本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、製造コストが安く、歯磨き時にブラシが押圧されても安定した歯磨きが可能で、さらに小型化が可能な電動歯ブラシ及び主として電動歯ブラシに好適な安価な転がり軸受を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するために、本発明に係る電動歯ブラシ(1)は、本体ケースと、該本体ケース内に収められた、モータの回転運動をブラシ駆動軸の軸方向往復運動に変換する駆動方向変換部及び前記ブラシ駆動軸を往復運動自在に支持する支持部とを備えた電動歯ブラシであって、前記駆動方向変換部が、前記モータの駆動軸に結合された駆動側歯車と、前記モータの駆動軸に直交する回転軸を有し前記駆動側歯車に噛合する従動側歯車と、該従動側歯車の偏心位置に固着されたカムと、該カムに係合し、前記ブラシ駆動軸に結合されたカムフォロアとを備え、前記支持部が、前記カムフォロアに固着された摺動部材及び該摺動部材を摺動可能に保持する保持部材を備えた後端側支持部と、前記本体ケースのブラシ装着側端部に固定された先端側支持部とで構成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る電動歯ブラシ(2)は、上記電動歯ブラシ(1)において、前記摺動部材が、前記カムフォロアから前記モータ側に突出した突起であり、該突起が、前記モータの回転を前記カムフォロアに伝達する前記駆動側歯車が配置される空間部を内側に備え、前記モータ側に面した略U字形であり、前記保持部材が、前記突起が摺動可能に挿入される、略U字形の内面形状をした摺動部材受け部を備えていることを特徴としている。
また、本発明に係る電動歯ブラシ(3)は、上記電動歯ブラシ(1)において、前記摺動部材が、カムフォロアから前記モータ側に延びる1つ以上の突起であり、1つの前記突起の周囲又は2つ以上の前記突起間に前記駆動側歯車が配置される空間部を備え、前記摺動部材を保持する保持部材が、前記板状の突起を摺動可能に保持する溝部を有していることを特徴としている。
また、本発明に係る電動歯ブラシ(4)は、本体ケースと、該本体ケース内に収められた、動力装置を含む駆動部、該駆動部によって少なくとも軸方向に往復運動するブラシ駆動軸及び該ブラシ駆動軸を往復運動自在に支持する支持部とを備えた電動歯ブラシであって、前記支持部が、前記駆動部を挟んで、前記本体ケースに固定された先端側支持部及び後端側支持部を備え、前記動力装置が偏心ウエイトを回転体に結合した振動モータであり、該振動モータが、回転面を前記ブラシ駆動軸に沿わせるようにして固定部材を介して前記ブラシ駆動軸に固定されていることを特徴としている。
また、本発明に係る電動歯ブラシ(5)は、上記電動歯ブラシ(4)において、前記振動モータが、ブラシレス扁平型振動モータであることを特徴としている。
また、本発明に係る電動歯ブラシ(6)は、上記電動歯ブラシ(4)又は(5)において、前記ブラシ駆動軸におけるブラシ装着部が、ブラシ部の毛先方向と前記振動モータの回転面とが一致する関係、及び前記ブラシ部の毛先方向と前記振動モータの回転面とが90度の関係のいずれかを選択して前記ブラシ部を装着し得るように構成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る転がり軸受(1)は、転がり軸受の外輪と、該外輪の内側に形成された軸方向に延びる複数のリテーナとが一体的に形成された成形品で構成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る転がり軸受(2)は、上記転がり軸受(1)において、前記リテーナの内側のボール装填部における軸方向の一部にボール当たり部を備え、該ボール当たり部の両側にボールが装填されるように構成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る転がり軸受(3)は、上記転がり軸受(1)において、前記リテーナによって構成されるボール装填部が、軸方向の一端側と他端側の2つのグループで構成され、前記転がり軸受の中心から見たボール装填部の配置角度が、前記一端側のグループに属する各ボール装填部の中心軸と、前記他端側のグループに属する各ボール装填部の中心軸とが、前記一端側のグループと前記他端側のグループとで、相互にずれていることを特徴としている。
