図1〜図5は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロミラー素子X1を表す。図1は、マイクロミラー素子X1の平面図であり、図2は、マイクロミラー素子X1の一部省略平面図である。また、図3〜図5は、各々、図1の線III−III、線IV−IV、および線V−Vに沿った断面図である。
マイクロミラー素子X1は、揺動部10と、フレーム21と、捩れ連結部22と、櫛歯電極23A,23Bと、配線部24とを備え、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、いわゆるSOI(silicon on insulator)基板である材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。マイクロミラー素子X1における上記の各部位は主に第1シリコン層および/または第2シリコン層に由来して形成されるところ、図の明確化の観点より、図1においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位について、斜線ハッチングを付して表す。また、図2は、マイクロミラー素子X1において第2シリコン層に由来する構造を表す。
揺動部10は、ミラー支持部11と、アーム部12と、櫛歯電極13A,13Bとを有する。
ミラー支持部11は、第1シリコン層に由来する部位である。ミラー支持部11の表面には、光反射機能を有するミラー面11aが設けられている。ミラー面11aは、例えば、第1シリコン層上に成膜されたCr層およびその上のAu層よりなる積層構造を有する。また、ミラー支持部11について図1に示す長さL1は、例えば20〜300μmである。
アーム部12は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー支持部11から延出する。アーム部12について図1に示す長さL2は、例えば10〜100μmである。
櫛歯電極13Aは、複数の電極歯13aからなる。複数の電極歯13aは、アーム部12から各々が延出し、且つ、アーム部12の延び方向に互いに離隔する。櫛歯電極13Bは、複数の電極歯13bからなる。複数の電極歯13bは、電極歯13aとは反対の側にアーム部12から各々が延出し、且つ、アーム部12の延び方向に互いに離隔する。電極歯13a,13bは、主に第1シリコン層に由来する部位である。本実施形態では、図1に示すように、電極歯13a,13bの延び方向とアーム部12の延び方向とは直交し、電極歯13aは、図4に示すように素子厚さ方向Hに起立しており、電極歯13bも素子厚さ方向Hに起立している。また、本実施形態では、図1に示すように、電極歯13a,13bの幅は一様である。このような櫛歯電極13Aないし電極歯13aと櫛歯電極13Bないし電極歯13bとは、アーム部12を介して電気的に接続されている。
フレーム21は、第2シリコン層に由来する部位であり、所定の機械的強度を有してフレーム21内の構造を支持する。フレーム21の幅L3は、例えば5〜50μmである。
捩れ連結部22は、一対のトーションバー22aからなる。各トーションバー22aは、主に第1シリコン層に由来する部位であり、揺動部10のアーム部12とフレーム21とに接続してこれらを連結する。トーションバー22aにより、フレーム21とアーム部12とは電気的に接続される。また、トーションバー22aは、素子厚さ方向Hにおいて、図4に示すようにアーム部12より薄肉である。このような捩れ連結部22ないし一対のトーションバー22aは、揺動部10ないしミラー支持部11の揺動動作の揺動軸心A1を規定する。揺動軸心A1は、アーム部12の延び方向と直交する。したがって、アーム部12の延び方向に直交する方向にアーム部12から延出する上述の電極歯13a,13bの延び方向は、揺動軸心A1に対して平行である。このような揺動軸心A1は、好ましくは、揺動部10の重心またはその近傍を通る。
本実施形態では、各トーションバー22aに代えて、第1シリコン層において成形されて並列する一組のトーションバーを設けてもよい。この場合、当該一組のトーションバーの間隔は、フレーム21からアーム部12に近付くにつれて漸増するのが好ましい。マイクロミラー素子X1では、一対のトーションバー22aに代えて、このように並列する2つのトーションバーを2組設けることにより、揺動軸心A1を規定してもよい。後述のマイクロミラー素子においても同様である。
櫛歯電極23Aは、櫛歯電極13Aと協働して静電引力を発生するための部位であり、複数の電極歯23aからなる。また、櫛歯電極23Aは、主に第2シリコン層に由来する部位であり、図1および図2に示すようにフレーム21に固定されている。複数の電極歯23aは、フレーム21から各々が延出し、且つ、アーム部12の延び方向に互いに離隔する。本実施形態では、図1に示すように、電極歯23aの延び方向とアーム部12の延び方向とは直交し、電極歯23aの延び方向は揺動軸心A1に対して平行である。また、本実施形態では、図1に示すように電極歯23aの幅は一様であり、図4に示すように電極歯23aは素子厚さ方向Hに起立している。
このような櫛歯電極23Aは、櫛歯電極13Aと共に駆動機構を構成する。櫛歯電極13A,23Aは、揺動部10の例えば非動作時には、図4および図5に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極13A,23Aは、揺動部10の揺動動作時において互いに当接しないように、それらの電極歯13a,23aが位置ずれした態様で配されている。本実施形態では、隣り合う2つの電極歯13a間の距離は全て同じであり、隣り合う2つの電極歯23a間の距離は全て同じであり、アーム部12の延び方向において2つの電極歯23aの間に位置する電極歯13aは、2つの電極歯23a間の中心に位置する。
櫛歯電極23Bは、櫛歯電極13Bと協働して静電引力を発生するための部位であり、複数の電極歯23bからなる。また、櫛歯電極23Bは、主に第2シリコン層に由来する部位であり、図1および図2に示すようにフレーム21に固定されている。複数の電極歯23bは、フレーム21から各々が延出し、且つ、アーム部12の延び方向に互いに離隔する。櫛歯電極23Bないし電極歯23bは、フレーム21を介して櫛歯電極23Aないし電極歯23aと電気的に接続されている。本実施形態では、図1に示すように、電極歯23bの延び方向とアーム部12の延び方向とは直交し、電極歯23bの延び方向は揺動軸心A1に対して平行である。また、本実施形態では、図1に示すように電極歯23bの幅は一様であり、電極歯23aと同様に電極歯23bも素子厚さ方向Hに起立している。
このような櫛歯電極23Bは、櫛歯電極13Bと共に駆動機構を構成する。櫛歯電極13B,23Bは、揺動部10の例えば非動作時には、図5に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極13B,23Bは、揺動部10の揺動動作時において互いに当接しないように、それらの電極歯13b,23bが位置ずれした態様で配されている。本実施形態では、隣り合う2つの電極歯13b間の距離は全て同じであり、隣り合う2つの電極歯23b間の距離は全て同じであり、アーム部12の延び方向において2つの電極歯23bの間に位置する電極歯13bは、2つの電極歯23b間の中心に位置する。
配線部24は、第1シリコン層に由来する部位であり、絶縁層を介してフレーム21に固定され且つ各トーションバー22aと構造的かつ電気的に接続している。また、配線部24は、素子厚さ方向Hにおいて、図4および図5に示すように揺動部10よりも薄肉であり、且つ、図1、図4、および図5に示すようにフレーム21よりも幅狭である。このような配線部24は、本発明における薄肉幅狭構造部に相当する。
