JP4436635B2 - バクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法 - Google Patents

バクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法 Download PDF

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Description

この出願の発明は、有用物質の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、バクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法に関するものである。
発酵製品は、雑菌に侵されれば以下のような重大な問題を招くことになる。すなわち:
(1)培地に含まれる基質および栄養素がこの雑菌によって消費される;
(2)その結果、雑菌の繁殖が増大し、本命菌である有用物質生産菌の繁殖を上回り、有用物質生産菌が駆逐される;および
(3)また、雑菌が有用物質を分解、破壊する;
このような問題を回避、防止するためには、培養系に雑菌が侵入しない純粋培養系を確立する必要がある。
そのため、従来より、培養に用いる培地と装置には、蒸気等による加熱殺菌が行われている。工業用の発酵システムにおいて回分法や連続法を問わず、培地や装置等の殺菌方法は、(1)培地に含まれる栄養分が損傷を受けないこと、(2)スケールアップが可能であること、(3)自動化が行えること、(4)培養装置の金属腐食を防ぐこと、といった条件を満たす必要がある。しかも、当然に培養系内に雑菌が混入することを防止しなければならない。また、連続発酵を行う場合には、培養の定常状態を雑菌の侵入を防ぎながら長時間維持することが必要である。
たとえば、大規模工業プラントでは、殺菌方法として、殺菌の確実性および信頼性が高いこと、操作が容易であること、スケールアップに問題がないこと、自動化が容易であること、大量かつ大規模な装置の殺菌ができること等の利点を有する蒸気による加熱殺菌が使われている(たとえば、特許文献1等)。
また、上記のような蒸気による加熱殺菌は、外部からの雑菌侵入を防ぐ場合に、培養系と外部を遮断するためにも利用することができる。具体的には、攪拌器グランド部やサンプリング口、シード口、培養液排出口など、培養系と外部が接する部分には、常時、蒸気を充満させて殺菌し、外部から侵入してくる雑菌を殺菌し、培養系には侵入させない措置(スチームシール法)がとられる。
また、熱殺菌が不可能な装置を使う場合や、殺菌方法として非加熱殺菌方法を行うことが望ましい発酵プロセスもあり、この場合には、UV照射や放射線照射、電子線殺菌等による殺菌処理が考えられている(たとえば、特許文献2等)。
さらにまた、上記の殺菌方法の他に、ペニシリン耐性やストレプトマイシン耐性等の抗生物質耐性を有する発酵生物等の有用物質生産菌(たとえば、特許文献3)を用いて、培地に当該抗生物質を添加し、雑菌汚染を防止する方法も考慮することができる。
特開2002-65816号公報 特開平05-193627公報 特開2001-333766号公報
しかしながら、通常、工業生産を実施している発酵工業では、熱殺菌のためのコスト負担は、ユーティリティ構成費の大部分を占めている。特に、蒸気による加熱殺菌は、金属の腐食を促進し、プラント装置や配管の寿命を短縮させる一因となっている。また、蒸気による加熱殺菌は、培地栄養成分の破壊をひきおこし、しばしば阻害物の生成を伴うとういう問題もあった。
また、上記のようなUV照射や放射線照射、電子線殺菌等による殺菌処理方法では、スケールアップが困難なうえに、非常に大きなコストを必要とし、工業プロセス導入は現実的ではなかった。
さらに、抗生物質耐性を有する有用物質生産菌等を用いる場合は、用いた各種の抗生物質が、人体に有害で取り扱いに重大な危険性を有する副産物の産生の可能性があるという問題があった。
そこで、以上のとおりの事情に鑑み、この出願の発明は、蒸気等の加熱殺菌を行う必要もなく、コストを抑え、金属の腐食を防止し、プラント装置の各部品類の劣化を防止し、また培地成分の破壊および有用物質の生産阻害を抑制し、そして人体に有害な副産物を生じることなく有用物質の製造を実施することのできる、バクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、有用物質と、抗菌および/または殺菌作用を有するバクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法であって、無殺菌培地において該有用物質生産菌を培養することを特徴とする有用物質の製造方法を提供する。
