図1は、本発明に従う画像処理装置の一実施形態である、インクジェットプリンタとイメージスキャナとを有する複合プリンタの回路構成を示す。なお、図1では、電力消費制御との関連性が深い回路要素と、それら回路要素間の電力の流れ(実線矢印で示す)及び電力消費制御のための制御信号の経路(点線で示す)が示されているが、電力消費制御との関連性の薄い信号(例えば、画像信号、印刷のための制御信号、イメージ読み取りのための制御信号など)の経路の図示は省略されている。
図1に示すように、この複合プリンタ回路10は、インクジェットプリンタに固有の機能又は制御を行うプリンタ部30と、イメージスキャナに固有の機能又は制御を行うスキャナ部40と、プリンタ部30とスキャナ部40に共通に設けられ、インクジェットプリンタとイメージスキャナの双方に関わる機能又は制御を行うシステム部20とから構成される。プリンタ部30とスキャナ部40は互いに独立して動作できると共に連携して動作することもできる。例えば、この複合プリンタが単なるプリンタとして又は単なるイメージスキャナとして動作する場合は、プリンタ部30又はスキャナ部40は、スキャナ部40又はプリンタ部30から独立して動作し、また、この複合プリンタが例えば複写機として動作する場合は、プリンタ部30とスキャナ部40が連携して動作する。システム20は、この複合プリンタのシステム全体の機能又は制御に関与する。
以下に、システム部20、プリンタ部30及びスキャナ部40にそれぞれ分類される具体的な回路について説明するが、しかし、その分類は説明の都合によるものであって厳密なものではなく、よって、以下の説明とは異なる分類をすることも可能である。
システム部20には、まず、電源回路が含まれる。この電源回路は、パワータイプの部品(例えば、各種のモータ、プリンタの印刷ヘッド、及びイメージスキャナの原稿照射ランプなど)に駆動電力を供給するための主電源回路201と、低電圧で作動するタイプの部品(例えば、CPUやASICのようなロジック回路、及びLEDを用いた光学センサなど)のための第1の副電源回路202と、中程度の電圧で作動するタイプの部品(例えばCCDイメージセンサなど)のための第2の副電源回路203とから構成される。主電源回路201は、外部の例えば商用電源100から交流100V電圧を入力して、これをパワータイプの部品を駆動するのに必要な所定の比較的高い(例えば42V)の直流電圧に変換し出力する。第1の副電源回路202は、主電源回路201からの例えば42Vの直流電圧を入力して、これを所定の低い(例えば、5Vと3.3Vの2種類)の直流電圧に変換して出力する。第2の副電源回路203は、主電源回路201からの例えば42Vの直流電圧を入力して、これをCCDイメージセンサなどを駆動するための所定の中程度(例えば、12V)の直流電圧に変換して出力する。主電源回路201は、出力電圧を定格電圧42Vに維持する通常状態の他に、出力電圧を、第1副電源回路202は正常に作動させ得るが他の部品(特に、パワータイプの部品)を実質的に作動し得ないような所定の低減された電圧(例えば、22.5V)に落として維持する低電圧(低電力)状態とがあり、後述するコントローラ204からの制御信号(点線)により通常状態と低電圧(低電力)状態を切替えることができる。
システム部20には、また、この複合プリンタ回路20の全体の制御及び画像処理を行うためのコントローラ204が含まれる。コントローラ204は、制御プログラム(ファームウェア)を実行することで制御動作を行うCPU211、制御プログラムを格納したプログラムROM(P-ROM)212、受信バッファやワーク領域や印刷バッファなどとして使用されるRAM213、この複合プリンタの各種ステータスや各種機能設定などを記憶する書換可能不揮発性メモリ(例えば、EEPROM214、又はFRAMなど)、外部のパーソナルコンピュータやデジタルカメラなどのホスト装置と通信するためのホストインタフェース(ホストI/F)回路215、外部のメモリカードを装着してメモリカードとデータをやり取りするためのカードインタフェース(カードI/F)回路216、及び、表色系変換やハーフトーニングなどの画像処理を行うためのASICである画像処理ASIC217などから構成され、そして、例えば第1の副電源回路202から電力の供給を受けて作動する。CPU211は、通常に情報処理を行い得る通常状態と、行い得る情報処理を制限して電力消費を通常状態より低減する低電力状態とがあり、制御プログラムに従って後に説明するような条件判断に基づき通常状態と低電力状態とを切替えることができる。また、CPU211は、画像処理ASIC217の動作クロックをON/OFF制御する機能も有している。
システム部20には、更に、モータドライバ共通部205が含まれる。モータドライバ共通部205は、後述するプリンタ部30に属するプリンタモータドライバ303、及び後述するスキャナ部40に属するスキャナモータドライバ407と一体的に結合して、プリンタ及びイメージスキャナ内の各種のモータ(例えば、プリンタ部30のキャリッジ(CR)モータ304や紙送り(PF)モータ306などのプリンタモータ、及びスキャナ部40のスキャナモータ408など)を駆動し制御するためのモータドライバ回路を構成する。このようにモータドライバ共通部205とプリンタモータドライバ303とスキャナモータドライバ407からなるモータドライバ回路は、物理的には一体物として(例えば、ワンチップのICとして)構成され得るが、機能的には次のように分かれている。すなわち、このモータドライバ回路の内、モータドライバ共通部205は、個々のモータに依存しない共通的なモータ制御機能(例えば、モータドライバ回路の全体の消費電力状態を通常状態とするか低電力常態とするかの切換制御など)を行う部分であり、全てのモータの制御に共用される。一方、プリンタ部30に属するプリンタモータドライバ303は、プリンタモータ(CRモータ304やPFモータ306など)に固有の機能を行う部分であり、また、スキャナ部40に属するスキャナモータドライバ407は、イメージスキャナのモータに固有の機能を行う部分である。このようなモータドライバ共通部205とプリンタモータドライバ303とスキャナモータドライバ407は、例えば主電源回路201及び第1副電源回路202から電力の供給を受けて作動する。モータドライバ共通部205とプリンタモータドライバ303とスキャナモータドライバ407を合わせた全体のモータドライバ回路は、通常に動作し得る通常状態の他に、通常状態よりも電力消費の小さい低電力状態を有し、コントローラ204からモータドライバ共通部205に入力される制御信号(点線)により通常状態と低電力状態を切替える。さらに、モータドライバ回路の内、プリンタモータドライバ303だけが独立して通常状態と低電力状態を切替えることや、スキャナモータドライバ407だけが独立して通常状態と低電力状態を切替えることもでき、これらの切替えも、コントローラ204からのモータドライバ共通部205に入力される制御信号(点線)によって行われる。
