JP4448707B2 - 感光性平版印刷版 - Google Patents

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Description

本発明は光重合層を設けた感光性平版印刷版、特にCTP用の感光性平版印刷版に関するものである。さらに詳しくは、Arイオンレーザー、FD−YAGレーザー、バイオレットレーザー、短波長半導体レーザー等の光線に対して、高感度であり、印刷時の汚れ難さ(汚れ性)と耐刷性の両立ができ、さらには、現像性、インキ着肉性、画像形成性、ベタ部横のカブリ抑制又は露光ラチチュードなどにも優れた感光性平版印刷版に関するものである。
従来、光重合系を利用した画像形成法は多数知られており、印刷版、プリント回路、ホログラム記録、3次元造形等の広い分野に用いられている。
例えば、印刷版を作製する方法として、付加重合可能なエチレン性2重結合を含む化合物(エチレン性不飽和結合含有化合物ともいう)と光重合開始剤、有機高分子化合物(バインダー、結合剤または重合体ともいう)、熱重合禁止剤からなる光重合性組成物を、支持体上に被膜層(光重合層、画像記録層、光重合性感光層または感光層ともいう)として設け、所望画像を像露光して露光部分を重合硬化させ、未露光部分を溶解除去することにより硬化レリーフ画像を形成する方法が一般的に使用されている。
これらの組成物の有機高分子として、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を用いることは、従来数多く知られている(例えば、特許文献1、2、3および4参照。)。
また、アリル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体を光重合性組成物の有機高分子として用いることにより、硬化効率が高くなることも記載されている(例えば、特許文献5参照。)。
しかし、これらの従来の組成物の性能は十分と言えず、特に感度、硬化度、現像性、耐刷力の点で改良が望まれていた。
また、近年、光重合性感光材料を用いた高感度感材の研究が進み、種々の応用分野に適用されている。その中でも特にレーザー直接製版システムは実用化の領域に入り、アルゴンイオンレーザー(488nm)、FD−YAGレーザー(532nm)、バイオレットレーザー(405nm)で描画可能なCTP版が実用化されている(例えば、特許文献6、7および8参照。)。
しかし、特許文献6、7および8等に記載のCTP版は、感度、現像性、インキ着肉性、印刷での汚れ難さ、耐刷力の全ての性能を満足するものがなく、印刷版としてバランスの良い性能を有するものが望まれていた。
特公昭54−34327号公報 特公昭58−12577号公報 特開昭60−159743号公報 特開昭60−208748号公報 特公平3−63740号公報 特開平3−12403号公報 特開平6−295061号公報 特開平11−171907号公報
本発明の目的は、従来の技術の問題点を克服し、特にアルゴンイオンレーザー、FD−YAGレーザー、バイオレットレーザー等で描画可能であり、高感度であり、印刷時の汚れ難さ(汚れ性)と耐刷性の両立ができ、さらには、現像性、インキ着肉性、画像形成性、ベタ部横のカブリ抑制又は露光ラチチュード等にも優れた感光性平版印刷版を提供することにある。
本発明者等は、従来の技術の問題点を克服する為に、支持体の砂目構造を詳細に検討した結果、砂目構造が大小ピットの2重構造を有し、その平均開口径を適当な範囲に調整し、この砂目にマッチングした光重合層の高分子バインダー検討した結果、アミド基を有するバインダーを使用することにより、感度、汚れ難さ、水上がりの見易さ、耐刷性の向上とともに、現像性、インキ着肉性が良化し、特定のポリウレタン樹脂を使用することにより、、感度、汚れ難さ、水上がりの見易さ、耐刷性の向上とともに、画像形成性を損なわないことを見出し、本発明の感光性平版印刷版(第一の態様)に到達した。
また、光重合層の塗布量及び増感色素の光学濃度を所定の値に調整することにより、感度、汚れ難さ、水上がりの見易さ、耐刷性の向上とともに、ベタ部横のカブリ抑制、露光ラチチュードが広くなることを見出し、本発明の感光性平版印刷版(第二の態様)に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成の感光性平版印刷版を提供する。
(1)アルミニウムまたはアルミニウム合金板を少なくとも塩酸を含有する水溶液を用いて電気化学的に粗面化処理した後、陽極酸化処理をした支持体上に、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、増感色素、光重合開始剤、高分子バインダーを含有する光重合層を設けた感光性平版印刷版であって、該支持体が大小ピットの2重構造を有し、大ピットの
平均開口径が2〜10μmかつ小ピットの平均開口径が0.1〜0.8μm、小ピットの径と深さの比が小ピットの径:深さとして1:0.2〜1:0.6、下記式で表される表面積ΔSが40以下であり、光重合層の塗布質量が0.5〜2.0g/m 2 、光重合層の増感色素の光学濃度が0.2〜1.0の範囲にあり、光重合層の高分子バインダーが下記一般式(M1)で表されるアミド基を側鎖に有する有機高分子化合物及び少なくとも下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の化合物より合成されるポリウレタン樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする感光性平版印刷版(第一の態様)。
ΔS= (Sx−So)/So ×100%
(Sxは表面の50μm□を512×512点測定して求められる実表面積を、Soは幾何学的測定面積を表す。)
Figure 0004448707
(一般式(M1)中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基または置換スルホニル基を表し、R1とR2とが互いに結合して環構造を形成しても良い。)
(i)少なくとも1種のジイソシアネート化合物、
(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物、
(iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物、及び
(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物、
ただし、(iii)及び(iv)の化合物はカルボキシル基を有するジオール化合物を除く化合物である。
(2)該光重合層上に、酸素遮断性のオーバーコート層を設けたことを特徴とする上記(1)に記載の感光性平版印刷版(第二の態様)。
(3) 光重合層が含有する増感色素が下記一般式(SD−1)または下記一般式(SD−2)で表される化合物であることを特徴とする上記(2)に記載の感光性平版印刷版。
Figure 0004448707
(一般式(SD−1)中、Aは置換基を有しても良い芳香族環またはヘテロ環をあらわし、Xは酸素原子又は硫黄原子ないし−N(R3)−をあらわす。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団であり、AとR1及びR2とR3はそれぞれ互いに、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)
Figure 0004448707
〔一般式(SD−2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表す。但し、R1およびR3のうちの少なくとも一つは、下記部分構造式(a)に示す一価の有機残基で表される。また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
Figure 0004448707
(部分構造式(a)中、R10は、水素原子または一価の非金属原子団を表し、Zは隣接する原子と共同して、5員環酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表す。また、R10は前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8またはR9と脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)〕
(4) 前記(iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物における該logP値が、−8〜−1であり、かつ、前記(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物における該logP値が、2〜15であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
(5)前記ポリウレタン樹脂が、下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の化合物より合成され、酸価が0.6〜1.2meq/gのポリウレタン樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
(i)脂肪族ジイソシアネート化合物(下記式(1)においてLが脂肪族炭化水素基)の少なくとも一種、芳香族ジイソシアネート化合物(下記式(1)においてLが芳香族炭化水素基)の少なくとも1種の組み合わせである2種以上のジイソシアネート化合物、
(ii)少なくとも一種の下記一般式(2)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物、
(iii)logP値が−5〜−1.2の少なくとも1種のジオール化合物、及び
(iv)logP値が3〜10の少なくとも1種のジオール化合物。
Figure 0004448707

式(1)中、Lはイソシアネート基と反応しない他の官能基を有していてもよい。
Figure 0004448707

式(2)中、R 1 は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ基を示し、L 10 、L 11 、L 12 はそれぞれ同一でも相違していてもよく、単結合、置換基を有していてもよい2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を示す。なおL 10 、L 11 、L 12 中にイソシアネート基と反応しない他の官能基を有していてもよく、R 1 、L 10 、L 11 、L 12 のうちの2または3個で環を形成してもよい。
(6)前記(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物が、下記式(A)、(B)、(C)、(D)または(E)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
Figure 0004448707

式中、R 6 は水素原子またはメチル基を表す。ただし、式(A)においてはR 6 はメチル基を表す。また、Xは、以下の基を表す。
Figure 0004448707