また、本発明に係る電動歯ブラシ(7)は、上記電動歯ブラシ(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記先端側支持部が、上記転がり軸受(1)〜(3)のいずれかで構成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る電動歯ブラシ(8)は、上記電動歯ブラシ(4)〜(6)のいずれかにおいて、前記先端側支持部及び前記後端側支持部が、上記転がり軸受(1)〜(3)のいずれかで構成されていることを特徴としている。
なお、上記本発明に係る電動歯ブラシ(1)において記載した、「モータの駆動軸に結合された駆動側歯車」とは、平歯車又は傘歯車などのピニオンギアを意味し、「モータの駆動軸に直交する回転軸を有し前記駆動側歯車に噛合する従動側歯車」とは、主としてフェースギア又はベベルギアを意味する。
上記電動歯ブラシ(1)によれば、ブラシ駆動軸の往復運動を支持する支持部が、カムフォロアに固着された摺動部材及び該摺動部材を保持する保持部材とを備えた後端側支持部と、本体ケースに固定された先端側支持部とで構成されているので、従来の電動歯ブラシと本体ケースの長さが同じである場合には、先端側支持部と後端側支持部との間隔を大きくすることができる。さらに、ブラシ部に作用する押圧力によって、先端側支持部を支点として、後端側支持部にブラシ部とは逆向きの力が作用したとしても、その作用を確実に拘束することができる。したがって、ブラシ部の往復運動が極めて滑らかなものとなる。さらに、それぞれの支持部で受ける力が小さくなるので、安定して往復運動するとともに摺動部の摩耗も軽減される。また、図14に示したような従来の軸受に比べ、軸受の構造が簡素で製造が容易であるため、支持部の製造に要するコストを安くすることができる。さらに、先端側支持部と後端側支持部との間隔を、従来の電動歯ブラシと同様な距離とすれば、電動歯ブラシを小型化することができる。
上記電動歯ブラシ(2)によれば、摺動部材が、カムフォロアのモータ側に設けられた突起であり、この突起が、内側に駆動側歯車(ピニオンギア)が配置される空間部を備え、モータ側に面した略U字形であり、保持部材が、突起が摺動可能に挿入される、略U字形の内面形状をした摺動部材受け部を備えているので、軸に垂直な面において、摺動部材に作用する上下左右すべての方向の力を、保持部材によって確実に拘束することができる。そのために、歯磨きの際に、ブラシ部に様々な方向に力が作用したとしても、ブラシ部の動きにほとんど変動が生じない。したがって、ブラシ部の動きがよりいっそう滑らかなものとなり、使用者に快適な使用感を与えることができる。また、摺動部材が略U字形であるので、駆動軸方向に対する垂直方向の力に対して、その部分は構造的に安定であり強度にも優れている。さらに、駆動側歯車(ピニオンギア)は、摺動部材及び保持部材に設けられた空間部に配置されるので、駆動側歯車(ピニオンギア)と従動側歯車(フェースギアなど)との位置関係は、後端側支持部が設けられていない従来の歯ブラシと同様である。すなわち、後端側支持部を設けることによって、電動歯ブラシの本体部が長くなるようなことがない。
上記電動歯ブラシ(3)によれば、カムフォロアに固着された摺動部材が、カムフォロアからモータ側に延びる1つ以上の突起であり、1つの前記突起の周囲又は2つ以上の前記突起間に駆動側歯車(ピニオンギア)が配置される空間部を備え、摺動部材を保持する保持部材が、板状の突起を摺動可能に保持する溝部を備えた構成となっているので、軸に垂直な面において、摺動部材に作用する上下左右すべての方向の力が、保持部材によって確実に拘束される。そのために、歯磨きの際に、ブラシ部に様々な方向の力が作用したとしても、ブラシ部の動きにほとんど変動が生じない。したがって、ブラシ部の動きがよりいっそう滑らかなものとなり、使用者に快適な使用感を与えることができる。また、摺動部材が、1つ以上の突起であるので、摺動部材を軽くすることができ、摺動接触面積を小さくすることにより、摺動動作をいっそう滑らかにすることができるとともに、摺動部材及び保持部材が配置される空間部をより容易に確保することができる。さらに、駆動側歯車(ピニオンギア)は、摺動部材及び保持部材に設けられた空間部に位置するので、ピニオンギアと従動側歯車(フェースギア)との位置関係は、後端側支持部が設けられていない従来の歯ブラシと同様である。すなわち、後端側支持部を設けることによって、電動歯ブラシの本体部が長くなるようなことがない。また、本発明に係る電動歯ブラシ(1)〜(3)では、後端側支持部と保持部材との構成において、ボールを介在させることにより、さらに滑らかに駆動させることができる。