システム部20には、更に、後述するプリンタ部30のヘッド駆動回路301への電力供給をON/OFF制御するためのヘッド電源制御スイッチ206と、後述するプリンタ部30及びスキャナ部40内の各種光学センサ(例えば、プリンタ部30の紙端(PE)センサ309や紙幅(PW)センサ310や自動プラテンギャップ(APG)センサ311、及びスキャナ部40のホームポジション(HP)センサ406など)のように、元来的に電力消費量が他回路に比べて小さい低電力タイプの回路への電力供給をON/OFF制御するための低電力回路電源制御スイッチ207が含まれる。ヘッド電源制御スイッチ206及び低電力回路電源制御スイッチ207は、それぞれ、コントローラ211からの制御信号(点線)によりON/OFFを切替える。
プリンタ部30には、まず、印刷ヘッド302、及び、この印刷ヘッド302を駆動するためのヘッド駆動回路301が含まれる。ヘッド駆動回路301は、前述したシステム部20のヘッド駆動電源スイッチ206を通じて、例えば主電源回路201及び第1副電源回路202から電力の供給を受けて動作する。
プリンタ部30には、また、印刷ヘッド302を載せたキャリッジを走行させるためのキャリッジ(CR)モータ304、紙送り機構を動かすための紙送り(PF)モータ305、及び、CRモータ304とPFモータ305それぞれ駆動し制御するためのプリンタモータドライバ303が含まれる。前述したように、プリンタモータドライバ303は、モータドライバ共通部205及びスキャナドライバ407と合わさったモータドライバ回路全体として通常状態と低電力状態とに切り替わり得るだけでなく、プリンタモータドライバ303だけで独立して通常状態と低電力状態とに切り替わることもできる。これらの状態切替えは、前述したように、コントローラ204からモータドライバ共通部205に入る制御信号(点線)によって制御される。プリンタモータドライバ303は、低電力状態であるときには、CRモータ304とPFモータ305の励磁電流をOFFにする。
プリンタ部30には、更に、上記キャリッジの位置を数値として検出するためのキャリッジ(CR)エンコーダ307、紙送り量を数値として検出するための紙送り(PF)エンコーダ308、及び、CRエンコーダ307とPFエンコーダ308への電力供給をON/OFF制御するためのエンコーダ電源制御スイッチ306が含まれる。CRエンコーダ307とPFエンコーダ308は、エンコーダ電源制御スイッチ306を通じて、例えば第1副電源回路202から電力の供給を受けて作動する。エンコーダ電源制御スイッチ306は、コントローラ211からの制御信号(点線)によりON/OFFを切替える。
プリンタ部30には、更に、各種の光学センサ、例えば、紙送り経路の所定位置に用紙の前端が到達したことを検出するための紙端(PE)センサ309、用紙の幅を検出するための紙幅(PW)センサ310、及び、自動プラテンギャップ調整のためにプラテンギャップを検出するための自動プラテンギャップ(APG)センサ311などが含まれる。これら光学センサ309、310、311は、前述したシステム部20の低電力回路電源制御スイッチ207を通じて、例えば第1副電源回路202から電力の供給を受けて作動する。
プリンタ部30には、また更に、印刷剤(インク)カートリッジに搭載され、カートリッジ種別やインク消費量やその他所定のデータを保持するために利用される書き換え可能な不揮発性メモリ(例えば、カートリッジEEPROM311)が含まれる。カートリッジEEPROM311には、コントローラ204によって所定のデータの読み/書きが行われる。
スキャナ部40には、まず、読み取り対象の原稿に光を照射するランプ(例えば、蛍光ランプ)402と、このランプ402への電力供給をON/OFF制御するためのランプ電源制御スイッチ401が含まれる。ランプ402は、ランプ電源制御スイッチ401を通じて、例えば主電源回路201からの電力の供給を受けて作動する。ランプ電源制御スイッチ401は、コントローラ211からの制御信号(点線)によりON/OFFを切替える。
スキャナ部40には、また、原稿のイメージを読み取るためのイメージセンサ(例えば、CCDセンサ)404と、このイメージセンサ404への電力供給をON/OFF制御するためのイメージセンサ電源制御スイッチ403が含まれる。イメージセンサ404は、イメージセンサ電源制御スイッチ403を通じて、例えば第2副電源回路404から電力供給を受けて作動する。イメージセンサ電源制御スイッチ403は、コントローラ211からの制御信号(点線)によりON/OFFを切替える。
スキャナ部40には、また、イメージセンサ404から出力される光電変換信号(アナログ信号)をデジタルデータに変換するためのA/Dコンバータ405が含まれる。A/Dコンバータ405は、第1副電源回路202から電力の供給を受けて作動する。A/Dコンバータ405は、通常に動作し得る通常状態の他、通常状態より電力消費の小さい低電力状態を有し、コントローラ204からの制御信号(点線)によって通常状態と低電力状態とを切替える。
スキャナ部40には、また、ランプ402やイメージセンサ404などを搭載したキャリッジが所定のホームポジションに居るか否かを検出するための光学センサ(ホームポジション(HP)センサ)406が含まれる。HPセンサ406は、前述したシステム部20の低電力回路電源制御スイッチ207を通じて、例えば第1副電源回路202から電力の供給を受けて作動する。
スキャナ部40には、更に、上述したランプ402やイメージセンサ404などを搭載したキャリッジを移動させるためのスキャナモータ408と、このスキャナモータ408の駆動と制御を行うためのスキャナドライバ407とが含まれる。前述したように、スキャナドライバ407は、モータドライバ共通部205及びプリンタモータドライバ303と合わさったモータドライバ回路全体として通常状態と低電力状態とに切り替わり得るだけでなく、スキャナドライバ407だけで独立して通常状態と低電力状態とに切り替わることもできる。これらの状態切換えは、前述したように、コントローラ204からモータドライバ共通部205に入る制御信号(点線)によって制御される。スキャナドライバ407は、低電力状態であるときには、スキャナモータ408の励磁電流をOFFにする。