式中、a,b,c,d,e,f,gはそれぞれ2以上の整数を示す。
7)前記(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物が、前記式(A)で表される化合物であり、かつaが15〜30を示すことを特徴とする上記(6)に記載の感光性平版印刷版。
8)前記(iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物が、下記一般式(A’)で表されるエチレングリコール化合物であることを特徴とする上記(1)〜(
7)のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
HO−(CH 2 CH 2 O) n −H (A’)(式中、nは4〜10を表す。)
アルゴンイオンレーザー、FD−YAGレーザー、バイオレットレーザー等で描画可能であり、CTP用として適用可能な、高感度であり、印刷時の汚れ難さ(汚れ性)と耐刷性の両立ができ、さらには、現像性、インキ着肉性、画像形成性、ベタ部カブリ抑制、露光ラチチュード等にも優れた感光性平版印刷版を提供することができる。
本発明は、上記(1)〜(8)に係る発明ではあるが、以下、参考のため他の事項についても含めて説明している。
以下、本発明の感光性平版印刷版について詳細に説明する。
本発明の感光性平版印刷版は、支持体上に光重合層を有し、必要により、支持体と光重合層の間に下塗り層、光重合層の上に保護層等を有する。
以下、本発明の感光性平版印刷版を構成する支持体及び各層について説明する。
〔A.支持体〕
本発明の感光性平版印刷版が有する支持体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金板を少なくとも塩酸を含有する水溶液を用いて電気化学的に粗面化処理した後、陽極酸化処理をした支持体であり、支持体構造は大小ピットの2重構造を有し、大ピットが2〜10μmかつ小ピットの平均開口径が0.1μm〜0.8μmである。即ち、大ピットの中に小ピットが存在する2重構造を有している。尚、第一の態様の感光性平版印刷版が有する支持体については、更に、小ピットの径と深さの比が0.2〜0.6である。
本発明においては大ピットが2〜10μmが望ましく、更には4〜8μmが望ましい。小ピットは、0.1〜0.8μmが望ましく、更には0.2μm〜0.6μmが望ましい。小ピットの径と深さの比は0.2〜0.6が望ましく、更には0.3〜0.5が望ましい。
ΔSは原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm□(50μm×50μm)を512×512点測定して求められる3次元データから得られ、40%以下であることを特徴とする。
ΔSは、後に詳述するように、前記3次元データから近似三点法により求められる実面積Sxと、幾何学的測定面積(見掛け面積)Soとから、下記式により求められる。
ΔS=(Sx−So)/So×100(%)
表面積比ΔSは、幾何学的測定面積Soに対する粗面化処理による実面積Sxの増加の程度を示すファクターである。ΔSが大きくなると、画像記録層との接触面積が大きくなり、結果として耐刷性を向上させることができる。ΔSを大きくするには、小さな凹凸を表面に多数設けることが有効である。このように小さな凹凸を表面に多数設ける方法としては、塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理である。また、併せて、高濃度かつ高温の硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理を行っても良い。機械的粗面化処理や、通常の硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理のみによってもΔSは大きくなるが、その程度は小さい。本発明においては、ΔSは40%以下であり、好ましくは20〜35%である。
本発明の感光性平版印刷版における支持体において、ΔSを求める方法は、以下の通りである。
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定し、3次元データを求める。
測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。即ち、感光性平版印刷版の支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(SI−DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
計測の際は、表面の50μm□を512×512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
上記で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sxとする。
表面積比ΔSは、得られた実面積Sxと幾何学的測定面積Soとから、下記式により求められる。
ΔS=(Sx−So)/So×100(%)
SoはSo=Lx×Lyで求められる。LxおよびLyは、それぞれ測定領域(長方形)のx方向およびy方向の辺の長さを表し、本発明においてはLx=Ly=50μmである。
〔支持体の作製方法〕
<アルミニウム合金板(圧延アルミニウム)>
本発明に使用されるアルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分として微量の異元素を含む合金板、またはアルミニウムがラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムの中から選ばれる。アルミニウム板に含まれる微量の異元素は、元素周期表に記載されているものの中から選択された、1種以上で、その含量は0.001質量%〜1.5質量%である。該アルミニウム合金に含まれる異元素の代表例には、ケイ素、鉄、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、チタン、バナジウムなどがある。通常はアルミニウムハンドブック第4版(1990、軽金属協会)に記載の、従来より公知の素材のもの、例えばJIS A 1050材、JIS A 3103
材、JIS A 3005材、JIS A 1100材、JIS A 3004材または引っ張り強度を増す目的でこれらに5質量%以下のマグネシウムを添加した合金を用いることができる。
また、本発明に用いるアルミニウム板は、飲料缶などをスクラップして再生した不純物の多く含まれる地金を圧延して得たアルミニウム板も用いることができる。
本発明の感光性平版印刷版のアルミニウム支持体の製造方法では、上記微量元素が多く含まれていても、塩酸水溶液中での電気化学的な粗面化で均一な砂目形状(ハニカムピット)が得られる。また、Si成分が多く含まれていても、粗面化処理後に陽極酸化処理を施したときに、陽極酸化皮膜の欠陥が発生せず、印刷時に紙が汚れることもない。さらに、Cu成分が多く含まれても、ハニカムピットが生成しない部分の面積が少なく外観故障となることもない。
本発明の感光性平版印刷版のアルミニウム支持体の製造方法に用いるアルミニウム板は、DC鋳造法から中間焼鈍処理もしくは均熱処理、または、中間焼鈍処理および均熱処理を省略して製造されたアルミニウム板、あるいは、連続鋳造法から中間焼鈍処理を省略して製造されたアルミニウム板を用いることができる。
本発明で用いるアルミニウム板の厚みは通常0.05mm〜0.8mm、好ましくは0.1mm〜0.6mmである。
本発明の感光性平版印刷版のアルミニウム支持体の製造方法においては、上記アルミニウム合金板に、酸性水溶液の中での電気化学的粗面化処理を含む表面処理を施して平版印刷版用アルミニウム支持体を得るが、この表面処理には、更に各種の処理が含まれていてもよい。なお、本発明に用いられる各種の工程においては、その工程に用いられる処理液の中に使用するアルミニウム合金板の合金成分が溶出するので、処理液はアルミニウム合金板の合金成分を含有していてもよく、特に、処理前にそれらの合金成分を添加して処理液を定常状態にして用いるのが好ましい。
本発明においては、後述する各処理を組合わせて粗面化することができるが、塩酸を含有する水溶液で電気化学的な粗面化処理を必須に施す。電気化学的粗面化処理の前には、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、電気化学的粗面化処理の後には、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、各電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング処理は、省略することもできる。
本発明においては、これらの処理の前に機械的粗面化処理を施すのも好ましい。また、各電気化学的粗面化処理を2回以上行ってもよい。また、塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理に加え、例えば硝酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理を組合わせても良い。また、これらの後に、陽極酸化処理、封孔処理、親水化処理などを施すのも好ましい。
特に、表面処理が、アルカリエッチング処理、デスマット処理、塩酸水溶液の中での電気化学的粗面化処理、アルカリエッチング処理および/またはデスマット処理、陽極酸化処理、珪酸塩を含む水溶液での親水化処理をこの順に含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
以下、機械的粗面化処理、第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、第1電気化学的粗面化処理、第2アルカリエッチング処理、第2デスマット処理、第2電気化学的粗面化処理、第3アルカリエッチング処理、第3デスマット処理、陽極酸化処理、封孔
処理および親水化処理のそれぞれについて、詳細に説明する。
なお、本明細書においては、塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を第1電気化学的粗面化処理といい、硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を第2電気化学的粗面化処理といい、その後に再度行うときを順次第n次電気化学的粗面化処理という場合がある。
また、最初にアルカリエッチング処理を行うときを、第1とし、異なる処理を行った後に再度行うときを第2とし、順次第n次とする。
デスマット処理も同様に、第1、第2、……、第n次という場合がある。なお、デスマット処理は、アルカリエッチング処理の後に行うのが好ましい。
<機械的な粗面化処理>
本発明においては、機械的粗面化処理は電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。機械的粗面化処理によりアルミニウム板の表面積が増大する。
まず、アルミニウム板をブラシグレイニングするに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための脱脂処理、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。但し、圧延油の付着が少ない場合脱脂処理は省略することができる。
引き続いて、1種類または毛径が異なる少なくとも2種類のブラシを用いて、研磨スラリー液をアルミニウム板表面に供給しながら、ブラシグレイニングを行う。
機械的な粗面化処理については、特開平6−135175号公報、特公昭50−40047号公報に詳しく記載されている。該ブラシグレイニングにおいて初めに用いるブラシを第1ブラシと呼び、最終に用いるブラシを第2ブラシと呼ぶ。図4において、51はアルミニウム合金板、52、54はローラ状ブラシ、53は研磨スラリー液および55、56、57、58は支持ローラである。該グレイン時、図4に示すように、アルミニウム板51を挟んでローラ状ブラシ52および54と、それぞれ二本の支持ローラ55、56、57、58を配置する。二本の支持ローラ55、56および57、58は互の外面の最短距離がローラ状ブラシ52および54の外径よりそれぞれ小なるように配置され、アルミニウム板51がローラ状ブラシ52および54により加圧され、2本の支持ローラ55、56および57、58の間に押し入れられる様な状態でアルミニウム板を一定速度で搬送し、かつ研磨スラリー液53をアルミニウム板上に供給してローラ状ブラシを回転させることにより表面を研磨することが好ましい。
本発明に用いられるブラシは、ローラ状の台部にナイロン、ポリプロピレン、動物毛、あるいは、スチールワイヤなどのブラシ材を均一な毛長および植毛分布をもって植え込んだもの、台部に小穴を開けブラシ毛束を植込んだもの、また、チャンネルローラ型のものなどが好ましく用いられる。その中でも好ましい材料はナイロンであり、好ましい植毛の毛長は10〜200mmである。なおブラシローラに植え込む際の植毛密度は1cm2当り30〜1000本が好ましく、更に好ましくは50〜300本である。
該ブラシの好ましい毛径は、0.24〜0.83mmであり、更に好ましくは0.295〜0.72mmである。毛の断面形状は円が好ましい。毛径が0.24mmよりも小さいとシャドウ部での汚れ性能が悪くなり、0.83mmよりも大きいとブランケット上の汚れ性能が悪くなる場合がある。毛の材質はナイロンが好ましく、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10などが用いられるが、引っ張り強さ、耐摩耗性、吸水による寸法安定性、曲げ強さ、耐熱性、回復性などでナイロン6・10が最も好ましい。
ブラシの本数は、好ましくは1本以上10本以下であり、更に好ましくは1本以上6本以下である。ブラシローラは特開平6−135175号公報に記載のように毛径の異なるブラシローラを組み合わせてもよい。
次にブラシローラの回転は好ましくは100rpmから500rpmで任意に選ばれる
。支持ローラはゴムあるいは金属面を有し真直度のよく保たれたものが用いられる。ブラシローラの回転方向は図4に示すようにアルミニウム板の搬送方向に順転に行うのが好ましいが、ブラシローラが多数本の場合は一部のブラシローラを逆転としてもよい。ブラシの押し込み量は、ブラシの回転駆動モーターの負荷で管理することが好ましく、回転駆動モーターの消費電力が1.0〜15kw、更に2〜10kwとなるように管理することが好ましい。
本発明において、上記太いブラシで粗面化した後、細いブラシで処理することにより、親水性、保水性および密着性のすべてを兼備した支持体が得られて好ましい。その場合、湿し水が少ない場合のシャドー部のつぶれがないため水幅が広く、地汚れが発生しにくく、さらに感光層との密着劣化がないことである。
本発明に用いられる研磨スラリー液は、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、火山灰、軽石、カーボランダム、金剛砂などの平均粒子径1〜50μm(好ましくは20〜45μm)の研磨剤を、比重1.05〜1.3となるような範囲で水に分散させたものが好ましい。平均粒子径とは、スラリー液中に含まれる全研磨材の体積に対し、各径の粒子の占める割合の累積度数をとったとき、累積割合が50%となる粒子径をいう。
なお、機械的な粗面化後の中心線平均粗さ(Ra)は0.3〜1.0μmとなる様に処理されることが好ましい。
もちろんスラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いた方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方式などを用いても良い。その他の方式としては、特開昭55−074898号公報、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報などに記載されている。
このようにアルミニウム板をブラシグレイニングした後、次いで、アルミニウム板の表面を化学的にエッチングしておくことが好ましい。この化学的エッチング処理は、ブラシグレイニング処理されたアルミニウム板の表面に食い込んだ研磨剤、アルミニウム屑などを取り除く作用を有し、その後に施される電気化学的な粗面化をより均一に、しかも効果的に達成させることができる。
<アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理(第1アルカリエッチング処理)>
第1アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。第1アルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム合金板(圧延アルミニウム)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜を除去することを目的として、また、機械的粗面化処理を行った場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、滑らかなうねりを持つ表面を得ることを目的として行われる。
アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
かかる化学的エッチング方法の詳細は、米国特許第3,834,398号明細書に記載されている。より具体的に説明すると、アルミニウムを溶解し得る溶液、より具体的にはアルカリの水溶液へ浸漬する方法である。
上記のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが含まれる。塩基の水溶液を使用するとエッチング速度が早い。
化学的エッチングは、これらのアルカリの0.05〜40質量%水溶液を用い、40℃〜100℃の液温において5〜300秒処理するのが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は
1〜30質量%が好ましく、アルミニウムは勿論アルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜10質量%含有していてもよい。アルカリ水溶液としては、特に苛性ソーダを主体とする水溶液が好ましい。液温は常温〜95℃で、1〜120秒間処理することが好ましい。
エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。
アルミニウム板の化学的なエッチング量としては片側のアルミニウム板の溶解量が0.001〜30g/m2が好ましく、より好ましくは、1〜15g/m2であり、特に好ましくは、3〜12g/m2である。
<酸性エッチング処理>
酸性エッチング処理は、酸性水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチングする処理であり、上記電気化学的粗面化処理の後に行うのが好ましい。また、上記電気化学的粗面化処理の前および/または後に上記アルカリエッチング処理を行う場合は、アルカリエッチング処理の後に酸性エッチング処理を行うのも好ましい。
アルミニウム板に上記アルカリエッチング処理を施した後に、上記酸性エッチング処理を施すと、アルミニウム板表面のシリカを含む金属間化合物または単体Siを除去することができ、その後の陽極酸化処理において生成する陽極酸化皮膜の欠陥をなくすことができる。その結果、印刷時にチリ状汚れと称される非画像部に点状のインクが付着するトラブルを防止することができる。
酸性エッチング処理に用いられる酸性水溶液としては、リン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2種以上の混酸を含有する水溶液が挙げられる。中でも、硫酸水溶液が好ましい。酸性水溶液の濃度は、50〜500g/Lであるのが好ましい。酸性水溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分を含有していてもよい。
酸性エッチング処理は、液温を60〜90℃、好ましくは70〜80℃とし、1〜10秒間処理することにより行うのが好ましい。このときのアルミニウム板の溶解量は0.001〜0.2g/m2であるのが好ましい。また、酸濃度、例えば、硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度は、常温で晶出しない範囲から選択することが好ましい。好ましいアルミニウムイオン濃度は0.1〜50g/Lであり、特に好ましくは5〜15g/Lである。
また、酸性エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないために、ニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
<酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)>
化学的なエッチングをアルカリ水溶液を用いて行うと、一般にアルミニウムの表面にはスマットが生成するので、この場合にはリン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸でデスマット処理をする。酸性水溶液の濃度は0.5〜60質量%が好ましい。さらに酸性水溶液中にはアルミニウムはもちろんアルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜5質量%溶解していても良い。
また、デスマット処理液として、電気化学的な粗面化処理で発生した廃液、陽極酸化処理で発生した廃液を用いることが特に好ましい。
液温は常温から95℃で実施され、30〜70℃が特に好ましい。処理時間は1〜120秒が好ましく、特に1〜5秒が好ましい。デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。ニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗は、デスマット処理液が、次の工程で用いる液と同じ種類の液、または同じ組成の液を用いる時は省略すること
ができる。
また、電気化学的な粗面化処理に用いる装置で、電極の溶解防止と粗面化形状のコントロールのために補助陽極槽を使用するとき、補助陽極槽をアルミニウム板に交流が流れて電気化学的粗面化処理を行う槽の前に持ってくる場合は、電気化学的な粗面化処理の前の酸性水溶液中でのデスマット工程を省略することもできる。
<電気化学的な粗面化処理>
本発明における電気化学的な粗面化処理は、塩酸を主体とする水溶液中で特定条件下における電気化学的な粗面化処理に特徴がある。
これらの特定条件下における電気化学的な粗面化処理および陽極酸化処理、必要により、機械的粗面化処理、本明細書で説明する各表面処理を行うことにより、本発明の目的を達成することができる。
また、電気化学的な粗面化処理は複数回行ってもよいし、硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理を行った後塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理を行ってもよい。
以下、特定条件下における電気化学的な粗面化処理について説明する。
(1)塩酸を主体とする水溶液
本発明でいう塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、5〜25g/Lの塩酸水溶液に、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸イオン、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオンを有する硫酸または塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、銅、錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカなどのアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
塩酸水溶液は、液温15〜50℃、塩酸を5〜25g/L含有する水溶液にアルミニウム塩(塩化アルミニウム)を添加してアルミニウムイオンが1〜50g/Lにした水溶液であることがより好ましい。
塩酸水溶液は、液温15〜50℃、塩酸を1〜10g/L含有する水溶液に、アルミニウム塩(塩化アルミニウム、AlCl3・6H2O)を10〜70g/Lの割合で添加してアルミニウムイオン濃度を5〜20g/Lにした水溶液であることが特に好ましい。このような塩酸水溶液を用いて電気化学的粗面化処理を行うと、該粗面化処理による表面形状が均一になり、低純度のアルミニウム圧延板(合金成分を多く含むアルミニウム板または合金成分を調製していないアルミニウム板)を使用しても、該粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに優れた耐刷性および印刷性能(汚れ性能)を両立できる。
ここで、塩酸水溶液は、塩酸を1〜10g/L含有するのが好ましく、2〜6g/L含有するのが特に好ましい。
添加する塩化アルミニウム6水和物は、10〜70g/Lであるのが好ましく、20〜50g/Lであるのがより好ましく、35〜45g/Lであるのが特にましい。
塩化アルミニウム6水和物を添加した塩酸水溶液のアルミニウムイオン濃度は、1〜8g/Lであるのが好ましく、2〜6g/Lであるのがより好ましく、4〜5g/Lであるのが特に好ましい。
塩酸を主体とする水溶液中への添加物、装置、電源、電流密度、流速、温度としては公知の電気化学的な粗面化に使用するものが用いることができる。電気化学的な粗面化に用いる電源は交流または直流が用いられるが、交流が特に好ましい。塩酸を主体とする水溶
液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜1000C/dm2の範囲から選択でき、20〜80C/dm2が好ましく、25〜60C/dm2が特に好ましい。
(2)硝酸を主体とする水溶液
硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、銅、錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカなどのアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
液温15〜90℃、硝酸を5〜15g/L含有する水溶液にアルミニウム塩(硝酸アルミニウム)を添加してアルミニウムイオンを3〜50g/Lにした水溶液であることが特に好ましい。硝酸を主体とする水溶液中への添加物、装置、電源、電流密度、流速、温度としては公知の電気化学的な粗面化に使用するものが用いることができる。電気化学的な粗面化に用いる電源は交流または直流が用いられるが、交流が特に好ましい。硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜1000C/dm2の範囲から選択でき、30〜500C/dm2が好ましく、45〜300C/dm2が特に好ましい。
上記(2)の硝酸を主体とする水溶液による電気化学的な粗面化処理のあと、(1)の塩酸を主体とする水溶液で粗面化処理を行なう方法も有効である。これらの処理により処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに優れた耐刷性および印刷性能(汚れ性能)を両立できる。
(3)電気化学的な粗面化
電気化学的な粗面化処理とは、酸性水溶液中で、アルミニウム板とこれに対向する電極との間に、直流または交流を加えて電気化学的に粗面化処理することをいう。本発明では、交流が特に好ましいが、該交流は単相、二相、三相などのいずれでもよい。また、交流と直流とを重畳した電流を用いることもできる。
電解処理槽は公知のものが何れも使用でき、電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型など公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能である。電解処理槽は複数個設けても良い。また、酸またはアルカリ水溶液中でのエッチング処理、酸性水溶液中でのデスマット処理、酸または中性塩水溶液中でのアルミニウム板のカソード電解処理などを挟んで電気化学的な粗面化処理を繰り返し行っても良い。
a)アルミニウム板への給電方法
アルミニウム板への給電方式はコンダクタロールを用いた直接給電方式またはコンダクタロールを用いない液給電方式(間接給電方式)を用いることができる。電解槽内を通過する電解液はアルミニウムウェブの進行とパラレルでもカウンターでもよい。ひとつの電解槽には1個以上の交流電源が接続することができる。間接給電方式を用いるときは、特公平6−37716号公報、特公平5−42520号公報に記載の補助陽極を用いた方法で、アルミニウム板に加わる陽極時の電気量と陰極時の電気量の比を調整することが好ましい。補助陽極に流れる電流はサイリスタ、ダイオード、GTOなどの整流素子を用いて制御することが特に好ましい。特公平6−37716号公報に記載の方法を用いれば、電気化学的な粗面化反応が行われる主極のカーボン電極に対向するアルミニウム板表面における交流電流の陽極時の電気量と陰極時の電気量(電流値)を容易に制御できる。また、電源装置制作上も変圧器の偏磁の影響も小さく非常にコスト的に有利である。
サイン波を用いた電気化学的な粗面化を行うときの電流値の制御方法は、変圧器、可変式誘導電圧調整器などを併用して用い、電解に用いる電流値を可変式誘導電圧調整器にフィードバックして行う。そのとき、電流値を制御する方法では特開昭55−25381号公報に記載のように、サイリスタで位相制御する方式を併用することもできる。
電気化学的な粗面化処理ではアルミニウム板と電極の距離と液流速が一定でないと電流の偏りが発生しやすく、その結果アルミニウム表面の処理ムラとなって平版印刷版用支持体として適さないものが製造されてしまう。その問題点を解決するために、内部に液たまり室を設け、アルミニウムウェブの巾方向に1〜5mmの液吹き出し用のスリットを設けた給液ノズルを用いることができる。また、複数の液たまり室を設け、それぞれの液たまり室につながる配管にはバルブと流量計を設けてそれぞれのスリットから吹き出す液量を調整することを行うのが好ましい。
アルミニウムウェブと電極の距離は5〜100mm、特に8〜15mmが特に好ましい。この距離を一定に保つために特公昭61−30036号公報に記載の、走行するウェブを摺動しうる面に静圧を利用してウェブを摺動面に圧接させつつ走行させる方式が用いられる。または特開平8−300843号公報に記載のように直径の大きなローラーを用いて電極とアルミニウム板の距離を一定に保つ方法も用いることができる。
直接給電方式を用いるときは、特開昭58−177441号公報に記載のようなコンダクタロールを用い、特開昭56−123400号公報に記載の装置で電気化学的に粗面化処理することが好ましい。コンダクタロールはアルミニウムウェブの上面または下面に設けることが可能であるが、アルミニウム板の上面に設け、ニップ装置にてアルミニウム板に押しつけるようにするのが特に好ましい。
アルミニウム板がコンダクタロールに接する長さは、アルミニウム板の進行方向に対して1〜300mmが好ましい。アルミニウム板を挟んでコンダクタロールに対向するパスロールはゴム製のロールであることが好ましい。押しつけ圧、ゴムロールの硬度はアークスポットの発生しない条件で任意に設定する。コンダクタロールをアルミニウム板の上面に設置することで、コンダクタロールの交換作業・点検作業が簡単になる。コンダクタロールの端部には給電ブラシを回転体に摺動させながら通電する方式を用いるのが好ましい。
アルミニウム板に押しつけられたコンダクタロールにはアークスポットの発生を防止するために常に電気化学的な粗面化に用いる電解液と同じ組成、同じ温度の電解液により常に冷却する事が好ましい。電解液の中に異物が入るとアークスポットの原因になりやすいので、冷却に用いるスプレーに濾布などを巻いたり、スプレー管の上流側の配管にメッシュの細かいフィルターを入れるなどする事が好ましい。
b)交流を用いた電気化学的な粗面化
電気化学的な粗面化に用いる交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、三角波などを用いることができるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。周波数は0.1〜500Hzが好ましく、40〜120Hzが更に好ましく、45〜65Hzが特に好ましい。
台形波を用いる場合は、電流が0からピークに達するまでの時間tpは0.1〜2msecが好ましく、0.2〜1.5msecが特に好ましい。電源回路のインピーダンスの影響のため、tpが0.1msec以上であると電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が不要となり、電源の設備コストを低くすることができる。2msec以下であると、電解液中の微量成分の影響を受け難くなり均一な粗面化が行われ易くなる。電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taが交流の周期Tに占める割合(本発明において「duty」という。)ta/Tは、0.33〜0.66が好ましく、0.45〜0.55が更に好ましく、0.5が特に好ましい。
アルミニウム合金板の表面には、カソード反応時に、水酸化アルミニウムを主体とする
酸化皮膜が生成し、更に、酸化皮膜の溶解や破壊が生じることがある。
そして、酸化皮膜の溶解や破壊が生じると、溶解や破壊が生じた部分は、次のアルミニウム合金板のアノード反応時におけるピッティング反応の開始点となる。
したがって、交流のdutyの選択は均一な電解粗面化処理を行う点で、特に重要である。
主極に対向するアルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板がカソード反応時の電気量Qcとアソード反応時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.9〜1.0の範囲であり、好ましくは、0.92〜0.98であり、特に好ましくは、0.94〜0.96である。Qc/Qaがこの範囲であると、粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに耐刷性および印刷性能(汚れ性能)を両立できる。また、Qc/Qaが1.0超では、電極が溶解する場合がある。この電気量比のコントロールは電源が発生する電圧を制御して行うことができる。
電解粗面化処理を主極のアソード電流を分流する補助電極を有する交流電解槽を用いて行う場合には、特開昭60−43500号公報および特開平1−52098号公報に記載されているように、補助電極に分流するアノード電流の電流値を制御することにより、Qc/Qaを制御することができる。
電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに10〜200A/dm2が好ましい。Ia/Icは0.5〜3の範囲にあることが好ましい。
本発明で交流を用いた電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型など公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載のようなラジアル型電解槽またはフラット型が特に好ましい。電極はカーボンを主電極とし、補助陽極としてフェライトを用いることが特に好ましい。
また、交流電解槽を複数台直列に配設した電解粗面化処理装置も好適に用いることができる。
補助陽極を有する電解槽は、主極を有する電解槽の前または後に設置することができるが、特に塩酸を主体とする水溶液による電気化学的な粗面化工程で用いる補助電極を有する電解槽は、主極を有する電解槽の前に持ってくることが、処理ムラの発生を低減できる点で好ましい。
また、補助電極を有する電解槽の入口(液面)と主極を有する電解槽の入口(液面)までの距離があまり長いと塩酸の化学的な溶解反応でアルミニウム板中の金属間化合物が溶解して深い穴となり、その部分の感光層が厚塗りとなって印刷時のムラとなる。そのためアルミニウム板が補助電極を有する電解槽の入口(液面)から主極を有する電解槽の入口(液面)までの時間を3秒以下とすることが好ましい。
電解粗面化処理においては、1または2以上の交流電解槽において、1つの電解槽内で極性の異なる電源端子につながれた、主極と主極の間のアルミニウム合金板と、これらの主極との間に交流が流れない休止期間を1回以上設け、前記休止期間の長さを0.001〜0.6秒とすると、ハニカムピットがアルミニウム合金板の表面全体に均一に形成されるので好ましい。より好ましくは0.005〜0.55秒、更に好ましくは0.01〜0.5秒である。直列に配置された2以上の交流電解槽を用いる場合には、一の交流電解槽と他の交流電解槽との間におけるアルミニウム合金板に交流が流れない時間を0.0
01〜20秒とするのが好ましい。より好ましくは0.1〜15秒、更に好ましくは1〜12秒である。
図1に、本発明に好適に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例の断面摸式図を示す。図1において、2は交流電解槽、4A、4B、4Cは主極、6A、6Bは搬送ローラ、8Aは導入ローラ、8Bは導出ローラおよび100は電解粗面化処理装置である。電解粗面化処理100は、アルミニウムウェブWを略水平方向に搬送
しつつ三相の交流(以下「三相交流電流」ともいう。)印加して電解粗面化処理を施す電解粗面化処理装置である。
電解粗面化処理装置100は、アルミニウムウェブWの搬送方向aに沿って延材し上面が開放された浅い箱状の交流電解槽2と、交流電解槽2の底面近傍に搬送方向aに沿って、アルミニウムウェブWの搬送経路である搬送面Tに対して平行に配設された三つの板状の主極4A、4Bおよび4Cと、交流電解槽2の内部における搬送方向aに対して上流側(以下、単に「上流側」という。)および搬送方向aに対して下流側(以下、単に「下流側」という。)の端部近傍に配設され、交流電解槽2内部においてアルミニウムウェブWを搬送する搬送ローラ6Aおよび6Bと、交流電解槽2の上方における上流側に位置し、アルミニウムウェブWを交流電解槽2の内部に導入する導入ローラ8Aと、交流電解槽2の上方における下流側に位置し、交流電解槽2内部を通過したアルミニウムウェブWを交流電解槽2の外部に導出する導出ローラ8Bとを備える。交流電解槽2内部には、上述した酸性水溶液が貯留されている。
主極4A、4Bおよび4Cは、それぞれ三相の交流を発生させる交流電源TacのU端子、V端子およびW端子に接続されている。したがって、主極4A、4Bおよび4Cに印加される交流は、位相が120°づつずれている。
電解粗面化処理装置100の作用について以下に説明する。
アルミニウムウェブWは、導入ローラ8Aによって交流電解槽2の内部に導入され、搬送ローラ6Aおよび6Bによって搬送方向aに沿って一定速度で搬送される。
交流電解槽2の内部において、アルミニウムウェブWは、主極4A、4Bおよび4Cに対して平行に移動するとともに、主極4A、4Bおよび4Cから交流を印加される。これにより、アルミニウムウェブWにおいて、アノード反応とカソード反応とが交互に起き、アノード反応が起きているときには主にハニカムピットが生じ、カソード反応が起きているときには主に水酸化アルミニウムの皮膜が生じて、表面が粗面化される。
主極4A、4Bおよび4Cに印加される交流は、上述したように位相が120°ずつずれているから、主極4Bにおいては、主極4Aの位相(U相)よりも120°遅れた位相(V相)でアノード反応とカソード反応とが繰り返され、主極4Cにおいては、主極4Bよりも120°遅れた位相(W相)でアノード反応とカソード反応とが繰り返される。
したがって、アルミニウムウェブWにおいては、周波数の同一の単相の交番波形電流を印加した場合に比べて、3倍の頻度でアノード反応とカソード反応とが繰り返されるから、高い搬送速度および電流密度で電解粗面化処理を行う場合においても、幅方向の縞であるチャタマークが生じにくい。
図2に、本発明に好適に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の他の一例の断面模式図を示す。図2において、図1と同一の符号は、図1において前記符号が示す要素と同一の要素を示し、10は補助電解槽、12は補助電極、14A、14Bは搬送ローラ、16Aは導入ローラ、16Bは導出ローラ、102は電解粗面化処理装置およびTh1、Th2、Th3はサイリスタである。電解粗面化処理装置102は、上述した電解粗面化処理装置100が備える交流電解槽2の前段に補助電解槽10を配設した電解粗面化処理装置である。
補助電解槽10は、上面が開放された箱型であり、底面近傍に、アルミニウムウェブWの搬送面Tに対して平行に板状の補助電極12が設けられている。
補助電解槽10の上流側壁面の近傍と下流側壁面の近傍とには、アルミニウムウェブWを補助電極12の上方において搬送する搬送ローラ14Aおよび14Bが配設されている。また、補助電解槽10の上方における上流側には、アルミニウムウェブWを補助電解槽10の内部に導入する導入ローラ16Aが設けられ、補助電解槽10の上方における下流側には、補助電解槽10内部を通過したアルミニウムウェブWを外部に導出する導出ローラ16Bが設けられている。補助電解槽10内部には、上述した酸性水溶液が貯留されて
いる。
交流電源TacのU相、V相およびW相は、それぞれ補助電極12に接続され、U相、V相およびW相のそれぞれと補助電極12との間には、サイリスタTh1、Th2およびTh3が介装されている。サイリスタTh1、Th2およびTh3は、いずれも点弧時に交流電源Tacから補助電極12に向かって電流が流れるように接続されている。したがって、サイリスタTh1、Th2およびTh3のいずれを点弧したときも、補助電極12にはアノード電流が流れるから、サイリスタTh1、Th2およびTh3を位相制御することにより、補助電極12に流れるアノード電流の電流値を制御することができ、したがって、Qc/Qaの値も制御することができる。
図3に、本発明に好適に用いられるラジアル型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例の断面模式図を示す。図3において、20は交流電解槽、26A、26Bは主極、34は補助電解槽、35は上流側案内ローラ、36は補助電極、22は交流電解槽本体、22Aは開口部、24は送りローラ、28A、28Bは給液ノズル、30Aは上流側案内ローラ、30Bは下流側案内ローラ、32は溢流槽、34Aは補助電解槽の底面、104は電解粗面化処理装置およびTh4、Th5はサイリスタである。
電解粗面化処理装置104は、酸性水溶液が貯留される交流電解槽本体22を備える交流電解槽20と、交流電解槽本体22内部に収容され、水平方向に伸びる軸線の周りに回転可能に配設され、アルミニウムウェブWを、図3における左方から右方に向かって、搬送方向aで送る送りローラ24とを備えている。交流電解槽本体22内部には、上述した酸性水溶液が貯留されている。
交流電解槽本体22の内壁面は、送りローラ24を囲むように略円筒状に形成されており、前記内壁面上には、半円筒状の主極26Aおよび26Bが送りローラ24を挟んで設けられている。主極26Aおよび26Bは、複数の小電極に分割され、それぞれの小電極の間には、絶縁性のスペーサーが介装されている。小電極は、例えば、グラファイトや金属を用いて形成することができ、スペーサーは、例えば、塩化ビニル樹脂により形成することができる。スペーサーの厚さは1〜10mmであるのが好ましい。また、図3においては簡略的に示したが、主極26Aおよび26Bのいずれにおいても、スペーサーにより分割された小電極のそれぞれが交流電源Tacに接続されている。
交流電解槽20の上部には、アルミニウムウェブWを交流電解槽本体22に導入し、また、導出するための開口部22Aが形成されている。交流電解槽本体22における開口部22Aの近傍には、交流電解槽本体22に酸性水溶液を補充する給液ノズル28Aが設けられている。また、給液ノズル28Bも別途設けられている。
交流電解槽20の上方における開口部22A近傍には、アルミニウムウェブWを交流電解槽本体22内部に案内する一群の上流側案内ローラ30Aと、交流電解槽本体22内で電解粗面化処理されたアルミニウムウェブWを外部に案内する一群の下流側案内ローラ30Bとが配設されている。
交流電解槽20においては、交流電解槽本体22の下流側に隣接して溢流槽32が設けられている。溢流槽32内部には、上述した酸性水溶液が貯留されている。溢流槽32は、交流電解槽本体22から溢流した酸性水溶液を一時貯留し、交流電解槽本体22における酸性水溶液の液面の高さを一定に保持する機能を有する。
交流電解槽本体22の前段(上流)には、補助電解槽34が設けられている。
補助電解槽34は、交流電解槽本体22よりも浅く、底面34Aが平面状に形成されている。そして、底面34A上には、円柱状の補助電極36が複数本設けられている。補助電解槽34内部には上述した酸性水溶液が貯留されている。
補助電極36は、白金などの高耐食性の金属、フェライトなどにより形成されているの
が好ましい。また、補助電極36は板状であってもよい。
補助電極36は、交流電源Tacにおける主極26Aが接続される側に、主極26Aに対して並列に接続され、中間には、サイリスタTh4が点弧時に交流電源Tacにおける前記側から補助電極36に向かって電流が流れるように接続されている。
また、交流電源Tacにおける主極26Bが接続された側も、サイリスタTh5を介して補助電極36に接続されている。サイリスタTh5も、点弧時に交流電源Tacにおける主極26Bが接続された側から補助電極36に向かって電流が流れるように接続されている。
サイリスタTh4およびTh5のいずれを点弧したときも、補助電極36にはアノード電流が流れる。したがって、サイリスタTh4およびTh5を位相制御することにより、補助電極36に流れるアノード電流の電流値を制御することができ、したがって、Qc/Qaの値も制御することができる。
電解粗面化処理装置104の作用について以下に説明する。
図3における左方から、アルミニウム合金板Wは、まず、上流側案内ローラ35によって補助電解槽34内に案内され、次いで上流側案内ローラ30Aによって交流電解槽本体22に案内される。そして、送りローラ24によって図3における左方から右方に向かって送られ、下流側案内ローラ30Bによって導出される。
交流電解槽本体22および補助電解槽34の内部において、アルミニウムウェブWは、主極26Aおよび26Bに印加された交流電流と、補助電極36に印加されたアノード電流とにより、主極26Aおよび26Bに面する側の表面が粗面化され、ほぼ均一なハニカムピットが形成される。
(4)粗面化に用いる廃液のリサイクル
各粗面化処理に用いた液(廃液)は可能な限りリサイクルすることが好ましい。アルミニウムイオンが溶けた苛性ソーダ水溶液では晶析法によるアルミニウムと苛性ソーダの分離を行うことができる。アルミニウムイオンが溶けた硫酸水溶液、硝酸水溶液または塩酸水溶液では電気透析法やイオン交換樹脂による硫酸または硝酸の回収を行うことができる。
アルミニウムイオンが溶けた塩酸水溶液では特開2000−282272号公報に記載されているような蒸発による回収を行うこともできる。
本発明では、電気化学的粗面化処理で用いた電解液の廃液をデスマット処理(第1、第2および第3デスマット処理)に用いるのが好ましい。
また、電気化学的な粗面化処理、または、陽極酸化処理の前に行うデスマット処理は、デスマット処理の後に行う粗面化処理または陽極酸化処理と同じ種類の液を用いることが好ましく、同じ組成の液を用いることが特に好ましい。そうすることで、デスマット処理とその次の工程の間に設ける水洗工程を省略することができ、設備の簡素化と廃液量の低減が可能となる。
<アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理(第2および第3アルカリエッチング処理)>
第1電気化学的粗面化処理の後で第2電気化学的粗面化処理の前に第2アルカリエッチング処理を行うのが好ましい。この処理により第2電気化学的粗面化処理を均一に行うことができ、かつ、アルミニウム板の表面形状が均一で耐刷性および印刷性能に優れた平版印刷版が得られる。