上記電動歯ブラシ(4)によれば、振動モータがブラシ駆動軸に固定され、支持部が、駆動部を挟んで、本体ケースに固定された先端側支持部及び後端側支持部を備えているので、両者の支持部の間に十分な距離を確保することができる。さらに、先端側支持部及び後端側支持部に、ブラシ駆動軸を支持する転がり軸受を用いることができるので、ブラシ駆動軸の往復運動を滑らかに支持することができる。また、ブラシ部が押圧され、先端側支持部を支点として、後端側支持部に、軸方向に直角な向きの上下左右方向の力が作用したとしても、ブラシ駆動軸を安定して支持することができる。すなわち、歯磨き時の動作が安定した電動歯ブラシを得ることができる。また、電動歯ブラシ(4)は、駆動方向変換部を必要としない。そのために、駆動部に近接して、先端側支持部及び後端側支持部を配置することができる。その場合には、本体部の長さを短くすることができるので、電動歯ブラシの小型化が可能である。さらに、従動側歯車(フェースギアなど)、カムなどで構成された駆動方向変換部といった機構を必要としない。そのために、電動歯ブラシ(4)には、構造が簡素化され、故障等のトラブルが生じにくいという利点のほか、部品数が少ないため、製造が容易でコストを安くすることができるという長所がある。
上記電動歯ブラシ(5)によれば、振動モータが、扁平型振動モータであるので、電動歯ブラシをより小型化することができる。さらに、振動モータは、ブラシレス扁平型振動モータであることが好ましく、その場合には、電動歯ブラシの長寿命化を図ることができる。
上記電動歯ブラシ(6)によれば、ブラシ部の毛先方向と振動モータの回転面とが同じ又は90度の関係のいずれかを選択することができるので、毛先に、軸方向の往復運動のほかに、横方向の運動又は縦方向の運動を加えることができる。この毛先の横方向の運動は、例えば、歯と歯茎との間を往復する歯磨き効果を発揮し、縦方向の運動は、歯科疾患のリスク部位である口腔内の窪んだ部位、歯間部(隅角部)、歯頸部、咬合面の小窩裂溝部でのプラークの除去効果を向上させ、歯茎に対するマッサージ効果も発揮する。
上記転がり軸受(1)によれば、転がり軸受の外輪と、外輪の内側に形成された軸方向に延びる複数のリテーナとが一体的に成形された成形品で構成されているので、転がり軸受の製造コストが安い。したがって、この転がり軸受を用いた電動歯ブラシ等の製品の価格を安くすることができる。
上記転がり軸受(2)によれば、リテーナの内側のボール装填部における軸方向の一部にボール当たり部を備え、ボール当たり部の両側にボールが装填されるように構成されているので、転がり軸受によって支持される長さが長くなる。そのために、駆動軸等が軸方向の所定の間隔で安定して支持され、駆動軸等の往復運動をさらに滑らかにすることができる。
上記転がり軸受(3)によれば、ボール装填部が、軸方向の一端側と他端側の2つのグループで構成され、各グループに属する各ボール装填部の中心軸が相互にずれているので、駆動軸等をいっそう滑らか、かつ安定に支持することができる。
上記電動歯ブラシ(7)又は(8)によれば、転がり軸受が用いられる先端側支持部又は後端側支持部が、外輪とリテーナとが一体的に形成された成形品で構成された転がり軸受となっているので、軸受のコスト、引いては電動歯ブラシの価格を安くすることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る電動歯ブラシを具体的に説明する。なお、各図面においては、同一又は同種の部分に同じ符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、以下の説明においては、駆動側歯車をピニオンギア、従動側歯車をフェースギアとして説明する。本明細書で記載するフェースギアは、ベベルギアと置き換えることが可能であり、その場合のピニオンギアには傘歯車が用いられることになる。
図1は、実施の形態1に係る電動歯ブラシ10の構成を示す断面図である。また、図2は、図1に示した断面図の紙面に垂直な面における主要部の構成を示す断面図である。さらに、図3は、図1に示した電動歯ブラシ10の軸方向に直角な面における構成を示す図であり、(a)はIIIa-IIIa’線、(b)はIIIb−IIIb’線における断面図である。さらに、図4は、駆動方向変換部及び後端側支持部材を構成する各部材を個別に示す斜視図である。
電動歯ブラシ10は、本体ケース11と、本体ケース11内に収められた、モータ12の回転運動を軸方向の往復運動に変換する駆動方向変換部13と、軸方向に往復運動し、先端にブラシ部19が装着されるブラシ駆動軸(以下、駆動軸と略記する)14と、駆動軸14を往復運動自在に支持する支持部15、16とを備えている。また、駆動方向変換部13は、フェースギア13bと、フェースギア13bに固定されたカム13cと、カム13cの回転運動を駆動軸14の往復運動に変換するカムフォロア13aとを備えている。上記支持部15、16は、図1に示されている本体ケース11のブラシ装着側端部に固定された先端側支持部15と、カムフォロア13aのモータ12側に設けられた摺動部材17及び摺動部材17を保持する保持部材18を備えた後端側支持部16とで構成されている。
