行と相関があることを示している。以下の実施例中に記載したようにこの活性インヒビターの存在のための血液血清のスクリーニングおよびモニタリングは特異的かつ有効な診断手段を提供する。
核酸配列
ママスタチンDNA核酸(配列番号:1)は以下の表に示し、ヒト正常乳房細胞cDNAライブラリーからのママスタチンcDNAのクローニングおよびシークエンシングによって示され,以下の実施例でより詳しく述べられる。クロマトグラフィーによって精製されたインヒビターは、以前にはアミノ酸分析を可能にするほど十分に単離されず、標準的技術によってタンパク質インヒビターをシークエンシングする初期の試みは失敗した。クロマトグラフィーによって精製されたインヒビタータンパク質に対して作成された抗体を使用するcDNAライブラリーのスクリーニングの試みにより、活性のあるクローンを製造できなかった。これらの問題を克服するために、ママスタチンをコードする遺伝子を、ペプチドシークエンシングおよびヒト正常乳房細胞cDNAライブラリーの変性オリゴヌクレオチドスクリーニングにより同定した。
ヒト正常乳房細胞によって製造された濃縮タンパク質は、クロマトグラフィーによって精製したインヒビターに対して作成された抗−ママスタチン抗体を用いてアフィニティー精製された。精製したタンパク質画分は、トレーサーとして32P標識した少量(105cpm)で補った。標識したトレーサータンパク質は、以下の実施例により詳しく記載するように32Pの存在下で増殖した細胞のならし培地から精製した。該タンパク質は臭化シアンで開裂し、ついで開裂した断片を32P標識したタンパク質のオートラジオグラフィー分析によってママスタチンとして同定した。開裂により製造された最も豊富な標識されたペプチドがシークエンシングされた。
独特のアミノ酸配列(配列番号:2および3)を有する選択された2つのタンパク質は、変性オリゴヌクレオチドを製造するために使用される。ついで、変性オリゴヌクレオチドを、ヒト正常乳房細胞cDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用した。
標識されたpMammAである1つのクローンは、両方の選択されたペプチドからオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。このクローンは、さらに特徴付けられ、抗−ママスタチン抗体によって認識された発現のタンパク質を発現することが示された。該クローンは、ノザンブロット分析、イン・ビトロ転写および翻訳アッセイおよび増殖阻害アッセイによってママスタチンをコードすると査定された。ママスタチンcDNAインサート(pMammB)を含むpcDNA3クローンをアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Cluture Collection)に寄託し、受託番号第97541号を付与された。pMammBから発現した組換えタンパク質は、トランスフェクションした哺乳類細胞株のイムノブロットによって検出され、ついで乳癌細胞に対する増殖阻害活性を保有することを示した。cDNAクローンを完全にシークエンシングし(実施例3参照)、BLAST DNAデータベースに対して唯一のものであるとわかった。
本発明の核酸配列(配列番号:1)はヒトママスタチンをコードし、それはヒト正常および癌性の乳房細胞の増殖を阻害する機能を果たす。「ヒト」なる語は、タンパク質の源を制限することを意図しているわけでなく、またヒト細胞および組織にのみ与える阻害効果を制限することを意図しているわけではない。個体のママスタチンの核酸配列およびアミノ酸配列は幾分、タンパク質の構造または機能を変えずに変化するかもしれない。さらに、生化学の分野の当業者であれば、核酸配列またはアミノ酸配列の修飾が分子の構造および/または機能を変更せずに起こるかもしれないことを認識するであろう。例えば,該核酸配列は修飾され、ある特定の細胞宿主の最適な既知のコドンを用いて所望のアミノ酸配列の最適発現を可能にする。
本発明の核酸配列は乳癌の治療における治療法および診断方法において使用するため、高度に精製されたママスタチンの大容量を製造するのに有用である。
抗ママスタチン抗体:
いくつかの抗−ママスタチン抗体が製造され、特徴付けれられた。例えば、1989年11月30日に公開されたPCT出願公開公報WO89/11491号参照。これらの抗体は、クロマトグラフィーによって精製されたインヒビタータンパク質に対して作成され、乳房細胞増殖にママスタチンタンパク質の阻害効果を与えるのを妨げると示した。
利用可能な抗−ママスタチン抗体は、ネオマーカーズ(Neomarkers)(フリーモント(Freemont)、カリフォルニア)より市販されて利用できる7G6および3C6および6B8を含む。6B8抗体を作成するハイブリドーマ細胞はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC受託番号第HB10152号)から入手可能である。これらの各抗体はママスタチンの全部で3つの分子量形態のものに結合し、ドットブロットおよびウエスタンブロットを含む免疫学的アッセイにおいて有用である。該7G6抗体は変性したタンパク質サンプルのウエスタンブロット分析またはELISA分析に好ましい。該抗体3G6および6B8はELISAアッセイ、例えば実施例に具体的に記載した条件下でのアッセイにおいて使用されるであろう。
さらなる抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体に関して知られる標準的方法を用いて製造され得る。抗体製造のために使用した抗原はNHMCの培養または組換え的に発現されたママスタチンから得られるかもしれない。
診断方法
本発明はさらに、組織、細胞および液体を含む患者のサンプル中の活性ある阻害性ママスタチンを検出するためのイン・ビトロアッセイを提供する。乳癌および進行性転移性疾患は、患者のサンプル中のママスタチンタンパク質の存在および型とヒト正常乳房細胞または癌性乳房細胞のママスタチンタンパク質の存在および型との相関によって診断される。患者の血液または組織サンプルは、ママスタチンタンパク質、例えば豊富なママスタチンタンパク質および/またはママスタチンの分子量形態などに関して分析される。以下で議論するように、特に高分子量のママスタチンのリン酸化された形態であるママスタチンの存在または喪失は乳癌と相関があり、かつ進行した転移性の疾患の指標である。
ママスタチンの分析は、好ましくは、患者の血液サンプルを抗−ママスタチン抗体を用いてELISAまたはウエスタンブロット分析を含むイムノアッセイによる。好ましくは、組換えママスタチンの標準は、信頼可能なインヒビターレベルの量に関する標準曲線を提供するように使用される。そのようなイムノアッセイは以下の実施例に示すドットブロットアッセイおよびウエスタンブロットアッセイによって例示される。本発明の別の好ましい態様において、腫瘍生検のような組織サンプルは免疫組織化学または患者の腫瘍細胞を培養することおよびママスタチンの発現のための培養物を試験することによって分析される。
特に好ましい態様において、乳癌の診断用アッセイには少なくとも2つの特異的な抗体を含む:抗−サイトケラチン抗体などの上皮組織のサンプルとして採取された乳房組織を同定するための抗体および抗−ママスタチン抗体である。例えば、イムノブロット形式を用いて,乳癌細胞を含むと疑われる組織をホモジナイズし、SDS/PAGEゲルで分離し、膜にトランスファーし、抗−ケラチンおよび抗−ママスタチン抗体の両方で調べる。ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの適当なマーカーシステムにコンジュゲートさせたアイソタイプ特異的第2抗体を使用して、結合した抗体を検出する。ついで、結合した第1および第2抗体を含む膜を公知の側色または蛍光光度法技術を用いて発色させ、公知の方法によって定量する。
最も好ましい態様において、抗−ママスタチン抗体を用いて該サンプルをウエスタンブロットなどによりママスタチンのリン酸化に関して分析する。高分子量(53/49kDa)ママスタチンの減少または不在が乳癌の進行と相関がある。
組換え発現ベクターおよび形質転換した細胞
本発明の組換え発現ベクターは、精製ママスタチンタンパク質およびその部分の製造および増幅に、および診断法および治療法において使用されるママスタチンタンパク質およびその部分の簡易単離に有用である。
2.434kbママスタチンcDNA(配列番号:1)の全部またはその一部などの標的配列は、COS細胞およびCHO細胞に関してはpUC18、pKC330、pBR322、pKK177−3、pET−3、pcDNA3(イン・ビトロゲン(In Vitrogen))などの適当な核酸配列発現ベクターにクローニングされ、および昆虫細胞における発現にはpAcD3Xバキュロウイルス発現ベクター(ファーミンギン(PharMingin)、サン・ディエゴ、カリフォルニア)にクローニングされ、標準的な方法によって公知のシステムにクローニングされる。市販されており利用可能な発現ベクターは、標的配列が転写および翻訳調節領域へ作動可能に結合するようなベクターの部位へのクローニングのため提供する。
ついで、リン酸カルシウム法、リポソーム媒介形質転換、プロトプラスト形質転換、エレクトロポレーションなどの公知の方法を用いて適当な宿主細胞に発現ベクターが導入される。適当な宿主細胞には、COS細胞およびCHO細胞、High 5およびSF9昆虫細胞、バキュロウイルスおよび酵母細胞を挙げられる。他の宿主細胞には、大腸菌(E.coli)DH5αなどの大腸菌株、およびサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)などの無毒性同遺伝子型サルモネラ種のアデニル酸シクラーゼを欠乏した欠失変異体およびcAMP受容体タンパク質、異種遺伝子内のサルモネラ変異体およびBio/Tech:693(1988)に記載されるような他のサルモネラワクチン株を挙げられる。