以上の構成をもつ複合プリンタ回路10において、電力消費の制御は、コントローラ204のCPU211が、制御プログラムに従って実行する。図2は、CPU211が行う電力消費制御の処理の機能的な構成を示す。
図2に示すように、この電力消費制御処理500は、複合プリンタ回路10のシステム部20を通常状態と低電力状態とに切替えて複合プリンタ回路10の電力消費を全体的に制御するためのシステム制御部510と、プリンタ部30内の特定の回路(以下、プリンタ固有部という)のみを通常状態と低電力状態とに切替えてプリンタ部30の電力消費のみを個別に制御するプリンタ個別制御部520と、スキャナ部40内の特定の回路(以下、スキャナ固有部という)のみを通常状態と低電力状態とに切替えてスキャナ部40の電力消費のみを個別に制御するスキャナ個別制御部530とを有する。
プリンタ個別制御部520は、プリンタ部30の使用状況を監視し、その結果に応じてプリンタ固有部を、通常に動作し得る通常状態521と、それより電力消費の小さい(又は電力消費の無い)低電力状態522とに切り替える。すなわち、プリンタ個別制御部520は、プリンタ固有部が通常状態521にある場合、プリンタの使用状況に関し所定の条件Aが成立したとき、プリンタ固有部を通常状態521から低電力状態522に切り替え、また、プリンタ固有部が低電力状態522にある場合、プリンタの使用状況に関し所定の条件Bが成立したとき、プリンタ固有部を低電力状態522から通常状態521に切り替える。
スキャナ個別制御部530は、スキャナ部30の使用状況を監視し、その結果に応じてスキャナ固有部を、通常に動作し得る通常状態531と、それより電力消費の小さい(又は電力消費の無い)低電力状態532とに切り替える。すなわち、スキャナ個別制御部530は、スキャナ固有部が通常状態531にある場合、スキャナの使用状況に関し所定の条件Cが成立したとき、スキャナ固有部を通常状態531から低電力状態532に切り替え、また、スキャナ固有部が低電力状態532にある場合、スキャナの使用状況に関し所定の条件Dが成立したとき、スキャナ固有部を低電力状態532から通常状態531に切り替える。
システム制御部510は、プリンタ部20とスキャナ部30の双方の使用状況を監視し、その結果に応じてシステム部20を、通常に動作し得る通常状態511と、それより電力消費の小さい低電力状態512とに切り替える。すなわち、システム制御部510は、システム部20が通常状態511にある場合、プリンタとイメージスキャナの双方の使用状況に関し所定の条件Eが成立したとき、システム部20を通常状態511から低電力状態512に切り替え、また、システム部20が低電力状態512にある場合、プリンタとイメージスキャナの双方の使用状況に関し所定の条件Fが成立したとき、システム部20を低電力状態532から通常状態531に切り替える。なお、後の具体的な動作説明から分かるように、システム部20を低電力状態512にした場合、プリンタ部20及びスキャナ部40の全てが自動的に低電力状態522、532となり、結局、複合プリンタ回路10のシステム全体が低電力状態になることになる。一方、システム部20が通常状態511である場合であっても、プリンタ部30内のプリンタ固有部又はスキャナ部40内のスキャナ固有部がプリンタ個別制御部520又はスキャナ個別制御部530による個別の制御によって、低電力状態522又は532になることがある。
ここで、プリンタ固有部には、図1に示したプリンタ部30内のプリンタモータドライバ303、CRモータ304、PFモータ305、CRエンコーダ306、PFエンコーダ308などが含まれ、よって、これらの電力消費状態はプリンタの使用状況に応じて個別に制御される。一方、プリンタ部30内のヘッド駆動回路301、印刷ヘッド302、PEセンサ309、PWセンサ310及びAPGセンサ311は、プリンタ固有部には含まれず、よって、これらの電力消費状態は個別には制御されず、システム全体の電力消費制御の一環で制御される。スキャナ固有部には、図1に示したスキャナ部40内のランプ402、イメージセンサ404、スキャナモータドライバ407及びスキャナモータ408が含まれ、よって、これらの電力消費状態はイメージスキャナの使用状況に応じて個別に制御される。一方、スキャナ部40内のA/Dコンバータ405及びHPセンサ406はスキャナ固有部には含まれず、よって、これらの電力消費状態は個別には制御されず、システム全体の電力消費制御の一環で制御される。
このように、プリンタ部30に関しては、プリンタモータドライバ303、CRモータ304及びPFモータ305のように、動作していない時であっても電力消費がある程度大きく、そのために、プリンタの使用状況に応じて個別にきめ細かく状態を切り替えることが省電力の観点から望ましい回路については、個別の電力消費制御が適用される。同様に、スキャナ部40に関しても、ランプ402、イメージセンサ404、スキャナモータドライバ407及びスキャナモータ408のように、動作していない時であっても電力消費がある程度大きく、そのために、プリンタの使用状況に応じて個別にきめ細かく状態を切り替えることが省電力の観点から望ましい回路については、個別の電力消費制御が適用される。一方、各種の光学センサ309、310、311、406のように電力消費が十分に小さく、よって、個別に制御するための構成の複雑化又はコストアップの方が個別制御による省電力効果よりも重大である回路については、個別の電力消費制御から外され、システム全体の消費電制御に組み込まれる。なお、具体的にどの回路を個別制御の対象にし、どの回路をシステム全体制御の対象にするかは、その装置のシステム全体及び個々の部品の仕様に応じて、この実施形態とは若干異なるようにすることができる。例えば、スキャナ部40のランプ402が電力消費の小さいLEDランプである場合、これを個別制御の対象から外してシステム全体制御の対象に組み入れても良いし、或いは、イメージセンサ404がCCDセンサでなく電力消費の小さいCISセンサである場合、これを個別制御の対象から外してシステム全体制御の対象に組み入れても良い。
上述した条件A〜Fは、例えば以下のようにすることができる。
条件Aは、プリンタが使用されていない又は使用される可能性が低いことであり、具体的には、「印刷ヘッド302がホームポジションでキャッピングされ且つキャリッジがロックされ且つ用紙搬送路から用紙が無くなった後その状態で所定時間(例えば3分)が経過した」こととすることができる。条件Bは、プリンタの使用が開始される又は開始される可能性が高いことであり、具体的には、「プリンタに動作要求が入った」こととすることができる。