マイクロミラー素子X1においては、図6(a)に示すような配線部25、および、図6(b)に示すような配線部26を、配線部24の全て又は一部に代えて設けてもよい。配線部25は、配線部24と同様に、第1シリコン層に由来する部位であり且つ絶縁層を介してフレーム21に固定されている。また、配線部25は、素子厚さ方向Hにおいて揺動部10よりも薄肉であり、且つ、フレーム21と同じ幅を有する。このような配線部25は、本発明における薄肉構造部に相当する。一方、配線部26は、配線部24と同様に、第1シリコン層に由来する部位であり且つ絶縁層を介してフレーム21に固定されている。また、配線部26は、素子厚さ方向Hにおいて揺動部10と同じ厚さを有し、且つ、フレーム21よりも幅狭である。このような配線部26は、本発明における幅狭構造部に相当する。
図7および図8は、マイクロミラー素子X1の製造方法の一例を表す。この方法は、バルクマイクロマシニング技術によりマイクロミラー素子X1を製造するための一手法である。図7および図8においては、図8(d)に示すミラー支持部M、アーム部AR、フレームF1,F2、トーションバーT1,T2、一組の櫛歯電極E1,E2、および配線部W1,W2の形成過程を、一の断面の変化として表す。当該一の断面は、加工が施される
材料基板(多層構造を有するウエハ)における単一のマイクロミラー素子形成区画に含まれる複数の所定箇所の断面を、モデル化して連続断面として表したものである。ミラー支持部Mは、ミラー支持部11の一部に相当する。アーム部ARは、アーム部12に相当し、アーム部12の横断面を表す。フレームF1,F2は、各々、フレーム21に相当し、フレーム21の横断面を表す。トーションバーT1は、トーションバー22aに相当し、トーションバー22aの延び方向の断面を表す。トーションバーT2は、トーションバー22aに相当し、トーションバー22aの横断面を表す。櫛歯電極E1は、櫛歯電極13A,13Bの一部に相当し、電極歯13a,13bの横断面を表す。櫛歯電極E2は、櫛歯電極23A,23Bの一部に相当し、電極歯23a,23bの横断面を表す。配線部W1,W2は、配線部24に相当し、配線部24の横断面を表す。
マイクロミラー素子X1の製造においては、まず、図7(a)に示すような材料基板100を用意する。材料基板100は、シリコン層101,102と、当該シリコン層101,102間の絶縁層103とからなる積層構造を有するSOI基板である。シリコン層101,102は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。絶縁層103は例えば酸化シリコンよりなる。シリコン層101の厚さは例えば10〜100μmであり、シリコン層102の厚さは例えば50〜500μmであり、絶縁層103の厚さは例えば0.3〜3μmである。
次に、図7(b)に示すように、シリコン層101上にミラー面11aを形成する。ミラー面11aの形成においては、まず、スパッタリング法により、シリコン層101に対して例えばCr(50nm)およびこれに続いてAu(200nm)を成膜する。次に、所定のマスクを介してこれら金属膜に対してエッチング処理を順次行うことにより、ミラー面11aをパターン形成する。Auに対するエッチング液としては、例えば、ヨウ化カリウム−ヨウ素水溶液を使用することができる。Crに対するエッチング液としては、例えば硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液を使用することができる。マイクロミラー素子X1の所定箇所に電極パッドを設ける場合には、ミラー面11aとともに当該電極パッドを形成してもよい。電極パッドの形成手法はミラー面11aの形成手法と同様である。
次に、図7(c)に示すように、シリコン層101上には酸化膜パターン110およびレジストパターン111を形成し、シリコン層102上に酸化膜パターン112を形成する。酸化膜パターン110は、揺動部10(ミラー支持部M,アーム部AR,櫛歯電極E1)に対応するパターン形状を有する。レジストパターン111は、両トーションバー22a(トーションバーT1,T2)および配線部24(配線部W1,W2)に対応するパターン形状を有する。また、酸化膜パターン112は、フレーム21(フレームF1,F2)および櫛歯電極23A,23B(櫛歯電極E2)に対応するパターン形状を有する。
次に、図7(d)に示すように、酸化膜パターン110およびレジストパターン111をマスクとして、DRIE(deep reactive ion etching)により、シリコン層101に対し所定の深さまでエッチング処理を行う。所定の深さとは、トーションバーT1,T2および配線部W1,W2の厚さに相当する深さであり、例えば5μmである。DRIEでは、エッチングと側壁保護とを交互に行うBoschプロセスにおいて、良好なエッチング処理を行うことができる。後出のDRIEについても、このようなBoschプロセスを採用することができる。
次に、図8(a)に示すように、剥離液を作用させることにより、レジストパターン111を剥離する。剥離液としては、例えばAZリムーバ700(クラリアントジャパン製)を使用することができる。
次に、図8(b)に示すように、酸化膜パターン110をマスクとして、DRIEにより、トーションバーT1,T2および配線部W1,W2を残存形成しつつシリコン層101に対して絶縁層103に至るまでエッチング処理を行う。本エッチング処理により、揺動部10(ミラー支持部M,アーム部AR,櫛歯電極E1)、両トーションバー22a(トーションバーT1,T2)、および配線部24(配線部W1,W2)が、成形される。
次に、図8(c)に示すように、酸化膜パターン112をマスクとして、DRIEによりシリコン層102に対して絶縁層103に至るまでエッチング処理を行う。本エッチング処理により、フレーム21(フレームF1,F2)および櫛歯電極23A,23B(櫛歯電極E2)が成形される。
次に、図8(d)に示すように、絶縁層103において露出している箇所、および酸化膜パターン110,112を、エッチング除去する。エッチング手法としては、ドライエッチングまたはウエットエッチングを採用することができる。ドライエッチングを採用する場合、エッチングガスとしては、例えば、CF4やCHF3などを採用することができる。ウエットエッチングを採用する場合、エッチング液としては、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムからなるバッファードフッ酸(BHF)を使用することができる。
以上の一連の工程を経ることにより、ミラー支持部M、アーム部AR、フレームF1,F2、トーションバーT1,T2、一組の櫛歯電極E1,E2、および配線部W1,W2を成形してマイクロミラー素子X1を製造することができる。
マイクロミラー素子X1においては、櫛歯電極13A,13B,23A,23Bに対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、揺動部10ないしミラー支持部11を揺動軸心A1まわりに回転変位させることができる。櫛歯電極13A,13Bに対する電位付与は、配線部24、両トーションバー22a、およびアーム部12を介して実現することができる。櫛歯電極13A,13Bは、例えばグラウンド接続されている。一方、櫛歯電極23A,23Bに対する電位付与は、フレーム21を介して実現することができる。フレーム21と配線部24とは、上述のように絶縁層(例えば上述の絶縁層103)により電気的に分離されている。
櫛歯電極13A,13B,23A,23Bの各々に所定の電位を付与することにより櫛歯電極13A,23A間および櫛歯電極13B,23B間に所望の静電引力を発生させると、櫛歯電極13Aは櫛歯電極23Aに引き込まれ、且つ、櫛歯電極13Bは櫛歯電極23Bに引き込まれる。そのため、揺動部10ないしミラー支持部11は、揺動軸心A1まわりに揺動動作し、当該静電引力と各トーションバー22aの捩り抵抗力の総和とが釣り合う角度まで回転変位する。釣り合い状態においては、櫛歯電極13A,23Aは、例えば図9に示す配向をとり、櫛歯電極13B,23Bも同様の配向をとる。このような揺動動作における回転変位量は、櫛歯電極13A,13B,23A,23Bへの付与電位を調整することにより、調節することができる。また、櫛歯電極13A,23A間の静電引力および櫛歯電極13B,23B間の静電引力を消滅させると、各トーションバー22aはその自然状態に復帰し、揺動部10ないしミラー支持部11は、図4に表れているような配向をとる。以上のような揺動部10ないしミラー支持部11の揺動駆動により、ミラー支持部11上に設けられたミラー面11aにて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
