JP4435024B2 - 非線形モデルを利用したプラントにおける運転制御システム及び運転制御方法 - Google Patents
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Description
図9は、線形モデルを用いた運転制御が行われるプラントの一例にかかり、蒸留塔に原油を供給する原油供給装置の構成を説明する図である。
また、各原油タンク11,12をそれぞれ原油供給系列14,13に接続する際には、開閉弁21Aおよび21Dを閉状態とし、かつ、開閉弁21Bおよび21Cを開状態とするようになっている。
図示するように、モデル予測制御(MPC)は、線形モデルを主体として、偏差予測ベクトルを将来区間においてLQG問題として解くシステムである。
しかしながら、石油化学プラントのような複雑なプロセスには、本来的に非線形の特性が存在するため、線形制御法の一つの手法であるMPCでは正確な制御を行うことが困難であるという問題がある。
また、MPCでは、条件数が100以上になると制御が不安定になるという問題があるが、上記したような石油化学プラントでは、前記条件数が数百から千以上になることがあり、MPCでは安定的に制御することが困難である。
具体的に、請求項1に記載の発明は、非線形モデルを用いて蒸留塔や反応炉等のプラントの運転制御を行う運転制御システムであって、非線形の化学工学モデルに含まれる所定の状態量に、時間的要素を付加して動的特性を与え、プロセス応答モデルを作成する動特性化手段と、このプロセス応答モデル、制御変数,外乱変数及び予め付与されたパラメータを用いて前記プラントにおける製品性状の予測を行う予測部と、この予測部による予測値と実際の分析結果とを比較し、その差分に基づいて前記プロセス応答モデルを補正する補正手段と、前記予測部の予測結果が入力され、前記予測結果に基づいて制御対象に対し所定の操作量を出力する制御器とを有する運転制御システムとして構成してある。
ここで、前記動特性化手段は、所定の状態量を、時間要素を含むプロセス応答モデルに変換するものである。また、前記プロセス応答モデルと分析結果とを比較して求められた補正値はプロセス応答モデルにフィードバックされ、この補正後のプロセス応答モデルを以後の予測に用いる。
本発明は、常圧蒸留塔や精密蒸留塔、FCC反応装置、エチレン装置分解炉などの様々なプラントの運転制御に適用が可能であるが、例えば蒸留塔に本発明を適用する場合は、前記非線形モデルとして塔内の熱収支モデル及び物質収支モデルを含むものを用いることができる。
また、本発明においては、非線形モデルに基づくロバストな制御系を容易に構築することが可能である。
なお、以下の説明では、制御対象となるプラントとして、図9に示す常圧蒸留塔を挙げて説明する。
図1は本発明の運転システムの一実施形態にかかり、その構成を説明するブロック図である。
図1に示すように、この実施形態の運転制御システムは、非線形モデルを用いて塔内各段における留分の性状予測を行う非線形モデル予測器1と、この非線形モデル予測器1の予測結果が入力され、前記予測結果に基づいて制御対象4に対し操作量(プロセス)を出力するとともに、入出力マトリックスにおいて対角要素に制御成分が設定されてなる制御器3と、この制御器3に前置され、静的モデルである非線形モデルに動的特性を付与する動特性化手段としての位相調整器2とを有している。
非線形モデル予測器1は、蒸留塔内の各段における留分のカットポイントを、プロセス応答モデルから予測する。この予測は、熱収支モデルや物質収支モデル、TBP曲線を含む非線形モデルを用いて行う。すなわち、熱収支モデルや物質収支モデルとTBP曲線とから、規格化された分析法(ASTMD86)を満足する各留分の分析相当値を予測する。
そこで、本発明では、プロセス応答モデル及びプロセス応答における位相差を利用して、位相調整器2で上記の静的モデルに動的特性を与え、動的な予測を可能にしている。
蒸留塔では、各留分の性状を一定に保つために、塔内の熱収支(ヒートバランス)を常に一定に保つ必要がある。しかし、熱収支を一定に保つための操作(プロセス入力)を行っても、その応答(プロセス応答)は、一定時間の遅れを持って現れることになる。
蒸留塔では、図2に示すように、熱収支、物質収支、計測値、分析値の順でプロセス応答が現れる。
図3(a)は、ある計測時点における塔内のTBP曲線である。このTBP曲線は、計測された塔内の圧力,温度分布及び熱収支に基づいて作成することができる。このTBP曲線において、両端の点X1,X2は、1atm換算の塔底温度(符号X1)と塔頂温度(同X2)を基に推定された温度である。そして、図3(a)に示すように、このTBP曲線に各留分の蒸留曲線を重ね合わせて、各留分のカットポイントを予測することが可能である。
各留分の留量と温度との関係は、図3(b)に示すように、一部が交差した連続山形となる。図において符号Y1〜Y4は計測温度における留分の抜き出し点を示している。この抜き出し点の位置から経験的(例えば、この蒸留塔においては、各留量の約1/3のところに抜き出し点が位置する推定する)に図示するような各留分の留量−温度線図を求めることができる。
この留分−温度線図をTBP曲線に重ね合わせ、各留分の留量−温度線図が交差する点(図の符号Z1,Z2,Z3で示す点)を求めることで、各留分のカットポイントを予測することができる。
