JP4439653B2 - 固体レーザ装置およびそれを用いたレーザ加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザダイオード(Laser Diode:以下、LDと記す)の発光により固体レーザ媒質、例えばYAG結晶を励起して発振させることによってレーザ光を出力する、レーザダイオード励起型の固体レーザ装置およびそれを用いたレーザ加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数のLDでロッド状のYAG結晶を励起する固体レーザ装置が既に知られている。例えば、特開平5-335662号公報や特開平6-252473号公報に示されているようなこの固体レーザ装置については、レーザロッドの周方向に複数のLDを配置し、これらLDからの発光(以下、LD光と記す)により、YAG結晶を励起して発振することでレーザ光を出力する。即ち、この技術ではLD光が励起光となる。図11(a)および図11(b)は、それらの技術を示すものである。図11(a)は、固体レーザ装置の全体構成を示すブロック図である。また、図11(b)は、図11(a)のY-Y'断面での様子を示している。
【0003】
即ち、レーザロッド40の側面周囲に4つのLD41a,41b,41c,41dを配置して、レーザロッド40の励起をする構成をとっている。そして、これらのLD41a〜41dを周方向に配置している主な理由は、励起の分布がレーサロッド40内にてLD光の吸収特性や伝搬特性の影響を強く受けるためである。この現象は、LD光の単色性や指向性が高いことに起因する。
【0004】
それぞれのLD光は、レーザロッド40に向けて照射され、レーザロッド40を励起する。レーザ発振光41は、全反射ミラー43と部分反射ミラー44とで構成される光共振器によって発生する。
【0005】
TEM00モード(横モード)を発生させるために、モードセレクタ16が光共振器の内部に挿入されている。モードセレクタ16により、レーザロッド40の周辺部における励起光の損失を意図的に増大させる。その結果、レーザロッド40の中心部において光強度が大きいTEM00モードでの発振を実現している。
【0006】
つまり、レーザロッド40における断面での励起分布としては、中心部が大きい強度を持っている方が望ましい。よって、レーザロッド40に入射されるLD光の照射面の幅をレーザロッド40の外径よりも小さく設定するとともに、レーザロッド40の周りの4方向から励起する。こうすることで、各レーザ光をレーザロッド40の中心部(中心軸上)で重ね合わせることにより、この中心部での励起光の強度を相対的に高める工夫をしている。
【0007】
このような構成を取ると、LD励起型の固体レーザ装置によって、良好なTEM00モードのレーザ光を得ることができる。TEM00モードのレーザ光は集光性が高いため、この固体レーザ装置を用いたレーザ加工装置も微細加工に用いられている。そして、このレーザ光を基本波の光源として、高効率に第二高調波を発生することも行なわれている。
【0008】
そして、特開平5-335663号公報でもLD励起型の固体レーザ装置が開示されているが、この固体レーザ装置については曲面を有する反射鏡で片側一方向からのLD光をレーザロッドに集光して励起している。更には、特開平8-70150号公報や特開平8-250789号公報では、楕円集光器とフラッシュランプを用いた固体レーザ装置が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したような構成を持つ従来の固体レーザ装置では、それぞれ以下に述べるような問題点が発生してくる。
【0010】
まず、特開平5-335662号公報や特開平6-252473号公報に示される固体レーザ装置については、レーザロッド40の周方向に配置するLDの数を増加させると、励起光の分布の均一化によってTEM00モードのレーザ光を出力するのに適することになる。しかし、製造コストの増大や構造の複雑化によってメンテナンス性や信頼性が低下してしまうとともに、装置の大型化が進んでしまう。
【0011】
一方、配置するLDの数を少なく制限すると、LD光のレーザロッド40への入射領域に制限が生じるために均一な励起ができなくなる。この現象は、レーザロッド40の屈折・反射の特性に起因している。加えて、たとえ励起できてもレーザロッド40の屈折・反射の特性のために、TEM00モードをもつレーザ光の発振効率が低下する。例えば、図12や特開平5-335663号公報に示される固体レーザ装置については、レーザロッド40を励起するためのLD光を入射させる方向をレーザロッド40に対して一方向あるいは二方向に限定した場合に、励起分布の均一性や対象性が低下する。そのため、TEM00モードのレーザ光を出力するために、モードセレクタ16の開口径を小さくするなどの工夫が必要とされる、しかし、この場合には発振効率が低下してしまう。