また、電動歯ブラシ10は、その他に、電池室、スイッチ、本体ケース11先端側の防水用ゴムカバー等を備えているが、一般的な電動歯ブラシに採用されているものと構成、機能が同じであるので具体的な説明を省略する。なお、以下の説明においては、本体ケース11のブラシ装着側を先端側、モータ12側を後端側と記す。
運動方向変換部13は、駆動軸14の後端に固定されたカムフォロア13aと、フェースギア13bと、フェースギア13bに固定されたカム13cとで構成されている。運動方向の変換は、駆動軸14の軸方向に垂直方向のモータ12の回転が、ピニオンギア12a及びフェースギア13bにより軸方向に平行な回転運動に変換され、さらにフェースギア13bに固定されたカム13cとカムフォロア13aとで、軸方向の往復運動に変換されるようになっている。この運動方向変換部13の構成は、図13に示した従来の電動歯ブラシに採用されている機構と同じであるので、詳細な説明を省略する。
実施の形態に係る電動歯ブラシ10は、駆動軸14を支持する支持部が、上記のように、本体ケース11のブラシ装着側端部(前方側端部)に固定された先端側支持部15と、カムフォロア13aの外周部のモータ12側に設けられた摺動部材17及び摺動部材17を保持する保持部材18を備えた後端側支持部16とで構成されている。支持部のうち、本体ケース11の前方側端部に固定された先端側支持部15には、従来の電動歯ブラシに用いられている転がり軸受を使用することができる。また、本体ケース11への固定は、本体ケース11の軸受保持溝に嵌め込み固定する方法など、従来用いられている方法を採用することができる。
なお、先端側支持部15に用いられる軸受は、図1及び図2に示したように、駆動軸14の往復運動に合わせてボール15aが移動し転がり摺動となるように、ボール15aのガイド部(リテーナ)15b内にスペース15cが設けられていることが好ましい。
本体ケース11の後方側に設けられた後端側支持部16のうち、カムフォロア13aの外周部に固着された摺動部材17は、図1、図2及び図4に示したように、カムフォロア13aのモータ12側の外周面に設けられ、モータ12側に突出した突起状の形態をしている。この突起状部は、内側にピニオンギアが配置される空間部17aを備え、全体的にはモータ12側に面した略U字形の形状をしている。このU字形の外周面には、ボールが配置される上部溝17b、下部溝17cが設けられている。
一方、保持部材18は、その摺動部材受け部18aが、略U字形の突起状の摺動部材17が摺動可能に挿入されるように、略U字形の内面形状となっている。また、底部には、ボール16bが配置される溝18cが形成されている。保持部材18は、内側の樹脂部18dと外側の金属部18eの二重構造となっており、金属部18eの上側端部には、内側に折れ曲がった折れ曲がり部18fが形成されている。
図3(b)に、摺動部材17が保持部材18に挿入された状態を示した。摺動部材17が保持部材18に嵌め合わされ、摺動部材17の上部溝17bにボール16aが配置され、下部溝17cと保持部材18の溝18cに挟まれてボール16bが配置されている。なお、ボール16aは、保持部材18の折れ曲がり部18fによって、摺動部材17の上部溝17b内から上方への動きが拘束されている。すなわち、駆動軸14の後端部に作用する上向きの力が、折れ曲がり部18fによって抑えられるようになっている。
また、ボール16a、16bが配置される摺動部材17の上部溝17b、下部溝17cと保持部材18の溝18cは、支持部材15の場合と同様に、ボール16a、16bが軸方向に移動可能で転がり摺動となるように、軸方向にスペースが設けられていることが好ましい。
保持部材18は、例えば、内部フレーム11aの一部として一体成形によって形成してもよく、内部フレーム11aに組み付けて固定してもよい。
摺動部材17及び保持部材18の樹脂部18dの材料には、カムフォロア13aなどに用いられている、POM(ポリアセタール)、ナイロン等のポリアミド樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの成形性、耐摩耗性、耐衝撃性、機械的強度等に優れた樹脂が適している。また、摺動部材17とカムフォロア13aとを同じ材料とした場合には、両者を一体的に成形することができる。なお、摺動部材17及び保持部材18は金属材料で形成してもよい。金属材料で形成する場合には、金属粉末射出成形(Metal Injection Molding:MIM)法、溶融金属射出成形法、粉末焼結法などを用いることができる。これらの製造方法によれば、ステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、リン青銅、黄銅などの軸受に好適な金属材料の成形が可能である。また、摺動部材17及び保持部材18の材料を、相互に異質の材料の組み合わせとすることによって、摩擦を軽減することができるほか、焼き付きの防止を図ることもできる。