また、第2電気化学的粗面化処理の後で陽極酸化処理の前に第3アルカリエッチング処理を行うのが好ましい。この処理により第2電気化学的粗面化処理で生成したスマット成分(水酸化アルミニウムが主成分)を除去でき、かつ、アルミニウム板の表面形状が均一で耐刷性および印刷性能に優れた平版印刷版が得られる。
第2アルカリエッチング処理および第3アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム
合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。アルカリの種類、アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させる方法およびそれに用いる装置は、第1アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、第1アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、0.01〜80質量%であるのが好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜60秒であるのが好ましい。
第2アルカリエッチング処理においては、アルミニウム板(電解粗面化処理を施した面)の溶解量は、好ましくは、0.001〜30g/m2であり、より好ましくは、0.1〜2g/m2であり、特に好ましくは、0.1〜0.6g/m2である。
第3アルカリエッチング処理においては、アルミニウム板(電解粗面化処理を施した面)の溶解量は、好ましくは、0.001〜30g/m2であり、より好ましくは、0.1〜4g/m2であり、特に好ましくは、0.2〜1.5g/m2である。
<酸性水溶液中でのデスマット処理(第2および第3デスマット処理)>
第2アルカリエッチング処理の後に第2デスマット処理を行うのが好ましい。第2電気化学的粗面化処理をより均一に行うことができる。
また、第3アルカリエッチング処理の後に第3デスマット処理を行うのが好ましい。第3アルカリエッチング処理で発生した水酸化物を除去でき、かつ、印刷時に支持体と感光層の密着性が高い平版印刷版が得られる。
第2デスマット処理および第3デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム合金板をリン酸、塩酸、硝酸、硫酸などの濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム合金板を酸性溶液に接触させる方法は、第1デスマット処理の場合と同様のものが挙げられる。
第2デスマット処理および第3デスマット処理においては、酸性溶液として、後述する陽極酸化処理において排出させる硫酸溶液の廃液を用いるのが好ましい。また、該廃液の代わりに、硫酸濃度が100〜600g/L、アルミニウムイオン濃度が1〜10g/Lであり、液温が60〜90℃である硫酸溶液を用いることもできる。
第2デスマット処理および第3デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、第2デスマット処理および第3デスマット処理の処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。第2デスマット処理および第3デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
<陽極酸化処理>
アルミニウム板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができる。一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはそれらの混合液が用いられる。
それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質によって変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%、液温は5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜300秒の範囲にあれば適当である。硫酸法は通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2の範囲が適当である。1g/m2よりも少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷がつきやすくなって、同時に傷の部分にインキが付着する、いわゆる傷汚れが生じやすくなることがある。また、陽極酸化皮膜量が多くなると、アルミニウムエッチ部分へ酸化皮膜が集中しやすくなるので、アルミニウム板のエッチの部分と中心部分の酸化皮膜量の差は、1g/m2以下であることが好ましい。
硫酸水溶液中での陽極酸化については、特開昭54−128453号、特開昭45303号各公報に詳しく記載されている。硫酸濃度10〜300g/L、アルミニウムイオン濃度1〜25g/Lとすることが好ましく、50〜200g/Lの硫酸水溶液中に硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を2〜10g/Lとすることが特に好ましい。
液温は15〜60℃が好ましい。直流法を用いるとき、電流密度1〜60A/dm2、特に4〜40A/dm2が好ましい。連続的にアルミニウムシートを陽極酸化する場合は、アルミニウム板の焼けと呼ばれる電流集中を防ぐために最初5〜10A/dm2の低電流密度で陽極酸化処理を行い、後半に行くに従い徐々に電流密度を上げて30〜50A/dm2になるまで、あるいはそれ以上に電流密度を設定することが特に好ましい。電流密度は5〜15ステップで徐々に上げることが好ましい。各ステップごとには独立した電源装置を持ち、この電源装置の電流値で電流密度をコントロールする。給電方法はコンダクタローラを用いない液給電方式が好ましい。特開2001−11698号公報にはその一例が示されている。
硫酸水溶液中にはアルミニウム板に含まれる微量成分元素が少量溶解しても良いのは勿論である。陽極酸化処理中の硫酸水溶液にはアルミニウムが溶出するため、工程の管理のためには硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度を管理する必要がある。アルミニウムイオン濃度を低く設定すると陽極酸化を行う硫酸水溶液の更新を頻繁に行わなければならず、廃液量が増えて経済的でないばかりでなく環境面でも問題である。また、アルミニウムイオン濃度を高く設定すると電解電圧が高くなり電力コストがかさみ経済的でない。好ましい陽極酸化の硫酸濃度、アルミイオン濃度、液温としては、
(その1)
硫酸濃度 100〜200g/L(更に130〜180g/L)
アルミニウムイオン濃度 2〜10g/L(更に3〜7g/L)
液温 15〜40℃(更に33〜38℃)
(その2)
硫酸濃度 50〜125g/L(更に80〜120g/L)
アルミニウムイオン濃度 2〜10g/L(更に3〜7g/L)
液温 40〜70℃(更に50〜60℃)
である。
陽極酸化処理でのアルミニウム板への給電方式は、コンダクタロールを用いて直接アルミニウム板に給電する直接給電方式と、電解液を通じてアルミニウム板に給電する液給電方式がある。
直接給電方式はライン速度30m/min以下の比較的低速・低電流密度の陽極酸化装置で、間接給電方式はライン速度30m/minを越える高速・高電流密度の陽極酸化装置で用いられることが多い。
間接給電方式は、連続表面処理技術(総合技術センター、昭和61年9月30日発行)の289頁にあるように、山越型またはストレート型の槽レイアウトをも用いることができる。高速・高電流密度になるとコンダクタロールとアルミニウムウェブ間のスパーク発生の問題が発生するため、直接給電ロール方式は不利である。
直接給電方式、間接給電方式ともに、アルミニウムウェブ内の電圧ドロップによるエネルギーロスを少なくする目的で、陽極酸化処理工程は2つ以上に分離し、それぞれの電解装置の給電槽と酸化槽、またはコンダクタロールと酸化槽の間に直流電源を接続して用いることが特に好ましい。
直接給電方式を用いる場合は、コンダクタロールはアルミニウム製のものを用いるのが
一般的である。ロールの寿命を長くするために、特公昭61−50138号公報に記載されているような、工業用純アルミニウムを用いて鋳造したのち、高温均質化処理を施してAl−Fe系晶出物をAl3Feの単一層として耐食性を向上させたものを用いることが特に好ましい。
陽極酸化処理工程においては大電流を流すため、ブスバーに流れる電流により発生する磁界により、アルミニウム板にローレンツ力が働く。その結果ウェブが蛇行する問題が生じるため、特開昭57−51290号公報に記載されているような方法を用いることが特に好ましい。
また、アルミニウム板には大電流が流れるため、アルミニウム板自身を流れる電流による磁界によりアルミニウム板の幅方向において中央に向かってローレンツ力が働く。その結果アルミニウム板に折れが発生しやすくなるため、陽極酸化処理槽内に直径100〜200mmのパスローラーを100〜3000mmピッチで複数設け、1〜15度の角度でラップさせてローレンツ力による折れを防止する方法をとることが特に好ましい。
また、陽極酸化皮膜はアルミニウム板の幅方向で生成量が異なり、エッチに近づくほど生成量が多くなり厚さが厚くなる。その結果巻き取り装置にてアルミニウム板をうまく巻き取れない問題が生じる。これを解決するには、特公昭62−30275号公報または特公昭55−21840号公報に記載の方法で液流を撹拌することにより解決できる。その方法においても不十分な場合は、アルミニウム板の巻き取り装置を0.1〜10Hzの周期で5〜50mmの振幅でアルミニウムウェブの幅方向にオシレートさせて巻き取る方法を併用して用いることが特に好ましい。
硫酸法で通常、直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。陽極酸化皮膜の量は1〜10g/m2の範囲が適当である。一般的平版印刷版材料の場合、陽極酸化皮膜量は1〜5g/m2で、1g/m2以上であると耐刷性が十分になり、平版印刷版の非画像部に傷がつき難くなって、同時に傷の部分にインキが付着する、いわゆる傷汚れが生じ難くなる。また、陽極酸化皮膜量が多くなると、アルミニウム板のエッチ部分へ酸化皮膜が集中しやすくなるので、アルミニウム板のエッチ部分と中心部分の酸化皮膜量の差は、1g/m2以下であることが好ましい。連続的な陽極酸化処理は液給電方式を用いるのが一般的である。アルミニウム板に電流を通電するための陽極としては、鉛、酸化イリジウム、白金、フェライトなどを用いることができるが、酸化イリジウムを主体とするものが特に好ましい。酸化イリジウムは熱処理により基材に被覆される。基材としてはチタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウムなどの所謂バルブ金属が用いられるが、チタンまたはニオブが特に好ましい。前記バルブ金属は比較的電気抵抗が大きいため、芯材に銅を用い、その周囲にバルブ金属をクラッドすることが特に好ましい。銅の芯材にバルブ金属をクラッドする場合は、あまり複雑な形状のものは作れないので、各パーツに分割して作製した電極部品を、酸化イリジウムを被覆した後にボルト・ナットなどで希望の構造となるように組み立てるのが一般的である。
本発明では、デスマット処理液の送液設備、濃度調整設備を簡素化し、設備コストを低減できる点で、陽極酸化処理で生じる酸廃液は、デスマット処理(第1、第2および第3デスマット処理)に用いるのが好ましい。
<親水化処理>
親水化処理は、平版印刷版用アルミニウム支持体の製造に一般的に用いられる公知の親水化処理を用いることができるが、アルカリ金属ケイ酸塩で処理するのが好ましく、以下に詳細に説明する。
陽極酸化処理された支持体は、水洗処理された後、現像液への陽極酸化皮膜の溶解抑制、感光層成分の残膜抑制、陽極酸化皮膜強度向上、陽極酸化皮膜の親水性向上、感光層との密着性向上などを目的に、以下のような処理を行うことができる。そのひとつとしては
陽極酸化皮膜をアルカリ金属のケイ酸塩水溶液と接触させて処理するシリケート処理が挙げられる。この場合、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度は通常0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜5質量%であり、25℃でのpHが通常10〜13.5である水溶液に5〜80℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは15〜50℃で0.5〜120秒間接触させる。接触させる方法は、浸せきでもスプレーによる吹き付けでも、いかなる方法によってもかまわない。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液はpHが10より低いと液はゲル化し、13.5より高いと陽極酸化皮膜が溶解されてしまう場合がある。
本発明に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpH調整に使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記処理液にはアルカリ土類金属塩もしくは第IVA族(4族)金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性塩が挙げられる。第IVA族(4族)金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属もしくは第IVA族(4族)金属塩は単独または2種以上組合わせて使用する事ができる。これらの金属塩の好ましい範囲は、0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.05〜5.0質量%である。
Si付着量としては1.0〜12.0mg/m2付着させることが望ましい。2.0から9.0mg/m2がより望ましい。1.0mg/m2以上であると感度が良好になり、12.0mg/m2以下であると耐刷性、バーニング耐刷性が良好となる。
なおSi量は、例えば、蛍光X線分析装置を用いて検量線法によりSi原子の量(mg/m2)として測定される。例えば、蛍光X線分析装置として理学電機工業(株)製RIX3000を用い、下記条件にてSi−Kαスペクトルのピーク高さよりSi原子の量を測定する。
装置 :理学電機工業(株)製RIX3000
X線管球 :Rh
測定スペクトル :Si−Kα
管電圧 :50kV
管電流 :50mA
スリット :COARSE
分光結晶 :RX4
検出器 :F−PC
分析面積 :30mmφ
ピーク位置(2θ) :144.75deg.
バックグランド(2θ) :140.70deg.,146.85deg.
積算時間 :80秒/sample
<封孔処理>
他には、各種封孔処理も挙げられ、一般的に陽極酸化皮膜の封孔処理方法として知られている。水蒸気封孔、沸騰水(熱風)封孔、金属塩封孔(クロム酸塩/重クロム酸塩封孔、酢酸ニッケル封孔など)、油脂含浸封孔、合成樹脂封孔、低温封孔(赤血塩やアルカリ土類塩などによる)などを用いる事ができるが、印刷用支持体としての性能(感光層との密着性や親水性)、高速処理、低コスト、低公害性などの面から水蒸気封孔が比較的好ましい。その方法としては、例えば特開平4−176690号公報にも記載されている加圧または常圧の水蒸気を連続または非連続的に、相対湿度70%以上・蒸気温度95℃以上
で2秒〜180秒程度陽極酸化皮膜に接触させる方法などが挙げられる。他の封孔処理法としては、支持体を80〜100℃程度の熱水またはアルカリ水溶液に浸漬または吹き付け処理する方法や、これに代えるか、あるいは引き続き、亜硝酸溶液で浸漬または吹き付け処理することができる。亜硝酸溶液に含有する亜硝酸塩などの例としては、例えばLiO2、NaNO2、KNO2、Mg(NO2)2、Ca(NO2)2、Zn(NO3)3、Al(NO2)3、Zr(NO2)4、Sn(NO2)3、Cr(NO2)3、Co(NO2)2、Mn(NO2)2、Ni(NO2)2などが好ましく挙げられ、特にアルカリ金属硝酸塩が好ましい。亜硝酸塩などは2種以上併用することもできる。
処理条件は、支持体の状態およびアルカリ金属の種類により異なるので一義的には決定できないが、例えば亜硝酸ナトリウムを用いた場合には、濃度は一般的には0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜2質量%、浴温度は一般的に室温から約100℃前後、より好ましくは60〜90℃、処理時間は一般的には15〜300秒、より好ましくは10〜180秒のそれぞれの範囲から選択すればよい。亜硝酸水溶液のpHは8.0〜11.0に調製されていることが好ましく、8.5〜9.5に調製されていることが特に好ましい。亜硝酸水溶液のpHを上記の範囲に調製するには、例えばアルカリ緩衝液などを用いて好適に調製することができる。該アルカリ緩衝液としては、限定されないが例えば炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合水溶液、塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、塩酸と炭酸ナトリウムの混合水溶液、四ホウ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液などを好適に用いることができる。また、上記アルカリ緩衝液はナトリウム以外のアルカリ金属塩、例えばカリウム塩なども用いることができる。以上のような、シリケート処理または封孔処理を施した後、感光層との密着性をアップさせるために特開平5−278362号公報に記載されている酸性水溶液処理と親水性下塗りを行うことや、特開平4−282637号公報や特開平7−314937号公報に記載されている有機層を設けてもよい。
本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法は、上記処理の他に、以下の処理を行うこともできる。
<アルミニウム板の水洗方法>
アルミニウム板を酸またはアルカリ水溶液中での処理、または研磨剤を用いて機械的に粗面化した後には、薬液や研磨剤をアルミニウム板表面から除去する目的で洗浄工程を設けるのが常法である。
洗浄は薬液の種類、組成の異なる処理槽の中間に設けるのが普通であるが、処理槽から洗浄工程に入る時間、または、洗浄から次の処理槽に入るまでの時間は10秒以下が好ましく、0.1〜10秒が特に好ましい。10秒以下であれば表面の化学的な変性が進まず、処理ムラが発生し難くなる。
また水洗工程を挟んだ処理槽と処理槽の間隔は、アルミニウムウェブの通過時間で15秒以下、特に5秒以下が好ましい。15秒以下であると表面の化学的な変性が進まず次工程で均一な粗面化処理が行われ易くなる。
アルミニウム板を洗浄するにあたっては、以下の方法を用いることが好ましく、排水量を減少させるという目的で、ドライアイスパウダーを用いた水洗方式が好ましい。
(1)水による洗浄
平版印刷版用アルミニウム支持体の洗浄方法としては、ニップローラーにて液切りした表面を、スプレーチップから噴射した水を用いて洗浄する方法を用いるのが一般的である。水はアルミニウム板の走行方向の下流に向かって45〜90度の角度で噴射することが好ましい。水の噴射圧力は、噴射ノズル直前の圧力で、通常0.5〜5kg/cm2、液温は10〜80℃が好ましい。走行するアルミニウム板の移動速度は20〜200m/minであることが好ましい。アルミニウム板に吹き付けられる水の液量は、一つの洗浄工程で0.
1〜10L/m2の液量が吹き付けられることが好ましい。一つの洗浄槽には、アルミニウム板の表面に最低2本以上、裏面に最低2本以上のスプレー管から洗浄水が噴射される。一つのスプレー管にはピッチ50〜200mmの間隔でスプレーチップが5〜30本設置される。スプレーチップの噴霧角度は10〜150度、アルミニウム板とスプレーチップ噴射面の間隔は10〜250mmが好ましい。スプレーチップの噴霧の断面形状(スプレーパターン)は環状、円形、楕円形、正方形、長方形などがあるが、円形・楕円形または正方形・長方形が好ましい。流量分布(アルミニウム板の表面における噴霧の水量分配状態)は環状分布、均等分布、山型分布などがあるが、スプレーチップをスプレー管に複数並べて使用するときは、幅全域での均一な流量分布を容易にする山型分布が好ましい。流量分布は噴霧圧力とスプレーチップとアルミニウム板の距離により変化する。噴霧の粒子径はスプレーチップの構造、噴霧圧力、噴霧量によって変わるが、10〜10000μm、特に100〜1000μmが好ましい。スプレーノズルの材質は高速で流れる液体に対して耐摩耗性があることが好ましい。その材質は真鍮、ステンレス、セラミックなどが用いられるが、セラミックノズルが特に好ましい。
スプレーチップを設置したスプレーノズルはアルミニウム板の進行方向に対して45〜90度に配置することができるが、スプレーパターンの中心のうち長さが長い方の中心線がアルミニウム板の進行方向と直角になるようにすることが好ましい。
水洗処理工程を通過する洗浄時間は、工業的に10秒以下が好ましく、特に好ましくは0.5〜5秒が好ましい。
(2)ドライアイスパウダーを使った洗浄
ドライアイスパウダーをアルミニウム板の両面に噴射して洗浄する方法には、特開平10−66905号公報に記載されているような公知のショットブラスト装置を用いることができる。噴射ノズルは特開平10−28901号公報、特開平10−28902号公報に記載されているような公知の噴射ノズルをアルミニウム板の両面に複数個並べることができる。噴射ノズルは横一直線に配置しても良いが、アルミニウム板表面の噴射パターンがアルミニウム板の巾方向で重なるように斜めに設置することが好ましい。噴射ノズルとアルミニウム板の間隔は1〜100mmが好ましく、特に10〜50mmが好ましい。
また、パウダー状のドライアイスを製造する方法は実開平7−38104号公報に記載されているような製造装置を用いることができる。噴射用の気体はGN2ガス、または空気を用いることができる。パウダー状のドライアイスは1〜1000μmであり、その平均粒径は10〜100μmが好ましい。噴射ノズル一個あたりのLCO2(液化炭酸ガス)供給量は0.1〜1kg/minが好ましく、その供給圧力は1〜20MPaが好ましい。アルミニウム板での洗浄圧力は1〜20MPaが好ましい。
<パスロールの材質>
ロールは、表面にメッキ処理またはライニング処理された公知の鉄鋼、メッキ、電解コンデンサ、PS板などの連続生産ラインに用いる金属ロール、樹脂ロール、ゴムロール、不織布ロールから選定して用いることができる。
ロールの材質、表面の物性値は薬液やそのときのアルミニウム表面の状態に応じて耐食性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性などを考慮して選定する。金属ロールではハードクロムメッキロールが一般的に用いられる。ゴムロールでは天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ニトリルゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴムなどは勿論それらに微量の添加物を添加したものを用いる事ができる。ゴムロールの硬度は60〜90が特に好ましい。
上記に詳細に説明した本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法によれば、低純度のアルミニウム合金板(合金成分を多く含むアルミニウム板または合金成分を調製
していないアルミニウム板)を用いた場合であっても、表面の凹凸が均一な平版印刷版用アルミニウム支持体を得ることができる。また、本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法により得られた平版印刷版用アルミニウム支持体は、後述するように感光層を設け感光性平版印刷版とすると、これを製版して平版印刷版としたときに、印刷性能に優れ、かつ、耐刷性に優れる。
〔B.下塗り層〕
本発明においては、上記のようにして得られた支持体上に、感光層を設ける前に、必要に応じて、例えば、ホウ酸亜鉛などの水溶性金属塩のような無機下塗層や、有機下塗層を設けてもよい。
有機下塗層に用いられる有機化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体;オニウム塩及び酸基を側鎖に有する共重合体;ポリアクリル酸;2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸などの有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニンなどのアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩;黄色染料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機下塗層は、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶媒、またはそれらの混合溶剤に、上記有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布し乾燥することにより設けられる。上記有機化合物を溶解させた溶液の濃度は、0.005〜10質量%であるのが好ましい。塗布の方法は、特に限定されず、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などのいずれの方法も用いることができる。
有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2であるのが好ましく、5〜
100mg/m2であるのがより好ましい。上記範囲であると、耐刷性がより良好になる。
無機下塗層の乾燥後の被覆量は、0.1〜100mg/m2であることが好ましく、0.5〜20mg/m2であることがより好ましい。
〔C.光重合層〕
本発明の感光性平版印刷版に用いる光重合層を構成する光重合型感光性組成物は、高分子バインダー(結合剤)、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物、光重合開始剤(系)を必須成分とし、必要に応じ、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を併用することができる。
<a.高分子バインダー>
高分子バインダーとしては、光重合層に用いられる光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、アルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。該有機高分子重合体は、例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。この様な有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59-44615号、特公昭54-34327号、特公昭58-12577号、特公昭54-25957号、特開昭54-92723号、特開昭59-53836号、特開昭59-71048号の各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、
部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。
また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。この他に水溶性有機高分子重合体として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。また特公平7−120040号、特公平7-120041号、特公平7-120042号、特公平8-12424号、特開昭63-287944号、特開昭63-287947号、特開平1-271741号、特開平11-352691号各公報に記載のポリウレタン樹脂も本発明の用途には有用である。
これら有機高分子重合体は側鎖にラジカル反応性基を導入することにより硬化皮膜の強度を向上させることができる。付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が、又光照射によりラジカルになり得る官能基としてはメルカプト基、チオール基、ハロゲン原子、トリアジン構造、オニウム塩構造等が、又極性基としてカルボキシル基、イミド基等が挙げられる。上記付加重合反応し得る官能基としては、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基などエチレン性不飽和結合基が特に好ましいが、又アミノ基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、燐酸基、カルバモイル基、イソシアネート基、ウレイド基、ウレイレン基、スルホン酸基、アンモニオ基から選ばれる官能基も有用である。
感光層の現像性を維持するためには、高分子バインダーは適当な分子量、酸価を有することが好ましい。重量平均分子量は通常5000〜100万、好ましくは5000〜30万であり、酸価は通常0.1〜5.0meg/gである。
高分子バインダーは感光層用組成物中に任意な量を混和させることができる。特に90質量%以下であれば、形成される画像強度等の点で好ましい結果を与える。好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
また、光重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物と高分子バインダーは、質量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2であり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
なお、第一の態様の感光性平版印刷版では、高分子バインダーとしてアミド基を側鎖に有する有機高分子化合物及びポリウレタン樹脂の少なくとも1種を使用する。
<a.アミド基を側鎖に有する有機高分子化合物>
アミド基を側鎖に有する有機高分子化合物(以降、アミド基含有高分子バインダーともいう)は、アミド基を側鎖に有する、実質的にアルカリ水に可溶性である高分子バインダーである。
該アミド基含有高分子バインダーは重量平均分子量で1万〜100万であるものが好ましい。このアミド基含有高分子バインダーは側鎖にアミド基を有するラジカル重合性化合物又は側鎖にアミド基を有するラジカル重合性化合物と他の重合性化合物とを通常のラジカル重合法によって製造可能であり、一般的に懸濁重合法あるいは溶液重合法などを用いる。
側鎖アミド基の効果としては、アミド基の水素結合性の性質により、高分子間の凝集が強化され、強靭な被膜となるので、光重合後の画像強度が高くなり印刷での耐刷性が向上する。さらにアミド基の親水的性質により、現像性に優れた光重合性組成物を与えることができる。
アミド基含有高分子バインダーは、好ましくは下記一般式(M1)で表されるアミド基を側鎖に有するポリマーであり、より好ましくは、更に下記一般式(M2)で表されるアルケニル含有基を含有するアミド基含有高分子バインダーであり、さらに好ましくは下記一般式(M2)で表されるアルケニル含有基とともにカルボキシル基を側鎖に有するアミド基含有高分子バインダーである。
Figure 0004448707
[一般式(M1)中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子およびそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基または置換スルホニルを表し、R1とR2とが互いに結合して環構造を形成してもよい。一般式(M2)中、R3〜R7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホナト基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、およびそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換オキシ基、置換スルホニル基を表し、Z1は、酸素原子、硫黄原子またはNR8(R8は水素原子もしくはアルキル基)を表す。]
一般式(M2)の部分は、感度、インキ着肉性、階調性向上、耐刷性向上に寄与し、カルボキシル基は現像性向上に寄与する。
特に好ましいアミド基含有高分子バインダーである、一般式(M1)で表されるアミド基、一般式(M2)で表されるアルケニル含有基、およびカルボキシル基を側鎖に有するポリマーは、さらに好ましくは、下記i)〜iii)の単量体を通常のラジカル重合法を用いることにより製造される。
i)一般式(M1)の基を含有するラジカル重合性化合物、
ii)一般式(M2)の基を含有するラジカル重合性化合物、
iii)カルボキシル基を含有するラジカル重合性化合物
各基の好ましい含有量としては、各基を有するラジカル重合性化合物の仕込量で表して、i)5〜80モル%、より好ましくは10〜80モル%、ii)10〜90モル%、より
好ましくは20〜80モル%、iii)3〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%である。
一般式(M1)で表されるアミド基、一般式(M2)で表されるアルケニル含有基について説明する。
一般式(M1)および一般式(M2)におけるR1〜R7の好ましい例について詳述する。R1〜R7で表されるアルキル基としては炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
1〜R7で表される置換アルキル基の置換基としては、水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロ
キシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3 H)およびその共役塩基基(スルホナト基と称す)、
アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィイナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールス
ルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO32 )およびその共役塩基基(ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3 (alkyl )2:alkyl=アルキル基、以下同)、ジアリールホスホノ基(−PO3 (aryl)2 :aryl=アリール基、以下同)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl )(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3 (alkyl ))およびその共役塩基基(アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3 H(aryl))およびその共役塩基基(アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO32 )およびその共役塩基基(ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3 H(alkyl )2 )、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3 (aryl)2 )、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3 (alkyl )(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3 H(alkyl))およびその共役塩基基(アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3 H(aryl))およびその共役塩基基(アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、シリル基等が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基等を挙げることができる。
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
アシル基(R01CO−)におけるR01としては、水素原子、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これらの置換基の内、さらにより好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、アルキルホスホナト基、モノアリールホスホノ基、アリールホスホナト基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。ヘテロ環基としてはピリジル基、ピペリジニル基等が挙げられる。シリル基としてはトリメチルシリル基等が挙げられる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのア
ルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。このような置換基とアルキレン基を組み合わせることで得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、s−ブトキシブチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、ピリジルメチル基、テトラメチルピペリジニルメチル基、N−アセチルテトラメチルピペリジニルメチル基、トリメチルシリルメチル基、メトキシエチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。次に、R1〜R7としてのアリール基としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
1〜R7で表される置換アリール基としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、
N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
1〜R7で表されるアルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、ならびに置換アルキニル基(−C(R02)=C(R03)(R04)、ならびに−C≡C(R05))としては、R02、R03、R04、R05が一価の非金属原子団からなる基のものが使用できる。好ましいR02、R03、R04、R05の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基ならびに置換アリール基を挙げることができる。これらの具体例としては、前述の例として示したものを挙げることができる。R02、R03、R04、R05のより好ましい基としては、水素原子、ハロゲン原子ならびに炭素原子数1から10までの直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を挙げることができる。このようなR1〜R7で表されるアルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基の好ましい具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、2−フェニル−1−エテニル基、2−クロロ−1−エテニル基、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、フェニルエチニル基を挙げることができる。
3〜R7で表される置換オキシ基(R06O−)としては、R06が水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基であるものを用いることができる。好ましい置換オキシ基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、ならびにアリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに、アリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。また、アシルオキシ基におけるアシル基(R07CO−)としては、R07が、先に、R1〜R7の例として挙げたアルキル基、置換アルキル基、アリール基ならびに置換アリール基のものを挙げることができる。これらの置換基の中では、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、アリールスルホキシ基がより好ましい。
好ましい置換オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ基、モルホリノプロピルオキシ基、アリロキシエトキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基等が挙げられる。
3〜R7で表されるアミド基も含む置換アミノ基(R08NH−、(R09)(R010)N−)としては、R08、R09、R010が水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。なおR09とR010とは結合して環を形成してもよい。置換アミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N'−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、ア
リール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができ、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基おけるアシル基(R07CO−)のR07は前述のとおりである。これらの内、より好ましいものとしては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、アシルアミノ基が挙げられる。好ましい置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。
1〜R7で表される置換スルホニル基(R011−SO2−)としては、R011が一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。より好ましい例としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。このような、置換スルホニル基の具体例としては、ブチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基等が挙げられる。R1、R2で表されるヘテロ環基としては、置換アルキル基の置換基として例示したピリジル基等が挙げられる。
3〜R7で表されるスルホナト基(−SO3 -)は前述のとおり、スルホ基(−SO3H)の共役塩基陰イオン基を意味し、通常は対陽イオンとともに使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
また、一般式(M1)においてR1とR2とが互いに結合して形成される環としては、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、ピロール、インドリン等が挙げられる。これらは、さらに前述のような置換基で置換されていてもよい。なかでも脂環を形成する場合が好ましい。
一般式(M1)において、R1、R2としてはアルキル基、アルケニル基、アリール基、置換スルホニル基が好ましい。また、R1とR2とで脂環を形成する場合も好ましい。
また、一般式(M2)において、R3〜R7としては水素原子が好ましく、Z1としては酸素原子が好ましい。
i)のより好ましい具体例としては、下記の化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
ii)のより好ましい例としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート等を挙げることができ、iii)のより好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができる。
このような共重合体の具体例については後記合成例で示す。
アミド基含有高分子バインダーの使用量は、光重合層の全成分に対して通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%である。
上記イミド基含有高分子バインダーとともに、他の高分子バインダーを併用してもよい。他の高分子バインダーの含有量は、アミド基含有高分子バインダーに対して、通常100質量%以下であり、好ましくは50質量%以下である。
光重合層の現像性を維持するためには、アミド基含有高分子バインダーは適当な分子量、酸価を有することが好ましく、重量平均分子量で5000〜30万、酸価20〜200の高分子重合体が有効に使用される。アミド基含有高分子バインダーは光重合層の全組成物中に任意な量を混和させることができる。
また光重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物と全高分子バインダーは、質量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2であり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
<b.ポリウレタン樹脂>
次に、ポリウレタン樹脂について説明する。
高分子バインダーとしてのポリウレタン樹脂は、少なくとも下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の化合物より合成されるポリウレタン樹脂バインダーである。このようなポリウレタン樹脂バインダーは、少なくとも下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の化合物からなるポリウレタン構造を有するものである。
(i)少なくとも1種のジイソシアネート化合物、
(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物、
(iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物、及び
(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物。
ただし、(iii)及び(iv)の化合物はカルボキシル基を有するジオール化合物を除く化合物である。
これを用いることにより、低い感光層酸価であっても未露光部の現像性を低下させることなく、露光部の現像ダメージを抑制することができ、良好な汚れ性と高い耐刷性を兼ね備えることができる。
(i)ジイソシアネート化合物
ジイソシアネート化合物としては、式(1)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。
Figure 0004448707
式中、Lは置換基を有していてもよい2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を示す。必要に応じ、Lはイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。
より具体的にはLは、単結合、置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を示す。好ましくは炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリーレン基、さらに好ましくは炭素数1〜8個のアルキレン基を示す。また必要に応じ、L中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、エーテル基を有していてもよい。
具体的には以下に示すものが挙げられる。
すなわち、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの
二量体、2,6−トリレンジレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のような脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(または2,6)ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のような脂環式ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のようなジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。耐刷性と汚れ性のバランスの点で、2種以上を組み合わせて用いるのが好ましく、芳香族ジイソシアネート化合物(Lが芳香族基)と脂肪族ジイソシアネート化合物(Lが脂肪族基)をそれぞれ少なくとも1種ずつ用いることが特に好ましい。
ジイソシアネートの使用量は、ジオール化合物に対してモル比で好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1である。ジイソシアネート化合物をジオール化合物に対して過剰に用い、ポリマー末端にイソシアネート基が残存するような場合には、ウレタン化反応終了後にアルコール類またはアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成されることが好ましい。
(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物
少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物としては、式(2)、(3)、(4)のジオール化合物および/または、テトラカルボン酸2無水物をジオール化合物で開環させた化合物が挙げられる。カルボン酸2無水物を開環させるために使用されるジオール化合物としては、後述する(iii)または(iv)として記載されるジオール化合物を使用することができる。
Figure 0004448707
1は水素原子、置換基(例えば、シアノ、ニトロ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、−CONH2、−COOR113、−OR113、−NHCONHR113、−NHCOOR113、−NHCOR113、−OCONHR113(ここで、R113は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜15のアラルキル基を示す。)などの各基が含まれる。)を有し
ていてもよいアルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ基を示し、好ましくは水素原子、炭素数1〜8個のアルキル、炭素数6〜15個のアリール基を示す。
10、L11、L12はそれぞれ同一でも相違していてもよく、単結合、置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を示す。好ましくは炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリーレン基、さらに好ましくは炭素数1〜8個のアルキレン基を示す。また必要に応じ、L10、L11、L12中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、エーテル基を有していてもよい。なおR1、L10、L11、L12のうちの2または3個で環を形成してもよい。
Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素基を示し、好ましくは炭素数6〜15個の芳香族基を示す。
式(2)、(3)または(4)で示されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては具体的には以下に示すものが含まれる。
すなわち、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド等が挙げられる。
また、少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物の生成において用いられる好ましいテトラカルボン酸2無水物としては、式(5)、(6)、(7)で示されるものが挙げられる。
Figure 0004448707
式中、L21は単結合、置換基(例えばアルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノ、エステル、アミドの各基が好ましい。)を有していてもよい二価の脂肪族または芳香族炭化水素基、−CO−、−SO−、−SO2−、−O−または−S−を示す。好ましくは単結合、炭素数1〜15個の二価の脂肪族炭化水素基、−CO−、−SO2−、−O−または−S−を示す。R2、R3は同一でも相違していてもよく、水素原子、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、またはハロゲノ基を示す。好ましくは、水素原子、炭素数1〜8個のアルキル、炭素数6〜15個のアリール、炭素数1〜8個のアルコキシ、またはハロゲノ基を示す。またL21、R2、R3のうちの2つが結合して環を形成してもよい。R4、R5は同一でも相違していてもよく、水素原子、アルキル、アラルキル、アリールまたはハロゲノ基を示す。好ましくは水素原子、炭素数1〜8個のアルキル、または炭素数6〜15個のアリール基を示す。またL21、R4、R5のうちの2つが結合して環を形成してもよい。L22、L23は同一でも相違していてもよく、単結合、二重結合、または二価の脂肪族炭化水素基を示す。好ましくは単結合、二重結合、またはメチレン基を示す。Aは単核または多核の芳香環を示す。好ましくは炭素数6〜18個の芳香環を示す。
式(5)、(6)または(7)で示される化合物としては、具体的には以下に示すものが含まれる。
すなわち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−[3,3’−(アルキルホスホリルジフェニレン)−ビス(イミ
ノカルボニル)]ジフタル酸二無水物、ヒドロキノンジアセテートとトリメット酸無水物の付加体、ジアセチルジアミンとトリメット酸無水物の付加体などの芳香族テトラカルボン酸二無水物;5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(大日本インキ化学工業(株)製、エピクロンB−4400)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物などの脂環族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
これらのテトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環することにより、(ii)少なくとも一つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物を合成することができる。ただし、ジオール化合物と(i)ジイソシアネート化合物との反応を初めに行い、この反応物と上記テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより本発明のポリウレタン樹脂を合成することも可能であり、この方法も本発明の観点に包含される。すなわち、テトラカルボン酸二無水物とジオール化合物から由来する構造単位をポリウレタン樹脂中に導入する方法としては、以下の方法がある。
a)テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させて得られたアルコール末端の化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させる方法。
b)ジイソシアネート化合物をジオール化合物過剰の条件下で反応させ得られたアルコール末端のウレタン化合物と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させる方法。
少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物のうち、一般式(2)で表される化合物は、溶剤溶解性が高く、合成が容易であるためより好ましい。また、少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物は、該ポリウレタン樹脂バインダーがカルボキシル基を0.2〜4.0meq/g、好ましくは0.3〜3.0meq/g、さらに好ましくは0.4〜2.0meq/g、特に好ましくは0.5〜1.5meq/g、最も好ましくは0.6〜1.2meq/gの範囲で有するような量においてポリウレタン樹脂バインダーに導入される。従って、(ii)少なくとも一つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物由来の構造のポリウレタン樹脂バインダー中における含有量は、カルボキシル基の数、他のジオール成分として何を用いるか、得られるポリウレタン樹脂バインダーの酸価や分子量、現像液の組成やpH等によって適宜選択されるが、例えば、5〜45モル%、好ましくは10〜40モル%、より好ましくは15〜35モル%である。
(iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物
(iii)及び(iv)のジオール化合物におけるlogP値とは、(iii)及び(iv)のジオール化合物におけるlogP値とは、C.Hansch,A.Leo,"Substituent Constants for CorrelationAnalysis in Chemistry and Biology",J.Wile&Sons,1979に記載の疎水性パラメータとして一般的に使用されるものであり、後述する現像液中の非イオン性化合物に関して記載したものと同じ定義を有し、同様に既知データから計算できる値である。
logP値が0未満のジオール化合物は、特に制限されずに用いることができるが、ただし、logP値が0未満のカルボキシル基を有するジオール化合物は含まれない。logP値が0未満のジオール化合物としては、一般式(A’)で表されるエチレングリコール化合物を挙げることができる。
HO−(CH2CH2O)n−H (A’)(式中、nは1以上の整数を表す。)
また、logP値が0未満であるような末端に水酸基を有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム共重合体や、ブロック共重合体も挙げられる。
さらに、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が27以上100以下)、ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が22以上100以下)、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が23以上100以下)、水添ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が18以上100以下)も用いることができる。logP値が0未満のジオール化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、印刷版の安定性(感度、耐刷性など)の点で、単独で用いることが好ましい。
logP値が0未満のジオール化合物としては、汚れ性の点でlogP値が−10〜−0.5であることが好ましく、−8〜−1であることがより好ましく、−5〜−1.2であることがさらに好ましい。より具体的には、(A’)で表されるエチレングリコール化合物が汚れ性の点で好ましく、nが2〜50のエチレングリコール化合物がより好ましく、nが3〜30のエチレングリコール化合物がさらに好ましく、nが4〜10のエチレングリコール化合物が特に好ましい。
logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物のポリウレタン樹脂バインダー中における含有量は、用いるジオール化合物のlogP値、他のジオール成分として何を用いるか、得られるポリウレタン樹脂バインダーの酸価や分子量、現像液の組成やpH等によって適宜選択されるが、好ましくは1〜45モル%、より好ましくは5〜40モル%、さらに好ましくは10〜35モル%、特に好ましくは15〜30モル%である。
(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物
logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物としては、logP値が0より大きいものであれば特に制限なく用いることができる。ただし、logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物には、カルボキシル基を有するジオール化合物を含まれない。
具体的には、1,2−プロピレングリコール、ジ−1,2−プロピレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、テトラ−1,2−プロピレングリコール、ヘキサ−1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジ−1,3−プロピレングリコール、トリ−1,3−プロピレングリコール、テトラ−1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジ−1,3−ブチレングリコール、トリ−1,3−ブチレングリコール、ヘキサ−1,3−ブチレングリコール、平均分子量400のポリプロピレングリコール、平均分子量700のポリプロピレングリコール、平均分子量1000のポリプロピレングリコール、平均分子量2000のポリプロピレングリコール、平均分子量3000のポリプロピレングリコール、平均分子量4000のポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−ビス−β−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が26以下)、ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が21以下)、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が22以下)、水添ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの付加数が17以下)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加体、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、水添ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加体、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、p−キシリレングリコール、ジヒドロキシエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエ
チル)−2,4−トリレンジカルバメート、2,4−トリレン−ビス(2−ヒドロキシエチルカルバミド)、ビス(2−ヒドロキシエチル)−m−キシリレンジカルバメート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート等が挙げられる。
また、式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)で表される化合物であって、logP値が0より大きいポリエーテルジオール化合物も好適に用いることができる。
Figure 0004448707
式中、R6は水素原子またはメチル基を表す。ただし、式(A)においてはR6はメチル基を表す。また、Xは、以下の基を表す。
Figure 0004448707
a,b,c,d,e,f,gはそれぞれ2以上の整数を示す。好ましくは2〜100の整数である。
式(8)、(9)で表されるlogP値が0より大きいポリエステルジオール化合物も(iv)のジオールの具体例として挙げることができる。
Figure 0004448707
式中、L1、L2およびL3はそれぞれ同一でも相違してもよく2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を示し、L4は2価の脂肪族炭化水素基を示す。好ましくは、L1、L2、L3はそれぞれアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基を示し、L4はアルキレン基を示す。またLl、L2、L3、L4中にはイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエーテル、カルボニル、エステル、シアノ、オレフィン、ウレタン、アミド、ウレイド基またはハロゲン原子等が存在していてもよい。n1、n2はそれぞれ2以上の整数であり、好ましくは2〜100の整数を示す。
式(10)で表されるlogP値が0より大きいポリカーボネートジオール化合物も具体例として挙げることができる。
Figure 0004448707
式中、L5はそれぞれ同一でも相違してもよく2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を示す。好ましくは、L5はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基を示す。またL5中にはイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエーテル、カルボニル、エステル、シアノ、オレフィン、ウレタン、アミド、ウレイド基またはハロゲン原子等が存在していてもよい。n3はそれぞれ2以上の整数であり、好ましくは2〜100の整数を示す。
式(8)、(9)または(10)で示されるジオール化合物としては具体的には以下に示すものが含まれる。具体例中のnは2以上の整数である。
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
また更に、カルボキシル基を有せず、イソシアネートと反応しない他の置換基を有してもよい、logP値が0より大きいジオール化合物を用いることもできる。
このようなジオール化合物としては、以下に示すものが含まれる。
HO−L6−O−CO−L7−CO−O−L6−OH (11)
HO−L7−CO−O−L6−OH (12)
式中、L6、L7はそれぞれ同一でも相違していてもよく、置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、などの各基が含まれる。)を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を示す。必要に応じ、L6、L7中にイソシアネート基と反
応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基などを有していてもよい。なおL6、L7で環を形成してもよい。
また式(11)または(12)で示される化合物の具体例としては以下に示すものが含まれる。
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
下記に示すジオール化合物も好適に使用できる。
Figure 0004448707
式中、R7、R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、置換基を有してもよいアルキル基、好ましくは、シアノ、ニトロ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、−
CONH2、−COOR、−OR、(ここで、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数7〜15のアリ−ル基、アラルキル基を示す。)などの各基を置換基として有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。
式(16)で示されるジオール化合物としては、具体的には以下に示すものが挙げられる。
Figure 0004448707
式(17)としては、2−ブチン−1,4−ジオール、式(18)としては、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられる。
また、下記に示すジオール化合物も好適に使用できる。
HO−L8−NH−CO−L9−CO−NH−L8−OH (19)
HO−L9−CO−NH−L8−OH (20)
式中、L8、L9はそれぞれ同一でも相違していてもよく、置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、などの各基が含まれる。)を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を示す。必要に応じ、L8、L9中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基などを有していてもよい。なおL8、L9で環を形成してもよい。
また式(19)または(20)で示される化合物の具体例としては以下に示すものが含まれる。
Figure 0004448707
Figure 0004448707
さらに、下記に示すジオール化合物も好適に使用できる。
HO−Ar2−(L16−Ar3)n−OH (21)
HO−Ar2−L16−OH (22)
式中、L16は置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を示す。必要に応じ、L16中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。
Ar2、Ar3は同一でも相違していてもよく、置換基を有していてもよい2価の芳香族
炭化水素基を示し、好ましくは炭素数6〜15個の芳香族基を示す。
nは0〜10の整数を示す。
また式(21)または(22)で示されるジオール化合物としては具体的には以下に示すものが含まれる。
すなわち、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、4−メチルカテコール、4−t−ブチルカテコール、4−アセチルカテコール、3−メトキシカテコール、4−フェニルカテコール、4−メチルレゾルシン、4−エチルレゾルシン、4−t−ブチルレゾルシン、4−ヘキシルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、4−ベンジルレゾルシン、4−アセチルレゾルシン、4−カルボメトキシレゾルシン、2−メチルレゾルシン、5−メチルレゾルシン、t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、テトラメチルハイドロキノン、テトラクロロハイドロキノン、メチルカルボアミノハイドロキノン、メチルウレイドハイドロキノン、メチルチオハイドロキノン、ベンゾノルボルネン−3,6−ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、3,3’−ジクロロビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−チオジフェノール、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,4−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,4−ビス(2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルアミン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシアントラキノン、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−ヒドロキシベンジルアルコール、2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルアルコール、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルアルコール、4−ヒドロキシフェネチルアルコール、2−ヒドロキシエチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−ヒドロキシエチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、レゾルシンモノ−2−ヒドロキシエチルエーテル等が挙げられる。下記に示すジオール化合物も好適に使用できる。
logP値が0より大きいジオール化合物としては、耐刷性の点でlogP値が0.5〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、2〜15であることがさらに好ましく、3〜15であることが特に好ましい。また、一般式(A)〜(E)で表される化合物は、耐刷性が良好であるため好ましく、中でも一般式(A)(R6がメチル基)で表されるポリプロピレングリコールはより好ましい。さらに、一般式(A)(R6がメチル基)で表されるポリプロピレングリコールの中でも、耐刷性と汚れ性のバランスの点で、好ましくはaが5〜50、より好ましくは10〜40、さらに好ましくは15〜30である化合物が好ましい。
logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物由来の構造のウレタン樹脂バインダー中における含有量は、用いるジオール化合物のlogP値、他のジオール成分として何を用いるか、得られるウレタン樹脂バインダーの酸価や分子量、現像液の組成やpH等によって適宜選択されるが、好ましくは1〜45モル%、より好ましくは5〜40モル%、さらに好ましくは、10〜35モル%、特に好ましくは15〜30モル%である。
logP値が0より大きいジオール化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、印刷版の安定性(感度、耐刷性など)の点で単独で用いることが好ましい。
(v)その他のアミノ基含有化合物
本発明におけるポリウレタン樹脂バインダーにおいて、さらに下記に示すアミノ基含有化合物を組み合わせて式(1)で表されるジイソシアネート化合物と反応させ、ウレア構造を形成してポリウレタン樹脂の構造に組み込んでもよい。
Figure 0004448707
式中、R106、R106'はそれぞれ同一でも相違していてもよく、水素原子、置換基(例えばアルコキシ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、エステル、カルボキシル基などの各基が含まれる。)を有していてもよいアルキル、アラルキル、アリール基を示し、好ましくは水素原子、置換基としてカルボキシル基を有していてもよい炭素数1〜8個のアルキル、炭素数6〜15個のアリール基を示す。L17は置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、カルボキシル基などの各基が含まれる。)を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を示す。必要に応じ、L17中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばカルボニル、エステル、ウレタン、アミド基などを有していてもよい。なおR106、L17、R106'のうちの2個で環を形成し
てもよい。
また式(31)、(32)で示される化合物の具体例としては以下に示すものが含まれる。
すなわち、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、プロパン−1,2−ジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルシロキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、4−アミノ−2,2−6,6−テトラメチルピペリジン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、リジン、L−シスチン、イソホロンジアミン等のような脂肪族ジアミン化合物;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、ベンジジン、o−ジトルイジン、o−ジアニシジン、4−ニトロ−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメトキシ−p−フェニレンジアミン、ビス−(4−アミノフェニル)スルホン、4−カルボキシ−o−フェニレンジアミン、3−カルボキシ−m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、1,8−ナフタレンジアミン等のような芳香族ジアミン化合物;2−アミノイミダゾール、3−アミノトリアゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、4−アミノピラゾール、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノ−5−カルボキシ−トリアゾール、2,4−ジアミノ−6−メチル−S−トリアジン、2,6−ジアミノピリジン、L−ヒスチジン、DL−トリプトファン、アデニン等のような複素環アミン化合物;エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、1−アミノ−3−プロパノール、2−アミノエトキシエタノール、2−アミノチオエトキシエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、o−アミノフェノール、4−メチル−2−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェ
ノール、4−メトキシ−3−アミノフェノール、4−ヒドロキシベンジルアミン、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノサリチル酸、4−ヒドロキシ−N−フェニルグリシン、2−アミノベンジルアルコール、4−アミノフェネチルアルコール、2−カルボキシ−5−アミノ−1−ナフトール、L−チロシン等のようなアミノアルコールまたはアミノフェノール化合物。
本発明のポリウレタン樹脂は上記イソシアネート化合物およびジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知の触媒を添加し、加熱することにより合成される。ジイソシアネート化合物(i)と、ジオール化合物の合計モル比((ii)、(iii)および(iv))または任意に(v)その他のアミノ基含有化合物成分を含む場合には、ジイソシアネート化合物(i)と、ジイソシアネート以外の化合物の合計モル比((ii)、(iii)、(iv)、および(v))の合計モル比)は好ましくは0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類またはアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
本発明の感光層の必須成分として使用されるポリウレタン樹脂のうち好ましいポリウレタン樹脂は、カルボキシル基を0.2〜4.0meq/g、好ましくは0.3〜3.0meq/g、さらに好ましくは0.4〜2.0meq/g、特に好ましくは0.5〜1.5meq/g、最も好ましくは0.6〜1.2meq/gの範囲で有するポリウレタン樹脂である。
本発明において使用される好ましいポリウレタン樹脂バインダーは、以下より合成される酸価0.6〜1.2meq/gのポリウレタン樹脂バインダーである。
(i)脂肪族ジイソシアネート化合物(Lが脂肪族基)の少なくとも一種、芳香族ジイソシアネート化合物(Lが芳香族基)の少なくとも1種の組み合わせである2種以上のジイソシアネート化合物、
(ii)少なくとも一種の一般式(2)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)logP値が−5〜−1.2の少なくとも1種のジオール化合物、及び
(iv)logP値が3〜10の少なくとも1種のジオール化合物。
これらのポリウレタン樹脂は単独で用いても混合して用いてもよい。
感光性組成物中に含まれる、これらポリウレタン樹脂の含有量は10〜90質量%、好ましくは15〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは25〜60質量%、最も好ましくは30〜50質量%である。
i)ポリウレタン樹脂のより好ましい具体例としては、以下表1〜3に示す化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。具体例の大部分は、使用したジイソシアネート化合物とジオール化合物との組合せで示している。また、カルボキシル基含有量を酸価として示す。
Figure 0004448707
Figure 0004448707
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(i)ジイソシアネート化合物
Figure 0004448707
(ii)カルボキシル基を有するジオール化合物
Figure 0004448707
Figure 0004448707
(iv)logP値が0より大きいジオール化合物
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
(v)その他のアミノ基含有化合物
Figure 0004448707
良好な現像性と耐刷性を付与するために、ポリウレタンバインダーは適当な分子量、酸価を有することが好ましい。分子量、酸価は、現像液のpHや組成、印刷版に求められる性能等によって適宜調整されるが、分子量は、GPC法によるポリスチレン換算で通常5,000〜500,000、好ましくは10,000〜30,000、より好ましくは20,000〜150,000の範囲で用いられる。5,000以上であれば耐刷が良好となり、500,000以下であると現像性が良好となり汚れも発生しない。一方、酸価は0.2〜4.0meq/g、より好ましくは0.3〜3.0meq/g、さらに好ましくは0.4〜2.0meq/g、特に好ましくは0.5〜1.5meq/g、最も好ましくは0.6〜1.2meq/gの範囲で用いられる。0.2meq/g以上であれば現像性が良好となり汚れが発生せず、6.0meq/g以下であれば耐刷性が要項になる。
ポリウレタン樹脂バインダーは全感光性組成物中に任意な量を混和させることができる。特に90質量%以下であれば、形成される画像強度等の点で好ましい結果を与える。好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
上記ポリウレタン樹脂バインダーとともに、他の高分子バインダーを併用してもよい。他の高分子バインダーの含有量は、ポリウレタン樹脂バインダーに対して、通常100質量%以下であり、好ましくは50質量%以下である。
また光重合可能なエチレン性不飽和化合物と全高分子バインダーは、質量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2であり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
<感光層酸価>
本発明の感光層の感光層酸価は1.0meq/g以下であることが好ましい。酸価0.20〜0.60meq/gの感光層を有する平版印刷版に適用する方が効果的である。さらに画像形成性の点でより好ましくは0.30〜0.50meq/gの感光層を有するものである。
なお、本発明でいう感光層酸価とは、感光性平版印刷版(平版印刷版用原版)の支持体上に塗設されている感光性組成物(感光層の上に塗設されるオーバーコート層、例えば、酸素遮断層は含まない)の層、1gあたりに含有されるpKa9以下の酸の等量である。実験的には感光層を水酸化ナトリウム水溶液により直接、滴定して求めることができるが、感光性組成物中のpKa9以下の酸基を有する化合物の含有量から計算により求めることもできる。
具体的に感光層酸価を変える方法としては、感光層成分である架橋剤モノマー/酸基を有するバインダーポリマー(線状高分子)の含有比の変更および酸基の少ない低酸価バインダーポリマーの使用などが考えられる。
低酸価バインダーポリマーとしては、通常0.2〜4.0meq/g、より好ましくは0.3〜3.0meq/g、さらに好ましくは0.4〜2.0meq/g、特に好ましくは0.5〜1.5meq/g、最も好ましくは0.6〜1.2meq/gの範囲で用いられる。
<b.エチレン性不飽和結合含有化合物>
エチレン性不飽和結合含有化合物とは、光重性組成物が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。付加重合可能なエチレン性不飽和結合を含む化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものである。
モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキ
サンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,5−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物も挙げることができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の例としては、特公昭48-41708号公報中に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (A)
(ただし、RおよびR'はHあるいはCH3を示す。)
また、特開昭51-37193号、特公平2-32293号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号各公報に記載
されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。さらに日本接着協会誌Vo1.20, No.7, 300〜308ぺ−ジ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。なお、これらエチレン性不飽和結合含有化合物の使用量は、光重合性感光層全成分の5〜80質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で使用される。
<c.光重合開始剤>
また本発明における感光性平版印刷版の光重合性感光層に含有させる光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができる。以下に具体例を列挙するがこれらに制限されるものではない。400nm以上の可視光線、Arレーザー、半導体レーザーの第2高調波、SHG-YAGレーザーを光源とする場合にも、種々の光開始系が提案されており、例えば、米国特許第2,850,445号に記載のある種の光還元性染料、例えばローズベンガル、エオシン、エリスロジンなど、あるいは、染料と開始剤との組み合わせによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44-20189号)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45-37377号)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47-2528号、特開昭54-155292号)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48-84183号)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54-151024号)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号、特開昭58-15503号)、ビイミダジール、スチレン誘導体、チオールの系(特開昭59−140203号)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59-1504号、特開昭59-140203号、特開昭59-189340号、特開昭62-174203号、特公昭62-1641号、米国特許第4766055号)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63-258903号、特開平2-63054号など)、染料とボレート化合物の系(特開昭62-143044号、特開昭62-150242号、特開昭64-13140号、特開昭64−13141号、特開昭64-13142号、特開昭64-13143号、特開昭64-13144号、特開昭64-17048号、特開平1-229003号、特開平1-298348号、特開平1-138204号など)、ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2-179643号、特開平2-244050号)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63-221110号)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物を組み合わせた系(特開平4-221958号、特開平4-219756号)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6-295061号)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8-334897号)等を挙げることができる。
また、最近400〜410nmの波長のレーザー(バイオレットレーサー)が開発され、それに感応する450nm以下の波長に高感度を示す光開始系が開発されており、これらの光開始系も使用される。例えば、カチオン色素/ボレート系(特開平11-84647号公報)、メロシアニン色素/チタノセン系(特開2000-147763)、カルバゾール型色素/チタノセン系(特開2001−42524号公報)等を挙げることができる。
更に上記光重合開始剤に必要に応じ、2−メルカプトベンスチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物を加えることにより更に光開始能力が高められることが知られている。これらの光重合開始剤(系)の使用量はエチレン性不飽和結合含有化合物100質量部に対し、0.05〜100質量部、好ましくは0.1〜70質量部、更に好ましくは0.2〜50質量部の範囲で用いられる。
なお、本発明の第二の態様の感光性平版印刷版の光重合層は、光重合層の露光波長での光学濃度が0.2〜1.0となる範囲で増感色素を含有する。
増感色素は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(SD−1)または下記一般式(SD−2)で表される化合物が好ましい。
Figure 0004448707
(一般式(SD−1)中、Aは置換基を有しても良い芳香族環またはヘテロ環をあらわし、Xは酸素原子又は硫黄原子ないし−N(R3)−をあらわす。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団であり、AとR1及びR2とR3はそれぞれ互いに、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)
Figure 0004448707
〔一般式(SD−2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表す。但し、R1およびR3のうちの少なくとも一つは、下記部分構造式(a)に示す一価の有機残基で表される。また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
Figure 0004448707
(部分構造式(a)中、R10は、水素原子または一価の非金属原子団を表し、Zは隣接する原子と共同して、5員環酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表す。また、R10は前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8またはR9と脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)〕
一般式(SD−1)について詳しく説明する。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団であり、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
1、R2およびR3の好ましい例について具体的に述べる。好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′
−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、
N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、
ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)
2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
ヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、もしくは多環芳香族環が用いられ、特に好ましいヘテロアリール基の例としては、例えば、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジンや等があげられ、これらは、さらにベンゾ縮環しても良く、また置換基を有していても良い。
また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これら置換基の内、更により好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフ
ォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られるR1、R2およびR3として好ましい置換アルキル基の、具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、
スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、等を挙げることができる。
1、R2およびR3として好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
1、R2およびR3として好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。この様な、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、
アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
次に、一般式(SD−1)におけるAについて説明する。Aは置換基を有しても良い芳香族環またはヘテロ環をあらわし、置換基を有しても良い芳香族環またはヘテロ環の具体例としては、一般式(SD−1)中のR1、R2およびR3で記載したものと同様のものが挙げられる。
本発明の一般式(SD−1)であらわされる増感色素は、上に示したような酸性核や、活性メチレン基を有する酸性核と、置換、もしくは非置換の、芳香族環またはヘテロ環との縮合反応によって得られるが、これらは特公昭59−28329を参照して合成することができる。