上述の従来のマイクロミラー素子X4では、所定以下のアスペクト比 D/d4を有する空隙G(即ち、材料基板の面内方向において所定以上の長さd4を有する空隙G)を、ミラー支持部81およびフレーム91の間に形成する必要があり、これが素子の小型化を阻んでいる。これに対し、マイクロミラー素子X1では、ミラー支持部11およびフレーム21が互いに異なる導体層内において異なるエッチング工程で成形された部位であるため、ミラー支持部11やフレーム21を形成する際に、所定以下のアスペクト比を有する空隙(即ち、材料基板の面内方向において所定以上の長さを有する空隙)を、ミラー支持部11およびフレーム21の間に形成する必要はない。マイクロミラー素子X1では、材料基板の面内方向におけるミラー支持部11とフレーム21との離隔距離d1は、揺動部10の揺動動作時にミラー支持部11がフレーム21に当接するのを回避するための必要最小の長さで足りる。したがって、マイクロミラー素子X1は、小型化を図るのに適しているのである。
また、マイクロミラー素子X1においては、櫛歯電極13Aの複数の電極歯13aは、ミラー支持部11から延出するアーム部12の延び方向に互いに離隔してアーム部12に支持されており、且つ、櫛歯電極23Aの複数の電極歯23aは、アーム部12の延び方向に互いに離隔してフレーム21に支持されている。一方、櫛歯電極13Bの複数の電極歯13bは、ミラー支持部11から延出するアーム部12の延び方向に互いに離隔してアーム部12に支持されており、且つ、櫛歯電極23Bの複数の電極歯23bは、アーム部12の延び方向に互いに離隔してフレーム21に支持されている。これら電極歯13a,13b,23a,23bは、ミラー支持部11に直接的には支持されていない。そのため、一組の櫛歯電極13A,23Aを構成する電極歯13a,23aの数、および、一組の櫛歯電極13B,23Bを構成する電極歯13b,23bの数は、アーム部12の延び方向に対して直交する揺動軸心A1の延び方向におけるミラー支持部11の長さによる制約を受けない。したがって、マイクロミラー素子X1では、揺動軸心A1方向におけるミラー支持部11の設計寸法に関わらず、所望数の電極歯13a,13b,23a,23bを設けることにより、電極歯13a,23aどうしが対向可能な面積、および、電極歯13b,23bどうしが対向可能な面積を、確保することができる。マイクロミラー素子X1では、例えば、一組の櫛歯電極13A,23Aにおいて電極歯13a,23aどうしが対向可能な面積を確保するうえで、電極歯13a,23aの機械的強度に支障を来すほどに電極歯13a,23aについて幅を短縮したり延出長さを増大する必要はなく、且つ、素子の製造過程に不具合を生じるほどに電極歯間ギャップを短縮する必要はない。このように、マイクロミラー素子X1は、揺動軸心A1方向におけるミラー支持部11の設計寸法に関わらず所望数の電極歯13a,13b,23a,23bを設けることによって揺動部10の揺動動作のための駆動力を確保しつつ、揺動軸心A1方向におけるミラー支持部11したがって素子全体の設計寸法を短く設定することによって小型化を図るのに、適しているのである。
図10は、複数のマイクロミラー素子X1を含むマイクロミラーアレイY1を表す。図の明確化の観点より、図10においては、揺動部10、フレーム21、および配線部24について斜線ハッチングを付して表す。また、図11は、図10の線XI−XIに沿った拡大断面図である。マイクロミラーアレイY1では、複数のマイクロミラー素子X1は、揺動軸心A1の方向に一列に配されている。したがって、マイクロミラーアレイY1では、複数のミラー面11aは、揺動軸心A1の方向に一列に配されている。複数のミラー面11aの配設ピッチは、図11に示すようにL1+L3+2d1で表される。
上述のように、材料基板の面内方向におけるミラー支持部11とフレーム21との離隔距離d1は、揺動部10の揺動動作時にミラー支持部11がフレーム21に当接するのを回避するための必要最小の長さで足りる。加えて、マイクロミラー素子X1は、揺動軸心A1方向の短縮化に適した構造の駆動機構(櫛歯電極13A,13B,23A,23B)を有する。したがって、マイクロミラーアレイY1においては、複数のミラー面11aについて、短い配設ピッチを実現することができる。すなわち、マイクロミラーアレイY1では、複数のミラー面11aを、回転軸心A1方向において高密度に配設することが可能なのである。
図12は、マイクロミラー素子X1の第1変形例の平面図である。本変形例では、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯23aの間に位置する電極歯13aは、当該2つの電極歯23a間の中心位置から、揺動軸心A1に近付く方に偏位しているか、或は、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯13aの間に位置する電極歯23aは、当該2つの電極歯13a間の中心位置から、揺動軸心A1から遠ざかる方に偏位している。これとともに、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯23bの間に位置する電極歯13bは、当該2つの電極歯23b間の中心位置から、揺動軸心A1に近付く方に偏位しているか、或は、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯13bの間に位置する電極歯23bは、当該2つの電極歯13b間の中心位置から、揺動軸心A1から遠ざかる方に偏位している。
図13は、マイクロミラー素子X1の第2変形例の平面図である。本変形例では、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯23aの間に位置する電極歯13aは、当該2つの電極歯23a間の中心位置から、揺動軸心A1から遠ざかる方に偏位しているか、或は、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯13aの間に位置する電極歯23aは、当該2つの電極歯13a間の中心位置から、揺動軸心A1に近付く方に偏位している。これとともに、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯23bの間に位置する電極歯13bは、当該2つの電極歯23b間の中心位置から、揺動軸心A1から遠ざかる方に偏位しているか、或は、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯13bの間に位置する電極歯23bは、当該2つの電極歯13b間の中心位置から、揺動軸心A1に近付く方に偏位している。
第1および第2変形例の構成は、一組の櫛歯電極13A,23Aおよび一組の櫛歯電極13B,23Bにおいて、素子駆動時にいわゆるpull-in現象の発生を抑制するのに好ましい場合がある。素子駆動時には、上述のように、櫛歯電極13A,23A間および櫛歯電極13B,23B間に所望の静電引力が発生され、櫛歯電極13Aは櫛歯電極23Aに引き込まれ、且つ、櫛歯電極13Bは櫛歯電極23Bに引き込まれる。櫛歯電極13A,23Aが図1,4,5に示す構造を有するマイクロミラー素子X1では、櫛歯電極13Aが櫛歯電極23Aに引き込まれた状態において、素子厚さ方向Hにおける揺動軸心A1の位置によっては、一の電極歯13aと揺動軸心A1に対して当該電極歯13aよりも外側で当該電極歯13aと隣り合う電極歯23aとの距離が、揺動軸心A1に対して当該電極歯13aよりも内側で当該電極歯13aと隣り合う他の電極歯23aと当該電極歯13aとの距離よりも、短い場合や長い場合がある。短い場合、電極歯13aと外側の電極歯23aとの間の静電引力(第1の静電引力)は、電極歯13aと内側の電極歯23aとの間の静電引力(第2の静電引力)よりも、大きい傾向にある。第1の静電引力が第2の静電引力より所定以上に大きいと、電極歯13aと外側の電極歯23aとが不当に引き合い、pull-in現象が生じやすい。第2の静電引力が第1の静電引力より所定以上に大きいと、電極歯13aと内側の電極歯23aとが不当に引き合い、pull-in現象が生じやすい。同様に、櫛歯電極13B,23Bが図1,5に示す構造を有するマイクロミラー素子X1では、当該櫛歯電極13B,23Bにおいてpull-in現象が発生してしまう場合がある。pull-in現象の発生は、素子の揺動特性を阻害するので好ましくない。