条件Cは、スキャナが使用されていない又使用される可能性が低いことであり、具体的には、「スキャナのキャリッジがロックされ且つ原稿台を通じてスキャナ内部に入射する光量が実質的に変化しなくなった後その状態で1分が経過した」こととすることができる。条件Dは、スキャナの使用が開始される又は開始される可能性が高いことであり、具体的には、「スキャナに動作要求が入った又は原稿台を通じてスキャナ内部に入射する光量が所定量以上に増加又は減少した」こととすることができる。
条件Eは、プリンタとスキャナの双方が使用されていない又使用される可能性が低いことであり、具体的には、「プリンタ固有部とスキャナ固有部の双方が低電力状態にある」ことである。条件Fは、プリンタとスキャナ少なくとも一方の使用が開始される又は開始される可能性が高いことであり、具体的には、「条件B又は条件Dが成立した」ことである。
以下では、プリンタ個別制御部520、スキャナ個別制御部530及びシステム制御部510の制御動作をより具体的に説明する。
図3は、プリンタ個別制御部520が行うプリンタ固有部の電力消費制御の流れを示す。
図3に示すように、プリンタ固有部が通常状態にあるとき、プリンタの動作又は状態に関して条件Aが成立すると(ステップS1でY)、ステップS2〜S4が行われ、それによりプリンタ固有部が通常状態から低電力状態に移行する。
すなわち、ステップS2及びS3では、CRエンコーダ307及びPFエンコーダ308の回路電流が遮断される。これは、コントローラ204からの制御信号によりエンコーダ電源制御スイッチ306がターンOFFすることによって行われる。これと共に、ステップS4で、CRモータ304とPFモータ305の励磁電流が遮断される。これは、コントローラ204からの制御信号によりプリンタモータドライバ303が通常状態から低電力状態に移行することによって行われる。その際、CRモータ304又はPFモータ305がブラシレスDCモータである場合には、そのブラシレスDCモータは元々ショートブレーキの状態で励磁電流が流れていないが、プリンタモータドライバ303は、そのショートブレーキを解除する(つまり、ショートブレーキを維持するためのプリンタモータドライバ303内のトランジスタをOFFにする)ことにより、ショートブレーキを維持するためのプリンタモータドライバ303の電力消費も低減する。
プリンタ固有部が低電力状態にあるとき、条件Bが成立すると(ステップS5でY)、ステップS6〜S8が行われ、それによりプリンタ固有部が低電力状態から通常状態に移行する。
すなわち、ステップS6及びS7では、CRエンコーダ307及びPFエンコーダ308の回路電流が再び流される。これは、コントローラ204からの制御信号によりエンコーダ電源制御スイッチ306がターンONすることによって行われる。これと共に、ステップS8で、CRモータ304とPFモータ305の励磁電流の遮断が解除される。これは、コントローラ204からの制御信号によりプリンタモータドライバ303が低電力状態から通常状態に移行することによって行われる。ただし、CRモータ304及び/又はPFモータ305(通常、ステップモータかブラシレスDCモータである)がブラシレスDCモータである場合には、プリンタモータドライバ303は、ブラシレスDCモータの励磁電流を流すのではなく、ショートブレーキを開始する(つまり、ショートブレーキを維持するためのトランジスタをONにする)。さらに、CRエンコーダ307及びPFエンコーダ308の回路電流とCRモータ304とPFモータ305の励磁電流が遮断されている間にCRモータ304とPFモータ305の位置が動くなどの原因でコントローラ204(又は、プリンタモータドライバ303)で現在管理されているキャリッジ(CR)位置と紙送り(PF)位置が誤った値になっているおそれがあるため、ステップS9及びS10で、コントローラ204(又は、プリンタモータドライバ303)で管理されているキャリッジ(CR)位置と紙送り(PF)位置の初期化が行われる。これは、いわゆるホームシーク処理、すなわち、例えば、CRモータ304とPFモータ305をそれぞれ駆動してキャリッジ及びPFモータ305のそれぞれの機械的位置を所定の原点位置に設定し、その状態でキャリッジ(CR)位置と紙送り(PF)位置の値を原点値に設定するというような方法で行われる。
図4は、スキャナ個別制御部530が行うスキャナ固有部の電力消費制御の流れを示す。
図4に示すように、スキャナ固有部が通常状態にあるとき、イメージスキャナの動作又は状態に関して条件Bが成立すると(ステップS21でY)、ステップS22〜S25が行われ、それによりスキャナ固有部が通常状態から低電力状態に移行する。
すなわち、ステップS22及びS23では、原稿照射ランプ402及びイメージセンサ404への電力供給が遮断される。これは、コントローラ204からの制御信号によりランプ電源制御スイッチ401及びイメージセンサ電源制御スイッチ403がターンOFFすることによって行われる。また、ステップS24では、A/Dコンバータ405が、コントローラ2からの制御信号により通常状態から低電力状態に移行する。また、ステップS25では、スキャナモータ408の励磁電流が遮断される。これは、コントローラ204からの制御信号によりスキャナモータドライバ407が通常状態から低電力状態に移行することによって行われる。その際、スキャナモータ408(通常、ステップモータかブラシレスDCモータである)がブラシレスDCモータである場合には、そのブラシレスDCモータは元々ショートブレーキの状態で励磁電流が流れていないが、スキャナモータドライバ407は、そのショートブレーキを解除する(つまり、ショートブレーキを維持するためのスキャナドライバ407内のトランジスタをOFFにする)ことにより、ショートブレーキを維持するためのスキャナドライバ407の電力消費を低減する。また、図示してないが、スキャナモータの位置(つまり、原稿照射ランプ402及び/又はイメージセンサ404を搭載したキャリッジの位置)をスキャナモータ408への駆動パルスではなくエンコーダからの検出パルスで計測している場合には、そのエンコーダの回路電流もOFFにされる。
スキャナ固有部が低電力状態にあるとき、条件Cが成立すると(ステップS26でY)、ステップS27〜S30が行われ、それによりスキャナ固有部が低電力状態から通常状態に移行する。
