JP4434105B2 - 車両用フードヒンジ構造 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンフードの開閉に用いられる車両用フードヒンジ構造に関する。
近年、歩行者保護対策に関する技術が盛んに開発されている。下記特許文献1には、エンジンフードを開閉可能に支持するフードヒンジに関する歩行者保護技術が開示されている。
簡単に説明すると、この特許文献1に開示された技術では、フードヒンジがヒンジアームとベース体と支持体とによって構成されている。ヒンジアームと支持体とは第1のヒンジピンによって相対回転可能に連結されており、通常のフード開閉時にはヒンジアームは支持体に対して相対回転することができる。また、支持体とベース体とは第2のヒンジピンによって相対回転可能に連結されているが、通常のフード開閉時にはロック機構によって両者の相対回転が阻止された状態にある。一方、歩行者等の衝突体がフードヒンジ上方側から衝突してきた場合には、ロック機構が解除されて支持体が第2のヒンジピン回りに車両下方側へ所定ストローク回動する。これにより、衝突体への荷重入力を低減しようというものである。
特開2001−270468号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された構造による場合、フードヒンジを車両下方側へ移動させるための別部品による移動機構が必要になると共に、ロック機構が必要になる等、構造が複雑化するという問題がある。さらに、フードヒンジが一旦下がると、元の状態に復帰させるのに部品交換等の修理が必要となり、ユーザー負担が増加する。
本発明は上記事実を考慮し、フードヒンジ上方側から所定値以上の荷重が入力された場合には荷重入力方向へ移動して衝撃を緩和し、しかも簡単な操作でフードヒンジを元の状態に復帰させることができる車両用フードヒンジ構造を得ることが目的である。
請求項1記載の発明は、車体側に固定された支持部材と、一端部がエンジンフードに固定されたヒンジアームと、ヒンジアームの他端部と支持部材とを相対回転可能に連結するヒンジピンと、を含んで構成された車両用フードヒンジ構造であって、エンジンフードを介してヒンジアームに車両下方側への所定値以上の荷重が入力されることによりヒンジアームの他端部をヒンジピンを通る荷重入力方向へ移動させる移動手段と、前記移動手段によるヒンジアームの移動後にフード開放動作がなされてヒンジアームの他端部がヒンジピン回りにフード開方向へ回転することにより、ヒンジピンに対するヒンジアームの他端部の位置を移動後の位置から正規の位置である上方位置へ案内して復帰させるカム機構として構成された復帰手段と、を有することを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用フードヒンジ構造において、前記移動手段は、フード閉止時にはヒンジアームの他端部を正規の位置である上方位置に保持し、前記所定値以上の荷重が入力された場合にはヒンジアームの他端部のヒンジピンを通る荷重入力方向への移動を許容する保持手段である、ことを特徴としている。
請求項1記載の本発明によれば、エンジンフードを介してヒンジアームに車両下方側への所定値以上の荷重が入力されると、移動手段によってヒンジアームの他端部がヒンジピンを通る荷重入力方向へ移動される。これにより、荷重入力の対象物に対する衝撃が緩和される。
その後、フード開放動作がなされてヒンジアームの他端部がヒンジピン回りにフード開方向へ回転すると、復帰手段を構成するカム機構によってヒンジピンに対するヒンジアームの他端部の位置が移動後の位置から正規の位置である上方位置へ案内されて復帰される。従って、フード開放という簡単な操作で、フードヒンジを元の状態に復帰させることができる。
また、本発明によれば、フード開放動作に伴って、ヒンジアームの他端部がヒンジピン回りにフード開方向へ回転すると、カム機構によってヒンジアームの他端部の位置が移動後の位置から正規の位置である上方位置へ案内されるため、特別な復帰機構を要しない。
請求項2記載の本発明によれば、フード閉時には、保持手段によってヒンジアームの他端部は正規の位置である上方位置に保持される。一方、所定値以上の荷重が入力された場合には、保持手段によってヒンジアームの他端部がヒンジピンを通る荷重入力方向への移動が許容される。従って、移動手段として保持手段を用いれば、個別のフード保持手段を設定する必要がない。