これに対し、アーム部12の延び方向において隣り合う2つの電極歯23aの間に位置する電極歯13aが、揺動部10が回転変位していない状態では当該2つの電極歯23a間の中心位置から内側または外側の電極歯23aの方に偏位している第1または第2変形例では、素子厚さ方向Hにおける揺動軸心A1の位置に応じて当該偏位量を適当に設定することにより、揺動部10が回転変位して櫛歯電極13Aが櫛歯電極23A,23Bに引き込まれた状態における、一の電極歯13aと外側の電極歯23aとの距離、および、当該電極歯13aと内側の電極歯23aとの距離を、実質的に等しくすることができる場合がある。この場合、櫛歯電極13A,23Aにおいてpull-in現象の発生を抑制することができる。同様に、第1および第2変形例の構成によると、櫛歯電極13B,23Bにおいてpull-in現象の発生を抑制することができる場合がある。
図14は、マイクロミラー素子X1の第3変形例の平面図である。本変形例では、アーム部12の延び方向におけるアーム部12の寸法およびフレーム21の寸法が増大され、隣り合う2つの電極歯13a間の距離、隣り合う2つの電極歯13b間の距離、隣り合う2つの電極歯23a間の距離、および、隣り合う2つの電極歯23b間の距離は、揺動軸心A1から遠いほど長い。
電極歯13a,13bは、揺動軸心A1から遠いほど、揺動部10の揺動動作時における電極歯離隔方向(アーム部12の延び方向)の変位量が大きいところ、本変形例は、素子駆動時に揺動部10が回転変位して櫛歯電極13A,13Bが各々櫛歯電極23A,23Bに引き込まれた状態において、電極歯13a,23a間の距離を全て同程度にするうえで好適であり、電極歯13b,23b間の距離を全て同程度にするうえで好適である。素子駆動時における電極歯13a,23a間の距離を全て同程度にすることにより、素子駆動時において櫛歯電極13A,23A間の全体にわたって均等化された静電引力を発生させることが可能である。同様に、素子駆動時における電極歯13b,23b間の距離を全て同程度にすることにより、素子駆動時において櫛歯電極13B,23B間の全体にわたって均等化された静電引力を発生させることが可能である。
図15は、マイクロミラー素子X1の第4変形例の平面図である。本変形例では、櫛歯電極13A,13Bの複数の電極歯13a,13bの延び方向、および、櫛歯電極23A,23Bの複数の電極歯23a,23bの延び方向は、アーム部12の延び方向とは直交せず、電極歯13a,23aの延び方向は互いに平行であり、電極歯13b,23bの延び方向は互いに平行である。電極歯13a,13b,23a,23bの延び方向とアーム部12の延び方向とがなす鋭角は例えば45°である。マイクロミラー素子X1は、このような構造の櫛歯電極13A,13B,23A,23Bを有していてもよい。
図16は、マイクロミラー素子X1の第5変形例の平面図である。本変形例では、電極歯13a,13bの両側面がアーム部12の側面に対して非垂直であり、電極歯13a,13bの幅は、アーム部12から遠ざかるほど小さい。これとともに、電極歯23a,23bの両側面がフレーム21の側面に対して非垂直であり、電極歯23a,23bの幅は、フレーム21から遠ざかるほど小さい。
このような構成は、素子駆動時に揺動部10が回転変位して櫛歯電極13A,13Bが各々櫛歯電極23A,23Bに引き込まれた状態において、電極歯13a,23a間や電極歯13b,23b間が過度に近接するのを回避するのに好適である。素子駆動時に電極歯13a,23a間が過度に近接するのを回避することにより、素子駆動時に櫛歯電極13A,23Aにおいてpull-in現象が発生するのを抑制することができる。同様に、素子駆動時に電極歯13b,23b間が過度に近接するのを回避することにより、素子駆動時に櫛歯電極13B,23Bにおいてpull-in現象が発生するのを抑制することができる。
図17は、マイクロミラー素子X1の第6変形例の平面図である。本変形例では、電極歯13a,13bの、ミラー支持部11側を向く側面が、アーム部12の側面に対して垂直であり、電極歯13a,13bの他方の側面がアーム部12の側面に対して非垂直であり、電極歯13a,13bの幅は、アーム部12から遠ざかるほど小さい。これとともに、電極歯23a,23bの、ミラー支持部11側を向く側面が、フレーム21の側面に対して非垂直であり、電極歯23a,23bの他方の側面がフレーム21の側面に対して垂直であり、電極歯23a,23bの幅は、フレーム21から遠ざかるほど小さい。
このような構成は、素子駆動時に揺動部10が回転変位して櫛歯電極13A,13Bが各々櫛歯電極23A,23Bに引き込まれた状態において、特に電極歯13aと外側の電極歯23aとの間や電極歯13bと外側の電極歯23bとの間が、過度に近接するのを回避するのに好適である。
図18は、マイクロミラー素子X1の第7変形例の、図1の線IV−IVに相当する断面図である。本変形例では、揺動部10の非動作時には電極歯13aの起立方向は、素子厚さ方向Hに対して傾斜している。具体的には、電極歯13aは、電極歯23aに近付くほどミラー支持部11に近付くように傾斜している。これとともに、電極歯23aは、電極歯13aに近付くほどミラー支持部11から遠ざかるように傾斜している。本変形例では、電極歯13b,23bも、電極歯13a,23aと同様に傾斜している。
揺動部10の非動作時における櫛歯電極23Aに対する櫛歯電極13Aの配向と、揺動部10が回転変位して櫛歯電極13Aが櫛歯電極23Aに引き込まれた状態での櫛歯電極23Aに対する櫛歯電極13Aの配向とは、異なる。櫛歯電極13A,23Aが図1,4,5に示す構造を有する場合、この配向の変化は比較的大きい。これに対し、本変形例の櫛歯電極13A,23Aは、櫛歯電極13Aが櫛歯電極23Aに引き込まれるときに電極歯13aが傾斜する方向に予め傾斜している電極歯13a,23aを有するので、非動作時と動作時との間での配向の変化は、比較的小さい。同様に、本変形例の櫛歯電極13B,23Bも、櫛歯電極13Bが櫛歯電極23Bに引き込まれるときに電極歯13bが傾斜する方向に予め傾斜している電極歯13b,23bを有するので、非動作時と動作時との間での配向の変化は、比較的小さい。このような配向変化の抑制は、櫛歯電極13A,23A間および櫛歯電極13B,23B間にて安定した静電引力を発生させるうえで好ましい。
図19〜図27は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロミラー素子X2を表す。図19は、マイクロミラー素子X2の平面図であり、図20は、マイクロミラー素子X2の一部省略平面図である。図21〜図27は、各々、マイクロミラー素子X2の所定断面の拡大図である。
マイクロミラー素子X2は、揺動部10と、フレーム21と、捩れ連結部22と、櫛歯電極23A,23Bと、配線部27と、アイランド部28と、フレーム31(一部省略)と、アーム部32,33と、捩れ連結部34と、櫛歯電極36,37とを備える。また、マイクロミラー素子X2は、マイクロミラー素子X1に関して上述したようにMEMS技術を利用して、SOI基板である材料基板に対して加工を施すことにより製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。図の明確化の観点より、図19においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位について、斜線ハッチングを付して表す。また、図20は、マイクロミラー素子X2において第2シリコン層に由来する構造を表す。