また、この出願の発明は、第2には、無殺菌培地に無殺菌のアルカリを添加することを特徴とする有用物質の製造方法を、第3には、有用物質の生成過程で産出されたバクテリオシンを含有する培養液によって培養装置の殺菌処理を行う有用物質の製造方法を提供する。
第4には、バクテリオシンを産出する有用物質生産菌が、ペディオシン生産菌、ヌカシン生産菌またはナイシン生産菌である有用物質の製造方法を提供し、第5には、バクテリオシンを産出する有用物質生産菌が、Pediococcus属、Staphylococcus属、Lactococcus属、またはLactobacillus属に属する有用物質の製造方法を、そして、第6には、有用物質が、L-乳酸である有用物質の製造方法を提供する。
上記第1のバクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法によれば、蒸気等の加熱殺菌を行う必要もなく、コストを抑え、金属の腐食を防止し、プラント装置の各部品類の劣化を防止し、また培地成分の破壊および有用物質の生産阻害を抑制し、そして人体に有害な副産物を生じることもなく有用物質の製造を実施することを実現することができる。
上記第2の有用物質の製造方法によれば、上記第1の製造方法と同様な効果が得られ、さらに、経済的、効率的な培養を行うことができる。
上記第3の有用物質の製造方法によれば、上記第1および第2の製造方法と同様な効果が得られ、またバクテリオシンを含有する培養液を用いた殺菌処理により、経済的な効率性をさらに向上することができる
上記第4の有用物質の製造方法によれば、上記第1〜第3の製造方法と同様な効果が得られ、また、ペディオシン生産菌、ヌカシン生産菌、ナイシン生産菌いずれかの有する、広い抗菌スペクトルを持つバクテリオシンが生産される。
上記第5の有用物質の製造方法によれば、上記第1〜第の製造方法と同様な効果が得られ、より効率よくバクテリオシンが生産される。
そして、上記第6の有用物質の製造方法によれば、上記第1から第の製造方法と同様な効果を実現することができ、さらに、有用な有用物質であるL-乳酸を高純度で提供することができる。
この出願の発明は、以下のとおりの検討を踏まえて、発明者が鋭意研究の末なされたものである。
(1)加熱殺菌をはじめとする従来の方法を用いずに大規模な発酵工業プラントの殺菌を行う手段として、培養系内に、雑菌が生育できない抗菌物質が存在すればよいが、その抗菌物質が本命菌である有用物質生産菌自体を殺菌してしまうと発酵等の有用物質生産プロセスは成立しないということ;
(2)有用物質生産菌に影響を与えず、雑菌のみを殺菌する抗菌物質が、有用物質の生産速度を阻害してはならないということ;
(3)その抗菌物質が、人体に有害で、取り扱いに重大な危険性を有するものであってはならないということ;
以上のことから、確実に雑菌を殺菌し、発酵菌等の有用物質生産菌自体を殺菌せず、かつ、有用物質生産を阻害せず、さらに人体に危険でない抗菌物質が必要である。このような観点から、この出願の発明は、抗菌物質としてバクテリオシン(バクテリオシン生産菌)を利用している。さらに、侵入してくる雑菌はあらかじめ特定することは困難であるため、バクテリオシンの抗菌スペクトルは、なるべく広いものであることが望ましい。
たとえば、L-乳酸の製造に有用物質生産菌として乳酸菌を用いるが、この乳酸菌の生産するバクテリオシンは、広い抗菌スペクトルを持ち、空気中に存在するバチルス属菌や土壌中に存在するクロストリディウム属菌さらに黄色ブドウ球菌等に対して強い抗菌性を示す。このような特徴を有する乳酸菌を用いて、高純度なL-乳酸を高効率に生産することができ、また蒸気を用いないで雑菌汚染を防止する回分、あるいは、連続培養法を実施することができる。
すなわち、この出願の発明は、有用物質生産菌が、有用物質を生成するとともに、抗菌および/または殺菌作用を有するバクテリオシンをも産出する有用物質生産菌である。この有用物質生産菌から生成されたバクテリオシンにより、培地成分の破壊および有用物質の生産阻害を抑制して培地の調製を行うことができる。さらに、金属の腐食することなく、プラント装置の各部品類の劣化も抑えられて、培養装置の殺菌処理を行うことできることを特徴としている。
このような、製造方法によって、蒸気等の加熱殺菌を行う必要もなく、コストを抑えることができ、金属の腐食を防止し、プラント装置の各部品類の劣化を防止し、また培地成分の破壊および有用物質の生産阻害を抑制し、そして人体に有害な副産物を生じることもなく有用物質の製造を実施することを実現することができる。