以上説明したように、請求項1記載の車両用フードヒンジ構造は、エンジンフードを介してヒンジアームに車両下方側への所定値以上の荷重が入力されることによりヒンジアームの他端部をヒンジピンを通る荷重入力方向へ移動させる移動手段と、この移動手段によるヒンジアームの移動後にフード開放動作がなされてヒンジアームの他端部がヒンジピン回りにフード開方向へ回転することにより、ヒンジピンに対するヒンジアームの他端部の位置を移動後の位置から正規の位置である上方位置へ案内して復帰させるカム機構として構成された復帰手段と、を有するので、フードヒンジ上方側から所定値以上の荷重が入力された場合には荷重入力方向へ移動して衝撃を緩和し、しかも簡単な操作でフードヒンジを元の状態に復帰させることができるという優れた効果を有する。
また、本発明に係る車両用フードヒンジ構造は、復帰手段を、ヒンジアームの他端部がヒンジピン回りにフード開方向へ回転することによりヒンジアームの他端部を移動後の位置から正規の位置である上方位置へ案内するカム機構としたので、部品点数の削減による構造の簡素化並びに修理費などのユーザ負担の軽減を図ることができるという優れた効果を有する。
請求項2記載の本発明に係る車両用フードヒンジ構造は、請求項1記載の発明において、移動手段を、フード閉止時にはヒンジアームの他端部を正規の位置である上方位置に保持し、所定値以上の荷重が入力された場合にはヒンジアームの他端部のヒンジピンを通る荷重入力方向への移動を許容する保持手段としたので、個別のフード保持手段を設定する構成に比し、部品点数の削減による構造の簡素化及び低コスト化を実現することができるという優れた効果を有する。
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両用フードヒンジ構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
図5には、フードヒンジ10の周辺構造が斜視図で示されている。この図に示されるように、車体前部12の両側部には、車体前部12の側面を構成するフロントフェンダパネル14がそれぞれ配設されている。各フロントフェンダパネル14の上端部の内側には、車両骨格部材であるエプロンアッパメンバ16が車両前後方向に沿って延在されている。エプロンアッパメンバ16は、車両幅方向外側に配置されるエプロンアッパメンバアウタ18と車両幅方向内側に配置されてエプロンアッパメンバアウタ18とで閉断面を構成するエプロンアッパメンバインナ20とによって構成されている。
一方、左右一対のフロントフェンダパネル14の上端部には、エンジンルーム22側へ張り出す段差部24がそれぞれ形成されている。左右一対のフロントフェンダパネル14の段差部24には、フードアウタパネル26及びフードインナパネル28から成るエンジンフード30の車両幅方向の端末部30Aが図示しないシール材を介して圧接されるようになっている。
上述したフードインナパネル28とエプロンアッパメンバインナ20の頂壁部20Aとの間には、エンジンフード30を開閉可能に支持するフードヒンジ10が配設されている。
図1には、上記フードヒンジ10の分解斜視図が示されている。また、図2には、当該フードヒンジ10の組付状態の斜視図が示されている。これらの図に示されるように、フードヒンジ10は、ヒンジアーム32と支持部材としての支持ブラケット34とによって構成されている。支持ブラケット34は正面視でL字状を成しており、エプロンアッパメンバインナ20の頂壁部20Aに締結により固定される取付座34Aと、この取付座34Aの内側の側縁から立ち上げられた支持部34Bとによって構成されている。支持部34Bの上部には、車両幅方向に貫通する挿通孔36が形成されている。
一方、ヒンジアーム32は車両前後方向に沿って長尺状とされたアーム部材として構成されており、側面視では上下逆向きの略「へ」の字状形状を成している。ヒンジアーム32のアーム部34Aの上縁側には折り曲げによるフランジ部38が形成されており、更にフランジ部38の前端部38Aはエンジンルーム22側へ張り出してフードインナパネル28への取付座とされている(図5参照)。また、ヒンジアーム32の後端部32Bは車両後方斜め上方へ向けて屈曲されており、当該後端部32Bの先端部には長孔40が形成されている。長孔40は、その長軸方向が車両上下方向となるように形成されている。
上述した支持ブラケット34における支持部34Bに形成された挿通孔36とヒンジアーム32における後端部32Bに形成された長孔40とが車両幅方向に同軸上に配置され、エンジンルーム22側から段付きボルトで構成されたヒンジピン42及びワッシャ44が挿通され、反対側からワッシャ46及びナット48が螺合されることにより、フードヒンジ10がヒンジピン42回りに回動可能とされている。なお、長孔40は、エンジンフード30が閉止された状態において、車両上下方向が長軸方向となるようにヒンジアーム32の後端部32Bに形成されている。また、通常時には、長孔40の下端部にてヒンジピン42が位置されている。