以下に一般式(SD−1)で表される化合物の好ましい具体例(D1)から(D28)を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、酸性核と塩基性核を結ぶ2重結合による異性体については明らかでなく、本発明はどちらかの異性体に限定されるものでもない。
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
次に一般式(SD−2)および部分構造式(a)について詳しく説明する。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、前記一般式(SD−1)のR1、R2およびR3と同様、それぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であり、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を表す。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10の好ましい例は、、前記一般式(SD−1)のR1、R2およびR3と同じである。
次に、部分構造式(a)中のZについて説明する。Zは隣接する原子と共同して置換基を有しても良い5員環酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表し、酸性核の具体例としては、1,3−ジカルボニル核(例えば、1,3−インダンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等)、ピラゾリノン核(例えば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾリル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等)、イソオキサゾリノン核(例えば、3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等)、オキシインドール核(例えば、1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、ローダニンおよびそのN置換誘導体、例えば、3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−フェニルローダニン、3−アリルローダニン、3−ベンジルローダニン、3−カルボキシメチルローダニン、3−カルボキシエチルローダニン、3−メトキシカルボニルメチルローダニン、3−ヒドロキシエチルローダニン、3−モルフォリノエチルローダニン等)、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核(即ち、2−チオ−2,4−(3H,4H)−オキサゾールジオン核、例えば、2−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等)、チアナフテノン核(例えば、3(2H)−チアナフテノン、3(2H)−チアノフテノン−1,1−ジオキサイド等)、2−チオー2,5−チアゾリジンジオン核(例えば、3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等)、2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等)、チアゾリジノン核(例えば、
4−チアゾリジノン、3−エチル−4−チアゾリジノン、2−エチルメルカプト−4−チアゾリジノン、2−メチルフェニルアミノ−4−チアゾリジノン等)、2−イミノ−2−オキサゾリン−4−オン核(即ち、擬ヒダントイン核)、2,4−イミダゾリジンジオン核(即ち、ヒダントイン核、例えば、2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン、1,3−ジエチル−2,4−イミダゾリジンジオン等)、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核(即ち、チオヒダントイン核、例えば、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、1,3−ジエチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等)、イミダゾリン−5−オン核(例えば、2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等)、フラン−5−オン核、チオインドキシル核(例えば、5−メチルチオインドキシル等)が挙げられ、これらの酸性核はさらに置換基を有してもよい。
以上に述べた一般式(SD−2)および部分構造式(a)で表されるカルバゾール系増感色素の内、下記一般式(SD−3)〜(SD−7)で表される構造を有する色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れた、感光性組成物を与えるため、特に好ましい。
Figure 0004448707
(一般式(SD−3)〜(SD−7)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、前記一般式(SD−2)および部分構造式(a)中のものと同義であり、X1、X2、X3およびX4はそれぞれ独立に、O原子、S原子またはNR20、YはO原子、S原子またはNR21を表し、R11〜R21はそれぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団であり、それぞれ互いに、置換基を有しても良い、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)
一般式(SD−3)〜(SD−7)について詳しく説明する。一般式(SD−3)〜(SD−7)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、一般式(SD−2)中と同義であり、R11〜R21はそれぞれ独立に、水素原子または一価の非金属原子団を表し、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。また、R13〜R19は、それぞれ互いに、置換基を有しても良い、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。R11〜R21の好ましい例としては、一般式(SD−2)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10の説明で述べたものと同様の例が挙げられる。
一般式(SD−3)〜(SD−7)中、X1、X2、X3およびX4はそれぞれ独立に、O原子、S原子またはNR20を表し、YはO原子、S原子またはNR21を表す。
前記一般式(SD−2)〜(SD−5)で表される増感色素は、上に示したような酸性核や、活性メチレン基を有する酸性核と、置換、もしくは非置換のカルバゾールカルボアルデヒドとの縮合反応によって得られるが、これらは特公昭59−28329を参照して合成することができる。
以下に一般式(SD−2)で表される化合物の好ましい具体例(D31)から(D61)を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、酸性核とカルバゾール骨格を結ぶ2重結合による異性体については明らかではなく、本発明はどちらかの異性体に限定されるものでもない。
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
Figure 0004448707
前記一般式(SD−1)で表される増感色素および一般式(SD−2)で表される増感色素に関しては、さらに、その感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させる事で、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの色素の不要な析出抑制を行う事ができる。また、増感色素と前述の光重合開始剤やその他のラジカル発生パート(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度の低い状態での感光性を著しく高める事ができる。
さらに、本発明の感光性平版印刷版の感光層の好ましい使用様態である、(アルカリ)水系現像液への処理適性を高める目的に対しては、親水性部位(カルボキシル基並びにそのエステル、スルホン酸基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基もしくは極性基)の導入が有効である。特にエステル型の親水性基は、該感光層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。その他、例えば、該感光層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために適宜置換基を導入する事ができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入する事で、結晶析出が著しく抑制できる。また、ホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させる事ができる。そのほか、目的に応じ、増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
これらの増感色素のどの構造を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて適宜設定できる。例えば、増感色素を2種以上併用することで、感光層への相溶性を高める事ができる。増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用する事により、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ感光層の膜物性の点からも有利である。該感光層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度(光学濃度)に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.2未満の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。
但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化せしめる目的に対しては、この様な低い吸光度の方がかえって硬化度をあげられる場合もある。また、吸光度が1を超える様な高い領域では、上記感光層表面で大部分の光が吸収され、より内部での硬化が阻害され、感光層の膜強度、基板密着性の不十分なものとなる。比較的薄い膜厚で使用する平版印刷版としては、増感色素の添加量は、感光層の光学濃度として0.2〜1.0、好ましくは0.25〜1となるように設定するのがよい。これは、通常、感光層成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
なお、増感色素の感光層における光学濃度は紫外・可視分光測定器(スペクトロフォトメーター)により測定することができる。
一般式(SD−1)又は(SD−2)で表される増感色素とともに併用する光重合開始剤としては、チタノセン等のメタロセン化合物、芳香族ケトン、ヘキサアリールビイミダゾール類、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、オニウム塩、活性エステル化合物、ハロメチル基含有化合物、アシルホスフィン化合物が好ましい。
<d.重合禁止剤>
また、本発明においては以上の基本成分の他に光重合層に用いる感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸
やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で光重合性感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体等の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
<e.その他の添加剤>
更に光重合性感光層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。染料および顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約20質量%が好ましい。加えて、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全組成物の10質量%以下が好ましい。
本発明の感光性平版印刷版の光重合性感光層における光重合性組成物には、塗布面質を向上するために界面活性剤を添加することができる。その被覆量は乾燥後の質量で通常約0.1g/m2〜約10g/m2、より好ましくは0.3〜5g/m2である。更に好ましくは0.5〜3g/m2である。
<f.溶剤>
本発明における感光性平版印刷版の感光性組成物を前述の下塗層上に塗布する際には種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート−3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は1〜50質量%が適当である。
〔D.保護層〕
また、通常、前記光重合性感光層の上には、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性の保護層が設けられる。酸素遮断性保護層に含まれる水溶性ビニル重合体としては、ポリビニルアルコール、およびその部分エステル、エーテル、およびアセタール、またはそれらに必要な水溶性を有せしめるような実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するその共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールとしては、71〜100%加水分解され、重合度が300〜2400の範囲のものが挙げられる。具体的には株式会社クラレ製PVA-105, PVA-110, PVA-117, PVA-117H, PVA-120, PVA-124, PVA-124H, PVA-CS, PVA-CST,
PVA-HC, PVA-203, PVA-204, PVA-205, PVA-210, PVA-217, PVA-220, PVA-224, PVA-217EE, PVA-217E,PVA-220E, PVA-224E, PVA-405, PVA-420, PVA-613, L-8等が挙げられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体が挙げられる。その他有用な重合体としてはポリビニルピロリドン、ゼ
ラチンおよびアラビアゴム等が挙げられ、これらは単独または併用して用いても良い。
本発明における感光性平版印刷版において酸素遮断性保護層を塗布する際に用いる溶媒としては、純水が好ましいが、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類を純水と混合しても良い。そして塗布溶液中の固形分の濃度は1〜20質量%が適当である。本発明における上記酸素遮断性保護層には、さらに塗布性を向上させるための界面活性剤、皮膜の物性を改良するための水溶性の可塑剤等の公知の添加剤を加えても良い。水溶性の可塑剤としては、たとえばプロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等がある。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーなどを添加しても良い。その被覆量は乾燥後の質量で約0.1g/m2〜約15g/m2の範囲が適当である。より好ましくは1.0g/m2〜約5.0g/m2である。
〔E.製版方法〕
次に本発明の感光性平版印刷版からの平版印刷版の製版方法について詳細に説明する。上述した感光性平版印刷版は画像露光した後、通常pHが11.0〜12.7、好ましくは11.5〜12.5であるアルカリ現像液で現像される。
(現像液)
上記の平版印刷版の製版方法に使用される現像液は、特に限定されないが、例えば、無機アルカリ塩とノニオン系界面活性剤とを含有し、pHが11.0〜12.5であるものが好適に使用される。
無機アルカリ塩としては適宜使用可能であるが、例えば、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、同リチウム、珪酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、同リチウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、及び同アンモニウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いても良い。
珪酸塩を使用する場合には、珪酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属またはアンモニウム基を表す。)との混合比率及び濃度の調製により、現像性を容易に調節することが出来る。前記アルカリ水溶液の中でも前記酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものが好ましい。前記SiO2/M2Oは、アルカリ水溶液の質量に対して1〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、4〜7質量%が最も好ましい。この濃度が1質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、10質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
また、アルカリ濃度の微少な調整、光重合性感光層の溶解性の補助の目的で、補足的に有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらのアルカリ剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
界面活性剤としては適宜使用可能であるが、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビ
タンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤等を挙げることができるが、特に好ましいのはポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤である。
ポリオキシアルキレンエーテル基を含有する界面活性剤としては、下記一般式(A)の構造を有するものが好適に使用される。
R40−O−(R41-O)pH (A)
式中、R40は、置換基を有しても良い炭素数3〜15のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、又は置換基を有しても良い炭素数4〜15の複素芳香族環基(尚、置換基としては炭素数1〜20のアルキル基、Br、Cl、I等のハロゲン原子、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、炭素数7〜17のアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜15のアシル基が挙げられる。)を示し、R41は、置換基を有しても良い炭素数1〜100のアルキレン基(尚、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基が挙げられる。)を示し、pは1〜100の整数を表す。
上記式(A)の定義において、「芳香族炭化水素基」の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アンスリル基、ビフェニル基、フェナンスリル基等が挙げられ、また「複素芳香族環基」の具体例としては、フリル基、チオニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラニル基、ピリジニル基、アクリジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオニル基、ベンゾピラニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。
また式(A)の(R41−O)pの部分は、上記範囲であれば、2種又は3種の基であっても良い。具体的にはエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソプロピルオキシ基、エチレンオキシ基とブチレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソブチレン基等の組み合わせのランダム又はブロック状に連なったもの等が挙げられる。本発明において、ポリオキシアルキレンエーテル基を有する界面活性剤は単独又は複合系で使用され、現像液中1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%添加することが効果的である。添加量が少ないと現像性の低下がみられ、逆に多すぎると現像のダメージが強くなり、印刷版の耐刷性を低下させてしまう。
また上記式(A)で表されるポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類が挙げられる。
これら界面活性剤は単独、もしくは組み合わせて使用することができる。また、これら界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で0.1〜20質量%の範囲が好適に使用される。
本発明の感光性平版印刷版に使用される現像液のpHは、特に限定されないが、好ましくは11.0〜12.7、更に好ましくは11.5〜12.5である。11.0以上であると画像形成が確実にでき、12.7以下であると過現像にならず、露光部の現像でのダメージを受けない。
また、該現像液の導電率は、3〜30mS/cmである事が好ましい。3mS/cm以上であると、アルミニウム支持体表面の光重合性感光層の溶出が確実に可能となり、印刷で汚れがなく、30mS/cm以下であると、塩濃度が高くなり過ぎないため、光重合性感光層の溶出速度が極端に遅くなることがなく、未露光部に残膜も生じない。特に好ましい導電率は、5〜20mS/cmの範囲である。
なお、本発明の感光性平版印刷版の現像に用いるより好適な現像液は、下記一般式(B)で表される非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3〜30mS/cmの電導度を有する現像液である。
A−W (B)
(式中、AはA−HのlogPが1.5以上の疎水性有機基を表し、WはW−HのlogPが1.0未満の非イオン性の親水性有機基を表す。)。
ここで、logPとは、C. Hansch, A.Leo, "Substituent Constants for Correlation
Analysis in Chemistry and Biology", J. Wile & Sons, 1979に記載の疎水性パラメータとして一般的に使用されるものであり、目的とする分子(A−H及びW−H)のオクタノール/水2層系に対して、各層に分配される割合から算出した平衡濃度比Pの対数として定義される。ここでは、一般式(B)中のA及びWの各基を特定する指標として使用しており、A及びWの各有機基に便宜的に水素原子結合させた、A−H、W−H構造に対して、A.K.Ghose、et.al.J. Comput.Chem. 9,80(1988)に記載の方法に基づき、既知データより計算し、求めたものである。
(露光及び現像処理)
本発明における感光性平版印刷版を、例えば、カーボンアーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンイオンレーザー、FD・YAGレーザー、ヘリウムネオンレーザー、半導体レーザー(350nm〜600nm)等の従来公知の活性光線で画像露光した後、現像処理することにより、アルミニウム支持体表面に画像を形成することができる。画像露光後、現像までの間に、光重合性感光層の硬化率を高める目的で50℃〜150℃の温度で1秒〜5分の時間の加熱プロセスを設けることを行っても良い。
また、本発明における感光性平版印刷版の光重合性感光層の上には、前述したように、通常、酸素遮断性を有するオーバーコート層が設けてあり、上記の現像液を用いて、オーバーコート層の除去と光重合性感光層未露光部の除去を同時に行う方法、または、水、温水でオーバーコート層を先に除外し、その後未露光部の光重合性感光層を現像で除去する方法が知られている。これらの水または温水には特開平10-10754号公報に記載の防腐剤等、特開平8-278636号公報に記載の有機溶剤等を含有させることができる。
本発明における感光性平版印刷版の前記現像液による現像は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した感光性平版印刷版を現像液に浸漬してブラシで擦る等により行う。
さらに自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量に応じて現像液が疲労してくる
ので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させても良い。
このようにして現像処理された感光性平版印刷版は特開昭54-8002号、同55-115045号、同59-58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明において感光性平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
上記のような処理により得られた印刷版は特開2000-89478号公報に記載の方法による後露光処理やバーニングなどの加熱処理により、耐刷性を向上させることができる。
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1〜6及び比較例1〜4〕
<支持体の作製>
厚さ0.3mmのJIS−A−1050のアルミニウム板を用いて、下記に示す工程を組み合わせて処理することで、支持体A、B、C、D、Eを作製した。
(基板A)
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、12g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。これを50Hzの正弦波の交番波形電流を用いて、塩酸濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃で電流密度16A/dm2、電気量400c/dm2で電解粗面化処理を行い、水洗した。次に苛性ソーダ36g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温35℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した後、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中で10秒間デスマット処理を施し、水洗した。更に液温20℃の10%硫酸水溶液中で電流密度6A/dm2の条件下で陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当となるように陽極酸化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、Ra=0.44μmであった。
(基板B)
電解粗面化処理の電流密度12A/dm2、電気量300C/dm2と変更した以外は基板Aと同様に作製し、基板Bとした。表面粗さは0.34μmであった。
(基板C)
電解粗面化処理の電流密度24A/dm2、電気量600C/dm2と変更した以外は基板Aと同様に作製し、基板Cとした。表面粗さは0.34μmであった。
(基板D)
電解粗面化処理後の苛性ソーダのエッチング処理の液温を30℃と変更した以外は基板Aと同様に作製し、基板Dとした。
(基板E)
電解粗面化処理の苛性ソーダのエッチング処理の液温を45℃と変更した以外は基板Aと同様に作製し、基板Eとした。
(基板F)
基板Aを液温20℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液に10秒間浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.5mg/m2であった。
(基板G)
電解粗面化処理の苛性ソーダのエッチング処理の液温を60℃と変更した以外は基板A
と同様に作製し、基板Gとした。
(基板H)
次の(a)〜(f)の順番に処理を行い、基板Hを作製した。
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。
(d)50Hzの正弦波の交番波形電流を用いて、塩酸濃度15g/l、硫酸イオン濃度3000ppm、アルミイオン濃度10g/l、液温30℃で電流密度16A/dm2、電気量400C/dm2で電解粗面化処理を行い、水洗した。
(e)苛性ソーダ35g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温35℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した後、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中で10秒間デスマット処理を施し、水洗した。
(f)液温20℃の10%硫酸水溶液中で電流密度6A/dm2の条件下で陽極酸化皮膜量が2.5g/m2となるように陽極酸化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、Ra=0.46μmであった。
(基板I)
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は50μm、最大粒径は150μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を8g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で
、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。 電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を60℃で行い、アルミニウム板を1.0g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
(g)液温20℃の10%硫酸水溶液中で電流密度6A/dm2の条件下で陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当となるように陽極酸化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、Ra=0.55μmであった。
(基板J)
基板Iにおいて(a)機械的粗面化処理を行わなかったこと及び(e)アルカリエッチング処理のエッチング処理温度を32℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解するように変更したことを除いて基板Iと同様に作製し、基板Jとした。
<下塗り層、感光層及びオーバーコート層の形成>
このように処理された基板上に、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体(60/25/15モル比、分子量Mn=3万)を、水/メタノール=5g/95gに溶解した液を塗布し、80℃、30秒間乾燥した。この下塗り層の厚みは3mg/m2であった。この上に、下記組成の高感度光重合性組成物P−1を乾燥塗布質量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
(光重合性組成物P−1)
エチレン性不飽和結合含有化合物(A1) 1.5 質量部
線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1) 2.0 質量部
増感剤(C1) 0.15質量部
光重合開始剤(D1) 0.2 質量部
ε―フタロシアニン(F1)分散物 0.02質量部
フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF177 0.03質量部
(大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 9.0 質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.5 質量部
トルエン 11.0 質量部
Figure 0004448707
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2.5g/m2となるように塗布し、120℃で3分間乾燥させ、感光性平版印刷版を得た。
〔参考例1〕
実施例1の感光層の高分子バインダーB1を下記高分子バインダーB2に変えた以外は実施例1と同様にして感光性平版印刷版を作製した。
Figure 0004448707
(1)大ピット構造の平均開口径
SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率1000倍で撮影し、得られたSEM写真においてピットの周囲が環状に連なっている大ピットを50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
(2)小ピット構造の平均開口径
高分解能SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
(3)小ピット構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において開口径0.8μm以下の小波ピットを20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出した。
(4)表面粗さ
触針式粗さ計(sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均表面粗さRaを5回測定し、その平均値を平均粗さとした。2次元粗さ測定は、以下の条件で行った。
Cut Off: 0.8、傾斜補正:FLAT ML、測定長:3mm、縦倍率:10000倍、走査速度:0.3mm/sec、触針先端径:2μm
(5)表面積ΔS
上記で得られた平版印刷版用支持体(基板)の表面について、以下のようにしてΔSを求めた。結果を第1表に示す。
原子間力顕微鏡(SP13700、セイコー電子工業社製)により表面形状を測定し、3次元データを求める。
即ち、感光性平版印刷版の支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バ
ネ定数12〜20N/mのもの(SI−DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
計測の際は、表面の50μm□を512×512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
上記で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sxとする。
表面積比ΔSは、得られた実面積Sxと幾何学的測定面積Soとから、下記式により求められる。
ΔS=(Sx−So)/So×100(%)
SoはSo=Lx×Lyで求められる。LxおよびLyは、それぞれ測定領域(長方形)のx方向およびy方向の辺の長さを表し、本発明においてはLx=Ly=50μmである。
(6)Si量測定
蛍光X線分析装置を用いて検量線法によりSi原子の量(mg/m2)として測定した。すなわち、蛍光X線分析装置として理学電機工業(株)製RIX3000を用い、下記条件にてSi−Kαスペクトルのピーク高さよりSi原子の量を測定した。
装置 :理学電機工業(株)製RIX3000
X線管球 :Rh
測定スペクトル :Si−Kα
管電圧 :50kV
管電流 :50mA
スリット :COARSE
分光結晶 :RX4
検出器 :F−PC
分析面積 :30mmφ
ピーク位置(2θ) :144.75deg.
バックグランド(2θ) :140.70deg.,146.85deg.
積算時間 :80秒/sample
(7)感度
得られた感光性平版印刷版を富士写真フイルム(株)製Vx9600CTP(光源波長:405nm)にて感材上の露光量を0.01〜0.2mJ/cm2まで変化させて画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−850PIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。この時、十分な画像濃度が得られ、良好な画像ができる光量を調べて感度として評価とした。露光量が小さいほど感度が高い。その結果を表4に示す。
(アルカリ現像液組成)
水酸化カリウム 0.15g
ポリオキシエチレンナフチルエーテル(n=13) 5.0 g
キレスト400(キレート剤) 0.1 g
水 94.75g
(8)耐刷性
得られた感光性平版印刷版を富士写真フイルム(株)製Vx9600CTP(光源波長:405nm)にて感材上の露光量が0.05mJ/cm2になるように調整し画像状に描き込みを行った。
その後、上記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−850PIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表4に示す。
(9)バーニング処理後の耐刷性
上記耐刷性の評価同様に現像して得られた平版印刷版の版面を富士写真フイルム(株)製のバーニング整面液BC−3で拭いた後、約240℃で7分間、バーニング処理を行った。その後、水洗し、富士写真フイルム(株)製ガムGU−7を水で体積を2倍に希釈した液で版面を処理した。
その後、耐刷性の評価同様に、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、バーニング処理後の耐刷性を評価した。結果を表4に示す。
上記で得られた平版印刷版の汚れ性および水上がりの見易さを下記の方法で評価した。(10)汚れ難さ
三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で以下のように評価した。結果を表4に示す。
○: ブランケットの汚れなし。
△: ブランケットにインキの着色が僅かにみられる。
×: ブランケットにインキの着色が著しい。
(11)水上がりの見易さ
小森コーポレーション社製のリスロン印刷機に得られた平版印刷版を取り付け、湿し水の供給量を増加させながら版面の非画像部の光り具合を目視で観察し、光り始めたときの湿し水の供給量で検版性(水上がりの見易さ)を評価した。
結果を表4に示す。
○: 中量の湿し水で版が光らない。
△: 少量〜中量の湿し水で版が光る。
×: 少量の湿し水で版が光る。
Figure 0004448707
表4から明らかな様に本発明は比較例に比べ、感度、耐刷性、バーニング耐刷性、汚れ難さ、水上がりの見易さの性能において、バランス良く、良い結果を与えることが分かる。
〔実施例7〜12及び比較例6〜9〕
<支持体>
実施例7〜12においては、上記支持体A〜F、比較例6〜9においては上記支持体G〜Jを使用した。
<下塗り層、感光層及びオーバーコート層の形成>
各支持体上に、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体(60/25/15モル比、分子量Mn=3万)を、水/メタノール=5g/95gに溶解した液を塗布し、80℃、30秒間乾燥した。この下塗り層の厚みは3mg/m2であった。この上に、下記組成の高感度光重合性組成物P−2を乾燥塗布質量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
(光重合性組成物P−2)
エチレン性不飽和結合含有化合物(A2) 1.5 質量部
線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B3) 2.0 質量部
増感剤(C1) 0.15質量部
光重合開始剤(D1) 0.2 質量部
ε―フタロシアニン(F1)分散物 0.02質量部
フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF177 0.03質量部
(大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 9.0 質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.5 質量部
トルエン 11.0 質量部
Figure 0004448707
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2.5g/m2となるように塗布し、120℃で3分間乾燥させ、感光性平版印刷版を得た。
このようにして、支持体A〜Jを使用した実施例7〜12及び比較例6〜9の感光性平版印刷版を得た。
〔実施例13〜17および比較例10〕
実施例7の感光層の成分A1、B1、C1を下記化合物に変えた以外は実施例7と同様に感光性平版印刷版を作製した。
Figure 0004448707
(12)感度
得られた感光性平版印刷版のうち実施例7〜15および比較例6〜9のものを富士写真フイルム(株)製Vx9600CTP(光源波長:405nm)にて、実施例16〜17および比較例10のものをCSI社製PlateJet8にて、それぞれ感材上の露光量を0.01〜0.2mJ/cm2まで変化させて画像状に描き込みを行った。
その後、先の実施例と同様のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−850PIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。この時、十分な画像濃度が得られ、良好な画像ができる光量を調べて感度として評価とした。露光量が小さいほど感度が高い。その結果を表6に示す。
(13)耐刷性
得られた感光性平版印刷版のうち実施例7〜15および比較例6〜9のものを富士写真フイルム(株)製Vx9600CTP(光源波長:405nm)にて、実施例16〜17および比較例10のものをCSI社製PlateJet8にて、感材上の露光量が0.05mJ/cm2になるように調整し画像状に描き込みを行った。
その後、先の実施例と同様のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP−850PIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表6に示す。
また、バーニング処理後の耐刷性、汚れ難さ、水上がりの見易さについても、実施例1〜6、比較例1〜4及び参考例1におけるのと同様にして評価し、結果を表6に示した。
Figure 0004448707
表6から明らかな様に本発明は比較例に比べ、感度、耐刷性、バーニング耐刷性、汚れ難さ、水上がりの見易さの性能において、バランス良く、良い結果を与えることが分かる。
〔実施例18〜23及び比較例11〜14〕
<支持体>
実施例18〜23においては、上記支持体A〜F、比較例11〜14においては上記支持体G〜Jを使用した。
<下塗り層、感光層及びオーバーコート層の形成>
このように処理された基板上に、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体(60/25/15モル比、分子量Mn=3万)を、水/メタノール=5g/95gに溶解した液を塗布し、80℃、30秒間乾燥した。この下塗り層の厚みは3mg/m2であった。この上に、下記組成の高感度光重合性組成物P−3を乾燥塗布質量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
(光重合性組成物P−3)
エチレン性不飽和結合含有化合物(A1) 1.5 質量部
線状有機高分子重合体(高分子バインダー)(B1) 2.0 質量部
増感剤(C2) 0.15質量部
光重合開始剤(D1) 0.2 質量部
ε―フタロシアニン(F1)分散物 0.02質量部
フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF177 0.03質量部
(大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 9.0 質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.5 質量部
トルエン 11.0 質量部
Figure 0004448707
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2.5g/m2となるように塗布し、120℃で3分間乾燥させ、感光性平版印刷版を得た。
このようにして、支持体A〜Jを使用した実施例18〜23及び比較例11〜14の感光性平版印刷版を得た。
〔実施例24〜27〕
実施例18の感光層の成分A1、B1、C1を表7に示す化合物に変えた以外は実施例18と同様に感光性平版印刷版を作製した。
Figure 0004448707
実施例26に用いるポリウレタン樹脂化合物の組成
Figure 0004448707
なお、上記ポリウレタン樹脂化合物の酸価は1.40meq/g、重量平均分子量(GPCによるポリスチレン換算)は110,000である。
〔比較例15及び16〕
各々、増感色素の量を0.05質量部及び5質量部にかえた以外は実施例18と同様にして感光性平版印刷版を作製した。
〔比較例17及び18〕
各々、感光層の塗布質量を0.4g/m2及び2.2g/m2にかえた他は実施例18と同様にして感光性平版印刷版を作製した。
上記で作製した感光性平版印刷版について、実施例1〜6、比較例1〜4及び参考例1におけるのと同様に、露光、現像、評価を行った。
尚、ベタ部横のカブリについては以下のように評価した。
(14)ベタ部横のカブリ
画像の5cm角以上のベタを作成し、非画像部との境に発生するカブリの光学濃度を目視で判定した。
○: カブリ発生なし
△: 僅かに発生
×: 明らかにカブリとして識別可能
結果を表8に示す。
Figure 0004448707
表8から明らかな様に本発明は比較例に比べ、露光ラチチュードが広く、感度、耐刷性、バーニング耐刷性、汚れ難さ、水上がりの見易さの性能において、バランス良く、良い結果を与えることが分かる。
本発明に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例を示す断面図である。 本発明に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の他の一例を示す断面図である。 本発明に用いられるラジアル型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例を示す断面図である。 本発明において機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
符号の説明
2、20 交流電解槽
4A、4B、4C、26A、26B 主極
6A、6B、14A、14B 搬送ローラ
8A、16A 導入ローラ
8B、16B 導出ローラ
10、34 補助電解槽
12、36 補助電極
22 交流電解槽本体
22A 開口部
24 送りローラ
28A、28B 給液ノズル
30A 上流側案内ローラ
30B 下流側案内ローラ
32 溢流槽
34A 補助電解槽の底面
35 上流側案内ローラ
51 アルミニウム合金板
52、54 ローラ状ブラシ
53 研磨スラリー液
55、56、57、58 支持ローラ
100、102、104 電解粗面化処理装置
a 搬送方向
T 搬送面
Tac 電源
Th1、Th2、Th3、Th4、Th5 サイリスタ
W アルミニウムウェブ