すなわち、ステップS27及びS28では、原稿照射ランプ402及びイメージセンサ404への電力供給が再び開始される。これは、コントローラ204からの制御信号によりランプ電源制御スイッチ401及びイメージセンサ電源制御スイッチ403がターンONすることによって行われる。また、ステップS29で、A/Dコンバータ405が、コントローラ204からの制御信号により低電力状態から通常状態に移行する。更に、ステップS30では、スキャナモータ408の励磁電流の遮断が解除される。これは、コントローラ204からの制御信号によりスキャナモータドライバ407が低電力状態から通常状態に移行することによって行われる。ただし、スキャナモータ408がブラシレスDCモータである場合には、スキャナモータドライバ407は、ブラシレスDCモータの励磁電流を流すのではなく、ショートブレーキを開始する(つまり、ショートブレーキを維持するためのトランジスタをONにする)。さらに、ステップS31で、コントローラ204(又は、スキャナモータドライバ407)で管理されているスキャナモータ位置(つまり、原稿照射ランプ402及び/又はイメージセンサ404を搭載したキャリッジの位置)の初期化が行われる。これは、いわゆるホームシーク処理、すなわち、例えば、スキャナモータ408を駆動してスキャナモータ408(キャリッジ)の機械的位置を所定の原点位置に設定し、その状態でスキャナモータ位置の値を原点値に設定するというような方法で行われる。
図5は、システム制御部510が行うシステム部10(システム全体)の電力消費制御の流れを示す。
図5に示すように、システム部10が通常状態にあるとき、プリンタ及びイメージスキャナに関して条件Eが成立すると(例えば、プリンタ固有部及びスキャナ固有部の双方が低電力状態になると)(ステップS41でY)、ステップS42〜S50が行われ、それによりシステム部10が通常状態から低電力状態に移行する(つまり、システム全体が低電力状態になる)。
すなわち、ステップS42〜S43では、コントローラ204内のEEPROM214及びインクカートリッジ上のカートリッジEEPROM311に、そこに保存されるべき情報の最新データ(例えば、この複合プリンタの最新のステータスやエラー履歴、最新のインク消費量、最新の印刷枚数原稿照射など)が書き込まれ(S42)、また、コントローラ204のCPU211のNMI(ノンマスカラブルインタラプト)機能がディセーブルにされ(S43)、その後、コントローラ204からの制御信号で主電源回路201が通常状態から低電圧(低電力)状態に移行する(S44)。ここで、主電源回路201を低電圧(低電力)状態にする前にEEPROM214及び311に最新データを書き込む理由は、主電源回路201を低電圧(低電力)状態になるとEEPROM214及び311へのデータ書き込みが不能になるため、そうなる前に最新データを不揮発性メモリに退避しておくことで、低電圧(低電力)状態中に何らかの原因(例えば、ユーザによる手動電源スイッチ200のターンOFFなど)で主電源回路201が完全にOFFされた場合に備えるためである。また、主電源回路201を低電圧(低電力)状態にする前にCPU211のNMI機能をディセーブルにする理由は、CPU211は主電源回路201の出力を監視しており、その出力電圧が低下して所定閾値(低電圧状態の出力電圧、例えば22.5Vよりも高く、例えば、35Vである)より下がるとNMIが働き、主電源回路201がターンOFFしたと判断してシステム全体を停止させるための所定の制御動作を行うが、そのようなシステム停止動作を行わせないようにするためである。
また、ステップS45〜S46では、プリンタ部20とスキャナ部30の各種光学センサ、例えば、PEセンサ309、PWセンサ310、APGセンサ311、及びHPセンサ406などの最新レベルを示すデータのバックアップが、コントローラ204内の所定メモリ(例えば、RAM213又はEEPROM214)に取られ(S45)、その後に、これら光学センサ309、310、311及び406への光電流の供給が遮断される(S46)。光学センサへの光電流供給の遮断は、コントローラ204からの制御信号で低電力回路電源制御スイッチ207がターンOFFすることで行われる。ここで、光学センサへの光電流供給を遮断する前に光学センサの最新レベルデータのバックアップを取る理由は、図6の流れ図に示すように、何らかの理由でコントローラ204が或る光学センサのレベルをレポートする必要が生じたとき(例えば、ホストから問い合わせがあったとき)、システム全体が低電力状態になっていて該当光学センサの光電流供給が遮断されていた場合(ステップS71でY)、低電力状態に入る直前に取られた該当光センサのレベルのバックアップデータをレポートする(ステップS73)ためである。なお、システム全体が低電力状態にある間は、光学センサのレベルが変化するような事象又は動作(例えば、紙送り、キャリッジ移動など)が行われることはほとんど無いので、低電力状態に入る直前のバックアップデータを代用して実際上問題が生じることはほとんどない。
また、ステップS47では、ヘッド駆動回路301への電力供給が遮断される。これは、コントローラ204からの制御信号でヘッド駆動電源制御スイッチ206がターンオフすることで行われる。また、ステップS48で、モータドライバ共通部205、プリンタモータドライバ303及びスキャナモータドライバ407からなるモータドライバ回路全体が、コントローラ204からの制御信号で、低電力状態になる。
また、ステップS49で、コントローラ204内の画像処理ASIC217のクロックが、CPU211からの制御信号で停止される。画像処理ASIC217のメモリ内のデータなどを消去されないために、画像処理ASIC217への電力供給は維持されるが、クロックを停止することで画像処理ASIC217の動作が止まるので電力消費が低減される。
以上のステップS42〜S49が行われた後、ステップS50で、CPU211のコアが通常状態から低電力状態に移行する。こうして複合プリンタ回路10のシステム全体が低電力状態になる。
システム全体が低電力状態にあるとき、条件Eが成立すると(すなわち、条件B又は条件Dのいずれかが成立すると)(ステップS51でY)、ステップS52〜S59が行われ、それによりシステム部20が低電力状態から通常状態に移行する。
ずなわち、まず、ステップS52でCPU211のコアが通常状態に復帰する。この後、ステップS53〜S59が行われる。
すなわち、ステップS53〜S55では、コントローラ204からの制御信号で主電源回路201が低電圧(低電力)状態から通常状態に復帰し(S53)、それにより主電源回路201の出力電圧が上昇してCPU211のNMIが働く閾値電圧(例えば、35V)を超えた(ステップS54でH)後、CPU211のNMI機能がイネーブルにされる(S55)。