マイクロミラー素子X2における揺動部10、フレーム21、捩れ連結部22、および櫛歯電極23A,23Bについては、第1の実施形態における揺動部10、フレーム21、捩れ連結部22、および櫛歯電極23A,23Bに関して上述したのと同様である。
配線部27は、第1シリコン層に由来する部位であり、絶縁層を介してフレーム21に固定され且つトーションバー22aと構造的かつ電気的に接続している。また、配線部27は、素子厚さ方向Hにおいて、図21、図22、および図24に示すように揺動部10よりも薄肉であり、且つ、図19、図21、図22、および図24に示すようにフレーム21よりも幅狭である。このような配線部27は、本発明における薄肉幅狭構造部に相当する。
アイランド部28は、第1シリコン層に由来する部位であり、絶縁層を介してフレーム21に固定されている。また、フレーム21よりも幅狭であり、本発明における幅狭構造部に相当する。このようなアイランド部28は、絶縁層を貫通する導電プラグP1を介して、フレーム31の第2シリコン層由来部位と電気的に接続されている。
フレーム31は、主に第1および第2シリコン層に由来する部位であり、所定の機械的強度を有してフレーム31内の構造を支持する。フレーム31において第2シリコン層に由来する部位を図20に示す。また、フレーム31は、図19、図24、および図27に示すように、第1シリコン層由来部位内において周囲とは構造的かつ電気的に分離されたアイランド部31a,31bを有する。フレーム31の第1シリコン層由来部位上には、例えば図19に示すように、電極パッド41,42,43が設けられている。電極パッド41は、図19および図24に示すように、アイランド部31a上に位置する。電極パッド42は、図19および図27に示すように、アイランド部31b上に位置し、アイランド部31bおよび絶縁層を貫通する導電プラグP2を介してフレーム31の第2シリコン層由来部位と電気的に接続されている。電極パッド43は、フレーム31の第1シリコン層由来部位におけるアイランド部31a,31b以外と電気的に接続している。
アーム部32は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、図19および図25に示すように、揺動部10の揺動軸心A1と直交する方向にアイランド部28から延出する。アーム部33は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、揺動部10の揺動軸心A1と直交する方向であってアーム部32に平行にフレーム31から延出する。また、アーム部33は、図20に示すように、フレーム31の第2シリコン層由来部位に固定されている。
捩れ連結部34は、一対のトーションバー34a,34bからなる。トーションバー34aは、主に第1シリコン層に由来する部位であり、図19および図24に示すように、フレーム21とフレーム31の第1シリコン層由来部位とに接続してこれらを連結する。トーションバー34aは、フレーム21上の配線部27にも接続している。トーションバー34aおよびフレーム21は、これらの間に介在する絶縁層により電気的に分離されている。また、トーションバー34aは、図24に示すように、素子厚さ方向Hにおいてフレーム31の第1シリコン層由来部位よりも薄肉である。トーションバー34bは、主に第1シリコン層に由来する部位であり、図19および図25に示すように、フレーム31とアーム部32とに接続してこれらを連結する。このようなトーションバー34bは、フレーム31の第1シリコン層由来部位とアーム部32とを電気的に接続する機能を有する。このような捩れ連結部34(トーションバー34a,34b)は、フレーム21の揺動動作の揺動軸心A2を規定する。揺動軸心A2の延び方向は、揺動軸心A1の延び方向と直交する。このような揺動軸心A2は、好ましくは、揺動部10の重心またはその近傍を通る。
櫛歯電極36は、複数の電極歯36aからなる。複数の電極歯36aは、アーム部32から各々が延出し、且つ、アーム部32の延び方向に互いに離隔する。電極歯36aは、主に第1シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極37は、櫛歯電極36と協働して静電引力を発生するための部位であり、複数の電極歯37aからなる。複数の電極歯37aは、アーム部33から各々が延出し、且つ、アーム部33の延び方向に互いに離隔する。電極歯37aは、主に第2シリコン層に由来する部位である。このような櫛歯電極36,37は、本素子の駆動機構を構成する。櫛歯電極36,37は、フレーム21の例えば非動作時には、図25および図26に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極36,37は、フレーム21の揺動動作時において互いに当接しないように、それらの電極歯36a,37aが位置ずれした態様で配されている。
図28および図29は、マイクロミラー素子X2における導電プラグP1,P2の形成方法を表す。
導電プラグP1,P2の形成においては、まず、図28(a)に示すように、図7(a)を参照して上述したのと同様の材料基板100のシリコン層101,102の表面に、各々、酸化膜113を形成する。酸化膜113は、CVD法により二酸化ケイ素をシリコン層101,102上に成膜することにより形成することができる。或は、酸化膜113は、熱酸化法(加熱温度:例えば900℃)によりシリコン層101,102の表面を酸化することにより形成することができる。酸化膜113は、必要に応じて研磨してもよい。酸化膜113の厚さは、例えば0.5〜2μmである。本工程では、酸化膜113に代えて窒化膜を形成してもよい。
次に、図28(b)に示すように、酸化膜113上に、所定の開口部を有するレジストパターン114を形成する。レジストパターン114の形成においては、まず、酸化膜113上に液状のフォトレジストをスピンコーティングにより成膜する。次に、露光処理およびその後の現像処理を経て、当該フォトレジスト膜をパターニングする。フォトレジストとしては、例えば、AZP4210(クラリアントジャパン製)やAZ1500(クラリアントジャパン製)を使用することができる。
次に、図28(c)に示すように、レジストパターン114をマスクとして酸化膜113をエッチングする。エッチング手法としては、ドライエッチングまたはウエットエッチングを採用することができる。ドライエッチングを採用する場合、エッチングガスとしては、例えば、CHF3およびArからなる混合ガスなどを、採用することができる。ウエットエッチングを採用する場合、エッチング液としては、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムからなるバッファードフッ酸(BHF)を使用することができる。酸化膜、酸化膜パターン、または絶縁層に対する後出のエッチング手法ないし除去手法としても、このようなドライエッチングやウエットエッチングを採用することができる。このような酸化膜113のパターニングの後、レジストパターン114は、除去せずに残しておくのが好ましい。
次に、図28(d)に示すように、シリコン層101を貫通するホールH1’,H2’を形成する。ホールH1’,H2’の形成においては、前工程にてパターニングされた酸化膜113、或は、残存する場合にはレジストパターン114をマスクとして、DRIEにより、シリコン層101に対して絶縁層103に至るまでエッチング処理を行う。
次に、図29(a)に示すように、絶縁層103においてホールH1’,H2’に露出する箇所をエッチング除去することにより、シリコン層101に加えて絶縁層103を貫通するホールH1,H2を形成する。図28(c)を参照して上述した工程を終えた後にもレジストパターン114を残しておくと、当該レジストパターン114は本工程においてもマスクとして機能することができ、効率的である。