好ましくは、該細胞宿主は真核細胞であり、適当な折り畳みおよびリン酸化した活性型インヒビターを製造するためのキナーゼ活性を持つタンパク質を発現することができる。宿主細胞は、ママスタチンをコードするcDNAでトランスフェクションすることによってスクリーニングされるであろう。形質転換した細胞によって製造されたタンパク質の分析は、例えば、イムノブロットにより、および以下の実施例に記載するように、例えばMCF7細胞増殖などの乳房細胞の増殖を阻害するためのタンパク質の能力によって潜在的に宿主細胞になり得るシステムをスクリーニングするのに使用することができる。
標的核酸配列で形質転換された宿主細胞をコロニーハイブリダイゼーションまたはママスタチンタンパク質に特異的な抗体との応答性を含む多様な方法によってスクリーニングする。形質転換した細胞は、pcDNA3または他のプラスミドまたはママスタチンをコードする核酸配列を含む他のベクターを運搬する適当な宿主細胞である。そのような1つのプラスミドはpMammAからの2.4kbBamHI-XhoIインサートを運搬するpcDNAプラスミド(pMammB)であり、メリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに1996年2月22日に寄託し、受託番号第97451号を付与されている(実施例5参照)。
特異的な標的DNA配列を含む発現ベクターは、ママスタチンタンパク質の全部または一部をタンパク質製造用細胞宿主に挿入することによるイン・ビトロ転写および翻訳よって製造するために使用される。発現ベクター系から製造されたタンパク質は正常および癌性の乳房細胞の増殖を阻害する(実施例7参照)。例えば、該ベクターでトランスフェクションされたCos7宿主細胞などの真核細胞は、ならし培地中で、ママスタチンを発現および分泌する。ならし培地は正常および癌性の乳房細胞の増殖を阻害する(実施例8参照)。
アミノ酸配列
ママスタチンタンパク質(配列番号:2)は、核酸配列(配列番号:1)から推定される配列を保有する約2400アミノ酸残基のポリペプチドであり、表1に示す。クローニングされたママスタチン核酸配列(配列番号:1)から合成されるタンパク質は乳癌細胞(MCF-7)増殖を阻害する。
組換えママスタチンタンパク質は、精製形態でかつ大量に有効に製造することができる。精製した組換えママスタチンは、患者のサンプル中でインヒビターの診断アッセイのための信頼できる標準として有用である。組換えママスタチンタンパク質はまた、乳癌細胞の増殖を阻害または妨害するための精製された治療剤として有用でもある。
治療的使用
治療的使用のためのママスタチンタンパク質は、無血清条件下または組換え手段によるNHMC培養物から製造される。ママスタチンリンタンパク質は治療的に使用され、例えば乳癌の治療における乳房細胞の増殖を阻害する。好ましくは、ママスタチンは該タンパク質のリン酸化を達成するために高等真核細胞において製造される。組換えママスタチンタンパク質は宿主細胞または合成手段によって製造する。
機能的なママスタチンを公知の方法によって患者に投与し、リンタンパク質の投与に関しては好ましくは注入によって投与し、血流におけるインヒビターのレベルを増加し、乳房細胞とインヒビターの相互作用を高める。
該タンパク質は、リン酸化タンパク質治療剤の送達に関する当該技術分野において公知の方法によって患者に送達されてよい。概して、該インヒビターはデリバリービヒクルと混合し、注入によって投与される。
投与されるべきインヒビターの用量は当業者によって決定され、治療モダリティー(modality)の型および疾患の程度によって変化するであろう。ママスタチンは、10ng/mlの濃度で乳癌細胞の約50%を阻害し、イン・ビトロで約20−25ng/mlで増殖を停止し、有用な治療用法範囲は1日用量約2.5μgから約250μgの投与である。好ましくは、約125μg/日の投与量である。投与の目的は、生理学的範囲からわずかに高い範囲(50〜75ng/ml)で最終的な身体用量となる。インヒビターの高用量(>50ng/ml)により、処理細胞の組織化学にみられるようにアポトーシスが誘発される。臨床的使用に関して、好ましい用量の範囲は、転移性疾患の初期治療のために約500ng/mlであり、その後約50ng/mlの維持用量となる。以下の実施例において報告された最初の臨床研究は、約50ng/ml〜約750ng/mlの1日投与量が第IV段階の乳癌患者における寛解を誘発するのに十分であることを示している。
活性化ママスタチンがリン酸化タンパク質であるため、インヒビターの複数の投与は患者の血液中のママスタチンの増殖阻害レベルを維持するために必要であろうことが予期される。また、ママスタチンは一般的に細胞殺傷剤よりは細胞増殖抑制性剤として機能するので、該インヒビターの最大効果は、乳癌患者におけるインヒビターレベルの一定の維持を必要とすると予期される。
その好ましい使用において、ママスタチンは腫瘍の寛解を誘発するための(>50ng/ml、好ましくは50〜500ng/ml)高用量で投与される。癌細胞増殖を妨害するためには、より低い維持用量(>50ng/ml、好ましくは20〜50ng/ml)が使用される。
第IV段階の乳癌患者において投与されたママスタチンでの臨床経験は、有用な用量とは血液中のママスタチンの生理学的レベルを維持するものであることを示す。投与は、毎日が好ましく、しかし例えば、持続的な注入、徐放性補給(depot)、または2−3日ごとに1回の注入などによってもよい。逸話としての証拠は、持続的な投与はフィーバック阻害を誘発し、従って好ましい投与計画は約25〜28日間毎日ママスタチンを投与した後、2〜5日投与をやめることを示唆する。
診断的使用
ヒト組織および血清中の機能的なインヒビターの存在を検出するための本発明のアッセイは、乳癌の罹患の高い危険性を保有する集団のスクリーニング、乳癌発症の早期発見および治療期間中の患者のインヒビターレベルのモニターのため、乳癌患者のスクリーニングに有用である。例えば、患者の血液ママスタチンの分析は、正常のコントロールまたは該患者の以前のママスタチンのプロファイルに比較して、高分子量のリン酸化ママスタチンの量の減少を示すかもしれない。そのような変化は乳癌の危険の高まり、乳癌の早期発症、および転移性乳癌の進行と相関がある。リン酸化、活性化、49/53kDママスタチンに関する診断アッセイは、例えば、ウエスタン・ブロット、ELISAなどのイムノアッセイによるか、または特異的な抗−ママスタチン抗体を用いる。例えば血清中などのスクリーニングは、例えば、ドット・ブロット・アッセイなどのイムノアッセイによるのが好ましい。
最良の結果のため、患者のサンプルはサンプリングから短期間内で(1週間以内で)アッセイされるべきであり、4℃で保存され(1年以内)るか、または凍結させて長期保存するべきである。サンプルはアッセイの時期まで凍結させているのが最も好ましい。
アッセイキット
本発明の具体的な態様において、患者の液体および/または乳癌組織中のママスタチンの検出のためのアッセイキットが提供される。スクリーニングアッセイは、血清中のママスタチンを検出または定量するためのドット・ブロット・アッセイなどのイムノアッセイが好ましい。そのようなスクリーニングキットには、抗−ママスタチン抗体およびコントロール抗体を含む場合もあり、および/またはママスタチンコントロールまたは標準を含む。第2のスクリーニングアッセイは乳房組織のママスタチンを分析する。該アッセイキットには必須試薬および該組織が乳房上皮であることを特異的に決定するための抗体、例えば抗−サイトケラチン抗体および特異的な抗−ママスタチン抗体と該組織を反応させるための手段を含む。市販されており利用可能な抗体混合物であるパン−ケラチン(シグマ(Sigma))は好ましい抗−サイトケラチン抗体である。
ママスタチンのネガティブアッセイは、乳癌腫瘍の存在または非上皮乳房組織によって引き起こされる。抗−サイトケラチン抗体の使用により、誤ったポジティブアッセイに対して警戒する。抗−ママスタチン抗体で染まらないか、または44kDママスタチンのみを発現する乳房上皮細胞は形質転換細胞である。従って、例えば乳房組織から単離され、および抗−サイトケラチン抗体で陽性となるような乳房上皮しての組織を最初に同定し、ついで抗−ママスタチン抗体との第2の陽性反応を同定することによって偽陽性が避けられる。
乳癌細胞の約30%が非リン酸化不活性の44kDママスタチンを発現することが実験により明らかだったので、分析の好ましい方法は、例えばウエスタン・ブロット分析などによって、53/49kDおよび44kD形態の間で区別することである。
本発明はさらに以下の実施例を参照して定義される:
実施例1
ヒト乳房細胞cDNAライブラリー
cDNAライブラリーを整復乳房形成術(UM病院(UM Hospital))から得られるヒト乳房細胞から調製した。総RNAを塩化セシウム勾配により乳房細胞から単離した。総RNA調製物からmRNAを単離した。使用された方法はガーナー(Garner I.)「アイソレーション・オブ・トータル・アンド・ポリ・A+RNA・フロム・アニマル・セルズ(“Isolation of total and poly A+RNA from animal cells”)」、Methods Mol.Biol.(1994)28:41−7に記載されている。