Claims (8)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金板を少なくとも塩酸を含有する水溶液を用いて電気化学的に粗面化処理した後、陽極酸化処理をした支持体上に、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、増感色素、光重合開始剤、高分子バインダーを含有する光重合層を設けた感光性平版印刷版であって、該支持体が大小ピットの2重構造を有し、大ピットの平均開口径が2〜10μmかつ小ピットの平均開口径が0.1〜0.8μm、小ピットの径と深さの比が小ピットの径:深さとして1:0.2〜1:0.6、下記式で表される表面積ΔSが40以下であり、光重合層の塗布質量が0.5〜2.0g/m 2 、光重合層の増感色素の光学濃度が0.2〜1.0の範囲にあり、光重合層の高分子バインダーが下記一般式(M1)で表されるアミド基を側鎖に有する有機高分子化合物及び少なくとも下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の化合物より合成されるポリウレタン樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする感光性平版印刷版。
    ΔS= (Sx−So)/So ×100%
    (Sxは表面の50μm□を512×512点測定して求められる実表面積を、Soは幾何学的測定面積を表す。)
    Figure 0004448707

    (一般式(M1)中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基または置換スルホニル基を表し、R1とR2とが互いに結合して環構造を形成しても良い。)
    (i)少なくとも1種のジイソシアネート化合物、
    (ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有する少なくとも1種のジオール化合物、
    (iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物、及び
    (iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物、
    ただし、(iii)及び(iv)の化合物はカルボキシル基を有するジオール化合物を除く化合物である。
  2. 該光重合層上に、酸素遮断性のオーバーコート層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版
  3. 光重合層が含有する増感色素が下記一般式(SD−1)または下記一般式(SD−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性平版印刷版。
    Figure 0004448707