また、ステップS56では、プリンタ部20とスキャナ部30の各種光学センサ309、310、311及び406への光電流の供給が開始される。また、ステップS57では、ヘッド駆動回路301への電力供給が再開される。これらは、コントローラ204からの制御信号で低電力回路電源制御スイッチ207及びヘッド駆動電源制御スイッチ206がターンONすることで行われる。
また、ステップS58で、モータドライバ共通部205が、コントローラ204からの制御信号で通常状態に復帰する。なお、その際、条件Bが成立している場合はプリンタモータドライバ303も一緒に通常状態に復帰し、また、条件Dが成立している場合はスキャナモータドライバ407も一緒に通常状態に復帰する。
また、ステップS59で、画像処理ASIC217のクロックが、CPU211からの制御信号で動作を開始する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、他の様々な形態で実施することが可能である。
例えば、上述した実施形態では、図3に示したように、プリンタ部30の個別の消費電力制御において、プリンタ部30内のCRエンコーダ307やPFエンコーダ308などのエンコーダの回路電流を低電力状態でOFFにしているが、この場合、通常状態に回復する時に、ステップS9、S10に示すようにホームシークを行って位置の初期化を行う必要があり、その分、プリンタ部30が正常に動作を開始できる状態になるまでに時間がかかる。スキャナ部40においても、エンコーダを用いてスキャナモータ位置を管理している場合、スキャナ部40の個別制御でエンコーダの回路電流をOFFにすることができるが、やはり、ホームシーク分の回復遅れが発生する。このような、ホームシーク分の回復遅れをなくすために、上述したようなエンコーダ類は、消費電力制御の対象から外す(つまり、低電力状態であっても回路電流はOFFにしない)ようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、上述したエンコーダ類は個別制御の対象となっているのに対し、PEセンサ309、PWセンサ310、APGセンサ311、HPセンサ406などの光学センサ類は、コスト削減のために、個別制御ではなく、システム制御の対象としている。しかし、光学センサ類だけでなくエンコーダ類も、個別制御ではなく、システム制御の対象とすることで、更なるコスト削減を図ることもできる。このように元来消費電力の小さく且つ同じ電源を共用する複数の小回路は、個別制御ではなく、システム制御の対象とすることで、消費電力節約効果に大きな影響を与えることなく、コスト削減効果を得ることができる。
また、PEセンサ309、PWセンサ310、APGセンサ311、HPセンサ406などのセンサ類については、光学センサのような電気式の部品に代えて、機械式の部品を用いるようにすれば、消費電力が無いので、一層の消費電力節約効果が得られる。
上述した実施形態では、図1におけるプリンタ部30内の比較的に消費電力が大きいプリンタモータやそのドライバ類とスキャナ部40内の比較的に消費電力が大きいランプやスキャナモータやモータドライバ類が、個別制御の対象となっており、プリンタ部30及びスキャナ部40内の比較的に消費電力の小さい光学センサ類、並びにプリンタ部30及びスキャナ部40に共用されるシステム部20が、システム制御の対象となっている。変形例として、図1におけるシステム部20内の画像処理回路(プリンタ部30へ入力されることになる印刷対象に画像データの前処理や、スキャナ部40から出力されるスキャン画像データの後処理などを行うための回路であり、図1に示された例では、コントローラ204内の画像処理ASIC217に搭載されている)を、システム制御の対象から外して、画像処理の必要性に応じた個別制御の対象とすることもできる。以下では、そのような実施形態について説明する。
図7は、図1に示したコントローラ204の内部構成、とりわけ画像処理に関わる部分の構成、をより詳細に示したものである。図7において、点線矢印はコントローラ204 内の各部に供給される周波数の異なる複数種類のクロック信号の経路を示し、また、実線矢印は画像データが伝送される経路を示している。
図7に示すように、CPU211、画像処理ASIC217、及びCPU211や画像処理ASIC217に、それら駆動に必要な複数種類のクロック信号を供給するためのクロックジェネレータ231などが、1チップのLSI、例えばシステムオンチップ221上に搭載されている。このシステムオンチップ221に、USB回路233(ホストコンピュータやデジタルカメラやストレージ装置などの外部機器と通信するための回路であり、図1のホストI/F回路215に相当する)や、カード用ASIC235(カードI/F回路216を通じてのメモリカードとの通信を制御する回路)などが接続されている。なお、カード用ASIC235もシステムオンチップ221に組み込まれていても良い。
画像処理ASIC217には、インタフェース(I/F)制御回路223、画像処理回路225、プリンタ制御回路227、スキャナ制御回路229、及びゲート回路231、233、235などが含まれている。I/F制御回路223は、外部機器と接続されたUSB回路233との画像データや制御データの入出力を制御する。画像処理回路225は、印刷対象の画像データに対する所定の前処理(例えば、色変換やハーフトーニングなど)や、スキャンされた画像データに対する所定の後処理(例えば、JPEG圧縮、回転、サイズ変更など)や、メモリカードや外部機器から読み込まれた画像データに対する各種画像処理(例えば、JPEG解凍、回転、サイズ変更など)などを行う。プリンタ制御部227は、画像処理回路225から出力される印刷画像データをプリンタ部30へ伝送し、また、その印刷画像データが正しく印刷されるよう、プリンタ部30やモータドライバ共通部205(図1参照)の動作を制御する。スキャナ制御回路229は、原稿画像のスキャニングが正しく行われるよう、スキャナ部40やモータドライバ共通部205(図1参照)の動作を制御し、また、スキャナ部40から出力されるスキャン画像データを画像処理回路225に出力する。
インタフェース(I/F)制御回路223、画像処理回路225、プリンタ制御回路227及びスキャナ制御回路229は、それぞれ、クロックジェネレータ231から供給されるクロック信号に同期して動作する。ゲート回路231、233、235は、画像処理回路225、プリンタ制御回路227及びスキャナ制御回路229の電力消費状態を制御するために、CPU211によって開閉制御される。