単離されたmRNAの存在下での逆転写はcDNAを製造し、ついでEcoRIリンカーにライゲートした。cDNAをEcoRI切断T4DNAリガーゼ処理したラムダZapに挿入し、ついでショート(Short JM.)ら(1988)Nucleic Acids Research 16:7583に記載される方法に従って大腸菌XL1-blue中で増幅した。
実施例2
ママスタチンオリゴヌクレオチドの調製
実施例1で調製した正常ヒト乳房細胞cDNAを、変性オリゴヌクレオチドを用いてママスタチンをコードする核酸の存在に関してスクリーニングした。その変性オリゴヌクレオチドは以下のようにして得
正常ヒト乳房細胞をミシガン大学病院形成外科より、または共同ヒト組織ネットワーク(Cooperative Human Tissue Network)より入手した。その組織をソウル(Soule)ら、In Vitro,22:6(1986)に記載される手法に概して従い、コラゲナーゼ処理により還元した。
乳房細胞を40μM CaCl2で調合したDMEM/F12低カルシウム培地中で、175cm2フラスコ中でコンフルエンスに達するまで増殖させ、ついでソウルら、In Vitro,22:6(1986)に記載される手法に従い、5%CHELEX処理したウマ血清(シグマ)、0.1μg/mlのコレラ毒素(シグマ)、0.5μg/mlヒドロコルチゾン(シグマ)、10ng/ml上皮増殖因子(EGF、コラボラティブ・リサーチ(Collaborative Research)、ベッドフォード、マサチューセッツ)、10μg/mlインシュリンおよび1μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを補給した。ウマ血清をCHELEXレジンで室温で3時間処理して血清カルシウムを除去した。
細胞溶解産物は、細胞をTBSですすぎ、テフロン製のスクレーパーでフラスコからこすりとることによって調製した。細胞を遠心分離によって回収し、8M尿素、50mMトリスpH7.5、0.5%β−メルカプトエタノール、0.5%TRITON X-1000(溶解バッファー)で溶解させ、氷上で3分間超音波処理した。
該細胞溶解産物を溶解バッファーで平衡化したDEAE−セファセル(Sephacel)陰イオン交換樹脂(シグマ)上で分画した。溶解産物を樹脂を満たしたカラム(50mlの使い捨て、バイオ・ラド(Bio Rad)上にロードし、ついでカラムの容量の10倍量の溶解バッファーで洗浄した。物質は、重力の供給によってのみカラムから流出した。画分は、最初に、塩の存在下で溶出バッファー(8Mの尿素250mlおよび50mMのトリスpH7.5)を最初に含む閉鎖混合チャンバーに5MのNaClを含む溶出バッファーを持続的に重力の供給によって流して製造された塩勾配で溶出した。
溶出画分(2ml)をギブソン(Gibson)画分コレクターによって回収し、上記のように抗−ママスタチン抗体である7G6でドット・ブロットによって乳房細胞増殖インヒビターの存在に関して分析した。
陽性の画分を保存し、50mMのNaClで溶解バッファーに透析し、再度同一のイオン交換カラム上で分離し、50mMのNaClを含む溶出バッファー中のpH勾配(pH8〜pH3)を持続的に減少させて溶出した。(pH勾配をつくるために、pH3の緩衝尿素を持続的に最初のpH8のバッファーに混合した。)画分(2ml)を回収し、上記のように7G6抗体で分析した。
陽性の画分を再び保存し、ついで濾過遠心分離によってもともとの容積の1/10のに濃縮した(アミコン・セントリプレップ(Amicon Centriprep)、10kD切断)。濃縮した保存物を前もって染色した分子量標準(シグマ)とともに分取SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によってサイズ分画した。
分子量40〜60kD間の分子中に含まれるタンパク質を0.5cmのストリップまたは画分でゲルから切り出した。各ゲルのストリップからのタンパク質の電気溶出を透析チューブ中でランニングバッファー(192mMのグリシン、25mMのトリス(pH8.3)、0.1%SDS)1ml中にそのゲルストリップを置くことによって行った。そのチューブをサブマリン電気泳動装置中に設置し、終夜25ボルトで電気溶出した。電流を2分間逆行させ、ランニングバッファー(現在は溶出したタンパク質を含む)を除去した。溶出したタンパク質の純度を、銀染色で分析SDS PAGEによって、またトウビン(Towbin)ら、J.Clin.Chem.Clin.Biochem.27:495〜501(1989)に記載されるような手法に従いチェックした。銀染色PAGEによって決定されるように少なくとも70%純度の画分を貯蔵し、濃縮し、ついで凍結乾燥して粉末形態とした。
貯蔵されたタンパク質を500μlの70%ギ酸中に凍結乾燥した粉末を溶解し、20mg/mlの臭化シアン(シグマ)で室温で終夜(約20時間)インキュベートすることによって、臭化シアンで開裂させた。使用した方法はフリーモント(Freemont)ら、Arch.Biochem.Biophys.228:342−352(1986)中に記載されている。臭化シアン開裂タンパク質のサンプルを2回蒸留し、脱イオン化した水に透析し、再び濃縮し、ついで凍結乾燥して粉末とした。
臭化シアン開裂は、もともとのタンパク質サンプルからのマルチプルペプチドを産生し、分取15%SDS PAGEおよび電気溶出によってPVDF膜上にトランスファーすることによって分離した。
乳房細胞溶解産物から得たタンパク質に加えて、タンパク質はまた正常ヒト乳房細胞ならし培地から単離され。正常細胞をリン酸欠如した8mlのDMEMでインキュベートし、200μCi/mlの32P-オルトリン酸および1%の透析したウシ胎児血清を補った。細胞をならし培地を回収する前に、32P存在下で24時間増殖させることができた。
回収したならし培地を10kDの排除制限でアミコン濾過により5倍の濃度にまで濃縮した。濃縮した培地を濾膜上でPBSで1回漱ぎ、取り込まれていない過剰なリン酸を除去し、ついでさらにPBSで溶出したS-200SEPHACRYL(ファルマシア(Pharmacia)、ウプサラ、スウェーデン)分子篩クロマトグラフィー(100cm×0.75cmカラムによって分画した。フィルターとカラムの両者によりサンプルから未取り込み32Pの除去を可能にする。1mlの画分をカラムから回収し、シンチレーションカウンティングにより標識した画分を同定した。放射活性分を保存し、ついで銀染色およびオートラジオグラフィーをともなってSDSPAGEによって分析した。保存されたタンパク質を濃縮し、凍結乾燥して粉末とし、ついで臭化シアン開裂の前に上記のように精製した多量の未標識タンパク質と結合させた。標識したタンパク質の添加はリン酸化ママスタチンペプチドを含む臭化シアン開裂断片のトレースの便利な方法を提供する。開裂したペプチドを上記のように分取PAGE上で分離した。
放射活性タンパク質を臭化シアン開裂し、分離してPVDF膜にトランスファーし、X線フィルムに曝した後、2つの標識された約20kDおよび22kDのバンドが見ることができた。これら2つのペプチドを膜から切り出し、ウラー(Ullah Alt)らBiochem.Biophys.Res.Comm.203:182−189(1994)に記載の方法を用いて、ユニバーシティ・オブ・ミシガン・バイオメディカル・リサーチ・コア・ファシリティー(University of Michigan Biomedical Research Core Facility)でエドマン法によってシークエンシングした。2つのペプチドの各々のアミノ酸配列をNIH「BLAST」サーバーを用いて公知のデータベースと比較した。その2つのペプチドは新規であることがわかった。
各配列の特に独特の配列を使用して縮重オリゴヌクレオチドを製造し、ジェララ(Jerala)、Biotechniques13:564−567(1992)において記載される方法による標準的な第3の位置の縮重を用いた。20kDペプチドから該配列
Figure 0004452331
を使用した。:22kDのペプチドから配列
Figure 0004452331
を使用してオリゴヌクレオチドの複数の種を製造した。縮重オリゴヌクレオチドを高圧液体クロマトグラフィーによって精製した。
Figure 0004452331
変性オリゴヌクレオチドを32P−νATPおよびT4DNAポリヌクレオチドキナーゼ(BRL、ベテスダ(Bethesda)、メリーランド)で末端ラベルし、再度T4DNAキナーゼバッファー(60mMのトリス(pH 7.8)、10mM MgCl2、15mM β−メルカプトエタノール)を1.5mg/mlで再度懸濁させた。ついでオリゴヌクレオチド(250μM)を0.33μMのATP、25μlのキナーゼバッファー中の5単位のキナーゼと37℃で2時間インキュベートした。32P-リン酸の取り込みをTCA沈殿(15%TCA、4℃、15分)によって決定した。典型的な取り込みは109cpm/mgDNAであった。
実施例3
変性オリゴヌクレオチドでの乳房細胞cDNAライブラリーのスクリーニング
正常乳房細胞cDNAインサートを含む実施例1で調整したファージに感染させた細菌を、トップアガー(感染細菌培養の1/10希釈から7%NZYMトップアガーの6ml)プレート15cmのNZCYM(10g、NZアミン(ベーリンガー・マンハイム)、5gのNaCl、5gの酵母抽出物、2gのMgSO4、1gのカサミノ酸)上にプレーティングした。プラーク含有プレートにファージの変性(denaturation)の前15分間ニトロセルロース膜をかけた。ファージを0.5MNaOH、1.5MNaCl飽和したワットマンペーパー上で5分間のブロッティングフィルター(DNAサイドアップ)により変性させた。フィルターをH2Oで漱ぎ、1Mトリス(pH7.0)、1.5MNaCl中で5分間インキュベートした後、20×SSCおよび2×SSCそれぞれ5分間インキュベートした。フィルターを乾燥させ、80℃で1時間焼くか、または紫外線光線下放置してDNAを固定した。焼いたフィルターを1%SDSと2×SSC中で30分間洗浄し、ついで50%脱イオン化ホルムアミド、5×Denhart’s溶液、1%SDS、5×SSCおよび100μg/ml変性サケ精子DNAで37℃でプレハイブリダイズした。