【0012】
この現象について、更に詳述する。例えば、レーザロッド40の片側一方向から励起した場合を考えてみる。図12に示すように、レーザロッド40の側面に対して、LD41からのLD光46a〜46dがそれぞれ並行光となって入射する。このときレーザロッド40がレンズとして作用する。それによって、レーザロッド40の内部に入射したLD光46aは、レーザロッド40を構成するレーザ媒質(YAG結晶)を伝搬しながら収束していく。
【0013】
また、レーザロッド40の中心軸に対して、入射する励起光の光束の距離が大きくなるにしたがい、レーザロッド40への入射角が大きくなる。その結果、フレネル反射が起こる確率が増大し、反射光47の強度が上昇する。そして、結果としてはレーザロッド40へのLD光46a〜46dの入射効率が低下してしまう。
【0014】
更には、レーザロッド40の内部には発振に寄与しない非励起領域48が形成されることになる。この理由は、LD光46a〜46dの強度分布が、自身の光軸を中心とした、ガウシアン関数に近い強度分布であるためである。なお、曲線50はレーザロッド40のY-Y'断面における強度分布を示したものである。
【0015】
加えて、LD光の進行方向に着目すると、レーザロッド40の内部を伝搬するにしたがってその強度が低下する。その理由は、レーザロッド40が励起光の持つエネルギーを吸収してしまうためである。この様子を示したのが曲線51である。この曲線51は、図12におけるX-X'断面での励起光の強度分布を示している。
【0016】
これらのような事情により、レーザロッド40の片側一方向から励起した場合にはレーザロッド40の内部に均一にLD光を入射させることが非常に困難となるという課題がある。
【0017】
また、特開平8-70150号公報や特開平8-250789号公報に記載されている楕円集光器とフラッシュランプを用いた固体レーザ装置については、フラッシュランプがLDよりも寿命が短いという課題があるとともに、楕円集光器を解体しないとフラッシュランプを取り替えることができず、装置のメンテナンスが困難であるという課題もある。そして、楕円集光器の内部にレーザロッドとフラッシュランプとの双方を内蔵しているために大型な装置構成になってしまうという課題もある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記したような技術的課題を解決するためになされたものであり、請求項1によると、レーザロッドの側面にレーザダイオードからの励起光を照射する際に前記レーザロッドに前記励起光を集光する集光器を具備した固体レーザ装置において、前記集光器は楕円の一部をなすとともに、この集光器が前記楕円の二つの焦点のうちの一方には前記レーザダイオードからの前記励起光の出射面が配置され、前記焦点のうちの他方には前記レーザロッドの中心軸が配置され、かつ励起光の光軸方向が前記楕円の長軸方向に一致しており、前記楕円の焦点間の距離は、前記レーザダイオードから前記レーザロッドへ直接入射するエネルギーが、前記レーザダイオードの発散角に関する半値全幅をもとに前記レーザダイオードの全エネルギーの1/3となるよう算出される第1の発散角及び前記レーザロッドの半径とから算出し、さらに、前記楕円の離心率は、前記レーザダイオードから前記レーザロッドへ直接に入射する前記第1の発散角を持つ前記励起光の光軸と、第2の発散角であって、前記全体エネルギーから前記第2の発散角内の前記励起光のエネルギーの積分値を差し引いた残りが1/6となるよう算出される第2の発散角を持ち、前記第2の発散角に沿って伝播した前記励起光が、前記集光器に反射して前記レーザロッドに入射する際の前記集光器からレーザロッドまでの光軸とが、120度の角度をなすように定められている固体レーザ装置である。
【0029】
請求項7によると、レーザ加工装置において、被加工物を載置するテーブルと、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の固体レーザ装置と、前記固体レーザ装置から出射するレーザ光を前記被加工物に対して相対的に走査する走査手段とを具備するレーザ加工装置である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の固体レーザ装置およびそれを用いたレーザ加工装置について図面を参照して説明をする。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るLD励起型の固体レーザ装置の全体構成を示すブロック図である。そして、図2は図1のY-Y'線での断面を示した断面図である。