図1、図2及び図3から明らかなように、ピニオンギア12aは、摺動部材17に設けられた空間部17aに配置され、保持部材18の1対の折れ曲がり部18fの間から、その一部が上部に出ている。したがって、ピニオンギア12aとフェースギア13bとの位置関係は、後端側支持部16が設けられていない従来の歯ブラシと同じである。すなわち、後端側支持部16を設けることによって、電動歯ブラシの本体部が長くなるようなことがない。
上記の実施の形態1に係る電動歯ブラシ10における後端側支持部16に関しては、摺動部材17と保持部材18との間に、ボール16a、16bを介在させる例を示したが、ボール16a、16bを用いることなく、摺動部材と保持部材とが直接接触して摺動するように構成してもよい。その場合には、ボール16a、16bを収めるための溝17b、17c、18c等を省き、摩擦係数を小さくすることができるように線状の突起等を設け、摺動部材17と保持部材18との間の摩擦が小さくなるようにするのがよい。
図5は、実施の形態2に係る電動歯ブラシ20の駆動方向変換部を含む主要部の構成を示す部分断面図である。また、図6は、図5に示した部分断面図の紙面に垂直な面における断面図であり、駆動方向変換部及び後端側支持部を含む主要部の構成を示す部分拡大断面図である。さらに、図7は、図6に示した駆動方向変換部及び後端側支持部を構成する部材を個別に示す斜視図である。
電動歯ブラシ20は、本体ケース11と、本体ケース11内に収められた、モータ12の回転運動を軸方向の往復運動に変換する駆動方向変換部13と、軸方向に往復運動する駆動軸14と、駆動軸14を往復運動自在に支持する支持部15、26とを備えている。また駆動方向変換部13は、フェースギア13bと、フェースギア13bに固定されたカム13cと、カム13cの回転運動を駆動軸14の往復運動に変換するカムフォロア13aとを備えている。さらに、上記支持部15、26は、図1に示されている本体ケース11のブラシ装着側端部に固定された先端側支持部15と、カムフォロア13aの外周部のモータ12側に設けられた摺動部材27及び摺動部材27を保持する保持部材28を備えた後端側支持部26とで構成されている。なお、図5は、図6における中心軸を通る、紙面に垂直な断面を示しているため、図5には、図6に示されている後端側支持部26が表示されていない。
後端側支持部26を除き、電動歯ブラシ20の全体的な構成及び運動方向変換部13の構成、機構等は、実施の形態1に係る電動歯ブラシ10の場合と同じであるので、重複する説明を省略する。
本体ケース11の後方側に設けられた後端側支持部26のうち、カムフォロア13aの外周部に固着された摺動部材27は、図6及び図7に示したように、カムフォロア13aの両側端縁に、板状の突起27aが取り付けられた構造となっており、この突起27aはカムフォロア13aからモータ12側に延びている。2つの突起27a間の空間部27bには、モータ12のピニオンギア12aが位置するようになっている。
一方、摺動部材27を保持する保持部材28には、図6及び図7に示したように、摺動部材27の突起27aを保持する溝部28aが形成されており、さらに、モータ12のピニオンギア12aが位置する空間部28bが設けられている。この保持部材28は、例えば、図6に示したように、内部フレーム11aの一部として一体成形により形成してもよく、内部フレーム11aに組み付けることにより固定された構造としてもよい。また、保持部材28は、内部フレーム11aとともに、又は保持部材28単独で、上下に分割された構造として、摺動部材27の板状の突起27aを上下から挟むようにして、組み立てることができるようにしてもよい。さらに、摺動部材27と保持部材28との間に線状の突起等を設け、摺動部材27と保持部材28との間の摩擦係数が小さくなるようにするのがよい。