    (一般式(SD−1)中、Aは置換基を有しても良い芳香族環またはヘテロ環をあらわし、Xは酸素原子又は硫黄原子ないし−N(R3)−をあらわす。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団であり、AとR1及びR2とR3はそれぞれ互いに、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)
    Figure 0004448707

    〔一般式(SD−2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表す。但し、R1およびR3のうちの少なくとも一つは、下記部分構造式(a)に示す一価の有機残基で表される。また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に、脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
    Figure 0004448707

    (部分構造式(a)中、R10は、水素原子または一価の非金属原子団を表し、Zは隣接す
    る原子と共同して、5員環酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表す。また、R10は前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8またはR9と脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。)〕
  4. 前記(iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物における該logP値が、−8〜−1であり、かつ、前記(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物における該logP値が、2〜15であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
  5. 前記ポリウレタン樹脂が、下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の化合物より合成され、酸価が0.6〜1.2meq/gのポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
    (i)脂肪族ジイソシアネート化合物(下記式(1)においてLが脂肪族炭化水素基)の少なくとも一種、芳香族ジイソシアネート化合物(下記式(1)においてLが芳香族炭化水素基)の少なくとも1種の組み合わせである2種以上のジイソシアネート化合物、
    (ii)少なくとも一種の下記一般式(2)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物、
    (iii)logP値が−5〜−1.2の少なくとも1種のジオール化合物、及び
    (iv)logP値が3〜10の少なくとも1種のジオール化合物。
    Figure 0004448707