【0031】
固体レーザ装置の一部である光共振器の基本構成は、通常に用いられている装置と同様である。本実施の形態では、集光器1として楕円集光器の一部を用いている。この集光器1は、銅材を加工して、その反射面に金のコーティングを施しており、楕円の一部で構成されている。もちろん、セラミック(例えば、フッ素金属雲母結晶をゾル・ゲル法により、ガラス状のマトリックスの中に析出して生成する)を用いても良い。そして、この反射面はLDの発振波長帯において90%以上の反射率を有することが望ましい。
【0032】
この集光器1の一方の焦点2に、例えば、YAG結晶を材料としたレーザロッド3を配置している。そして、他方の焦点4(集光器が楕円集光器であったと仮定した場合の仮想的な焦点)にLD5の出射面を配置している。LD5としては、例えばレーザロッド3の長手方向に沿ってLDアレイを配置した、一次元LDアレイモジュールが適当である。LD5から発せられるLD光の光軸6は、2つの焦点2,4を結ぶ直線に一致するようにしている。即ち、集光器が楕円集光器であったと仮定した場合の楕円の長軸と光軸6とが一致するようにしている。
【0033】
また、レーザロッド3とLD5との間には、例えば石英ガラスを材料としLD光を透過する透光部材としての隔壁7が配置されている。この隔壁7は、集光器1の開口側の側面で液体を密閉している。集光器の内面と隔壁7との間に形成される空間8は冷却媒体の流路となっている。この冷却媒体は、レーザロッド3を冷却するもので、一例として冷却水(アルコールなども適用が可能)が流されている。
【0034】
LD5から所定の発散角で発せられたLD光9は、隔壁7を介してレーザロッド3に入射される。集光器1における焦点2,4の間の距離(即ち、レーザロッド3の中心軸とLD5の出射面との距離)は、LD光のうちで成分10a,10b,10cのエネルギーが等しくなる値に設定される。ここで成分10aは、レーザロッド3へ直接に入射されるものである(つまり、成分10b,10cは、直接にはレーザロッド3へは入射されない)。これらの成分10b,10cは、一旦は集光器1に反射された後で間接的にレーザロッド3に入射される。
【0035】
また、集光器1が楕円集光器であると仮定したときの楕円離心率は、成分10a,10b,10cの光軸にそれぞれ対応する光軸6,11,12がお互いに120度の角度をなすように定められている。それによって、集光器1で反射されたLD光9は、レーザロッド3に対してそれぞれの角度から同じ角度で入射することになる。つまり、直接にレーザロッド3へ入射する成分10aは、LD光9の全エネルギーに対して30〜40%になるように、焦点2,4の間の焦点間距離が設定されているとも表現できる。
【0036】
この様にしてレーザロッド3が一様に励起されることになる。レーザ光13は、全反射ミラー14と部分反射ミラー15とで構成される光共振器によって発生する。なお、TEM00モード(横モード)のレーザ光13を発生させるために、モードセレクタ16が光共振器の内部に挿入されている。
【0037】
次に、本発明における集光器1の形状について、以下で図3(a)および図3(b)に基づいて詳細に説明する。なお、図3(a)はLD5から出射したLD光9における断面での相対角度と光強度(任意単位)との関係を示すグラフである。また、図3(b)はLD5から出射したLD9の平面図を示している。
【0038】
図3(a)および図3(b)に示すように、LD光9の発散角に関する半値全幅をθfwhmとする。なお、LD光9は自身の強度分布がガウシアン分布とする。このとき、LD光9の光強度について、先に図3(a)で示した相対角度に関係する分布I(θ)は、近似的に次式で与えられる。
i(θ)=exp[−2×(θ/θω)2] (1)
θω=θfwhm/1.18 (2)
ここで、以下の式を定義する。
I(ξ)=∫i(θ)dθ :積分区間(−∞,ξ) (3)
そして、I(ξ→∞)=1とする。
【0039】
即ち、(1)式の右辺における比例定数を選ぶことによって、LD光9の全エネルギーを“1”と規格化する。このとき、LD光9の全エネルギーのうちの1/3が含まれる発散角は以下の(4)式を満たすθ1で与えられる。