摺動部材27及び保持部材28の材料には、カムフォロア13aなどに用いられているPOM(ポリアセタール)、ナイロン等のポリアミド樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの成形性、耐摩耗性、耐衝撃性、機械的強度等に優れた樹脂が適している。カムフォロア13aと摺動部材27とを同じ材料とした場合には、両者を一体的に成形することができる。なお、摺動部材27及び保持部材28は金属材料で形成してもよい。金属材料で形成する場合には、金属粉末射出成形(Metal Injection Molding:MIM)法、溶融金属射出成形法、粉末焼結法などを用いることができる。これらの製造方法によれば、ステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、リン青銅、黄銅などの軸受に好適な金属材料の成形が可能である。また、摺動部材27及び保持部材28の材料を、相互に異質の材料の組み合わせとすることによって、摩擦を軽減することができるほか、焼き付きの防止を図ることもできる。
図8は、摺動部材27と保持部材28との間が、転がり摺動で構成された例を示す斜視図である。図8に示したように、摺動部材27の突起27aの上側及び下側に、それぞれ軸方向に長い上側の溝27c及び下側の溝(図示されていない)を形成し、それらの溝に上側のボール27d、下側のボール(図示されていない)を配置する構成とすることによって、摺動部材27と保持部材28との間の往復運動を転がり摺動とすることができる。なお、当たり面の摩耗を少なくし、耐久性を高めるために、1つの溝に複数個のボールを組み込めるようにしてもよい。ただし、ボールの利用方法に関しては、上記の方法に限定されるものではなく、転がり摺動の効果が得られれば、その他の構成を採用してもよい。
また、図6〜図8には、摺動部材27が1対の板状の突起27aで構成されている例を示したが、突起は必ずしも1対である必要はなく、また板状である必要もない。保持部材28との間で往復運動可能であれば、形状は、棒状、柱状、筒状、又はその他の形状でもよく、その数は、1つでも3以上でもよい。ただし、その場合には、保持部材28の溝部28aも摺動部材に合わせた形状、数とする必要がある。また、突起が1つの場合には、その周囲にモータ12のピニオンギア12aが位置する空間部28bを設けるようにすることが必要である。
図9は、実施の形態3に係る電動歯ブラシ30の構成を示す断面図であり、同図(a)は中心軸を含む面における断面図、同図(b)は、(a)に示したIXb−IXb’線における断面図である。
電動歯ブラシ30の主要部は、本体ケース31、本体ケース31内に収められた、動力装置を含む駆動部33、少なくとも軸方向に往復運動する駆動軸34及び駆動軸34を往復運動自在に支持する支持部、すなわち先端側支持部35及び後端側支持部36で構成されている。また、支持部35、36は、駆動部33を挟んで本体ケース31に固定されており、先端側支持部35は本体ケース31のブラシ装着部側端部、後端側支持部36は電源部39との境界近傍に配置されている。
図10は、駆動部33が駆動軸34に固定された状態を示す斜視図である。図10に示したように、駆動部33は、動力装置としての振動モータ37と振動モータ37を保持し駆動軸34に固定する振動モータ固定部材(以下、固定部材と略記する)38とで構成されており、振動モータ37は、振動モータ37の回転面(以下、「振動モータ37の回転面」を「回転面」と略記する)を駆動軸34に沿わせるようにして、固定部材38を介して駆動軸34に取り付けられている。固定部材38は、振動モータ37の把持部38aと駆動軸固定部38bとで構成され、駆動軸固定部38bには貫通孔38cが形成され、駆動軸34が貫通孔38cに嵌め合わされることによって、駆動軸34と駆動部33とが固定されるようになっている。また、固定部材38と駆動軸34とは、埋め込み一体成形(インサート成形)によって固着してもよい。なお、固定部材38の材料には、POM(ポリアセタール)、ナイロン等のポリアミド樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの成形性、耐摩耗性、耐衝撃性、機械的強度等に優れた樹脂が適している。
駆動部33に用いられる偏心ウエイトが回転体に結合された振動モータ37は、小型化された振動量の大きいタイプが市販されており、そのような振動モータを電動歯ブラシ30用の動力装置として用いることができる。振動モータ37には、その他、筒状ケース形等の偏心分銅付モータなども利用することができる。