次に、図29(b)に示すように、剥離液を作用させることにより、レジストパターン114(別のレジストパターンを使用した場合には当該別のレジストパターン)を剥離する。剥離液としては、AZリムーバ700(クラリアントジャパン製)を使用することができる。
次に、図29(c)に示すように、例えばCVD法により、ホールH1,H2の内部に導電材料P’を堆積させる。このとき、酸化膜113上にも堆積するまで、充分量の導電材料P’をホールH1,H2に供給する。導電材料P’としては、所定の不純物をドープさせたポリシリコン、または、CuやWなどの金属を、採用することができる。導電材料P’とシリコン層101,102との良好な電気的接続を確保するうえでは、導電材料P’を堆積させる直前に、ホールH1,H2の表面における自然酸化膜を、フッ酸などを作用させることにより除去しておくのが好ましい。
次に、図29(d)に示すように、シリコン層101,102の表面を露出させる。具体的には、所定のドライエッチングまたはウエットエッチングにより、ホールH1,H2外の導電材料P’をエッチング除去した後、酸化膜113をエッチング除去する。導電材料P’の除去手法としてウエットエッチングを採用する場合、エッチング液としてはKOH水溶液やBHFを使用することができる。本工程は、このような手法に代えて、ホールH1,H2外の導電材料P’および酸化膜113をCMP法により研磨して除去する手法を採用してもよい。本工程にて、導電プラグP1,P2が残存形成されることとなる。これら導電プラグP1,P2は、図29(d)に示す状態においてはシリコン層101とシリコン層102とを電気的に接続する。
以上のようにして、材料基板100に埋設された導電プラグP1,P2を形成することができる。導電プラグP1,P2が埋設された材料基板100に対し、マイクロミラー素子X1に関して上述したようにMEMS技術を利用して加工を施すことにより、マイクロミラー素子X2を製造することができる。
マイクロミラー素子X2においては、櫛歯電極13A,13B,23A,23B,36,37に対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、揺動部10ないしミラー支持部11を揺動軸心A1まわりに揺動駆動することができるとともに、フレーム21およびこれに伴う揺動部10を揺動軸心A2まわりに揺動駆動することができる。すなわち、マイクロミラー素子X2は、いわゆる2軸型の揺動素子である。
櫛歯電極13A,13Bに対する電位付与は、電極パッド41、フレーム31のアイランド部31a、トーションバー34a、配線部27、両トーションバー22a、およびアーム部12を介して実現することができる。櫛歯電極36に対する電位付与は、電極パッド43、フレーム31において電極パッド43と電気的に接続する第1シリコン層由来部位、トーションバー34b、およびアーム部32を介して実現することができる。櫛歯電極23A,23Bに対する電位付与は、電極パッド43、フレーム31において電極パッド43と電気的に接続する第1シリコン層由来部位、トーションバー34b、アーム部32、アイランド部28、導電プラグP1、およびフレーム21を介して実現することができる。櫛歯電極37に対する電位付与は、電極パッド42、導電プラグP2、フレーム31の第2シリコン層由来部位、およびアーム部33を介して実現することができる。揺動軸心A1まわりの揺動動作における回転変位量は、櫛歯電極13A,13B,23A,23Bへの付与電位を調整することにより、調節することができる。また、揺動軸心A2まわりの揺動動作における回転変位量は、櫛歯電極36,37への付与電位を調整することにより、調節することができる。このような揺動部10ないしミラー支持部11の揺動駆動およびフレーム21およびこれに伴う揺動部10の揺動駆動により、ミラー支持部11上に設けられたミラー面11aにて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
マイクロミラー素子X2では、マイクロミラー素子X1と同様に、ミラー支持部11およびフレーム21が互いに異なる導体層内において異なるエッチング工程で成形された部位であるため、ミラー支持部11やフレーム21を形成する際に、所定以下のアスペクト比を有する空隙(即ち、材料基板の面内方向において所定以上の長さを有する空隙)を、ミラー支持部11およびフレーム21の間に形成する必要はない。マイクロミラー素子X2では、材料基板の面内方向におけるミラー支持部11とフレーム21との離隔距離d1(図21,22に示す)は、揺動部10の揺動動作時にミラー支持部11がフレーム21に当接するのを回避するための必要最小の長さで足りる。したがって、マイクロミラー素子X2は、小型化を図るのに適しているのである。
また、マイクロミラー素子X2は、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、揺動軸心A1方向におけるミラー支持部11の設計寸法に関わらず所望数の電極歯13a,13b,23a,23b,36a,37aを設けることによって揺動部10の揺動動作のための駆動力を確保しつつ、揺動軸心A1方向におけるミラー支持部11したがって素子全体の設計寸法を短く設定することによって小型化を図るのに、適している。
図30は、複数のマイクロミラー素子X2を含むマイクロミラーアレイY2を表す。図の明確化の観点より、図30においては、一部の部位について斜線ハッチングを付して表す。また、図31および図32は、各々、マイクロミラーアレイY2に含まれるマイクロミラー素子X2a,X2bについての、図30の線XXXI−XXXIおよび線XXXII−XXXIIに沿った拡大断面図である。マイクロミラーアレイY2では、複数のマイクロミラー素子X2は、揺動軸心A1の方向に一列に配されている。したがって、マイクロミラーアレイY2では、複数のミラー面11aは、揺動軸心A1の方向に一列に配されている。隣り合う2つのマイクロミラー素子X2のフレーム21間の離隔距離をd2とすると、複数のミラー面11aの配設ピッチは、L1+2L3+2d1+d2で表される。
上述のように、材料基板の面内方向におけるミラー支持部11とフレーム21との離隔距離d1は、揺動部10の揺動動作時にミラー支持部11がフレーム21に当接するのを回避するための必要最小の長さで足りる。加えて、マイクロミラー素子X2は、揺動軸心A1方向の短縮化に適した構造の駆動機構(櫛歯電極13A,13B,23A,23B,36,37)を有する。したがって、マイクロミラーアレイY2においては、複数のミラー面11aについて、短い配設ピッチを実現することができる。すなわち、マイクロミラーアレイY2では、複数のミラー面11aを、回転軸心A1方向において高密度に配設することが可能なのである。
また、マイクロミラーアレイY2では、各マイクロミラー素子X2の揺動部10の揺動軸心A1まわりの駆動を、櫛歯電極23A,23Bをグラウンド接続した状態で、櫛歯電極13A,13Bに所定電位を付与することにより行うことができる。そのため、マイクロミラーアレイY2では、隣接するマイクロミラー素子X2の間での電気的干渉を抑制することができる。
仮に、マイクロミラー素子X2aの揺動部10を揺動軸心A1まわりに駆動せずにマイクロミラー素子X2bの揺動部10を揺動軸心A1まわりに駆動する際に、マイクロミラー素子X2a,X2bの櫛歯電極13A,13Bをグラウンド接続した状態で、マイクロミラー素子X2aの櫛歯電極23A,23Bに電位を付与せず且つマイクロミラー素子X2bの櫛歯電極23A,23Bに所定電位を付与すると、マイクロミラー素子X2bのフレーム21(所定電位が付与されている)と、マイクロミラー素子X2aのフレーム21(電位は0V)との間には、電位差が生じ、従って静電引力が発生する。そのため、マイクロミラー素子X2a,X2bの2つのフレーム21が近過ぎると、当該2つのフレーム21に有意な静電引力が作用して、当該2つのフレーム21は揺動軸心A2まわりに回転変位してしまう。図31および図32に示す断面において各マイクロミラー素子X2a,X2bの最も外側に位置するフレーム21の間に静電引力が発生し得る駆動手法は、揺動軸心A1方向におけるマイクロミラー素子X2間距離を短くしてミラー面11aの高密度化を図るうえでは好ましくない。