1−I(θ1)=1/3 (4)
(4)式に基づき、θ1は数値計算により求められて、以下に示すような値をとる。
θ1=0.216×θω=0.255×θfwhm (5)
また、角度θ1よりも外側に分布する光強度成分の光軸に係る発散角θ2は以下の(6)式を満たす。
1−I(θ2)=1/6 (6)
よって、以下の(7)式を得ることができる。
θ2=0.482×θω=0.569×θfwhm (7)
以上の結果を図2と図3で示した本発明の実施の形態を構成する集光器1に対応させると、θ1は、レーザロッド3へ直接に入射するLD光9の成分10aに係る光軸がLD光9全体の光軸となす発散角(半角)である。θ2は、一旦は集光器1によって反射した後に、レーザロッド3に入射するLD光9の成分10b,10cに係る光軸がLD光9全体としてみた場合の光軸となす角度に相当する。
【0040】
次に、集光器1に関する焦点2,4の間の距離を定める方法を示す。ここでは簡単のために、以降の計算では隔壁7による屈折の影響は無視することとする。
【0041】
図4に楕円を用いて示すように、レーザロッド3とLD光9の出射面との距離(つまり、集光器1に関した焦点2,4の間の距離)を2×kとし、レーザロッド3の半径をrとする。そのようにおくとθ1は以下の(8)式で与えられる。
θ1=sin-1(r/2k) (8)
ここで、(5)式と(8)式によって以下の(9)式が導かれる。
k=r/{2×sin(0.255×θfwhm)} (9)
例えば、LD光9の発散角θfwhm=30度、レーザロッド3の半径r=15mmとすると、θ1=76.5度では、k=5.63mmと計算できる。また、θ2=17.01度とも計算できる。
【0042】
次に、図4に基づいて集光器1に係る楕円の離心率eの求め方を説明する。まず、楕円の長軸と角度θ2をなす光軸が、一旦は集光器1によって反射した後に上記楕円の長軸となす角度をθ3とする。
【0043】
このような光軸と楕円の内面との交点P1の座標を(−x1,y1)とすると、以下の(10)式と(11)式が成り立つ。
x1=k×(tanθ3+tanθ2)/(tanθ3−tanθ2) (10)
y1=(x1−k)×tanθ2 (11)
本発明の実施の形態では、θ2,kはそれぞれ(7)式と(9)式で与えられ、θ3=60度が条件となっている。従って、x1,y1は、これらの値から計算できる。例えば、先に示した条件で考えるとx1=8.05mm,y1=4.19mmである。(−x1,y1)は、楕円の方程式を満たすものであるので以下の(12)式が成立する。
(x2+y2)/(1−e2)=k2/e2 (12)
従って、(12)式によりeを求めることができる。ここで(12)式の根から0≦e≦1を条件に適切な値を選択する。本実施の形態の場合には、k=5.63mm,x1=8.05mm,y1=4.19mmである。よって、これらの値からe=0.588を得る。以上により、本実施の形態における集光器1の楕円部分について形状(焦点間距離,離心率)を具体的に決定することができた。
【0044】
また、上述した第1の実施の形態に係る変形例を図5(a)により説明する。即ち、レーザロッド3に対して直接に入射されるLD光9の成分10aのみに作用する光学部材としてのシリンドリカルレンズ17を設けるものである。そして、このシリンドリカルレンズ17はLD5と隔壁7との間に設置されている。
【0045】
この変形例は、シリンドリカルレンズ17を通過した光の成分を持つLD光9をレーザロッド3に集光する構成である。つまり、集光器1で反射されてからレーザロッド3へ入射されるLD光9の成分10b,10cと同様にしてレーザロッド3へ集光するものである。
【0046】
また、図5(b)に示す構成もまた第1の実施の形態に係る別の変形例である。即ち、シリンドリカルレンズを隔壁7の一部に対して一体的に形成し、このシリンドリカルレンズが隔壁7を兼ねるものである。なお、図5(b)においては図5(a)と同一の構成には同一の符号を付したので、その説明は省略する。
【0047】
これらのような構成によって、レーザロッド3の内部では励起光の強度分布を一層TEM00モードの発振に適合したものとすることができる。また、上記の実施の形態やその変形例において、各々で図6に示すように隔壁7の外面におけるLD光9を遮らない位置に反射板18を設ければ、集光器1から反射されてきたLD光9を再びレーザロッド3へ入射させることができて、更に励起におけるレーザロッド3への集光効率を増すことができる。
【0048】