「有用物質」とは、ヒトをはじめとする生命個体に対して、免疫能の向上や、健康促進、栄養の供給等といった有用な効果を有する物質のことを指す。たとえば、L-乳酸、ビタミンB12等のビタミン類等が挙げられる。「有用物質生産菌」とは、これら有用物質を生産する、乳酸菌、ビフィズス菌、ペディオシン生産菌、ヌカシン生産菌等の微生物のことを意味する。
また、「バクテリオシン」は、微生物により生産される広い抗菌スペクトルおよび強い抗菌性を有した抗菌物質であり、数多くの種類が知られている。このようなバクテリオシンを豊富に含有する、有用物質生産菌の培養に用いた使用済み培養液は、抗菌効果/殺菌効果を充分に備えており、これを殺菌液として再使用することにより、さらにコストを抑えることができる。もちろん、バクテリオシンを生産した微生物には、自身が生産したバクテリオシンに対しての耐久性/免疫性を有している。
この出願の発明の製造方法において、バクテリオシンは、安定、かつ、高濃度で生成することができるため、培養系の中に自然の雑菌汚染の防御機構を構築することができる。具体的には、バクテリオシンを産出する有用物質生産菌を培養工程に組み込むことによって、バクテリオシンが、発酵生産物等の有用物質と同等の速さで生産され、菌の増殖とともにバクテリオシンが培養系に蓄積される。これによって、培養系に雑菌に対する防御機構を備えることができる。この方法は、高分子ペプチド系バクテリオシンでも、二次代謝生産物でなくgrowth-associateで生産される抗菌物質であれば成立する。また、この方法は、Pediococcus属であるペディオシン生産菌、Staphylococcus属であるヌカシン生産菌、Lactococcus属(乳酸菌)であるナイシン生産菌に限定されるものではなく、バクテリオシン生産能と有用物質生産能とが、growth-associateで成立するように遺伝子操作した微生物でもよい。
上記のような防御機構を備えることにより、蒸気を用いずとも培養系への雑菌侵入を防ぎ、純粋培養を長時間維持することができる。
この出願の発明を実施するにあたり、有用物質産生菌は、特に限定されるものではないが、ペディオシン生産菌、ヌカシン生産菌およびナイシン生産菌のいずれかであることが好ましい。また、有用物質産生菌は、別の例として、Pediococcus属、Staphylococcus属、Lactococcus属、またはLactobacillus属に属していることが好ましい。
さらに、この出願の発明は、有用物質生産菌によって生産される有用物質が、乳酸であり、特に体内で分解されエネルギーとして使われ、免疫細胞の賦活や腸内細菌のコントロール、活性酸素除去への関与をしているL-乳酸であることが好ましい。なお、Lactococcus属のナイシン生産菌としては、たとえば、Lactococcus lactis IO-1(JCM7638)等が挙げられる。そして、上記に例示したペディオシン生産菌、ヌカシン生産菌、ナイシン生産菌等の各菌種は、自然界から抽出したものだけでなく、遺伝子組換え等の公知の遺伝子工学的な手法によって、乳酸等の有用物質の生産量をさらに増幅させたものとしてもよい。
上記のようなナイシン生産菌(乳酸菌)を利用した、この出願の発明の製造方法により、従来のような乳酸発酵における、雑菌汚染によって、体内で分解されず、蓄積すると傷害を引き起こすとされているD-乳酸が生成され、L-乳酸の相対的純度を低下させる問題を解消することができる。これによって、雑菌汚染を生ずることなく高純度のL-乳酸の製造法が確立することとなり、ポリ乳酸の原料としての高純度L-乳酸の大量生産が可能となる。
この出願の発明では、以上のように、蒸気等をはじめとする加熱殺菌を用いずに、殺菌が可能となることで生産コストを大きく引き下げることが可能となる。また、乳酸菌等の有用物質生産菌によって、生産される有用物質の品質も加熱処理等による劣化することもなくなる。
以下に、この出願の発明の実施の形態について、実施例を例示し、詳しく説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能である。
1.菌株
使用菌は発明者が、独自に分離したLactococcus lactis IO-1(JCM7638)を使用した。種菌は−85℃の凍結保存菌をTGC培地(Difco)に植菌し静置培養したものを用いた。これをグルコース3%、酵母エキス 0.5%、ポリペプトン 0.5%、NaC1 0.5%からなる培地100mlをErlenmyer Flaskに分注して、120℃、5分autoclave滅菌したものに接種して8時間培養したものをシードとした。