これに対し、マイクロミラー素子X2aの揺動部10を揺動軸心A1まわりに駆動せずにマイクロミラー素子X2bの揺動部10を揺動軸心A1まわりに駆動する際に、マイクロミラー素子X2a,X2bの櫛歯電極23A,23Bをグラウンド接続した状態で、マイクロミラー素子X2aの櫛歯電極13A,13Bに電位を付与せず且つマイクロミラー素子X2bの櫛歯電極13A,13Bに所定電位を付与すると、マイクロミラー素子X2a,X2bの2つのフレーム21の間には、電位差は生じず、従って静電引力は発生しない。マイクロミラー素子X2aの揺動部10および配線部27と、マイクロミラー素子X2bの揺動部10および配線部27との間には、電位差が生じる。しかしながら、これらの離隔距離は、隣り合うフレーム21の離隔距離より長い。これとともに、隣り合う配線部27の対向面積は、隣り合うフレーム21の対向面積より小さい。したがって、マイクロミラー素子X2aの揺動部10および配線部27と、マイクロミラー素子X2bの揺動部10および配線部27との間には、有意な静電引力は発生しにくい。このように、マイクロミラーアレイY2では、隣接するマイクロミラー素子X2の間での電気的干渉を抑制することができる。このようなマイクロミラーアレイY2は、複数のミラー面11aを揺動軸心A1方向において高密度に配設するのに適している。
図33〜図36は、本発明の第3の実施形態に係るマイクロミラー素子X3を表す。図33は、マイクロミラー素子X3の平面図であり、図34は、マイクロミラー素子X3の一部省略平面図である。図35および図36は、各々、マイクロミラー素子X3の線XXXV−XXXVおよび線XXXVI−XXXVIに沿った断面図である。
マイクロミラー素子X3は、揺動部10と、フレーム21と、捩れ連結部22と、櫛歯電極23A,23Bと、配線部27と、アイランド部29と、フレーム38(一部省略)と、アーム部32,33と、捩れ連結部39と、櫛歯電極36,37とを備える。また、マイクロミラー素子X3は、マイクロミラー素子X1に関して上述したようにMEMS技術を利用して、SOI基板である材料基板に対して加工を施すことにより製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。図の明確化の観点より、図33においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位について、斜線ハッチングを付して表す。また、図34は、マイクロミラー素子X3において第2シリコン層に由来する構造を表す。
マイクロミラー素子X3における揺動部10、フレーム21、捩れ連結部22、および櫛歯電極23A,23Bについては、第1の実施形態における揺動部10、フレーム21、捩れ連結部22、および櫛歯電極23A,23Bに関して上述したのと同様である。また、マイクロミラー素子X3におけるアーム部32および櫛歯電極36,37については、第2の実施形態におけるアーム部32および櫛歯電極36,37に関して上述したのと同様である。
アイランド部29は、第1シリコン層に由来する部位であり、絶縁層を介してフレーム21に固定されている。また、フレーム29は、フレーム21よりも幅狭であり、本発明における幅狭構造部に相当する。
フレーム38は、主に第1および第2シリコン層に由来する部位であり、所定の機械的強度を有してフレーム38内の構造を支持する。フレーム38において第2シリコン層に由来する部位を図34に示す。また、フレーム38は、図33および図35に示すように、第1シリコン層由来部位内において周囲とは構造的かつ電気的に分離されたアイランド部38aを有する。フレーム38の第1シリコン層由来部位上には、例えば図33に示すように、電極パッド41,43が設けられている。電極パッド41は、図33および図35に示すように、アイランド部38a上に位置する。電極パッド43は、フレーム38の第1シリコン層由来部位におけるアイランド部38a以外と電気的に接続している。
アーム部33は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、揺動部10の揺動軸心A1と直交する方向であってアーム部32に平行にフレーム38から延出する。また、アーム部33は、図34に示すように、フレーム38の第2シリコン層由来部位に固定されている。
捩れ連結部39は、一組のトーションバー39a,39bおよびトーションバー39cからなる。
トーションバー39aは、主に第1シリコン層に由来する部位であり、図33および図35に示すように、フレーム21とフレーム31の第1シリコン層由来部位とに接続してこれらを連結する。トーションバー39aは、フレーム21上の配線部27にも接続する。トーションバー39aおよびフレーム21は、これらの間に介在する絶縁層により電気的に分離されている。このようなトーションバー39aは、図35に示すように、素子厚さ方向Hにおいてフレーム31の第1シリコン層由来部位よりも薄肉である。
トーションバー39bは、主に第2シリコン層に由来する部位であり、図34および図35に示すように、フレーム21とフレーム38の第2シリコン層由来部位とに接続してこれらを連結する。このようなトーションバー39bは、フレーム38の第2シリコン層由来部位とフレーム21とを電気的に接続する機能を有する。フレーム38の第2シリコン層由来部位において、トーションバー39bが固定されている箇所と、上述のアーム部33が固定されている箇所とは電気的に分離されている。また、トーションバー39bは、図35に示すように、素子厚さ方向Hにおいてフレーム21およびフレーム38の第2シリコン層由来部位よりも薄肉である。
トーションバー39cは、主に第1シリコン層に由来する部位であり、図33に示すように、フレーム38の第1シリコン層由来部位とアーム部32とに接続してこれらを連結する。このようなトーションバー39cは、フレーム31の第1シリコン層由来部位とアーム部32とを電気的に接続する機能を有する。また、トーションバー39cは、素子厚さ方向Hにおいてフレーム31の第1シリコン層由来部位およびアーム部32よりも薄肉である。
このような捩れ連結部39(トーションバー39a,39b,39c)は、フレーム21の揺動動作の揺動軸心A3を規定する。揺動軸心A3の延び方向は、揺動軸心A1の延び方向と直交する。このような揺動軸心A3は、好ましくは、揺動部10の重心またはその近傍を通る。
マイクロミラー素子X3においては、櫛歯電極13A,13B,23A,23B,36,37に対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、揺動部10ないしミラー支持部11を揺動軸心A1まわりに揺動駆動することができるとともに、フレーム21およびこれに伴う揺動部10を揺動軸心A3まわりに揺動駆動することができる。
櫛歯電極13A,13Bに対する電位付与は、電極パッド41、フレーム38のアイランド部38a、トーションバー39a、配線部27、両トーションバー22a、およびアーム部12を介して実現することができる。櫛歯電極36に対する電位付与は、電極パッド43、フレーム38において電極パッド43と電気的に接続する第1シリコン層由来部位、トーションバー39c、およびアーム部32を介して実現することができる。櫛歯電極23A,23Bに対する電位付与は、フレーム38の第2シリコン層由来部位、トーションバー39b、およびフレーム21を介して実現することができる。櫛歯電極37に対する電位付与は、フレーム38の第2シリコン層由来部位およびアーム部33を介して実現することができる。上述のように、フレーム38の第2シリコン層由来部位において、トーションバー39bが固定されている箇所と、上述のアーム部33が固定されている箇所とは電気的に分離されている。揺動軸心A1まわりの揺動動作における回転変位量は、櫛歯電極13A,13B,23A,23Bへの付与電位を調整することにより、調節することができる。また、揺動軸心A3まわりの揺動動作における回転変位量は、櫛歯電極36,37への付与電位を調整することにより、調節することができる。このような揺動部10ないしミラー支持部11の揺動駆動およびフレーム21およびこれに伴う揺動部10の揺動駆動により、ミラー支持部11上に設けられたミラー面11aにて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