振動モータ37と駆動軸34の運動との関係は次のとおりである。上記のように、駆動部33は駆動軸34に固定されており、本体ケース31には直接固定されておらず、駆動のための通電用リード線は、自在に動くように配線されている。したがって、駆動部33の振動モータ37の回転運動は、直接駆動軸34に伝達される。振動モータ37の振動は、主にモータの回転方向に生じるので、駆動軸34には、振動モータ37の扁平面(回転面)に平行な面で、駆動軸34を回転させる方向の振動が生じる。この駆動軸34を回転させる方向の振動は、主に駆動軸34を往復運動させる振動(図9、図10における左右方向の振動)と、本体ケース31に収納された本体部全体を、軸に対して直角方向の振動(図9、図10における振動モータの扁平面に平行で軸に対して直角方向の振動)とに変換される。
これらの2方向の運動のうち、軸方向の往復運動は、支持部35、36によって、往復運動自在に支持されているので、ほぼそのままブラシ部19に伝達される。一方、軸に対して直角方向の振動は、マスの大きい本体部全体に伝達されるので、見かけ上拘束された状態となる。そのために、軸方向の往復運動の方が、より大きな運動となって現れる。これらの2方向の運動が、ブラシ部19に伝達されて、歯磨き効果が発揮される。なお、図9に示した内部フレーム31aに設けられている突起部31bは駆動部33が前方に移動することを防止するストッパ、突起部31bは駆動部33が後方に移動することを防止するストッパである。これらのストッパによって、駆動部33、すなわちブラシ部19の植毛部19aが所定の範囲で往復運動するようにすることができる。また、固定部材38は、その一部が内部フレーム31aに当たることにより、駆動軸34回りの回転を阻止する機能も備えている。
ここで、ブラシ部19の植毛部19aの毛先方向と振動モータ37の回転面との関係によって、植毛部19aに生じる運動は次のとおりである。毛先方向が回転面に対して直角な場合には、植毛部19aには、軸方向の往復運動と毛先方向に垂直で軸に直交する方向(横方向)の2つの運動が生じる。一方、毛先方向が回転面に平行な場合には、植毛部19aには、軸方向の往復運動と毛先方向(縦方向)の2つの運動が生じる。毛先の横方向の運動は、例えば、歯と歯茎との間を往復する歯磨き効果を発揮し、縦方向の運動は、歯科疾患のリスク部位である口腔内の窪んだ部位、歯間部(隅角部)、歯頸部、咬合面の小窩裂溝部でのプラークの除去効果を向上させ、歯茎に対するマッサージ効果も発揮する。
上記のように、植毛部19aの毛先の方向と回転面との関係によって、相違する歯磨き効果が得られる。したがって、ブラシ部19は、90度だけ角度を変えて装着することができるようにして、いずれか向きを選択して使用することができるように構成されていることが好ましい。そのためには、駆動軸34のブラシ装着部に設けられる切り欠き部を相互に90度の角度の関係にある2面とするか、またはブラシ部19側の装着部を90度変えて装着できる構造のいずれかとすればよい。また、上記のようにブラシ部19を装着する向きを変えるのではなく、毛先方向と回転面とが90度の関係にある電動歯ブラシ、毛先方向と回転面が平行な関係にある電動歯ブラシの2つのタイプとしてもよい。
なお、図9及び図10には、後端側支持部36として、転がり軸受の例を図示したが、後端側支持部36は、必ずしも転がり軸受である必要はない。実施の形態1及び2に例示したような摺動部材と保持部材とで構成された摺動型の支持部としてもよい。
図11は、主として実施の形態1〜3に係る電動歯ブラシ10、20、30に好適で、さらに一般的な機械装置に用いることができる、実施の形態に係る転がり軸受40を示す図であり、(a)は軸方向から見た正面図、(b)は(a)に示したXIb−XIb’線における断面図、(c)は外輪及びリテーナが一体的に成形された成形品44を示す斜視図である。
転がり軸受40は、外輪41とリテーナ42とボール43とで構成されており、図11(b)に示したように、ボール装填部45の一端側には、ボール43の脱落防止用のボール当たり部41aが設けられている。この転がり軸受40は、図11(a)及び(b)に示したように、外輪41と外輪41の内側に形成された軸方向に延びる複数のリテーナ42とが一体的に構成されている。
また、この成形品44は、リテーナ42が、軸受40の中心軸方向に外輪41の両端面間に形成され、ボール当たり部41aが外輪41の端面より内側、両端面間の中間部などに位置するように配置することが可能である。そのようにボール当たり部41aを配置することによって、ボール43の移動可能な距離を所定の範囲に制限することができる。この場合、ボール43が、ボール当たり部41aを挟んで両端側に装填されたタイプとすることも可能である。そのタイプでは、転がり軸受40によって駆動軸14、34が支持される長さが長くなるので、駆動軸14、34が軸方向の所定の間隔で安定して支持され、駆動軸14、34の往復運動をさらに滑らかにすることができる。
なお、図11には、隣り合うリテーナ42間に空間部46設けた例を示したが、空間部46は必要に応じて設けられるものであり、必ずしも必要ではない。