2.培地
主発酵に用いた培地は、コーンスターチ酵素糖化液(使用酵素 NOVO Thermamyl 120L、 Dextrozyme 225/75L)を希釈してグルコース5%に調製し、これにコーンスティープリカー(CSL)1%を添加し、pH調製したものである(含糖培地)。またCSL 1%を水に溶解したものを希釈水として使用した(無糖培地)。
3.殺菌方法
含糖培地及び無糖培地は、熱殺菌を行わず、精密濾過フィルター(0.2μm)を用いて除菌濾過した。
4.培養装置
連続培養に使用した装置は、図1の概要図に例示した構成を有している。
5.培養方法
図1に例示したとおり、主発酵槽(1)は全容1リットルのガラス製ジャーで、内部にマグネットスターラーの攪拌機(図示せず)を設置し、約400rpmの回転数でゆっくり攪拌している。ジャー全体をwater bathに浸け、37℃の温水を循環して培養温度を37℃に制御した。ジャーにpH測定用複合ガラス電極を装着し、pH測定制御器(3)(東亜電波製)で測定し、pH6.0(下限)でアルカリ(1N-NaOH)を熱殺菌せずフィードしてpH制御を行った。グルコースアナライザーで培地の残糖濃度を適時測定し、残糖レベルが1.5g/lとなった時点でアルカリフィード速度に比例して求めたグルコースフィード速度で培地の添加を行い、連続発酵を開始した。連続培養を実施するにあたり、ジャーから培養液を抜き出し、クロスフロー型精密濾過膜(2)(MICROZAPSP103、旭化成)を用いて培養液を循環し、微生物の濃縮を行った。濾過膜外側からは除菌液を抜き出して、製品である乳酸液を取り出す。また、ジャーにはレーザー濁度測定制御器(5)(たとえば、プロセスオンライン濁度計プローブ)を設置し、その出力をDDC controller(ModelLA-300 工一エスアール)に入力し、ジャーの濁度制御を行って、菌の濃縮管理を行うシステムも組み込んだ。濁度コントロールのシステムとしては、菌液を含有する培養液(V)を抜き出した。これらはペリスタリィックポンプ(61)(62)(63)によって同調させた。したがって、連続培養では、3種類の液(71、72、73)を供給し、2種類の液(74、75と76)の抜き出しを行う。すなわち、アルカリ添加量積算器(4)によるpH制御のためのアルカリ液(1N-NaOH)の添加量の積算値に対応した基質の糖をフィードした。
6.培養結果
培養液をサンプリングし、雑菌混入の有無を次のように調査した。
上記の実施例におけるサンプリングで得られた培養液中の雑菌混入の有無を調べる方法として、培養液をTGCプレートによるガスパック法、CMGプレート(酵母エキスブドウ糖完全栄養培地による寒天プレート)の両方に培養液を塗沫し、37℃、一昼夜培養し、雑菌が生育していないかどうか確かめた。その結果、いずれの培養においても雑菌の生育は認められなかった。
この培養液のL-乳酸純度は99.8%で、ポリ乳酸原料として十分の品質である。この方法で3週間、約500時間に渡り、全く雑菌汚染によるコンタミネーションが見られなかった。
1.菌株
実施例1と同様のLactococcus lactis IO-1(JCM7638)を使用した。
2.培地
実施例1に同じ培地を用いた。
3.殺菌方法
含糖培地および無糖培地は、熱殺菌および精密濾過フィルターによる除菌濾過のそのどちらも実施しなかった。
4.培養装置
実施例1と同様の培養装置を用いた。
5.培養方法
培養方法においても、実施例1と同様の培養用方法を採択した。
6.培養結果
この培養液のL-乳酸純度は99.8%で、ポリ乳酸原料として十分の品質である。この連続運転の間10日間約250hの間、雑菌汚染によるコンタミネーションは、全く見られなかった。すなわち培養液をサンプリングし、雑菌混入の有無を実施例1と同一の方法で検査した。その結果、いずれのプレートにおいても雑菌の生育は認められなかったことから、この出願の発明が乳酸の工業生産にも十分耐えうる方法であることが実証された。
1.菌株
使用した菌は、発明者が独自に分離したLactococcus lactis IO-1(JCM7638)を使用した。種菌は、-85℃の凍結保存菌をTGC培地に植菌し静地培養したものを用いた。これをグルコース3%、酵母エキス0.5%、NaCl 1%からなる培地100mlをErlenmyer Flaskに分注して120℃、5分オートクレーブ殺菌したものに接種して12時間培養したものをシードとした。
2.培地
グルコースが5%、酵母エキスが1%、ポリペプトンが1%、NaClが0.5%の組成の培地400mlを使用した。