上述した第1の実施の形態およびその変形例に係る固体レーザ装置では、LD光9を三方向から対象にレーザロッド3に対して入射させることができる。また、レーザロッド3の中心軸での励起光の強度を強くするような強度分布を作ることができる。このため、レーザロッド3の片側一方向にLD5を配置する簡単で低コストである構成によっても、効率よくTEM00モードの発振を行なうことができる。また、この固体レーザ装置を基本波の光源として第二高調波を発生させることで、長寿命で高効率かつメンテナンス性に優れた第二高調波の固体レーザ装置を得ることもできる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態に係るLD励起型の固体レーザ装置の全体構成を示すブロック図である。そして、図8は図7のY-Y'線での断面を示した断面図である。
【0050】
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の作用を有する固体レーザ装置の集光器として、楕円集光器1aを用いる。この楕円集光器1aは、第1の実施の形態と同じく銅材を加工して、その反射面に金のコーティングを施しており、楕円集光器の一部で構成されている。もちろん、セラミック(例えば、フッ素金属雲母結晶をゾル・ゲル法により、ガラス状のマトリックスの中に析出して生成する)を用いても良い。そして、この反射面はLD光の発振波長帯において90%以上の反射率を有することが望ましい。
【0051】
また、楕円集光器の内部にはYAG結晶をレーザ媒質としたレーザロッド3とセラミック材(例えば、三井鉱山マテリアル製のマセライト(商品名)を用いることができる)の光拡散媒体19を配置している。LD光9はコリメートされた状態で、楕円集光器1aの側面に設けられたスリット22から導入されて光拡散媒体19を照射する。
【0052】
レーザロッド3は、冷却を行なう冷却水20(冷却媒体の一例)が流れているフローチューブ21の内部に設置されている。そして、レーザロッド3の中心軸は、楕円集光器1aの一方の焦点2が存在する軸の上に配置する。他方の焦点が存在する軸の上には、光拡散媒体19を配置する。そして、この光拡散媒体19もまた、LD光の発振波長帯において90%以上の反射率を有することが望ましい。
【0053】
また、光拡散媒体19の形状はレーザロッド3と同様にするとともにレーザロッド3と並行に配置されている。そして、ここでの説明では、第1の実施の形態と同様に中央部(光軸)で強い強度分布を持つレーザ光を得るために、光拡散媒体19の外径の大きさはレーザロッド3と同一かそれより小さくしている。そのような構成によって、光拡散媒体19で拡散された光は効率よくレーザロッド3に入射させることができる。
【0054】
楕円集光器1aの側面には、スリット22が設けてあり、LD5から発せられたLD光9はスリット22を通して光拡散媒体19へと照射される。LD5としては、第1の実施の形態と同じく、例えばレーザロッドの長手方向にLDアレイを配列した一次元LDアレイが適当である。なお、更に一次元LDアレイからのLD光9が出力される部位に円柱状レンズを設置すれば、本発明の目的により適合できるようなLD光9のコリメートが可能となる。
【0055】
次に上記構成の作用を説明する。LD光9が光拡散媒体19に照射されると、光拡散媒体19の表面での反射によってLD光9はその方向を変える。この際,光拡散媒体19への入射光は拡散作用を受ける。また、他の一部の入射光は、光拡散媒体19の内部へ入り込み、多数回の拡散を受けた後に光拡散媒体19の外部へ出射される。この現象は、光拡散媒体19がセラミックで形成されているために起こるものである。
【0056】
これらの作用によって、光拡散媒体19から二次的に発せられるLD光9は、その指向性が大幅に緩和されるとともに、光拡散媒体19は、あたかも光源として作用するようになる。この作用は、光学的にはフラッシュランプ励起型の固体レーザ装置におけるフラッシュランプと類似の光の放射特性が得られたことに相当する。
【0057】
楕円集光器1aの内部には、光格段媒体19が楕円の断面形状を形成した楕円集光器1aに係る一方の焦点4の存在する軸の上に配置されている。そのため、その像が他方の焦点2の存在する軸上に設置されているレーザロッド3の上に形成される。即ち、光拡散媒体19によって二次的に拡散された大部分のLD光9は、楕円集光器1aの内面にある反射面で反射されてレーザロッド3へ入射する。この作用によって、レーザロッド3には周方向からLD光9が入射することになるので、レーザロッド32を均一に励起することが可能になる。
【0058】