図12は、別の実施の形態に係る転がり軸受50の成形品54を示す図であり、(a)は模式的正面図、(b)は(a)に示したXIIb−XIIb’線における模式的断面図である。なお、図面を分かりやすくするために、ボールは図示されていない。
リテーナ52は、軸方向の一端側のグループのリテーナ52aと他端側のグループのリテーナ52bの2つのグループで構成されている。リテーナ52aによってボール装填部55a、リテーナ52bによってボール装填部52bが形成されている。また、転がり軸受50の中心から見たボール装填部52bの配置角度は、一端側のグループに属する各ボール装填部55aの中心軸と、他端側のグループに属する各ボール装填部55bの中心軸とが、一端側のグループと他端側のグループとで相互にずれている。
図12に示した成形品54の場合には、図12(a)に示したように、各グループのボール装填部55a、55bの数はそれぞれ4つであり、各グループ内ではそれぞれのボール装填部55a、55bが転がり軸受50の中心軸(成形品54の中心軸)に対し90°の間隔で配置されている。さらに、一端側のグループのボール装填部55aの中心軸と他端側のグループのボール装填部55bの中心軸とは、転がり軸受50の中心軸に対して、相互に45°ずれている。この中心軸のずれは、一方側のグループのボール装填部55a又は55bの各ボール装填部間の角度の開きの1/2の角度であることが好ましい。
ボール装填部55a、55bが、上記のように、軸方向で2つのグループに分けられ、各グループのボール装填部55a、55bが相互に中心軸がずらされて配置されている場合には、軸受50によって、駆動軸14、34をいっそう安定に支持することができる。なお、ボール装填部が2つのグループに分けられた状態の場合には、ボール装填部55a、55b中心軸がは必ずしも相互にずらされて配置されている必要はない。その場合でも、十分に安定して駆動軸14、34を支持することができる。
上記の実施の形態に係る成形品44、54は、エンジニアリングプラスチック又は金属材料によって形成されている。成形品44の成形には、エンジニアリングプラスチックの場合は通常採用されているプラスチックの射出成形法、金属材料の場合は金属粉末射出成形(Metal Injection Molding:MIM)法、溶融金属射出成形法、粉末焼結法などを用いることができる。これらのうち、MIM法は、複雑な形状の小型部品を製造するのに適しており、金属粉末を原料とし、射出成形後焼結する方法によって成形品を製造するようになっている。
これらの製造方法の場合には、ステンレス鋼、鉄−ニッケル系合金、リン青銅、黄銅などの軸受に好適な金属材料の成形が可能である。なお、プラスチック材料としては、POM(ポリアセタール)、ナイロン等のポリアミド樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの成形性、耐摩耗性、耐衝撃性、機械的強度等に優れた樹脂が適している。
通常の転がり軸受は、外輪とリテーナとを別々に製造した後、ボールと共に組み立てる方法によって製造されている。それに対し、上記の転がり軸受40、50の場合には、外輪41とリテーナ42又は外輪51とリテーナ52とが一体化されているので、安いコストで軸受40、50を製造することができるという長所がある。
また、転がり軸受40、50は、一般的な機械装置の軸受として用いることができるが、特に電動歯ブラシ10、20、30に好適であり、電動歯ブラシ10、20、30に装着する場合には、外輪41、51の端面に位置決め用の突起等を設け、転がり軸受40、50が、本体ケース11、31のうち予め設定された設置位置に取り付けられるようにすることにより、ブラッシングによる圧力を2つのボールで受け止めるようにすることもできる。なお、装着するホルダ側には、ボールが抜け出さないようにするための鍔(当たり)部を設けることが好ましい。さらに、リテーナ42、52には、ボール装着時の開口部の一部に小さな突起部(アンダーカット部)を設け、ボール装着時の脱落防止機能を付加してもよい。
転がり軸受40、50は、実施の形態1及び2に係る電動歯ブラシ10、20における先端側支持部15、及び実施の形態3に係る電動歯ブラシ30における先端側支持部35と後端側支持部36に適用することができる。このほか、一般に用いられている電動歯ブラシの軸受として利用することができる。さらに、上記のように、電動歯ブラシ以外の一般的な機械装置の軸受として利用することができる。
また、本発明に係る軸受を含めた駆動機構は、他の電動歯間クリーナ、舌苔クリーナなどの口腔清掃器具へ応用することもできる。