3.殺菌方法
培地は、120℃、15分でオートクレーブ滅菌をした。
4.培養装置
主発酵槽は、全容1リットルのガラス製ジャーで、培養の前処理として、前培養で、すでに回分発酵の終了した除菌培養液(バクテリオシンを含む培養液)で主発酵槽及び発酵装置を洗浄し、除菌培養液でリンスした。
5.培養方法
ジャー内部にマグネットスターラーの攪拌機を設置し、400rpmの回転数でゆっくり攪拌する。ジャー全体をwater bathに浸け、37℃の温水を循環して温度を制御する。培養液のpHを1N-NaOHを添加して6.0とした。このとき1N-NaOH液は、精密濾過フィルター(0.2μm)によって除菌濾過して用いた。シード20mlを植菌してスタートし、回分法で18時間培養した。
6.培養結果
この培養液のL-乳酸の純度は99.9%で、ポリ乳酸原料として十分の品質である。培養終了液を実施例1に記載した雑菌検査法によって雑菌の有無を検査した。その結果、全てのプレートに雑菌の生育は見られなかった。
1.菌株
実施例3に同じ菌株を使用した。
2.培地
蒸留水900mlに、前培養ですでに回分発酵の終了した除菌培養液(バクテリオシンを含む培養液)を100ml添加し、原培養液濃度の10%とした溶液を400ml用意し、グルコースが5%、酵母エキスが1%、ポリペプトンが1%、NaClが0.5%の組成となるようそれぞれ添加した。
3.殺菌方法
培地の熱殺菌は行わなかった。
4.培養装置
実施例1と同じ装置を用いた。
5.培養方法
実施例1に同じ培養方法にて、培養した。
6.培養結果
この培養液のL-乳酸純度は99.9%で、ポリ乳酸原料として十分の品質である。
培養終了液を実施例1に記載した雑菌検査法によって雑菌の有無を検査した。その結果、全てのプレートに雑菌の生育は見られなかった。
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、蒸気等の加熱殺菌を行う必要もなく、コストを抑え、金属の腐食を防止し、プラント装置の各部品類の劣化を防止し、また培地成分の破壊および有用物質の生産阻害を抑制し、そして人体に有害な副産物を生じることなく有用物質の製造を実施することのできる、バクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法が提供される。
すなわち、この出願の発明が、工業的発酵で実施されることにより、高価な加熱殺菌装置や熱量コストが低下し、高い経済効率で運転することが要求される近代発酵工業のコスト削減に大きく貢献することができ、しかも、人体に安全な有用物質を生産することができる。
この出願の発明で用いた培養装置の構成を例示した概要図である。
符号の説明
1 主発酵槽
2 菌濃縮用クロスフロー型精密濾過膜
3 pH測定制御器
4 アルカリ添加量積算器
5 レーザー濁度測定制御器
61、62、63 ペリスターポンプ
71 pH制御のためのアルカリフィード速度
72 アルカリ添加量から求められる基質フィード速度
73 濁度制御のために添加される糖を含まない栄養成分培地のフィード速度
74 71に等量の培養ろ液引き抜き速度
75 72に等量の培養ろ液引き抜き速度
76 73に等量の培養液引き抜き速度
V 培養液

Claims (6)

  1. 有用物質と、抗菌および/または殺菌作用を有するバクテリオシンを産出する有用物質生産菌を利用した有用物質の製造方法であって、無殺菌培地において該有用物質生産菌を培養することを特徴とする有用物質の製造方法。
  2. 無殺菌培地に無殺菌のアルカリを添加することを特徴とする請求項1の有用物質の製造方法。
  3. 用物質の生成過程で産出されたバクテリオシンを含有する培養液によって培養装置の殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1または2記載の有用物質の製造方法。
  4. バクテリオシンを産出する有用物質生産菌が、ペディオシン生産菌、ヌカシン生産菌、または、ナイシン生産菌である請求項1から3いずれか記載の有用物質の製造方法。
  5. バクテリオシンを産出する有用物質生産菌が、Pediococcus属、Staphylococcus属、Lactococcus属、またはLactobacillus属に属する請求項1からいずれか記載の有用物質の製造方法。
  6. 有用物質が、L-乳酸である請求項1から5いずれかに記載の有用物質の製造方法。
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