フィルターを熱変性した(95℃で5分)標識縮重オリゴヌクレオチド107cpm/mlを加えた実施例2に関して記載したように調製した標識した変性オリゴヌクレオチドとハイブリダイズした。フィルターを37℃で30分間2×SSCで洗浄した後、50℃で30分間2×SSCに1%SDSを加えた溶液中で3回洗浄した。フィルターを2×SSCで短く漱ぎ、乾燥させて、ついで24〜48間コダックAR-5フィルムに露光して陽性プラークを同定した。
陽性プラークを逆200μl無菌ペプチドチップを用いて切り出したアガープラグから単離し、4℃で終夜SMバッファー中に再懸濁した。第2および第3のプレート(10cm)をSMバッファーを含むファージの1/10,000希釈で細菌に感染したXL1−Bを用いてNZCYM(1mM MgSO4)中で作成した。プラークを上記のように8時間感染した細菌をインキュベートすることにより製造し、ついで標識した変性オリゴヌクレオチドでスクリーニングする前にニトロセルロースにトランスファーした。スクリーニングは、本質的にはクロチェック(Kroczek,RA.)、J Chromatogr 618:133−45(1993)に記載されるのと同様に、107cpm/mlの標識したDNAおよび50℃で30分間2×SSCの最終的な洗浄ストリンジェンシーを用いて行われた。
さらなる分析に関して選択されたクローンは、両方の変性オリゴヌクレオチドによって認識されるものであった。このクローンは「pMammA」と名づけられた。
実施例4
ママスタチンcDNAのシークエンシング
実施例3で得られた陽性クローンであるpMammAをミシガン大学のバイオメディカル・リサーチ・コア・ファシリティーで自動化シークエンサーを用いてシークエンシングし、ついでまた15%DNAシークエンシングゲルを用いたジデオキシシークエンシングおよび35Sヌクレオチドを有する放射標識DNA断片によってシークエンシングした。使用した方法はラスケン(Lasken RS)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1301−5(1985)に記載されている。得られた核酸配列を以下の表1(配列番号:1)に示す。
自動化配列の認識された誤りの割合は約5%である。従って、寄託されたクローンをヌクレオチド配列の確認のために再度シークエンシングし、特に記載されるように、潜在的な過誤の疑いのある部分には注意した。
実施例5
ママスタチンcDNAを発現ベクターにサブクローニングする
ママスタチンcDNA挿入物であるpMammAを発現ベクターpcDNA3(イン・ビトロゲン(In Vitrogen)にサブクローニングした。ママスタチンcDNAを実施例4に記載されたようにして入手したpMammAをBamHIおよびXhoI制限エンドヌクレアーゼで消化することによって単離した。制限酵素はプラスミドをママスタチンクローンインサートの末端で切断し、線形のプラスミド断片および線形挿入断片を作成した。消化したサンプルを電気泳動装置中に沈めた1.2%アガロースゲルのウェル中に静置し、50Vの電流を2時間流した。電気泳動は大きさに基づきDNA断片を分離し、大きなプラスミドDNA断片はゆっくりした速度でゲル上を移動する。2.4kbを含むアガロースゲルの一部をエチジウムブロミド染色によって可視化し、ついでゲルを紫外線ボックスの上に置いて観察した。2.4kbママスタチン断片をゲルから切り出し、ついで透析チューブに置き、ついで該DNAをホウ酸トリスバッファーTBE(0.089Mホウ酸トリス、0.089Mホウ酸、0.002MEDTA)に電気溶出し、回収し、エタノール沈殿した。
pcDNA3プラスミドDNAを修飾してライゲーション間のママスタチンcDNA断片を受容した。pcDNA3プラスミドをBamHIおよびXhoI制限エンドヌクレアーゼで消化し、完全に消化した後、そのDNAを子牛腸ホスファターゼの存在下で1時間インキュベートして5’リン酸を除去した。pcDNA3サンプルをついでフェノール抽出し、エタノール沈殿した
pcDNA3およびママスタチン2.4kbcDNA断片を一緒にライゲーションした。その2.4kbママスタチン断片および線形のpcDNA3プラスミドを3:1の割合でT4DNAリガーゼの存在下で混合した。ライゲーション反応は1時間インキュベートした後4℃で終夜保存した。ライゲーション反応が完了した後、そのDNAを使用して大腸菌コンピテント細胞を質転換した。サブクローニングをアンピシリン選択コロニーからプラスミドDNAを精製することによって確かめた。そのプラスミドをBamHIおよびXhoI制限エンドヌクレアーゼで消化した。消化したDNAサンプルをアガロースゲル上に置き、ついで電気泳動で分離した。正確な大きさのママスタチンDNA断片を含むプラスミドをpMammBと命名し、ついでアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection(ATCC))に1996年2月22日に寄託し、付与された受領番号はATCC97451号である。
実施例6
ママスタチンcDNA配列からのトランスフェクションおよびタンパク質の発現
Cos7細胞はママスタチンタンパク質と一緒に移動する免疫応答タンパク質を発現しない。pMammBおよびPCDNA3を使用してLIPOFECTIN▲R▼(BRL、ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、ベテスダ、(Bethesda)、メリーランド)を用いて、製造者の示唆されたプロトコールを利用してCos-7サル繊維芽細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞を回収前2日間増殖させた。トランスフェクションした細胞を標準的方法用いて細胞のトリプシン処理によてプレートから除去した。(トリプシン2.5ml(0.25%シグマ)を37℃で5分間細胞のフラスコ内でインキュベートした。RPMI培地に10%FBS(ウシ胎児血清)を補給したものの7.5mlアリコートを加えて細胞を遠心によって回収した。)細胞を血球測定計によって数え、107細胞/mlでSDS PAGEサンプルローディングバッファー中で溶解した。細胞溶解産物を8〜15%のSDS-PAGE勾配ゲル(バイオラド)上で分離し、ついでトウビンらJ.Clin Chem Clin Biochem(1989年8月)27(8):495−501中に記載される方法を用いてナイロン膜にトランスファーした。その膜を抗−ママスタチンモノクローナル抗体7G6でプロービングした。結合抗体をペルオキシダーゼコンジュゲートGAM−IgMで検出し、ECL(アマシャム)によって発色させた。
図1に示すように、pMammB(レーンC、D)でトランスフェクションしたCos-7細胞はママスタチンタンパク質(レーンA)と同時に移動する免疫応答性のタンパク質を発現した。空のベクターPCDNA3単独でトランスフェクションしたCos-7細胞はイムノブロット実験が行われる場合に免疫応答性のタンパク質を発現しなかった(レーンB)。
Figure 0004452331
イムノブロット分析はpMammBクローンが、ママスタチンの大きさおよび免疫学上の特徴を有するタンパク質を合成することができるcDNAインサートを含むことを示している。さらに、44,49および53kDの免疫応答性のタンパク質pMammBでトランスフェクションしたCos7細胞において発現した。これらのタンパク質は以前に正常ヒト乳房細胞中に同定したママスタチンと同じ分子量で移動した。この免疫応答性タンパク質の群は、空のベクターpcDNA3でトランスフェクションしたCos-7細胞中に同定されなかった。
図1に示す特定のアッセイにおいて、NHMCコントロールは通常、44kDママスタチンを大量に示す。これは4℃でNHMC標準の長期(>1年)保存によって製造された人工産物であり、時間をかけて高い分子量の形態の分解を引き起こす。新鮮NHMCサンプル(<1年)または凍結サンプルが使用されると、その44kDタンパク質はいつでも高分子量形態より少ない。
実施例7
GST融合
ママスタチンクローンは同様にバキュロウイルス発現系にサブクローニングされることができる。pMammAインサートをファーミンゲン(Pharmingen(サン・ディエゴ、カリフォルニア))から市販されており入手可能であるpAcG3Xにサブクローニングされた。このベクターにより、コーディング領域のGST遺伝子上流の一部を有するグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、ママスタチンの製造を可能にした。
pMammAインサートをBamHI(5’)およびSmaI(3’)制限酵素認識部位、小さい非特異的領域およびママスタチン配列の一部を含むPCRの調製セットによって、サブクローニングした。プライマー3組は、各々はリーディング・フレームにおいて移動し、調製した。プライマーはpMammAクローンにハイブリダイズし、およびpMammA鋳型DNAと典型的なPCR反応において、pAcG3X中のGST遺伝子のリーディング・フレームに挿入することができるpMammAPCR産物を増幅した。ついでそのベクターを使用してHigh5(イン・ビトロゲン)宿主昆虫細胞をトランスフェクションし、グルタチオン樹脂(グルタチオンアガロース、キアゲン(Qiagen)、チャッツワース(Chatsworth)、カリフォルニア)を用いて宿主昆虫細胞から用意に精製したGST-ママスタチン融合タンパク質を発現する。