上述した支持ブラケット34の支持部34Bの内側面には、凸状の固定側カム部50が一体に形成されている。固定側カム部50は挿通孔36の周囲に形成されており、本実施形態では中実として構成されている。但し、固定側カム部50は必ずしも中実で構成されている必要はなく、例えば環状等でも適用は可能である。固定側カム部50は側面視で略円盤状に形成されており、更に外周一部には半径方向外側へ突出する略三角形状の突起部50Aが形成されている。因みに、突起部50Aは、車両後方をx軸のプラス側、車両上方をy軸のプラス側とする直交(x−y)座標系を想定した場合において約45度の方向に突出されている。
これに対応して、ヒンジアーム32の後端部32Bの外側面には、凸状の固定側カム部50が内側に嵌合可能な凹状の移動側カム部52が一体的に形成されている。移動側カム部52は、車両前後方向の長さ(幅)よりも車両上下方向の長さ(高さ)の方が長い枠状(閉ループ状)に形成されている。また、移動側カム部52は、下部を構成する円弧状壁部52Aと、上部を構成しかつ下向きに開放されたコ字状壁部52Bとを備えている。なお、凹状の移動側カム部52はプレス加工や削り出しによってヒンジアーム32の側面に一体に形成する構成を採ってもよいし、予め移動側カム部52を別部品で構成しておき、それをヒンジアーム32の側面に溶接して取り付ける構成を採ってもよい。
フードヒンジ10の車両組付状態では、図4Aに示されるように、円弧状壁部52Aの中心に前述した長孔40の下端部が重なって配置されるように、長孔40と円弧状壁部52Aとの位置関係が設定されている。さらに、移動側カム部52の上下方向寸法は、固定側カム部50の径方向寸法よりも長く設定されており、前記組付状態においてコ字状壁部52Bの上部側に隙間54が形成されるようになっている。この隙間54の上下方向寸法が、フードヒンジ10への衝突荷重入力時におけるヒンジアーム32の移動ストロークとなる。
さらに、コ字状壁部52Bは、前後に配置された前壁52B1及び後壁52B2とこれらの上端同士を繋ぐ湾曲した上部壁52B3といった三つの壁部によって構成されている。前壁52B1は側面視で前傾しており、又後壁52B2は側面視で後傾している。すなわち、側面視で見ると、前壁52B1及び後壁52B2は逆「ハ」の字状を成している。従って、円弧状壁部52Aとコ字状壁部52Bとの接続部位は互いに接近する方向へ若干絞り込まれて括れ部56が形成されている。前後の括れ部56の内周面間の距離は、固定側カム50の外径寸法よりも若干短く設定されている。さらに、上記前壁52B1の壁長は、後壁52B2の壁長よりも短く設定されている。
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
通常のエンジンフード30の開閉時には、ヒンジアーム32がヒンジピン42を中心として開閉方向へ回転する。なお、フード開閉時には、ヒンジアーム32側に形成された移動側カム部52の円弧状壁部52Aは、支持ブラケット34側に形成された固定側カム部50に嵌合されて回転可能な状態を維持している。また、図4Aに示されるように、フード閉止状態のときには、コ字状壁部52Bの前壁52B1及び後壁52B2が側面視で逆「ハ」の字状に配置されてかつ前後の括れ部56の内周面間の距離が固定側カム50の外径寸法よりも短く設定されているので、一種の抜け止め効果が得られ、フードヒンジ10の移動側カム部52が支持ブラケット34の固定側カム部50に対して不用意に下方変位することはない。
この状態において、衝突体と前面衝突した場合等において、エンジンフード30のフードヒンジ配設位置付近に所定値以上の衝突荷重が入力された場合には、当該エンジンフード30を介してヒンジアーム32に車両下方側への荷重が伝達される。このため、図4Bに示される如く、ヒンジアーム32側の移動側カム部52が支持ブラケット34側の固定側カム部50に対して車両下方側へ相対移動する。このとき、移動側カム部52の括れ部56は、当該移動側カム部52内を固定側カム部50が相対移動することができる程度に、互いに離反する方向へ僅かに弾性変形することで、固定側カム部50に対する移動側カム部52の相対移動が許容される。また、ヒンジピン42は、ヒンジアーム32に形成された長孔40を下端部から上端部側へ相対移動する。上記により、衝突体に対する衝撃が緩和される。
その後、エンジンフード30の開放動作がなされると、図4Cに示される如く、ヒンジアーム32もヒンジピン42回りに時計方向(図4Bの矢印A方向)へ回転される。この過程で、コ字状壁部52Bの上部壁52B3の内周面52B3’が支持ブラケット34側の固定側カム部50の突起部50Aの先端50A’を周方向へ摺動していく。このとき、コ字状壁部52Bを構成する要素である前壁52B1の壁長が後壁52B2の壁長よりも短く設定されているので、双方の壁長の差に応じた量だけ、コ字状壁部52Bが半径方向外側へと移動していく(押出されていく)。