なお、上述の実施の形態では、LD5から出射されたLD光9をスリットを経由して光拡散媒体19へ導いて、光拡散媒体19から拡散したLD光9を楕円集光器1aで集光してレーザロッド3へと導き入射させた。しかし、図9に示すように、スリット22を用いない第2の実施の形態の変形例といえる方法もある。つまり、LD5から出射されたLD光9を集光レンズ23で楕円集光器1bに係る焦点4の上に配置された光拡散媒体19に集光し、この光拡散媒体19から拡散したLD光19を楕円集光器1bで反射してレーザロッド3へと入射させる。この様にしても上述した本発明の第2の実施の形態と同様の作用が得られる。
【0059】
また、第2の実施の形態やその変形例においては、レーザロッド3をフローチューブ21の内部に収納して冷却水20で冷却した。しかし、フローチューブ21を用いずに、楕円集光器1の内部に冷却水20などの冷却媒体を流す方法もある。その際、楕円集光器1a,1bの内部には、LD光9の光路に透光性を有する窓を設けたり、パッキングを設けることによって冷却媒体を密閉する構造にすればよい。
【0060】
上述の第2の実施の形態およびその変形例に係る固体レーザ装置では、光拡散媒体19がある大きさを持った二次的な光源として作用し,あたかもフラッシュランプ励起型の固体レーザ装置におけるフラッシュランプのように周方向に光を発する特性を示す。しかも、LD光9はフラッシュランプとは異なってYAG結晶とのマッチングが良い。従って、このLD光9を楕円集光器1a,1bによってレーザロッド3に集光すれば、レーザロッド3に対するほぼ周方向の全部から効率よくレーザロッド3を励起できる。
【0061】
また、これらで述べてきた第1の実施の形態および第2の実施の形態の固体レーザ装置では、メンテナンスの際に集光器1および楕円集光器1a,1bの内部にある光学系は、交換などの必要性がフラッシュランプ型の固体レーザ装置に比べて減少するという効果を有する。また、集光器1や楕円集光器1a,1bの外部にあるLD5を交換するだけで良いので、メンテナンス作業を容易に行なうことができる。これもフラッシュランプ型の固体レーザ装置よりも優れた点である。
【0062】
次に、上記の各実施の形態に係る固体レーザ装置を用いたレーザ加工装置の一例として、レーザマーカを図面を参照して説明する。
【0063】
図10は、一筆書き方式のレーザマーカの斜視構成図である。即ち、固体レーザ装置30からのレーザ光は、反射ミラー31a,31bをそれぞれアクチュエータ32a,32bを回動させて反射される。走査手段の一例としての反射ミラー31a,31bを通過したレーザ光は、集光レンズ33でテーブル34の上に載置されたICパッケージなどの被加工体35の表面に集光される。そして、レーザ光による一筆書き状の軌跡としてマーキングを行なう。
【0064】
この場合、第1の実施の形態で示した固体レーザ装置を用いれば、中央部が深くなった加工ができる。つまり、深堀加工や明瞭な線画加工そして微細加工に適合する。レーザ光の中心軸にピークのある強度分布を持ったレーザ光を出力するからである。
【0065】
また、第2の実施の形態で示した固体レーザ装置で光拡散媒体19がレーザロッドと同一かそれ以上の外径のものを用いれば、加工深さが厳しき制限されている対象への加工に好適である。これは、レーザロッド3から均一な強度なレーザ光が得られるために、マーキングでの加工深さが均一になり、かつ、信頼性の高い加工精度を得ることが可能であるためだからである。従って、例えばICパッケージへの加工に用いれば、半導体素子への熱などによるダメージを防ぐことができる。
【0066】
また、これとは逆に、光拡散媒体19がレーザロッド3よりも小さな外径のものを用いれば、第1の実施の形態と同様に、レーザ光の中央部(光軸)の強度が強い分布を持つ加工をすることができる。これは、レーザ光の中心軸にピークのある強度分布を持ったレーザ光を出力するためである。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、LD光を三方向から対象にレーザロッドに入射させることができ、レーザロッドの中心軸での励起光の強度を強くするような強度分布を作ることができるため、一方向に沿ったLDの配置であっても効率よくレーザロッドを励起するLD励起型の固体レーザ装置を得ることができる。
【0068】
また、この固体レーザ装置を用いることで長寿命で高効率かつメンテナンス性に優れたレーザ加工装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る固体レーザ装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】図1のY-Y'線での断面を示した断面図。