pAcG3X(ファーミンゲン、サンディエゴ、カリフォルニア)のBamHI、SmaI制限部位に挿入するためのDNAを調製するため、プライマーのセットを3つのリーディングフレームを含むように、5’プライマーとしては、BamHI認識部位(GGATCC)、pMammA配列の一部およびpBluescriptベクターからのいくつかの5’配列を含むように調製した。該3’プライマーも同一で、SmaI認識部位(GGGCCC)、pMammA配列の一部およびpBluescriptのいくつかの配列を含むように調製した。
使用したプライマーのセットを以下の表に示す。
Figure 0004452331
1つのプライマーのセットのみ(配列番号:5および7)が活性化阻害ママスタチンをコードすることができるクローンを製造した。その活性化クローンは、High5を形質転換するために使用する場合、形質転換した細胞中で免疫学的に反応性のママスタチンを製造した(図2参照)。
他の公知の真核生物発現系を同様にママスタチンタンパクを製造するために使用してよい。
実施例8
イン・ビトロ転写および翻訳によって製造されたタンパク質による阻害アッセイ
イン・ビトロでpMammB、ママスタチンcDNAの転写をストラタジーンのExpress RNA転写キットを用いてママスタチンRNAを製造した。製造されたRNAをストラタジーン・イン・ビトロ・エクスプレス・翻訳キット(Stratagene In Vitro Express translation kit)に翻訳した。ママスタチンRNAの翻訳から製造されたママスタチンタンパク質は培養中で乳房細胞増殖を阻害することを示した。
MCF-7細胞の培養を上記の翻訳アッセイにて製造したタンパク質産物で処理した。タンパク質産物(容積の5%、培養培地)を1ウェル当たり1mlの培地を含む12ウェルプレート中の細胞に添加した。平行実験の培養を翻訳産物および抗−ママスタチン抗体3C6の両方で最終濃度30μg/mlで処理した。
陰性コントロールとして、培養物をママスタチンcDNA(すなわちベクターとして採用)の不在下でインキュベートされたストラタジーン・イン・ビトロ・エクスプレス・翻訳キットで翻訳したタンパク質産物で処理した。これらの溶解産物はママスタチンタンパク質を製造する適当な機構を持たない。
すべての培養物はタンパク質産物で処理された後、6日間増殖させられ、各サンプルの細胞数をクルターカウンター(Coulter counter)を用いて計算した。各培養条件は3つ同じサンプルを持ち、その結果得られた各サンプルの細胞数を平均し、阻害%をコントロール細胞で処理された網状赤血球に比較することによって決定した。
図3に示すように、pMammBのタンパク質翻訳産物はMCF-7細胞増殖を阻害した。この阻害は、抗−ママスタチン抗体3C6の存在下で非常に減少されるか、または阻害された。
実施例9
pMammBでトランスフェクションしたCos−7細胞を増殖して得られたならし培地内に存在するタンパク質で乳房細胞を阻害する
乳房細胞の増殖阻害実験を、実施例6に記載するように、pMammBでトランスフェクションしたCos−7細胞から入手したならし培地を用いて行った。ならし培地によって引き起こされる増殖阻害は、抗−ママスタチン抗体の添加によって阻害された。
MCF−7細胞を10%可欠アミノ酸およびFBS(シグマ)を補ったMEM培地中で104細胞/mlでプレーティングした。細胞を終夜接触可能とし、ついでいずれかからならし培地(3日間培養)の10%の容量を補った:(1)空のベクターpcDNAでトランスフェクションしたCos-7細胞(陰性コントロール);(2)pMammBでトランスフェクションしたCos-7細胞(pMammB-Cos);(3)MHMCならし培地、または(4)ならし培地ではない培地である。平行のMCF−7細胞の培養に30μg/mlの3C6阻害抗体を補った。処理したMCF−7細胞を6日間増殖させて、ついで血球測定計によって計算した。
細胞増殖の阻害を、ならし培地中でインキュベートしたMCF-7細胞の増殖とコントロール、条件付けしていない培地中でインキュベートしたMCF-7サンブルックの増殖と比較することによって決定した。データを図4に示し、pMammB形質転換した細胞からのならし培地は正常のヒト乳房細胞ならし培地と同様に有効に乳癌細胞増殖を阻害した。この阻害は抗−ママスタチン抗体の存在下で阻害された。
実施例10
3つの免疫学的に応答性の抗-ママスタチンタンパク質
正常ヒト乳房細胞全体(NHMC)および組織培養細胞中の乳癌部位を溶解し、細胞溶解タンパク質を上記のように、およびアービン(Ervin,Paul)1995、博士論文、ミシガン大学第2章に記載されるようにSDS/PAGEによって分離された。溶解したサンプルをミニ−プロテインII(Mini-Protean)装置(25μg/サンプル)で10%のSDS−PAGE上で分離した。タンパク質をニトロセルロースへトランスファーし、抗−ママスタチンモノクローナル抗体7G6またはIgMコントロール抗体、アルカリフォスファターゼコンジュゲートタンパク質、ヤギ抗−マウスIgMは陽性の抗体の反応を色彩学的に検出するNBT/BCIP基質系とともに利用した。そのデータを図5に示す。
Figure 0004452331
図5に示すように、正常のヒト乳房細胞は抗−ママスタチンモノクローナル抗体および第3の弱い免疫応答性の44kDタンパク質によって強く認識される。試験した4つの腫瘍細胞株は44kD免疫応答性タンパク質単独(レーン1、4)または免疫応答性では全くないタンパク質(図2、3)のいずれかを発現した。
上記のデータは数年の期間をかけて42名別個の乳房薬物新生物の低減からの正常細胞から得られる細胞における実験の見本である。正常細胞および癌細胞株の44kDタンパク質の発現は各調製での強度によって変化する。
実施例11
ママスタチンはリンタンパク質である
乳房細胞の細胞性のリン酸化タンパク質を32P-リン酸(200μCi/ml)で正常の乳房細胞培養中に24時間封入し32Pでラベリングした。ならし培地をアミコン遠心により30kD分子量制限を用いることによって5倍に濃縮した。
濃縮された培地を濾過膜上でPBSにて1回漱ぎ、過剰な未取り込みリン酸を除去し、PBSで溶出したS-200SEPHACRYL(ファルマシア、ウプサラ、スウェーデン)分子篩クロマトグラフィー(100cm×0.75cmカラムによって分画した。イムノブロットを上記のように調製し、7G6抗体でプロービングした。
放射標識した53kDママスタチンタンパク質を免疫沈降によってならし培地中で同定した。この分析はママスタチンが分泌リンタンパク質であることを示唆している。分リンタンパク質は一般に知られていないので、細胞のブレフェルディン(Brefeldin)A処理が利用されて、ママスタチンが分泌または細胞破損または漏出によりならし培地中に存在するか否かを決定する。ブレフェルディンAは真核細胞からのタンパク質の分泌を阻害する菌化合物である。ブレフェルディンAは正常の小胞体およびゴルジの機能を阻害し、小胞生成を阻害する(アービン・ポール、1995、学位論文、第25頁)。たいていの分泌タンパク質は膜結合小胞からの細胞外の工程によって細胞から遊離され小胞生成を阻害することは多くのタンパク質の分泌を阻害する。NHMCがブレフェルディンAの存在下で増殖する場合、リン酸化ママスタチンはならし培地中に同定されなかった。
ママスタチンタンパク質中でリン酸化されるアミノ酸配列を決定するため、放射標識した53kDタンパク質をリンアミノ酸分析にかける。MHMC細胞を32P-リン酸と24時間インキュベートした。ついで、細胞溶解産物を抗−ママスタチン抗体7G6で免疫沈降し、以下のように精製した。その53kDタンパク質をトリプシンで消化しついで、酸で脱水した。2次元の薄い層のクロマトグラフィーを使用してママスタチンのリン酸化アミノ酸を分析した。32P-リン酸をホスホ−ser/thr/tyrコントロールで結合させ、ついで最初の(0)2DTLCプレート(20cm)にロードした。そのサンプルを2次元で分けた:第1次元−pH1.9バッファー(50mlギ酸、156ml氷酢酸/2000ml(1794H2O))、20分1.5Kボルト流し;時計回りに回転させる;第2次元−pH3.5バッファー(10mlピリジン、100ml氷酢酸:1890ml H2O))、16分1.3Kボルト流し;時計回りに回転させる。
TLCプレートをニンヒドリン染色し、フィルムに曝した。リン酸−アミノ酸分析は53kDママスタチンタンパク質が3つの異なるタンパク質のリン酸アミノ酸残基を燐酸化する3つの型を含み、リン酸アミノ酸標準で染色したニンヒドリンに対してのオートラジオグラフを含むことによって証明される。
トレオニン(Threonine(Th))は最も豊富なリン酸アミノ酸であり、続いてセリン(Serine S)およびチロシン(Ty)であり、チロシンが最も少ないリン酸化種であった。しかしながら、リン酸アミノ酸残基の相対的な豊かさはそのままのタンパク質におけるものを代表するものではなくてよい。というのは、脱水はリン酸チロシン残基を遊離させることができるからである。
実施例12
多様なリン酸化での1つのママスタチンタンパク質