    式(1)中、Lはイソシアネート基と反応しない他の官能基を有していてもよい。
    Figure 0004448707

    式(2)中、R 1 は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ基を示し、L 10 、L 11 、L 12 はそれぞれ同一でも相違していてもよく、単結合、置換基を有していてもよい2価の脂肪族または芳香族炭化水素基を示す。なおL 10 、L 11 、L 12 中にイソシアネート基と反応しない他の官能基を有していてもよく、R 1 、L 10 、L 11 、L 12 のうちの2または3個で環を形成してもよい。
  6. 前記(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物が、下記式(A)、(B)、(C)、(D)または(E)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
    Figure 0004448707

    式中、R 6 は水素原子またはメチル基を表す。ただし、式(A)においてはR 6 はメチル基を表す。また、Xは、以下の基を表す。
    Figure 0004448707

    式中、a,b,c,d,e,f,gはそれぞれ2以上の整数を示す。
  7. 前記(iv)logP値が0より大きい少なくとも1種のジオール化合物が、前記式(A)で表される化合物であり、かつaが15〜30を示すことを特徴とする請求項6に記載の感光性平版印刷版。
  8. 前記(iii)logP値が0未満の少なくとも1種のジオール化合物が、下記一般式(A’)で表されるエチレングリコール化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
    HO−(CH 2 CH 2 O) n −H (A’)(式中、nは4〜10を表す。)
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