すなわち、画像処理回路225へは、ゲート回路231を通じてクロック信号が供給される。ゲート回路231が開いているときは、画像処理回路225は通常に動作する(電力消費状態が通常状態である)が、ゲート回路231が閉じているときは、画像処理回路225は停止する(電力消費状態が低電力状態である)。この変形例では、ゲート回路231の開閉制御、つまり、画像処理回路225の電力消費状態の制御は、上述したシステム制御の対象から外され、画像処理回路225それ自体の動作の必要性に応じて個別的に行われる。
プリンタ制御回路227は、クロックジェネレータ231が動作している限り常にクロック信号が供給されて動作する部分と、ゲート回路233を通じてクロック信号が供給される部分とを有する。前者の部分は、プリンタ制御回路227のうち、常に動作している必要がある部分(例えば、CPU211に割り込みをかける回路など)であり、後者の部分は、少なくともプリンタ部30が低電力状態にあるときには停止していてよい部分である。ゲート回路233が開いているときは、プリンタ制御部227は通常に動作する(電力消費状態が通常状態である)が、ゲート回路233が閉じているときは、プリンタ制御部227の上記後者の部分が停止する(電力消費状態が低電力状態である)。ゲート回路233の開閉制御、つまり、プリンタ制御回路227の電力消費状態の制御は、上述したシステム制御に属してもよいし、或るいは、上述したプリンタ個別制御に属してもよい。
スキャナ制御回路229は、クロックジェネレータ231が動作している限り常にクロック信号が供給されて動作する部分と、ゲート回路235を通じてクロック信号が供給される部分とを有する。前者の部分は、スキャナ制御回路229のうち、常に動作している必要がある部分(例えば、CPU211に割り込みをかける回路など)であり、後者の部分は、少なくともスキャナ部40が低電力状態であるときには停止していてよい部分である。ゲート回路235が開いているときは、スキャナ制御部229は通常に動作する(電力消費状態が通常状態である)が、ゲート回路235が閉じているときは、スキャナ制御部229の上記後者の部分が停止する(電力消費状態が低電力状態である)。ゲート回路235の開閉制御、つまり、スキャナ制御回路229の電力消費状態の制御は、上述したシステム制御に属してもよいし、或るいは、上述したスキャナ個別制御に属してもよい。
以下では、個別制御の対象である画像処理回路225について、より詳細に説明する。
画像処理回路233は、USB回路233からI/F制御回路223を通じて画像データを入力したり、後述するカードI/F回路216からカード用ASIC235を通じて画像データが入力したり、或いは、スキャナ制御部229から画像データを入力したりする。そして、画像処理回路233は、入力した画像データに対して、後述するような複数種類の画像処理の全部又は一部を逐次的に又は選択的に施すことができる。また、画像処理回路233は、処理された画像データをプリンタ制御部227に出力したり、I/F制御回路223を通じてUSB回路233に出力したり、カード用ASIC235を通じてカードI/F回路216へ出力したりする。このように、画像処理回路233は、プリンタ部30、スキャナ部40、外部機器及びメモリカードなどの間でやりとりされる画像データに対する種々の画像処理を行う。
図8は、画像処理回路225の内部構成を示す。
図8に示すように、画像処理回路225は、色変換回路241、ハーフトーン処理回路243、インタレース処理回路245、JPEG解凍回路247、回転処理回路249、サイズ変更回路251、JPEG圧縮回路253などを有する。色変換回路241は、RGB色空間の画像データからCMYK色空間の画像データへの色変換を行う。ハーフトーン処理回路243は、多階調ビットマップ画像データから擬似的に同じ階調に見える低階調ビットマップ画像データへの面積階調化処理(ハーフトーン処理)を行う。インタレース処理回路245は、インタレース印刷を行う場合に、ハーフトーン処理された印刷対象のビットマップ画像データのピクセル配列を、インタレース印刷に適した配列に変換する。JPEG解凍回路247は、圧縮されていない形式のビットマップ画像データをJPEG形式に圧縮する。回転処理回路249は、画像データの回転処理を行う。サイズ変更回路251は、画像データの拡大や縮小を行う。JPEG圧縮回路253は、JPEG形式の画像データを圧縮されていない形式のビットマップ画像データを解凍する。
上述した色変換、ハーフトーン処理、インタレース処理及びJPEG解凍処理などは、印刷を行う場合に印刷対象の画像データに対する前処理として行われることが多い。また、上述したJPEG圧縮は、例えば、スキャン部40から出力されたスキャン画像データに対する後処理として行われる。また、上述した回転処理やサイズ変更処理などは、印刷対象の画像データに対する前処理として行われることもあれば、スキャン画像データに対する後処理として行われル場合もあれば、メモリカードや外部機器から読み込まれたその画像データを表示又は格納するときの前処理として行われる場合もある。
このように画像処理回路225は、さまざまな場面で使用されることになり、そして、その動作タイミングは、プリンタ部30の動作タイミングからもスキャナ部40の動作タイミングからも異なることになる。そこで、画像処理回路225の消費電力の制御を、プリンタ固有部やスキャナ固有部の消費電力制御から独立させて、画像処理回路225それ自体の使用状態に応じた独自のタイミングに制御することにより、より高い省電力効果が得られることになる。しかも、印刷時に使う画像処理のための回路も画像スキャン時に使う画像処理のための回路も1つのLSIチップに集約して、それらの電力消費状態の制御を一括して行うことにより、画像処理回路225の簡単になりコストが下がるという利点が得られる。
図9は、この変形例においてCPU211が行う電力消費制御の処理の機能的な構成を示す。
図9において、プリンタ個別制御部520とスキャナ個別制御部530の動作は、すでに図2を参照して説明した動作と同じである。画像処理個別制御部620は、画像処理回路225の使用状況を監視し、その結果に応じて図7に示したゲート回路231を開閉することで、画像処理回路225の電力消費状態を通常状態(動作状態)621と、それより消費電力が小さい低電力状態(停止状態)622に制御する。すなわち、画像処理個別制御部620は、画像処理回路225の電力消費状態が通常状態621にあるとき、条件Gが成立すると、ゲート回路231を閉じてクロック信号の画像処理回路225への供給を止めることで、画像処理回路225の電力消費状態を低電力状態622に切り替える。また、画像処理個別制御部620は、画像処理回路225の電力消費状態を低電力状態622にあるとき、条件Hが成立すると、ゲート回路231を開いてクロック信号の画像処理回路225への供給を開始することで、画像処理回路225の電力消費状態を通常状態621に切り替える。