タンパク質の細胞リン酸化はホスファターゼおよびキナーゼによって調節されることができる。ママスタチンは、ママスタチンホスファターゼの異なる活性のために、正常および腫瘍細胞溶解産物中で別々にリン酸化される。NHMC溶解産物中のママスタチンへ及ぼすホスファターゼの効果を試験した。
NHMCを低カルシウム培地中でコンフルエンスに達するまで増殖させTBS中にこそぎとることによって回収した。細胞をTBSで洗浄し、2mg/mlの正確にpH6.6のバッファーに0.5%のTritonX-100を加えて再懸濁した。5μg/mlのイェルシニアホスファターゼ(Yersinia phosphatase)(YOP)(スタッキー(Stuckey)ら、Nature 370:571-5(1994))または活性化部位を含むイェルシニアホスファターゼ変異体(MYOP)を使用して、37℃で6時間細胞溶解産物を消化した(YOPおよびMYOPはミシガン大学、生化学研究室のディクソン(S.Jack Dixon)博士より入手)。図6に示すように、正常ヒト乳房細胞溶解液のイェルシニアホスファターゼ(YOP)での消化は抗−ママスタチンイムノブロットによって同定された53kDママスタチンタンパク質の減少した量となった(レーンA)。対照的に、イェルシニアホスファターゼ変異体(MYOP、レーンB)での消化は53kDのママスタチンタンパク質の同定を変化させなかった。このような結果はイムノブロットによる53kDママスタチンタンパク質の同定がママスタチンタンパク質のリン酸化の状態の便利な手段であることを示す。
イェルシニアホスファターゼ(YOP)の存在下でインキュベートしたならし培地をMCF-7を処理するために使用した。以前の観察のように、NHMCならし培地はMCF-7細胞の増殖を阻害し、ついでこの阻害は抗−ママスタチン抗体によって妨害される。図7に示すように、YOPによりNHMCならし培地はこの阻害活性を廃止させる。コントロールとして、NHMCならし培地のホスファターゼ活性(M.YOP)を欠如したYOP変異体処理が試験された。この変異体はNHMCならし培地の阻害活性に影響は全く及ぼさなかった。抗−ママスタチン抗体7G6を含むならし培地の免疫沈降はその阻害活性を除去した。
TCA沈降はYOPでならし培地のインキュベートが取り込みリン酸の約50%を除去することを示した。上記に示すように、YOPはまたNHMC溶解産物からの53kD種を除去した(図6)。
実施例13
癌性乳房細胞ではなく、正常乳房細胞により製造されたリン酸化ママスタチン
正常かつ形質転換した乳房細胞を32Pオルトリン酸で標識した。MCF−7細胞を別として(10%FBS、非必須アミノ酸およびインスリン(10mg/l)を添加したMEM(セロックス(Cerox))中で増殖させた)、癌腫細胞株をATCCの示唆どおりに培地中で増殖させた。細胞タンパク質の32Pオルトリン酸標識を2%の透析したFBSを含むリン酸不含DMEM(ICN)中で行った。細胞を200μCi/ml37℃で24時間インキュベートした。48時間後、ならし培地を細胞培養液から回収し、5倍に濃縮させた。ならし培地をTBSで洗浄し、ついで10kD分子量のカットオフのアミコン・フィルターで濃縮した。その細胞をこそぎとり(テフロン細胞スクレーパー使用)、溶解バッファー、細胞溶解産物およびならし培地から1.5ml/フラスコ(0.5%Toriton X-100、デオキシコール酸で2.01%SDS)にこすりとった
ママスタチンタンパク質を5倍の濃度の培地または細胞溶解産物500μlあたり5μgの7G6抗−ママスタチン抗体を加え、室温で1.5時間インキュベートすることによって免疫沈降した。ヤギ抗-マウスIgM第2抗体(5μg/0.5ml)を加え、ついで混合物をさらに1時間インキュベートした。タンパク質GPLUS/Aアガロース▲R▼スラリー(オンコジーン・サイエンス(Oncogene Science))を加え、ついで混合物を室温で1.5時間インキュベートして抗体複合体を固定した
複合体を溶解バッファーで6洗浄し、各回の洗浄ののち3000×gで遠心した。SDS-PAGEローディングバッファー(50μl)を加えた後、サンプルを100℃で3分間加熱した。上清をSDS−PAGEにて分離し、ニトロセルロースにトランスファーし、さらにコダックX−ARフィルムに露光した
NHMCタンパク質のリン酸ラベリングおよび続く免疫沈降は、NHMC中の49kDおよび53kDリンタンパク質を同定した。癌腫細胞株MHC−7、T47D、ZR−75−1およびMDA−MB−435は44kD免疫応答性タンパク質を発現するが、このタンパク質は32P−オルトリン酸で標識しなかった。
本実験は、増大したママスタチンの分子量ではより多くのリン酸が取り込まれていることを示す。形質転換した細胞中のママスタチンのリン酸化の欠如はそのタンパク質の高分子量形態の欠如およびママスタチン阻害活性の欠如に相関する。
実施例14
ママスタチンキナーゼおよびホスファターゼ
正常細胞または癌腫細胞のフラスコを75%のコンフルエンスに達するまで増殖させた。細胞培養物をTBSで3回洗浄し、ついでテフロンスクレーパーを用いてTBS中にこそぎ入れた。細胞懸濁液を1000gの遠心でペレット化し、ついで少量のTBS中に再懸濁した。各型の細胞のアリコートをタンパク質定量のため、除去した。ついで、タンパク質濃度は溶解バッファー(0.5%TritonX−100および、各々にアプロチニン(aprotinin)5μg/ml、ロイペプチンおよびPMSFを加えたTBS)2mg/mlで平衡化した。正常細胞タンパク質および腫瘍細胞タンパク質の等量を混合し、37℃で3時間インキュベートした。正常および癌腫細胞の平行混合を10nMオルトバナジウム酸塩(Orthovandate(NaVO4))、ホスファターゼインヒビターの存在下で行った。ついで混合物をSDS/PAGEにより分離し、7G6抗体を用いてウエスタンブロットによって分析した。そのデータを図8に示す。
Figure 0004452331
図8に示すように癌細胞(ZR−75−1)(レーンA)はNHMC(レーンB)に比較して、53/49kDママスタチンを製造しなかった。正常細胞タンパク質および癌細胞タンパク質をプロテイナーゼの存在下で混合することによって活性化53kDインヒビター(レーンD)の量が減少する。しかしながら、チロシン−ホスファターゼインヒビター(NaVO4)の存在下で、53kD種は混合物(レーンC)中に保有されている。これらの結果は癌腫細胞はママスタチンのリン酸化形態を排除することができるホスファターゼ活性を発現することを示している。
正常細胞株および形質転換株のママスタチンの発現はウエスタンブロット分析ンより定量的に測定することができる。抗−ママスタチンモノクローナル抗体を用いて、乳癌細胞および正常乳房上皮からの細胞間のタンパク質の発現に一貫した差異が存在することを示していた。ママスタチンは、抗−ママスタチンモノクローナル抗体7G6でウエスタンブロット分析によって44、49および53kD種がヒト正常女性乳組織中に認識された。乳癌細胞において、44kD種の一貫しない認識があったが、49または53kD免疫応答性形態ではなかった。49および53kD形態を正常細胞中で同定すると、それらはリン酸化されている。44kD種はリン酸化されていない。従って、ママスタチンの44および49および53kD種の発現を観察することによってママスタチンがリン酸化されているか否かの決定のためにイムノブロット分析を使用することができる。
実施例15
ヒト血清中でのママスタチンの同定
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を精製抗−ママスタチンモノクローナル抗体である6B8および3C6を用いて、ママスタチンの検出のために確立した。
抗体6B8を使用して、10μg/mlまたは100μl/ウェルの濃度で、室温で3時間または4℃で終夜、イムロン 1(Immulon 1)96ウェルマイクロタイタープレート(イムロン社)をコートするために使用した。プレートをTBS(150mM NaClmMのトリスpH7.4)中での2%BSA(シグマ)で30分間ブロッキングし、ついで2%BSA溶液に50%に希釈した精製ママスタチンまたはサンプル血清とともに37℃で1.5時間インキュベートした。第2抗体を加える前にマイクロタイタープレートを300μl/ウェルのTBSプラス0.1%TritonX-100で5分間ずつ、3回洗浄した。
第2抗体はビオチン化した3C6であった。抗体は、0.1MのNaHCO3中でビオチン、N−ヒドロキシコハク酸エステル(N-hydroxy succinimate ester)(シグマ)と室温で2時間または4℃で16時間インキュベートすることによってビオチン化した。抗体を使用の前または保存前に、1MのNaCl、50mMのトリス(pH7.4)、0.02%のアジ化物(NaN3、シグマ)に透析した。
ビオチン化した抗−ママスタチン抗体を1μg/mlで2%BSA/TBS溶液中で100μl/ウェルに添加し、37℃で1.5時間インキュベートした。マイクロタイタープレートを上記のようにTBSと0.1%Triton X-100の混合物で5分間で5回洗浄した。第2抗体をアルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジン(サザン・バイオテクノロジー(Southern Biothechnology))で同定し、ついですべてのサンプルについて100μl/ウェルで2%BSA/TBS中で1/1000希釈で1時間インキュベートした。
ELISAアッセイをPNPP(パラニトロフェニルホスフェート、シグマ)をアルカリホスファターゼバッファー(10mMジエタノールアミンpH9.5(シグマ)、0.50mMのMgCl2(シグマ))中で1mg/mlにて比色的に発色させた。マイクロタイタープレートを15分間および30分間隔で405nmでELISAリーダー上で読みとった