【図3】(a)は、LDからのLD光りの断面での相対角度と強度との関係を表すグラフで、(b)は、LDからのLD光の平面図。
【図4】楕円集光器における楕円の離心率の求め方に関する説明図。
【図5】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る変形例を示す断面図で、(b)は、他の変形例を示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る更なる変形例を示す断面図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る固体レーザ装置の全体構成を示すブロック図。
【図8】図7のY-Y'線での断面を示した断面図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る変形例を示す断面図。
【図10】本発明のレーザ加工装置としてのレーザマーカーの斜視構成図。
【図11】(a)は、従来の技術の固体レーザ装置の構成を示すブロック図で、(b)は、(a)のY-Y'線での断面を示した断面図。
【図12】従来の固体レーザ装置での励起状態を示す説明図。
【符号の説明】
1‥集光器,2・4‥焦点,3・40‥レーザロッド
5・41a・41b・41c・41d‥LD,7‥隔壁
9・46‥LD光,19‥光拡散媒体
Claims (7)
- レーザロッドの側面にレーザダイオードからの励起光を照射する際に前記レーザロッドに前記励起光を集光する集光器を具備した固体レーザ装置において、
前記集光器は楕円の一部をなすとともに、この集光器が前記楕円の二つの焦点のうちの一方には前記レーザダイオードからの前記励起光の出射面が配置され、前記焦点のうちの他方には前記レーザロッドの中心軸が配置され、かつ励起光の光軸方向が前記楕円の長軸方向に一致しており、
前記楕円の焦点間の距離は、前記レーザダイオードから前記レーザロッドへ直接入射するエネルギーが、前記レーザダイオードの発散角に関する半値全幅をもとに前記レーザダイオードの全エネルギーの1/3となるよう算出される第1の発散角及び前記レーザロッドの半径とから算出し、
さらに、前記楕円の離心率は、前記レーザダイオードから前記レーザロッドへ直接に入射する前記第1の発散角を持つ前記励起光の光軸と、第2の発散角であって、前記全体エネルギーから前記第2の発散角内の前記励起光のエネルギーの積分値を差し引いた残りが1/6となるよう算出される第2の発散角を持ち、前記第2の発散角に沿って伝播した前記励起光が、前記集光器に反射して前記レーザロッドに入射する際の前記集光器からレーザロッドまでの光軸とが、120度の角度をなすように定められている、
ことを特徴とする固体レーザ装置。 - 前記集光器は、開口部が前記励起光を通す透光部材で密閉されており、密閉された内部に冷却媒体を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の固体レーザ装置。
- 前記レーザダイオードと前記レーザロッドとの間に、前記レーザロッドへ直接に前記励起光を入射させる光学部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固体レーザ装置。
- 前記光学部材は、前記集光器の開口部を密閉する透光部材と兼ねていることを特徴とする請求項3に記載の固体レーザ装置。
- 前記透光部材の前記レーザダイオードに対向する面には、前記レーザダイオードから前記集光器の内部に入射する前記励起光を遮らない位置に、前記集光器で反射された前記励起光を前記レーザロッドの方向へと反射させる反射部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の固体レーザ装置。
- 前記集光器は、前記励起光の発振波長帯において90%以上の反射率を有するセラミックを材料にして形成されていることを特徴とする請求項1また
は請求項5に記載の固体レーザ装置。 - 被加工物を載置するテーブルと、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の固体レーザ装置と、
前記固体レーザ装置から出射するレーザ光を前記被加工物に対して相対的に走査する走査手段とを具備すること
を特徴とするレーザ加工装置。
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