そして、ヒンジアーム32が約90度の開度(略起立状態)とされたときに、移動側カム部52が横向き(車両後方向き)になり、ヒンジアーム32の復帰動作が完了する。つまり、フードヒンジ10側の移動側カム部52の円弧状壁部52A内に支持ブラケット34側の固定側カム部50が保持された状態となる。従って、フード開放という簡単な操作で、フードヒンジ10を元の状態に復帰させることができる。
以上より、本実施形態によれば、エンジンフード22におけるフードヒンジ10の配設位置上方側から所定値以上の荷重(衝突体による衝突荷重)が入力された場合には荷重入力方向へ移動して衝突体に対する衝撃を緩和し、しかもエンジンフード22の開放動作という簡単な操作でフードヒンジ10を元の状態に復帰させることができる。
また、凹凸嵌合関係にある二つの固定側カム部50及び移動側カム部52を嵌合させて組付状態とし、前後の括れ部56の内周面間の距離を固定側カム部52の外径よりも短目に設定したので、フード閉止状態におけるフードヒンジ10へかかる荷重領域では、フードヒンジ10を図4Aの実線図示位置(即ち、上方位置)に保持することができる。従って、本実施形態によれば、個別のフード保持手段を設定する必要がない。従って、部品点数の削減による構造の簡素化及び低コスト化を実現することができる。
さらに、二種類の固定側カム部50及び移動側カム部52の組み合わせから成るカム機構を利用することにより、フード開放動作に伴うヒンジアーム32の自動復帰を可能としたので、特別な復帰機構を要しない。従って、部品点数の削減による構造の簡素化並びに修理費などのユーザ負担の軽減を図ることができる。
〔本実施形態の補足説明〕
なお、上述した本実施形態では、支持ブラケット34側に凸状の固定側カム部50を設け、ヒンジアーム32側に凹状の移動側カム部52を設ける構成を採ったが、これに限らず、両者の設定関係を逆にしてもよい。
また、上述した本実施形態では、エンジンフード30が金属製であることに伴ってフードヒンジ10も金属製としたが、これに限らず、例えば、エンジンフードを、エンジンフードに対する要求特性を満たす樹脂製とした場合には、フードヒンジも樹脂製とすることも充分可能である。
本実施形態に係るフードヒンジの分解斜視図である。 図1に示されるフードヒンジの組付状態の斜視図である。 図2の3−3線に沿う縦断面図である。 本実施形態に係るフードヒンジ構造の作動を現す要部拡大図に係り、通常のフード閉止状態を示す側面図である。 本実施形態に係るフードヒンジ構造の作動を現す要部拡大図に係り、フードヒンジに上方側から所定値以上の荷重が入力された場合の側面図である。 本実施形態に係るフードヒンジ構造の作動を現す要部拡大図に係り、下方変位したフードヒンジを自動復帰させる際の側面図である。 フードヒンジの周辺構造を示す車両組付状態の斜視図である。
符号の説明
10 フードヒンジ
30 エンジンフード
32 ヒンジアーム
32B 後端部(他端部)
34 支持ブラケット(支持部材)
38A 前端部(一端部)
40 長孔(移動手段、保持手段)
42 ヒンジピン
50 固定側カム部(移動手段、復帰手段、保持手段、カム機構)
52 移動側カム部(移動手段、復帰手段、保持手段、カム機構)
54 隙間(移動手段、保持手段)

Claims (2)

  1. 車体側に固定された支持部材と、
    一端部がエンジンフードに固定されたヒンジアームと、
    ヒンジアームの他端部と支持部材とを相対回転可能に連結するヒンジピンと、
    を含んで構成された車両用フードヒンジ構造であって、
    エンジンフードを介してヒンジアームに車両下方側への所定値以上の荷重が入力されることによりヒンジアームの他端部をヒンジピンを通る荷重入力方向へ移動させる移動手段と、
    前記移動手段によるヒンジアームの移動後にフード開放動作がなされてヒンジアームの他端部がヒンジピン回りにフード開方向へ回転することにより、ヒンジピンに対するヒンジアームの他端部の位置を移動後の位置から正規の位置である上方位置へ案内して復帰させるカム機構として構成された復帰手段と、
    を有することを特徴とする車両用フードヒンジ構造。
  2. 前記移動手段は、フード閉止時にはヒンジアームの他端部を正規の位置である上方位置に保持し、前記所定値以上の荷重が入力された場合にはヒンジアームの他端部のヒンジピンを通る荷重入力方向への移動を許容する保持手段である、
    ことを特徴とする請求項1記載の車両用フードヒンジ構造。
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