細胞溶解産物またはならし培地から単離したクロマトグラフィーを使用して精製したママスタチンを用いてELISAのための標準曲線が確立し、低いナノグラム範囲でママスタチンのアッセイ感度がされた(図9参照)。正常ヒト志願者血清中のママスタチンレベルの定量は、志願者から1ヶ月に2日の間隔で回収した血清サンプルで行った。正常ヒト女性血清のママスタチンレベルをこのアッセイによって検出可能であり、約10〜50μg/ml間(図10)で変化した
ママスタチンレベルまた、乳癌患者から採取した血清中で測定した。ミシガン大学胸部ケアセンターで節陰性(node negative)乳癌と診断された患者は、処経過を通て、血清中のママスタチン発現について検査した。そのデータを図11に示し、以下にまとめた。血清サンプルを乳癌患者からホルモン周期に関する処置(サイトトキシン、アドリアマイシン、メトトレキセート、および5Fuを用いた組み合わせ物理療法プロトコール)の全経過間で回収した血清を凝血後、遠心により全血から分離し、使用まで−20℃で保存した。0.5%NFDM中50%の濃度の150μlの血清を用いたELISAアッセイを、酵素結合した「サンドイッチ」アッセイにて6B8および3C6抗−ママスタチン抗体を用いて2回行った。クロマトグラフィーによって精製したママスタチンで標準曲線を作成し、図9に示す曲線と比較した。
ママスタチンの発現は、患者とに変わり、処経過間で上下した。ママスタチンレベルは転移性疾患へ進行するにつれて検出されなくなることが一貫して観察され
乳癌と診断された患者の血清中の診断時ママスタチンレベルは、正常患者血清中のレベルと比較して低かった。ママスタチンレベルは、一般に、ホルモン周期、アジュバント化学療法プロトコールに応じて上昇した。ママスタチンのレベルは、このプロトコール上下した。ママスタチンレベルは死進行した疾患を罹患している患者中では検出されなかった。患者のデータを以下の表に示すように4つの群に分類した。
I. 血清ママスタチンレベルが治療期間中上昇し続ける患者の群
II. 血清ママスタチンレベルが治療の最初は増加するが、ついで検出不可能になる患者の群
III. 血清ママスタチンレベルが治療期間に上昇するが、ついで広く変動する患者の群
IV. 治療で検出不可能であった血清ママスタチンレベルを保有する患者の群。
Figure 0004452331
実施例16
ママスタチンのイン・ビボでの効力
CD-1Nu/Nu同種の雌性、6週齢マウス(チャールズ・リバー(Charles River))に徐放性ペレット、0.72mg/ペレットで17βエストラジオールの60日間放出(イノベーティブ・リサーチ(Innovative Rsearch)#SE-121)を用いてエストロゲンを補給した。エストロゲンを補給したマウスに60%マトリゲル中に100μlの注入あたり、3×106MCF-7を注入した。2回の注入がおこなわれ、それぞれわき腹に注入された。腫瘍細胞増殖の7日後、ママスタチンを投与した。試験マウスは6週間に2日の間隔で製造培地中にママスタチンの1,2、または5μgを受けた。コントロールマウスはBSAを投与されるか、または腫瘍を注入されないかインヒビター単独を注入された。
腫瘍の大きさを1週間ごとに最大直径の点で測定し、処理群に関して平均した。その結果を図13A-13Cに平均直径±標準偏差としてサイズプロットにより示した。
本動物実験をMDA-231腫瘍細胞を用いて反復した。細胞をMCF-7細胞に関して上記のように注入1回あたり2×106細胞で注入した。
その結果を図14A〜14Cに示す
示された結果は期待されるほどではなかった。動物は尾の静脈に注入を受け、必要な血液容量より少ない結果となった。腹腔内注入を用いた続く実験は一層有効な処理という結果をもたらした。5μg/マウスの用量およびそれより多い用量で腫瘍増殖が廃止される。
実施齢17
ママスタチンのレトロウイルス発現
ママスタチンcDNA(2.4キロベース(kb)のインサート)をレトロウイルス発現ベクターにサブクローニングされた。そのベクターを使用して、3T3繊維芽細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞を回収し、溶解し、ついでその細胞溶解産物をウエスタンブロットで分析した。
図12に示すように、ママスタチン運搬レトロウイルスにてトランスフェクションされた3T3細胞はリン酸化したママスタチンを発現した。上記の明細書、実施齢およびデータはその製造物の完全な記載および本発明の組成物の使用についての完全な記載を提供する。本発明の多くの態様は本発明の精神および範囲から逸脱することなく構成されるので、本発明は以後付記された請求の範囲に属する。
実施齢18
バキュロウイルスおよびCos7細胞におけるママスタチン発現
Figure 0004452331
イムノブロット分析:細胞溶解産物を7G6抗−ママスタチンモノクローナル抗体でプロービングした。A)25μg、NHMC−20、正常ヒト細胞溶解産物(コントロール)、B)25μg、Cos−7細胞溶解産物、pcDNA3(コントロール)でトランスフェクション、C)10μgCos-pMammB細胞溶解産物、pcDNA3/ママスタチン構築物でトランスフェクション、D)20μgCos−pMammB細胞溶解産物。
要約:Cos−7細胞中の組換えママスタチン発現の導入は、ママスタチン遺伝子が真正ママスタチンをコードすることを示している。さらに、Cos−7細胞がそのタンパク質リン酸化に関係するママスタチンの異なる形態を発現するという観察は、ママスタチンがリン酸化され、かつヒト乳房細胞以外の真核細胞にて製造される場合に活性であることを示唆する。安定したトランスフェクションは組換えママスタチンの永久的な合成を可能にするように選択される。
実施例19
培養中における正常ヒト乳上皮細胞によるママスタチンの製造
健常な乳組織を無菌の手術室での直接修正乳房形成術から入手した。その組織をIII型コラーゲン(ライフ・テクノロジーズ、ベテスダ、メリーランド)1g当たり4単位を含む溶液中に薄層流出フード(Laminar Flow hood)中で、無菌状態で微細分した。微細分した組織を終夜振盪ウォーターバス中で37℃にてインキュベートし、コラゲナーゼ消化させた。
コラゲナーゼは乳組織を消化し、多様な細胞型および脂肪細胞中から放出された脂肪を含む粘性液体を、遠心によって液体、水性溶液、および他の細胞型を分離した。そのコラゲナーゼ−消化物質を卓上遠心機で1000rpmにて室欧で約5分間回転させた。脂肪細胞および遊離脂肪は、遠心チューブの分離は、呼吸および廃棄によって退行された。上記細胞ペレットに位置する水性伝説はまた、呼吸および潜在によって取り下げられた。残る細胞ペレットを無菌のママスタチン増殖培地であるDMEMpH7.4で洗浄した。洗浄を上清がもう濁っていないというところまで(例えば、約4回の洗浄)続けた。その洗浄した細胞を増殖培地中に再度懸濁させ、40℃で30分間重力によって安定させることができた。赤血球細胞を除核し、有核上皮細胞より低い密度であるため、この手続は赤血球細胞を含む上清を取り除くことによって、堆積した上皮細胞からの赤血球細胞の除去という結果となる。この沈降手を細胞ペレットに赤い色が残らなくなるまで、例えば約2回、繰り返した。残る細胞ペレットを5%エキン血清(Equine)、10μg/mlの上皮増殖因子、100ng/mlのコレラ毒素、500ng/mlのヒドロコルチゾン、10μg/mlのインスリン、100単位/mlペニシリンおよびストレプトマイシン、および1mM塩化カルシウムを含む栄養素が豊富なDMEM/F12増殖培地中に再懸濁した。生理的濃度のカルシウムは、細胞培養中の細胞接着および増殖を促進するのを助けた。細胞懸濁液を5%CO2濃度で37℃にて無菌組織培養フラスコ中でインキュベートした
正常乳組織の最初の培養は混合細胞集団を含む。脂肪細胞、ニューロンおよび血管組織は上記の遠心分画工程によって有意に減少させられる。結合組織細胞は有意な量で存在する。上皮細胞でない細胞を除去するために、勾配接触法が使用された。繊維芽細胞、ニューロンおよび乳組織における他の細胞型はすべて上皮細胞より一層迅速に組織培養形成に接触する。さらに、これらの細胞型のすべてを組織培養造形から上皮細胞より迅速にトリプシンによって除去する。乳組織細胞のための培養を豊富にするために、単層を形成し始める培養(最初のプレーティングの後5〜7日)はトリプシン:EDTA(250:1(モル比))で処理された。細胞の大多数は、37℃で5分以内のインキュベーション中で除去された。残った接触細胞は90%より多くが上皮乳細胞であった。これらの細胞は生かされ、上記の増殖培地に40μMの塩化カルシウムとともに戻された。繊維芽細胞をトリプシン化した培養フラスコから除去し、ついで37℃で30分間組織培養プラスティックにプレーティングした。接触した細胞は繊維芽細胞が優勢であった。接触しなかった細胞を有意に繊維芽細胞(50〜80%)に関して豊富であった。これらの懸濁細胞を除去し、新鮮組織培養フラスコに落ち着かせることができた。この工程を2回繰り返し、優性なものが上皮細胞となるような細胞集団を得た。コレラ毒素は、上皮細胞増殖を促進さえ、かつ繊維芽細胞の増殖を阻害し、繊維芽細胞がカルシウムが減少した中ではそれほどよく増殖しないので、その培養物は、上記のように低カルシウム培地中で1週間以内で約100%の上皮であった。これらの正常ヒト乳細胞(NHMC)の培養物は、培養培地中にママスタチンを製造した。