ここで、条件Gは、画像処理回路225が使用されていない又は使用される可能性が低いことであり、例えば、「画像処理回路225の動作要求が現在存在しない」、つまり、「図8に示した複数種の画像処理のいずれをも実行する必要が現在ない」ことである。また、条件Hは、画像処理回路225が使用されている又は使用される可能性が高いことであり、例えば、「画像処理回路225の動作要求が発生した」こと、つまり、「図8に示した複数種の画像処理のいずれかを実行する要求が発生した」ことである。
図9を再び参照して、システム制御部610は、プリンタ部20とスキャナ部30と画像処理回路225の使用状況を監視し、その結果に応じてシステム部20を、通常に動作し得る通常状態511と、それより電力消費の小さい低電力状態512とに切り替える。すなわち、システム制御部510は、システム部20が通常状態511にある場合、プリンタとイメージスキャナと画像処理回路225の使用状況に関し所定の条件Iが成立したとき、システム部20を通常状態511から低電力状態512に切り替え、また、システム部20が低電力状態512にある場合、プリンタとイメージスキャナと画像処理回路225の使用状況に関し所定の条件Jが成立したとき、システム部20を低電力状態532から通常状態531に切り替える。なお、すでに説明したように、システム部20を低電力状態512にした場合、プリンタ部20、スキャナ部40及び画像処理回路225の全てが自動的に低電力状態522、532、622となり、結局、複合プリンタ回路10のシステム全体が低電力状態になることになる。一方、システム部20が通常状態511である場合であっても、プリンタ部30内のプリンタ固有部、スキャナ部40内のスキャナ固有部又は画像処理回路225がプリンタ個別制御部520、スキャナ個別制御部530又は画像処理穂別制御部620による個別の制御によって、低電力状態522、532又は621になることがある。
条件Iは、プリンタとスキャナと画像処理回路225のいずれもが使用されていない又使用される可能性が低いことであり、具体的には、「条件Aと条件Cと条件Gが全て成立した」ことである。条件Jは、プリンタとスキャナと画像処理回路225のいずれかの使用が開始される又は開始される可能性が高いことであり、具体的には、「条件B、条件D又は条件Hが成立した」ことである。
図10は、印刷を行うときのを行うときの画像処理回路225の省電力制御とプリンタ固有部の省電力制御のタイミングの違いの一例を示している。
図10のステップS81に示すように、画像処理回路225とプリンタ固有部が共に低電力状態にあるときを想定する。ここで、例えばホストコンピュータから印刷データを到来すると、CPU211は、画像処理回路225の動作要求を発生し(条件H成立)、画像処理回路225を低電力状態から通常状態に切り替える(S82)。すると、画像処理御回路225は、印刷データに含まれる画像データを入力して、これに上述した色変換、ハーフトーン処理及びインタレース処理などを施して、プリンタ部30が印刷することができる形式の印刷画像データを作成し、これを印刷バッファに書き込む(S83)。このようにして、最初の印刷画像データが作成し終わりこれが印刷バッファに格納されると、CPU211は、プリンタの動作要求を発生し(条件Bの成立)、プリンタ固有部を低電力状態から通常状態に切り替える(S84)。すると、印刷バッファからプリンタ部30へ印刷画像データが転送され、プリンタ部30による印刷動作が開始される(S85)。
その後、画像処理回路225が、ホストコンピュータからの印刷データに基づく最後の印刷画像データを作成し終わり、これを印刷バッファに格納し終わると(条件Gの成立)、CPU211は、画像処理回路225を通常状態から低電力状態に切り替える(S86)。その後、プリンタ部30による最後の印刷画像データの印刷が完了して所定時間が経過すると(条件Aの成立)、CPU211は、プリンタ固有部を通常状態から低電力状態に切り替える(S87)。
図11は、画像スキャンを行うときの画像処理回路225の省電力制御とスキャナ固有部の省電力制御のタイミングの違いの一例を示している。
図11のステップS91に示すように、画像処理回路211とスキャナ固有部が共に低電力状態にあるときを想定する。ここで、ユーザからスキャナに動作要求が入るか、又はスキャナの原稿台の蓋がユーザにより開かれると(条件Dの成立)、CPU211は、スキャナ固有部を低電力状態から通常状態に切り替える(S92)。その後、CPU211は、ユーザに指示に従いスキャナ部40を駆動して、原稿画像のプレススキャンや本スキャンなどの動作を行わせる(S93)。
本スキャンによって読み取られたスキャン画像データがスキャナ部40から出力されると、CPU211は、画像処理回路225の動作要求を発生し(条件Hの成立)、画像処理回路255を低電力状態から通常状態に切り替える(S94)。すると、画像処理回路225は、スキャン画像データに対して所定の後処理を行う。ここで、スキャン画像データをメモリカードに格納する場合を想定すると、画像処理回路225は、上記後処理として、スキャン画像データのJPEG形式への圧縮を開始する(S95)。画像処理回路255によるJPEG圧縮処理が完了し、JPEG形式の画像データがカード用ASIC235に渡されると(条件Gの成立)、CPU211は、画像処理回路225を通常状態から低電力状態に切り替える(S96)。
その後、スキャナ部40による本スキャン動作が終了してから所定時間が経過すると(条件Cの成立)、CPU211は、スキャナ部40を通常状態から低電力状態に切り替える(S97)。
このようにして、印刷を行う場合、画像処理回路225は、プリンタ部30の動作タイミングとは別のタイミングで、印刷対象の画像データの前処理を行う必要のある間だけ通常状態にされ、それ以外のときには低電力状態に制御される。また、画像スキャンを行う場合、画像処理回路225は、スキャナ部40の動作タイミングとは別のタイミングで、スキャン画像データの後処理を行う必要のある間だけ通常状態にされ、それ以外のときには低電力状態に制御される。これにより、画像処理回路225の省電力が最適化される。画像処理回路225は1チップ化されておるので、それへのクロック信号をオンオフするといく簡単で安価な方法で、画像処理回路225の消費電力制御ができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。本発明の原理は、プリンタ単体やイメージスキャナ単体にも適用できる。