上記で求めたプロセス応答モデルは予測であり、D86分析器等による分析結果が出力されたときに、分析値に基づいて予測値の補正を行うとよい。
また、熱収支及び物質収支の双方に基づいて予測を行って制御変数を決定する場合は、位相調整器2でプロセス応答モデルにおける両者の位相合わせを行って、制御器3に出力するようにするとよい。
この実施形態の制御器3は、フィルタ付PID制御器である。この実施形態では、PID制御器はDCS上に構築されている。
図4にこの実施形態の制御器3のブロック図を示す。
この制御器は、制御対象に対し、制御ループ間の協調やプロセス全体の安定性、むだ時間対策を目的として、制御器3内のPIDを主体とする主制御器3aと制御対象4との間に、フィルタ(一次フィルタあるいは高次フィルタ)3bを挿入している。符号3cは補償器である。
なお、このフィルタ付PID制御器の基本構成は、本発明の発明者が1997年1月6日に発表した計測自動制御学会論文集VOL.33、NO1「常圧蒸留塔のワンスポットチューニングPID制御」により公知である。
この実施形態の制御器3は、対角要素のみに制御成分が設定されるものとして設計されていて、システムへの入力、外乱が予測の形で表現されている。そのため、内的なフィードフォワード制御、非干渉制御となっている。
このような制御器3を用いることで、ロバストの向上が期待でき、非線形予測モデルとの相乗効果から、実用的な非線形モデル予測制御の効果が期待できる。
上記構成の本制御システムによる処理の手順を、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、目標値の他、留分の引火点(Flush Point)や流動点(Pour Point)、曇点(Cloud Point)等の各種変数を、非線形モデル予測器1に入力する(ステップS1)。パラメータは予め設定されているものとする。図7は、非線形モデル予測器1に入力される各種変数及びパラメータの一例を示す表である。図示するように、この実施形態では、23個の変数と30個のパラメータとが非線形モデル予測器1に入力される。
本発明の制御システムは、非線形の化学工学モデルを用い、装置特性が変化してもそれに対して追随できるようになっている。また、外乱があっても、その外乱を予測して制御できるようになっている。
図8は、本発明の運転制御システム及び方法を適用した蒸留塔における予測結果である。
例えば、制御器として本発明の発明者が過去に学会発表したフィルタ付PIDを例にあげて説明したが、上記と同様の作用を奏するものであれば、他の制御器を用いることも可能である。
また、本発明は、定常運転時に限らず、原油切り替え時のように装置特性が大きく変化する場合にも適用が可能である。
2 位相調整器
3 制御器
4 制御対象
Claims (6)
- 非線形モデルを用いて蒸留塔や反応炉等のプラントの運転制御を行う運転制御システムであって、
非線形の化学工学モデルに含まれる所定の状態量に、時間的要素を付加して動的特性を与え、プロセス応答モデルを作成する動特性化手段と、
前記プロセス応答モデル、制御変数,外乱変数及び予め付与されたパラメータを用いて前記プラントにおける製品性状の予測を行う予測部と、
この予測部による予測値と実際の分析結果とを比較し、その差分に基づいて前記プロセス応答モデルを補正する補正手段と、
前記予測部の予測結果が入力され、前記予測結果に基づいて制御対象に対し所定の操作量を出力する制御器と、
を有することを特徴とするプラントにおける運転制御システム。 - 前記状態量が塔内の熱収支で、現在の塔内温度分布と熱収支とから留分−温度線図を求め、この留分−温度線図から塔内各段の留分のカットポイントを予測し、予測されたカットポイントから前記プロセス応答モデルを作成することを特徴とする請求項1に記載のプラントにおける運転制御システム。
- 前記プロセス応答が所定の位相差で複数現れる場合に、最も早く現れるプロセス応答モデルを用いて予測を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラントにおける運転制御システム。
- 前記制御器は、フィルタ付PID制御器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラントにおける運転制御システム。
- 非線形モデルを用いて蒸留塔や反応炉等のプラントの運転制御を行う運転制御方法であって、 非線形の化学工学モデルに含まれる所定の状態量に、時間的要素を付加して動的特性を与え、プロセス応答モデルを作成し、
このプロセス応答モデル、制御変数,外乱変数及び予め付与されたパラメータを用いて前記プラントにおける製品性状の予測を行い、
この予測値と実際の分析結果とを比較し、その差分に基づいて前記プロセス応答モデルを補正し、
前記予測結果を制御器に入力して制御対象に入力する操作量を決定すること、
を特徴とするプラントにおける運転制御方法。 - 前記状態量が塔内の熱収支で、現在の塔内温度分布と熱収支とから留分−温度線図を求め、この留分−温度線図から塔内各段の留分のカットポイントを予測し、予測されたカットポイントから前記プロセス応答モデルを作成することを特徴とする請求項5に記載のプラントにおける運転制御方法。
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