NHMCを増殖させるために使用した栄養培地は、5%エキニン血清を含み、ヒト注射には適さない。エキニン血清タンパク質はママスタチンタンパク質から精製されるか、または無血清培地中での細胞増殖から精製されなければならない。正常細胞は、7〜10日間で無血清で維持されるのみでよい。無血清ママスタチンの有意な量を長く製造するために、細胞が無血清培地および血清を含む培地で交代で増殖され
NHMCを上記のように増殖培地中で、完全なコンフルエントに達するまで増殖させた。その細胞は、細胞がフラスコの利用可能な表面を覆う時、増殖するにつれて溶液中で出芽した。出芽細胞を回収し、ついで新しいフラスコにトランスファーした。コンフルエントに達したフラスコを、血清タンパク質を除去するために洗浄の間に5分食塩水インキュベートして、無菌食塩水で3回漱いだ。ついで細胞を血清、コレラ毒素およびヒドロコルチゾン欠如した本質的に増殖培地である無血清「製造培地」を提供された。細胞を約4日(96時間)、培地の回収と共に製造培地で維持され、少なくとも4日間増殖培地に細胞を戻した。このように製造された典型的な一段のママスタチンの大きさは、1〜2lであった。
ママスタチンはまた、バイオリアクター(Bioreactor)中、(バイオフロー・3000(Bioflow 3000)、ニュー・ブランズウィック・サイエンティフィック(New Brunswick Scientific)で製造した。この潅流反応において、細胞を組織倍腸処理した繊維細胞ディスクに接触させた。細胞接触ディスクを応答血管中のバスケットを維持し、培地で潅流した。NHMCをリアクターに導入され得る場合、それらは繊維細胞ディスクを集め、および培地の潅流によって栄養を与えられ。ならし培地をリアクターから回収し、冷凍した
実施例20
ママスタチンのドット・ブロット・血清アッセイ
25歳齢の健康な女性の結成を入手し、ついで乳癌患者(第IV段階)からの血清、患者の姉妹で診断されていない者、患者の母親と比較した。その家族は乳癌の家系であった。その血清サンプルをママスタチンの存在下でのイムノアッセイに比較した。診断の日に採取した多発乳癌患者血液サンプルはまた、イムノアッセイにおいて分析された。正常なヒト乳細胞(NHMC)ならし培地を標準コントロールとして使用した。標準的なNHMCママスタチンは、ママスタチンタンパク質標準クロマトグラフィーによる精製により決定したように約50ng/mlを含む。
個々の血液サンプルを血管に回収し、ついで全血から血清を分離した。血清サンプル(250または500μl容積)を希釈なしに96ウェル(S & S Dot-Blot manifold)を用いて吸引によってニトロセルロースにアプライした。ならし培地を実施例19のように調製した。ニトロセルロースフィルター上のサンプルをTBS中のTriton X-100で洗浄し、脱脂粉乳(TBS中5%)で停止し、5%の脱脂粉乳中で第1抗−ママスタチン抗体(7G6マウスIgM)1μg/mlと一緒に、室温で1.5時間インキュベートした後、5%の脱脂粉乳中で第2抗体(アルカリホスファターゼにコンジュゲートしたヤギ抗−マウスIgM)1μg/mlと一緒に、室温で1時間インキュベートした。アルカリホスファターゼ発色反応は、ニトロブルー−テトラゾリウム(nitrobler-tetrazolium)およびBCIPを用いて進行させた。
図13に示すように、サンプル中のママスタチンの量は正常乳細胞ならし培地から入手した標準曲線に対して定量した。健康な女性から得た血清は暗く色付けたブロットによって示されるように、容易に検出可能な量のママスタチンを含み、一方、乳癌と診断された患者の血清および診断されていない家族からは殆ど、または全くママスタチンが示されなかった。
別のサンプルを診断の日に患者から、乳癌患者の家族の健康なメンバーからおよび健康な女性及び男性から入手した。血清を上記のように加工してママスタチンを分析した。ドットブロットは「陰性または低い」または「陽性または高い」として評価され、発色反応の強度を示した。データを以下の表に示す。
Figure 0004452331
実施例21
ヒト乳癌患者の治療
29名の再発した失敗した第IV段階の乳癌患者、または化学療法に失敗した患者にママスタチンタンパク質を投与した。そのタンパク質を上記の実施例19に記載したように製造し、ついで3mlの注入容積に必要とされる用量にて、製造培地中で提供した。患者は処方された方法に従って、そのタンパク質を静脈内投与された。概して、1日用量を注入した。選択された用は、量患者の血流内のママスタチンの生理学的な量(例えば、健康な女性で5〜50ng/ml)を提供するものであった。各患者の用量および頻度は以下の表に示すとおりである。
Figure 0004452331
29患者の群のうち、6名が後期段階の肝臓疾患を有しており、生存できなかった。これらの6名の患者はママスタチン受領前の肝臓機能不全の臨床的証拠を示し、治療によって助からなかった。1名の患者は肝臓機能不全以前に黄疸を減少させる徴候を示したが、全6名のこれらの患者は進行した肝臓癌を有する患者に一般的な窒素毒素により死亡したようであった。
残りの患者は、その疾患により2名が死亡した。1名はママスタチン治療の2ヶ月後に疾患のない状態であったようであった。この患者はコントロール下に決して戻らず、彼女は肝臓に関する疾患で死亡した。これらの後の2人の患者にけるママスタチンの投与は10倍に増加したが、第2の患者は治療の4ヶ月後に、治療に対する応答を全く示さずに死亡した。
現在ママスタチン療法を受けている19名の患者のうち、多数は陽性の利益の徴候を示し、副作用の徴候は全くない。これらの患者のうちの3名がママスタチンの利益を受けているのかかは不明である。他の16名の患者は正常レベルまで腫瘍マーカー(CA15−3およびCA27-29)レベルが減少し、触診できる腫瘍の大きさが減少し、MRIスキャニングに証明されるような疾患の衰退および痛みの減退を含む利益の明らかな臨床的徴候を示している。これらの患者の数人は、疾患が無くなったと考えられるとの点に改良を示す。しかしながら、これら患者に3日〜5日の期間該タンパク質を与えないと、疾患の徴候を全く示さない患者でさえ、痛みの増大によって証明されるような疾患の再発という結果となることが一貫して観察された。タンパク質治療を再開すると2〜4時間以内に増大した痛みの徴候が低減ないし除去された
血中のママスタチンレベルが長期の治療の後に衰退することも観察されており、負のフィードバックシステム示唆されている。血中レベルにおける一定のこの衰退は、約28日毎日ママスタチンを投与し、のち2〜3日タンパク質を投与しないことによってうまく回避できる。
実施例22
ヒト治療のための組換えママスタチン
組換えママスタチンをCos-7サル腎臓細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)およびSf9昆虫細胞中にママスタチンcDNA配列を含むプラスミドを有する細胞をトランスフェクションすることによって製造した。ママスタチンcDNA安定してこれらの産生細胞株のゲノムに組み込まれ、増殖阻害活性免疫応答性のタンパク質を分泌する。
これらの細胞からママスタチンを製造し、ヒトに使用するためのタンパク質を単離するために、細胞株を無血清培地中で約48〜72時間増殖させる。培地を取り除き、0.1M〜約0.5Mの塩化ナトリウム濃度勾配を用い、約0.2Mでママスタチン画分を収集するトリスバッファー(pH7.5)中でのイオン交換クロマトグラフィーにより、タンパク質をならし培地から精製した。タンパク質画分をついで生理食塩水に対して透析し、必要であれば希釈し、ついで濾過滅菌する。
別法において、ママスタチンはCos7またはSf9細胞中で融合タンパク質として製造される。融合タンパク質はヒスチジンタグ(6ヒスチジン残基)およびX因子プロテイナーゼ開裂部位を含む。ママスタチン発現細胞を培養し、好ましくはは1%の血清含有培地中で培養し、ならし培地を回収し、白金キレート樹脂を通す。His-融合タンパク質はカラムに接着し、50mMのトリス(pH7.5)、0.1MNaClで洗浄し、ついでゆっくりとNaCl含有10単位/X因子プロテイナーゼを含むトリスにて洗浄する。ママスタチンは、His-融合から遊離する。ママスタチンは上記のように分子篩クロマトグラフィー、またはイオン交換クロマトグラフィーによって分離する。
Figure 0004452331
Figure 0004452331

Claims (3)

  1. 抗ママスタチン抗体およびママスタチン標準を含む血清中のママスタチンの決定用診断キットであって、該ママスタチン標準が配列番号:1に示す核酸配列によってコードされるものである診断キット。
  2. 乳細胞癌腫を_モニターする方法であって、
    ママスタチンタンパク質の存在に関して患者の血液を分析し、その際、該分析が、配列番号:1に示す核酸配列によってコードされるママスタチンタンパク質の存在または不在を決定することであり、該ママスタチンタンパク質の存在または不在の決定が、該血液を抗ママスタチン抗体と接触させることを含み、ついで、
    正常コントロールに比較した該ママスタチンタンパク質の不在または減少を乳細胞癌腫に相関させる
    ことを含む方法。
  3. ヒト患者における機能的なママスタチンのレベルをモニターする方法であって、
    配列番号:1に示す核酸配列によってコードされるママスタチンタンパク質の存在に関して患者の血清の生物学的サンプルを分析し、その際、該ママスタチンタンパク質の存在の決定が、該血清を抗ママスタチン抗体と接触させることを含み、ついで
    正常なまたは以前の患者のサンプルコントロールと比較した該ママスタチンタンパク質の量の減少を、機能的なママスタチンの減少量と相関させる
    工程を含む方法。
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