マイクロミラー素子X3では、マイクロミラー素子X1と同様に、ミラー支持部11およびフレーム21が互いに異なる導体層内において異なるエッチング工程で成形された部位であるため、ミラー支持部11やフレーム21を形成する際に、所定以下のアスペクト比を有する空隙(即ち、材料基板の面内方向において所定以上の長さを有する空隙)を、ミラー支持部11およびフレーム21の間に形成する必要はない。マイクロミラー素子X3では、材料基板の面内方向におけるミラー支持部11とフレーム21との離隔距離d1(図33および図35に示す)は、揺動部10の揺動動作時にミラー支持部11がフレーム21に当接するのを回避するための必要最小の長さで足りる。したがって、マイクロミラー素子X3は、小型化を図るのに適しているのである。
また、マイクロミラー素子X3は、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様に、揺動軸心A1方向におけるミラー支持部11の設計寸法に関わらず所望数の電極歯13a,13b,23a,23b,36a,37aを設けることによって揺動部10の揺動動作のための駆動力を確保しつつ、揺動軸心A1方向におけるミラー支持部11したがって素子全体の設計寸法を短く設定することによって小型化を図るのに、適している。
図37は、複数のマイクロミラー素子X3を含むマイクロミラーアレイY3を表す。図の明確化の観点より、図37においては、一部の部位について斜線ハッチングを付して表す。また、図38および図39は、各々、図37の線XXXVIII−XXXVIIIおよび線XXXIX−XXXIXに沿った拡大断面図である。マイクロミラーアレイY3では、複数のマイクロミラー素子X3は、揺動軸心A1の方向に一列に配されている。したがって、マイクロミラーアレイY3では、複数のミラー面11aは、揺動軸心A1の方向に一列に配されている。隣り合う2つのマイクロミラー素子X3のフレーム21間の離隔距離をd3とすると、複数のミラー面11aの配設ピッチは、L1+2L3+2d1+d3で表される。
上述のように、材料基板の面内方向におけるミラー支持部11とフレーム21との離隔距離d1は、揺動部10の揺動動作時にミラー支持部11がフレーム21に当接するのを回避するための必要最小の長さでたりる。加えて、マイクロミラー素子X3は、揺動軸心A1方向の短縮化に適した構造の駆動機構(櫛歯電極13A,13B,23A,23B,36,37)を有する。したがって、マイクロミラーアレイY3においては、複数のミラー面11aについて、短い配設ピッチを実現することができる。すなわち、マイクロミラーアレイY3では、複数のミラー面11aを、回転軸心A1方向において高密度に配設することが可能なのである。
また、マイクロミラーアレイY3では、各マイクロミラー素子X3の揺動部10の揺動軸心A1まわりの駆動を、櫛歯電極23A,23Bをグラウンド接続した状態で、櫛歯電極13A,13Bに所定電位を付与することにより行うことができる。そのため、マイクロミラーアレイY3では、マイクロミラーアレイY2に関して上述したのと同様に、隣接するマイクロミラー素子X3の間での電気的干渉を抑制することができる。このようなマイクロミラーアレイY3は、複数のミラー面11aを揺動軸心A1方向において高密度に配設するのに適している。
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)第1導体層、第2導体層、並びに当該第1および第2導体層の間の絶縁層、からなる積層構造を有する材料基板から一体的に成形された、ミラー支持部を有する揺動部と、フレームと、当該揺動部およびフレームを連結して当該揺動部の揺動動作の揺動軸心を規定する捩れ連結部とを備え、
前記ミラー支持部は前記第1導体層において成形された部位であり、前記フレームは前記第2導体層において成形された部位である、マイクロ揺動素子。
(付記2)前記第1導体層において前記ミラー支持部よりも薄く成形され且つ前記絶縁層を介して前記フレームに固定された薄肉構造部を更に備える、付記1に記載のマイクロ揺動素子。
(付記3)前記薄肉構造部は、前記絶縁層を貫通する導電連絡部を介して前記フレームと電気的に接続されている、付記2に記載のマイクロ揺動素子。
(付記4)前記第1導体層において成形され且つ前記絶縁層を介して前記フレームに固定されて当該フレームよりも幅狭である幅狭構造部を更に備える、付記1から3のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記5)前記幅狭構造部は、前記絶縁層を貫通する導電連絡部を介して前記フレームと電気的に接続されている、付記4に記載のマイクロ揺動素子。
(付記6)前記第1導体層において前記ミラー支持部よりも薄く成形され且つ前記絶縁層を介して前記フレームに固定されて当該フレームよりも幅狭である薄肉幅狭構造部を更に備える、付記1から5のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記7)前記薄肉幅狭構造部は、前記絶縁層を貫通する導電連絡部を介して前記フレームと電気的に接続されている、付記6に記載のマイクロ揺動素子。
(付記8)前記揺動部は、前記揺動軸心の延び方向と交差する方向に前記ミラー支持部から延出するアーム部と、当該アーム部の延び方向と交差する方向に当該アーム部から各々が延出し且つ当該アーム部の延び方向に互いに離隔する複数の第1電極歯からなる、第1櫛歯電極とを更に有し、
前記アーム部の延び方向と交差する方向に前記フレームから各々が延出し且つ前記アーム部の延び方向に互いに離隔する複数の第2電極歯からなる、前記第1櫛歯電極と協働して前記揺動動作の駆動力を発生させるための第2櫛歯電極を、更に備える、付記1から7のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記9)前記複数の第1電極歯の延び方向は、前記揺動軸心に対して平行である、付記8に記載のマイクロ揺動素子。
(付記10)前記複数の第1電極歯の延び方向と前記揺動軸心の延び方向とは交差する、付記8に記載のマイクロ揺動素子。
(付記11)前記第2電極歯の延び方向は、前記第1電極歯の延び方向に対して平行である、付記8から10のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記12)前記第1櫛歯電極は3本以上の電極歯からなり、隣り合う2つの第1電極歯間の距離は、前記揺動軸心から遠いほど長い、付記8から11のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記13)前記第2櫛歯電極は3本以上の電極歯からなり、隣り合う2つの第2電極歯間の距離は、前記揺動軸心から遠いほど長い、付記8から12のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記14)前記アーム部の延び方向において隣り合う2つの第2電極歯の間に位置する第1電極歯は、当該2つの第2電極歯間の中心位置から、前記揺動軸心に近付く方に偏位している、付記8から13のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記15)前記アーム部の延び方向において隣り合う2つの第2電極歯の間に位置する第1電極歯は、当該2つの第2電極歯間の中心位置から、前記揺動軸心から遠ざかる方に偏位している、付記8から13のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記16)追加フレームと、当該追加フレームおよび前記フレームを連結して当該フレームの揺動動作の揺動軸心を規定する追加捩れ連結部とを更に備える、付記1から15のいずれか一つに記載のマイクロ揺動素子。